真夏の誕生日~放課後、家庭科室で突然に

    作者:桐蔭衣央

     放課後の家庭科室。
     功刀・真夏(肝っ玉お姉さん・dn0132)は先生に借りた鍵でそっと入り込んだ。もちろん誰もいない。
     真夏は慣れた動作でヤカンを出して水道水を入れ火にかけると、自前のティーセットを準備する。すこし悩んで、様々な茶葉の中からダージリンとアールグレイを選び、2:1くらいの割合で温めたポットに入れた。
     沸騰したお湯を高い位置からポットに注ぎ、4分ほど置いてから、氷をいっぱいにしたグラスに紅茶を注いだ。
     馥郁とした、良い香りが漂う。綺麗な色のアイスティーをたたえたグラスを両手に包むようにして、真夏はほっと息をついた。

    (帰り道に買い物をして、家に帰ったら洗濯機を回す。その間に家族の食事の用意をして、そのあとお風呂に入って、部屋に戻って宿題……)
     学生で主婦で、さらに灼滅者である彼女のめまぐるしい日常。
     別にそれが嫌なわけじゃないが、放課後の家庭科室でのひと時は、真夏にとってやすらげる貴重な時間だ。それをわかっているから、先生も彼女に鍵を貸してくれていた。

     夕飯は何にしようかな。
     窓の外をぼんやり眺めながら、アイスティーの香りを楽しむ。
    「あ」
     真夏は気づいて、声をあげた。
    「今日、私の誕生日だ」
     忘れていた。
    「まあ、いっか」

     まあいっか、と言いつつ、ちょっと寂しい気もする。自分で自分の誕生日を忘れておいてなんだけど。しかもこれ、毎年の事だけど。
     倹約家の真夏のことだから、きっとケーキなんて贅沢品は買わない。夕飯もおかずが一品増えるぐらいのもの。

    (うーん、でも、誕生日なんだからちょっと嬉しいことがあるといいな)
     その時、家庭科室の外から足音と話し声がした。
     真夏は目の前のティーセットをしばし見つめ、立ち上がってドアに近づいた。

     そして思い切ってドアを開け、外にいた人物――そう、君に声をかけた。

    「突然ごめん。あのね、今日わたしの誕生日なんだけど、忘れてて。1人じゃちょっとわびしいから、一緒にお茶してくれないかしら。いい茶葉があるんだ。アイスティーにする? それともホットでミルク?」
     真夏は明るく笑って、君を招き入れる。
    「ついでにおめでとうって言ってくれると、とっても嬉しいな!」


    ■リプレイ


     真夏の誘いに乗ったのは家庭科室の前にいた10人ほどだった。
    「え? 今日真夏さんの誕生日だったですか?」
     西園寺・めりる(お花の道化師・d24319)は大きな瞳をさらに大きくしてびっくり顔をした。かと思うと、
    「ちょっと待っててくださいですー!」
     くるっと身を翻して走り出した。
    (たしか校庭にヒマワリがいっぱい咲いていたです……。用務員さんに断わって花束作ってくるですー)
    「あ、めりるちゃんったら」
     気を遣わなくてもいいのに、と指を上げかけたが、身を翻す際のめりるの笑顔が愛らしかったので、真夏も笑って「元気ねぇ」と後姿を見送ってしまった。
     
     涼しげに纏められた黒髪の乙女、羽守・藤乃(君影の守・d03430)が家庭科室に入ってきた。
    「まぁ……功刀先輩、お誕生日おめでとうございます! すみません、私、存じ上げなくて何の用意もしていないのですけれど」
     藤乃と真夏は以前、横浜中華街怪人の依頼を一緒にこなしたことがあるのだった。
    「折角ですから、お呼ばれ致しますわ。ではアイスティーをお願い致します」
    「おっけー。みんなもどうぞ座って?」

