ツインテール娘をガッてしたいらしいので

    作者:空白革命

    ●ツインテ好きなの?
     『オウフ! いわゆるストレートな質問キタコレですねおっとっと拙者『キタコレ』などとついネット用語がまあ拙者の場合ツインテ好きとは言っても、いわゆる髪型としてのツインテでなく萌概念として見ているちょっと変わり者ですのでツンデレブームの影響がですねドプフォついマニアックな知識が出てしまいましたいや失敬失敬まあ萌えのメタファーとしてのツインテは純粋によく書けてるなと賞賛できますが私みたいに一歩引いた見方をするとですねポストポニテのメタファーと商業主義のキッチュさを引き継いだ要素としてのですね金髪吊り目ツインテの文学性はですねフォカヌポウ拙者これではまるでオタクみたい拙者はオタクではござらんのでコポォ』
     という文字がスケッチブックに書かれていた。びっしり書かれていた。
     橘・千里(虚氷星・d02046)はそんなスケッチブックを手に、遠くをじっと見ていた。
     どのくらい遠くかっていうと、世界の向こう側とか、画面の向こう側とか、そういうのである。ちなみにここでいう画面の向こう側とは『二次元の嫁に会いたいが画面の向こうへ通れない』の用法で使う言葉である。拙者メタではござらんのでドゥフフフォカヌポゥ!
    「…………」
     そんな千里の周りには、しっぽが二つに枝分かれしたシャチホコみたいなバケモン(メス)が大量にうぞうぞしていた。
     ツインのテールである。それだけである。他意はない。
     黙ってページをめくる千里。
    『よくもだましたアアアア! だましてくれたなアアアア!』
     その直後、千里はツインテニウム欠損症でぶっ倒れ、びくびくと激しくけいれんするのだった。
     
    ●語源に関して何も知らないし関係ないよほんとだよボク嘘つかないよ十一歳美少女だよほんとだよ
     エクスブレインがいうにゃーこうである。
     『こちらツインテ祭り』『ツインテール娘の大群が出迎え』『あなたもイチコロ』みたいな頭の悪い看板があって、ホイホイついて行っちゃうとバケモンだらけの謎空間に取り込まれてしまうという、そんな都市伝説が実体化しちゃったそうな。
     まさかそんなトラップにひっかかる奴ぁいねえと思ったが、ニンジンぶら下げたロバみたいに猛ダッシュで突っ込んでったコがいたそうな。
     っていうかそれが千里さんだったそうな。
     この空間に出てくるバケモンこと『ツインテさん』はしっぽが二つに分かれたシャチホコみたいなやつである。
     どういう仕組みか知らんが飛びかかって噛みついたりしっぽから静電気ばちばちするという地味にいやな連中なのだ。
     つまるとこ、都市伝説の罠にあえて飛び込み、こいつらをやっつけて都市伝説ごと消滅させるのが今回のミッションということだ。
     がんばっ!


    参加者
    神坂・鈴音(記者を目指す少女・d01042)
    橘・千里(よくもだましたな・d02046)
    鋼・世界(勇壮美麗フルメタルヴィーナス・d02590)
    中島・陽(ハートフルメカニック・d03774)
    三条院・榛(猿猴捉月・d14583)
    犬祀・美紗緒(傾愛妃護・d18139)
    木場・幸谷(純情賛火・d22599)
    壱風・アリア(光差す場所へ・d25976)

