不如帰

    作者:来野

     盆を越えたが、暑さが和らぐ様子はまだない。
     夕暮れ時。とある屋敷の仏間にも重たい熱気がこもっていた。
     橙色の西日のせいなのか。いや、それは床の間を背にした客人のせいかもしれない。線香の香りに包まれて老爺は考えていた。
     説法を終えて、客は言う。
    「さて、あとは思うがままに。無理は申すまい」
     筋骨逞しい身を僧衣に包み、額に黒曜石の角をいただいた男だった。普通ならば、怪しまぬはずもない。だが、そうやんわりと引かれてしまうと逆に信じてしまいそうになるからおかしなものだ。
    「わかりました。わずかばかり残された日々、活かすことができるものならば」
     老人は頷いた。そのさまは、わずかばかりと語ったそれに、むしろしがみ付くようにも見える。正義が外にあれば、自らを欺くことはたやすい。
     僧形の男、いや、慈眼衆が笑みを浮かべた。脂っこいほくそ笑みだが、執着する者の判断は違う。老人が羅刹の手の許に頭を垂れ、その身が見目を裏切るほどの力を得ようという、その時。
    「待て、坊主」
     鋭い一言が飛んできた。障子が開く。立っているのは、頭部が日本刀という異様な風体の男だった。長身のその背後には、三角頭の影が二つ。どうやら、ペナントのようだ。
    「待たぬと申したら?」
     慈眼衆の応えに、刀剣の男が鯉口を切った。
    「斬り捨てる」
     なんと。目を丸くした老人へと、慈眼衆は白木の杖を投げ渡す。自らが手にするのは、飴色の戦輪。
     律儀に杖を構える老人を見て、刀剣男は白足袋の爪先を静かに前へと出した。こうなってしまったのならば、目を背けるのもまたむごい。
    「我は宗三左文字怪人、名はサモン。いざ――」
     
     暑い。もうしょうがないから水道の水を頭にかぶっていた石切・峻(高校生エクスブレイン・dn0153)は、聞こえてきた声に驚いて顔を上げる。声の主の金の髪に、小さな雫が飛んで輝いた。
    「ああ、申し訳ない。……宗三左文字ですか」
    「信長の刀だね」
    「いかにも相容れなさそうだな。報せてもらえて助かりました。行こう」
     報をもたらせてくれたレニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)と連れ立ち、午後の教室へと現れる。首にはスポーツタオル。
    「天海大僧正と安土城怪人が琵琶湖を巡って戦っていることは、既に知っていると思う。皆の助太刀で、天海大僧正側が有利なようだ。その結果、安土城怪人が刀剣怪人軍団を戦場に投入し始めたらしい。彼がその一端を聞きつけてくれた」
     レニーを紹介して椅子を勧め、その間も説明を続ける。
    「慈眼衆は滋賀県西部で強化一般人を増やそうと活動中だ。刀剣怪人軍団は、そこを攻撃しようと動いているらしい。彼らが激突すると、周囲の一般人にまで被害が及ぶかもしれない。それを看過するわけにはいかないし、どちらかに肩入れして琵琶湖の戦いを早期に束ねるという手も考えられる」
     説明している本人が、そこで首を捻った。しかしと呟き、低く唸る。
    「この件が戦いの流れを決める可能性もあるけれど、今の時点では何が正解か判断がつかない。申し訳ないが、どういう方法でこの事件に介入するかを、君たち灼滅者に託したい」
     助けて欲しいと頭を下げる。
     慈眼衆は神薙使いと断罪輪相当の能力、刀剣怪人はご当地怪人と日本刀相当の能力を扱う。また、慈眼衆側にはマテリアルロッド相当の杖を携えた老人、刀剣怪人側には解体ナイフ相当の脇差を携えたペナント怪人二体が味方している。
     場所は大きな屋敷の仏間。そこそこ広い上に怪人が開け放った障子の向こうは、廊下と縁側を挟んで大きな庭となっている。動き回るに不足はない。
    「戦力でいえば刀剣怪人側が優勢のようだ。けれど、状況によってはどちらが勝ってもおかしくない。君たちがどのように介入するかで、戦いの雲行きは変わると思われる。やり甲斐のある任務だが、どうか無事に帰ってきて欲しい。お願いします」
     峻は首からタオルを外して頼み、皆の姿を眼差しの底に刻んだ。


