行こう!秋の味覚狩り~バースデー・ヴィオレッタの園

    作者:志稲愛海

     季節はすっかり、実りの秋。
     山の果樹園には今、丁度採り時な紫色の実が、たわわに生っていて。
     採れたてのその実は甘く、とてもジューシー。
     またその実を使って、美味しいものを作ったり食べたりもできる。
     そんな、サーヴァントも一緒に楽しめるぶどう狩りに、よかったら行きませんか?


     今したいことは何かと、訊いてみたところ。
    「え? うーん、そうだな……霊犬のゼロと一緒にわいわい楽しめることとか、美味しいもの作ったり食べたりとかか?」
     そう答えた、伊勢谷・カイザ(紫紺のあんちゃん・dn0189)の言葉を受けて。
    「よかったら一緒に、ぶどう狩りに行かないか?」
     教室にいる皆に誘いの声を掛ける、綺月・紗矢(小学生シャドウハンター・dn0017)。
    「9月13日は、カイザの16歳の誕生日なんだけどさ。カイザの誕生日を口実に……いや、彼の行きたいトコに皆で出かけるのもいいかなーって思って」
     いつも通りへらりと笑んで。飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)はおもむろに、秋のお出かけ特集が組まれた雑誌を広げながら続ける。
    「それで、サーヴァントも一緒に楽しめて、美味しいもの作ったり食べたりしたいって言うからさ、ぶどう狩りとかどうかなって。採ったぶどうを調理してわいわい食べたりお茶したりもできるみたいだよー」
     場所は、ちょうど今、たわわにぶどうの実が生っている、山の果樹園。
     広大で元々ペットも一緒に楽しめる農園なので、サーヴァントも一緒にぶどう狩りを楽しめるし。敷地内には、調理可能な広場もあるという。
     一応、カイザの誕生日を口実にしたお出かけではあるものの。
     あくまでそれはまさに単なる口実、カイザに構わなくても勿論全く構わない。
     それぞれが賑やかにわいわい楽しく過ごしてくれれば、彼も嬉しいだろうから。
     また、ぶどう狩りに必要な道具や、定番の調理器具などは一通り揃っているが。
     必要なものや材料があれば、持ち込みも構わない。
     採れたてのぶどうをそのまま味わって堪能するのもいいし。
     採った実を使って、コンポートやジャムやジュースを作ったり。
     作ったそれらを、焼いたパンケーキやアイスに乗せたり、パフェにしたりなどなど。
     常識の範囲内で、好きなように、秋の味覚狩りを楽しんで欲しい。

    「カイザはああ見えて、料理が大得意で大好きだからな。きっとリクエストすれば、美味しいぶどうのスイーツなんかを沢山作ってくれるだろうし。一緒に作ったり、誰でも遠慮なくたかれば、彼も喜ぶと思う」
    「彼は世話好きのおかん体質だから、色々遠慮なく使ってやっても喜ぶんじゃないかなっ。あ、カイザの霊犬のゼロは、まんまるもふもふなブラックタンのポメラニアンだよー。ゼロと、思いっきりもふもふ遊ぶのもいいんじゃないかな!」
     紗矢と遥河は、そうキャッキャはしゃぐように言ってから。
    「ね、折角の秋だからさ……紫色の美味しい実が生る園に、遊びに行かない?」
    「よかったら、一緒にぶどう狩りを楽しまないか?」
     そう改めて皆を、紫色の実が生る秋の園に誘うのだった。


