流しそうめんの食べ方

    作者:奏蛍

    ●夏休みの終わりに……
     小学校の宿題の一つに、ラジオ体操に参加するというものがある。町内会ぐるみの宿題だ。
     最低一回でも参加していればいいわけなのだが、皆勤賞を取ればちょっと嬉しい品をもらえる。さらにこの町内会では、嬉しい企画がある。
     ラジオ体操最終日に、流しそうめんをしてくれるのだ。今回の流しそうめんは、かなり手の込んだものとなっていた。
     好きな味に出来るように、大量の薬味を投入してみたのだ。今まではめんつゆが入った器と箸を配布していただけだが、今回は長机にずらっと薬味が並んでいる。
     ニラ、しそ、ねぎ、オクラ、しょうが、わさび、大根おろし、にんにく、ゆず、ごま、唐辛子、海苔、鰹節、梅肉、揚げ玉、とろろ昆布、ピーナッツ、クルミとラインナップが続く。そうめんに合うかどうかを考慮したのかどうかは不明だ。
     今までにないそうめんの味を求めて、子供たちは自由に薬味を入れていく。
     その時だった。一人の子供が悲鳴を上げた。
     今まで誰もいなかった場所に、不気味な男が現れたのだ。さっと男が手を伸ばすと、その手から細く白いものが幾筋も伸びていく。
     締め付けられるようにぐるぐる巻きにされた子供は息を飲んだ。そう、白いものはそうめんだった。
     理解したと同時に、子供の断末魔の叫びが響き渡ったのだった。
     
    ●薬味をチョイスしろ!
    「流しそうめん男って呼べばいいのかな?」
     仲間を前に、墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)が微かに首を傾げる。そして須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)からの情報を話し始める。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、まりんたちエクスブレインの未来予測が必要になる。
     由希奈の予想が的中して、流しそうめんに関係する都市伝説の存在が明らかになった。由希奈が言うところの流しそうめん男だ。
     元になったのは、そうめんをこよなく愛する男の話だ。一週間、毎日そうめんは当たり前! そんな男は薬味をチョイスすることで味に少しの変化を持たせ、そうめんを楽しみながら食していた。
     しかし、あるとき選んだ薬味によって大変な惨事を引き起こしてしまう。男は自分にアレルギーがあることを知らなかったのだ。
     知らぬまま、ピーナッツをチョイスしてしまった。もし小さい頃にピーナッツを食べたことがあれば、薬味にピーナッツをチョイスすることはなかっただろう。
     または誰かがそばにいる状態であれば、助かることもあったかもしれない。けれどそのとき、男は一人でそうめんを食べていた。
     男がチョイスした薬味によって命を失ってから、そうめんの薬味にピーナッツを入れると不気味な男が現れると噂になった。その噂にいろいろな尾ひれがついて、流しそうめん男が完成してしまったのだ。
    「ピーナッツを入れるのは確定なんだよね」
     うーんと考える様に由希奈が呟いた。入れなければいけない薬味は三種類。
     そして絞り込まれた薬味は、ピーナッツにしそ、ねぎ、しょうが、にんにく、梅肉、鰹節の七種類だ。由希奈が言うように、ピーナッツを入れることは確定している。
     さらに絞り込むと、野菜類の薬味と加工品の薬味、もしくは根菜類の薬味と加工品の薬味。このどちらかの組み合わせにピーナッツを加えたもののようだ。
     以上を踏まえた上で、あと二つをみんなにチョイスしてもらいたい。そして作った薬味入りのめんつゆに流しそうめんを投入すれば、流しそうめん男が現れてくれる。
     大変だと思うが、流しそうめんが出来る場所と道具の確保もよろしくお願いする。
     また条件が揃った時に現れるのであって、違うチョイスで流しそうめんを入れてしまっても問題はない。味はどうなるかわからないが、美味しく食べることが出来れば幸いだ。
     そんな流しそうめん男は、影技と鋼糸に類似したサイキックを使ってくる。
    「灼滅が終わったら、流しそうめんタイムだね!」
     嬉しそうに由希奈が笑うのだった。


