霊玉どんぶらこ

    作者:泰月

    ●流れてきたモノ
     ごろごろごろごろ。
     丸い何かが、山の斜面を転がり落ちていた。
     それは、転がる間もどんどん大きさを増し続けたそれは――岩に乗り上げて宙を舞うと、ざぶんと、川に飛び込んだ。
     そのまま川の上を転がりながら、どんぶらこ、と流されて行く。
     川を流れる巨大な丸いなにか。
     まるで昔話の一場面だが、これはそんなに良いものではない。
     転がる間に飲み込み続けたのは、様々な生物の死体や灼滅されたダークネスの残骸。
     やがて巨大な肉塊となったそれは、川岸に打ち上げられた所で転がるのを止めた。
     肉塊は、やがて形を変えた。ヒトに良く似た手足と漆黒の角を持つ、作務衣を纏った鬼の姿に。
     その全身は漆黒のオーラに包まれ、左手の甲には『仁』の文字の浮かんだ玉がついていた。
    「さて……で、俺は何をすればいいんだ。主ぁ一体どこにいるってんだ」
     鬼はぐるりと周囲を一瞥し、探すのをあっさりと諦めた。
    「ま、いいか。適当に暴れてりゃ何とかなるだろ」

    ●今日の迷宵さんは
     夏休みのとある日、教室には、陣羽織を着て玩具の刀を構える野々宮・迷宵(中学生エクスブレイン・dn0203)の姿があった。
    「いざ、鬼退治でござる」
     髪も武士らしく後ろで1つにまとめ、額には桃のイラストの入った鉢巻をし、背中には『日本一』と書かれたのぼりを背負い、腰には何かの入った袋を下げている。
     この服装に、鬼退治の言葉。これは――。
    「桃太郎……?」
    「はい。桃太郎でござる!」
     コスプレの正解が出たからか、なんだか迷宵は少し嬉しそうだ。
     でも桃太郎って、ござるだったけ?
    「この方が気分が出ませんか?」
     一瞬素の口調に戻って答えると、迷宵は表情を引き締め話を始めた。
    「依頼ですが、大淫魔スキュラが遺していた仕掛け、犬士の霊玉を予知したのでござる――スキュラについては、皆さんの方が良くご存知かと」
     『犬士の霊玉』とは、スキュラが生前に用意していた、「予備の犬士」を創りだす仕掛けだ。
     人間やダークネスの残骸を少しづつ集めて大きな肉塊となり、やがて新たなるスキュラのダークネスを産み出すもの。
    「この霊玉が山から川に転がり落ちて、そのまま川をどんぶらこ、と流れる光景が見えたんです。まるで桃太郎の伝説みたいに」
     ああ、成程。それでこのコスプレか。
    「ですが霊玉から現れるのは、桃太郎ではなく、その反対。鬼。羅刹でござる」
     鬼退治、と迷宵が言っていたのは、状況が伝説に似ていたからだけではなかった。
    「霊玉の文字は『仁』。単独ですが、それでもかなり強い敵でござる」
     特別な能力も持たないが、予備の犬士の候補として生み出された存在だ。
     基礎の能力が低い筈もない。
    「更に、戦いに時間を掛けると、この羅刹は強くなってしまうでござる」
     誕生後しばらくは力が弱い状態。それが時間が経つにつれ、予備の犬士に相応しい能力を得るのだ。
     そうなってしまえば、闇堕ちしない限り勝利は難しい。
     かと言って、ダークネスになる前。大きな肉塊の段階で倒してしまうと、霊玉はどこかに飛び去ってしまう。
    「流れ着いてダークネスになる地点は、鬼ヶ島――ではなく、周囲に人家のない川原でござる」
     周囲に気を配る必要がないのは、短期決戦には持って来いの場所だ。
     とは言え、川の先にはいずれ街がある。
     相手は、八犬士の空位を埋める為に生まれた存在だ。
    「この鬼が野に放たれたら、どれ程の被害になるか判りません。私は鬼退治のお供は出来ませんが、皆さんが桃太郎の様に鬼を退治して来てくれると、信じています」
     素の口調に戻った迷宵は、腰の袋からきびだんごを出し、1つずつ灼滅者達に手渡し、そう告げた。