    ■リプレイ


     作戦目標――より高い所の、とびきり甘い葡萄!
     早速踏み台に上り、ぐぐっと手を伸ばした日和……だが。
    「日和隊長、落ちないように目標を支えていて下さい!」
    「連携攻撃だな宗佑隊員、お、お願いします」
     ぎりぎり手が届かず!
     でも確保は任せろ! 両手一杯、ずっしり重い紫の実が。
     そんなもぎたて一番を、日和は宗佑の口へ。
     そして、ぱくりと頬張れば……弾ける甘さと、恥ずかし気な熱。
     刹那、わん! とおねだりする豆助と知和々に二人笑んで。
     宗佑のお返しは、一際大きくて甘ーい一粒。
     一面、紫色の世界で。
     希沙にあーんされた実を、ぱくり口にした後。
     見て見て、と聞こえた声に煉火が振り返れば……葡萄の目の宇宙人!?
    「こら、つまみ食いばっかりしてる悪い宇宙人はヒーローが退治しちゃうぞー!」
     いえ、味見は甘さ確認なのです!
     そして笑い合い採った成果は、大量!
     煉火曰く、最近大人っぽくなった家庭派希沙がそれをジャムに――。
    「いつもお世話になってるお礼……え、お、大人っ?」
     ヨーグルトやアイスにクラッカー、可愛い反応や感謝も一緒に。
     いざ、葡萄パーティーの始まり!
     貫の頭にしがみつき、えいえいっと懸命に羽を伸ばすらいもん。
     そんな姿に癒されつつ結理も紫の実を狩って。らいもん厳選の葡萄を採る貫。
     そして次は食べるターン! ですが。
    「らいもんも好きなだけ食べていいんだよ」
     懸命に食べる様が可愛くて。つい結理は、皮を剥いた実をらいもんにあげる事に夢中に。
    「俺の指まで食うんじゃない吸うなもういっそ小さいの食え」
     貫も、ぱくぱく頬張るらいもんのお腹が心配になるも……楽し気だし、大丈夫!
     そして残りの実で結理が作ったブドウジャムも、絶品の出来!
    「いやはや、このところ随分と過し易くなったと思っておりましたが……」
     もう、季節は秋ですねぇ……と、流希は紫色の果樹園を見回して。
     そして、これだけ見事な葡萄だとそのまま食べるのが良いかも、と。
    「うん、美味しいですよ……」
     みずみずしい一粒を、口に。
     ぶどう狩りは、元シャトーの跡取りとして見逃せない企画!
    「実家は垣根栽培だったっすけど、日本は棚栽培って本当なんすね」
     ギィはぶら下がる紫の房に違和感覚えつつも。
     ベリーAかピオーネ、巨峰。この辺りっすか? と、品種を見定めながら収穫に。
     そして首が痛くなりつつも、籠には、お土産には十分な量の葡萄が。
     ぽかぽか気持ち良い秋の陽気。
     ルイカは皆の邪魔をしないようにと、隅に位置取るも。
    「あれ? きみ、どうしてこっちにくるの。君もお昼寝したい?」
     とことこついてきてじゃれるゼロに、そう首を傾ければ。
    「一緒にこっちでぶどう取ろうぜ!」
     カイザとゼロに手や裾を引かれ、輪の中に。
     そしてルイカの顔には、皆につられた楽しげな笑顔が。
     張り切る千代菊やゼロも一緒に。
    「ぶどう好き? 大きいの……えっと巨峰かな。アレが好き!」
    「俺も! 大きいの頬張ると幸せ感じるよなー」
     大きな実を、カイザと沢山取った千代は。
