暗く深い闇の中で、彼は一人孤独に戦い続けていた。
「諦……らめ、る、かよ」
相対するは黒、そう、それは黒い魂。
絶望的に巨大であり、全てを飲み込むモノ。
「俺の抵抗が無意味……いいや……違う……」
黒は嗤い、わずかに輝く金の魂をねぶるように喰らっていく。
それでも、その光が完全に消えないコトにソレは思案する。
肉体は支配した、あとわずかで完全に復活できるものを……。
「灼滅者……舐めんなよ」
都内某所。
夜の闇が開けようとしている薄紫の世界に、黒き人影が降り立つ。
巨大な影ではない、未だ完全体になれぬ故か、その姿は半龍半人とも呼ぶべき姿だった。
背の翼は飛ぶことより攻撃と防御にも使えるよう硬質化し、また鋭さがあった。
腕や足の爪は鋭く伸び、それが振るわれれば巨大な斧程の威力があるだろう。
次の瞬間、その爪に炎が轟ッと灯り、そして――。
「ガアアアァァァァッ!」
朝の空に響き渡る絶叫。
だがそれは、まるで何かに邪魔され、言葉さえ不自由しているかのようだった。
「みんな、急ぎ集まってくれてありがとう」
教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が頭を下げ、時間が無いとばかりに早速依頼の説明に入る。
「実はこの前の戦争で闇堕ちした先輩を見つけたの!」
発見されたのは一橋・智巳(強き『魂』を求めし者・d01340)。
彼は戦争にて闇堕ちし、イフリートと化してどこかへ姿を消していたのだが……。
「彼は今、武蔵坂学園に向かってきているわ。まるで、私たちに挑戦しようとでも言うかのように」
ざわり……集まっていた灼滅者たちに緊張が走る。
だが、珠希は「とはいえ」と前置きし。
「それをのんびり待っていたら、途中で一般人の被害がでてもおかしくないわ。だから、こちらから出迎えにいくべきだと思うの」
珠希は地図を広げて言う。
「接触ポイントはココ、この橋の上で待ち伏せして」
そこは都内某所の、とある橋の上だった。
時刻は朝方、太陽が昇り初めるタイミング。
「ただ、一つだけ注意して」
珠希は人差し指を立てると、真剣な表情で皆を見回し。
「ダークネスは、灼滅者を倒して一橋先輩の魂を完全に折るつもりなの。だから、できるだけ倒れないで」
ダークネスは目の前で灼滅者を倒す事で、一橋智巳の魂を折ろうとしている。灼滅者が次々に倒れていけば、一橋智巳という枷は力を失い、ダークネスは本来の力を取り戻し完全体へと近づき強くなっていく。これ以上は……と判断する時が来たら、救う事を諦めて目的を灼滅に切り替える事も念頭に置くべきだと珠希は言う。
「もちろん逆にダークネスの心を折ってやれば、一橋先輩がダークネスを押さえつけて弱体化できるかもしれないわ」
それは、ただ倒れない事だけでなく、言葉によるものも場合によっては有効だろう。
うん、と頷き、珠希は次に戦闘時のダークネスの行動について説明する。
イフリートであるダークネスが使うサイキックはファイアブラッドと龍砕斧に似ており、そのどれもが付属効果よりも威力が重視され、当たれば相当な高威力であるらしい。
「言葉を喋ったりはできないみたいだけど、決して頭が悪いわけじゃないわ。一橋先輩の魂を折るため、冷静に対応してくる可能性があるから気をつけて」
珠希はそこまで言うと灼滅者達の顔を見回し。
「もし一橋先輩の魂が折れて、先輩の中のイフリートが完全に復活したらどうなるか……正直、私にはわからない。でも、そんな事はさせないで。みんな、信じてるわよ!」
参加者 | |
---|---|
影道・惡人(シャドウアクト・d00898) |
城代・悠(月華氷影・d01379) |
若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426) |
日向・和志(ファイデス・d01496) |
鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864) |
八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377) |
ルエニ・コトハ(スターダストマジシャン・d21182) |
ジェノバイド・ドラグロア(紫焔纏いし狂牙・d25617) |
●
夜の帳がゆっくりと開けていく中、気温は少し肌寒く、都内だと言うのに辺りはやけに静かだった。
「橋の上……まるで牛若丸との出会いを待つ弁慶の気分ですね」
指示された橋の上で鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)が困ったようにつぶやくと、影道・惡人(シャドウアクト・d00898)が横に立ち。
「俺たちが弁慶じゃ困るだろーが」
「もちろん、負けるつもりはありませんよ?……そういえば、今回は前に出るのですね?」