    参加者
    夢月・にょろ(春霞・d01339)
    砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)
    枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)
    牛野・ショボリ(歌牛・d19503)
    船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)
    吉田・小太刀(ぶん投げやすいサイズ・d29466)

    ■リプレイ

    ●下準備
    「お買い物楽しかったねっねっ!」
     大量の荷物を下ろした殺雨・音音(Love Beat!・d02611)が、柔らかそうな巻き髪を揺らしてにこりと笑った。目の前には流しそうめんに必要なものが全て揃っている。
    「色々買ったが、ちゃんと経費で落ちるのだろうか」
     荷物を下ろした砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)が帽子の位置を直しながら呟いた。そしてなぜか支払いは男性陣にとはっきりきっぱり言い切った吉田・小太刀(ぶん投げやすいサイズ・d29466)をちらりと見る。
    「後で請求できなかったら大変なのね」
     この場合、大変なのは小太刀ではなく男性陣……。貧乏な小太刀は集る気満々なのだった。
    「結構大掛かりになっちゃったけどどうせやるなら豪華に行こうぜ!」
     細かいことはひとまず気にすんなよ! と言うように、枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)がにっと笑って台を組み始める。その拍子に左頬を覆ったガーゼの形が少し歪になった。
    「そうめーん、おそーめーん♪」
     袋をごそごそしていた牛野・ショボリ(歌牛・d19503)が、歌いながら買ってきたそうめんを出していく。ぱっと顔を上げたショボリが魅力的な瞳で周りを見渡す。
    「廉価で手間暇いらず夏休みママのつよーいみっかただよー♪」
     非常にマイペースである。
    「ショボリ流れるおそうめん初めてねー!」
     とっても楽しみとぱっとショボリの表情が輝く。
    「流し素麺は2回目ですねぇ」
     台のセットは任せて、そうめんを茹でる準備を始めた船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)が、撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)に声をかけた。さらっと着流しを着こなした娑婆蔵が頷く。
    「流しそうめん相手の戦いでまたお前さんと組むことになるたァ……」
     思い出す様に娑婆蔵が鋭い眼光を細める。娑婆蔵と亜綾は前に今回とは違った流しそうめんに関係した都市伝説を灼滅したことがあるのだ。
    「薬味の方は準備完了です」
     しっかり指定されていた薬味があるか確認した夢月・にょろ(春霞・d01339)が柔らかな微笑みでみんなを振り返ると、鋭二郎が箒からふわりと飛び降りた。
    「台も問題ない」
     変わらない表情で淡々と鋭二郎が準備が整ったことを伝える。
    「水を流すのよ」
     蛇口に手を置いた小太刀が少しずつ水を流し始める。水の勢いで組んだ台が倒れないかと傍で目を光らせていた戦と娑婆蔵の体から力が抜ける。陽の光を反射させてキラキラと光りながら、水が流れていく。
    「パワーと栄養美味しさ満点チョイスねー!」
     早速と言うように、ショボリがピーナッツににんにくと鰹節をどばっと入れる。
    「ネオンはしそと梅肉を追加だね♪」
     ピーナッツの入ったつゆに追加した音音の装着したケモ耳が可愛く揺れた。
    「私……梅もしそも苦手で……だからそれ以外なら、って選択肢少ないです?」
     申し訳なさそうに、にょろがしょうがと鰹節をチョイスする。
    「気にすんな!」
     問題ないないと戦がにんにくと梅肉を入れる。その横で戦に同意しながら、娑婆蔵がねぎと梅肉を追加する。
    「おいしくなぁれを使用すれば、何杯でもいけます」
     いよいよとなったら全部混ぜるのもいけると亜綾が、大丈夫と言うように頷いてしょうがと梅肉を追加した。
    「がっつりいくのよ」
     すでにねぎと鰹節を入れていた小太刀が嬉しそうに台のそばで待っている。しそと鰹節を入れた鋭二郎が、茹でられたそうめんを台に流し始めた。
     取れなかった分は下に設置したザルが回収してくれる。
    「あ、色付きそうめんがあります」
     ほんわかと笑ったにょろが、緑色が混ざったそうめんを箸で掴む。さらっと家事万能の小太刀の心憎い演出だったりする。
    「でっておいでー!」
     声を上げたショボリがそうめんを口に入れる。ピーナッツは初めての経験と、楽しそうに笑うのだった。

