●揺れる浴衣
三笠は男勝りだった。髪は肩までついたことはないし、スカートを履くのは制服の時だけだ。
小さい頃から剣道で体を鍛えて、強さも内面もそこらの男より凛々しくなった三笠だ。けれど夏に入って少し変わった。
つい最近、引っ越してきた草介が道場に来たのだ。草介は三笠の中で、他の男子とは違った。
周りはみんな小さい時から知っているせいか、三笠を女扱いしない。今まではそれが嬉しかった三笠だ。
でも道場以外では、女の子扱いをしてくれる草介にときめいてしまうのだ。そして剣道仲間と今年も一緒にお祭りに行くことになって、ある考えが浮かんだ。
いつもタンクトップにハーフズボンだった三笠だが、女の子らしい格好をしてみたいと思い始めたんだ。でもいざそうなると、何を着ていいかわからない。
「ん?」
ごろりと、誰もいなくなった道場で身を転がした三笠は瞳を見開いた。そこには何かが漂っている。
浴衣だ。浴衣がふわふわと浮いている。
「綺麗……」
縹色の浴衣は、ところどころに可愛らしい蝶が舞っている。着てみたいという衝動が止まらなくなった瞬間、三笠は一気に服を脱ぎ捨てた。
そして浴衣に袖を通す。
「あぁ、綺麗」
短い髪から衣紋までのうなじのラインが、綺麗に浮き出る。
「そうよ、みんな浴衣を着れば自信を持てるんだわ」
ふふっと、今までの三笠からは想像できないほど艶のある笑みをこぼすのだった。
●自信がなくて……
「みんなはお祭りに行くなら浴衣派かな?」
首を傾げながら、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が灼滅者(スレイヤー)たちにきいた。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、彼女たちエクスブレインの未来予測が必要になる。
フライング浴衣を着用した三笠が、自信のない女の子を見つけるたびに浴衣を着るよう強要し始めたのだ。断るものなら、血の制裁が待っている。
しかし自信がない女の子というのは、割と存在するもので……、気づいたら六人の浴衣娘が三笠の配下となっていた。みんなにはこのフライング浴衣の灼滅をお願いしたい。
「浴衣を着ていくのもいいと思うんだけどね……」
少し考える様に、まりんが口を開いた。自信のない女の子のふりをして、三笠からこちらに来てもらうという方法がある。
そこで勧められるがままに浴衣を着用して褒めまくれば、三笠たちは油断してくれるだろう。もちろん、浴衣を着用していって、浴衣を褒めるのも効果がある。
油断させることができれば、有利に戦うことができるだろう。
「三笠さんたちは、お祭りに向かう道にいるよ」
地図をガサガサと取り出したまりんが、一箇所を指差す。どうやら、人通りが少ない道のようだ。
車二台がすれ違うのがやっとの道幅だ。三笠たちとどう対峙するかは、みんなにお任せする。
三笠はサウンドソルジャーのサイキックと日本刀を使ってくる。配下の六人は、クルセイドソードを使ってくる。
灼滅されるのは三笠たちではなく、着用しているフライング浴衣となるため遠慮なく戦って頂けたらと思う。しかし、灼滅後は着用中の記憶がない状態で目覚める。
目覚めたら何も着ていないということになってしまうので、そこのフォローもお願いしたい。
「可能なら、お祭りに行かせてあげたいよね」
早く灼滅することが出来れば、草介がいるお祭りに三笠が行くことができる。そしてみんながお祭りを楽しむことも可能だろう。
参加者 | |
---|---|
桃地・羅生丸(暴獣・d05045) |
比良坂・逢真(スピニングホイール・d12994) |
神西・煌希(戴天の煌・d16768) |
妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678) |
狼久保・惟元(白の守人・d27459) |
頭露邪・紅姫(惰眠を貪る紅い月・d27949) |
饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385) |
奏森・雨(隅っこ大好き・d29037) |
●夏の風物詩
「日本の夏祭りに浴衣は風物詩っつか、つきもんだよな」
自らも浴衣を纏った神西・煌希(戴天の煌・d16768)が呟いた。短く切り揃えられた柔らかな栗色の髪が、風で微かに揺れている。
そして天藍石のような綺麗な瞳で、女性陣が待機している場所を見る。どこか愉快そうに眇められた瞳と同じ様に、口元はにまりとした笑みを浮かべている。