    参加者
    森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)
    狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)
    蒼井・夏奈(小学生ファイアブラッド・d06596)
    黒木・唄音(不歌心封・d16136)
    炎谷・キラト(失せ物探しの迷子犬・d17777)
    橘樹・慧(月待ち・d21175)
    華神・瑠璃(紺碧の雫・d24365)
    最上・弦斎(憂き世戯れて候ふ・d29412)

    ■リプレイ

    ●鬼を待ち受ける者達
     ぱしゃん、と何かの跳ねた水音が響く。
     ともすれば聞き逃してしまいそうな音が聞こえる程に静かな川原に、灼滅者達の姿はあった。
     季節を考えれば川遊び、と言いたい所だがそう言うわけではない。
    「スキュラもめんどくさいもん残してったよなあ」
     アラームのタイマーを入力し終えた炎谷・キラト(失せ物探しの迷子犬・d17777)の前には、巨大な肉塊があった。
     少し前に川をどんぶらこ、と流れてきたそれこそが『犬士の霊玉』――スキュラの遺した物の1つだ。
    「こんな桃太郎やだーって思ったけど、鬼なんだよね! ややこしいっ」
     蒼井・夏奈(小学生ファイアブラッド・d06596)は霊玉を見上げ、素直な思いを口にする。
    「スキュラダークネスかー……ふふっ、ボク一度戦ってみたかったんだ♪」
     黒木・唄音(不歌心封・d16136)は霊玉に視線を向けたまま、常備しているスイーツを笑顔で口に運ぶ。
     実に美味しそうに食べているが、それから漂う甘い匂いが、常人では耐えられない程の激甘スイーツだと物語っていた。
     甘いもの全般が好きな夏奈でも、分けて貰おうという気が起きない程に。
    「『結界』に『霊玉』、いくらダークネスとは言え有り余る力よな」
     狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)も、霊玉を見上げて呟く。
    「面白いのは何れも『ダークネスを発生させる』と言う共通点だ。スキュラはさしずめ闇の母といった所か……厄介な事よ」
     見出した共通点に抱くのは、相反した2つの感情。
     さて、呟く伏姫の口調は中々古風なものであったが、古風な口調の者がもう一人いた。
    「まさか灼滅者となって、初陣に鬼退治が出来るとは思わなんでござる」
     最上・弦斎(憂き世戯れて候ふ・d29412)である。
     彼の場合、口調どころか出で立ちからして、侍だった。
     まげを結い、着物を羽織って腰に刀。このまま時代劇の撮影現場に混ざれそうだ。
    「鬼退治……桃太郎の伝説、か。昔聞いた話ではハッピーエンドだったと思うけど」
     無表情のまま、肉塊を見上げる華神・瑠璃(紺碧の雫・d24365)は、昔好きだった話の内容を思い出していた。
     これから起きるであろう、それと異なる現実を思うと、冒涜されるような気分になる。
    「今回の事件は放ってはおけないよね」
     瑠璃がそう言った、直後。
     ――ドクンッと肉塊が大きく蠢いた。
    「!?」
     変化に気付いて一足の距離を取る灼滅者達の前で、ソレは形を変え始める。
    「おいしいきびだんご貰ったし頑張って倒そうね~!」
    「貰いはしたが、きびだんごで仲間を集める手間を省けるのは武蔵坂の良い所だな」
     どこか無邪気さの残る夏奈の言葉に続けるように呟いた森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)の手には、既に槍と杖が握られていた。
    「適当に頑張る……じゃだめだな、今日は。全力で叩き潰す」
     橘樹・慧(月待ち・d21175)の手に赤く点滅する光が生まれ、傍らに前籠つき自転車を無理矢理一輪にしたようなライドキャリバーが現れた。
    「さぁて、鬼退治といこっか! 狂鳴!」
     お菓子の最後の一欠片を口に放り込んで、唄音はフードを被る。いつもの、戦いに備える自己暗示。
     そして。
    「おいおい、なんだこの状況」
     変化が終わり、目を開けた羅刹が目にしたのは、武器を手にずらりと並ぶ灼滅者達の姿。
    「拙者、最上・弦斎と申す者でござる。お主の名はなんと言うでござるか?」
     震える腕を隠すようにして掴みながら、弦斎はのそりと立ち上がる羅刹に名を訊ねた。
    (「これは……武者震いであろうか。……否」)
     彼は今回のメンバーで最も背が高かいのだが、敵は彼よりもその頭1つ以上大きい。
    「名前、名前なぁ……いらねぇだろ。とっとと、戦ろうぜ。お前らだって最初っからその気なんだろ?」
     問われた羅刹は、しばし考えてそう答えを返した。
     その全身に、額の3本の角と同じ漆黒のオーラを纏って。
    「モタモタしてらんねーし、サクッと片付けようぜ!」
     そう言って、キラトはアラームのスイッチを入れる。
     ピっと鳴った小さな電子音が、戦いの始まりを告げた。

