キミは弱い子

    作者:時任計一

    「キミは弱いね」
     少年の耳に、空からそんな言葉が届いてくる。しかしそれは、もう知っていることだった。自分は弱い。しかし空の声は、こう続けた。
    「例えば……ほら、こんなのはどうかな?」
    「……え?」
     突如、少年の目の前に、2人の人物が現れる。1人は体の大きい、強そうな男性。もう1人は、少年の友達だった。そして男性は、彼の友達を思いっきり足蹴にする。
    「や、やめろぉぉっ!」
     怖いと感じる前に、体が動いた。少年は男の前に立ちふさがり、友達を助けようとする。しかし少年は、男性に思いっきり殴り飛ばされてしまう。
     すごく痛い。そう思って少年が顔を上げると、男性はごついナイフを取り出し、少年の友達を突き刺した。友達はそのまま動かなくなり、どさりと倒れ込む。
    「あーあ。死んじゃった。助けに行った君が弱いから、こうなったんだよ?」
     泣き叫ぶ少年に、空の声が楽しそうにそう言う。
    「じゃあ次は……これだ!」
     今度は少年の前に、彼の妹が現れた。男性は妹に襲い掛かる。少年は再び体を張って止めようとするが、結果は同じだ。少年は殴り飛ばされ、妹が殺される。
    「いやーホント、キミって弱いよね」
     空の声……シャドウは、くすくすと笑いながら、そう言った。


    「シャドウが男の子の夢に入りこんで、趣味の悪い遊びをしてるわ。今回はそのシャドウを、その子の夢から追い出してほしいの」
     教卓に立つ藤堂・姫(しっかりエクスブレイン・dn0183)は、そう話を切り出した。
    「被害に遭っているのは、遠藤・護(えんどう・まもる)くんっていう、中学1年生の男の子よ」
     内気で控えめな少年で、運動やスポーツはあまり得意ではない。そのためか、自分が『弱い』ことにコンプレックスを持っているようだ。
    「そこをシャドウに付け込まれたみたいね。護くんは夢の中で、『自分が弱いせいで、家族や友達が殺されていく悪夢』を延々と見せられているわ。ただ、予知で見た限り、心まで弱い子には見えなかったけどね」
     しかし、このままでは、彼の心は壊れてしまう。そうなる前に、彼を悪夢から救い出さなければならない。
    「シャドウを相手にするには、決まった手順を踏んだ方がいいわ。まずは、悪夢を見ている護くんの所に行くの。そして、ESPのソウルアクセスを使って、彼の夢の中に入りこむのよ」
     護の所へ出発した日にはちょうど、彼の部屋の窓は開いている。問題なく夢に入りこめるだろう。
    「夢の中では、殴られてボロボロになった護くんと、ナイフを持った男性、そして殺される役の、護くんの友達の3人がいるわ」
     ここで、護を悪夢から救ってあげる必要がある。護に声をかけたり、シャドウが操る男性をどうにかしたりするのが有効だろう。
    「最低限、シャドウの『遊び』の邪魔をしてあげればいいわ。そうすれば、シャドウは姿を現して、邪魔者のあんた達を排除しようとしてくるでしょうね」
     シャドウは、いつでも安全に引き下がることができる。だから、そうせざるを得なくなるまでにシャドウを追い詰め、護の夢の中から追い出すことができれば、こちらの勝ちだろう。
    「シャドウは戦いを仕掛けてくる際、4人のナイフを持った男性を引き連れてくるわ。シャドウの配下ってことね」
     配下は解体ナイフのサイキック、シャドウ本人はシャドウハンターとウロボロスブレイドのサイキックと同質の行動を取ってくるだろう。配下は全員ディフェンダー、シャドウはスナイパーに位置する。
    「ホントに嫌らしいシャドウよね、こいつ。こんな奴に、人の夢を荒らされてばっかりじゃダメよね。あんたたちの力で、このシャドウにそのことを思い知らせてあげて。じゃあこの件、あんた達に任せたわよ!」


