ばんだい餅に出来なくて

    作者:聖山葵

    「うわぁぁぁん、親父なんて大嫌いっすぅぅぅぅ!」
     鍋が空を飛んだ。
    「落ち着け、ちょっと貰っただけだろ」
     誤りもせず、そう言い返したのも悪かったかも知れない。
    「豆から育てたのに……ようやく食べられると思ったのに」
     恨めしげな声の主が向けた視線の先にあったのは、鞘だけになった枝豆と空になって転がるビールの缶。
    「おいらの、おいらのばんだい餅……」
     枝豆が失われたのだ。
    「もちぃぃぃっ」
    「なっ」
     男性は驚きに目を見開く。目に涙をためた我が子がいきなり人外に変貌し始めたのだから。
    「……うぐっ、うわぁぁぁん!」
     男性が、酔いのせいかと目を疑う暇もない。一瞬、自分に敵意の篭もった視線を向けたそれは、こちらに向かってこようとして動きを止めると、窓ガラスを突き破って外に飛び出していた。
     
    「ば、ばんだい餅というのは、ずんだ餅の別称なんだな」
     集まった灼滅者達へそう説明したのは、水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)だった。
    「要するに、一般人が闇もちぃしてご当地怪人へなる事件が起きようとしている訳だ」
     補足から説明を始めた座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)によると、通常ならば闇堕ちした時点でダークネスとしての意識に人の意識は消されてしまうのだが、今回の場合人の意識を残しており、ダークネスの力をもっちぃながらもダークネスになりきっていない状態なのだという。
    「故に、君達にはいつものように現場へ赴いて貰いたい」
     そして、もし件の一般人が灼滅者の素質を持つのであれば闇もちぃからの救出を、完全なダークネスになってしまうようであればその前に灼滅をお願いしたいとはるひは言った。
    「問題の一般人の名は、文場・大地(もんば・だいち)。中学一年生だな」
     ばんだいもちを作ろうと大切に豆から育てていた枝豆を父親におつまみとして食べられてしまったことでショックを受け、口論の末にご当地怪人ばんだいモッチアと化して家を飛び出してしまうらしい。
    「この時、父親に襲いかかろうとするのだが人の意識があるからか思いとどまるようでな、かわりに外に飛び出すことになるのだが」
     灼滅者達がバベルの鎖に察知されず接触出来るのは、どんなに早くてもこの家を飛び出した後のことになるとのこと。
    「家の前で待っていれば向こうからやって来る。幸い文場家の敷地は広い」
     家の中から明かりも漏れているので、明かりを持ち込む必要もなく、ご近所さんは旅行に出かけていて人避けもほぼ不要とはるひは言う。
    「父親への対処だけは必要となるかもしれんがね」
     我が子の変貌にショックを受けている為、家の外へ出てくるにしても一分ほど後のことになると、付け加えはるひが説明したご当地怪人の容貌は、ショックを受けても仕方のなさそうなモノ。
    「ず、ずんだ餡の不透明なスライムもどき……」
    「一応、裸の人間というコアも存在するのだがね。怪人状態では性別も判別出来ないのだよ。まぁ、透けては目のやり場に困るだろうからこれで良いのだろうが」
     戦いになれば、ご当地怪人のサイキックや影業のサイキックに似た攻撃を使って応戦してくるらしいが、武器に使うのは影ではなくずんだ餡である。
    「何にせよ、戦いは避けられない」
     闇堕ち一般人を救うには戦ってKOする必要があるのだから。
    「そうそう、もし戦いの時間を短縮したり戦闘を有利に運びたいなら、戦う前に説得することを勧めておく」
     闇堕ち一般人と接触し人間の心に呼びかけることが出来れば、戦闘力を削ぐことが出来るのだ。
    「父親に襲いかかるのを思いとどまった優しさを肯定してやっても良いし、ばんだいもちを持っていって、食べさせてやっても良い」
     どうにかして心に生じた負の部分を減退させれば、それ即ちダークネスの弱体化に繋がるだろう。