     椅子を示す真夏に、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)が包みを差し出した。
    「真夏さん、お誕生日おめでとうございます。プレゼントは持ち合わせがないのでお茶請けにお煎餅をどうぞ」
    「わー、お煎餅だありがとう! 突然お茶に誘ったのにお茶請けまで!」
     真夏が右手にポットを持ってくるくる回りながら、左手の氷をいっぱいに入れたピッチャーに高い位置から紅茶を注ぐ。無駄に大げさで鮮やかな手さばきは喜びの表現らしい。
     氷で急速に冷やされた紅茶は綺麗に透き通った紅色。人数分に注がれたグラスの周りには涼やかな水滴が付いていた。ちなみにこのアイスティーはアールグレイとセイロンのブレンドである。

    「外を歩いてきて汗ばんだ身にアイスティーは何とも魅力的……」
     椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)は東京下町の実家から帰宅中、ちょっと学校へ寄り、用を済ませて帰ろうとしたところを真夏に呼び止められた初対面だ。
    「わ、美味しい…」
     お茶を口に含み、紗里亜は花のように微笑む。ベルガモットの香りが優雅でありながら爽快だ。喉を通る冷たさもうれしい。香りと味を一緒に含めば、正に幸せ気分。
    「拘る人の淹れる紅茶は本当に違いますね」
    「ありがと。アールグレイはホットだと香りが強かったりするんだけど、アイスだと癖になるのよねー」
     真夏はゆったり笑って、残ったヤカンの湯を製氷皿に注いで冷凍庫にしまった。こうすると透明できれいな氷ができるのだ。お喋りをしながらも手を動かすのが主婦の習性か。
    「勉強に家事に灼滅ですか……。私もここに来る前は弟妹の世話や家事をしてましたから、両立の大変さはわかります」
    「あ、弟妹いるんだー。うち弟でね、もう腕白で大変! でも可愛いのよね」
     紗里亜と真夏はひとしきり「両立あるある」話で盛り上がった。


    「お裾分けで悪いが、誕生日おめでとう真夏」
     野菜を抱えてやってきたのは遠野・潮(悪喰・d10447)と西園寺・夜宵(神の名を利した断罪・d28267)。
     潮が家庭菜園から持ち込んだナスとトマトを見せると、夜宵が買い物袋を掲げた。
    「今回作るのは、夏野菜カレー……。買い物してきたのは……ジャガイモ、人参、玉ねぎ……パイナップルやマンゴー、ミンチ……これで合ってる?」
    「あれ? パイナップルとマンゴー?」
     真夏は首を傾げた。しかしカレーを作ってくれるという気持ちが嬉しいし、なにより見上げて来る夜宵の瞳と視線がかち合ってしまって。
    「うん……! いいんじゃないかな! フルーツカレーってあったよね? カレーは強いから大丈夫大丈夫!」
     甘すぎたら私が全部食べさせてイタダキマス! と真夏は拳を握る。年下に対してはトロピカルフルーツより甘い真夏のせいで、カレーが変な方向に行きだした。
    「いや、フルーツはフルーツで、デザートにしよう。学祭の余りモンの大量の漬物も添えて」
     ナイスフォロー潮さん。そしてありがとうBlack Garden。漬物はおいしくいただきます。
     結局カレーはナス、トマト、パプリカ、ブロッコリーの夏野菜と鶏肉を中心にしたものにすることにして、潮がてきぱきと仕込みを始める。
    「料理はわからないけれど……とにかくちゃんとしたの作る手伝いしなくちゃ!」
     夜宵がまな板の上のナスに対して、包丁を振りかぶった! クリティカル! ナスは見事に真っ二つ。ほうちょう も まっぷたつ に なった!
     宙を飛んできたナスをキャッチして、真夏がうんうんとうなずいた。
    「カレーは具大きめの野菜ゴロゴロがすきだわよー」