「気になる男の為に可愛らしい格好をしたいとか、微笑ましい乙女心だな」
背の高い煌希より、さらに高い桃地・羅生丸(暴獣・d05045)が白い歯を輝かせながら笑みを作った。
「気になるやつと一緒に出掛けるとありゃ、少しでもかわいい格好をしてーと思うのも当たり前だよな」
羅生丸の言葉に、煌希が納得と言うように微かに頷く。
「俺達が恋のキューピッドになろうじゃねえか」
言っていることはものすごく格好いいのだが、何か不穏な雰囲気が漂う。一見硬派なスキンヘッドに見えるが、女の子大好きな羅生丸なのだった。
変な下心なんてこれっぽちもないと言っているが、今か今かと三笠たちを待つ姿では信憑性が乏しい。そんな羅生丸が見つめている先で、女性陣は三笠たちを待っているのだった。
「から揚げとー浅漬けきゅうりとー、あーフランクフルトもっ!」
瞳を輝かせた妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)が祭りに思いを馳せて声を上げた。そしてすぐに悩むような表情を見せる。
「金魚もって帰ったら怒るかなぁ……?」
本当は浴衣を着てきたかった和平だが、持っていなかったのだ。願わくば浴衣を持って帰れたら……そんなことを考えているうちに、足音が耳に入る。
浴衣を着た七人の少女たちが歩いて来た。
「きれいな浴衣、いいな……」
私も浴衣でお祭り行きたかったなと奏森・雨(隅っこ大好き・d29037)が、わざと聞こえるように呟く。そして自信なさそうに瞳を伏せた。
「あーほんと浴衣かわいー、私も浴衣着たかったー」
雨に調子を合わせて、和平も声を上げる。
「でも浴衣着崩れしちゃって綺麗に着れないからなぁ」
そして自らの胸に視線を落とした。胸が大きいせいで、和服が上手く着られないのだ。
「すごい身体にフィットする浴衣無いかなぁー」
残念そうに呟く和平から、頭露邪・紅姫(惰眠を貪る紅い月・d27949)が離れる。そして歩いてきた三笠たちの前で足を止めた。
「へぇ、お前さんいい浴衣着てる? 確かにすごく似合ってるよ?」
和平と雨の言葉を確かめるように、紅姫が三笠たちを見つめる。
「ああ、其処まで着こなせるなんてたいしたもんだ」
自分ではうまく出来ないから羨ましいと紅姫が言うと、少女たちはお互いに視線を合わせた。
「これを着たらいいわ」
ごそごそと持っていた紙袋から、三笠が浴衣を取り出す。少し離れた場所にいた和平と雨にも、三笠は浴衣を差し出してくる。
「え……? これ着ていいの……?」
それでも自信なさげに受け取る雨に、三笠が満面の笑みを見せた。
「もちろんよ! きっと自信を持てるようになるわ」
フライング浴衣を着る前のボーイッシュな喋り方はすっかり消えて、女性らしい喋り方をする三笠が頷いてみせる。そして配下となった少女たちに目配せする。
すぐに四人が布を広げて三人を囲む。そして三笠と二人が、浴衣を着付けていく。
「きれい、とっても……」
雨が感嘆の声を上げるのと同時に、隠すように張られた布が綺麗に畳まれる。そこには十人の浴衣美人が立っていた。
「その浴衣とても可愛いね、蝶の柄が君に似合ってるよ」
たまたま通りかかった風を装った比良坂・逢真(スピニングホイール・d12994)が、柔和な表情を浮かべて三笠に声をかけた。普通ならナンパかと警戒されるところだが、人当たりの良さそうな逢真だとそうならないから不思議だ。
三笠が嬉しそうに微笑むのと同時に、さらに声がかけられる。
「すごく魅力的です」
くせっ毛の髪を微かに揺らして微笑んだ狼久保・惟元(白の守人・d27459)が、東北訛りのイントネーションで賛辞を送る。そんな惟元に、思わず三笠たちがぼーっとしてしまうのも仕方ない。
惟元は美形なのだ。
「季節感を感じさせる色合い、柄……これは日本ならではですからね」
さらに笑みを深めた惟元にうっとりと瞳を細める。そう、これも浴衣を着ていたからこそ。
「普段がどうか分からないけど綺麗ですよ?」
無邪気な笑顔で饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)が顔を覗かせる。これは褒め言葉と受け取っていいのかどうか……。
しかし三笠たちは浴衣が褒められたことに気を良くして笑顔を見せる。
「女らしくてかわいいじゃねえか」
さらにとどめのように現れた煌希が、微かに八重歯を覗かせて微笑む。浴衣って何て素晴らしいものなのか!
