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ここは山奥の露天風呂。そばには男女両用の脱衣小屋が備えられており、誰でも無料で入ることができる。
今、二人の男女が、お湯に浸かって疲れを癒していた。
「いい湯だなあ」
「ねえ、知ってる? この温泉に入ってると、猿がくるんだって」
「そりゃ楽しみだな」
「だめだよ、楽しみにしちゃ。だって、その猿達、もの凄い数で押し寄せてきて、あっと言う間に温泉を占拠しちゃうんだから」
「そりゃますます楽しみだな」
「しかもその猿達、遊んで遊んでーって、せがんでくるんだよ」
「早く来ねーかな、その猿達」
「違うんだよ。遊んでってせがまれたら、猿達が満足するまで遊んであげないと、帰してもらえないんだよ!」
「そりゃ大変だな」
「大変どころじゃないよっ。帰してもらえなくて、死んじゃった人もいるんだからね。てゆーか、みんな死んじゃうんだから」
「はいはい、こえーこえー」
「もう、絶対信じてないでしょ……あ、猿だ」
「嘘だろ?」
やれやれ、といった風に振り返る男。
そこには、温泉を取り囲む猿の群れが居た。
●
「おまたせ、ルーシー。君の情報、間違いなかったよ!」
逢見・賢一(大学生エクスブレイン・dn0099)の言葉に、ルーシー・ヴァレンタイン(オーケストラコンダクター・d26432)が頷いた。
「やっぱり居たんだ……お猿さん……」
「温泉でお猿さんと遊べるの?」
薄井・ほのか(小学生シャドウハンター・dn0095)がうれしそうに言った。
「そうだね。キミ達には、温泉に行ってもらいたい!」
賢一が説明を始めた。
山奥の温泉に、猿の群れの都市伝説が現れる。悪気は無いようなんだけど、出会った一般人は深刻な被害にあうから、放っておく訳にはいかない。キミ達には、この都市伝説を灼滅してもらいたい。やり方は二つあるよ。
一つ目は、普通に戦って灼滅する方法。猿は沢山居るけど、ぜんぜん強くないから、キミ達なら簡単に倒せると思う。
二つ目は、猿の気が済むまで遊んであげること。猿達は沢山居て、しかもイタズラ好きだからちょっと大変かもしれないね。
温泉に到着するのは、お昼頃になるよ。お腹がすくかもしれないから、お弁当とかも用意すると良いかも。
まあ、危険な依頼ではないから、友達でも誘って気楽に温泉を楽しんでくればいいんじゃないかな?
じゃ、よろしくね♪
参加者 | |
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アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684) |
夢月・にょろ(春霞・d01339) |
黛・藍花(藍の半身・d04699) |
小沢・真理(シュヴァルツシルト半径急接近・d11301) |
小日向・有栖(歓待するもの・d18051) |
ルーシー・ヴァレンタイン(オーケストラコンダクター・d26432) |
グレゴリー・ライネス(どこから見たって立派なゴリラ・d26911) |
リヒト・デニーロ(十七番目の水産生物・d28787) |
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山に入って一時間くらい歩いた川辺に、岩で囲われた広い温泉があった。
普段なら一日一組でも訪れればよい温泉だが、今日は、多くの少年少女が秘湯を楽しんでいる。
「ニホンのお風呂っていいですよねー、ゆったりできて」
肩までお湯に浸かりながら、小日向・有栖(歓待するもの・d18051)が微笑んだ。長い髪をアップにし、メガネは外している。すらっと伸ばした綺麗な脚が、透き通ったお湯の底でゆらゆらと揺れていた。ヨーロッパ系の白い肌を覆うのは、かわいらしいビキニ。その紐はきつくしめられてる(フラグ)。
「やっぱり混浴なんですねー」