     あさってな感想を漏らす真夏の傍に、神宮・三月(悪鬼邪神の宿りし天真爛漫少女・d28647)が、つつつ、と肩を寄せる。
    「真夏さん、お誕生日、おめでとう!」
     そう言って差し出した箱の中身が、パアアァっと光り輝いたように、真夏には見えた。
    「新品の包丁!? 三月ちゃんてばエスパー!?」
     たったいま包丁がまっぷたつになった矢先のこのプレゼントに、真夏が驚愕する。
    「特に高級品じゃなくて、ただ知る人は知る職人さん(の弟子が練習のために作った)お土産用の手作り一品物だよ」
     しかも偶然に持ち歩いていた物だという。
    「すごい。こんなに良い物もらっちゃっていいの?」
    「初対面だし、誕生日と言う事も知らなかった人間だけど、これで料理を作ってもらえたら嬉しいよ」
     三月が赤茶の目を細めて笑う。
    「来年もおめでとうって言いたいから、誕生日を知ってるお友達が増えるのが本当の誕生日プレゼントだよ。私なんかでいいのかなって思うけどね」
    「そんな! 最高だよ! よしっ、さっそく料理作っちゃうわよ! 潮せんぱーい、私も何か切りまーすっ」
     手際のよい潮の仕事のおかげでカレーの具はすべて切られて煮込みはじめていたので、真夏は残るフルーツにとりかかる。
     皮を剥いた所で、彼女は思い立って夜宵を後ろから抱え込み、夜宵の手に自分の手を重ねて包丁を握った。二人羽織の格好で、果物を一口大に切ってゆく。
     くすぐったそうに笑う声と、カレーが煮込まれるコトコトという音が混じり合っていった。


    「やーっほー、真夏の誕生日会やってるって聞いてひとっ走り駆けつけました!」
     がらっと扉が開いて、元気のいい声とともにあらわれたのは江楠・マキナ(トーチカ・d01597)。マキナは真夏に駆け寄って、甘い香りのする箱を手渡した。
    「これ、私のお気に入りスイーツ店のクッキーなんだけど良かったら。プレーンとマカダミアとアールグレイ、紅茶と一緒に食べたら絶対美味しいはず。18歳おーめでとー!」
    「マキナちゃん! 来てくれて嬉しい! あーりがとー!」
     真夏はマキナの手をぎゅっと握った。テンションが舞い上がっている。

    「校庭にマキナさんがいたので声をかけたですよー」
     マキナの後ろから、めりるがひょこっと顔を出した。めりるは小さな体に大きな花束を抱えていた。小走りに駆けてきてその花束を真夏に差し出す。
    「真夏さんお誕生日おめでとうなんですー! ひまわりの花束持ってきたです。飾ってくれると嬉しいですよー。真夏さんきっと似合うですー!」
    「わ、すごく綺麗。ありがとう……!」
     8月の誕生花を抱きしめて、真夏はくしゃっと笑った。ひまわりの黄色とみんなの笑顔が眩しくて仕方がない。
     その真夏の首筋に光るものを見つけて、めりるが屈託なく笑った。
    「あ、五芒星のネックレスつけてくれているですか! わー、とっても嬉しいですよー!」
    「うん、これ学園祭でめりるちゃんのクラブでもらったのよね。学園祭では有難う、楽しかったわ」
     真夏はめりるの頭をなでた。

     マキナもお手柄なめりるの頭を撫でる輪に加わった。
    「真夏とはキャリバー通学仲間だよね。この間あそこの交差点のとこで見かけたよ! イチゴーいい子そうに見えるけど、普段どんな性格?」
    「そうねえ。無口で尽くすタイプ、かな。あのね、私が荷物持ってると「俺が持つよ?」みたいに後ろから奪っていくの! 戦闘でも頼りになるし。愛車と所有者の関係のつもりだったけど、最近、イチゴーみたいな性格の男の子がいたら惚れるかもしれないとまで思うようになったわ……」
     真夏は苦笑いした。マキナはその真夏の髪に付いた花びらをつまんで、くすくす笑った。
    「いつも凄く忙しそうにしてるけど、もしお休み取れたら今度一緒にツーリングにでも行こーよ! キャリバーならガソリン代もかからないし、何処までだって行けちゃうね。ふふふ」
    「素敵! 秋に紅葉狩りとか? ダートの話も聞かせてね!」