    ●試食会?
    「へへ、こんな本格的な流しそうめんいつ以来だろ!」
     流れてくるそうめんに手を伸ばした戦の表情が自然に緩む。もちろんしっかり周囲を警戒することも忘れていない。
    「よし、いただきまーす! うわー! 美味そう!」
     礼儀正しく食前の挨拶を済ませてぱくっと口に含んだ戦が味を確かめるように口を動かす。
    「しかしこの薬味は初めてだな……意外とパンチ効いててイイかも」
     基本的に味に頓着しないのか、大抵のものなら何でも美味しく頂ける戦だ。
    「ネオンのも戦ちゃんのも違うみだいだねっ」
     都市伝説ちゃ~ん、出ておいで~とズルズルしていた音音がこくんとそうめんを飲み込む。それじゃあ自分もと鋭二郎がそうめんを口に運ぶ。
     爽やかなしその中に、どれだけピーナッツが主張してくるのか楽しみでもあり恐ろしくもある。
    「しそと鰹節だけならば試したことがあるのだがな」
     ピーナッツは噛み心地もかなりしっかりしているのだった。
    「これでもないらしい」
     無事に食べ終えた鋭二郎の言葉に、残っている娑婆蔵と亜綾に仲間が視線を送る。
    「同時ってのはどうでさァ」
     娑婆蔵の提案に亜綾が頷く。二人の箸がそうめんを掴み、つゆに投入する。
     その瞬間、何か違和感を感じた。前にいた灼滅者たちが身構えるのと同時に、糸の結界が張り巡らせる。
    「さて、お出ましか! さっさと片付けてそうめんそうめん!」
     すっと構えた戦が瞳を細くしてにやりと笑う。
    「食事の邪魔はマナー違反だぜ?」
     言葉と一緒に身を低くした戦が一気に駆け出す。軽やかに地面から離れると、男に飛び蹴りをお見舞いした。
    「お前さんの無念は分からねえでもありやせんが、カタギに迷惑掛けようってんなら話は別でさァ!」
     戦の蹴りによって、後方に飛ばされた男を追って駆け出した娑婆蔵の闇雷を握り込んだ拳に雷が宿る。飛び上がりながらのアッパーカートが男をとらえて吹き飛ばす。
    「牛野のミルクは日本一ぃぃぃぃぃぃ!!」
     すぐに力を解放させたショボリも、痛みに微かに眉を寄せながらも飛び出した。梅とかピーナッツを入れて食べるのは初めてのショボリだ。
    「おにーちゃんのオススメはどれー?」
     ふわりとミルクのような白い綺麗な髪を揺らしながら、ショボリが剣を高速で振り回す。回転によって威力を増した体は、そのまま立ち上がったばかりの男に突っ込んだ。
     容赦なくショボリが男を斬り刻んでいるとき、必死に手と口を動かす二人がいた。
    「せっかくですから、1回くらい流しそうめんをしてみてはどうですか?」
     食べ終わってないそうめんを一生懸命口に入れながら、にょろが首を傾げる。そうめんもつゆもありますから遠慮なく……と行きたいところだが、やはりそうもいかないらしい。
    「ゆがいた分の素麺を食べ終わるまでは待って欲しいですぅ」
     食べ物は粗末にしてはダメですと亜綾がまたそうめんを口に運ぶ。
    「何なら素麺男さんも食べます?」
     にょろと亜綾の誘いに、そうめん男がごくりと喉を鳴らす。そう、そうめん大好きなのだ。
     しかし、浮いているものを見て顔が豹変する。ピーナッツ。
    「さっさと終わらせるのね」
     その顔面に向けて、小太刀が飛び蹴りを炸裂させた。ごふっと言う音を立てて、男が地面に手をつく。
    「好きな物で命落すってある意味幸せなのかにゃ~?」
     優しき風を招きながら、音音が首を傾げる。けれど好きなもので他人に迷惑をかけるのは良くない。
    「おそうめんが泣いてるぞっ☆」
     みんなを癒した音音がびしっとそうめん男に視線を送るのだった。

