琵琶湖の東西で争っているという、刺青羅刹・天海大僧正とご当地怪人・安土城怪人。
このダークネス同士の戦いは今、膠着状態に陥っていた。
以前、武蔵坂の灼滅者が刺青羅刹・天海大僧正に加担した事で、刺青羅刹側が有利となったのだが。
その後、勝利を確定づけようと戦力の増強を図った天海大僧正の作戦が、武蔵坂の灼滅者によって阻止された事で、状況が混迷しているのだという。
そして両勢力は、多少の小競り合いはありつつも、現在のところ、互いに戦力を増強して睨み合いをつづけている状態であるようだ。
天海大僧正の軍勢には、慈眼衆を始めとする天海大僧正の手勢の他に。同じ刺青羅刹の鞍馬天狗の手勢、朱雀門高校の生徒やデモノイド、サイキックアブソーバー強奪作戦で撤退した軍勢の一部、九州の刺青羅刹・うずめ様からの援軍、HKT六六六の殺人鬼、HKT六六六の淫魔などが加わっているらしい。
一方、安土城怪人の軍勢には、刀剣怪人やペナント怪人の他に。アメリカご当地怪人やロシアご当地怪人、アンブレイカブルのレスラー、業大老配下と思われるアンブレイカブル、セイメイ配下と思われるアンデッドの軍勢が加わっているようだ。
そんな緊迫感が日に日に増す中、安土城怪人側に在るその姿は……ひとりの小さな少女。
「むずかしいことはよくわかんないけど。いっぱい鬼たいじのしゅぎょうして、業大老さまにほめてもらうの」
そう、彼女もこの東西戦争にかり出された、れっきとしたダークネス・アンブレイカブルなのである。
そして勿論、相対する勢力の慈眼衆も。
「いざ、合戦の時は近い!」
来る大きな戦争を予感し、備えているのであった。
誰もが知る、日本一の大きさを誇る湖・琵琶湖で今。
この地を巡るダークネスの戦いが――緊迫の度合いを、急激に高めている。
●
「みんなにもこれまで何度か現地に赴いてもらった琵琶湖周辺なんだけど……このままだと、人の住めない地になっちゃうかもしれない事態が察知されたんだ」
飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)は、集まってくれてありがとーと皆に礼を言った後。今回察知した未来予測を、早速語り始める。
「琵琶湖周辺で東西に分かれて戦ってる、天海大僧正と安土城怪人なんだけどね。この2勢力の戦力は拮抗してて、一度戦いが起これば確実に大きな被害が出ちゃうと思われるんだけど。その戦端が、今まさに開かれようとしてるんだ」
琵琶湖大橋を挟んだ、東西のダークネス勢力。
その両軍が橋を確保しようと互いに軍勢を繰り出し、その戦いが契機となって全面戦争となることが今回分かったのだ。
「それでね、この被害を減らす方法は3つあるよ」
まず、1つ目。
琵琶湖大橋に集まった軍勢同士が戦いを始める前に。
その双方を、武蔵坂学園が制圧してしまう作戦だ。
これに成功すれば、天海僧正の勢力も安土城怪人の勢力も、武蔵坂学園の動きを無視することができず、一定の条件で休戦を結ぶことになる。
最も平和的な解決手段であるが、戦力を2分するので、困難な戦いになる。阻止に失敗した場合は、全面戦争になってしまうだろう。
また、ダークネス同士が休戦を結ぶ事は武蔵坂学園にとって不利益になるかもしれない。
そして、2つ目。
琵琶湖大橋の東側、安土城怪人の軍勢を一方的に攻撃する作戦。
これにより、琵琶湖大橋は天海大僧正側が制圧する事になり、そのまま安土城怪人の本拠地に攻め寄せ、雌雄を決してしまうという。
戦況が不利となれば、増援に来ていた勢力の多くは撤退する為、安土城怪人の軍勢は敗走し、琵琶湖周辺は天海大僧正勢力が支配することになると思われる。
戦場となる琵琶湖の東側で被害は出てしまうが、全面戦争に比べれば被害は殆ど無いといっても問題は無い。
ただ、天海大僧正の勢力が強い力を得てしまうのがデメリットとなるだろう。
それから、3つ目。
琵琶湖大橋の西側、天海大僧正の軍勢を一方的に攻撃する作戦。
これにより琵琶湖大橋は安土城怪人側が制圧する事になり、そのまま天海大僧正の本拠地に攻め寄せ、雌雄を決してしまう。
戦況が不利となれば、増援に来ていた勢力の多くは撤退する為、天海大僧正は本拠地に籠城して徹底抗戦した上で灼滅されると思われる。
