パンツを捧げよっ! 思いよ、届け!

     玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)は、こんな噂を耳にした。
     『パンツマニアの変態幼女が存在する』と……。
     この幼女は都市伝説で、パンツを集める事に生き甲斐をしているようである。
     そのため、都市伝説が確認された地域では、パンツ片手に都市伝説を探すオッサン達が増加傾向にあり、『お巡りさん、この人です!』状態。
     だが、事情を知らないオッサン達は幼女(都市伝説)を求めて彷徨って、不審者として通報されて、警察のお世話になっているようである。
     もちろん、オッサン達に罪はない。
     彼らはただ純粋に、パンツを渡したいだけ。
     それがどんなに困難な事なのか、オッサン達も十分に理解しているようだが、都市伝説の笑顔を見たいため、数多くの困難を乗り越え、突き進んでいるようである。
     そういった意味で、オッサンの行列を見つければ、その傍に都市伝説がいる可能性が高く、倒す事もそれほど難しくはない。
     ただし、オッサン達が命懸けで都市伝説を守る可能性も高く、場合によっては捨て身の覚悟で向って来るかも知れないので、その点だけは注意しておくといいだろう。


    参加者
    古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)
    玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)
    成瀬・圭(静寂シンガロン・d04536)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    火土金水・明(総ての絵師様に感謝を・d16095)
    丸目・蔵人(兵法天下一・d19625)
    マサムネ・ディケンズ(サンドリヨンの番犬・d21200)
    雛山・愛梨沙(のーぱんぱんちゃー・d24988)

    ■リプレイ

    ●狙われたパンツ
    「女の子の為にパンツを持って来てくれるなんて、優しいおじさん達だね♪ 利用する事になっちゃうのが、かわいそうだなあ」
     雛山・愛梨沙(のーぱんぱんちゃー・d24988)は裸に赤い腹掛け一枚つけただけの恰好で、子供用のレインコートを羽織り、仲間達を連れて都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説はパンツマニアの変態幼女で、己の欲望を満たすために、色取り取りのパンツを集めていたらしく、そのためならば手段を選ばず、あんな事や、こんな事、そんな事までやっていたようだ。
     しかし、いつの頃からかパンツ片手にオッサン達が現れたため、自分から探しに行く事がなくなったようである。
    「つーか、パンツを渡すのも集めるのも罪はないどころか、犯罪じゃねーか、コンチクソー! その点おっさんも幼女ちゃんも、どっちもどっちじゃねーか」
     マサムネ・ディケンズ(サンドリヨンの番犬・d21200)が、思わずツッコミを入れた。
     都市伝説がどうしてそんな事をしているのか分からないが、おそらく元になった噂が影響しているのだろう。
    「パンツマニアの幼女……って、字面にすると凄いな! 集めてどうするのか、実に気になる部分なんだが、聞いちゃいけないところかな?」
     玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)が、何気ない疑問を口にした。
     だが、都市伝説である以上、どんなに沢山のパンツを集めたとしても、満足する事なく集め続ける事だろう。
    「まぁ、幼女姿で良かったの。これが中年男性の姿だったらと思うと……」
     古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)が、身体を震わせる。
     想像しただけでも、全身鳥肌。シャレにならないほど、震えが止まらなかった。
    「まあ、確かに……、普通はオッさんのカッコしてそうなもんだが、新しいパターンだな。特に害とかもねーんだろうけど、逮捕されるオッさんが増えるのもビミョーだしな。さっくり片付けっか」
     成瀬・圭(静寂シンガロン・d04536)が、納得した様子で答えを返す。
     実際に、この辺りで不審者が増えており、荒々しく息を吐きながら、パンツ片手に幼女を探すオッサンの姿が、あちらこちらで目撃されているようだ。
    「でも、誰がどうしてこんな噂を流したんだろう。何かもう、願望を言えば叶うと思ってるんじゃ……」
     竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)が、呆れた様子で溜息を漏らす。
     一体、どのような意図があって、このような噂が流れたのか分からないが、都市伝説を生み出すほどの勢いで、広まっていった事も、また事実だろう。
    「本当に色々な都市伝説が生まれてくるんですね」
     火土金水・明(総ての絵師様に感謝を・d16095)が、深い溜息をもらす。
     マトモに考えるだけ、時間の無駄。
     それだけ、噂が広まりやすかったという事だけ。
    「興味がないし、関りたくはない。けど、依頼は依頼だ。そこに、貴賎はない、はず」
     そう言って丸目・蔵人(兵法天下一・d19625)が、歩き出す。
     その目的は、ただひとつ。都市伝説を倒す事のみ。

