青い空、輝く海。見渡す限りの群青が続く。
遮るものなく白い砂浜が熱される。そんな炎天下の中、小麦色に焼けた大勢の人々で海辺は賑わっていた。
「いらっしゃいませぇ! 冷たいビールにジュース、かき氷もありますよー!」
海の家では売り子が大きなケースに氷と水を張り、中のジュースを売っていた。
「かき氷ちょうだいっ!」
砂浜に足跡を残しながら、浮き輪を持った少女が硬貨を握って店頭にやってくる。
「はいっいらっしゃい! 何味にするんだい? イチゴ、メロン、ブルーハワイ、宇治金時があるよ!」
「えーっとね、イチゴ味!」
店員が大きな氷を機械にセットすると、みるみるうちに氷が薄く削られ、雪のように紙カップの中に積もっていく。大きく山を描くとイチゴのシロップでたっぷりと山頂を染め、先端がスプーンになったストローを差し込んだ。
「はいよっイチゴのかき氷……だ?」
硬貨と交換して少女は鮮やかな赤いかき氷を受け取る。だが店員は口を開けたまま動きを止めて硬貨を落とした。
「おじちゃん落としたよ?」
少女が店員に話しかけるが、店員は泡を食ったように視線を少女の後ろに向けていた。
釣られるように少女も振り向く。そこに居たのは人を丸呑みできそうな巨大な口に、鋭い牙を持つ恐竜だった。
『グルラアアアアッ!』
恐竜が咆える。すると大気が振るえ、ぽかんと口を開けて腰を抜かした店員が言葉を忘れたように叫び始める。
「ウララァーアアー」
周囲に居た親子連れも、カップルも、子供達も雄叫びを上げながら、身につけている麦わら帽子やシャツを投げ捨て、時計や携帯を外して踏み潰す。
「うららー!」
先程かき氷を買った少女もまた影響を受け、手にしたかき氷を掲げるようにスキップを始めた。その横をのっしのっしと歩く恐竜。
その光景はまさに原始時代のようだった。
教室に灼滅者が入ると、先に居た宍戸・源治(羅刹鬼・d23770)が振り向く。
「おう、前に出会った恐竜みたいなイフリートが気になってよう、どこに現われるのかと探してたんだけどな、夏といえばやっぱり海に現われるんじゃないかと思ってよう」
そこで横から能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が言葉を続ける。
「調べたところ、どうやら海水浴場に現われるみたいでね、そこで一般人を原始人化させるみたいなんだ」
このイフリートが現われると人々は知能が失われ、まさに原始人のように行動をしてしまう。
「このまま放っておくとどんどん犠牲者が増えちゃうからね、みんなでこのイフリートを倒して人々を元に戻して欲しいんだ」
今は海の家周辺だが、時間が経てば海岸に居る海水浴客全てを巻き込んでしまうだろう。
「このイフリートはタフでパワーが強いみたいだね。原始人化した人々は自分たちの敵だと思えば襲ってくるんだ、逆に言うなら仲間だと思われれば戦わずに済むということだね」
原始人は明確な敵ではない。言葉が喋れないので会話は出来ないが、上手く行動すれば戦わずに済ます事が出来る。ただこのイフリートの原始化の範囲からは外には出たがらないようなので、そこは注意が必要だろう。
「周囲の一般人が30名ほど原始人化しているよ。その中で強化一般人となっているのは5名だよ」
原始人になった人々は踊ったり、海の家にある食材を生のままかじったり、スイカを割ったり、砂浜で砂遊びをしたりと自由に過ごすようだ。
「イフリートがどういう理由で現われたのかは分からないけど、せっかく夏の海に遊びに来たのに、こんな騒動で台無しにされたくはないよね。みんなの力で助けてあげて」
誠一郎の言葉に源治も頷き、灼滅者達は夏真っ盛りの海へと向かうのだった。
参加者 | |
---|---|
穂邑・悠(火武人・d00038) |
羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097) |
叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779) |
普・通(正義を探求する凡人・d02987) |
天神・ウルル(イミテーションガール・d08820) |
姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118) |
宍戸・源治(羅刹鬼・d23770) |
倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431) |
●海の家
見渡す限りの青い海と白い砂浜。強い日差しを受けてゆらりと立ち昇る空気。夏の海らしい景色が広がっている。
だがその一角。海の家周辺の様子は常とは違っていた。まるで原始人のように人々が叫び踊っている。
そして何よりも異様なのが、大きな恐竜がのっしのっしと歩いている事だった。
「真夏のビーチ! 海の家! 良い響きだな」
水着に着替えた姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)は海を見て眩しそうに目を細める。
「だってのに、ただで楽しませてはくれないか」
溜息を吐くように視線を動かせば、そこには原始人と化した人々と恐竜が居る。
「あれが恐竜のイフリート……」
わくわくした様子で羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097)は、ちらりとイフリートを覗き見る。
「あれが竜種ってイフリートさんなのですねぇ、普通のよりも強いのですぅ?」
隣で水着の上から布を巻き、原始人らしい姿の天神・ウルル(イミテーションガール・d08820)も興味津々と恐竜を眺める
「楽しみですねぇ、にへ」
そしてこれから行なわれる戦いを想像して、楽しそうに頬を緩めた。
「ふむ……恐竜型イフリートかのぅ。我は初めて見るが、やることは変わらぬ」
水着にボロ布を纏った倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)が鋭い視線を向ける。
「宿敵たるイフリートをこの世からまた一つ滅すのみ」
「まずは戦場の環境を整えないとな」
水着姿の穂邑・悠(火武人・d00038)は、イフリートとの対決を前にして燃えるような闘志を抑え、周囲を見渡した。
「誘導は任せる、あちらは任せろ」
水着に長袖のパーカーを着込んだ叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)は、恐竜の方へと歩き出す。
「このイフリート、今までのたあ違うんだよな……気になるが、まずは倒さねえと」
水着からはち切れんばかりの太く筋肉質な体に太陽を浴びながら、宍戸・源治(羅刹鬼・d23770)は担いでいた荷物を降ろす。そこには果物や肉、そして枯れ木などがあった。
「さぁて、始めるか!」
恐竜から離れた場所で枯れ木に火を起こし、肉を焼き始める。すると香ばしい匂いが漂い、くんくんと原始人化した人々が鼻を動かす。
「美味しいですよ~がおがお~」
ビキニ姿の智恵美がスイカやブドウといった果物を手に可愛く声をかけると、発するフェロモンに惹かれたのか、ふらふらと人々が寄ってくる。
「うららららー!」
「うー! ううー! うー!」
叫んで集まる人々に、女性ものの水着を着た普・通(正義を探求する凡人・d02987)は、どこから見ても女性にしか見えない姿で用意した大きな肉を見せる。それは肉を重ねて作った、まるで漫画に出てきそうな肉だった。
「うら! ららら!」
「うららー」
食べ物を前に興奮する人々に、ウルルも合わせるように声を出して食べ物を差し出す。
「ウラー!」
源治も恥ずかしがっている場合ではないと、叫んで次々と肉を焼く。