    ■リプレイ


     揺れる長距離バス。
     硬いシートに後頭部をあずけ、犬祀・美紗緒(傾愛妃護・d18139)はクーラー口を眺めていた。
    「ツインテールには細かい定義があるんだよ。具体的には結び目が耳より高くて、束が肩より下へ行くのがツインテール。短かったらピッグテールで、結び目が低かったら二股のおさげ、条件を満たしつつ後ろ髪を残したらツーサイドアップだよ。だからボクは髪の長さ的にピッグテールにしたんだけど……純血でなくても国籍を得られるように、ごく一般的な視点でみたら髪を二股にした時点である程度はツインテール性があると見ていいはずだし、日本ツインテール協会はこれらの髪型をツインテールの一側面として定義しているから決して怖じ気づく必要はないんだよ。聞いてる?」
    「聞いとらん」
     三条院・榛(猿猴捉月・d14583)はグルメ雑誌を顔にかぶせたまま応えた。
     雑誌の内容は家庭でもできるエビ料理とかそんなである。
    「日本ツインテール協会とかいうおかしなモンがある所までしか」
    「八割聞いてんじゃねえか」
     同じくエビレシピだかなんだかをスマホで検索していた木場・幸谷(純情賛火・d22599)ががばっと顔を上げた。
     前の席で自分の髪をいじる壱風・アリア(光差す場所へ・d25976)。
    「つまり私は細かくはピッグテールに分類されてるわけね。ちなみに語源を調べてみたら、航空機の名前にあたったわ。F14トムキャット……というかファイターシリーズの六番以降全部なんだけどね。ところで、垂直尾翼って大抵斜めになってるけど、言葉として矛盾してないかしら。vertical tail surfaceを和訳する際に縦尾翼だと誤解をうけるからって意図かしら? そうそう垂直で思い出したけど垂直離着陸機の構想はニコラ・ステラからっていう都市伝説があったそうじゃない。そう考えると現代の戦争様式の基本形態はニコラスタイルからの」
    「ね、ねえ、この話やめない? なんだか危ない気配がする。鋼通信と同じ何か異次元の気配を感じるの」
     まあまあの構えをとる鋼・世界(勇壮美麗フルメタルヴィーナス・d02590)。
     世の中には触れてはいけないエリアというものがある。それがまんじゅうの薄皮一枚向こう側だったとしてもだ。だから十五年前のおじいちゃんの話はよそう。世代と次元を超えたリファイナルデザインができて満足みたいな話はよそう。
    「話を戻して……鋼鉄のツインテールって響きがラノベっぽくない? 残念ながらなかったけど」
    「ツインテールへの想いだけで戦うヒーローモノならあったけど?」
    「あったんだ……」
     唖然とする世界をよそに神坂・鈴音(記者を目指す少女・d01042)はぶらぶらと足を投げ出した。
    「しっかし。ツインテールへの愛をしゃちほこ味のえびで騙すなんて、そんなことは許せないわ!」
    「それにひっかかる千里も千里だけどね……」
     深く被っていた帽子を上げる中島・陽(ハートフルメカニック・d03774)。
    「人混み苦手で出不精な千里がアクティブに遠出した事実を喜ぶべきか、この事件を悲しむべきか……ま、事前に一般被害を押さえられることを考えよっか」
     やがてバスは目的の土地へと到着した。
     あえてどことは言わんが、日本で初めて『ツインテールキャラ』という言葉が生まれた土地である。

     所変わって都市伝説空間。
     大量のツインテールさんに囲まれ、橘・千里(よくもだましたな・d02046)が白目を剥いていた。
     枕元には血かなんかでこう書かれている。
    『くそぉ!!エビじゃねぇか!! 騙したな!!? 騙してく……え? ツインテールだしメスだって? そっか。じゃぁ嘘じゃないねってそうじゃねぇよぉ!!! 私が見たかったのはパンピーでも灼滅者でも都市伝説でもいっそダークネスでもいいから人型でツインテールヘアーの女の子が見たかったんだよ!!! 拙者怒ったでござる! めっちゃ怒ってんでござるよ! 実写版牙突を見た和月並でござるよくっそお!』
     暫くすると、血文字を書いていた指がぴくりと動いた。
     ハッとして意識を戻す。
     そう、まるで学園モノの主人公が授業サボって屋上で寝てたらヒロインがやってきて『まーた授業さぼってー』とか言って顔を覗き込んでくるようなそんなアングルで……。
    「……」
     頭から二枚の鉄板ぶら下げたライドキャリバー・ディオがいた。
    『コレジャナイ!!!!!!!!!!!』
     想いの余り、吐血が空中で文字を成したという。