    ●名も無き鬼の力
     破邪の光の加護を纏う慧が、下から振り上げられた鬼の拳を受け止め――抑えきれず、巨大に変異した拳に跳ね上げられた。
    「っ……ってぇな、馬鹿力!」
     衝撃でしびれた腕を隠し、体勢を立て直す下でチリンチリンとベルを響かせ、キャリバーが突撃する。
    「でも効かねぇし」
    「ほー。お前も、さっき殴った奴も。丈夫じゃねえか」
     着地と同時に赤く点滅する光を盾に広げ、羅刹を見据えてきた慧の姿に、羅刹が感嘆の声を上げる。
    「そう簡単には倒れないぜ?」
     さっき殴られたキラトは、背中から翼の様に炎を上げて、摩擦の炎を纏った蹴りを叩き込んだ。
     振り上げた足は羅刹の太い腕に阻まれたが、纏う炎はその腕に燃え移る。
    「これは我と八房も、回復に専念せざるを得んな」
     そう呟いた伏姫は、間合いを話したキラトの背に手を置いた。
     オーラが癒しの力に変わり、キラトの身体に残る痛みを消していく。横では、霊犬が慧に癒しの視線を送っている。
     防御を重視した2人でも、共に一撃で体力の半分近くを持っていかれていた。
    「これで少しでもダメージを減らせたらいいなぁ」
     夏奈が小さな光輪を放つが、いくら回復力を高めていても一人では癒しきれない。
    「ふふっ、流石だね。強いよ君」
     笑みを浮かべた唄音は、3人の後ろから一気に間合いを詰めると、凍った二の腕へと藍蝶を真っ直ぐに振り下ろし、斬り裂く。
     心から戦いを楽しむ中でも、作戦を優先し最善を考えるのは忘れない。
    「待ちやが――っ!?」
     すぐに離れる唄音を追おうと、手を伸ばした羅刹の体勢が崩れた。
    「粗暴だな。左手にある仁愛の心を、どこに置き忘れたのやら」
     淡々と忍び寄り、背後から槍で羅刹の足を切った煉夜は、同じく羅刹から距離を取る。
     入れ替わるようにして、弦斎と瑠璃が間合いを詰める。
    「鬼に逢うては鬼を斬り……と、言うが今がその時でござる!」
     弦斎が両手で握り掲げるのは、眼前の敵と同じく、スキュラの犬士であったものの分割存在より得た刀。
     角を目掛けて振り下ろされた白刃は、羅刹の腕に阻まれる。
    「聖なる剣よ、かの者を切り裂け!」
     続いた瑠璃の手にある剣に、見える刃はなかった。
     長い髪を揺らして振るった非物質の刃が、羅刹の精神と鬼の力を斬り裂く。
    「ああ、いいぞ……体が暖まって来てる気がするぜ」
     間合いを取る2人を目で追いながら、羅刹は己の腕の傷を一舐めし、嗤った。