「皆の者! 肉じゃ! 肉を讃えよ!! 生命の恵み、その神髄を崇めよ!! さぁ、いくらでもある、食いたければ食うが良いのじゃ!」
姫月も全員に行き渡るよう焼けた肉を振る舞っていく。
「うーららうららー」
「うららららー」
人々は食べ物に夢中でかぶりつき、口を汚すのも構わずガツガツと食べ始めた。
●原始人と食事
『グルルルルゥ……』
そんな様子に興味を持ったのか、海の家でかき氷用の大きな氷を齧っていた恐竜が振り向き、ゆっくりと焚き火の方へと向きを変えた。だがその前を塞ぐように数名の人影が割り込む。
「恐竜とはなぁ……なかなかカッコいいんじゃね?」
恐竜と対峙した悠は不敵に笑みを浮かべる。
「来いよ、俺の炎!」
そして手にしたカードを顔の前に翳す。カードが炎に包まれるとその中心から燃えるような巨大な剣を引き抜いた。そのまま剣を上段に構えて振り下ろす。
『グガァッ』
恐竜は器用に顔を横に向け、剣に噛み付いて受け止めた。
「一凶、披露仕る」
そこへ宗嗣が日本刀のような薄刃の剣を抜き打つ。恐竜は体を捻って鱗で弾こうとした。刃が一閃する。だが皮膚には傷一つ無い。
『ギグィッ』
恐竜は苦悶の声を上げる。宗嗣の持つ剣の刀身をよく見れば、うっすらと透けていた。非物質と化して恐竜の霊魂を斬ったのだ。
『グルラァッ!』
痛みに怒りの声を発しながら恐竜が蹴り上げる。するとまるでナイフのように鋭い爪が襲い掛かってきた。
「これ以上厄介な事になる前に、この場を収めるぜ」
そこへ跳び出した火水は拳に雷を宿し、向かい来る蹴りを殴りつける。重い感触が腕に伝わり、自身の体が後ろに浮く。だがぶつかった衝撃に足の軌道が逸れ、爪は空を切る。
「よし、こっちだ!」
反動のまま着地した火水は、焚き火をしている仲間とは反対方向へと敵を誘導する。
『グガァッ!』
地響きを立てながら追いかけてくる恐竜。悠と宗嗣が敵の攻撃が集中しないよう、左右からフォローしながら引き付けていく。
「うーうー」
「うわーっうわっ!」
「陽気でいいですね」
美味しそうに無垢な笑顔で肉や果物を食べる人々。その平和な光景に思わず智恵美が呟くと、隣で源治が頷いて返す。
「ここだけ見れば平和なもんだよな。でも、ちゃんとやらねえとなあ」
仲間と視線を合わす。灼滅者達は頷き行動を開始した。
「楽しそうなところすみませんが、少し眠っていてくださいね」
「腹いっぱいになったらよう、昼寝の時間だぜ」
智恵美と源治が眠りを誘う穏やかな風を起こす。バタバタと気持ち良さそうに人々が眠る。だがそんな中5人だけ食べ続けている人々が居た。
「ごめんなさい……えいっ!」
「ごめんなさいですぅ」
通は縛霊手を振りかぶってその内の一人の後頭部に叩き付け、その隣の男にウルルは雷を纏った手刀を首筋に浴びせた。
「うう?」
残った3人が漸く食べ物から顔を上げて異変に気付く。口に肉を咥えたまま1人が手に持った骨で殴り掛かろうとしたところへ、姫月の影が触手のように動いて縛り上げる。
「大人しくしておれ」
影は強く締め付け、手からぽろりと骨が落ちた。
「うらーーーー!」
「うららーーー!」
残る2人が飛び掛ってくると、智恵美と源治が縛霊手で受け止め、反対に殴り倒す。通とウルルも攻撃に加わり先程と同じように意識を奪った。
食事という罠に嵌り、不意を突かれた原始人達はあっという間に制圧された。
「こっちは片付いたな、それじゃあ向こうと合流しねえとな」
源治の言葉に同意し、灼滅者達は急ぎイフリートと戦う仲間の下へ向かう。
●猛る恐竜
『グッグォッ』
悠が恐竜の蹴りを受けて体を浮かされると、そこへ尻尾が薙ぎ払うように襲いくる。
「任せろ!」
前に出た火水が斧を振り抜いてぶつけた。衝撃で尻尾の勢いが止まる。だが火水の体も後方へと吹き飛ばされた。
「次はこっちの番だな!」
そこへ悠が駆け込み、懐に入ると拳の連打を浴びせる。オーラを纏った拳が硬いウロコを砕く。
『グギャッ』