●油断大敵
褒められることで、警戒心もなくなり完全に三笠たちが油断していく。賑やかな集団を見つめながら、羅生丸が肩を落としていた。
浴衣を着用するということは、着ている服を脱ぐということだ。やましい気持ちなんてない! ただいつ戦闘になってもいいように見守っているだけだ。
そう思っていたのに……。まさかの布! ほんのちょびっとさえも見られなかった。
完璧な布のバリケード……伸びていた鼻の下も縮むというものだ。そんな羅生丸の表情が変わる。
早くフライング浴衣を灼滅して、三笠をお祭りに行かせてあげたいと思う雨が動いたのだ。
「俺たちも今から祭りに行く処なんだ。君たちも一緒にどうかな?」
誘う逢真に視線を集まっているところに、雨が死の力を宿した断罪の刃を出現させた。
「きゃぁあ!」
突然の攻撃に、浴衣の少女たちが悲鳴を上げる。慌てて振り向いた少女たちの瞳が見開く。
槍を回転させながら、紅姫が突っ込んだのだ。確かに浴衣は本当に綺麗で魅力的だ。
「だがね……そうやって周りを魅了していい気になってるようじゃ、まだまだあんたは着られてる側ってことさ」
切り裂かれた浴衣に悲痛な叫び声が上がる。
「何てひどいことを!」
起きていることを理解するのに時間がかかるのか、戸惑っている配下たちに和平が結界を構築していく。
「そう、浴衣だけが魅力を引き出すのではありません」
惟元の言葉に振り返ったときには、もう遅かった。片腕を半獣化させた惟元が配下の浴衣に迫る。
こげ茶の毛色をした片腕が浴衣を斬り裂き、倒す。女性の服を裂くという行為に、何とも言えない罪悪感が押し寄せてくる。
しかしこれだけは確かだ。
「着る人に魅力があるからこそ、綺麗なんです」
きっぱりと告げた惟元に三笠たちの瞳が見開く。
「違うわ! 浴衣を着れば自信も持てるし、美しくしてくれるの!」
さっきまであんなに褒めてくれたのに、一体どういうことなのか。倒れた仲間におどおどとする配下を煌希がとらえた。
破邪の白光を放つ強烈な斬撃を加えるのと同時に、すっとしたシルエットのライドキャリバーが突っ込んでいく。無駄のない美しいフォルムのライドキャリバーは、まさにかっこいい系の正統派と言える。
さらに逢真が剣を非物質化させて攻撃する。浴衣が破れてまた一人、配下が倒れた。
「空飛ぶ服……もう何でもアリだよねー」
褒めることに集中していた樹斉が改めてフライング浴衣を見て呟いてから、その姿を半獣に変えた。そして樹斉の神秘的な歌声が流れだし、配下を苦しめる。
「許しませんわ!」
さっと日本刀を構えた三笠に合わせて、残っていた配下の四人が構える。そして同時に悲鳴が上がった。
紅姫の前に飛び出した羅生丸が掌に出現させていた激し炎の奔流を放ったのだ。そう、かわいこちゃんのピンチに颯爽と現れるのがイケメンの役目。
「出来りゃあその柔肌を傷つけたくねえんで、大人しく眠ってもらうぜ」
にっと笑った羅生丸に、三笠たちがさっと身を翻して間合いを取るのだった。
●破れる浴衣
「浴衣が可愛いって言ってたじゃない!」
言葉と同時に迫った攻撃を、和平が身を反らして避ける。そして冷たい炎を出現させる。
「可愛いけどー、浴衣に着られるんじゃちょっと違うカナ?」