    ●時は刻まれ
    「そんなもんで俺が止まるかよぉ!」
     吼える様に言い放った羅刹が、機銃の掃射に撃たれながら弾丸の中を突っ切って、鬼の拳をキャリバーに振り下ろす。
    「さて、次は――うぉっ!?」
     動きを止め、消え行くキャリバーから視線を外し、次の標的を決めようと振り向いた羅刹の眼前にあったのは――刃と氷。
     唄音の突き込んだ刀身が頬を裂き、煉夜の放った鋭い氷が羅刹の肩を凍らせる。
     続けて、羅刹の体が内からの衝撃に揺れた。
     交錯の一瞬で流し込んだ唄音の魔力が、内側で爆ぜたのだ。その間に唄音は距離を取っている。
    「さっきからちょこまかと……」
     抑える3人と2体以外は、当てては離れるか遠距離攻撃に徹している灼滅者達の戦い方に、羅刹が苛立ちを露わにする。
    「離れりゃ安全とでも思ったか!」
     一瞬で左右の掌に集まった黒が球体となる。煉夜を狙って放たれた黒の前に割り込んだのは、白い影。
    「すまぬな、八房」
     気力で立ち上がったばかりの伏姫の代わりに動いて力尽きた霊犬に、伏姫が小さく呟く。
     そして――。

     ピピピッ。

     タイマーの電子音が響いた。
     残り時間は、余りない。
    「何の音だ。なんか企んでんのか?」
    「何でもねーよ。さっさと終わらせようぜ!」
     前半は音を訝しむ羅刹に、後半は仲間に告げてキラトは地を蹴り、半分を鋼で隠した巨大な刃に炎を纏わせ、羅刹に思いっきり叩き付ける。
    「この程度の炎で終わらせる気かよ」
    「ちっさい火でも、侮ってっと大変な事になるだろ。ほら」
     慧の足元で火花が散る。摩擦の炎を纏った足で、間を開けずに羅刹の顎を蹴り上げる。
    「八房にされた分は返させて貰うぞ」
     2人が飛び退いた所を狙って、伏姫が爆炎の弾丸を撃ち込んだ。
    「そろそろ鬼退治の時間みたいだね~」
     爆ぜた衝撃が氷を砕き、炎が羅刹を包むのを見ながら、夏奈は己を切り替えはじめる。
     治癒力を高める為に向けていた力を、精度を高める方向に。
     炎が消える前に、弦斎が羅刹の前に躍り出た。
     一気に三度重ねられた炎を羅刹の体の奥に刻み付けるように、複雑に形を変えた匕首を振るい斬り刻む。
    「届け、私の歌声よ!」
     距離を取ったまま、瑠璃は背筋を伸ばし神秘的な歌声を凛と響かせる。
     2度程、力任せに地面を叩いた羅刹の行為で散らされた歌声は、今度は確かに届いて羅刹の精神を揺さぶった。
    「ぐっ……」
     回復頻度を減らし攻勢に出た灼滅者達の攻撃で、流石に羅刹もたたらを踏んでよろける。
     しかし、その拳は再び黒を纏っていた。
     それに気付いた煉夜が、羅刹の前に飛び出す。
     オーラを纏った拳の連打を繰り出したのは、同時。拳と拳がぶつかり、弾かれる。
    「んだと!?」
     自身の半分程度の細腕に相殺され、羅刹が驚愕を浮かべる――その頬を、押し切った煉夜の拳が捉えた。