天海大僧正の勢力が壊滅する結果になるのはメリットではあるが、天海大僧正の徹底抗戦により、琵琶湖の西側には大きな被害が出てしまうという。
また、安土城怪人の勢力が強い力を得てしまうのも、デメリットとなるだろう。
遥河は以上3つの作戦を提示した後。
「天海大僧正と安土城怪人の配下だけじゃなくて、他組織のダークネスとかの姿もみられるし、全面戦争になると大きな被害が出ちゃうからさ……良い未来につながるように、みんなの力を貸して欲しいんだ。今回は、どの選択が正しいという事はないから、どっちの勢力の軍勢を攻めるかは、みんなにお任せするね」
ダークネスの勢力図が変わるかもしれない、今回の事態に。
遥河は、十分気をつけてね、と、琵琶湖に赴く灼滅者達を見送るのだった。
参加者 | |
---|---|
東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566) |
九条・龍也(真紅の荒獅子・d01065) |
守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289) |
晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821) |
新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835) |
伊勢・雪緒(待雪想・d06823) |
阿久沢・木菟(灰色八門・d12081) |
リューズ・バレスタイン(時間の絶対操者・d24192) |
●東西の選択
なだらかなアーチを描く白い橋から臨む景観は、まさに現代の名勝。
だが、そんな琵琶湖大橋を挟み東西で睨み合うは、二つのダークネス勢力。
そして――両軍が遂に、それぞれ琵琶湖大橋を占拠すべく動き出すという。
つまりそれは、ダークネス同士が激しくぶつかる、全面戦争の幕開け。
このまま両軍が激突し合えば、琵琶湖周辺は人が住めぬ地と化すであろう。
そして、それを阻止すべく、甚大な被害を減らす為に動き出さんとしているのが――武蔵坂学園の灼滅者達であった。
そう、琵琶湖は今、いわゆる三つ巴の様相を呈していた。
だが、東西のダークネス達はまだ、第三勢力・武蔵坂学園の介入を知らない。
「こっちの方が比較的隠れられる場所が多いでござるよ」
周辺の地理を事前に把握しておいた阿久沢・木菟(灰色八門・d12081)が、仲間達に声を掛けるその場所は。
湖族の郷といわれた伝統的な町並み広がる、琵琶湖大橋の西側。
天海大僧正の軍勢が陣取っている側である。
今回選んだ作戦方針は、琵琶湖大橋に集まった双方の軍勢をどちらも制圧する事。
ただし、この依頼に臨むチームを2つに分けるのではなく。全員で両軍勢を一つずつ確実に倒していって。最終的に、学園全体の戦果が双方制圧になるよう動く作戦だ。
そして今回共に征く8人と2体がまず向かったのが、西の天海大僧正側というわけだ。
相手は双方ダークネス、どっちもどっちではあるものの。
天海大僧正はどこか胡散臭く、信用する気になれないから。
そして今にも勃発せんとしている、ダークネス同士の激しい全面戦争。
晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821)は静かに周囲に気を配り、音を立てぬよう移動しながらも。
(「色々思うところはあるけど、一言で言うなら……ケンカするならよそでやれ、なの」)
人間にとって迷惑この上ないダークネスのぶつかり合いに、小さく息を吐いて。
「相手もこっちの事情を汲む気はなさそうだし、好きなようにやらせてもらうの」
第三勢力として思う通りに動かんと、改めて宣言を。
琵琶湖で三つ巴か、と。九条・龍也(真紅の荒獅子・d01065)もその隣で呟いてから。
「正義の味方なんて似合わないが、闘えない奴らの代わりに、俺たちが闘って被害を抑えようかね」
灼滅者として、ダークネス被害を最小限に留めるべく。
正義の味方になる覚悟を、確りと決めれば。
「普通の人たちの普通の幸せを壊させはしない」