    参加者
    千布里・采(夜藍空・d00110)
    十八號・アリス(轟轟・d00391)
    宗谷・綸太郎(深海の焔・d00550)
    希・璃依(銀木犀・d05890)
    伊勢・雪緒(待雪想・d06823)
    三田村・太陽(断罪の獣・d19880)
    シフォン・アッシュ(影踏み兎・d29278)
    九頭龍・雲母(赤い血の流れる人形・d29352)

    ■リプレイ

    ●悪夢の最中に
     夜の住宅街を、九頭龍・雲母(赤い血の流れる人形・d29352)が駆ける。
    「確か……こっちだった……はず」
     雲母はそう言いながら、事前に調べておいた道を通り、シャドウの被害者、遠藤・護の部屋に入り込んだ。他の仲間も、それぞれESPを駆使して部屋に入り込み、程なく護の部屋に、8人の灼滅者が揃う。恐らく灼滅者の姿は、巧妙な前準備のため、どの一般人の目にも映っていないだろう。
    「ミンナ、揃ったな。じゃあ、始めるぞ」
     眠ったままの護を前に、希・璃依(銀木犀・d05890)はそう言い、ESPソウルアクセスを使用する。灼滅者達はそれに乗り、護のソウルボードの中に入り込んだ。

     ソウルボード内で灼滅者が最初に見たのは、ボロボロになった少年が、ナイフを持った男から、誰かをかばっている光景だった。それを見て、灼滅者達は早速、行動を開始する。
    「ちょっと待った!」
     真っ先に動いたシフォン・アッシュ(影踏み兎・d29278)が、ナイフの男の顔面に、勢いのある飛び蹴りを繰り出す。ナイフの男がよろめく中、シフォンは少年……護に笑顔を見せた。護はわずかに、緊張がとけたような表情を見せる。
     ナイフ男が見せた隙を、灼滅者達は見逃さない。三田村・太陽(断罪の獣・d19880)と伊勢・雪緒(待雪想・d06823)は、すぐさま護とナイフ男の間に立ち、宗谷・綸太郎(深海の焔・d00550)の霊犬、月白と、璃依のナノナノ、王子が護のそばに寄る。そして璃依は護の手を引き、3人と2体でナイフ男から離れた。
     その間、残りの灼滅者達は、ナイフ男の対処をしていた。攻撃を重ねつつ、十八號・アリス(轟轟・d00391)が、影で男を縛り、最後に綸太郎が、男をぶん殴る。ナイフ男はその場から消滅し、同時に護がかばっていた人物も、同じように消えていった。
    「はい、悪夢はおしまい。趣味の悪い遊びに付き合ってる暇はない」
     綸太郎はそう言って、軽く一息つく。一方後ろでは、太陽が、暗い顔をしていた護に声をかけていた。
    「相当頑張ったみてーだな、護。大切な人を守るために自分より強い奴に飛びかかるなんて、なかなかできることじゃないぜ」
    「えっ……?」
     太陽の言葉に、護がそんな声を出す。続けて、雪緒と璃依も声をかける。
    「そう。だから、護さんは弱くなんかないのです。大切な人を守るために、逃げずに敵へ立ち向かう勇気。それは強い心の現われだと思うのですよ」
    「……そうなん……でしょうか?」
    「もちろんだ。ミンナ見てたんだぞ、オマエが危険を省みずに大切な人を守ろうとしてるトコ。もっと自分に自信を持っていい。オマエは強いんだ!」
    「僕が……強い?」
     少しずつ、護の表情に明るさが見えてくる。その様子を見ていたアリスが、少し表情をほころばせながら、つぶやく。
    「優しい子だね。大事な人を守りたいと、本気で思っている、そのための行動ができる。そんな子をソウルボードで虐めて……本当に悪趣味なシャドウだ」
     アリスはキッと、別の方向に鋭く目をやる。そこに現れたのは、1体のシャドウと、その配下のナイフ男4人……合計5つの人影だった。
    「ねぇ、キミ達。ボクのおもちゃに何吹き込んでるの? ここまで追い詰めるのに、けっこう時間かかったんだけどなぁ?」
    「……なるほど。最低って言葉、あんたさんによう似合いそうですわ」
     千布里・采(夜藍空・d00110)は、普段より声を低くしてそう言い、続ける。
    「ところであんたさん、歓喜のシャドウさんとこの者と違います?」
    「歓喜のシャドウさんとこ? 知らないなぁ。ボクは誰の指図も受けないの。面白くないからね」
     つまらなそうにそう答えるシャドウに、シフォンは続けて言う。
    「もうひとつ。これに見覚え、ある?」
     そう言ってシフォンは、両親の仇が残したトランプをシャドウに見せる。
    「知らないよ、そんなの」
    「そう……じゃあ本題ね。ここから出ていってもらうよ。力づくでもね」
     シフォンは溜め息がちにそう言うと、胸元にスペードのマークを浮き出させ、攻撃準備に出る。雲母も、普段のおどおどした雰囲気を一変させ、シャドウに食ってかかった。
    「じゃあ、始めるわよ。あんたの遊びよりもずっと楽しい、戦闘っていう『遊び』をね!」
     その言葉を皮切りに、灼滅者達の攻撃が始まった。