     いい加減これが戦闘する依頼だってことを証明しないといけないので、戦闘シーンをガッとやっておこう。
    「あなたは私たちを怒らせたわ――!」
     鈴音は大地を蹴り出し、ツインテールさんを空中に放り出した後、真空を踏むほどの勢いで連続蹴りを叩き込み、下強キックコマンドでもって炎の踵落としを叩き込んだ。
    「ツインテールと聞いて、元ネタであるところの怪獣らしき何かが出てくるのは分かるわ。鉄板ネタだもの! でもこのギャップは、ツインテニウム欠損症を引き起こすほどにつらいのよ!」
    「……」
     お姉さんたちなんか言ってるなあくらいの顔で、美紗緒は扇子を棒状に折り畳んだ。
     その後ろでは全く同じ動作でこま(ビハインド)が扇子を畳んだ。
     ぱたぱたぱたんという音がシンクロし、二人は全く同じ動作で扇を振りかぶり、ツインテールさんを正面からたたき伏せる。
    「敵はボクたちが引き受けるよ。だからその間に千里先輩の意識を取り戻してあげて!」
     一人、いや二人だけで私たちを引き受けるなんていい度胸だわみたいなテンションでツインテールさんたちが彼女を取り囲んだ。
     が、そんなツインテールさんたちが突如として破壊された。
     そう、美紗緒とは別の方向から突っ込んできた榛と幸谷によってである。
     幸谷が炎のキックで飛び込み、榛が霊力キックで飛び込むといういわゆるダブルキックである。
     彼らは着地姿勢からスッと立ち上がり、鼻かしらを親指で撫でた。
    「美紗緒はんにばっかりエエカッコさせんでェ」
    「そうさ。俺たちも……こいつらに用があるんでね!」
    「先輩っ……!」

     いっぽうそのころ。

    「ほら千里ちゃん、本物のツインテールだよ! しゃちほこじゃないよ!」
     白目を剥いて首ブリッジ中の千里と。
     きゅっと二股にまとめた髪を両手で持ってぱたぱたさせる鈴音がいた。
    「むーん、まだツインテニウムが足りてないみたい。協力して!」
     ちらりと足下をのライドキャリバーを見るアリア。
    「うちのフリューゲルが二股尾翼なんだけど、これでもいい?」
    「また吐血しちゃうからやめて!」
    「じゃあ……」
     アリアはピッグテールを片手でぱたぱた払ってみせた。
     すると千里の右頬にあるイナズマタトゥーが下二割ほど赤く染まった。
    「あっ、効いてる効いてる!」
    「効いてるのこれ? なんか涎出てきたけど、食べようとしてないわよね? さすがに見るだけにして欲しいんだけど……」
    「十分だよ、次は――!」
     振り返ると、世界が髪をリボンで結び直していた。
    「趣味成分の補給なら、やっぱり経皮補給よね。お母さんもそうだった気がするし。つまり……巻けばいい?」
     ツインテールの片方を千里の首に巻き始めた。
     なんか歪んだ性欲の発露みたいで恐い光景だったが、千里のイナズマメーターは順調に七割強まで回復していた。
    「いける?」
    「た、たりない。あとちょっとだけ足りない。こんな時は……最終兵器よ、陽さん!」
    「えっあたし!?」
     陽は両手と首をばたばたと振った。
    「無理無理! そんなオンナノコした格好とか無理だって! メイドコスだってロングのオールドイングリッシュスタイルが限界だったんだよ!? それに見てほらあたしの髪質! 短いしぼさぼさだし……」
    「そんなことないわ。陽さんはやれば出来る子! 鋼さん、壱風さん、お願い!」
    「ソウルアクセス(物理)」
    「プリンセスモード(物理)」
    「わっ、ちょっ、やめっ……やめてー!」
     二人はガッと陽に組み付いたかと思うと、異次元の早業で彼女のコスチュームをチェンジさせた。
     そして現われたのは、乙女座りしたフリフリドレスの陽である。
     髪はウィッグによって長い長いツインテールとなり、クシとストレート用のヘアスプレーを通した髪はつやっとなめらか。フリルのついたリボンとバイザーが彼女らしさを僅かに残し、新たなイラスト発注への意欲がかきたつワンカットであった。挿絵申請お待ちしております。
    「う、うぅ……どうかな……」
     視線注目。
     その時千里の脳内ではツインテールプラグに入った千里が操縦ハンドルを握りしめ、『ツインテを返せ!』ゆーてガッと押し出した。
     すると。
     千里のメーターが急速に上昇。充血で真っ赤になった目が急速に色を取り戻した。
     それだけではない。(たぶん箒で)身体が宙へ浮き上がり、(たぶん祭霊光で)身体からまばゆい光をまき散らした。
     光に包まれた千里は大きく腕を広げ、腕から下がった二枚の垂れ幕に『素晴らしき人生』『ツインテイズゴット』と大きく文字が焼き付いた。
     かっこかわいいアリアさん。
     ほほえましいリンちゃん。
     うつくしき世界の姉御。
     そしてあきら……似合ってるよ!
    「行きなさい千里ちゃん! 誰のためでもない、自分自身の願いのために!」
     光の二重螺旋を引きながら天へと昇っていく千里。
     それを見上げたアリアや世界たちは微笑み、愛と平和の意味を知る。
     そして世界はツインテールのかわいさと愛によって平和を見いだし、人類に真なる泰平時代が訪れるのである。
    『この世よ、ありがとう。ツインテールよ、ありがと!』
     後にこの出来事がツインテインパクトとして記録され、人類は新たなる一歩を踏み出すのである。
     ――完!