    参加者
    伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)
    宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)
    レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)
    ヴァン・シュトゥルム(オプスキュリテ・d02839)
    鳳蔵院・景瞬(破壊僧・d13056)
    日影・莉那(ハンター・d16285)
    狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309)
    百合ヶ丘・リィザ(不思議の国の武闘派アリス・d27789)

    ■リプレイ

    ●影絵
    「いざ――」
     刀剣怪人の声が、戦端を開く。開け放たれた障子の間、四角く切り取られた光景はあたかも舞台のようだ。
     灼滅者たちは袖にあたる位置へと身をひそめ、タイミングを計っている。時計の針が、カチリと進む。
    「いぃやぁぁーーっ!」
     気合を放って突っ込んでいくのは、彼らの目の前で強化一般人と化した老人だった。対するのは二体のペナント怪人。異様な図である。
     それに比べて慈眼衆はといえば、
    「良きご覚悟」
     褒めるだけ褒めて、後ろへと下がった。踏み込んだサモンが、足袋の裏で畳をささくれ立たせる。太刀が届かない。
     ざぁっという音が、仏間に散った。まるで温く赤いにわか雨。そして、一気に広がる生臭い匂い。胸から血煙を上げて、老人がたたらを踏む。数で分が悪い。
     物陰の鳳蔵院・景瞬(破壊僧・d13056)と伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)の周囲から、白刃にも似た空気が広がり始める。近寄りがたい場と化す屋敷。その物音を外界から切り離すのは、ヴァン・シュトゥルム(オプスキュリテ・d02839)。外した眼鏡は胸元へ。
     誰も行き交わず、誰も見聞きしない。そんな血まみれの一幕へと、灼滅者たちは駆け込む。濡れ縁を踏む靴音がいくつも響いた。
    「失礼」
     の一言はヴァンのもの。
     いち早く座敷に上がった百合ヶ丘・リィザ(不思議の国の武闘派アリス・d27789)が、ライドキャリバーのブラスを伴い慈眼衆の側を向く。
    「ここはひとまず助太刀します♪」
     令嬢然とした少女の宣告に、僧形のダークネスは眉根を持ち上げた。そして口端を緩める。
    「心中は知れぬが、まずはありがたい」
    「さあ、遊びましょうか!」
     それを聞き、宗三左文字怪人が抜刀した。
    「何のつもりかっ!」
     抜く手の一閃はしかし羅刹を傷つけられず、シールドを構えたリィザの腕を裂いて脇へと抜ける。それでも、お嬢様の笑みは変わらない。
     背後から縁側に上がった狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309)が、カードを手にぐっと息を噛んで整える。
    「……僕の手よ、震えないで」
     解除完了。ナノナノのスピネルをリィザの許へと向かわせながら、注意深い視線を注ぐ先は慈眼衆の男だった。鬼の角を持ちながら仏であるかのように笑むダークネスは、見られていることにも気づいていなさそうだ。
     その心中はさっぱりわからないが、従容と彼らの動きを受け入れて全く手出しをしないことだけは確かだった。脂くさいオヤジが楚々と控えているさまは、見ようによっては気色悪い。
     だが、彼もまた本心を覚られるわけにはいかなかった。さりげなく視線を外し、得物を構えてペナント怪人へと向き直る。
    (「位置が――」)
     露払いであるペナント怪人たちは、サモンの前へと出て老人と切り結んでいる。満を持して踏み込んだ身には、まず眼前に立ちはだかる刀剣怪人が邪魔だった。斬戟がサモンの背に阻まれてしまう。
     いたしかたない。そこを回り込む形で突っ込むのは、日影・莉那(ハンター・d16285)とレニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)だった。莉那の拳が一方のペナント怪人の横面を捉える。
    「ま、敵の敵はなんとやらって奴だな」
    「なんだとっ? ……ッ、ガッ!」
     レニーの手にはニュウドー・スピア。
    「鳴かぬなら殺してしまえ、だったかな。武器の中でもひときわ剣呑だね」
     槍穂が唸ってペナント怪人の脇腹を穿ったその時、立ち上がるのもやっとの老人が、杖を引きずって彼らの腕の下をかいくぐった。征士郎の声が飛ぶ。
    「失礼ながらご老体。心中図りかねますが、人として生きたのなら、人としてその命全うすべきと私は思います」
     深い皺に埋もれきった表情が、あからさまに歪んだ。この場で一人、浮いたものの顔だ。
    「あんたらは人なのかね?!」
     それらのやりとりをよそに、混戦に焦れた刀剣怪人が切っ先を掲げる。血路を開くつもりか。
     一歩引いていた宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)が、ダンッと畳を蹴った。
    「無茶だ!」
     老人の腕をつかんで、倒れ込む。慈眼衆側には攻撃どころか回復も行わなかったのだが、死の危険は見過ごせなかった。彼にも莉那にもレニーにも、一切の逃げ場がない。
     冷え切った太刀風が逆巻き、蝉時雨がひたりと止んだ。

