焼き付いて、離れぬ写真は肌色で

    作者:飛翔優

    ●思春期少女の悩み事
     ――きっかけは、兄の部屋に参考書を借りに行った時。ベッドの下からはみ出ていた雑誌を、好奇心赴くまま引っ張りだした後。
     雨宮絵梨香、十四歳の中学二年生女子。保険の授業も受けてきた、知識としては知っていた。しかし、雑誌に収められていた光景は想像していたものよりも遥かに強烈で、思春期少女の心に深く、深く突き刺さった。兄が帰宅する音を聞いて慌てて元に戻したけれど、脳裏に焼き付いた光景はなかなか消えない。消そうと意識すればするほど強く記憶に残り続け……いつしか、別の自分が宿っている事に気がついた。
     とても人には言えない、この気持ち。もう一人の自分は行けと、そのための力があると促しているかのようだけど、安易にしてはいけないことだと言い聞かせて跳ね除ける。忘れたほうがいいのだと思い封じていく。
     しかし,日々別の自分は大きくなる。抑え込むたびに強くなる……そんな気がした。
     このままではいずれ、もう一人の自分……淫魔と言う名の闇に飲み込まれ……。

    ●夕暮れ時の教室にて
     灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は、複雑な表情を浮かべ説明を開始した。
    「とある中学校に通う二年生女子、雨宮絵梨香さんが、闇堕ちして淫魔になろうとしている事件が発生しています」
     本来、闇堕ちしたならばダークネスとしての人格を持ち、人としての意識は掻き消える。しかし、絵梨香は闇堕ちしながらも人としての意識を保っており、闇堕ちしながらもダークネスになりきっていない状態なのだ。
    「もしも絵梨香さんが灼滅者としての素養を持つのであれば、救いだしてきて下さい。しかし、完全に闇堕ちしてしまうようならば……」
     そうなる前に、灼滅を。
     地図を広げて中学校、そして住宅街へ繋がる道の途中にある川の遊歩道を指し示し、続けていく。
    「当日の放課後、絵梨香さんはこの遊歩道の途中にある橋の下で一人過ごしています。理由は……」
     雨宮絵梨香、十四歳中学二年生。元々はおとなしくて引っ込み思案、芯は強くやると決めたら弱音は吐かない性格。しかしまだまだ恋愛事には未熟な、恋に恋するお年ごろな思春期少女。また、制服の上からではあまり分からないが、スタイルがすごく良い。
     そんな彼女が、ふとしたできごとから、兄が隠していたとある雑誌を見つけてしまった。読み込んだ結果、その雑誌に収められていた光景が頭から離れず、悶々としているうちに闇を抱く。闇が、実行に移さないか? お前にはその力があると促してきているような気がする……と言った流れである。
    「どちらかと言えば忘れようとしていた、抑えつけようとしていた……と言った感じですね。ある程度の忌避感や自己嫌悪感も抱いていたようです」
     そのため、その辺りを考慮した説得を行い、闇堕ちしないよう引っ張り上げる必要があるだろう。
     その後、説得が成功するにせよ失敗するにせよ戦いとなる。
     絵梨香の淫魔としての姿はきわどいビキニ姿の女性。力量は八人ならば倒せる程度で、妨害、強化能力に秀でている。
     技は、一定範囲内の攻撃の手を鈍らせる谷間を見せつけながらの投げキッス。抱きついた上で相手を撫で回し魅了する。相手の衣服や防具を優しく脱がす、と言った三種を使い分けてくる。
    「以上で説明を終了します」
     地図など必要な物を手渡し、続けていく。
    「きっかけは事故のようなもので、好奇心に負けてしまった絵梨香さんにも責任はあるのかもしれません。しかし、決して悩み続けた結果ダークネスと化してしまう……そんなたぐいのものでもないのではないかと、そう思います」
     ですので、と締めくくりに移行した。
    「どうか全力での行動をお願いします。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)
    錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)
    ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)
    志那都・達人(菊理の風・d10457)
    紅羽・流希(挑戦者・d10975)
    天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)
    アイリスエル・ローゼスフォルト(戦場のマエストロ・d22427)
    一瀬・叶(プリミティブファイア・d22449)