    「最後にこれは私からの餞別だ。説得に使って貰っても構わんよ」
     はるひがそう言って差し出したばんだいもちを受け取ると、君達は教室を後にするのだった。
     


    参加者
    城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    鬼追・智美(メイドのような何か・d17614)
    白牛・黒子(とある白黒の地方餅菓・d19838)
    水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)
    徳長・箱(砂山・d25781)
    天城・呉羽(蒼き鋼の聖女・d26855)

    ■リプレイ

    ●庭先の出会い
    (「ダークネスと化してなお自意識を残されているなんて、心の強い方なのでしょうね」)
     広い敷地の何処かから聞こえる虫の音を聞きながら、鬼追・智美(メイドのような何か・d17614)は明かりの漏れる家の方へ目をやった。
    「必ず闇堕ち……ええと、闇もちぃっていうんですか、今回は?」
    「その様ですね。それはそれとして、父親の対処はお任せしましたよ、智美君?」
    「あ、はい。それから救ってみせましょう。では、失礼致しますね」
     家の前で立ち止まり仲間達の方を振り返って、自分の問いへ淡いアルカイックスマイルで返したラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)の言葉に頷くと、一人門の前を後にする。
    「後は待つだけですか。ずんだ餅なら聞いた事があるのですが、ばんだい餅の呼び方は初めて聞きますね」
    「確かにそうですわね……聞いたことないとおもったらずんだ餅の別名だとか」
     ラピスティリアの独り言に相づちを打った白牛・黒子(とある白黒の地方餅菓・d19838)は、何にせよと言葉を繋ぎ、主張する。餅を愛するものは同胞だと。
    「取り敢えず、持って来たばんだい餅で一度クールダウンして頂けると良いのですが……さて」
    「……ばんだい餅、美味しそう」
     仲間の呟きに釣られる形で、手にした餅へ目をやった城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)はポツリと漏らしながら顔に出さず待ち受ける人物へ同情する。
    (「すっごく楽しみだったんだろうな……」)
     だからこそ闇もちぃ、に至ってしまうのだろう。
    「親子喧嘩で闇堕ちか……いや枝豆……と言うかばんだい餅が作れなくなったからか?」
     先程まで文場家の敷地内を見回していた徳長・箱(砂山・d25781)が目を留めていたのは、地面に畝らしき出っ張りのある区画、家庭菜園だった様だが、作物は収穫した後に見える。
    「わぁぁぁん」
    「そう言や、言っとったな……接触は飛び出した後やて」
     もし戦いの邪魔になるようなモノがあれば退けておこうとも考えていた箱だが、そんな時間は無かったようだ。
    「こ、こんばんはなんだな」
    「も……ちぃ?」
     モゾモゾと這いずりながら現れた不定形生物のようなそれは、水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)に声をかけられて歩みを止める。
    「あ」
     直後にそれが声を上げたのは、灼滅者達の持つばんだい餅に気づいたのだろう。
    「ばんだいもち……」
    「ば、ばんだい餅好きなのかな?」
    「もちぃ」
     漏らした呟きに雁之助が問えば、首を縦に振るかのようにずんだ餡の固まりは大きく縦に揺れ。
    「食べる?」
    「もちぃ」
     天城・呉羽(蒼き鋼の聖女・d26855)の質問かけにも同じ反応で応じた。
    「あぅ……」
     作ることがかなわなかったとは、食べられなかったという事でもある。視線で追うかのようにばんだい餅が動けば身を捩ったりしている辺り、もう目が離せなくなってしまっていて。
    「話するならあげる。しないなら全部食べるけど、いい?」
     呉羽の要求に抗えるはずもなかった。
    「わ、わかったもち、何を話せば――」
    「作り過ぎてしまったので、一緒に食べてもらえませんか? ばんだい餅は出来立ての色が鮮やかな内が食べごろですから」
    「いただきますもちぃ」
     全面降伏したところに、白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)がばんだい餅を薦めれば、ずんだ餡で出来たスライムはジュンに飛びかかった。