    ●反転
     天井まで飛び散った血が、ゆっくりと畳へと落ちてくる。凍り付いているように見えて、時間は容赦なく進み続けていると物語るかのように。
     庇い傷ついた冬人の腕の中で、老人の息遣いが静かに絶えようとしている。この瞬間までもったのが奇跡と思える息だ。
    「おぉ……おぉ、よく……来た、のぉ……」
     孫と見間違えているのだろうか。灼滅者たちを見た目が、ゆっくりと光を失う。
    「じぃちゃ、ん……、まだ、まだ、……げん……、……」
     そこまでだった。がくり、と頭が仰け反る。
     聞いていたのかいなかったのか、刀剣怪人は冬人ごと踏み越えて羅刹に迫ろうとする。その背へと、老人のものとは別の杖が強く打ち込まれた。
    「ぬぁっ、ガ……ッ?!」
     黄昏の銘を持つロッドを振り抜いたのは、ヴァンだった。風が唸る。
    「強化一般人とはいえ、ご年配の方は敬い大切にするべきでは?」
     できることならば、手出しはさせたくなかった。痛恨の一撃は、ドゥッという爆風で床の間の掛け軸をもまくり上げる。
     リィザがワイドガードを用いるのを見て、景瞬が身に見合った強弓に癒しの力を番えた。弦が唸る。僧兵のごとき腕で放つ一矢が、冬人の意識を繋ぎ止める。
     まだだ。ここで心を挫くわけにはいかない。豪快な声を張る。
    「さあさあ、一つ死合いといこうじゃないか!」
     刀の切っ先を落としたサモンが、肩で息をしながらそちらを見返る。手下二人を落とされて、劣勢は明らかだ。脇へと一歩動こうとした。
     その周囲へと見えぬ力が走り、怪人の動きを鈍らせ始める。
    「く、っぅ?」
     征士郎が張り巡らせる除霊結界だ。下段に構えた切っ先が瘧のように震えてなかなか持ち上がらない。指先からどろりとした血が伝い、鍔を濡らす。何とか斬り込もうと身もがいたが、泥を泳ぐに似た動きもそこまでだった。
     ざっくりと胴を貫いたのは、刃と化した光臣の利き手。肋の隙間の位置からのぞく切っ先は、ひそとも揺らいではいない。
    「口、惜しッ……ァグ、ァァ!!」
     崩れ散るサモンから腕を引くと、光臣は頬に飛んできた汚濁を肩口で拭う。目を閉じるいとまもなかった。その背を叱咤激励していたのは、スピネル。
    「ナノ!」
     乗馬鞭でピシピシと。
    「ちょ、だからスピネル痛い! 僕はどえむじゃない!?」
