ど根性伝説

    作者:大田一人

     それに気付いたのは、飲み帰りのサラリーマンだった。
    「なんだあれ……」
     闇夜にちらちらと浮かび上がる、白い影。視界の端に現れたかと思うと、不意に消える。
     跳ねて、走って、消えて。そんなことを何度か繰り返した。
     まさか幽霊か。
     逸る鼓動を抑えながら目を凝らした男が見たものは。

    「大根だ」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は、重々しく告げた。
    「時々ニュースにもなるよな、ど根性なんたらって野菜」
     アスファルトを突き破り、天を目指すその姿に人々は感動を覚え、名前をつけたり世話をしたり、とにかく放ってはおけないようだ。
    「今回の都市伝説も、最初はそんな風にして生えていたらしいんだが」
     悲劇は一ヶ月前に起こった。田舎の道路ににょっきり生えたど根性大根。人々に見守られながらすくすく育ち、生を全うするかと思われた。だが。
     途中で何者かによって抜き取られてしまったのだ。行方は未だ杳として知れない。
    「アスファルトにはそいつのいた穴が開いたまま。その穴を見て、皆が噂するようになったんだ」
     志半ばにして抜き取られた恨みを晴らしに来るんじゃないか――。
     大根の志とはどのようなものなのか。想像もつかないが、人々の噂はやがてど根性が振り切れた大根を生み出してしまった。
     夜な夜な現れては道を爆走し、人を見れば襲ってくる、そんな大根を。

     大根は自分がいた穴の辺りを徘徊している。
    「大根は夜、暗くなってから……大体夜9時以降だな。穴に近づくと現れるぜ」
     穴のそばにはなぜか花が供えてあったりするので、迷うことはない。
     街灯があるので照明は不要。人通りも少ないので人払いを気にする必要はないが、もし戦闘が長引けば最初の犠牲者となるサラリーマンが来てしまうので注意が必要だ。
    「大根の攻撃は四種」
     全力での体当たりはマルチスイングに似ていて、直撃を食らえば大根型の痣が当分残るぞ!
     尽きることのない恨み言は九眼天呪法に似ているが、うっかり聞くとめっちゃ気が滅入る。しかも何故だか生きていてはいけないような気になれるぞ!
     時折白い肌を悩ましげにくねらせながら踊るが、これはパッショネイトダンスに似ている。うっかりそのみわくてきな腰(っぽいところ)と素晴らしいリズム感に見蕩れないように気をつけろ!
     また傷が深くなってくると、葉を回転させて風を生み出し回復も行うようだ!
    「ちなみに逃亡の心配はない。どんな窮地でも、大根はど根性でどうにかしようとするからな」
     
     身振り手振りを交えながら熱く語った後、一息ついて大根印の野菜ジュースを飲みほすヤマト。
    「人が奴を途中で抜き取ったのが原因といえばそうだが、都市伝説は都市伝説。無害なただの噂で終わるよう、さっくり灼滅してやってくれ」
     そう言ってヤマトは灼滅者を送り出した。


    参加者
    裏方・クロエ(ヌクテメロン・d02109)
    中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    安藤・小夏(片皿天秤・d16456)
    スティーブン・ゲルベル(黒焦げ熱血バーガーヘッド・d25355)
    ディートリッヒ・オステンゴート(狂焔の戦場信仰・d26431)
    蔵寺・巳子(戦渦繚乱恋心の亡者・d27319)
    虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)