    ●お話の時間
    「うぷっ」
     たぶん、攻撃の意図は無かったのだと思う。単に近寄ってばんだい餅を受け取ろうとしただけと。
    (「アイエエ、のっけからこれですの?!」)
     ただ、黒子は嫌な予感が的中し仰け反っていた。ずんだスライムもといご当地怪人ばんだいモッチアが近寄りすぎたせいで、ジュンの身体は半ばずんだ餡に埋まっていて、捕食されかかっているようにも見えたのだ。
    「ドーモ、文場=サン、元べこモッチア白牛黒子ですの」
     だが、ばんだい餅を手に立っている訳にも行かず、アイサツに続ける形でそれを差し出す。
    「まずはこちらのばんだい餅をどうぞ」
    「ありがとうもちぃっ!」
    「ンアーッ!」
     黒子も覆い被さるように飛びついてきたずんだに飲み込まれた、お約束に慈悲はない。
    「……なるほど、ばんだい餅の材料の枝豆をお父様に……ね……」
    「そんなことがあったんですか、それは怒りますよね」
    「大切に育てていた上に食べ物の恨み……叫ぶ気持ち、分かる気がするや」
     ずんだ餡被害者二名が並んで事情を聞く中、予記もばんだいモッチアの気持ちには理解を示した。
    「豆から自作するってすごい」
    「ぼ、ボクもそう思うんだな。そのお餅は自分が育てた餅米で作ってるから、き、気持ちはよく分かるんだなー」
     賞賛する呉羽に頷きながら雁之助は稲を育てた時の苦労を語り始め。
    「だから勝手に食べられたら怒るのやむなし」
    「お父さんは大地君が育てた枝豆が美味しそうに見えたのでしょうねぇ、きっと」
     自分が姉のおやつを食べて怒られたことを引き合いに出し怒りは正当だとする呉羽の声を聞きながら、ラピスティリアは父親をフォローしつつも「でも」と続けた。
    「子供が一生懸命に育てていた物を勝手に食べてしまうのは良くないですね」
     だが、だからこそ。
    「す、直ぐ許せなんて言わない。けど君のお父さんの君を見守る権利、君に謝るチャンスを奪わないであげて欲しいんだな」
     雁之助は言葉を継いで、まっすぐご当地怪人を見る。
    「あや……まる?」
     ぽつりと呟きずんだスライムが動きを止めた。
    「なっ」
    「申し訳ございません、少しお休みください……」
     遠くで微かに男性と智美の声がしたが、知覚したのはおそらく灼滅者達のみ。
    「怒って怪人になっても、父を殴らなかったのは偉い」
    「恨みだけで何にもお腹が膨れない状態より、次こそは自分で、またこの美味しさを! って目標を持った状態の方が楽しくない?」
    「そ、それは……」
     ご当地怪人を褒める呉羽に続いて、予記が問いかけ、言葉に詰まったばんだいモッチアへ、ジュンも声をかけた。
    「いつまでも怒っているとせっかくの美味しいお餅も十分に味わえませんよ?」
     既にいくつかばんだい餅を平らげているばんだいモッチアだったが、灼滅者達の手元にはまだいくらかのばんだい餅が残っていたのだ。
    「もちぃ」
     灼滅者達の言葉にずんだスライムの纏った威圧感が弱まり。
    「遅くなりました」
     智美の戻ってきたのは、丁度この時だった。