    ■リプレイ

    ●悩みし少女は橋の下
     小さな雲が風に吹かれて流れていく、秋晴れの空が広がる河川敷。錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)、ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)、天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)の三人に雨宮絵梨香への接触役を任せた灼滅者たちは橋の上で人払いと雑談を行いながら、橋の下の動向をそれとなく伺っていた。
     雑談のメインは男性陣。小さく肩をすくめながら、紅羽・流希(挑戦者・d10975)がうそぶいていく。
    「……そういえば、ああいった本を見かけたら、そっとしまっておくのが礼儀だと思うのですが、どう思いますかねぇ……」
     男性陣が様々な反応を返す中、待機メンバーに位置する女性陣の片割れ一瀬・叶(プリミティブファイア・d22449)は、緩やかに流れ煌めく川を眺めながら静かな息を吐き出した。
     年頃の男の子なら、だれでもそーいう本はやはり持っているものみたいだと。もっとも、知らなかったのなら仕方ないのだから、なんとか灼滅しないで助けることができれば……と。

     落ち着いた足取りで、橋の下へと入り込んだ麒麟たち。
     気づくことなく川を見つめている絵梨香へと、まずは麒麟が声をかけて行く。
    「こんにちは、こんなところで何してるの?」
    「……ふぇ!? あ、あのっ」
     体を強く跳ねさせながら、絵梨香は麒麟たちの方へ振り向いた。驚きに目を見開いたまま焦って言葉を紡げぬ様子も見せたから、琴弓が優しい微笑みを浮かべながら落ち着くよう促していく。
     どもりながらの返事の後、深呼吸を始めたタイミングを見計らい、琴弓は改めて言葉を切り出した。
    「苦しそうだけど、大丈夫? 困った事があるなら、相談に乗るんだよ? 初対面の私達に話すのもなんだけど、話してみるだけでもすっきりするかもなんだよ」
    「え、あ、あの……あ、あなたがたは……」
     絵梨香は小さく後ずさり、怯えた風に瞳を震わせていく。
     静かに肩の力を抜いた後、ヴァイスが穏やかな調子で語りかけていく。
    「遊歩道を進もうと思っていたら、深刻そうな横顔を見つけて少し気になってな。それに……琴弓も言っていたが、見ず知らずの相手だからこそ話せる事もあるだろう。……何、心配はない。一期一会の間柄、何がどうなるというわけではない、と思うよ」
     怯えさせぬよう、けれど馴れ馴れしくもならぬよう。
     体を小刻みに震わせたまま、絵梨香は顔を俯かせていく。
     暫しの後、小さく拳を握って顔を上げた。
    「は、はい……あの……それでは、聞いて頂けますか。……もう、限界で……」