温泉番組のお姉さんみたいにバスタオルを巻いた小沢・真理(シュヴァルツシルト半径急接近・d11301)が、困惑気味にお湯に入った。女の子率の高い団体とはいえ、どうしても、ゴリラに視線が行ってしまう。ほかほかのお湯にうっとりしながら、『いい湯だな』と書かれたプラカードを掲げているこのゴリラは、なにを隠そうグレゴリー・ライネス(どこから見たって立派なゴリラ・d26911)その人(人?)である。見た目はゴリラだけど、一応、灼滅者だし、一応、雄――いや、『男』である。その隣にいる、頭がヒトデの人(人?)も、やはり男に違いない。
「リヒトくん、淡水だけど大丈夫かなあ……?」
ヒトデ頭を心配そうに眺めるルーシー・ヴァレンタイン(オーケストラコンダクター・d26432)。淡水と海水を間違えただけでコロっと死んでしまうのが水生生物である。心配だ。それに、『温泉が淡水だから死んだ』などという死因では、お通夜の時にどんな顔をしていいのか分からない。
「いや確かに淡水で温水だが、俺は人間だからな。溺れもしなければ茹であがることもないぞ? 心配してくれるのは素直に嬉しいんだが……」
ヒトデの腹をうぞうぞさせながら、リヒト・デニーロ(十七番目の水産生物・d28787)が、釈然としない面もち(面もち)で言った。
千里は、温泉を縁取る岩に立っていた。山林の木々が揺れ、青空に雲が流れる。川のせせらぎが耳に心地よい。温泉からは、友人たちの笑い声が聞こえる。
(「友達と一緒に温泉なんて、はじめて」)
そんな千里に、夢月・にょろ(春霞・d01339)が手を伸ばした。
「一緒に入りましょう」
「ほれ、裸の付き合いなんだから恥ずかしがってんじゃねぇぞ、入った入った」
「……ん」
にょろと瑠音に頷き、千里はにょろの手を取った。自然と、にょろの胸に視線がいってしまう。ビキニに包まれた大きめな胸は、お湯に入るとすこし浮き、気持ちよさげに揺れ、たゆたう。とても柔らかそうで、見ているだけで心が安らぎ、癒されるのだった。しかし、そんな平穏が長く続くはずもなく。
悪戯っぽい笑みを浮かべたりんごが、にょろの背後に忍び寄った。
「大きくなりました?」
いきなり胸を鷲掴み!
「なってませんよぉ」
にょろの言葉をよそに、もみもみっと胸を揉みしだくりんご。
「えっと……入浴する場所で女の子同士、胸を触るって……本当にあるんだな」
りんごに弄ばれるにょろを見つめつつ、千里が呟いた。
「そうそう、本当にあるんだぜ!」
背後から瑠音の声がして、千里は、胸がきゅん、となった。
見れば、両脇から差し込まれた瑠音の手が、自分の胸をいいようにまさぐっている。
(「これは結構恥ずかしいかもしれない」)
そんなことを思いつつも、千里の表情は変わらない。それなら私もと、にょろに手を伸ばす。
キャッキャ、ウフフ、と戯れる声を背に、アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)は自分の胸とにょろの胸を交互に見比べた。
「あっしはまだ成長途中なんすよ、まだこれからっす」
わんこ耳を悲しげに寝かせつつ、ぶつぶつと呟くアプリコーゼ。そんな彼女の肩を、誰かがトントン、と叩いた。振り返れば、伸ばした人差し指を左右にピコピコさせながら、猿が首を振っている。
「そんなっ! あっしはまだ中学三年生だし……って、グレゴリーさん?」
「うほっ!?」
少し離れたところで、ゴリラの声がした。グレゴリーである。
ということは、『キミは一生ぺたんのママデース』とでも言いたげな猿は、都市伝説……お湯にのぼせて顔が赤くなったグレゴリーではない。
アプリコーゼは、辺りを見渡して、愕然とした。
いつの間に湧いて出たのか、いるわいるわ、広い温泉の隙間を埋めるように、猿の群れが温泉に入っていた。
●
「ウッキーッ♪」「ウキキッ♪」「ウッキッキッ♪」「ウホッ♪」
三匹の小猿を頭と肩に乗せ、グレゴリーが踊りを踊っていた。
最初は、やれやれ……といった感じのグレゴリーだったが、今はノリノリである。
あまりにも楽しそうなので、他の小猿達もグレゴリーの背中に飛び乗った。頭の上で宙返りしたり、逆立ちしたりと、やりたい放題だ。