新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)の言葉に、伊勢・雪緒(待雪想・d06823)と霊犬の八風もわふっと頷いて。守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)が視線を落とすのは、他のチームとの情報を共有している携帯電話の画面。
リューズ・バレスタイン(時間の絶対操者・d24192)と、ビハインドの華月を伴う東雲・凪月(赤より緋い月光蝶・d00566)も、遮蔽物を利用し身を隠しながら息を潜め、来る時を待つ。
そんな灼滅者達の目の前には――未来予測通り、『夜叉』と思われる慈眼衆1体と僧兵強化一般人4体の姿が。
そして結衣奈がその顔を上げ、全員と視線を交わし、頷き合った刹那。
「! 敵襲……ぐあっ!!」
最前列の壁役らしき僧兵へと、不意打ちの衝撃をお見舞いして。
「さぁて、夜叉って名前がつく位だ。ちっとは楽しませてくれることを期待しようかね」
「安土城怪人の手の者……ではなく、灼滅者だと!?」
驚きつつも戦闘態勢を取る、慈眼衆達との激しい戦いの火蓋がいざ、切って落とされる。
●修羅の巷
敵の虚をつき、奇襲に成功した灼滅者達。
不意打ちした壁役の僧兵が体勢を整えるその前に、翼の如く掲げたシールドを広げた後。
叡智の探求に輝く結衣奈のその真紅の瞳が敵の群れを捉えた刹那、眩き霊力迸る結界が構築されて。前にいる敵の霊的因子を纏めて強制停止させれば。
続いた木菟が巻き起こす術が、敵の壁をまずは崩さんと、強力な竜巻を引き起こすと同時に。
「そろそろ安土城怪人の軍勢も攻めてくる頃でござるか?」
「く、安土城怪人やあのふざけたペナント怪人は勿論の事……貴様等も我等の邪魔をするならば、此処で今引導を渡してくれるわ!」
守りに入られぬよう、安土城怪人の存在を夜叉達に意識させる。
そして、ひらり戦場を舞うのは、赤より緋い蝶々たち。
「行くよ、華月」
凪月の破邪の白光放つ斬撃が眼前の敵へ振り下ろされると同時に、僧兵へとその顔を晒す華月。
さらに戦場を真紅に染めんと閃く、龍の爪の如く研ぎ澄まされた覇龍の刃。
「どんな相手だろうと、ただ斬って捨てるのみ!」
誇りは気高く、時に主にすら牙剥く反逆者の衣を纏い地を蹴る龍也は、敵の刀ごと断ち切る一閃を、まっすぐ振り下ろして。
「ぐ、うッ!」
「八風、盾役は任せましたです」
「視えるよ」
息の合った連携をはかるのは、雪緒と七葉。
前に躍り出て刀を振るう八風を送り出しながら、上体を微かに揺らした僧兵を絡め取るのは雪緒の解き放った影。そしてその間、七葉の青き瞳が映し出すのは、戦闘予測力を格段に高める、自らを覆うバベルの鎖。
そして集中的に衝撃を集めた僧兵を仕留めんと、『畏れ』の力を身に纏って。その殺しの才を如何なく発揮した朔夜の、死角から回り込んだ鬼気迫る斬撃が、容赦なく敵を斬り伏せるのだった。
そんな崩れ落ちる敵を後目に、さらにリューズが繰り出すのは、眩き閃光を放つ連打。次の標的となる僧兵目掛け、握りしめた拳を一心に振るう。
未来予知に抗わず、奇襲は成功したが。
相手は、格上の実力を持つダークネスとその配下。
さらに大きな合戦を控え、確りと指揮系統が確立されていて。慈眼衆『夜叉』の指示の元、僧兵たちが次々と振るう日本刀の閃きが、灼滅者へと集中して襲いかかる。
その切っ先が向いたのは――皆を守るように前に立つ結衣奈。
「く……!」
そして浴びた集中攻撃に思わず表情を険しくさせる結衣奈目掛け、満を持して夜叉が放たんとするのは、異形巨大化させた腕から繰り出す凄まじい膂力の殴打。唸りを上げ、強烈な一打が振り下ろされるも。
「!」
咄嗟に結衣奈の前に出て彼女を庇ったのは、八風。
「響いて……」
「後ろは任せてくださいです」
そしてすかさず戦場に響き渡るのは、七葉の天使の歌声。陽光と蒼穹の色をしたリボンを揺らしながら紡ぎ出された天上の声が、結衣奈が負った傷を優しく癒せば。執拗に再び彼女へ刀を振り上げる僧兵に喰らいつくのは、狙い澄ました雪緒がぐんと伸ばした漆黒の影の衝撃。
「今回はなにがなんでも、絶対に倒します」