     そうこうしている内にカレーが出来上がり、手伝いの手を借りてカレー皿がテーブルに並べられた。
    「口に合えば良いんだが。………そして更に言うと漬物を食いきれれば良いんだが」
     潮が大量の漬物を盛りながら言った。それに対し、真夏が拳をぐっと握って力説する。
    「心がこもってるし、絶対美味しいわよ! お漬物は食べきれなかったら持って帰るわ。食費が浮いて助かっちゃう。家には食べ盛りがいるし」
     それなら、と紗里亜が手を挙げた。
    「よかったら晩のおかずにどうですか?」
     紗里亜が取り出したのは、実家からもらってきた、椎那惣菜店特製メンチカツ。下味の一工夫が美味しさの秘密とか。
    「ご家族の分、3つ包みますね」
    「紗里亜ちゃんあなた天使……!? 今夜はおかず作らなくて済むわ……!」
     真夏は瞳をきらきらと輝かせた。


     カレーや花やお菓子でいっぱいになったテーブル。そこに集う顔は、初対面も知った顔も関係なく穏やかで。
    「こんなにぎやかな誕生日になるとは思ってなかったわ……」
     真夏はしみじみと呟いた。

     紫の髪の氷雨・雪之丞(カプリッチオ・d18220)が片目を瞑って笑う。
    「家庭科室で一人誕生日会なんてナンセンス★ 祝い事は皆でしなくちゃネ」
     雪之丞の両脇には2人の少女。馬上・環(バブルプリンセスたまちゃん・d18570)と氷高・みゆ(幻月の花・d18619)の顔には馴染みがある。なんたって真夏のクラスメイトだ。
     千川3-5の3人は並んでにこぉーっと笑った
    「三人で準備し、選んだものを贈るわ。誕生日おめでとう、真夏」
     クラスメイト達は後ろ手に持っていたプレゼントで真夏を囲んだ。

     雪之丞からはパウンドケーキ。
    「持ち運びが楽なものでパウンドケーキなのはご愛嬌ネ」
     そう言うが、フルーツやナッツがたくさん入っているし、可愛らしいチョコプレートまで付いている。
    「皆と一緒に買出しにいって、その後、一緒に調理したりして、プレゼントを用意してみました~」
     環からは手作りのレアチーズケーキ。
    「ちょっぴりヨーグルト強めで、隠し味にはちみつやブルーベリージャムも入っておりますね~。はっぴばすで~」
     冷やした状態で渡すため、パッケージにはドライアイスを入れておいたというニクい心配りだ。
     そして最後はみゆからの塩風味のショートブレッドと……。
    「毎日忙しい功力に、癒しの時間を持って貰いたいと思ってな」
     3人で選んだという、可愛い花と星の形をした小皿に入ったアロマキャンドル。
    「これならば、寝る前の少しの時間にでも、使ってもらえるだろうと。勿論、火には注意、だがな」 
     真夏はもう、感激で言葉も出なかった。自分でさえ忘れていた誕生日をクラスメイトが知っていて、前日から準備してくれていたなんて。日中教室にいた時はまったく気が付かなかった。


     それでは改めまして、と皆がアイスティーのグラスを掲げた。
    「お誕生日おめでとーー!!」
     唱和する声に、真夏はぺこりと頭を下げた。上げた顔は洗われたような笑顔だ。
    「本当に……、本当に、みんな、ありがとう」
     賑やかな食事とお喋りが始まる。カレーとお菓子はどれもおいしくて、若い食欲の前にみるみるなくなっていった。

     頃合いを見て真夏は紅茶を淹れなおした。美味しいものにぴったりのお茶にしましょうねと言って。
     蒸らし時間を示す砂時計の砂が落ちるのを見ながら、紅緋が鈴のような声で語る。
    「英国人の先輩が『だーじりん』や『きーむん』が好きで、それをミルクもお砂糖も無しで飲むんですけど、いいお茶って日本茶みたいな風味なんですよね。ですから、私もミルクとお砂糖抜きでお願いします。茶葉そのものの味を識れって、うるさいくらい言われてまして。お陰で、インドとセイロンと中国の区別くらいはつくようになりました」
    「へぇ、素敵な先輩ね。紅緋ちゃんも、砂糖とミルク入れないなんて通ねー」
     真夏がカップに紅茶を注いだ。紅緋がそれをひとくち口に含む。食事やデザートに清涼を与えるような、きりっと潔い香り。
    「これは『だーじりん』?」
    「あたりー! すごい!」
     真夏がぱちぱちと拍手した。
    「懐かしくなる味わいがお煎餅にぴったり。真夏さんもお煎餅どうぞなんですよ」
    「ありがとう。甘いものも大好きだけど、お煎餅も捨てがたいのよね」