     何というか独特ではあるが、ある意味心温まる様だ。それを黙って見ていた羅刹の足が、障子の側へと動く。
    「よきかな、よきかな」
     などと独りごちてその場を離れようとする慈眼衆の行く手に、リィザが動く。
    「さあ、あなたも遊んで下さいな……!」
    (「ダークネスとの2連戦。学園にとって重要な戦いで不謹慎ですが、心躍りますわね……!」)
    「んむ?」
     前を阻まれた羅刹は、脇を回ろうとした。そこをビハインドの黒鷹を伴った征士郎に阻まれる。眉根をひそめ、ならばと反対側へ。そちらを塞ぐのは霊犬のライラプスを連れた莉那。
     気がつけばずらりと取り囲まれていて、縁側に出ることができない。
    「言動が一致しておらぬな」
     僧形の男の言葉に、莉那が首を横に振る。
    「いや、私達の行動は一貫しているよ。一般人に累が及ばない事、それが大前提だ」
     ふむ、と首をひねる羅刹。
    「まあ、有用なものではあろう。だからこそ、後生大事にするものでもあるまい」
     まさか救済だなどと言い出すのではなかろうな。そうした莉那の危惧は現実とはならなかった。仏心とはずいぶん遠い応えである。
    「天海は人の中で生きるのを好むんだろ。これは本当に天海の意思で行っている事なのか?」
    「私は私の思うところを行っておる。主らはどうだ」
     畳に手をつき、冬人が立ち上がった。
    「刀剣怪人の勢力を削ぎたかったのは本当だよ。ただ、ご老人を引き込むのを黙って見過ごせるかというと、それも別の話なんだ」
     慈眼衆は、黙って彼の顔を見つめた。一つ静かに頷く。
    「無念であったな」
     さて退かぬならば、押し退けてでも。そうした様子で踏み出した僧衣の背へと、レニーが手を伸ばす。迸るオーラが暮れなずむ仏間を真っ直ぐに横切った。
    「ゲスめ。君たちの抗争に、一般人を巻き込むな」
     避けようとした羅刹の身がぶつかり、灼滅者たちの包囲が崩れる。部屋の片隅から景瞬が戻ってきた。座卓の陰に運んだのは、老人の屍。
    「はっはっは! これもまた戦略、だろう?」
     襷がけの腕に分厚い筋肉の隆起を見せ、槍を脇構えに構える。その朗らかな笑い声に、もう一方の僧形がふっと足を止めた。
    「引き際見誤ったは、我も……か」
     そして、ついに戦輪を構える。

