前田・骨平(牛乳と牧場を愛する者・d20618)は、こんな噂を耳にした。
『空を飛ぶ牛肉の都市伝説が存在する』と……。
都市伝説が確認されたのは、とある村。
「お、おらは見たんだ。空を飛ぶ牛肉を……」
「いや、違う。あれはマンタだ!」
「何を言うだか、マンタは空を飛ばねえ! あれは霜降りの牛肉だ」
「だったら、牛肉だって空を飛ばねーべさ!」
「んじゃ、間を取って空飛ぶ牛肉柄のマンタって事で」
「んだんだ」
という事になっているらしく、今では村の年寄り達が拝むほど。
だが、その噂を聞き付けてハンター達が村にやってきたため、村はピリピリムード!
ハンター達は都市伝説を新種の生物だと思い込み、捕獲するために様々な罠を仕掛けており、その罠に村人達が引っ掛かり、大怪我を負っているようだ。
しかも、村に医者はおらず、隣町まで行かねばならず、事態は深刻。
それでも、都市伝説を捕獲する事が出来ず、ハンター達がイラついているため、トラップも次第に危険なものに……。
それが原因で怪我人も続出!
これには村人達もブチ切れて、『村から出ていけ!』と騒ぎ立てている。
どちらにしても、都市伝説が存在している限り、 この騒動が収まる事はない。
都市伝説自体はそれほど強くないため、村人とハンターに気を付けて行動してほしい。
参加者 | |
---|---|
九条・風(紅風・d00691) |
細氷・六華(凍土高原・d01038) |
鴻上・巧(造られし闇・d02823) |
水無瀬・楸(蒼黒の片翼・d05569) |
分福茶・猯(カチカチ山の化け狸・d13504) |
朔夜・碧月(ほしのしるべ・d14780) |
ハノン・ミラー(ダメな研究所のダメな生物兵器・d17118) |
富山・良太(ほんのーじのへん・d18057) |
●空飛ぶ牛肉マンタ教
「誰だよ、最初にこんな噂流した奴は……。なんにせよ、暴走した思考回路もった奴って面倒くせぇな」
水無瀬・楸(蒼黒の片翼・d05569)は呆れた様子で、仲間達と共に都市伝説が確認された村に向かっていた。
村人達は都市伝説を『災いの前触れ』、『神様の遣い』等といった感じで意見が二分していたらしく、とりあえず刺激しない事で話が纏まっていたようである。
だが、その噂を聞き付けたハンター達が、都市伝説捕獲のためにトラップを仕掛けたため、沢山の村人が怪我をしてトラブルが絶えないようだ。
「まあ、都市伝説だから腐らないだろうけど、霜降り牛肉が飛んでるのって、どうなの? ……と言うか、ありなの……?」
朔夜・碧月(ほしのしるべ・d14780)が、牛柄のワンピースに、牛肉っぽい柄のニーハイ姿で疑問を口にした。
それ以前に、食べる事が出来るかどうか、怪しいところ。
そもそも、都市伝説は噂によって生み出された存在。
村人達が美味しいと噂しているのならまだしも、食べようとも考えていないのだから、美味しい可能性は限りなくゼロに近かった。
「つーか、なんで牛肉柄にしたのか……。これ、ただのグロじゃね? 生肉が空を飛んでるだけじゃね?」
九条・風(紅風・d00691)が、すかさずツッコミを入れる。
みんな思っていた事だが、風は黙っている事が出来なかった。
「なんで、おめーらは!」
それに気づいた村人達が、クワを構えて迫ってきた。
おそらく、風達をハンターか何かだと勘違いしているのだろう。
あからさまに敵意を剥き出しにしており、妙な動きをすれば問答無用で飛び掛かってくる勢いであった。
「ええい、この方を何方と心得る。空飛ぶ牛肉・マンタ教の教祖、碧月様じゃぞ!」
分福茶・猯(カチカチ山の化け狸・d13504)が、村人達の行く手を阻む。
(「空飛ぶ牛肉マンタ教……色々とツッコミどころがあるがまあいい」)
鴻上・巧(造られし闇・d02823)が、頭を抱えた。
(「あやしい、すごく怪しい」)
細氷・六華(凍土高原・d01038)も、あえて口にしなかったが、村人達は警戒したまま。
おそらく、ハンター達が現れる前であれば、ここまで警戒する事もなかっただろう。
だが、ハンター達によって、散々ひどい目に遭わされてきたため、ヨソ者というだけで警戒心をあらわにしてしまうようである。