     葡萄スイーツを作る彼を、お手伝い。皆で作れば絶対楽しいから!
     そして完成したぶどうパフェは、食べるのが勿体無いくらい綺麗な出来です!
    「お、ご主人様の手伝いか、偉いな」
     首から籠を下げ、わふっとお手伝いする黒曜を撫で撫でするライアス。
     継霧もぶどう狩りは初めて。誰かとのお出かけも数年ぶり……心躍らないはずはなく。きっと、撫でられ尻尾をふりふりする黒曜も同じ。
     そして次は、紅夜とも遠出できればと思いながらも。
    「やっぱ摘みたて、ってのは美味いな」
    「新鮮なものがその場で食えるのは特権だな」
     紫の実を口に含めば、自然と頬が緩む。
     新鮮で美味しい採れたての味と。隣にいる相手と過ごす楽しい時間は、格別だから。
     口にした採れたての味は、料理するのも楽しくなる美味しさ。
     でも、味見したのは美樹だけでなくて。
    「なんだ、お前も待ちきれなかったのか?」
    「もう、茶々のいじわるっ」
     吠えた茶々丸の声に顔を上げれば――こっそりぶどうをぱくりと口にした蓮花の姿が!
     そんな生の味見も美味しいけれど。
    「私ね、パフェみたいにするのよ」
    「俺もパフェにしようかな。それよりまず……」
     美樹はそう、あーんと口を広げた後。
     茶々丸にもお裾分けしながら食べるパフェ風葡萄アイスは、笑顔が止まらない、甘くて優しい美味しさ。
    「こういうのするのは、初めてだから楽しみ、です」
     そう二人のお出掛けを楽しむ灯火の隣で。
     祐平は、こ、これってデートなんだろうか……なんて思いつつも。
     高い場所の果実を、彼女のかわりに取ってあげる。
     そして頑張って籠いっぱいにした後、休憩しながら早速、採った葡萄を食べてみれば。
    「ん、美味しい、ですね、祐平くん!」
     口に広がる甘さに、灯火はそう微笑んで。
    「はい、摘み立て。瑞々しくて美味しそうだね」
     祐平はそんな彼女へと、勇気を出して……摘んだ一粒を、あーん。
     今回はパーシモンも一緒に、秋の味覚デート!
     クリスは早速大振りの一粒を、まずはぱくりと口にして。
    「あま~い♪ はいパー子もお食べ♪ あーん」
     羽をぱたぱたさせるパー子にもひとつ、あーん。
    「…………ちょっと、パー子とばっかり……」
     桃夜はそんな様子にぶーぶー拗ねるも。オレにも! オレにも! と負けじとおねだりして。
     そんな顔しないで、と。クリスは彼にも、はい、あーん!
     そして念願のあーんに満面の笑みを宿した後。
     桃夜は、どんぐりをプレゼントするパー子やクリスと、カイザにお祝いを。
     たわわな秋の実りを一緒に見上げながら、取っては食べ歩いて。
     咬壱朗と氷香の二人も、仲良く並んで果樹園デート。
     咬壱朗はもぎたての葡萄を一粒摘んで、彼女に食べさせてあげた後。
    「……こ、咬壱朗さんっ!?」
    「ブドウも旨いが、氷香の指も旨いな」
     今度は、差し出された実と一緒に。愛しい彼女の指も、ぱくり。
     ……あうぅぅ、と、その柔らかな唇の感触に、思わず氷香は顔を真っ赤にするも。
     二人でイチャイチャ堪能するのは――美味しくて幸せでみずみずしい、甘ーい秋のひととき。