    ●流しそうめん男
    「灼滅開始」
     言葉と同時にゆらりと鋭二郎の影が出現させたマテリアルロッドに絡みついていく。銃の形を型どった影の銃口から見えない攻撃が発動する。
     男の体温や熱量が急激に奪われていく。恐るべき死の魔法が男を覆い尽くそうと迫っていく。
     ふぅ、と息を吐いたにょろが口を開いた。食べている間は両手は塞がっているし、口も塞がっているため何も出来なかったのだ。
     にょろから流れ出た歌声はさらに男を苦しめる。摩擦で生じさせた炎を纏った小太刀の蹴りに、男の体が転がった。
     冷気からいきなり高熱に晒されて、怒りが瞳に宿る。伸びた影がまるど細いそうめんの様になて、鋭二郎の体を絡めとっていく。
    「そうめんに負けないで~!」
     鋭二郎の傷を癒した音音がエールを送る。戦いは正直怖いので、後ろからみんなを応援するのが音音のスタイルなのだ。
    「ブチ抜いてやりまさァ!」
     音音のエールに答えるように、娑婆蔵が肝臓付近を狙うリバーブローで穿つ。
    「悪い都市伝説おにーちゃんには注射でお仕置きずぶり、ねー!」
     娑婆蔵の攻撃に前のめりになった男の頭上からショボリが現れる。サイキックをたっぷり凝縮して毒に変えた液体を、首から注射する。
     ちくりと言う注射独特の痛みと、注射跡が首に残される。そんなショボリを払い落とそうと暴れた男に、ドリルを高速回転させた戦が迫った。
     咄嗟に避けようとした男の視界にビハインドの烽が入り込む。烽の攻撃を慌てて避けた時には、戦がにやりと笑った。
     突き刺したドリルが男を容赦なく攻撃した。その間にバベルの鎖を瞳に集中させ終えた亜綾が魔法光線を発射する。
    「くそぉ、美味そうにそうめんを食いやがって!」
     男が大きく吠えた瞬間、にょろが手に握った何かを放った。敵であろうとなるべく傷つけたくはないと思っているにょろだ。
     しかしやることは何かが違う。都市伝説もアレルギー体質であろうと、ピーナッツを口に無理矢理押し込む。
     ごほごほとむせる男を見て、にょろがほんわかと首を傾げる。
    「……何だか酷いですね」
     男からすると、やる前に気づいてくれと思う。口に入ったピーナッツを吐き出した男の目が見開く。
    「びーえすトラウマ! ぴーなつトラウマ!」
     魔法の矢を放つのと同時に、小太刀まで叫びながらピーナッツを投げつける。貫かれ、死の原因となったピーナッツを投げつけられた男が咆哮する。
    「何て奴らだ!」
     罵るように言われても、現れて道連れよろしくで人を殺す都市伝説に言われてもという話だ。