    ■リプレイ


     道の脇から虫の声が聞こえる。風がさわりと草葉を揺らし、集った灼滅者達の頬を撫でた。
     裏方・クロエ(ヌクテメロン・d02109)が欠伸をかみ殺す。
    「この時期は早めに睡魔がきますですよね。早く倒して寝ましょう~なのですよ」
     都市伝説が出現するのは夜9時以降。早めに現地入りし魂鎮めの風の用意もしていたが、周囲には全く人気がない。
     一般人が来ないよう準備を整えるのは、スティーブン・ゲルベル(黒焦げ熱血バーガーヘッド・d25355)と虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)。スティーブンはサウンドシャッターを、智夜は殺界形成を展開し万一に備える。
     街灯に照らされた花と、小さな穴。一見するとまるで事故現場。
     中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)が微妙な表情で花を見る。思い入れがあったという事かな、と量ってはみるものの、ずれている感は否めない。それでも人々に想われたものならば。
    「大根を悪役にするわけにはいかねぇ、被害が出る前に防がないとな」
     頷いて、ぐっと拳を握る蔵寺・巳子(戦渦繚乱恋心の亡者・d27319)。
    「勢いある奴は好きだ、だからど根性大根! あたしらはテメェを迎え撃ってやる!」
    「自力で這い出て走り回る大根デスカ、活きのいい野菜はどんな味がするんデショウネエ」
     スティーブンが言えば、ディートリッヒ・オステンゴート(狂焔の戦場信仰・d26431)は考えるように顎に手を当てた。
    「そういえば俺、大根って食べたことないんですよね」
     彼が調理法について悩む後ろで、せっせと穴を満たしているのは安藤・小夏(片皿天秤・d16456)。足元には醤油、出汁、味醂。周囲の目が一斉に自分に注がれたことに気付いた小夏は、眩しすぎる笑顔で言った。
    「おいしくなぁれですっ!」
     煮込むとおいしいよね。何をとは言わないけど。
     どの辺がど根性なのか、かなりタフということだろうか。思い巡らせるのは、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)。
    「まあいい。誰であろうが俺の歌で、ゴキブリのようにのたうち回りながらカンドーの涙を流させるのみ」
     その涙は果たして感動によるものなのか。
     と思ったが誰も突っ込まなかった。ついでに彼の背で燦然と輝きを放つ7色ケミカルライト(扇状に展開)にも触れずにおいた。

     9時を過ぎた時。一瞬虫の声が止み、街灯が瞬く。
     それが合図のように、闇の向こうで何かが跳ねた。現れては消える白い輪郭は、確かめるまでもなく大根。二股になっているアレ。ど根性プラスセクシー。思わず釘付け。
    「はっ、見蕩れている場合じゃない」
     我に返り、ディートリッヒがサバモンボールを掲げた。ライドキャリバー、ファルケを呼び出すためだ。何処かで見たようなボールだしキャリバーが出現したのはカードからだったが、そんなのは細かいこと。演出大事。
    「そういえばファルケさん、いらっしゃるんですね。俺のキャリバーは今回にくかb……キャリバーと呼ぶことにします」
     同名の仲間がいるので、普段通り酷使するのは躊躇われる。扱いがよくなることを期待してか、嬉しそうなキャリバー。
    「自らの力で土瀝青を砕くか。良いだろう、貴様を我が好敵手と認め存分に死合いを……」 
     弾む大根を前に、智夜はかっこいい(中二)台詞を決めつつも悩んでいた。
    (「……なんかちょっと、違うなぁ……」)
     台詞はともかく、絵面が。
     相手は所詮大根、どんなに格好良く決めても友達に自慢できるかは怪しい。それに、闇に体をくねらせる様を見ていたら。
    「……あ、なんかおでん食べたい」
     イキのいい大根は、なんだかとてもおいしそう。