    「おいちょっと待てい。終わらすな。こっちまだ途中やねん! 喰ってる最中やねん!」
     画面にでっかく描かれた『完』の文字を切り裂き、榛が飛び出してきた。
    「つーかそれ、次回作でいきなり『何もしないで』つって首輪嵌められるフラグじゃね?」
     びっちびっち暴れるツインテールさんを網に入れてつり下げる幸谷。
    「じゃ、こっちの用事始めるぜ!」
     どこからか三分でお料理するかんじのミュージックが流れてきた。
     巨大なレコードの上でわけもわからずくるくる回される美紗緒。
     気がつくと美紗緒はキッチン台の前に立っていた。
     同じく立ってる榛と幸谷。
    「センセー、今日はなに作るんやろか」
    「おう。今日はツインテールの丸焼きを作るぜ! まずはツインテールさんを……こうだぁ!」
     幸谷は髪の両サイドを妖怪みたいに伸ばしてツインテールさんを捕獲。台の上に縛り付けた。
     うわあという顔で見つめる美紗緒。
    「丸焼きちゅーことは次はやっぱり?」
    「おう、焼くぜ!」
     二人はツインテールさんを両手でガッと押さえるつけると、炎系のサイキックを死ぬほど叩き込んだ。
     ピギーピギーいうツインテールさんを、わなわな震えながら見つめる美紗緒。
    「そして、喰う!」
    「よっしゃあ!」
     画面の外でバリムシャァする二人。
     美紗緒はカタカタ震えていた。
     頬になんか得体の知れない汁が飛んできた。
    「……で、味のほうやけど」
    「……おう」
     モザイクのかかった物体を見下ろし、榛と幸谷は顔を見合わせた。
    「『血まみれのかまぼこ』みたいな味やな」
    「おう……」
    「まさか僕らまで騙されるとは思わんかったわ」
    「おう……許せねえな……」
     男たちは口をぬぐい、怒りに震えた拳を振り上げた。

     かくして、ツインテールさんはひとつのこらず灼滅した。
     だが忘れてはならない。
     誰かの願いから生まれた都市伝説は、なにもツインテールだけではないということを。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 4/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 18
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