ドリンクバー飲み比べ計画!~幽花の誕生日

    作者:るう

    ●姶良家、台所
    「最近、窓開けて寝ると寒いくらいになってきたのに、閉めると暑くて寝れない……何か飲もっかな」
     夜、姶良・幽花(中学生シャドウハンター・dn0128)は寝苦しさを紛らわすため、麦茶を飲もうと冷蔵庫に向かった……のだが。
    「あ、そういえばさっき全部飲んじゃったんだ。そんな時こそこれだよね」
     幽花はスレイヤーカードを解放して癒し系アルバイト制服に身を包むと、胸元からペットボトルを取り出した。

     ESP『ドリンクバー』。
     それは、懐から栄養ドリンクを取り出すだけのESPである。

    「そういえばみんなは、どんな味のドリンクなんだろ?」
     甘いコーヒー牛乳味のドリンクを飲み干しながら考え始めると、幽花はベッドに横になっても、大事なぬいぐるみのスフィを抱いても、部屋の中をうろうろしてみても、もう一度スフィを抱いても、どうしても眠れない。
    「そうだ。そろそろ私の誕生日なんだから、プレゼントは栄養ドリンクでお願いします、って事にしちゃおっか」
     そうと決まれば悩む事もない。幽花はドリンクと防具をしまうとひと安心して、静かに寝息を立て始めた。

     来る九月十九日、幽花は自分の十四歳の誕生パーティーと称した栄養ドリンク飲み比べ会を開きます。もちろん、カロリー十分なドリンクを何本も独り占めする気は毛頭ないので、みんなで少しずつ飲んでみようというのが今回の計画のようです。

     さて……あなたのドリンクは何味?


    ■リプレイ

    ●放課後の家庭科室にて
    「私からみんなを誘ったんだから、しっかり準備しないとね……」
     姶良・幽花は家庭科室の扉を開けた。そして予想外の事態に直面した。

     いらっしゃいませ! お誕生日おめでとうございます!

     大正カフェ女給風の和装ウェイトレスからロリータウェイトレス、はたまた胸もたわわなミニスカメイドまで。
     衣装も様々に揃って出迎えた『Le jardin secret』の面々は、既に幽花よりも一足早く、着々とパーティーの準備を進めていたのだった。

    ●レッツ・パーティー!
    「皆の普段はわからない性格が知れる、素敵な催しね!」
    「そう言ってもらえると、計画した甲斐があったかなぁ? あっ、私のはみんな好きなだけ持って行ってね」
     スカートを摘まむアイレイン・リムフローに照れた表情を返す幽花の肩を、ぽんと真月・誠が叩いてやった。
    「よーっす幽花! 実は俺、このESP使うの今回が初めてなんだぜ!」
     早速ポケットから取り出したボトルを紙コップに小分けにすると、自分も一つ、一気に呷る。
    「透明度の高い薄青色の、キンと冷えた微炭酸! 雪原を全力疾走した時の涼しさが体じゅうを駆け抜けるぜ! 他の奴らはどんなのなんだ?」
     誠が振り向くと、いつの間にか志賀神・磯良が幽花を膝の上に乗せて、やけに甲斐甲斐しく世話を焼いていた。どうやら、幽花を見てると甘やかしたくなるらしい。
    「例の事件以来だね」
    「はい、よく覚えてます……」
     その時も磯良は、幽花を過保護にしてたっけ。お薄の抹茶味の飲み物が、幽花の喉にほんのりとした甘さと渋さを広げてくれた、その時だ。

    「「お誕生日おめでとう!」」
     家庭科室に飛び込んできた森田・依子と樹宮・鈴からの幽花へのプレゼントは、白い花の刺繍のサシェと、スフィとお揃いにできるペアのハート刺繍リボン。
     もちろん二人は、パーティーの主旨も忘れてはいない。
    「おっしゃ依子スレカ出せ、変身よ!」
    「ラジャです鈴ちゃん! 解除ゴー!」
     普段は清楚に分類される依子にとってはちょっと恥ずかしいアルバイト制服だけど、この場では恥は掻き捨てるもの!
    「依子のは普通にお茶っぽ……ブフォウ!?」
     最初はりんごのように甘かった赤いドリンクは、後から口の中に辛味を残す。鈴の青い炭酸飲料が、爽やかで甘いライチ味なのとは対照的だ。
    「ドリンクがお互いの内面を象徴しているのでしょうか?」
    「意外で面白いねこれ。またやろ!」