    ●流れるそうめん
    「娑婆蔵おにーちゃん、いくよう!」
    「よござんす!」
     ショボリの声に答えた娑婆蔵が駆け出す。それに合わせてショボリが炎を男に叩きつけた。
     焼かれる体に気を引かれた男に娑婆蔵が一気に迫る。
    「ボッコボコにしてやりまさァ!」
     オーラを宿した娑婆蔵の拳が焼かれる男を容赦なく連打する。
    「むぅ、今ですぅ、烈光さん」
     霊犬の烈光を呼んだ亜綾の手がむんずと掴む。烈光さんがもう勘弁してよと言う表情を見せる中、亜綾が大きく振りかぶる。
    「必殺ぅ、烈光さんミサイル、ダブルインパクトっ」
     亜綾の声と同時に娑婆蔵がふわりと男の前からどく。視界から消えた娑婆蔵の代わりに烈光さんがドアップで迫る。
    「ひっ!」
     驚きで声を上げた男の顔面に張り付く勢いで斬り裂いた烈光さんに視界を覆われる。痛みと共に視界がクリアになった瞬間、そこにはすごい勢いで突っ込んでくる亜綾が見える。
    「ハートブレイク、エンド、ですぅ」
     容赦なく杭を撃ち込んだ亜綾が、ひと呼吸置いてトリガーを引くのと同時にふぅと声を出す。痛みに呻く男に、影が忍び寄る。
    「喰らえ」
     亜綾が言った通り、本当にもうエンドなのだろう。ふらふらとする男を鋭二郎の影が飲み込んでいく。
     闇を振り払うように暴れた男が光を見た瞬間、戦の飛び蹴りが炸裂した。綺麗に着地した戦と違って、男は転がった。
     そして指の先から白い糸のようになって、その体を消していく。消えていく男を見て、小太刀が酷く悲しげに瞳を伏せる。
     完全に消えてしまった後も、男が存在した場所を見つめ切なげに膝を折った。その手には墓石代わりなのだろうか、少し大きな石が握られている。
     死因、ピーナッツ。
    「優しさよな!」
     墓石に刻まれ……黒マジックで書かれたのは名前ではなく、死因……。
    「さぁ、みんなでフードファイトですぅ」
     大量のそうめんの束を掴んだ亜綾が完食をめざして、みんなを見る。
    「ショボリのお家パパが無職でビンボーだから食べられる時にいっぱい食べておきたいねー!」
     任せてと言うように瞳を輝かせたショボリが、自信満々に頷いてみせる。全部の薬味の組み合わせを楽しむべく、すでに台のそばにスタンバイしている。
     音音ももっぱら食べる側と、そうめんは流れるのはまだかと瞳を輝かせる。
    「今度は、私が流しますね」
     茹でてもらったそうめんを手に、にょろがほんわかと微笑む。早く早くと言う声に、さらに笑みを溢れさせてそうめんを流す。
    「美味い」
     つゆに用意してきた山葵をやや多めに溶いて、しそと小口切りにしたネギを入れた鋭二郎が呟く。やはり自分の好きな味が一番。
    「う~ん、掴むの難し~」
     綺麗に流れるそうめんを箸で掴んでいく仲間に、音音が難しそうな表情をみせる。けれどすぐに楽しそうな表情に戻る。
    「上手い人のを観察してマネっこ♪」
     じーっと音音に見られて、少し恥ずかしくもあるのだった。
    「おそーめん、美味しいね!」
     ショボリが嬉しそうに声を出すと、小太刀が激しく頷く。食べられるときにしっかり食べておこうと、頑張る二人なのだった。
    「ショボリ、今日憶えた美味しいをお家帰って伝えるねー」
     まだまだいけると口に運ぶ中、亜綾もどんどん口にそうめんを入れていく。実は食べても太らない大食いなのだ。
    「まだまだいけるでしょお?」
     箸が遅くなる仲間を見て、亜綾が首を傾げるとツインテールがふわりと風に揺れる。
    「流石でござんす」
     止まらない亜綾の箸に娑婆蔵がごくりと息を飲み込むのだった。
    「ごちそうさまです」
     礼儀よく最後のそうめんを口にした戦が終わりを告げる。
    「宅配便に配送を頼むか。代金は学園に着払いで」
     台を丁寧に解体して洗って……片付けをしながら鋭二郎が真剣に考える。すっかり空は紅く染まっている。
    「みなさんと楽しく頂くのが一番の薬味ですね」
     帰り道、優しい微笑みを浮かべたにょろが呟くのだった。

    作者:奏蛍 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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