     真夏のダージリンと同時に、夜宵も夏をイメージしたハーブティーを振舞った。カップを持ってくる時に、
    「真夏、誕生日……おめで、とう」
     とラッピングした茶葉を渡してくれる。
     潮が2つ並んだカップを飲み比べて言った。
    「随分味が違うが、それぞれなんて言う名前なんだ?」
    「私のがダージリンで……夜宵ちゃんが淹れてくれたのはなあに? フルーツが入っているのかしら、爽やかね」
    「このブレンドの名前はね……溢れる幸せ………だよ」
     真夏は微笑んだ。
    「それは……この場にぴったりの名前ね」


     室内にはお茶の落ち着いた香りが漂い、それぞれ好みのお菓子を摘まんではおしゃべりに花を咲かせている。
    「先だっては学園祭で刺繍倶楽部にお出で頂いてありがとうございました。功刀先輩の柏葉アジサイも、他の方々の紫陽花と共に素敵に咲き揃って綺麗でしたの」
     携帯で学園祭の時の写真を見せていた藤乃が、ぱちんと両手をあわせた。
    「あ! 私、いつも刺繍セットは持ち歩いているのですけれど……。そして丁度、買ったばかりのハンカチもあるのです。良かったら……今、このハンカチに刺繍をしてプレゼントさせて頂きたいのです」
     そう言って藤乃は刺繍セットを取り出して刺繍を始める。その周りに女の子たちが集って、藤乃の手元を覗き込んだ。
    「わ、綺麗。ささっと刺繍しちゃうところがさすが刺繍倶楽部部長……。女子力高いわ」
     藤乃の手の中で模様が形になっていく様を見るのが楽しい。
     出来上がったのは凜として優美な、淡紫の八重咲きトルコキキョウ。
    「良き一年をお過ごし下さいませ」
     という言葉とともに贈られたハンカチに、真夏は感心しきりだった。

     真夏は幸せすぎて、すこしぼうっとしていた。その肩を、クラスメイトのみゆがつついて顔を寄せた。
    「全く、独り身にはこれは辛いものだよな?」
     みゆの視線の先には、仲良くじゃれあう雪之丞と環。千川3-5ではおなじみの光景である。
     真夏がくつくつと笑った。
    「これで付き合ってないなんて信じられないわよね。でも、いいんだ。私もリア充だってことが判明したし」
     自分の前に置かれた花束やプレゼントを大切そうに見つめて、真夏は言う。
     みゆも、ケーキの相伴にあずかりながらうむうむと頷いた。
    「こうしてクラスメイトの誕生日を祝えるのは、良いものだ」
     真夏は頬を朱くして笑う。
    「思い切って扉を開けて、声をかけてみて良かった。本当に本当にうれしくて幸せ。ありがとうを何回言っても足りないわ」

     テーブルの向こうから、雪之丞がカップを掲げて見せた。
    「一人でぽつりと迎える祝いより、皆で騒ぐ方が楽しいわよ? 来年は前もって準備しましょうネ。もっと沢山の人と一緒に」
     雪之丞がウインクした。彼の背後の窓から、夕暮れちかくの美しい雲が見える。
     今日はたくさんおめでとうを言ってもらって、たくさんありがとうを言った。真  夏は仲間たちのにこやかな顔と今日の空を、しっかりと心に刻み付けた……。

    作者:桐蔭衣央 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月22日
    難度:簡単
    参加:11人
    結果:成功!
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