    ●強さとは
     シャドウが力を溜めるのに続き、雲母は殺気をまき散らし、シャドウの配下を一斉に攻撃する。
    「あはははは! さぁ、何人避けられるかな?」
     無邪気に笑う雲母の攻撃を、配下たちは誰も避けられない。だが、配下の1人が霧を振りまき、味方を支援する。そして残る3人は、灼滅者達に向かって毒霧をまき散らしてきた。しかし、月白と王子、そして雪緒の霊犬、八風の回復により、毒の影響は最低限に抑えることができた。
    「よくやりました、八風! 私も……頑張るのです!」
     雪緒はそう言い、巨大化させた片腕を振って、配下の1人に強烈な打撃を与える。
    「アッシュさん、今なのです!」
    「オッケー! せー……のっ!」
     続くシフォンも、大きな魔力を杖に込め、それを同じ配下に叩き込む。強烈な攻撃を連続で受けた配下は大きく吹き飛び、その先で消滅した。
    「これで1人。この調子で、キミにはさっさと出て行ってもらうからね」
    「……キミ達は本当に、おめでたい考えをしてるよねぇ」
     シャドウはそう言うと、トランプの山を取り出し、灼滅者達に投げつける。蛇のような軌道で飛び交うトランプは、灼滅者達の前衛を容赦なく斬り裂いていった。
    「おーい、護くーん。キミ、さっき『強い』とか言われて、調子乗ってたよねぇ? 本当に強いならさ、ほら、こっちに来て、ボクを倒してみなよ」
     護の顔色が変わる。彼は一般人だ。サイキック飛び交う戦場に出てくれば、あっさり死ぬのは目に見えている。
    「できないよねぇ? キミ、弱いからねぇ。ま、今はそこで震えてでも……」
    「違うな」
     太陽はそうはっきり言って、彼のビハインド、佐助の霊撃と合わせ、2人目の配下に赤いオーラを撃ち出す。
    「確かに、強くなければ何も守れねぇ。でも強さってのは、腕っぷしとかそういうモンだけじゃねーと俺は思うぜ! なぁ、護!」
    「君は、危険も顧みず、大事な人を守ろうと動いた。そんなこと、誰にでも出来る事ではない」
     太陽に続き、綸太郎は護に向けてそう言い、配下に向かって突き進む。同時にアリスがウロボロスブレイドを振り回して、配下をまとめて攻撃し、太陽が攻撃した配下を消滅させた。直後、綸太郎は残った配下を槍で突き刺す。強烈な一打だ。
    「断言できるよ。君は、強く、なれる。強くなるために一番必要な、心の強さを、持っている」
    「アタシ達はそれを、この目でしかと見た!」
     アリスの言葉に続いて、璃依はそう言い、弱った配下に炎の蹴りを繰り出した。その配下は攻撃に耐えられず、消滅する。璃依はシャドウの方に向き直り、言葉を続けた。
    「アタシにもある。守りたいものが。だから戦う。強くなれる。大事なヤツがいないオマエこそ、弱いヤツだ」
    「なっ……!」
     シャドウが言葉を詰まらせる。その間に采は、自らの霊犬と共に、最後の配下に向けて動いていた。
    「そう、本当に強い人いうのは、たとえ弱くても、目の前の壁に立ち向かえる人のことや。あの子みたいにな」
     そう言いつつ、采はくふりと笑い、影を操る。影は動物の爪や翼の形を取り、配下をその場に縛りつける。そして動けなくなった配下を、霊犬の刀が斬り裂いた。最後の配下が、姿を消す。
    「でもまぁ、心を守るのは一番難しくて、誰でも出来るもんやない。だから、その手助けをしに来たんや。この悪夢、一緒にやっつけましょ?」
     采は護の方を見て、笑顔でそう言う。護は少し考えた後、
    「……はい!」
     と大きな声で、采に応えた。
    「……あーあ。あの子、完全に立ち直っちゃった。ここからまたやり直すの、大変なんだよ?」
     シャドウの顔に、笑顔はもう無い。灼滅者達に向けて、強い怒りをぶつけてきているのがよく分かる。
    「人の楽しみを邪魔した責任、その命で取ってもらうからね」
     シャドウは冷たい声色でそう言い、その手に力を集め始めた。