     一方、スティーブンは知り合いの顔を思い浮かべていた。
    (「これは違うヨナア」)
     はい違います。そちらの大根様は顔だけが大根です。


     軽やかな足音で、大根大地に立つ。
     微妙にくねった腰、軽く交差させた足。灯りに照らされる姿はスポットライトを浴びたスターのよう。そしてでかい。普通の大根の三倍はあろうか。
    「平和は乱すが正義は守るものっ! 中島九十三式・銀都参上! 悪に染まる前に、倒してやる!」
     銀都が高らかに口上をあげ、縛霊手から展開した結界が大根を包む。毒がじわりと這い登り白い肌を染めた。めっちゃどどめ色。
     間髪いれず、大根が怒ったように葉を揺らし毒を抜いた。己の肌に一家言ありそうだ。
    「まずは守りを固めましょうか」
     この大根面倒臭そう。という言葉を飲み込んで、ディートリッヒはロートシルトを構える。ワイドガードによりシールドが展開し、守りが前列を覆う。
     クロエは鏡・もっちーと並び中衛に立ち、大根を見据えた。改めて目前にすると戸惑いが隠せない。しかもこの大根、さっきからもっちーをじっとりと見ている。白さでは負けない、と言いたげな気迫が漂う。このままでは気迫で負けてしまう。
    「行くのですよもっちー君!」
     視線を合わせた二人から、神薙刃としゃぼん玉が放たれた。風に乗り猛烈な勢いで走るしゃぼん玉は一直線に大根へ。泡に洗われ微妙に輝きを増す白肌。いけない、喜んでいる気がする!
    「スティーブンちょっと挟んできなよ。大根バーガーイェア!」
     艶やかな大根とバーガー頭の仲間を見比べ小夏が言った。思わずバンズを開きかけるスティーブン。が、大根を前にはたと止まる。
    「サスガに大きすぎますネー、Ms安藤」
     相手は当社比3倍、いかに人造灼滅者の肉体を持ってしても頭部では収まりそうにない。
    「ヘイユー、調理しやすいよう短冊切りになるデース!」
     スティーブンのご当地ダイナミックが炸裂する。だが大根は機敏に体をくねらせ間一髪、直撃を避けた。
    「結構すばやいのデース」
     容易に挟めないとなるとますます挟みたい。だがそうは行かねえと、大根は踊り狂う。調子を上げてステップを踏み、ターゲットを探して腰をうねらせる。
     びたん! と大きく踏み込んで大根が体を向けたのは、賑々しく光を放つファルケ(灼滅者の方)。自分より目立つものが気に食わないのか、ぎらりと目を光らせる。どこが目かは不明。
     大根の攻撃。ファルケは腹に大根痣のダメージを受けた! 大根の攻撃。ファルケは腹に大根痣のダメージを受けた! 大根の攻撃。ファルケは腹に大根痣の……。
    「しつこい!」
     ファルケがマテリアルロッドで大根の頭を叩く。腹には見事な円を描いて刻まれた大根痣。妙にアーティスティックな配置が余計に腹立たしい。ヒーロー歌手の大事な体になんてことを。
     すちゃっとマイクを構え、怒りのまま高らかに響かせるディーヴァズメロディ。それは伝説の歌姫にも匹敵する歌声。の筈だった。が。
     言葉を飾らずに言えば、彼は音痴だった。スペシャリストと呼ばれるほどの。
     悶絶する大根。
     うめく灼滅者達。
     その歌声はどちらを攻撃するものなのか。誰にもわからぬまま、ただ風だけが吹きぬけていく。
     沈黙を破ったのは巳子。戦いでテンションの上がりきった彼女は、個性的な歌声にも怯まない。白天陽【アルバロ】と黒禍月【ウルネラ】を構え、狂気宿した視線を大根へと投げる。気圧された大根が後ずさる。
    「ヴオート! 零下叫炎!! 凍らせちまいなぁッ!!」
     言葉と共に、冷気を纏った炎が湧き上がる。龍に似た残像を描いて大根を飲み込んだ。美しく氷で飾られる大根。しかしその美しさも彼には感銘を与えない。凍みたらどうしてくれるとでも言いたげに、葉を回転させる。そして怒りのまま反撃へうつる。
     大根走った、見事な走りだ! 庇う間もなく巳子の腹へとめり込む魅惑のボディ!
    「何じゃこの理想の形はぁ!? つかこんな痣いらねぇ!?」
     とっさに腹を確認した巳子が叫ぶ。浮かび上がっているのは、まるで魚拓のように立派な形。敵ながら見事なプレス。ちょっと悔しい。
     勝ち誇り油断した大根の背。今がチャンス。抗雷撃を放つため、小夏がこっそり近づく。唸る拳に雷が宿り、一歩踏み込んだその時。
    「ヨシダァア!?」
     踏みしめた足の下、ヨシダシューズが叫ぶような音で鳴った。
    「ヨシダァアアア! ヨシダァアア!!? ヨシダァアアア!!!??」
     はっと気付く大根。うっさいわ! と言わんばかりに突っ込んで来る。霊犬のヨシダが庇うように走り出た。
    「行け、ヨシダ! 齧れ! 無理でも齧れ!」
     ヨシダは主人の命をスルーして斬魔刀で切り込んだ。だってあいつ絶対辛いし。
     魅惑のボディを切り刻まれた大根はわなわなと震えている。咆哮をあげるように大きくのけぞった。大根は仲間を呼んだ! 気がする!
     一瞬固まる灼滅者達。まさか。