     採った実で勇騎が作るのは、ぶどうのタルト。
     そして里桜に湯むきを頼んだ後、位置を移動して。
    「ん? 俺がお前を他の奴に見せたくないから」
     首を傾げた彼女に、そう一言。
     それは――彼のさり気ない、優しい気遣い。
    「えっ、あ……ありが、と」
     里桜は驚きつつも手袋を外すと、彼を手伝って。
    「折角二人で作ったから、一緒に食べたいなって……駄目、か?」
     完成したタルトを、里桜は一口分フォークに。
     そう差し出されたそれを、ぱくり口にした勇騎は。
    「どうぞ?」
     耳まで真っ赤な彼女に、味見のお返しを。
     鈴が作るのは、ぶどうのゼリーとジャム!
     早速調理開始……したものの。
    「って、なんで固まらないのよ。分量通りに作ったはずなのに!」
    「おいおい、メイドがそんなことじゃだめだなぁ」
     この僕がぶどう料理を教えてあげる! と。見かねた黎也が助け舟。
     そして、家でもぶどうを栽培している彼に、う……お願いします、と素直に甘える鈴。
     固まらないゼリーもだけど……ジャムも焦がしそうな気がするから。
     それから、何とか完成した葡萄尽くしな品々を。一緒に仲良く、いただきます!
     境遇が似ている二人は、誕生日も一日違い。
     だから、互いのお手製スイーツを、プレゼント代わりに交換こ!
     薫は葡萄ジャムに合うパンケーキ、カイザは葡萄のソーダジュレを。
    「お互い苦労も多いけど、これから仲良くやっていけたら嬉しいかな」
    「じゃあ今度、夕食でも一緒に作ろうぜ」
     すっかり主夫属性同士、意気投合!
     千巻はゼロをふわっふわもふりつつ、カイザの方をチラチラッ。
    「採れたもおいしいケド……カイザお兄さんの手作りスイーツも気になるなぁー」
    「てか、千巻の方が年上だし!?」
     そしてそうツッこんだ彼に、せびるだけなのもなんだからと。
     自分のぶどうサンデーとカイザの葡萄パウンドケーキを、交換こ。
     採れたての葡萄で、初めてのジャム作り。成功するか、ちょっぴりドキドキする水花だけど。
    「弟さんや妹さん達と一緒に食べてくださいね」
     二瓶のうち一つは、カイザへの誕生日のプレゼント。
     そしてゼロをもふもふする水花にリクエストを聞かれたカイザは。
    「じゃあ、このジャムを添えた俺のケーキを、一緒に味見して欲しいぜ」
     早速、お茶会の準備を!
    「カイザさんをびっくりさせてみませんか?」
     そんな紅緋の提案に、面白そうだと紗矢も頷いて。
     彼に気付かれないよう、ぶどうのケーキ作りを。
     採れたて葡萄にブラックチェリー、サンタかわりに可愛いお花も添えて……完成!
     はっぴぃ・ばぁすでい! と手渡せば、カイザもビックリ喜んで。サプライズ大成功!
     紗矢と並んでひたすら葡萄スイーツを堪能して。
     七葉は、たまにやたら積み上がった紗矢の皿を片付けてみたりしつつも。
     パンケーキ、パフェ、アイス……目移りしながらも、その美味しさを全部堪能!
     そして、食べるのは勿論。
    「ん、カイザさん。スイーツのレシピ、あとでもらっていいかな?」
     カイザに、祝辞とともにそうお願いを。今度は、自分でも試してみたいから。