    ●楽しさ半分、恥ずかしさも半分
    「ようし里桜、これ着ろ」
     可愛らしい喫茶店の制服を手に、小早川・里桜に冴凪・翼が迫る。
    「わっ、わかっているが、その、心の準備が……!」
    「さっき、あっちの二人だって我慢してたろ? 『ドリンクバー』使うんだからさー」

     そんな遣り取りから、少し離れた場所で。
    「『ドリンクバー』にこんな使い方があるとは思わなかったぜ! それじゃ、見せて貰おうか、みんなの性格の色って奴を!」
     ファルケ・リフライヤのドリンクは情熱の赤! カンドーの涙を流すほど刺激的な味に違いない!
    「わらわのは……やっぱりピンクじゃった!」
     甘い香りの漂うそれに、望月・心桜は口をつけた。初めて使うESPだからと毒見をすれば、舌に絡みつくこってりとした甘さ!
    「いちごみるくじゃ! みんなも、幽花嬢も、よろしければどうぞ♪」
     皆の飲み物を味わう直前、星野・えりなは一瞬、息を止めた。
    「ちょっと緊張しませんか? 性格をこっそり見たり見られたりしてるみたいで……」
     実際は、えりなの親友、椎那・紗里亜の抹茶ラテは、優しい甘さと爽やかな香り。普段の彼女のそのままだった。
    「それで私のは……これです」
     夜空色の甘い液体の中に輝く、炭酸の気泡。紗里亜から見たえりなのドリンクも、やはりイメージと違わなかった。
    「ファルケさんもらしい味ですし、特に心桜さんはイメージぴったり♪」

    ●どきどきのロシアンくじ
     その時、おおーっ、と上がった声の方を見れば、『古ノルド語研究会』の面々が、紙片を握って盛り上がっていた。
    「くじによると、まずは私のドリンクからですね……」
     飲み物を手渡そうとする朱雀・病葉の顔を見た瞬間、中崎・翔汰は死を覚悟する。人を小馬鹿にするような、挑戦的な目。何か企んでいるのは明白だ。
    「ええい、ままよ!」
     どろりとした中に、ざらついた食感。口の中に残り続けるこの甘さは……お汁粉味! しかもとびきり不味いとは想定の範囲外!
     げんなりする翔汰を眺めてほくそ笑むと、病葉は山田・透流のボトルを受け取った。
    「スカッと爽快、真っ直ぐな味ですね……」
     何故か残念そうだった病葉の表情が突如、愉しそうに歪む。
    (「……いえ。このどろりとした気味の悪い後味。心の奥底に潜むモノは、どうやら相当アクが強いようです。こうでなければ面白くないですよねぇ」)
     その様子に、透流の動悸が速まる。ひょっとして、大変な味なのではなかろうか?
     透流は恐る恐る次のものに手を伸ばし……。
    「なんだか……凄い普通」
     アルディマ・アルシャーヴィンが出した飲み物は、市販の栄養ドリンクの味だった。無難な安定感。
     透流の反応に安堵した彼が三和・悠仁の小瓶を飲み干すと……。
    「甘いが、なんというか、薬のような味と言えばいいのか」
     例えるなら、子供用のかぜ薬か? その強い個性が、アルディマには眩しい。
    (「私自身が変われば、個性のある味になるのだろうか?」)
     そんな彼を眺める悠仁の鼻を、食欲をそそる匂いがくすぐった。
    「あっ、もう香りからして当たりだ……」
     ブラックホール胃袋と名高い鏃・琥珀が取り出したスープには肉や野菜の出汁が利き、複雑で芳醇な風味を醸し出す……悠仁が思わずご飯のパックを取り出したほどに!
    「火にかけて雑炊にしても……美味い! すみませんこれまた今度も出してもらっていいですか……!」
    「もちろんなのよ。今度、お料理に使ってみるのよ」
     半ば上の空の琥珀は、翔汰のスポーツドリンク味の飲み物を飲み干すのに夢中だった。
    「さっぱり単純な味だから、これはのどが渇いてる時はいくらでも飲めそうなのよ」