さらに続いたリューズも、敵を喰らわんと伸びる影を僧兵へと見舞いながら。
この戦いでは終始いつもとは違う、必ず何があっても倒すという決意を込めた視線で敵の群れを真っ直ぐに見据える。
ダークネスの夜叉は勿論、僧兵でも油断できぬ相手。
でも。
「わたし一人では立っていられないだろうけど……、雪緒先輩が、七葉ちゃんが、みんながいるから立てる、戦える!!」
戦っているのは、ひとりじゃないから。
結衣奈は地を掠め摩擦で燃え上った炎を宿した激しい蹴りを、目の前の僧兵へと叩きつけて。敵を蝕んだ炎がその身を焦がし、また1体、地に沈めば。
「難しい三つ巴の戦いの成功の為なら……!」
凪月も、この任務の成功に全力を出し尽くす覚悟を乗せて。
流れる様に靡く藍の髪を戦場に躍らせながら強烈な一撃を繰り出し、刹那、流れ込んだ魔力が相手の内側で大きく爆ぜる。
そんな灼滅者達の必死な姿を目にして。
夜叉は得物を構えたまま言い放つ。
「貴様等は、我等に手を貸したかと思えば、次は邪魔に入る始末……挙句、安土城怪人に助太刀とはな。矢張り貴様等は、我等の敵、という事か」
「天海殿みたいな賢者の治める世界って、多くの人が幸せだと思うんでござるよね。正しく導かれるでござろうし」
木菟はチャームポイントらしいどうやってもみえない右目を多分ふっと細めながらも。こう、続けたのだった。
「でも、拙者アウトローでござる故、迷わん賢者よりは苦悩する愚者の治める世界の方が生き易いと思うんでござるよ」
迷わぬ賢人、それは十分上に立つ資質を持つ人物ではあるが。
苦悩し、何かに手を伸ばしもがきながらも生きていかなければならないのが、人というもの。
そんな愚者と共に在る世界の方が、人間らしい姿で生きていられる気して。キャッチーな忍者を目指す庶民派な自分には、きっと生き易い。
木菟はそれから、天海と敵対する東の大将も、ふと思い返してみて。
まあ、安土桃山怪人が治める世界ってのもヤバそうでお断りなんでござるが、と付け加えた後。
「なので、両方拙者の敵でござる!」
残り2体の僧兵の出鼻をくじくように、味方を援護する銃撃を撃ち放って。そのうち1体を仕留める。
「そうか。敵ならば、容赦なく斬る!」
転輪の如く全身を回転させた夜叉は、その罪ごと断ち切るかの如く、鋭い斬撃を目の前の龍也へと振り下ろすも。
強烈な衝撃をもらい、大きく体力が削られたはずの彼に浮かぶのは……獰猛で、高揚したような深い笑み。
分が悪い賭けは、嫌いではない。むしろ、臨むところだ。
「牙壊!! 瞬即斬断!!」
傷を癒すよりも、龍也を突き動かす衝動は今、強敵へと闘いを挑む楽しさ。
一瞬にして緑の龍玉揺れる柄を握り抜刀し、相手をたちどころに斬り捨てるべく刃を返す。
そして夜叉が他の仲間と刀を交わらせる間に。
「……隙あり、なの」
朔夜がそう言葉を紡いだと同時に、僧兵の急所が寸分違わず斬り裂かれて。
最後の僧兵1体が、血の海に沈む。
これで残りは、慈眼衆・夜叉のみ。
「命の力よ、集まって……」
集めたオーラを仲間へと放ち、受けた傷や状態異常を忙しなく塞ぎかき消す七葉。夜叉を仕留めても、この戦いはまだ終わらないから。誰も、決して倒れぬ様にと。
「必ず勝つのです」
そして雪緒がそう口付け誓うのは、琴瑟相和す二人の証……左手薬指に嵌められた円環。
そして六文銭射撃を撃ち出す八風と共に、カミが生み出した風の刃で敵を斬り裂きにかかって。
「あなたの動き、封じさせてもらいます」
リューズが夜叉へと見舞うのは、腱を狙い澄ました死角からの斬撃。
この争いを経て、武蔵坂学園の事をダークネス達にどう思われ、その牙を向けられるか否かは分からない。
でも。
「わたし達は難しい道を選ぶよ。人の命に寄る灼滅者の道を。どんなに困難でも矛盾を孕んでいたとしても、ね」
例えその選択が、愚かな茨の道であったとしても。
結衣奈もまた、苦悩しながらも生きる、人間らしい世界を選ぶことを宣言して。
流星の煌きを宿した飛び蹴りをダークネスへと放つ。
「! ぐふうっ」
そして揺らいだ夜叉へとすかさず向けられるのは、これでもかと相手の足取りを鈍らせる木菟の斬撃。
さらに、その闘志の如く真紅に染まった籠手に雷撃を宿して。