    ●影との戦い
     シャドウは漆黒の弾丸を完成させ、撃ち出そうとしている。今までシャドウが溜めていた力が、その弾丸に全て乗せられていた。
    「じゃ、これでも食らってもらおうかな」
    「させると思います?」
     しかし、その前に采が動いた。彼の刀が衝撃波を撃ち出し、同時に彼の霊犬が、斬魔刀で斬りかかる。狙いは、シャドウが蓄えた力だ。そして采は狙い通り、シャドウの力を打ち砕くことに成功した。
    「あっ、何するんだよ、お前っ!」
     シャドウはただ怒りに任せ、采に向かって弾丸を撃ち出す。相当のダメージと共に、強力な毒が采に襲い掛かるが、月白と王子がすぐに回復に回り、毒を取り除くことには成功する。
    「あはは、狙い通りいかなくて残念! じゃあ、こっちはどうかな?」
     ただ楽しそうに、雲母が攻撃を繰り出す。シャドウと同じ、漆黒の弾丸だ。ただし、その狙いは甘く、シャドウの体をかすめるだけに留まる。だが、かすったその傷口から、恐ろしい量の毒素がシャドウの体内に入り込んだ。
    「ぐぅっ……なんだよ、これはぁっ!?」
    「よーし、こっちの攻撃は大当たりだね。特製の毒の味はいかがかな?」
     挑発的な言葉を投げかける雲母。そして彼女に続いて、チェーンソーを持ったアリスが動いた。
    「なら、このまま畳み掛けようか」
     うめき声を上げるシャドウに、アリスが飛びかかる。機械の刃は騒音を出しながら、シャドウの体を深く引き裂いていく。他の灼滅者もアリスに続き、シャドウにダメージを積み重ねていった。
    「くそっ、こんな奴らに……!」
     シャドウはその場でトランプを展開し、体力の回復と共に、身を守る障壁を張る。
    「強化なんてさせないのです!」
     しかしその動きを、雪緒は読んでいた。月白の攻撃に合わせ、雪緒は魔力の光線を放つ。雪緒たちの攻撃により、シャドウの障壁はあっさり破られ、残るのはいらだった様子のシャドウだけだ。
    「……キミ達、面倒だね。ホント面倒。じゃあ、数から減らすことにしよっか!」
     そう言ってシャドウが目を付けたのは、太陽だ。彼の後ろには、護もいる。シャドウはその腕に影を宿して、太陽に突き進み……。
    「そうはさせないぞ」
     攻撃の直前、状況をよく把握し、動きを先読みしていた璃依に、行く手を阻まれた。璃依は攻撃を代わりに受け、同時に手元に溜めていたオーラで、シャドウを撃ち抜く。
    「お返しだ」
    「チッ……まぁ、いいや。次もキミを狙うから。逃げる準備は、しなくていいの?」
    「……誰が逃げるかよ」
    「ん?」
     太陽の脳裏には、彼が灼滅者となった事件が浮かんでいた。あの時、逃げないでいれば、彼は……。
    「逃げるなんざ御免だって言ってんだよ!」
     太陽は叫びと共に、近くに迫るシャドウに、断罪輪での斬撃を繰り出す。同時に、シャドウの背後から、佐助が霊障波を撃っていた。はさみ撃ちだ。攻撃は完全に急所に入り、大きなダメージがシャドウを襲う。危機を感じたのか、シャドウはすぐにその場を離れた。
    「ど、どこからこんな力が……」
    「先に自分の心配をしたらどうだ? 隙だらけだぞ」
     綸太郎がそう言い、シャドウの返事も待たずに、彼に雷を落とす。もう体力が残っていないのか、シャドウの動きは弱々しい。そして再びトランプを取り出し、守りを固めようとしている。
    「させないよ!」
     しかし、その先には、槍を手にしたシフォンが待ち構えていた。
    「シャドウは全部……踏み潰すんだから!」
     シャドウの体を、シフォンの槍が深く貫く。シフォンは蹴るようにして槍を引き抜き、改めて構えた。しかし、シャドウは動かない。
    「く、くそ……キミ達の顔、覚えたからね! 次にこんな邪魔したら、絶対に許さないんだから!」
     そう捨て台詞を残し、シャドウはこのソウルボードから、完全に撤退した。それは灼滅者の勝利と、悪夢の終わりを意味していた。