     最初の一節を紡いだ後、絵梨香はどもることも言いよどむこともなく打ち明けた。
     兄の部屋で見つけた本のこと、好奇心に任せて読み込んでしまったこと。それ以来、その本の光景が頭から離れないこと。……そんな自分が嫌なことを。
    「ダメだ、ってわかってるんです。授業も受けましたし、早過ぎるって……でも……忘れようとすればするほど、思い出しちゃって。最近では開き直っても良い、って風にも思えてきちゃって……それで……」
     話し終えるとともに、絵梨香は小さく俯いた。
     一呼吸分の時を用いて話を咀嚼した素振りを見せた後、ヴァイスは左隣に腰を下ろし優しく諭し始めていく。
    「そうだな。これは一般論になるが、性欲というのは三大欲求の一つ。睡眠欲、食欲と並び、人間誰しもが持ち合わせている欲求。どんな形であれ欲求を抱くのはごく自然で、それを忌避したりするのは可笑しいのではないかな?」
    「……はい。何かの本でもそんな事が書かれていた覚えがあります。でも……」
    「まあ、そうだな。大平にひけらかして良いものでもない事も確かだ。もしそんな事をしたら、普通に警察を呼ばれるしな」
     最後は冗談めかした言葉で伝え、朗らかな笑顔を加えていく。
     一方、絵梨香の表情が変わる事はない。ただ、若干姿勢を前に傾けてくれたような気が下から、続いて右隣に腰掛けた麒麟が呼びかけていく。
    「きりんはね、こんなの淫魔になってまで急いですることじゃないって思うよ」
    「……いんま?」
    「うん、淫魔っていうのはね……」
     麒麟は語る、推測という装いで。
     欲望を増幅させている根幹を、闇……ダークネスの事を。
    「んとね、あなたもきりんも、大人になって好きな人ができたらするんじゃないかな? ……だから、本を読んだりして、ちょっとだけ予習しておくのは別に悪いことじゃないよね」
    「……」
     淫魔の事を、ダークネスの事を受け入れてくれたのかはわからない。ただ、提案に対しては僅かに瞳を伏せた後、小さく首を横にふる。
    「ごめんなさい。色々と言ってもらえているのに。でも、私は……」
     おそらくは、今はまだ予習も考えられないのだろう。なにせ絵梨香は十四歳、まだまだ恋に恋するお年ごろなのだから。
     揺れる瞳を、琴弓はしゃがみこんで見つめていく。優しく微笑みながら、ゆっくりと語りかけていく。
    「雑誌の内容を実行してみるって、それは貴女の本心じゃないんだよね?」
    「……うん」
    「貴女の中でそそのかしている声がするんだよね?」
    「……うん」
     まずは確認を。
     その上で、さらなる言葉を投げかける。
    「皆の言うように、全てを抑え込まずにって、難しいよね? 実際、私もどうしたら良いか良く分からないんだ」
    「あなたも……?」
    「うん、だから、一緒に悩んでみよう、話してみようよ。ここにいる皆、悩みの種類は違っても、同じような経験はあるはずだよ」
    「え……」
     促され、絵梨香は周囲を眺めていく。
     ヴァイスも、麒麟も、勿論琴弓も頷いて、同じような悩みがあるのだと。相談しあおうと伝えていく。
    「一緒に……悩む。みんなと、一緒に……?」
     琴弓自身、淫魔の闇を抱えている。同じ様に自分を抑圧し続けている。
     各々が抱える闇が裏付けとなり、力として伝わったのだろう。絵梨香は拳を握りしめ、顔を上げた。
    「……あの、その。迷惑でなければ、なのですが……お話を聞いて下さるのなら、お話をして下さるのなら、私も……!」
     ――あるいは心が闇から離れたからか。逃すまいとでも言うかのように、絵梨香の体が跳ねていく。
     すかさず三人は橋の上にいるメンバーに合図を送り、武装した。
     橋の上にいるメンバーは即座に飛び降り、解放の言葉を響かせる。
    「御許に仕える事を赦したまえ……」
    「走れ雷光……戦禍の笛は鳴らされた」
     橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)が護符を数枚引きぬいた時、アイリスエル・ローゼスフォルト(戦場のマエストロ・d22427)の体を雷のような何かが駆け抜けた。
     灼滅者たちが武装を整え陣を敷き終えた頃、絵梨香もまた淫魔への変化を終えていく。
    「……」
     抑えつけられているのか、言葉はない。ただ、学生服に隠されていた抜群のプロポーションを魅せつけるように、きわどいビキニだけが包む肢体を艶めかしく動かしていた……。