鬱陶しそうに、恐竜は悠を足蹴にしようとする。だがその足に飛来した片刃の短刀が突き刺さる。
「恐竜種と先史人類発生の間には6000万年程ある……。考古学をやり直せ」
宗嗣は投擲した手を握り固め、鋭く踏み込むと跳躍して鈍い鋼色のオーラを纏って恐竜の横っ面を殴りつける。
『グガァッ』
片足立ちだった恐竜はバランスを崩して横に倒れる。そこへ影が伸びて恐竜の体に巻き付いた。
「お待たせしました!」
影を伸ばした智恵美が声をかける。その後ろに続いて、原始人を相手にしていた灼滅者達が恐竜へと殺到する。
「負傷した奴あこっちへ、すぐに傷は治すぜ」
音を封じる結界を張り終えた源治は風を起こし、その穏やかな空気が恐竜から受けた傷を癒していく。
「竜種さんってお喋りできるのですぅ? こーんにちは! さよならを言いに来たのですよ!」
砂浜の上をローラーダッシュで駆け抜け、砂煙を上げながらウルルは炎を纏った蹴りを放つ。影の戒めから抜け出そうとしていた恐竜の顎を捉えて蹴り上げた。
「これ以上は好きにはさせません!」
人が近づけぬような殺気を放ちながら、続けてローラーダッシュで加速した通が、大きく跳躍しながら炎の蹴りを頭上から叩き付ける。
『ギャォッ』
恐竜は頭部に受けた上下の振動でふらりとよろめく。
「会いたかったのじゃ、イフリート。また、世界から厄災を滅っせる悦び、お主にわかるかのぅ?」
姫月は鎧を纏い、剣を振り抜く。非物質と貸した刃が恐竜の魂を傷つける。
『グルッッガォォォオオッ!』
恐竜は大きく息を吸い込むと、口の端から炎が漏れる。大きく開けた口の奥、そこには灼熱の炎が渦巻いていた。
「来い! ここからが本番だぜ!」
仲間を守るように姫月が前に立ち塞がると、その身を白と青のバトルコスチュームで包む。ヘッドギアを装着し、炎のブレスを迎え撃つ。手にした斧を盾に炎を遮る。斧に埋め込まれた龍の力が体に宿り、燃やし尽くそうとする火炎に耐え続ける。
「盛り上がってきたぜ!」
背後から尻尾を踏み蹴って跳躍した悠が大きく大剣を振りかぶる。炎を纏う剣が振り下ろされ、恐竜の片目を潰して顔を押し退ける。その姿は子供が遊んでるように楽しそうだった。
『グギィッ』
衝撃にブレスが止まり、恐竜は片目を失った怒りに悠に噛み付こうと迫る。
「させませんと、言ったでしょう!」
通がその牙に向けて飛び蹴りを放って押し返すと、牙は空を切って顎門が閉じる。歯と歯がぶつかる音が、まるで金属を打ち鳴らすように響く。
『グルァッ』
だが恐竜は動きを止めずに反転して尻尾を振るう。鞭のようにしなって通り過ぎたそれは通を吹き飛ばし、悠をも巻き込んで薙ぎ倒す。更に返してもう一撃を加えようとしたところへ、駆け寄った源治が尻尾の先端を抱き止める。
「何が目的かは知らねえがよう、ちっと暴れすぎだぜ」
振り払おうとする尻尾に対し、ぐっと腰を落として縛霊手の霊糸を絡めて放さない。
「大義名分は立った。聖剣の導きの下、燃え尽きる焔(ほむら)と散れ」
そこへ姫月が跳び掛る。上段から振り下ろす剣が恐竜の尻尾を半ばから断ち切った。
『グギゥオオッ!』
苦しそうな声を恐竜が漏らす。血走った目が尻尾を切った姫月を睨みつける。手負いの恐竜は全身から炎を纏って突進を始めた。地面を蹴ると、大きな足跡と共に砂が大量に舞い上がる。
「足を止めます!」
智恵美が横から槍を振るい氷柱を飛ばす。放たれた氷の塊は恐竜の左足を凍らせたが、勢いを殺す事は出来ず、剣で身を守ろうとする姫月を吹き飛ばした。
『グギギォッ!』
恐竜はそのまま左に旋回し、次の標的を智恵美に決める。
「武器を返してもらおうか」
その時、恐竜の足元から声がする。いつの間にか足元には宗嗣が近づいていた。手を伸ばし先程差した短刀の柄を掴むと捻り、傷口を拡げながら抜き取る。そして反対の手に持っていた剣を傷口に突き立てた。
『グガアアッ!』
旋回中に足を負傷し、恐竜はバランスを崩して転倒する。