     その後彼らは、それらの飲み物を全て幽花にプレゼントするのだけれど……渡しちゃいけないのまで混ざってるのはご愛嬌。

    ●ドリンクは艶かしく
    「りんご様、ジュースをいただきました」
     志穂崎・藍は自分の巨峰ジュースを片手に、黒岩・りんごの胸にもう片方の手を伸ばす。まさぐるようにその谷間から黄金色のりんごジュースを抜き出した彼女の顎を、今度はりんごが艶かしく撫でる。
    「あら。わたくしよりもセカイさんの方が大きいんですのよ?」
     話を振られた姫条・セカイはおずおずと、和装メイド服の胸の間から、人肌に温まったミルクの瓶を取り出した。蓋を開けてカップに注ぐと、桃のマシュマロがその中に落ちる。
    「別々にいただいても良し、かき混ぜてマシュマロを溶かしても良し、です」
     さらに、もう一瓶、二瓶……Hカップの収容力は計り知れない、と思いきや。
    「どーん♪」
     牛房・桃子のホルスタイン柄のミニスカメイド服からは……えっ、これが中に!?
     Iカップの隙間から現れた超特大牛乳瓶から注がれたのは、特濃のミルク。自然な甘みと濃いコクが、力強い喉越しを生み出している。
    「私もみんなの飲むから、みんなも私の飲んでね?」
    「みんな、谷間にジュースしまうの、今の流行なのかな?」
     首を傾げる七里・麻美は飲み専として、皆のドリンクを飲んではこの味は好きだ、このマシュマロは変わってる、などと講評をして回る。
    「わたしのものんで下さいっ♪」
     岩永・静香も胸の間からも、ピンクの飲み物の入ったペットボトルが取り出された。
    「静香さんのも変わってたー♪ 何だろ、これ♪」
     コップを覗き込む麻美に、静香は胸を張る。苺産地のご当地ヒーローは、もちろんドリンクもいちごミルク!
    「えへへー。わたし、いちごが大すきなんですよ。きっとまろやかで甘ずっぱい、ステキな味かもっ!」
    「ミルク系も多いみたいですね。クラブ柄かしら?」
     そのクラブ柄とやらがどんなのかって、今度は神楽坂・奏の胸元に伸びる藍の手を見れば一目瞭然。フルーツ牛乳……やっぱりミルク系だった奏は諦めて遠い目を窓の外に向けた。
    「まあ、染め上げられたとも言うんだけどね……。それより私、葵さんの絞りたて生ドリンクも飲んでみたいなー?」
     甘く囁き、背中から白金・葵に近付いて胸を揉もうとする辺り、奏も完全に染まり切っている様子。
    「ふふふ、少しでしたら宜しいですよ? その代わり……」
     奏の唇に指先を押し当て微笑む葵は、普段より少し過激なメイド風。そして雰囲気はいよいよ妖しく……。
    「ダメですよ? 幽花さんにも飲んで貰わないといけないんですから♪」
     りんごの鶴の一声で仕切り直して葵が取り出したのは、人工的な赤の炭酸飲料だった。爽やかな甘さが、じわじわと酸味へと変わってゆく。
    「油断して飲みすぎてどうなっても知りませんよ?」
     含み笑いする葵から逃げ出そうとする幽花の後姿を、りんごは小悪魔のような微笑みで見送るのだった。

    ●ほのかな恋の味
     結局何だかんだで制服を着た里桜の手には、透明感のある青い清涼飲料が握られていた。
    「姶良さん、誕生日おめでとう。花見の時は本当に感謝するよ」
    「おかげで楽しかったぜ!」
     まだもじもじとする里桜の肩に手をかけて、翼は紅色のダミー・デイジーを幽花に差し出す。
     乾杯と共に互いの飲み物を飲み干した後、翼が、ふと訊いた。
    「なあ里桜。その色は彼氏の影響?」
    「何故そうなる!? いや、違うと言えば嘘に……」
     吹き出しかけた後目を逸らす里桜をからかって、翼はにやりと笑みを浮かべた。