「打ち抜く! 止めてみろ!」
「ッ!」
間髪入れず龍也から繰り出された拳が突き上げられ、高々と夜叉の顎を跳ね上げれば。朔夜の牽制の射撃が、完全にダークネスの足を止めて。
「これで、終わらせるよ!」
霊撃漲らせる華月と共に、止めの一撃を見舞うべく大きく地を蹴ったのは、様々な得物を携え使いこなす凪月。
祝福されし破邪の聖剣から繰り出した衝撃は、夜叉の肉体ではなくその霊魂を直接破壊して。
「はっ、がああぁぁ……ッ!!」
溜まらず声を上げ、悶えながらも。
遂に夜叉も地に崩れ落ち、倒れたのだった。
●連戦の先に
決して傷は浅くはないが。誰ひとり倒れる事なく収めた勝利。
「さて、次はアンブレイカブルか。退屈しなくて良いぜ」
天海側の慈眼衆を打ち倒し、次は安土城怪人側の敵をと……そう思っていたが。
「もう、東側にはいけそうにないね」
「この状況だと、やはり遊覧船も使えないでござるしなぁ」
「怪人さんの方にも、武蔵坂学園のみんなが、沢山行っていますですしね」
どうやらこの激しい戦火の中、東側の安土城怪人側へは最早向かえないようだ。
それに。
「……相談や心霊手術してる時間は、どうやらないみたいなの」
朔夜の視線の先に在るのは、新手の慈眼衆1体と僧兵強化一般人3体の姿。
「今度は、あのテンション高そうなサングラスが相手みたいだね」
「ケイガ様、敵を発見いたしました!」
同時に敵も灼滅者達に気付いて。
ケイガと呼ばれたサングラスに長髪の胡散臭い男は、得物の解体ナイフを構えながらも、妖の槍を携えた僧兵達に支持を飛ばす。
このケイガという慈眼衆が率いる集団も、遥河ではないエクスブレインの未来予測に察知された敵であるだろうが。恐らく今の自分達と同じく、こちら側に向かえない、東側を最初に選択したチームのエクスブレインによって予知された敵達ではないかと考えられる。
でもとにかく、西であれ東であれ……敵ならば、1体でも多く討ち倒すのみ。
連戦という事もあり、胡散臭いグラサンの慈眼衆は後回しに、周囲の僧兵から倒しにかかる灼滅者達。
「その糸は疎にして密……やらせないよ」
「伊達や酔狂でこんな物を持ってる訳じゃねぇぞ」
七葉が銀閃狩を戦場に張り巡らせ、龍也が緋色のオーラ纏う得物で敵の生命力を奪いにかかれば。
「八風、もうひと頑張りなのです」
「華月もみんなを守って」
雪緒や凪月も再びそれぞれの相棒を最前線へ送り出しつつ、1体ずつ敵へと攻撃を繰り出して。
「おらあぁぁ!! くらええェェ!!」
ヒャッハー! とケイガが叩きつける衝撃は、強烈な鬼神変。
その重さに思わず、一瞬膝をつきそうになる龍也だが。
「まだだ!!」
すかさずシャウトし、まだしっかりとした足取りで地を踏みしめて。
「それにしても、今度の相手は異様にハイテンションでござるな」
「ヒャッハーって、うるさい敵なの」
テンションは高いながらも、解体ナイフを巧みに操り、強烈な鬼神変を繰り出しつつも。的確に指揮を取り、配下へ指示を与えるケイガ。
それに忠実に従う僧兵は少々厄介だけれど。攻撃対象を統一させ、1体ずつ確実に潰していって。
「とにかく、敵は倒します」
最初の戦いよりも回復をこまめに心がけながら。
リューズの放った一撃が、3体目の強化一般人を倒して。
次は慈眼衆の番だと……皆が目を向けた、次の瞬間だった。
「! あっ」
大きく跳躍し、撤退するケイガ。
少し無理してでも落とせるのならば、慈眼衆の首も狙いたかったが。連戦で余裕のない灼滅者達は、そんな彼は追わずに。
「ん、私たちは為すべきことを為したよ。後は他の皆を信じるだけ」
八風の頭を撫で撫でする雪緒を眺めつつも。
七葉は、自分達の周囲にはもう敵がいない事を確認した後。
他の戦場の仲間達の勝利を信じながら、無事被害が抑えられた現場から撤退を始めるのだった。
作者:志稲愛海 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月1日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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