「お聞きなさい。本来ならば、牛肉もマンタも空を飛びません。飛ぶはずがないのです。しかし、現実として今、あれは空を飛んでいる……それは何故か! 私がこの力を持って飛ばしているからに他ならないのです!」
そんな空気を打ち砕く勢いで、碧月が村人達に語り掛けていく。
「流石は教祖様……この分福茶、目から鱗が落ちる思いですぞ」
猯も感動のあまり目をキラキラさせているが、村人達はすっかり冷めた眼差し。
それだけ、ハンターによる被害が大きかったためだろう。
これ以上、災いを村に持ち込まないという考えから、クワを構えてジリジリと迫ってきた。
「おめーら、何か勘違いしているようだが、ここには駐在があってないようなもの。みんなで口裏を合わせれば、おめーらを『いなかった事』に出来るんだど!」
しかも、村人達は物騒な事を口にしており、色々な意味でヤル気満々。
今までハンター達に好き勝手やられても我慢していたのだから、今度はやり返したってバチは当たらねー的な考えで、怖いものなしだった。
「無礼な! 教祖様が仰った事が間違っておる筈ないじゃろう」
そんな空気を察したのか、猯がラブフェロモンを使う。
「た、確かに……そうかも知れねえだなぁ」
途端に村人達に態度が変わり、猯達に対する警戒を解いた。
「牛肉マンタ……、肉マンを拝むとなんか良い事が起こります、はい」
ハノン・ミラー(ダメな研究所のダメな生物兵器・d17118)が、空を見上げてなむなむと拝む。
「た、大変だぁ~、ハンターの奴が、マンタ様ぉ!」
その途端、森の中から村人が現れ、倒れ込むようにして、村の奥を指差した。
「おそらく、森の中はハンター達が仕掛けた罠で、マトモには進めないはず。ここはTRPGで鍛えた知識を活かす時ですね」
そう言って富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)が、10フィートの棒で地面を叩き始めた。
●TRPGの必需品
10フィートの棒は大活躍であった。
棒で地面を叩くたびに、トラップが発動し、ほとんど無敵状態、怖いものなしであった。
だが、ハンター達の中にはその事を踏まえた上で、あえてトラップの発動場所を10フィート後方に仕掛け、トラバサミや竹槍トラップを発動させる事もあったため、前半の楽々スルー状態だったのに比べて、後半は苦戦、苦戦、大苦戦。
そうしているうちに、いつの間にか、ハンター達に囲まれていた。
「なんだ、テメエらは!」
ハンター達は猟銃を構えると、イラついた様子で、良太達に問いかけた。
「あー、はいはい、一般人は下がってー。大人しく引っ込んでねェ。でないと、天罰っぽいなんかが下るかもしんねェぜー」
風がけだるそうに呟いた。
「なんだと、ゴラァ!」
すぐさま、ハンター達が猟銃で一斉に狙いを定めた。
「空飛ぶマンタは神聖なものだから、捕まえようとしてはいけない」
猯が再びラブフェロモンを使う。
その影響でハンター達が、ほんの一瞬だけ動揺した。
「しかも、あのマンタは、私の力によって空を飛んでいるのです。その証拠をいまお見せしましょう」
碧月が思わせぶりの口調で、空飛ぶ箒で宙を舞う。
「間違いない、あれはトリックだ!」
ハンターのひとりが、慌てた様子で大声を上げた。
もちろん、根拠はない。根拠はないが、ここで何か言っておかねば、取り返しのつかない事態に陥ってしまうような気持ちになっているようだ。
「今までのことを悔い改めると悪い事は起こりません、はい。ついでに仕掛けた罠を解除してくださると幸いです、はい。必要ならわたしが罠にかかりにいきましょう、はい」
すかさず、ハノンがハンター達の説得を試みる。
成功するかどうかよりも、ハンター達に考える暇を与えないという事を優先して。
「ふっ、ふはははは……。我らは神をも恐れぬトレジャーハンター! お宝をゲットするためには、天に唾だって吐くのさ」
ハンターのひとりが粋がった様子で、クロスボウを構えた。
それが文字通り神をも恐れぬ行為であり、吐き捨てた唾が自分の顔にかかる事など夢にも思っていないようである。
「あまり手を出したくはないのですが……、気絶していてくださいね?」
それと同時に六華が王者の風を使い、ハンター達に当て身を放っていく。
おそらく、彼ら退けないのだ。
ここまで掛けた費用と時間を無駄にする事が出来ないために……!