     身構えて待ってみたが、何も現れなかった。ぼっち大根伝説の始まりである。

     大根は己の不徳(※ぼっち)を恥じるかのように身を捩り、激しく踊る。白い腰が夜にうねる。
     うね。うねうねうねうね。くねっ。
    「ええい、くねらせるな! 微妙に上手いのが余計になんとも言えぬ気分になるではないか!」
     間近で見た智夜が叫んだ。思わず耳がぴこぴこ。誤魔化すように咳払いし、縛霊手を顔前で構える。
    「これは縛魔の糸。お前を永遠という蜘蛛の糸に絡めとる……」
     物々しい台詞と共に智夜が放つは、秘技・かっこいい縛霊撃。効果は通常のものと同じだが、何故か無駄にかっこいい。気分的に。大根も感動したのか、うっかり聞き入りまともに食らった。悔しげに地団太を踏む。
    「チュールの加護をここに! 不浄なる力、焼かせていただきます!」
     今なら隙だらけ。攻撃の切欠を見つけたディートリッヒの手の中で黄金剣・エッケザックスが唸り、大根の魂を貫く。
     だが奴はへこたれなかった。魂は不滅とでも言うつもりか、雄叫びを上げる。しかし熱くない。暗い。粘っこい。
    「こ、これはまさか……」
     とんでもない早口だがわかる。恨み言だ。
     世間が悪いんだ! 俺の人生は不遇だ! 等、切々と語っている。よく聞き取れないが。
     たまらず、ディートリッヒはキャリバーを身代わりに突き出した。キャリバーの絶叫が戦場にこだまする(気がした)。
    「尊い犠牲、忘れないぜ……」
     現場を目撃してしまった銀都は、そっと目を伏せた。 