    ●隠されし魅力を開放して
     開幕は、琴弓の掲げた盾領域が己とヴァイスを包んだ時。
     他の距離には届かぬからと治療に意識を移して行く彼女を横目に、志那都・達人(菊理の風・d10457)もまたライドキャリバーの空我にまたがりながら盾を掲げ、前衛陣に浄化の加護を施していく。その上で淫魔に……抑えていてくれているのだろう絵梨香に語りかけていく。
    「そりゃね、ソレだけで頭がいっぱいになるのはマズいかもしれないけど、自己嫌悪を抱いてまで忘れようとしなくてもいいんじゃないかな?」
     少しでも心が軽くなるように。
    「年齢を考えたら、むしろ自然と言ってもいいくらいだし……って、きっともう、彼女たちが言ってたかな?」
     闇をはねのけることができるようにと、小さく笑いながら腕を広げた。
    「とりあえず、一度ここでぶちまけてみるといい。何、俺達はちょっとやそっとじゃあどうってことない、遠慮は無用さ」
     両腕を広げて見たならば、淫魔は大地を蹴り跳躍。達人に抱きついていく。
     優しく抱き留めながらも、触られながらも、達人は表情を崩さない。全てを受け止め、優しく引き剥がした上で、空我を走らせ始めていく。
     後を追うことができぬよう、叶が魔力の矢を雨あられと撃ち込んだ。
    「……きっと、絵梨香にとっては時期尚早だったのね。……なんにせよスタイルいいのは羨ましいけど」
    「え、えっと……支えます!」
     一方、瞬兵は優しい光を宿し、治癒の力を高めていく。その上で、次に治療すべき対象が達人化それ以外かを決めるため、淫魔の動向に探りを入れていく。
     視線に気付いたか、あるいは素か。
     淫魔は唇を軽くなめた後、前傾姿勢を取り胸を強調し始めた。
     力の影響下になくとも光景は見えてしまうからと、瞬兵は顔を赤らめ目をそらした。
    「えっと、えっちなのはいけないと思います……」
     慌てる素振りを見せながらも優しい風を招き入れ、達人ごと前衛陣を治療した。
     紅羽・流希(挑戦者・d10975)は顔だけを真っ直ぐに見続け懐へと踏み込んだ。
     腰元に収めた刀に手をかけ……。
    「……っ!」
     居合一閃。
     淫魔の体を押しのけて、二歩ほど後方に退かせた。

     淫魔の反撃をいなし、時に治療を施しながら、灼滅者たちは容赦の無い攻撃を加えていた。
     さなかにも言葉を投げかけて、絵梨香を勇気づける事は忘れない。
     杖を握りしめながら、アイリスエルは静かな声音で伝えていく。
     昔、同じような悩みを持ったこともあったから。今では割り切れているけれど、絵梨香の悩みはわかるから。
     だから……。
    「興味を持つのは仕方ない。無理に抑えようとしなくてもいいんだよ……。でもね……そういうのだけが全部じゃないって事も知ってほしいんだ」
     淫魔は一瞬だけ動きを止めた後、再び胸を強調し始めた。
     即座にアイリスエルは大地を蹴り、杖を大上段へと振り上げる。
    「自分が自分を好きにならなくちゃ一体誰が好きになれるの? それで貴女は本当に満たされているのかしら?」
     脳天に向かって振り下ろすも、とっさに交わされ右肩を強打するのみに留まった。
     問題無いと魔力を爆発させ左へとよろめかせた時、流希が背後へと回りこんでいく。
     楽器としても使えるという大鎌を振りかぶりながら、淡々とした調子で伝えていく。
    「まぁ、男のサガを言い訳するわけじゃないが、それだけが男だと思わないでくれ。実際に女の子に触れる度胸がないから、そういったもので憂さを晴らすんだ。基本、男は臆病なんだよ。それに、そういったもんを見られた事だって、いずれは笑い話になるもんさ。そうやって男は強くなるからな」
     男性特有の雑誌の内容を見て、年頃の女の子がショックを受けるのは分かる。だからこそ、男性視点から見られたことは気にしなくても良いと伝えれば、ある程度心は楽になるのだろうか?
     返答は勿論ない。
     代わりに淫魔が動きを止めた。
     すかず流希は大鎌を振るい、脚を傷つけていく。
     僅かにバランスを崩した淫魔の心を掴みとるかのように、麒麟が朗々とした歌声を響かせた。
    「きりん、淫魔には手加減ってできないの、ごめんね」
    「でも、もう終わるわ。もう少しだけ我慢してね」
     叶はガトリングから弾丸を嵐のようにぶっ放し、淫魔の体を抑えつけた。
     弾丸の合間をくぐり抜け、ヴァイスは真正面へと到達する。
    「さ、終わりの時間だ。そのようなもの、大仰にひけらかして良い物ではない」
     ボディに拳を叩き込み、一発、二発と重ねる度、二歩、三歩と下がらせた。
     下がった先に回りこみ、達人は空我と共に突撃する!
    「っと!」
     空我と共に肥大化した拳を放ったなら、淫魔は空高々と跳ね上げられた。
     すかさず急旋回。落下点を予測して、空我を足場に飛び込んだ。
     見事キャッチしたその腕に、伝わりしは人の熱。安らかな寝息、穏やかな寝顔。
     救い出すことができたのだと仲間に伝え、介抱の時間へと移行する……。

