「あ……、頭が、……痛い」
道化の仮面の男の姿をしたモノが、呻く。
「僕は楽しいことが好きなんだ。でも、今は楽しくない。そうだ、思い出した。炎だ。炎が僕を焼くんだ。何故僕が、痛い思いをしなければならない? あ、あいつら……! そうか、これが、悔しいと言うことか。ああ、悔しい。痛い。悔しい。痛い……!」
ぶつぶつと恨みを呟く男に、優しげな声が語りかけた。
「大丈夫、私にはあなたが見えます。灼滅されて尚、残留思念が囚われているのですね」
「君は?」
「私は『慈愛のコルネリウス』。傷つき嘆く者を見捨てたりはしません」
「だったら助けて欲しいものだね。この僕、ザ・ワンドは今、全然楽しくない!!」
ザ・ワンドの言葉に、コルネリウスは頷いた。
「……プレスター・ジョン、聞こえますか? この哀れな仮面の男をあなたの国に匿ってください」
●依頼
「みんな、ザ・ワンドを覚えている? 銀山吹の屋敷でみんなに灼滅されたザ・ワンドの事なんだけどね。その残留思念に、慈愛のコルネリウスが力を与えてどこかに送ろうとしているんだよ」
千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)がそう説明を始めた。
残留思念に力は無いはずだけれど、高位のダークネスならば力を与える事は不可能ではないだろうとのこと。
力を与えられた残留思念は、すぐに事件を起こすと言うことはないようだが、このまま放置することはできない。
「それでね。みんなには慈愛のコルネリウスが残留思念に呼びかけを行った所に乱入して、彼女の作戦の妨害をして欲しいんだ」
慈愛のコルネリウスは強力なシャドウである為、現実世界に出てくることはできない。
そして、事件現場にいるコルネリウスは、幻のような実体を持たないものなので、戦闘力はない。
また、コルネリウスは灼滅者に対して強い不信感を持っているようで、交渉などは行えないだろう。
「残留思念のワンドは、みんなを恨んでいるようで、コルネリウスから分け与えられた力を使って復讐を遂げようとするんだよ。だから、戦闘は避けられないんだ」
ザ・ワンドの戦闘力は、ほぼ灼滅された当時のままだ。
マジックミサイル、フリージングデスに加え、フォースブレイクと轟雷を使う。
「前回は、不意打ちのアドバンテージがあって灼滅できたよね。今回は戦闘開始から相手も攻撃してくるよ。でもね、ワンドはすっごく恨みの気持ちが強くなっていて、冷静じゃないみたいなんだよ。頭に血が上っている感じかな。だから、複雑な戦術は取ってこないよ。とにかく、力押しで攻撃してくるんだ」
しかも、今回はワンドは逃げようとしない。自身の傷の回復はせず、ただひたすら攻撃を繰り返すだろう。
戦う場所は、周囲に何もない平原だ。
相手の攻撃に耐えて時間をかけて削っていくのか。こちらも力押しでぶつかって行くのがいいのか。それとも、それ以外の方法があるのか。良く話し合って対策を立てるとよいだろう。
「慈愛のコルネリウス、いったい何を考えているんだろうね?」
太郎は首を少しだけ傾げた。
そして、皆を真っ直ぐ見る。
「残留思念とは言え、相手はあのザ・ワンド。みんな、気をつけてね」
参加者 | |
---|---|
星祭・祭莉(彷徨える眠り姫・d00322) |
殿宮・千早(陰翳礼讃・d00895) |
アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765) |
泉・火華流(自意識過剰高機動装甲美少女・d03827) |
モーリス・ペラダン(夕闇の奇術師・d03894) |
川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950) |