    ●迫る刻限
     決着が付かぬまま、残された時間は減っていく。
     キラトは以前から時間は残酷だと思っていた。時間が経つだけでは、一向に大人になれやしない。
     それでも――何も出来なかったあの時とは、もう違う筈だ。
     後ろの仲間を狙って放たれた風の刃が、飛び出したキラトを斬り裂いたのは、全力で振り下ろした鋼がくぐもった金属音を立てた一瞬後。
     銀のヘアピンが数本弾け飛び、キラトが崩れ落ちる。
    「はっ……しぶとかったが、やっと、落ちやがった……!」
     それを見た羅刹は、肩で息しながら獰猛な笑みを浮かべかけて、引っ込めた。
     まだだ。まだ、倒した筈なのに立っている灼滅者は、まだ2人いる。
     伏姫も慧も既に倒れながら立ち上がった身だ。余力は少ないが、その事実に気圧されているのは羅刹の方だった。
    「背中が隙だらけだよっ!」
     羅刹の戸惑いを見逃さず、高速で背後に回りこんだ唄音は通り過ぎ様に抜いた刀で背中を斬り裂く。
    (「生まれついての主なし、か……」)
     大きく回り込みながら、煉夜は胸中で呟いていた。
     生み出した主、スキュラは既にいない。その事も知らず、武蔵坂の事も知らず、ただ暴れる羅刹。
    (「哀れと感じるべきかもしれんが……暴れるなら狩るだけだ」)
     一気に間合いを詰めてロッドを叩きつけ、すぐに離れる。
    「ぐっ!」
     内で爆ぜた魔力の衝撃で凍った体が砕け、羅刹の膝が崩れかける。
    「流石に弱って来たみたいね」
     それを見た瑠璃は、乾ききった喉を震わせて神秘的な歌声を響かせる。
    「倒したら、ご褒美にもう1個きびだんご貰えないかな~」
     そんな暢気な言葉とは裏腹に、夏奈は光輪を正確に飛ばし羅刹を切り裂く。
    「その声……鬱陶しいんだよ!」
     精神を揺さぶられても敵を見失わなかった羅刹の視線が、瑠璃を捉える。
     飛びかかろうとした羅刹の前に、伏姫が躍り出た。
    「そうはさせぬよ。もう少し、我に付き合って貰うぞ」
    「どけっ!」
     苛立たしげに羅刹が振り回した鬼の拳が伏姫を地に叩き伏せるが、拳の変異が解けたところに、灼滅者達が攻撃を次々と羅刹に叩き込んだ。
    「ぐ、がっ……くそっ。後少しだ。それでお前らなんか!」
     羅刹が予備の犬士に相応しい力を得るまで、あと僅か。
    「だからそう簡単には抜かせねーっての。火力担当より先に落ちるとかディフェンダーの名折れだし」
     拳に黒を纏わせ飛び出した羅刹の前に、今度は慧が飛び出す。
    「慧っ!」
     煉夜の声に答える声はなく、膝を付いた慧もそのまま倒れる。
     羅刹が拳を引くよりも早く、螺旋の捻りを乗せて放たれた煉夜の槍が拳から肘までを一気に貫いた。
    「伝説でも、現実でも、勝つのは鬼ではなく正義なのだよ!」
    「げに恐ろしき鬼よ……だがその角、拙者が斬る!」
     瑠璃が羅刹の精神を斬り、続けて弦斎の振り下ろした刀が羅刹の角の1つを砕いて叩き折る。
     キンッ。
     少し離れて、唄音が刀を鞘に納め、フードを深く被り直す。
    「うん、中々楽しかった。でも、ボク達の――勝ちだよ」
     氷華煌く鞘を疾って抜き放たれた刃は、羅刹の身体に深く吸い込まれあっさりと通り抜けた。
    「……そ……ったれ」
     一瞬遅れて、羅刹の体がぐらりと傾いて仰向けに倒れ込んだ。
     力を失ったその体が、徐々に崩れて消えていく。
     ぱしゃん。
     鬼の消えた川のどこかで、水音がした。

    作者:泰月 重傷:炎谷・キラト(群青アンチノミア・d17777) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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