「こら猿達、さっきから顔を引っ張るんじゃない。爪が痛い、刺さっている」
こちらはヒトデ頭のリヒト。やはり、小猿が四匹ほど肩と頭にへばりついている。
「いやひっぱるなとは言ったがかじっていいわけじゃないからな?」
聞く耳を持たずにヒトデの頂点をガジガジする小猿達。
「デニィは……食べられないように気を付けてね?」
猿にバナナを与えながら、システィナが言った。
「大丈夫だシスティ、これは甘噛みと言うやつで……いやちょっと待て」
いや痛いからな? 普通に痛いからな? とか言いつつ、リヒトは子猫にじゃれつかれる親猫のような寛容さを発揮した。
「ヒトデって食用とかあるんだっけ……危ないね」
冗談で言っているつもりだが、ふと『猿に食われて死んだ』という死因が頭によぎり、どんな顔をしていいのか分からなくなるシスティナであった。
「あの猿は……俺のクラスにいる猿とは、関係ないんだよな……?」
試験管にお湯を汲みながら、思わず目を凝らしてしまう青羽。一方で、水着姿の女性陣を見て、つい恋人が温泉に入っている姿を想像してしまう。気づけば顔が真っ赤になっていた。頭を振って雑念を追い払うと、青羽は研究に集中するのであった。
「温泉って気持ちいですねー」
「き、気持ちいい……ねぇ……」
二人並んでお湯につかる文具とユァトム。ふと、遠くにヒトデ頭が見え、ユァトムがビクッとした。思わず文具の肩に手をやり、身を寄せてしまう。
「あれはリヒト先輩です。あっちのゴリラはグレゴリー先輩。二人ともいい人ですよ!」
「あ、じ、人造灼滅者……なんだね……び、びっくりした……あの、こ、ここで泳いだら、周りの人に叱られるかな?」
「大丈夫だと思いますよ。だって、ほら!」
二人の目の前を、猿達が泳いでいった。他の粗相に比べれば可愛いものである。
二人は悪戯っぽく微笑むと、猿達に混じって泳いでみるのであった。
「……現れましたね」
温泉から少し離れたところにお弁当を広げていた黛・藍花(藍の半身・d04699)が、温泉の騒ぎを眺めつつ、アイテムポケットから大量のバナナを取りだした。藍花と瓜二つのビハインドが、敷物の上にバナナを綺麗に並べる。
「さる共がでたっすー!」
藍花の所にアプリコーゼが駆け込んできた。
「ふふふ……さるめ、あっしが用意したバナナをくれてやるっす……えーと」
かばんを探すアプリコーゼの目に、藍花の用意したサンドイッチが飛び込んできた。お腹をぐぅ~っと鳴らし、よだれをたらすアプリコーゼ。
「よろしければどうぞ。皆さんの分もありますよ」
藍花が言うやいなや、アプリコーゼは玉子サンドとカツサンドを両手に持って食べ始めた。
「いただきまーっす♪ あむあむ……藍花さん、おいしいっす!」
「そろそろお昼時ですから。皆さん、お腹を空かせているのでは……」
「そうっすね、ちょっと皆を呼んでくるっす!」
両手にバナナを抱え、温泉に戻るアプリコーゼであった。
「はーい、バナナですよー」
ルーシーがバナナを差し出すと、グレゴリーの肩に乗った猿が、首を傾げながら受け取った。においをスンスンと嗅ぎ、皮をぴろぴろっとむくと、グレゴリーの口元へと運ぶ。その瞳は、グレゴリーへの親愛の情にあふれていた。
戸惑いつつも、それを食べるグレゴリー。
「あ、食べた」
ルーシーが嬉しそうに微笑んだ。あたしのも食べて、と差し出されたルーシーのバナナも、グレゴリーはちゃんと食べてあげた。
「ねえ、のどか。お猿さん、かわいいね」
「うんうんグレゴリーくんも優しくていい男だね」
ルーシーに頷きつつ、のどかは、そっとルーシーの背後に回った。
「……最近大きくなってきたんじゃない?」
「きゃっ、ちょっと……!?」
顎を肩に乗っけながら、ルーシーの胸を揉むのどか。ルーシーは顔を真っ赤にしてあたふたしている。
目のやり場に困るグレゴリー。視線を泳がせていると、のどかの頭の上に小猿が飛び乗った。その手にはビキニブラが!
「わーん! 待ちなさーい!」
振り返れば、右腕で胸を隠しながらこちらに走ってくる有栖の姿が!