ハイナ・アルバストル(持たざる者・d09743) |
雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041) |
●思い
「ワンドさん――確か一般人や配下の強化一般人の方を使って、ご自分の手を汚さずに、数々の悪事を行った方、ですね」
コルネリウスは、そのような者までも救うと言うのか。
アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)は、広い平原を見つめた。
ワンドの名前を聞いて、川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)は思う。
(「悪魔は嫌いだ。特にザ・ワンドのようなクズ悪魔は」)
けれども、残留思念をその悪魔本人とは思えないし、そのようなモノに八つ当たりする気にもなれない。もちろん、されるのも御免だけれども。
ただただ、鬱陶しいだけだと思った。
ザ・ワンドの野望も命も、既に夢と散っている。
殿宮・千早(陰翳礼讃・d00895)は冷ややかな瞳で目の前の風景を見ていた。
「コルネリウスが何を目論んでいるかは知らないが、残留思念に長らえられては意味がない……此処で潰えてもらおう」
「今度こそ、ここで止めるんだよ」
千早の言葉に、星祭・祭莉(彷徨える眠り姫・d00322)が拳を握り締める。
さもなければ、罪も無い一般人が夢を壊され酷い目にあってしまうのだから。
祭莉は、このダークネスを許さないと誓う。傍らには、霊犬のガンマちゃんが控えている。
「ボクの相棒はガンマちゃんなんだよ。だから、一緒に頑張って支え合って戦おうね」
そう言って、頭を撫で微笑みかけた。
「さて、モーリス。残留思念の仮面は奪えるのだろうか?」
雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)は隣に立つモーリス・ペラダン(夕闇の奇術師・d03894)にこっそりと話しかけた。
モーリスは、小さく笑って肩をすくめただけだ。
その様子を見て、
「まあ聞くまでもなくかっ拐うつもりなんだろうが……。今回は私も手伝おう。懺悔は後程だ」
と煌理。
互いのビハインド、バロリと祠神威・鉤爪の様子を確認し、ソレが現れるのをただ待つばかりだ。
モーリスは自身の感情を特に表に出すことは無く、しかしこう思っている。
(「怪盗は狙ったエモノを逃しマセン」)
あの仮面を奪う最後の機会なのだから、確実に盗る、と。
みんなの言葉を聞き、泉・火華流(自意識過剰高機動装甲美少女・d03827)が腕を組んだ。
「何ていうか、これだけ繰り返されちゃうとねぇ~……」
コルネリウスによる同様の事件は、火華流にとって三度目だ。
幻とは言え、こう会う機会が増えると、マンネリ気味とも感じられた。
「そろそろ、本物にガツンと一発やりたいところね……」
コルネリウスに対して、思うところはそれぞれあるけれど、そろそろワンドが現れる頃合だ。
「ほら、来たみたいだよ」
ハイナ・アルバストル(持たざる者・d09743)が平原を指差した。
「……プレスター・ジョン、聞こえますか? この哀れな仮面の男をあなたの国に匿ってください」
何もない平原に、コルネリウスの声が響く。
顔を見合わせ、灼滅者達がその場に走った。
●怒り
「コルネリウスさん……何故、思念の方に「力」を与えようとされるんですか……? 『力』まで与えてしまえば、私達は、思念の方を灼滅せざるを得なくなってしまいます」
答えなど無いと分かっていても、アリスはコルネリウスに向かって語りかけた。
ただ送ると言うだけならば、自分達は灼滅しなくても済むかもしれないのに、何故?