    ●選りすぐりのオッサン達
    「んーっと……、パンツを握ったおっさんの群れを探せばいいんだよな!」
     鷲介が仲間達に確認するようにして、ゆっくりと辺りを見回した。
     だが、冷静になってみれば、みんな怪しい。怪し過ぎる連中ばかり。
     みんなパンツを持っており、ソワソワとした様子で、辺りを見回していた。
    (「変態は……変態を引き付けるという訳か」)
     鷲介が険しい表情を浮かべる。
     おそらく、オッサン達は まるで引かれ合う磁石の如く、都市伝説のところに引き寄せられているのだろう。
     それは選りすぐりの変態だけが反応する特殊な何か。
     故に彼らはその呪縛から逃れる事が出来ず、都市伝説のところに向かってしまうのである。
     案の定、その先にいたのは、都市伝説であった。
     オッサン達は都市伝説の前に並んでおり、興奮した様子でパンツを握り締めていた。
    「もうその子はおじさんのパンツには飽きてるんだ。どうしても渡したいなら、オレを倒して行け!」
     すぐさま、登がオッサン達の列に割り込み、冷たい視線を送る。
    「な、なんだと!?」
    「だ、騙されるな!」
    「アイツらが言っている事はすべて嘘だ!」
    「でも、まさか……」
    「本当に……」
     オッサン達の間に、動揺が走る!
    「それ以前に、社会人として、その行動はどうなんだ? 女の子の教育衛生上良くないって思わないのか? 今の姿を家族が見たら泣くぞ。恥を知れ」
     蔵人がスレイヤーカードを解除し、迷う事なく殺界形成を使う。
     その影響で逃げ出す者もいたが、それでも残っている猛者……いや変態達がいた。
    「こんな事で、俺達が怯まん! 怯むものか!」
     男達はパンツをギュッと握り締め、まるで刃物の如く鋭い殺気を放ち、その場から微動だにしなかった。
     見るからに変態、明らかに変態、変態そのもの!
    「幼女に首ったけのおっさん……とか、それこそ社会的に抹殺される人間の典型じゃねーか!?」
     マサムネが思わずツッコミを入れた。
    「うるさい、黙れ! 俺達がルール、俺達が法だ!」
     男達が即座に反論。
     真の正義は我らにありとばかりに、堂々と胸を張っていた。
    「やるしかねえか。でも、パンツの守護者って、ちょっと格好よくみえねえ?」
     鷲介が軽く冗談を言いながら身構えた。
    「問答無用、やっちまえ!」
     男達も殺気立った様子で襲い掛かってきた。
    「ならば、通信カラテ五段の腕前を見せてやろう。喰らいやがれ。――これが暗黒通信カラテ奥義、サマーソルトキックだァー!!」
     あからさまにカラテとは違う動きで、圭が男達に蹴りを放っていく。
    「俺はここで倒れる訳にはいかないんだ。例えどんな事があろうとも……。あの子の笑顔を見るまでは、決して諦めない!」
     それでも、男達は朦朧とする意識の中、ただ都市伝説の笑顔を見るためだけに、全力を注ぎ込んでいた。
     何度殴られても、倒れても、立ち上がって、向かってきた。
    「コ、コイツら、タダモノじゃない……!」
     そこに芽生えたのは、奇妙な友情。
     男の思いが、登の心に……伝わった!
    「強敵(とも)と呼んでもいいかな?」
    「「「「「……断るっ!」」」」」
     男達が間髪入れずに吐き捨てた。
     彼らにとって、行く手を阻むものは、みんな敵。
     都市伝説に害を成す者も、また敵なのだから……。
    「みんな、ゴメン。あの子は人じゃ無いんだ。元の世界に還さないといけないから、止めないでね」
     登が容器から目薬を地面に落として、嘘泣きをした。
    「だ、大地が泣いている」
     そのボケにオッサンのひとりが飛び乗った。
    「いや、大地が震えているんだ」
     別のオッサンも、そのボケに乗ったが、明らかに沈没船。ネタの終着点を見失って、ブクブクと音を立てて沈んでいる。
     その船頭をしていた登でさえも、オッサン達に修復不可能なまでのボケをかまされ、自分を見失いそうになっていた。
    「おじさぁん……、愛梨沙ね、おねしょのおしおきで、ママにパンツを全部取り上げられちゃったの……。穿くパンツが無いよう……。パンツを持ってたら、ちょうだい……。愛梨沙に何してもいいからぁ……」
     そんな空気を掻き消す勢いで、愛梨沙がレインコートを脱ぎ捨て、頬を赤らめて男達に迫っていった。
    「だったら、俺の!」
    「いや、俺のパンツを!」
    「「「もらってくれ!」」」
     途端に男達が鼻息荒く愛梨沙に迫り、暗がりの中に姿を消した。
     彼らがどこに行ったのか分からないが、その先は間違いなくパラダイス。
     楽園へと続くパスポートを手にしたようなもの。
    「えっ? ちょっと待って! ど、どういう事!?」
     都市伝説が青ざめた表情を浮かべる。
    「さー、都市伝説。オメーの番だぜ」
     すぐさま、圭が都市伝説の行く手を阻む。
    「いやよ、そんなの! アタシ、喧嘩は嫌いだもの! それよりも、パンツ。パンツを寄越しなさい!」
     都市伝説が不機嫌な表情を浮かべて、大きく頬を膨らませる。
    「ごめんなさい、今日は穿いてないから」
     明がサウンドシャッターを発動させ、かなりハイレグな黒いウイザードローブ姿を見せた。
    「ひょっとして、痴女! 変態さんなのね!」
     都市伝説が妙に納得した様子で大声を上げる。
    「ち、違いますっ! 変態なんかじゃありませんっ!」
     明が顔を真っ赤にした。
     まさか、そんな事を言われるとは予想外。
     しかも、哀れみの視線まで送られている。
    「そんなに脱ぎたてのパンツがほしいの?」
     智以子が都市伝説に問いかけた。
    「もちろん」
     都市伝説がキッパリと断言!
    「だったら、こっちに来て」
     智以子が都市伝説を人気の少ない場所まで誘導した後、穿いていたパンツを脱ぎ捨て、都市伝説に手渡した。
     都市伝説はそれを受け取ると、満足した様子で笑みを浮かべる。
     だが、そこにあったパンツは二枚。一枚ではなく、二枚であった。
     その事に気づかぬまま、智以子が都市伝説との戦いに挑んだ。