微かに首を傾げた後、炎を放つ。さらに羅生丸が無敵の振り下ろしで、斬り裂いた。
浴衣が破けて、その隙間からちらりと少女の柔肌が覗く。少女たちの柔肌が、羅生丸のハートを滾らせるのだ。
さらには全ての浴衣をその身から破かれた少女が倒れていく。
「こんな浴衣は纏ってちゃいけねえ、その呪縛から解き放ってやるぜ!」
もちろん目的は灼滅だ。決して裸が見たいなんて、ピュアな心を持っているはずの羅生丸は微塵も思っていない。思っていないはずである。
バタバタと倒れていく仲間に、三笠が唇を噛む。
「邪魔なんてさせないわ……」
流れるような動きで前に出た三笠が、煌希に迫る。瞬きするほどの速さで目の前に迫った三笠が、一瞬で抜刀した。
避けることが出来なかった煌希の体が、衝撃に揺れる。すぐに樹斉がその歌声で煌希を癒していく。
「最後の一人というか、一着かな?」
最後に残った配下に向かって、逢真が剣を非物質化させて攻撃する。
「あっ……!」
浴衣が切り裂かれた少女が声を上げる。そして三笠になのか浴衣になのか……救いを求めるように手を伸ばして地面に倒れた。
「そんな!」
一人残った三笠から悲痛な声が漏れる。そんな三笠に、螺旋の如き捻りを加えた紅姫が迫った。
はっと顔を上げた三笠が寸前で身を翻す。アクロバティックな動きを見せる紅姫の胸が微かに揺れる。
同時に朱色の狼の耳と尻尾が不穏げに揺れた。身を翻した三笠が地面に着地する直前に、雨が魔力の光線を放つ。
避けることが出来ない三笠の浴衣が裂ける。
「嫌! 何てことするのっ!?」
三笠にはこの浴衣が必要なのだろう。動揺から怒りへと瞳が変化する。
「大事なのは浴衣ではないでしょう」
静かに言った惟元が氷のつららで浴衣を貫くのだった。
●恋せよ乙女
「この浴衣があれば上手くいく、上手くいくの!」
何よりこの浴衣が大事なのだ。邪魔する者も、浴衣を切り裂く者も許せない。
突っ込んできたライドキャリバーを、飛び上がることで避けた三笠がそのまま鋭い一閃を放つ。冴え冴えとした月の如き衝撃が、前にいた灼滅者たちを襲う。
宿敵との戦いでは、熱くなりがちの雨だ。けれどだからこそ仲間の様子を見て気をつけるようにしている。
すぐに歌声を響かせて、仲間の回復に集中する。樹斉もまた、傷を回復するために歌声を響かせた。
「怪我の心配しちゃ戦はできねえぜ?」
破れた浴衣を気にしてばかりいる三笠に、煌希が影を走らせる。先端を鋭い刃に変えた影が、さらに三笠の浴衣を斬り裂く。
「ん!」
「可愛いものは自分で身につけるようにしなきゃねっ」
さらに傷つけられた浴衣を見て、息を飲んだ三笠に和平が声をかける。着られるのではなく、自分を可愛く見せるものを選んで身につけるべきなのだ。
和平の言葉にはっと顔を上げた時には、冷たい炎がその身を焼いていた。
「さて、ここらで終わりにしてやるかね……」
駆け出した紅姫に合わせて、逢真と惟元が動いた。再び氷のつららを出現させた惟元が、三笠に向かって放つ。
避けようとした三笠が、後方に飛ぼうとする。しかしその動きを見越したように、逢真が足元を狙って杭を撃ち出す。
左手から放たれた杭は、三笠の足元に撃ち込まれ振動波を発生させる。ぐらついた三笠を氷のつららが貫いていく。