手作りのタルトを差し出し、更に言葉を重ねる。
「受け取って頂けなくてもいい……。いつか、貴女にご馳走したいです……」
「あんた……本当に『傷つき嘆く者』を救いたいだけなんでしょうね?」
基本的に、コルネリウスなりの善意で動いているのだと思うけれど、と。火華流も声をかけた。
しかし、返答は無かった。
代わりに、具現した仮面の男が恨みの言葉を連ねる。
「ああ、悔しい。痛い。悔しい。痛い……! 貴様ら、よくもおめおめとこの僕の前に現れたものだね!!」
全身黒ずくめの男――ザ・ワンドは、怒りを抑えきれない様子で灼滅者達の前に立ちはだかった。
復讐するのならば、力を。
コルネリウスは、ワンドに力を分け与えると姿を消してしまった。
力を得たワンドが杖を掲げる。
「誕生おめでとうワンド君、二度目の生を謳歌して欲しい」
その様子を見て、ハイナが楽しそうにワンドに語りかけた。
「もっとも、今ここでもう一度終焉を迎えるのだけどね」
小首を傾げ笑うと、ワンドの歯軋りが聞こえる。
「黙れ、黙れ、黙れ。僕は怒っているんだ!! 不愉快だし、イラつくし、消えてしまえばいい!!」
イライラとした様子を隠すことも無く、ワンドは声を張り上げ杖を振った。
瞬間、前衛の仲間の周辺が凍り付く。
「一度死んだりとはいえ、いやあ凄まじい攻撃じゃあないか」
攻撃を受けた仲間の様子を見ながら、ハイナが影を伸ばした。初撃に満足している隙に、影で敵を絡め取る。
「な、何だこれは!! 放せっ」
上手く捕縛し、ワンドの動きが緩慢になるのを感じた。
その間に、ワンドの攻撃を受けた仲間達が体勢を立て直す。
激しい攻撃と纏わりつく氷は、確かに強力なものだった。だがまだ十分戦えるだけの力は残った。
祭莉はその事をしっかりと確認しながら、一気に距離を詰めた。
「今度こそ灼滅されるのが良いんだよ」
破邪の白光を放つ斬撃、クルセイドスラッシュを放つ。
「お前を灼滅するのにどれだけの覚悟があったと思う? 残留思念と言えど、逃がすわけに行かない」
続けて、千早が螺穿槍を繰り出した。
「っ……」
怒りで頭を沸騰させ、守りの姿勢を取ろうともしないワンドは、受けたダメージに小さく舌打ちする。
千早は次の攻撃のタイミングを知らせるように火華流を見た。
頷き、火華流はガトリングガンを連射する。そして、自分の身で仲間を隠すように位置を取った。
「アンタ……サイキックの好みがウチのお兄ちゃんとそっくりね……」
魔法を使い、ロッドを装備し。そう言う相手とは、普段から戦いなれていた。
畳み掛けるように、バロリが霊撃を飛ばす。
その陰に隠れ、モーリスも縛霊撃を放った。
出来るだけ目立たず、ワンドに目を付けられぬよう、モーリスは無言だ。
「今回部下どもは……。ああ、そうだった! お前の頼れる玩具の藍若葉は私達が奪ったのだったな! 独り身は楽しかろう?」
仲間が攻撃する様を確認しながら、煌理もエアシューズを煌かせ走る。
「なに?! 違う、アレは僕が見捨てたんだよ!!」
煽る言葉に、ワンドが肩を震わせた。
その隙に、煌理は低い姿勢を保ちながらワンドの足元へ飛び込んだ。抉るような動きで顔面を狙い飛び蹴りを放つ。
更に、祠神威・鉤爪も霊撃で追撃した。
「残留思念を元にして動く人形か。私にはコレも貴女が夢で与えてた偽物と同じに見えますよ、コルネリウス」
仲間に続き、咲夜は黒死斬を放つ。
「今度こそ灰も思念も残さず絶え果てろ」
攻撃は確実に命中し、敵の体力を奪った。
「ち……ぃ、ああ、鬱陶しいな!!」
それでも、ワンドは、まだ立っている。
悪態をつきながら、次の動作に入った。
●煽り
受けたダメージも、バッドステータスも顧みず、ワンドはただひたすら強力な攻撃を繰り返した。
その度、相殺し、庇い合い、回復しながら、灼滅者達はワンドに迫る。