    ●理由
     問題は、敵が無傷であることだった。
     守りが厚かったことと混戦の中で刀剣怪人側を始末できたことで、消耗は比較的少ない。それでも二連戦だ。薄暗くなった仏間の内に敵の呪言が轟くと、まず、サーヴァントたちが次々と倒された。
     光臣は自分と相棒の戦力差を極力悟られまいと気を遣っていたが、それでもスピネルを打ち倒されて、奥歯を噛み締める。一対八となってみると、踏み荒らされた室内は案外、広い。立ち回りのしやすさが、皮肉だ。
     エアシューズの蹴りで戦輪を押し返し、征士郎が体勢を立て直す。視界の隅に垣間見えるのは、もはや動かない老人の手。
     なぜ、彼が戦いに身を投じたのかを、征士郎は量りかねていた。別の形で命を活かすことはできないのかと考えてもいた。そして今、自分自身が決死で羅刹に突っ込んで行っている。回る刃が、彼の頬を引き裂いて使い手の手に戻った。
    「飾っておけば美しかろうに。なにゆえ、傷つけるのやら」
     慈眼衆が、呟く。
     それを聞いたわけではないが、仲間の傷を埋めるのは今は景瞬の許から吹きそよぐ風だった。そちらへと踏み出そうとする敵の足許を、冬人が白く凍りつかせる。畳を切り刻みながら彼へと飛んでくる旋風を、莉那が割り込み身に受けた。
     ずるり、と一歩下がった羅刹の足許には、鉄錆色に毛羽立った足跡が残った。少しずつだが、確実に削ってはいる。
     リィザがバベルブレイカーを腰溜めに構えた。
    「ほぉらほら、私にも構って下さいな!」
     勢いの乗った一撃を、我が身ごとダークネスの懐へと叩き込む。受け止めようとした戦輪は軌道を読みそこね、袈裟懸けの鳩尾が杭を呑んだ。
    「グッ!」
     とっさに逆の手を差し出した羅刹は、すぐ目の前のリィザの肩を掴む。五つの指先から鉤爪が伸びた。
    「泣かぬか、娘……」
     そのまま、大きく膨れ上がった異形の腕が肩骨を打つ。抉る勢いが乗っている。
    「泣くはならぬか!」
     ダークネスの声は問いではなかった。柱にぶち当たって背を跳ねさせても、リィザは乱れた裾を払って流麗に構え直してみせる。そのまま座り込みそうな激痛に襲われながら、唇は柔らかな表情を消さない。たとえ血を吐こうとも。
     慈眼衆が腹の傷を押さえた。その足許に黒い靄が生じ、それは不思議な図を描き始める。梵字のようで、そうではない。歪み狂ったおかしな何か。
    「回復だ」
     光臣の注意喚起が、皆の意識を打った。
     させてはならない。そして、この瞬間を見逃してはならない。レニーが駆け込んだ。ドッと一撃を突っ込む瞬間、紫色に沈んだ縁側にオーラが爆ぜて淡く翼が翻るようにも見える。
    「グ、ァッ……ッ!」
     慈眼衆の顎が上がり、回復の陣は中途半端のまま形をなさない。
    「援護します」
     逆から同じ一発を放つのは、ヴァン。倒れ込んで来たところを押し返す衝撃で、最中の羅刹を強打する。
    「ォ、アガッ!!」
     おかしな方へと脊柱が折れ、僧形の男の手から戦輪が滑り落ちた。床で跳ねて砕け、霧のように消える。
    「ア……」
     ずし、と倒れ伏す振動は濡れ縁の下で起こり、翻った袈裟がぼろぼろに崩れて塵芥と化すのは瞬き二つ後のことだった。
     着地したレニーとヴァンの拳が、こつり、と小さな音を立ててぶつかる。

     夕闇がすぐそこまで迫っていた。何もかもが輪郭をあいまいに溶かし、薄暗さの中に沈んでいる。
     障子は引き裂け、まるで格子のような有様だった。そこにもたれかかる灼滅者たちの傷は深く、景瞬の動きが忙しい。辛勝だったが、二つの陣営を相手に皆、最後まで戦い抜いた。
     ヴァンが眼鏡を取り出してかけ、周囲の惨状に目を瞬く。
    「流石にこれは申し訳ない気がしますね……」
     よりにもよって、仏間だ。軋む身を起こして、片付け始める。
     広い屋敷だったが、立派な座卓に座布団は一つ。落ちた位牌を元の位置に戻す音が、存外大きく響く。灰が散らばり、線香の香が戻ってくるには時間がかかりそうだった。
     静かな闇が訪れ、全てを塗り込めてしまおうとしていた。どのような思いも全て。
     いずこに帰らん。
     学園が彼らを待っている。

    作者:来野 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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