     里桜がウブな様子を見せていたその頃。
     海老塚・藍と村本・寛子の二人の恋は、甘く、深い。
    「はい、藍ちゃん、寛子のドリンクどーぞなの~」
     風味も桜で、色も濃桜。美味しいかな、とちらりと様子を覗う寛子に、藍はじっと体を預けて呟いた。
    「寛子ちゃんの味だ……」
     もう一口それを味わった後で、藍は青白いドリンクに向けて、美味しくな~れ、と祈る。
     寛子の喉を、蜂蜜味の混ざったジュースのカクテルが流れ落ちた。
    「これが、藍ちゃんの味……」
     その時だ、幽花が偶然にも、その近くを通ったのは。
    「はい、幽花ちゃんもどうぞ」
     別のグラスを差し出そうとして、ふと藍は首を傾げた。二つのグラスは、本当に同じ味になってるのだろうか?
     試しに寛子のグラスに口をつけた彼は気付かない……それが、彼女が口をつけたのと同じ場所だった事に。

    ●恋の鞘当て?
     ギィ・ラフィットは、ボルドーのシャトーにその生を受けた。
     だが、それも昔の話……だった筈なのだが。
     取り出したボトルは、実家で馴れ親しんだ赤ワインそのもの。もっとも中身は見かけと違い、甘いシロップの味だったが。
    「凛のはどんな味?」
     感傷を脇に退けて振り向いたギィに、水橋・凛は透き通った美しい青の中に泡の浮かぶボトルを見せた。
     そこに、シルヴィア・ランザートが擦り寄ってくる。
    「ねえギィ。ほら、あたしのも取って!」
     服の胸元にはハート型の穴が開き、その中にアルミ缶の蓋だけが見える。
    「はいはい、仰る通りにしやすよ」
     果たして作戦なのか、天然なのか、メロンミルク味の飲むババロア、とでも言うべき代物を楽しげにグラスに移すシルヴィア。凛は彼女にも、自分の飲み物を飲ませてやった。
    「ほんとは二人きりでデートのはずだったけど、たまにはこうして皆で楽しむのもいいわよね」
     が……凛が言い終わるのとほぼ同時、シルヴィアが突然倒れ臥した。テーブルから落ちたグラスの中身が、彼女の胸元にべたつく染みを残す。
     凛の飲み物を一舐めし、あまりの味に戦慄した月舘・架乃が慌てて叫ぶ!
    「誰か、普通の水を……!」

     辺りは騒然!
     すぐさま駆けつけたのは、風輪・優歌だった。
    「私のでよければ使って下さい」
     そう言って優歌が取り出してシルヴィアに飲ませたのは、一見単なる水のような栄養ドリンク。味も、色も、何もないからこそ、こんな時には役に立つ……本来は、皆に好きな味をつけて楽しんで貰うための味なのだが。
     必死の介抱の甲斐あってか意識を取り戻したシルヴィアの汚れをギィが拭いてやっていた頃、井之原・雄一は自分が取り出したドリンクと見比べてから……恐る恐る殺人ドリンクを口にする。
    「こいつは……きっついな」
     雄一の飲み物は暗い青色で炭酸入り。見た目は凛のとまあ似ている。
     が、雄一の場合はスポーツドリンク風……と思いきや後味で苦味や辛味が効いてくる程度の代物だったが、凛のはそれですら天国に思えるエグい味。炭酸もダミーだ。
    「いやぁ、個性的な味だなぁ……」

    ●ドリンクバー、未知の味
     そんな事件がありながらも、宴は続く。
     気を取り直して、架乃は自分の飲み物をコップに注いだ。黒っぽい青紫の飲み物は、砂糖をめ一杯入れたようなブルーベリー味。
    「私、紅茶とかも物凄く甘くするからねー……甘いお菓子好きなのも影響したかな?」
     そう首を傾げる架乃の元に、今・日和がコップを手にして駆けてきた。
    「わーっ、甘ーい!! ねー、甘いの好きならこの白いの、何だかわかるー!?」
     架乃に自分の飲み物の正体を訊くと、日和は一層目を輝かす!
    「これ、甘酒っていうんだ? すっごく甘いね! でもボク、これ好きかも!」
     日和は自慢げに、幽花の元へと駆けてゆく。