「そろそろ、ハンターにはお帰り願おうかなー」
楸が深い溜息を漏らして、殺界形成を発動させる。
それに合わせて良太が改心の光を使い、ハンター達の心を揺さぶった。
「こ、心が洗われるようだ」
ハンター達が涙を流して崩れ落ちる。
度重なる恐怖とプレッシャー、その中で感じた暖かい光。
そのすべてが入り混じって、ハンター達は……解放された!
「あ、あれは……空飛ぶマンタ……」
巧が都市伝説の存在に気づいて、スレイヤーカードを構えた。
ハンター達と戦っていたせいで、油断していたせいかも知れない。
「これってぶっちゃけ皮膚が剥がれて、牛肉みたいになってんのか? それとも、牛肉みたいな色してんのか……? どっちにしろ、クソまずそうな事には変わりねェな……」
風が都市伝説を眺めて、嫌悪感をあらわにした。
それに腹を立てたのか、都市伝説が風達を威嚇するようにして、上空を飛び回った。
●牛肉マンタ
「それにしても、間近で見ると、より一層何て言うか……何とも言えないというか……色々アレだね」
碧月がげんなりとした表情を浮かべつつ、都市伝説に視線を送る。
都市伝説は無駄に生々しく、ハッキリ言ってしまえば、グロ系。
そのため、『美味しそう』という気持ちよりも先に、『気持ち悪い』という言葉が脳裏に過った。
「こりゃあ、焼いても食えねえな」
風が攻撃をライドキャリバーのサラマンダーと連携を取りつつ、深い溜息を漏らす。
何とかして都市伝説を食べる方法を考えてみたが、煮ても焼いても美味しそうには思えなかった。
もちろん、実際に食べた訳ではないので、予想に反する結果が出るかも知れないが、わざわざ危険を冒してまで食べる代物ではない。
「取り敢えず撃ち落とそっか」
楸が都市伝説めがけて、妖冷弾を撃ち込んだ。
それに合わせて、猯がオーラキャノンを撃ち込み、都市伝説を追い詰めていく。
都市伝説はフラフラとしつつ、何とかして逃げようとしたが、そこには良太が先回りしており、袋の鼠状態になっていた。
「誰が考えたか知りませんが、都市伝説は灼滅します」
すぐさま、良太がジャッジメントレイを放ち、都市伝説を地面に叩き落とす。
それでも、都市伝説はジタバタと暴れ、再び空に飛び立とうとした。
「大人しくしてくださいっと」
その事に気付いた巧が、都市伝説にペトロカースを仕掛ける。
都市伝説が石化する事はなかったが、そのままフラフラと飛び立ち、バランスを崩して、近くの木にぶつかった。
この様子では飛ぶために必要な体力が残っておらず、既に虫の息という事なのだろう。
「牛肉、めっちゃ食べたいでも、濡れた段ボールみたいな味だったら嫌だな」
ハノンが一気に間合いを詰め、DESアシッドを放つ。
その一撃を食らった都市伝説がビクビクと体を震わせ、腐った生肉のような臭いを辺りに漂わせた。
しかも、見た目に反して、中はグチャグチャ。
緑色のカビらしきものまで生えており、真っ白な妖精さん達の棲み家と化していた。
「やはり、腐っていたようですね」
六華が諦めた様子で、都市伝説に神霊剣を炸裂させた。
都市伝説は断末魔をあげると、ブクブクと泡立ち、異様な臭いだけを残して、跡形もなく消え去った。
「やれやれ、何とか倒す事が出来たようじゃのう」
猯が口元を押さえて、都市伝説がいた場所を眺める。
これで争いの種がなくなったため、ハンター達がこの辺りを荒らす事はないだろう。
村人達にとっては悲しい出来事かも知れないが、所詮は幻、噂によって作り出されたもの。
時が経てば人々の記憶からも消え去り、話題にも上がらなくなってしまう事だろう。
それでも、猯は思うのだった。
マンタ教はあり得ないと。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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