    ●戦いへ
    「後から食べようととっておいた物をお預けされてしまった時の気持ちは痛いほどわかります……」
     自分の経験談も交えて理解を示しつつも、智美はずんだスライムの憤りを一時の感情ですと断定する。
    「そんなものに流されてはいけません。それがわかっているからこそ、お父様に何もせずに飛び出してきたのでしょう……?」
    「も、もちぃ」
     ばんだい餅をたべて幾分か満たされてしまったことも一方的に説得される流れへ一役買っていたのだろう。智美の問いかけに返したのは、喘ぐような声のみ。
    「今度から親父と一緒にばんだい餅を作ったら良いんじゃないかな? そうすれば勝手に食べられはしないはず」
     更に箱から悲劇を繰り返さないアイデアまで提供されたらどうなるか。
    「っ」
     ただ、文場・大地と言う人間をこの姿に変貌させたダークネスは、気づいたのだろう。このままではまずいと。気圧される当人とは裏腹にずんだの一部が不穏に蠢きだしたのだ。
    「マジピュア・ウェイクアップ!」
     すかさずジュンは叫びスレイヤーカードの封印を解く。イメージは魔法少女モノの変身バンク。
    「希望の戦士ピュア・ホワイト 家族のきずなを守ります!」
     ビシッとポーズを決めるジュンの姿に、ご当地怪人の異変を察し、呉羽はを脱ぎ捨てながら声をかける。
    「ま、まだ怒りが収まらないなら、自分にぶつけてほしいんだな」
    「落ち着いたら元の姿にもどろ?」
     雁之助の説得に続く形で声をかけ、外骨格に包まれた裸体が動き始めた瞬間、庭先は戦場と化した。
    「もちぃぃぃぃっ」
     生命維持用の薬物を過剰摂取したからこそ出来る動きを捕捉しようとずんだスライムが爆ぜた様に広がり、広がった外縁が触手に変わって、全裸を追う。
    「ちょっ」
    「全裸だよ」
    「そ、そんなこと聞いたんじゃないよっ!」
     思わず声を上げていた予記は、自分に向けられた視線に次の瞬間ツッコんでいた。
    「家族というものはかけがえのな、ンアーッ」
     同時に振り回したウロボロスブレイドがずんだ触手を数本斬り飛ばすが、本体は止まらない。切断され、ただのずんだ餡になった触手の先が説得を続ける黒子にかかって悲鳴が上がるが、いつものモッチア補正である。
    「マジピュア・ハートブレイクッ!」
    「もちゃぁぁっ」
    「さて……いきますよ」
     今度はばんだいモッチアの意図ではなく外部からの殴打と注ぎ込まれた魔力でずんだスライムが爆ぜ、悲鳴があがり、ヘッドホンを装着したラピスティリアがコアの白い肌を露出させたご当地怪人へ突きを放つ。
    「ぐもちっ」
    「行って、レイスティル!」
    「わうっ」
     悲鳴をあげたばんだいモッチアに智美は霊犬を嗾けつつ、自身もエアシューズで文場家の庭を疾駆する。
    「アイエエ服の中にずんだ餡が」
    「っ、仕方ないな。有嬉」
    「ナノ~」
     世話好きとして、もっちあ(惨状)を放っておけなかったのか、背中に手を回す黒子を見て予記はナノナノの名を呼び。
    「思いっきり、ぶつかってくるんだなー」
     親代わりをしている雁之助はご当地怪人を義理の娘と重ねたか、破邪の白光を斬撃に乗せながらずんだスライムと対峙する。
    「うぐ、がっ、もちぃぃぃ!」
     炎を纏った蹴りを叩き込まれ、斬魔刀で刻まれ傾いだそれは、次の瞬間ずんだで新たな触手を作りだし。
    「な」
     雁之助を絡め取るはずだった触手が飛び出したビハインドのエフィムに遮られ、想定外の展開に、ばんだいモッチアの動きが一瞬止まる。
    「ダークネスには引っ込んで貰おうか」
    「しま」
     それは、懐に飛び込んだ箱がオーラを集中させた拳で乱打を繰り出すのに充分すぎる時間。
    「も゛、ぢ、べ、ば」
     説得によって弱体化したご当地怪人は叩き付ける拳に踊らされ。
    「イヤーッ」
     はだけた服の黒子が死角から放った斬撃でずんだが斬り飛び、コアの白い肌が露出する。
    「女……の子?」
     誰かのかすれた声が全てを語っていた。
    「え、ええと……た、確かにこれはちょっと戦いにくいですね……」
     これ以上コアが露出したらどうなるか。同性ではあるが、智美は顔を引きつらせる。
    「何を言っているもちぃ? ずんだの中にいられるなんて最高もちぃ!」
     最も、当人は全然気にしていないようだったが。呉羽との問答にああやっぱりと、黒子は頭を抱え。
    「あんた達も引きずり込んで――」
     ばんだいモッチアはずんだの中から白い腕を突き出す、が。
    「させません、エフィム」
    「っ、また邪」
    「戻ってきなよっ」
    「もぶべっ」
     発生した全裸と半裸の戦いは、即座に他の灼滅者達が介入することで、ほぼ一方的な袋叩きに変貌する。
    「う、くっ……」
    「ジャッジメントレイ!」
     ズタボロになって殆どコアを露出させ、蹌踉めくばんだいモッチアへ拳にオーラを集中させた呉羽が飛びかかり。
    「もっちいぁぁぁっ」
    「食べ物の恨みは後を引くから気を付けようねキーック!」
     咆吼と共に迎撃に出たそれに横からジュンが跳び蹴りを放った。
    「もべばっ」
     蹴りと殴打の挟み撃ちにあった少女は悲鳴をあげるとポテッと土の上に転がって元の姿に戻り始めたのだった。