「ねえ楽しい? 二度死ぬのってどんな気分なの?」
バベルブレイカー『現実と理想の軋轢』の杭をワンドの身体に突き刺し、ハイナがますますワンドを煽った。
「死ぬか、死ぬか、死ぬもんか!! 貴様らに、この僕が、何をされると言うのか!!」
吼える敵の様子を見届け、杭を高速回転させる。
ハイナの放った尖烈のドグマスパイクが、ワンドの身体を抉った。
「何をって、見て分からないのか? 随分、動き辛そうじゃないか」
セイクリッドウインドで仲間を回復させながら、更に煌理が煽る。
「何だと?! ふざけるな!!」
よほど嫌だったのか、ワンドは何度も杖を地面に打ちつけた。
「ほら、モーリス。怒ってるみたいだし、どんどん、やっちゃいな」
「了解しマシタ、スパークサン」
煌理にせっつかれ、モーリスがグラインドファイアを繰り出す。
あくまで、さりげない攻撃を心がけた。他の仲間と違い、印象に残るような言葉を極力発しない。
「くっ、炎が!! 燃える、僕が!! くそっくそっ」
怒りに震えるワンドは、炎が燃えるのも構わず杖を振り上げた。
その動作を見て、祭莉が声を上げる。
「気をつけて、きっとフォースブレイクが来るんだよっ」
そして、自分自身はガンマちゃんを伴い、敵に向かっていった。
「ボクはこのチャンスに賭けるんだよ。行くよ、ガンマちゃん!」
まずはガンマちゃんが斬魔刀で斬り付ける。
ワンドの体制が崩れ、身体が開いた。
祭莉は、狙っていた通り、杖を叩き落すつもりで敵の懐に飛び込む。
「ふっ、ふ、あ、はっはっは。この杖を、壊せるはず無いじゃないか!」
ところが、ワンドはさも可笑しそうに身体をゆすり、思い切り祭莉を殴りつけた。
「あぁっ」
思った通りの強烈な一撃に、祭莉の身体が吹き飛んだ。
「くっくっく。僕を怒らせた罰だ。じっくり痛めつけてやるよっ」
ワンドが高笑いを響かせる。その姿は、冷静さを取り戻したかのようにも見えた。
「冷静さを取り戻した? いや、取り繕っているだけだね。傷がどんどん開いていっているけど?」
「なっ」
しかし、千早が静かに現状を指摘してやると、再びワンドが怒りで言葉を失った。
やはり、冷静さを欠いているのだ。
千早は敵の様子を確認し、更に自由を奪うべく影で縛り付けた。
「あああああ、憎い憎い憎い。どこまで僕を怒らせる!!」
ワンドはぎりぎりと歯軋りをし、千早ににじり寄っていく。
その時、全くの別方向から火華流がフルスウィングのロケットスマッシュを繰り出した。
「どこ見てるの? こっちからも、行くよっ!!」
ロケット噴射で勢いを増した殴打は、面白いようにワンドの身体を吹き飛ばす。
「がっ」
ワンドは地面に身体を打ち付け、転がった。
「ワンドさんも、少しはご自分の所業を振り返って下さい……!」
まだ立ち上がれないワンドに向かって、さらに攻撃を続ける。
アリスがトラウナックルを繰り出した。
その間に、咲夜が祭莉に走り寄る。
「大丈夫ですか? すぐに回復しましょう」
「うん。有難うなんだよ」
分裂させた小光輪が、傷を癒していった。
祭莉が立ち上がるのを見届け、咲夜は周りを見回す。まだ、仲間は誰も沈んでいない。咲夜がこうして回復の援護をすることにより、仲間の体力にはまだ余裕があった。
「くっ。僕は、僕は、ザ・ワンド……」
その時、ワンドが立ち上がった。
「許さない、憎い、貴様ら、くそっ」
ふらつく身体を起こし、再び杖を構える。
灼滅者達も、戦う姿勢を崩さず、各々敵を見据えた。
●光へ
「悔しい? お前はこれまで多くの人に、もっと酷いことをやって来たと言うのに?」
怒りや悔しさを露にするワンドに、千早は辛らつな言葉を投げる。
「余りに虫がいいな」
「ふんっ、そんな事知るもんか!!」
ワンドが大きく杖を揺らす。
何か攻撃の来る前に、千早が構えた槍から、冷気のつららを撃ち出した。
敵の身体が傾ぐ。