    ●幼女
    「そんじゃあ、本番と行こうぜ、都市伝説。おめーのパンツ集めも今日までだ! 罪……はわりとあるかもしれねーが、オッさんどもを変な道に引き摺り込んだ報いを受けやがれ!」
     圭が殺気立った様子で、釘バットを握り締めた。
    「ちょ、ちょっと、待ってよ。アタシは何も悪くない。悪い事なんてしていないから! ただ、パンツが欲しかっただけ。それだけなの! それでも、アタシのようないたいけな幼女をいじめる気!?」
     都市伝説が青ざめた表情を浮かべる。
    「そんな事を言って、あと5年か10年したら、すーぐ育って『私BBAだから!』とか年寄りたがる生き物になるんだろ!」
     マサムネがウンザリした様子で反論する。
    「そんな事ないから! 例え、お婆ちゃんになったとしても、ババアロリで頑張るから!」
     都市伝説は必死であった。
     必死に愛想笑いを浮かべて、全面的に可愛らしさをアピール。
     この状況で後先なんて、考えられる訳がない。
    「笑顔を見ても容赦はしないよ。無邪気な子供のラスボスなんて見慣れてるからね。オレが(TRPGの)GMをしている時にも出した事あるし」
     登がライドキャリバーのダルマ仮面と連携を取りつつ、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「えっ? う、嘘! 弱い者いじめ、反対ー!」
     都市伝説が必死になって逃げ惑う。
     そこにいたのは、妙にスッキリとした表情を浮かべた愛梨沙であった。
    「ねえねえ、愛梨沙と遊んで♪ 友達になろ♪」
     愛梨沙がとろんとした表情を浮かべて、都市伝説に影縛りを仕掛ける。
     暗がりで何があったのか分からないが、とても幸せそうであった。
    「悪いが……ここで終わらせる」
     しかし、愛梨沙が都市伝説の服を脱がせる前に、蔵人が神霊剣を炸裂させた。
     それは魂を切り裂く必殺の一撃!
     都市伝説は自分の身に降りかかった不幸を呪いつつ、断末魔をあげて消滅した。
    「次に生まれてくる時は、都市伝説でなく、人間に生まれてくればいいの」
     都市伝説が消滅した事を呟いた後、智以子がクールに呟いた。
     何故なら人間の変態ならば、智以子達の守備範囲外。
     その時、運命の悪戯か、お約束なのか、ふんわりとした風が吹き、智以子のスカートがめくれあがった。
     しかも……、穿いていない。
     智以子自身も……気づいていない。
     だからと言って、この状況で指摘すれば、智以子が恥ずかしい思いをする事も確実。
    「……とは言え、光景だけ見ると異様だよな、ここ……」
     それに気づいた鷲介が、小さくコホンと咳をする。
     なるべく相手が傷つく事のないように、頭の中で台詞を選んでは見たものの、すべて最悪、バッドエンド。
     そんな状況で鷲介が出来る事と言えば、視線を逸らす事くらい。
    「あ、あれは……」
     ふいに視線を逸らした先にあったのは、大量のパンツであった。
     おそらく、都市伝説が忘れていったものだろう。
     色取り取りのパンツが地面に散らばり、奇妙な花畑を作り出していた。
    「とりあえず、拾っておきましょうか」
     明が乾いた笑いを響かせて、足元に落ちていたパンツを拾っていく。
     断じて、痴女ではないと心の中で呟きつつ、明が納得のいかない様子で、深い溜息を漏らすのだった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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