    ●和解を望み「というかその姿恥ずかしくない?」
    「そちらは目覚めましたか?」
    「まだだけど、ちょうど良さそうだな」
     ラピスティリアの問いかけに応じたのは、少女の父親の様子を見るジュンだった。
    「大丈夫?」
    「ううっ、お手数おかけするっす」
     闇もちぃから救う戦いの結果、人前に出すのを憚られる格好になった少女は、裸のままはよくないと主張した全裸の呉羽に手伝われ、着替えの真っ最中である。
    「……そう言えば、あなたは着替えなくて良いっすか?」
    「大丈夫。全裸だけど」
    「いや、大問題じゃないっすか。オイラの服着れるっすかね?」
     ダークネス形態の呉羽は、身体の一部を水晶の外骨格で覆われているのだが、少女も「じゃあ大丈夫っすね」とは行かなかったのである。
    「落ち着いたら父を叱ってこよ。それで終わり」
    「や。そりゃ、そのつもりっすけど……窓ガラスの件で相殺されそうな気がヒシヒシとするっすよ」
     闇もちぃ、していた時の記憶が残っているのか少女は何処か遠い目をする。
    「まあ、お互いに謝ればええんちゃうかな」
     そして仲直りも出来れば、と箱は着替えが行われている部屋の隣で口にしながら、問題の割れた窓ガラスを片付け始め。
    「うっ……」
     少女の父親が目覚めたのは、ガラスの片付けも終わった後のこと。
    「……そうでしたか。大地、枝豆のことはすまなかった」
    「おいらこそ……ごめんなさいっす」
     事情を説明された父親は、娘へ頭を下げ、娘もまた謝罪する。
    「こ、これで一件落着なんだな」
    「そうそう……って終わってないよ! よ、良かったとは思うけど」
     和解の光景を見守った灼滅者達に待っているのは、父娘双方への説明。
    「すれいやーの学校、かぁ」
    「こ、今度は学園で今度は餅米も育てると良いと思うんだな」
    「武蔵坂学園には餅を愛する同志が集っていますの。あなたもご一緒にどうですの?」
    「私も勧める」
     一通り説明をうけて唸る少女へ声をかけるのは、順に雁之助、黒子、呉羽。
    「今度……これからは、皆と一緒にばんだい餅を食べようよ」
     さっきまでツンデレ成分を含みつつノリツッコミしていた予記も加わって、行われた勧誘に少女は。
    「そうっすね、お世話になったのは事実っす。おいらなりに恩返しもしたいっすからね」
     結論を出し、ちらりと父親を見る。
    「し、しかしだな……急に転校というのもだな」
    「親父」
    「……む、娘を宜しくお願いします」
     抵抗を試みた父はただ一言に敗北した。
    「せや、良かったらこれを」
     そして、敗者に捧げられるのは、ばんだい餅のみ。
    「これは、ずんだ餅? 私に?」
     少女の決断に一部の灼滅者から歓声が上がる中、箱は少女の父へとはるひから渡された餅を差し出したが、何故という視線を納得させる理由を持たなかかった。
    「はい」
     ただ、肯定しただけで視線を助けた少女と仲間達に向ける。
    「大地君さえ宜しければ、今度皆様で作ってみませんか? ばんだい餅」
    「えっ、それは願ってもないっすけど」
    「ふふ。では、今度一緒にばんだいもち作りましょうね」
     ラピスティリア達の間で交わされる約束の目撃者になりながら、歩き出した理由はただ一つ。事が終わればさっさと立ち去るつもり会ったから。少女は救われたのだ、もう留まる理由もなかった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 6
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