     未知の飲み物と言えば、紅羽・流希は以前、体育祭等で使えるかと思ってジャージに『ドリンクバー』をつける改造を施しておいた、のだが……。
    「ええ、ここで、使った本人も知らない謎の液体登場ですよ……」
     ……その結果がこれだ。
    「色はお茶のようですが……甘……茶? 何故甘茶が出てきたのでしょうか? 特段好きでもないのですが……」

     丹下・小次郎は『ドリンクバー』付の装備が見つからなかったので知り合いに借りた。
     そして、妙なものを取り出した。
    「コーヒー? いや、香りや色はコーヒーのままに、桃のジュースっぽい味……見てくれは渋く誤魔化していても、中身は甘ちゃんって事でしょうか?」
     微落胆はするけれど、面白い驚きだ。
     小次郎が同じ誕生日のよしみで幽花に挨拶しに行くと、そこでは既に神崎・摩耶が、何やら怪しげな事を吹き込んでいた。

    「こう、腰に当ててぐいっと……そうじゃない、こうだ!」
     指導の度に出てくる牛乳瓶は、毎回、本人も予測不能なフルーツ味。
    「今度はメープル風味? 全てフルーツ牛乳というわけでもないらしいな」
     人呼んで『着痩せの摩耶』は、カロリーなんて気にせず指導を続ける。
    「そうだ、それでいいぞ。褒美に、この飴のレイを進呈だ」

    ●宴は楽しく
    「幽花、アイのは甘くて美味しいホットチョコなのよ♪ 簡単に言えばココアね。昔から寒い夜はこれを飲んでたわ……やっぱり冬に飲むのが一番かしらね」
     大切そうにボトルを抱きかかえたアイレインの様子を見守りながら、鴻上・廉也は思わず苦笑いを浮かべた……というのも、彼もまたココア味のドリンクだったからだ。
    「俺のは、姶良のコーヒー牛乳とも方向性は似ているな……」
     二人の飲み物の味を見てから、これの後だと味を感じないかもしれないな、と廉也。確かに、甘みは控えめだった。けれど手にしたカップからは、力強いカカオの香りが漂ってきていた。

    「なあ皆! 俺に少しドリンクを分けて欲しいぜ!」
     ファルケはシェイカーに飲み物を入れ、氷と一緒に振り始める。その楽しいダンスに合わせるように、リーシャ・クォルシムも幾つものボトルとシェイカーを……空中に投げる!
     瑠璃色、黄緑、金属光沢の赤紫……色も味も自由奔放な液体が、リーシャのジャグリングと共に絡み合う。それらを一つずつグラスに注ぐと、リーシャはテイルデバイスを可愛らしく振ってウィンクするのだった。
    「皆さん、お好きなドリンクをお取りください~」
     こうも楽しそうに言われれば、睦沢・文音もこれ以上太る事など気にしてられない。これで最後と思いながらも、つい手が次に、また次に……。
     ついには、自分でも黄金色のはちみつしょうが湯味の飲み物を出して手を伸ばす。その甘い中の生姜味が、文音に、かつての動画投稿での挫折を思い出させていた……それでも飲む手は止まらないけど。

    「飲み物だけじゃなくて、つまむ物もあればよかったなあ」
     好物の牛乳を片手に稲葉・羽和が呟くと、そうじゃ、と心桜は思い出す。
    「わらわもそう思うて、クッキー買ってきました」
     けれど、もちろんクッキーもいいけれど、誕生日のお菓子といえば……やっぱりこれ!
    「皆で作った、おからとヨーグルトのヘルシーチーズケーキです。カロリーは飲み物で十分ですからね」
     そんな紗里亜の説明に、えりなも大きく頷いた。
     総勢四十人を越える灼滅者たちが、ケーキの周囲に集まってくる。たとえドリンクを飲むためだけに集まった人でも、そのたった一言くらいは声を揃えて。
     ケーキを照らす、十四本の蝋燭。幽花は促されるがままに息を吸い込み……思いっきり吹きかける!

     お誕生日、おめでとう!!

    「みんな、ありがとう!」
     姶良・幽花、本日をもって十四歳は、そんな祝福の言葉に応えるように、蝋燭を一気に吹き消した!

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月19日
    難度:簡単
    参加:41人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 11
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