     時々ぱくりとつまみ食いしながら。めりるが選ぶのは、みずみずしい葡萄!
    「ぶどうに夢中になり過ぎてこけないようにねー」
     【魔法使いの隠れ家】の皆にそう声を掛ける雪緒は大丈夫、地を這っていますから。
     そして見かけた従兄弟は葡萄の品種を語っていたが。魔法使い的に目を向けたいのは、その呪術性。
    「葡萄か。酒神バッカスが人間に伝えた、ワインの原料」
     グレープティを飲みつつ、アリスは思索を重ねて。
    「ワインは神へと至る道というのは大仰かしら?」
     雪緒とめりるの、とれたてぶどうのタルトの完成に、ふと顔を上げる。
     クッキー生地に、クリームチーズや葡萄のコンポート、ぶどうゼリー!
    「アリスさんどうですか? おいしいですかー?」
    「こっちのは伊勢谷さんの分ね、おめでとう!」
     誕生日のカイザも一緒に。秋の実りを、いただきます!

     リュシールと真白が刺繍した贈り物にも、可愛い葡萄が。
     礼を言うカイザと尻尾振るゼロに、【ゆびとま】の皆で祝辞を言った後。
    「ふふ、秋のいい匂いだね」
     葡萄棚を見上げ、そっとイーニアスは深呼吸して。ぶどう狩り開始!
    「ふふ、そーれっ!」
     リュシールから抱えられ、きゃっと声を上げた真白だけど。
    「わぁ……なんだか宝石みたいです」
     ぐんと近くなった秋の実りに、ぱっと笑みを広げて。
    「あと少しなのだよ、がんばれー!」
     葡萄へジャンプする縁樹やイーニアスも、応援!
     いえ、二人に負けてられません!
    「イーニアス君、この辺り取り易い高さですよ! 行けます!」
    「そうだね! ……う、ううん、もう少し……!」
     そしてリュシールは籠一杯の葡萄を運びつつ、ふと家族と行ったぶどう踏みを思い出し、目元を素早く擦るも。今一緒に笑い合える、友達の元へ。
     そんな彼女に、どれが食べたいですか? と真白は微笑んで。
     もぎ取った一粒を口にした縁樹につられ、イーニアスもぱくり!
     ぷりぷりの果肉に、溢れ出す甘酸っぱさと旨み。
     そして広がるのは――楽しげな皆の笑い声と、笑顔。

     【吉祥寺1-7】の級友達と参加した烈也は。
     くっそーあの野郎、と、ぶどうのやけ食い!?
     そんな、何だか拗ねている彼に気付いて。
    「美味しく食べないと、ダメなのですよー♪」
     翠は横から、採れたて葡萄をあーん!
     恥ずかしい真似ができるかと拒む烈也。でも、うりうりーと差し出す彼女に根負けして、あ~ん。
     そして見ていたカイザに、幸せそうだなーとにこにこ呟かれて。
     翠はきょろきょろしつつ葡萄をぱくり。烈也は「何か作れ!」とカイザを追いかけ絞めた後。
     貰ったスイーツや採れたて葡萄を、いただきます!
    「スイカで鍛えた、あたいの種吹き技を見るがよいっ!」
     紗矢の食べっぷりに笑み、ゼロをもふもふしつつ。
     ぷぷぷっと器用に種を飛ばすミカエラが臨むのは、ぶどうの早食い競争!?
     クラスの皆や妹へのお土産も、しっかり確保済み。

    「ふあっ、大きな実なのよっ」
    「本当に大きい実がいっぱいなのじゃ!」
     久々の先輩後輩デートは、ぶどう狩り!
     心桜と杏子は、留守番の皆も分もと、張り切って手を伸ばすも……ちょっと届かない!?
     でも、大丈夫!
    「なの♪」
     杏子に抱っこされ嬉し気に羽をぱたぱたさせるここあが、葡萄をゲット!
     そして褒めてー! とぎゅうするここあを撫で撫でしながら。
    「こっこせんぱいとここあも、おひとつどうぞ? なのっ」
    「キョン嬢も、あーん?」
     甘酸っぱくて美味しい採れたて葡萄を、味見し合いこ。

     様々な紫と熟した香り広がる果樹園を歩き、煌く果実を集めて。
    「ブドウを用いて、いくらかお菓子を作ってまいりました」
     【サーカス小屋】のテーブルにずらり並ぶのは、ロジオン製のブドウ菓子!
    「噂には聞いていたけれど……見事なガトーね、ロジオン!」
    「うむ、この甘い香り、たまらないな」
    「いいねぇ、ロジオンのお嫁さんになる人は、きっと毎日おいしいスイーツが食べられるんだろうねぇ、ふふ」
     何気にお菓子係に勧誘する雛や孤影や、美味しそうに菓子を口に運ぶ花恋のそんな様子を、嬉しそうに眺めるロジオン。
     でも、ふいにフルーツティーをカチャリ、ソーサーに零して。
    「ろ、ロジオン……アタシ達、あっち行かない?」
     花恋はそそくさと、彼と退席を。
     その理由は。
    「ムッシュー? ヒナごと、この見事な宝石を食べてみません?」
     孤影の唇にそっと雛が添わせるのは、さながらぺリドットの如き一粒。
     自分を食べてと誘惑する様なその艶やかさに、孤影はふと笑み返すと。
    「ふふ、では、ぶどうはもらうぞ」
     そう、葡萄だけを口に含む。ヒナを楽しむのは、帰ってから、ね――と。