衝撃に息を飲んだ三笠に、紅姫が鬼気迫る斬撃をお見舞いする。衝撃に瞳を開いた三笠の目の前に、羅生丸が迫っていた。
これが最後の一撃だ。思わず頭の中で浴衣を脱がす! と思って、頭の中で首を振る。
「じゃなくて灼滅させるぜ!」
避けようとする三笠の体をおもむろに掴んで、危険な角度で投げ飛ばした。地面に衝突するのと同時に、浴衣が破けて落ちる。
「ちょっと男子はあっちむいててよー」
瞬時に和平が、男性陣から少女たちの体を隠すように動く。さっと後ろを向いた逢真が、爽やかな風を吹かせて三笠たちが目覚めないようにする。
六人の少女たちには、和平が用意してきたワンピースを着せていく。三笠には雨が用意してきた浴衣を着せるのだった。
きっと羅生丸も着替えをこっそり覗いたりなんてしていない……していないはず……。三人で必死に着せ終わると、男性陣に大丈夫と声をかける。
風を吹かせるのを逢真が止めて、しばらくすると三笠たちは目を覚ました。
「あの、大丈夫……?」
目を開けた少女たちに、雨が声をかける。実はフォローはあまり得意じゃない雨だ。
演技であれば自然に喋れるのだが、人見知りのせいか積極的に喋ることは少ない。
「たまたま通りがかったら倒れていた。貧血かもしれねえが気を付けてな」
煌希が用意しておいた言葉を少女たちに告げる。ワンピースを着た少女たちは何があったのか分からず困惑しているのは明らかだ。
「ともかく家に帰った方がいいと思うよ」
柔和な表情で優しく逢真が言うと、お互いに顔を見合わせて歩き始める。灼滅されるのは浴衣だけということで、しっかりした足取りで去っていく。
「違う浴衣?」
一方、なぜか見たことのない浴衣を身に纏った三笠が首を傾げた。
「とても綺麗ですね」
座り込んでいる三笠に微笑みながら惟元が手を差し出す。いきなりの女の子扱いに、三笠が戸惑う。
道場仲間なら、さっさと立てよとバカにされるところだ。なかなか手を握れない三笠に、惟元が手をさらに伸ばしてスマートに立ち上がらせる。
「折角の浴衣なのですから、お祭りを楽しんでみてはいかがでしょうか?」
言われてお祭りがあることを三笠が思い出す。
「女らしさと夏らしさを演出するいいアイテムだと思うぜ、浴衣」
さらに煌希が、男は気になるやつのいつもと違う服装にときめくからなあと独り言のように呟く。
「お知り合いにとっても普段見れない姿は新鮮なはずです」
優しく頷いた惟元に意を決したように三笠が二、三歩前に出て止まる。
「ありがとう!」
お礼を言った三笠が前だけを見て歩き出す。
「林檎飴とか楽しみ♪ 皆も一緒に行かない?」
浴衣を着た樹斉が三笠の姿が見えなくなると声を上げた。実はお祭りを楽しんで帰りたいが言い出せずにいた雨がこくこくと頷く。
表情は変わらないが、雰囲気で楽しみにしているのがわかる。
「みんなで楽しもうよ!」
嬉しそうに声を上げた和平が我先にとお祭りに向かう。
「何食べようかな」
呟いた逢真の声が、楽しそうな笑い声にかき消されていくのだった。
作者:奏蛍 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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