    ●悪夢から覚める時
    「えーと、皆さん。今回は、本当にありがとうございました」
     護はそう言って、灼滅者達に頭を下げる。ここはまだソウルボードの中。護に、今回の事件などの説明をした後のことだった。
    「いやいや、そんなん別にええて。あんたさんもえらく頑張りはったしなぁ」
     そう言う護に対し、采はそう言って答える。しかし、護の表情は、あまり晴れやかなものではなかった。
    「……ん、なんだ? まだ何か、気になることでもあんのか?」
     それを察した太陽が、護にそう質問する。少し言葉をにごらせた後、護は太陽の言葉に答えた。
    「えっと、さっきから、皆さんに『強い』って何度も言ってもらいましたけど……まだ自分が『強い』だなんて思えなくて。本当に自分が強いのかどうかも……分からなくて」
    「護君は……強いよ」
     護の告白に間髪入れず、雲母がそう言う。戦闘が終わり、彼女の雰囲気は、いつものものに戻っていた。
    「護君は、自分の強さを……まだちゃんと、わかってない……だけ。誰かを守るために……戦える人は……とても強い人、だから」
    「そうなん……でしょうか。でも……」
     まだ顔を上げない護に、綸太郎は優しく声をかける。
    「それなら、自信を持って『自分は強い』って言えるように、強くなろう。でも、どうせ無理だと思っていたら、現実になるから駄目だ」
     綸太郎は、護の肩にポンと手を置き、続ける。
    「諦めないで欲しい。可能性は君の中にあるから」
    「そして、もっと自分自身を信じて欲しいのです。そしたらきっと、今よりもっと強くなれるのです」
     綸太郎の言葉に、雪緒が続く。護は表情を柔らかくして、顔を上げる。そして、さっきよりも確実に強い口調で、言う。
    「強く……なれるでしょうか。何にもできない、こんな僕も……」
    「最初から何でもできる人間なんていないよ。でも、そこから変われる強さが、人の力。だからがんばってね、強く変わっていけるように!」
     シフォンは笑顔でそう言い、護の背中を、ちょっと強めにポンと叩く。護はまだ頼りなさげな表情をしていたが、シフォンに強い口調で、
    「はい!」
     と答えた。
    「さて、そろそろこの夢からも覚める時間だな」
     璃依がそう言うと共に、ソウルボードに光が射していく。その最中、アリスは護に話しかけた。
    「護君。どうか、今の気持ちを忘れないでほしい」
    「……え?」
     護はそう反応するが、アリスはそのまま続ける。
    「ここから先、夢から覚めた後は、すべて君次第だよ。その気持ちのために何をするか、何ができるかは、君自身にかかっている。大丈夫かい?」
     護は、しっかりと噛みしめるようにアリスの言葉を聞いている。そして最後に、ゆっくりと、しかし強く首を縦に振った。
     光が強くなる。そして、護の悪夢は、ようやく覚めた。

    作者:時任計一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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