    「ちょっと贅沢ですが……やってみたかったんですよ」
     恵理がオーブンから取り出したのは、絶妙な焼き加減のドライフルーツ。
     それを銀皿のチーズケーキに添えて――カイザに会釈し、下からウィンク。
    「誕生日おめでとうございますっ。お勧めスイーツ下さいなっ!!」
     続いた紗月は勿論、食べる側!
     カイザはそんな【小箱】の皆に、お手製葡萄ケーキを振舞って。
     季節は食欲の秋! 美味しそうな葡萄目掛け、紗月がぴょんっと飛び跳ねる中。
     別腹に決まっているじゃないですか、と。恵理が更に勧めるのは、生のぶどうの山!

     【夜天薫香】には、腕の良い料理人もバリスタも、揃っています!
     でも、普段は作って貰ってばかりだから。
    「パンケーキ焼いたから、葡萄ジャムとコンポートと一緒にどうぞ」
     ましろは、たまには女子力をみせるよ、ときりり!
    「……うん、腕上げたな、ましろ」
     倭はそう彼女の頭をぽむぽむするも。わん! ともう1匹のましろも反応を。
     でも、まぁ良いかと、わんこのましろもぽむぽむ。
     そんな倭が作るのは、カスタードの葡萄タルトやぶどうサイダー。
     そして、採れたて素材を使って。
    (「スイーツでは倭先輩には負けられない……」)
     気合十分な天嶺が完成させたのは、見事な葡萄のホールケーキ!
    「ましろさんとゼロさんはこれでいいかな……」
     キャッキャじゃれ合う霊犬のましろとゼロには、スポンジケーキの耳を。
     そして、つい反応したもう一人のましろの様子に、カイザと一緒に思わずくすり。
     そしてお茶は、優志にお任せ!
     仲良く遊ぶ白と黒のもふもふを眺めつつ、ニルギリと皮を剥いた葡萄でグレープティを淹れるも。
    「お前、甘いのダメだっけ?」
     何気に何か言いたげな昴に、ふと声を。
     料理はしなくて良さそうだが、甘い物が沢山になりそうだと。そう危惧した彼の予感は的中。
     でも、甘い物苦手でも大丈夫!
    「御子柴のケーキなら甘さ控えめだぜ?」
     優志は、昴の分の珈琲をこぽこぽ淹れて。
    「……そうか。今度は甘味以外で馳走してやる」
     霊犬達と仲良く遊んでいたましろに、おかわり採りにいこうよ! と。
     倭は手を引かれつつ、今度は昴好みのものを振舞う約束を。

     ピンクのオーバーオールを着た夏南美は、レイラと服装談義を交わして。
     張り切って、いざぶどう狩り!
     でも。
    「広樹さん、取ってー、取ってー!?」
     手が届かず、ヘルプ!
     よし、任せろ、と広樹はそんな夏南美を手伝ってあげつつも。
    「あそこの葡萄なら届くんじゃないか?」
     比較的低い位置の葡萄を教えてあげて。
    「ふふふ、やっぱり藤原さんはお兄ちゃんなんですね」
     そんな二人に、レイラはくすくす。
     そして取った葡萄を一粒、口に運んだ広樹に倣って。
    「やはりもぎたては美味しいな」
    「……うん、やっぱりその場で食べると一番美味しい気がしますねえ♪」
     ウェリーも採れたてを試食!
     そして、沢山の実をいざ調理!
     ウェリーに教わりつつ一緒に、レイラは葡萄ジャムを作って。
    「ちょっと味見を……はわーおいしー♪」
     お手製ジャムは、パンケーキに添えたり、パンに挟んでサンドイッチに。
     そして夏南美も葡萄ジュースを作って。
    「皆、飲む、飲む、飲んでみる?」
    「Tietenkin、もちろん頂きますよー」
     みんなで、乾杯!
     そして広樹は、【心癒寮】の皆と楽しい時間過ごしながらも、ふと思う。
     いつかまた、あいつも一緒に――と。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月25日
    難度:簡単
    参加:56人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 6
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