「チャンスなのですぅ! 必殺キックを受けるのです!」
好機とウルルが正面から全力で疾走し、跳躍する。
「ルミナス・ライトニングキィーック!」
恐竜が顔を上げたところへ、その蹴りは流星の如く一直線に飛んでぶつかる。牙が何本も折れて地面に刺さる。そして炎を吐きながら恐竜は大きく仰け反った。
『グガッ』
「今度はこっちから行きます」
通が腕を鬼の如く変化させ、握った拳を背後から打ち込む。すると今度は逆に恐竜は前屈みなる。
「最新の研究では獣脚類には羽毛があったそうだ……。姿を練り直すのを勧めるぞ……?」
宗嗣が背中に跳び乗ると、短刀を突き刺す。そして硬い鱗を剥いだ。
「ここで一気にいきましょう!」
その場所へ智恵美が槍を突き刺す。傷口から炎が噴き出る。だがすぐさま凍りつき炎の如き氷の彫像が出来上がった。
『グルルッガオァァア!』
暴れて灼滅者を振り落とした恐竜が大きく息を吸い、体内に炎を溜める。
「そんな炎で、オレを止められるかよ!」
放たれるブレスに真正面から火水が斧を盾のようにかざして突っ込む。炎を止めなければ後ろの仲間が巻き込まれる。庇い切れぬ手足が燃える。だが止まらずに恐竜との間合いを詰める。その時、背中に一本の矢が刺さり吸い込まれるように消えた。すると燃え移った炎が消える。
「援護は任せて、やっちまってくれよう」
背後には弓を構える源治が居た。
「おおおおおお!」
駆け寄った勢いを乗せ、アッパースイングで斧を振り上げる。恐竜の顎を捉え、口を閉じさせて顔を打ち上げた。出口を失った炎が頬に溜まる。
「これで仕舞いとしようかのぅ」
姫月がその頬に剣を突き立てる。すると爆発するように炎が噴出して、割れた風船のように頬の肉を吹き飛ばした。
『ギィィッギィャッ』
「燃え尽きやがれ!」
何とかもがき体勢を立て直そうとするところで、懐に入った悠が大剣を横に薙ぐ。刃が恐竜の胸に深く食い込んだ。
「さよならですぅ!」
炎を纏ったウルルの蹴りがその大剣を蹴って打ち込み、刃は恐竜の体を両断した。
『ギィアァ……』
びくびくっと痙攣した後、動かなくなった恐竜は炎に包まれ、跡形もなく消え去った。
●海水浴
戦いが終わり、原始人化していた人々が元に戻ると、海の家周辺は何事も無かったように賑わい出す。
「おお! マンガ肉があるじゃねぇか!」
悠は通が作った肉を嬉しそうに手に取った。原始人用に用意した食料が残っており、荷物になると皆で食べ始めた。
「恐竜型イフリート、奴も元は人間であったのじゃろうか。それとももっと別の……」
姫月は真剣な表情で考えながらも、その口は肉に齧り付いていた。
「恐竜の本当の姿を考えるのも興味深いな」
宗嗣も真面目な表情をしながら、ビーチパラソルの下でスイカに齧り付いていた。
「掃除終わりましたけど、帰ります?」
智恵美が食べかすや焚き火の跡を纏めて袋に入れて縛ると、仲間に振り向く。
「え? これオレらも遊んでって良いんだよな?」
既に海に向かう気でいる火水が仲間を見る。
「ちっとは遊べるんだろ?」
肉を食べ終わった悠がスイカに手をつけながら尋ねた。
「そうだなあ、海まで来たんだからよう、みんなで遊んで行かないか?」
荷物を纏めて置いた源治が仲間を見渡して提案した。
「そうですね、遊んでいきましょうか?」
智恵美もゴミを置いて遊ぶ準備を始める。
「折角の海、泳がねば損じゃ」
「海ですぅ! いっぱい遊ぶのですよ!」
姫月とウルルはどちらが先に海に入るのかと、一番を競うように駆け出す。それを追いかけるように他の仲間も続く。
夏の日差しに負けぬ元気さで、海辺を駆ける。無邪気に水と戯れる。それはきっと太古の時代から変わらぬ姿のように思えた。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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