「っ、だが、こんな事で、僕はっ、倒れないさ!!」
ワンドは氷に侵されながらも、激しい雷をぶつけて来た。
その間に、祠神威・鉤爪が身体を滑り込ませる。仲間を庇い、雷の直撃を受け、祠神威・鉤爪の体力が大きく削り取られた。
「回復は、私が」
急ぎ、煌理がタロットカードの名前を唱えながら、回復の符を飛ばす。
ひとまずの無事を確認し、仲間達は攻撃に走った。すでに、ワンドの体力はあまり無いと見て取れる。
畳み掛けるなら今だと、皆感じていた。
「ガンマちゃんっ!」
霊犬を呼びながら、祭莉は両手に集中させたオーラを解き放った。激しいオーラが敵を打つ。同時に、ガンマちゃんも六文銭射撃を繰り出した。
「続けます!」
間をおかず、アリスがクルセイドスラッシュを放つ。
強烈な斬撃が、ワンドの身体を斬り裂いた。
「ぐ……ぁ、……」
ワンドの呻く声が、小さく聞こえる。
その隙を見逃さず、火華流がロケットハンマーを手に飛び上がった。
「これで本当に終りにする……前に、アンタの素顔見させてもらうよっ!!」
仮面目掛け、目一杯の力で振り下ろす。
ずしんと重い音がしたが、残念ながら仮面は割れなかった。
「まだ、まだ、僕は!!」
ワンドは身体を捻り、灼滅者達から一歩下がった。身体はすでにボロボロで、最早しっかりと立つこともできない様子だ。
だが、敵を休ませるわけにはいかない。
「ザ・ワンド。私には身近な言葉ですね、タロットで」
咲夜は、死角から素早くワンドに迫った。しかしハートとは相性が悪い。火の根源たるワンドじゃハートの水の象意とは正反対でしょうにと、タロットに例えながら敵を見据える。
「最期くらいそのニヤけ面に相応しく笑って逝けよ」
「くっ」
一つ二つと斬撃を重ね、ワンドの身体に斬り付けた。
「ねえ、二度目の生は謳歌できた?」
ふらり、足取りもおぼつかないワンドに、ハイナが言葉を投げる。
「くそっ! くそっ! くそっ!!」
作戦通りバッドステータスを積み重ね、すでに敵は思うように戦えない様子だ。
ハイナはチェーンソー剣の刃で、まだ動くワンドの身体を容赦無く斬った。
「くっ、僕は、……ぁ」
ワンドが足を折り、地に伏す。
既に敵は虫の息だと思った。だがワンドが消えるその前に、今まで静かに機を窺っていたモーリスが突如素早い動きで敵に張り付く。
「ソノ仮面、イタダキマス」
縛霊手で殴りつけながら、転がる敵の身体をなお追った。
そして、手を伸ばす。
確かに仮面に触れた感触。
仮面を剥ぎ取ろうと、手に力を込める。
「悔しいけれど、僕の負けか」
はっきりと、ワンドの最後の言葉が聞こえた。
瞬間、今まで対峙していた敵の身体から光の粒子が立ち上る。
髪も、黒ずくめの衣装も、身体も、それから仮面も。
モーリスの指から零れ落ちるように、ワンドの身体は光の粒子となって消えて行った。
「仮面は奪えなかったか」
煌理の言葉に、モーリスは無言で返した。
「ビハインドは、互いに無事デスネ」
代わりに、互いのビハインドの無事を労う。
「ワンドさんも、あの国に送られれば、少しは救われるでしょうか」
アリスは光の粒子が消えていった場所を静かに眺めた。
「やっぱり、コルネリウスさんとも……いつか戦う事になってしまうんでしょうか」
その疑問に、誰も答えを持ち合わせてはいなかった。
「……慈愛のコルネリウス。死という究極の苦しみへの救済か」
ハイナがポツリと呟く。
事件を起こすコルネリウスに、抱く思いは複雑だ。
ともあれ、ザ・ワンドは光となって消えた。それを確認し、灼滅者達は平原を後にした。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2014年9月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|