「グレゴリーさん、その子、捕まえて下さい……ってきゃっ!」
お湯に足を取られ、有栖が派手に転んだ。
「あはは……」
お湯から顔を出して、照れ笑いする有栖。
顔真っ赤なグレゴリー。
有栖はハッと気づくと、両腕をクロスして胸をかばった。
「みみみ見えました?」
グレゴリーは首を振った。しかし顔は真っ赤である。有栖の顔も真っ赤である。
「ウホッ! ホホゥ!」
ひと吠えすると、グレゴリーは『俺に任せろ!』と書かれたプラカードその場に残し、盗人猿を追いかけた。
恥ずかしそうにしている有栖の元へ、ルーシーが歩み寄る。
「有栖ちゃん、これ、よかったら」
差し出されたのは、スペアの水着。有栖の顔がパッと明るくなった。
「ルーシーお嬢様、お弁当の用意が整いました」
メイド服っぽい水着を着たグローリアが、温泉の縁に立って言った。ちなみに、スペアの水着を用意していたのもグローリアである。
「……有栖ちゃんも、いっしょにどう?」
ルーシーが言った。有栖とは同じ部活だが、あまり話したことはない。声をかけるのは勇気が必要だった。
「はい、喜んで!」
有栖が笑顔で頷いた。ルーシーも一緒に笑った。
●
温泉の縁に腰掛けながら、真理は猿の毛繕いをしていた。
「こんなもんでいいよね」
見よう見まねで猿の背中をつついたり摘んだりする真理。割と適当である。真理の背中も、他の猿が毛繕いしている。と言っても、素肌に巻かれたバスタオルをつついたり摘んだりしているだけだが。
「ふふ、こんな風に遊ぶだけなんて、楽な依頼だよね」
そう呟くと、毛繕いをされていた猿が振り向き、首を振った。
何か間違えたらしい。
「し、師匠、申し訳ありません」
片手を岩につき、反省のポーズをとる真理。だが、師匠の眼差しは厳しい。
「ウッキ!」
両手でバッテンを作ると、真理のバスタオルを思いっきり引っ張った。他の猿達も師匠に倣って引っ張り始める。
「いーやー! やめてー!」
涙目になってバスタオルを押さえる真理。しかし、多勢に無勢である。いったん「取るぞ」と決意した猿達の攻撃は激しく、あっという間にバスタオルをはぎ取られてしまった。
そこへ通りかかるグレゴリー。しかし、真理は余裕の表情である。バスタオルを取られる寸前に、水着を封印解除して装着していたのだ。
「グレゴリーくんお願い、私のバスタオル、取り返して!」
「ウホッ!」
力強く頷くと、グレゴリーは木から木へ飛び移りながら盗人猿達を追うのだった。
その頃、藍花達はというと。
「順番です、全員分ありますから並んでください」
バナナに群がる猿達に悪戦苦闘していた。
「ちょっとまつっす! 今順番にぷぎゃうっ!?」
「待て、その蜜柑はグレゴリーにあげようと思って取って置いた分だうおおっ」
アプリコーゼとリヒトは、押し寄せる猿軍団に押しつぶされてしまった。
「ウッキァー!」
「ウッキァァー!」
とうとうケンカを始める猿達も現れた。
その時。
マテリアルロッドがズガッと岩に突き刺さった。
一斉に振り向く猿達。
「温泉ではお静かに」
岩に刺したマテリアルロッドを引き抜き、藍花が言った。
猿達は藍花をボスと認め、大人しくなるのであった。
「奈落ちゃん、どう?」
「うん、この唐揚げはおいしいな」
奈落はルーシーにお呼ばれして、一緒に弁当を食べていた。
「よかったー。ね、グローリア。これぜーんぶグローリアが作ったんだよねっ」
グローリアは頷くと、膝の上に乗った猿にフライドポテトを与えた。
優しくされて調子に乗ったのか、猿がグローリアの胸に手を伸ばす。
「こらっ」
すかさずハリセン(防水加工済み)で猿をひっぱたくリィザ。
「まあまあそのくらい大目に見てあげても」
とか言いつつ、のどかがルーシーに抱きついた。
「きゃーっ」
「ここか! ここがええのんか!」
「えー加減にしなさい、ですのっ」
人目をはばからずに襲いかかるのどかに、突っ込みを入れるリィザ。
その目の前を、猿が走っていった。
「わはひのみふひ(私の水着)っ!」
グローリア特製ハンバーグをほおばりつつ、有栖が叫んだ。
そう。あの盗人猿である。次いでバスタオルを持った猿が続き、グレゴリーとニホンオオカミがそれを追っていた。
「こら、待ちなさいっ!」
リィザも盗人猿追跡に加わる。
「あ、白銀ちゃん!」
叫ぶやいなや、ルーシーがニホンオオカミにタックルした。勢いそのままに、ごろごろと転がる二人。
「白銀ちゃん、白銀ちゃん、もっふもふー♪」
突然もふられてびっくりしながらも、ニホンオオカミ姿の白銀は、ルーシーにされるがまま、もふられるのであった。
●
(「予想はしていたけど、瑠音は暴れてるなぁ……」)
にょろと瑠音を見守る翠葉。というか、瑠音の水着姿が可愛くて、ついつい見てしまう。ガン見である。
「お弁当もあるんですから、そっちも楽しみましょうよぉ」
にょろの声を聞き、翠葉は瑠音を引きはがしにかかった。
「ほら、ごはんにしようねー」
そこへやってくる猿軍団。
「ウキャー!」
「きゃあーっ」
さばぁーっと現れてにょろ達にタライを被せまくる!