    ●新たな仲間と一緒に
     灼滅者たちが傷を癒やし終わる頃、絵梨香は目覚めた。
     状況の把握のためか周囲を見回していく絵梨香へと、達人は手を取り優しく起こした。
    「吐き出してみた気分はどうだい?」
    「あ、あの、えと……」
     突然異性に起こされたからか、顔を真っ赤にして言葉を探していく絵梨香。改めて深呼吸を促され、心を鎮め始めていく。
     一分ほどの時が経った時、顔を上げて朗らかな笑顔を披露した。
    「ありがとうございました! お三方の事は勿論、その他の方の事もなんとなくわかります。ええと、その……救ってくれて、本当に……うん、すっきりしました。生まれ変わったみたいな気分です……!」
     前向きな言葉、前向きな声音。
     心配ないだろうと判断し、瞬兵は心配だった事を尋ねていく。
    「えっと、僕が言うのもおこがましいけど、お兄さんの事、嫌いにならないであげてね……?」
    「あ、は、はいっ、もちろんです! むしろ私が悪かったんですから、嫌いになるなんて……」
     懸念事項も晴れた後、橋の下は概ね和やかムード。だからこそ言って置かなければならないことがあると、麒麟が落ち着いた調子で切り出した。
    「悪い夢は終ったれど、でも、全部の終りじゃないから」
     絵梨香は軽く瞳を伏せ、頷いた。
    「はい、わかっています。戦わなければいけないのですよね」
    「うん、それで……」
     麒麟は重ねて説明した。
     ダークネスのこと、武蔵坂学園のこと、世界の事を。
     しっかりと受け止めさせた上で、学園への誘いを投げかける。
    「……ん、大丈夫、脱ぐとすごいとか、みんなすぐに忘れてくれるから」
    「はい……え? えぇ!? ええと、その……」
     冗談めかした言葉に反応しかけ、絵梨香は顔を真っ赤にした。
     静かな笑みをほころばせた後、アイリスエルは投げかける。
    「ほら……色々人に言えない事とかあるじゃない。特に女の子にはさ……。もし私で良ければいつでも相談に乗るからね」
    「お姉さんが相談にのるよ」
     琴弓も笑顔で胸を叩き、大丈夫だと伝えていく。
     再び深呼吸で心を落ち着かせ、絵梨香は小さく頷いた。武蔵坂学園へ行くことを了承した。
     その上で琴弓に向き直り、小首をかしげ始めていく。
    「ええと……もしかして、先輩さん、でしょうか?」
    「あ、うん。そうだよ……」
     琴弓、平均身長以下の背丈と子供っぽい体型を持つ高校一年生。対する絵梨香は平均身長ほどの背丈と、年不相応に整ったプロポーションを持つ中学二年生。間違えるのもむべなるかな。
     何はともあれさておいて、ここに、新たな灼滅者が誕生したことに違いはない。共に歩んでくれる仲間がいるのだから、彼女の未来はきっと……。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 5
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