    「その身に宿した力、焼き払わせて頂きましょう」
     キャリバーを沈めて調子に乗る大根を止めようと、ディートリッヒの掌から炎が渦巻き迸る。身を焼かれのた打ち回る大根。だが不屈の闘志でそのままステップに移行する。
    「ダンスがマンネリですネー」
     鋭い指摘と共にスティーブンのチェーンソー斬りが唸った。白い肌に刻みつけろ、肉と言う字を。
     大根は、ツッコミとアイデンティティを崩壊させる落書きの両方にショックを受けている!
    「スキありイィ!」
     ガッと掴んでポイ。更に掴んでポイ。
     大根がいた穴めがけ、地獄投げする小夏。投げられても投げられても向かってくる大根。それを何度繰り返しただろう。いつしか二人に友情が、
    「キッシャアアアッ!」
     全然芽生えてなかった。
     タイマン状態の二人の後ろから放たれる、クロエの閃光百裂拳。大根の体を何度も打ちつける。白かった肌はすっかりどす黒い。大根はわなわなと震えたかと思うと、クロエの耳へ張り付いた。零距離で放たれる狂気のラップお経。
    「あ、あああ……!」
     見えない何かがクロエを苛む。膝をつく主人にもっちーが慌ててふわふわハートを使用した。やさぐれた心を優しく包み、癒していく。
    「セクシーポーズの黒影が眼前に立ち、ざっくざっく攻撃してきました……」
     汗を拭い立ち上がるクロエ。もっちーがいなかったらどうなっていたことか。
     キャリバーは倒れ、いつの間にかヨシダも同様。さすがの灼滅者達にも、疲労の色が濃い。主に精神的に。
    「それでも私達は諦めない! 大根の根性に見習い全力で戦う! オラオラオラオラオラァッ!」
     巳子の手中で黒と白のナイフが煌く。零距離格闘による息もつかせぬ猛攻で大根の肌に無数の穴が穿たれる。ここが押し所だ。
     智夜がす、と目を細めた。大地に向かって手を伸ばす。
    「母なる大地に眠りしものよ。今一度、力振るう機会をここに!」
     呼応するかのように、無数の畏れが智夜の体を這い登る。それは敵を貫く刃となり、一直線に大根の腹を裂いた。
     打たれ焼かれ、切り裂かれ。しおしおになった大根は、ふらつきながらも大地を踏みしめる。何がそこまで彼を駆り立てるのか。
    「よし、決めにかかるぜ!合わせるぞ、ファルケ」
    「遅れるなよ、銀都」
     目配せし、勢いよくダブルジャンプする銀都。頷き返したファルケもマイク代わりのロッドをくるりと回す。
    「俺の正義が真紅に燃えるっ! 真のど根性を示せと無駄に吼えるっ! 必殺、ど根性ファイアーっ!」
    「刻み込め、魂のビートっ!これがサウンドフォースブレイクだっ」
     言葉と共にレーヴァテイン、フォースブレイクが炸裂する。
     大根は仁王立ち。逃げる力も残っていないのか、それとも。

     二人の技が、大根を打ち砕いた。言葉もなくその体が消えて行く。
     心無いものに眠りを妨げられ、一人走り回っていた大根。呼んでも仲間の来なかった大根。だが彼は最後に目の当たりにした。見事な連携を。
     どこか満足げな様子で、霧散していく白い姿。
     抜かれる前にお前達に会いたかった……。大根がそう言った気がした。


    「逝ってしまいましたね」
     大根が消えた空間を見つめ、クロエがぽつりと言った。すっかり平常心に戻った巳子も穴に視線落とし、敵を讃える。
    「手ごわい相手だった……」
    「最初は大根とかどうよ、と思ったけど、強……ごほんごほん、天晴れであった」
     戦いが終わった安心感からか、うっかり素で喋ってしまう智夜。慌ててごまかす。
    「何も残ってないデース」
     体が残っていたら調理して、ライスバンズに挟んで皆に振舞いたい。そう思ってスティーブンは辺りを丹念に調べたが、欠片ひとつなかった。残念そうに首を振る。
     仕方がない。せめて穴だけでも埋めておこう。噂が再燃したり、誰かが躓きでもしたら大変だ。
    「ファル……キャリバーでふさぐというのはダメでしょうか?」
    「ダメだろ」
     ディートリッヒの言葉に、銀都がすかさず突っ込む。
     彼が使われないうちにと、スティーブンが持ってきた土を穴へ入れていく。銀都とファルケも手伝いながら、供えてあった花を一本ずつ手に取った。
     大根の体はもうないが、せめてその雄姿を見続けた花を埋めてやろう。今度は誰にも邪魔されない野原に。
     そこにはいつか立派な大根が生えるかもしれない。

     しんみりした空気を纏い、帰路につく灼滅者達。すれ違う酔っ払いサラリーマンの鼻歌が聞こえる。
    「ところでスティーブン、あたし男だから次会った時はミスターがいいなぁ」
    「ヨシダァアアア!!? ヨシダァアアア!!!」
     歩く小夏に合わせ、ヨシダシューズが音を立てる。
     夜に響くその音を、ファルケの鎮魂歌がかき消した。

    作者:大田一人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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