「なになに……お前らもイタズラ好きか、よし一緒にやろうぜ!」
猿に混じってさらなる混沌を演出する瑠音。その背中に、五十センチほどのヒトデが張り付いていた。
「なんだろう、このヒトデ」
翠葉がつんつんすると、ヒトデはウキッ? と猿っぽい声を出す。
そこに、シャリンが通りかかった。瑠音に張り付いたヒトデに微笑みかける。
「これはこれは 星見乃さんもいらしていたので……」
「ちょっとまったー!」
リヒトがもの凄いスピードでやってきてシャリンにタックルをかました。
「ウキキッ?」
ヒトデ――海星が振り向いたときには、二人の影はない。
「こいつ……人造灼滅者か?」
ヒトデをつまみ上げ、首を傾げる瑠音。ヒトデのお腹は、なぜだか宇宙空間が広がっているように見える。手を突っ込んでみると、ヒンヤリとして気持ちよかった。
「ヒトデさんも、一緒にお弁当食べましょう」
にょろの言葉に、ウキッ♪ と返事する海星であった。
幎は、猿の目の前にコクリュウジをひらひらさせて、猿達の興味を惹いていた。そこに現れる盗人猿。有栖の水着をなびかせながら、コクリュウジも取ろうと手を伸ばす。
その時、『隙あり!』と書かれたプラカードを掲げつつ、グレゴリーが盗人猿に飛びかかった!
「ウッホーン!」
「ウッキー!」
盗人猿をガッチリキャッチ!
盗人猿はめでたくお縄となり、真理のバスタオルを取った猿も、リィザの手によって捕らえられた。
「ウッホッホー♪」
喜ぶグレゴリー。
「ウッキッキー♪」
つられて、盗人猿も笑った。
「「「ウッキッキー♪」」」
他の猿達も、大笑いした。
ひとしきり笑うと、猿達は光の粒子となって、空に舞い上がっていった。
「あ、満足したのでしょうか」
消えゆく猿を見上げ、温泉の中で大人しくしていた真理がつぶやいた。いまや、水着も取られてしまい、手で隠している状態である。
「取り返しました、ですの!」
リィザが真理にバスタオルを差し出す。
「ありがとう、リィザちゃん! どうして私は遊ぶのが楽だなんて思ったのでしょう……」
タオルを巻いて、ほっとひといきつく真理であった。
「やあ、兄くん」
人間形態に戻った海星が、リヒトに声をかけた。
「お、海星もいたのか」
海星の声を聞いただけでもうリヒトは嬉しそうである。
「ほら、いいお湯だぞ。こっちでゆっくりしよう」
「うん。実は僕、猿に混じって、イタズラしてたんだよ」
「なに? そうだったのか。お兄ちゃん、ぜんぜん気づかなかったぞ」
「ふふふ、実にさりげなく混じっていたからね」
得意げに微笑む海星を見て、知らんぷりしてあげてよかったなあ、と思うリヒトであった。
「お風呂って疲れを取るもののはずですが……へふー……」
猿達と遊び疲れ、ジャパニーズドザエモンの如く温泉に浮かぶ有栖。
「……静かになると、すこし淋しい気もしますね」
藍花が呟いた。
「そうっすねー。まあ、満足して貰えたようですし、めでたしめでたしっすよ!」
徳利でジュースをちびちびやりながら、アプリコーゼが言った。
「だといいなぁ」
ルーシーが空を見上げた。
お猿によく似た雲が、笑っているように見えた。
作者:本山創助 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年9月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 10
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