惡人の茶々に疑問で返す湯里。
「ぁ? 珍しいか?」
拘りでもあったのでは? と。
「勝ちゃなんでもいんだよ」
と惡人が言い切る。
「……しかし、これも戦争の置きみ土産、か」
八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)の言葉通り、今回の依頼は先の戦争で闇墜ちした元学園の灼滅者であったイフリートを止める事にある。
「ラブリンスターさんたちの消耗も激しかったので、心配になって一橋さんは参戦したんだと思います……でも、本当は重傷になったなら、応援に回ってほしかったです」
若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)が悔しそうに言うと、ザッと横に紫髪の男が並び。
「イイ奴じゃねーか、だったら尚更、倒れるわけにゃいかねぇよな」
ジェノバイド・ドラグロア(紫焔纏いし狂牙・d25617)が不敵に言えば、めぐみはコクリとうなずく。
自分だけじゃない、周りを見ればめぐみと同様に彼を迎えにきた者たちがいる。
「まぁ、あいつのことだからそう簡単にへばりゃしねぇだろうが……」
日向・和志(ファイデス・d01496)が言えば、その足下で霊犬の加是も同意する。
と、朝靄が立つ中、前方にナニカが現れ、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
「さぁって、ようやく来たようだな。とりあえず、だ。ぶっ飛ばしてとっとと元に戻してやるか」
城代・悠(月華氷影・d01379)の指にはいつの間にかカードが挟まれ。
「少し荒く行くぞ?」
問うような言葉と同時、薄紫色のオーラが解放される。
「何度もお世話になっていますし、月光樹の皆さんも帰りを待っているのです。だから……一緒に、帰るのです」
ルエニ・コトハ(スターダストマジシャン・d21182)も同じく殲術道具を解放し構え、小さいながらも決意を口にする。
「青・龍・召・喚!」
両刃の長刀とも言えるサイキックソードを構えた湯里が、朝靄の中から完全に姿を現した一橋だったモノを見て嘆息する。
「こんな事になっていたのですね……これは、見過ごせません」
それは半龍半人とも言うべき異様な姿だった。背の翼は堅く硬質化しており、腕や足の爪は鋭く伸び、離れていても殺意と破壊の衝動が押し迫ってくるような圧迫感を受けるのだった。
●
「一橋さん迎えに来ました。さあ帰りましょう、皆も待ってますよ」
冷静に指にはめた指輪をイフリートに向けるのはめぐみ。
「一橋先輩は、ちょっと怖そうに見えるけれど、とっても仲間思いの人なのです。いざという時にはきちんと皆のことを考えていろいろ頑張ってくれる方なのです」
ルエニもめぐみと並んでイフリートを見据え。周囲に浮かべたリングスラッシャーが高速に回転を始める。
『ガアアアアアア!』
叫びを上げ突っ込んでくるイフリート。
と、めぐみのナノナノであるらぶりんがしゃぼん玉を飛ばしイフリートの視界を遮る。
「嫌だと言っても、首に縄をつけて帰りますから」
「皆、心配しているのですよ。皆が帰る場所の、月光樹を守るべき先輩が何やっているのですか」
めぐみとルエニの言葉が重なり、制約の弾丸と射出されたリングスラッシャーがイフリートに激突、思わず足を止める……その僅かな間に、一気に距離を詰めた前衛7人がイフリートを取り囲む。
「さぁ、これからがおもしれートコだ、最後まで付き合ってもらうぜ?」
逃がさんとばかりに惡人が龍砕斧を肩に担ぎ言う。
と、その時だった、イフリートが何かを感じて振り向く。
目が合ったのは和志だった。
「おいおい、もう気づいたのかよ? ほらよ、うちの義妹が差し入れしてくれたオムライスだ」
そう言って取り出す和志は。
「良かったなー、一橋。気付けの一発に効くだろう……目覚めの一発だ、食らっとけ!」
真っ正面から飛びかかる和志、しかしイフリートは身を倒して避わそうとし、それを見た和志は片足を踏み出し急停止すると、強引にイフリートの顔面へ。
「お前が! 食うまで! 俺は! 諦めない! ワンダラーオムライス IN 妖冷弾!」
同時に氷のつららが炸裂する。
ふざけた攻撃にイフリートが全身から炎を吹き上がらせ、灼滅者の誰もが数歩下がり……次の瞬間、イフリートがその鋭い爪を一閃、まるで竜巻にぶつかったような衝撃が前衛7人を襲う。
「……防技、渦潮」
黒焔鳳凰を回転させ防いだ文が、そのまま九節棍のように自在な柄を持つ長刀を自身の周囲に展開し。
「……アンタが出てこんかった間に築いてきた絆にとって、アンタは不要なんや……その体と心、待ってる人らの元へ返してもらうで」
『ガアアアアアアッ!』
全てを否定するかのような雄叫び。
「ったく、テメェの魂は一体ドコに置いてきた?」
さっきの攻撃で自分の中の一部が怒りに染まるのを感じながら悠が腕を鬼に変じ。
「助け出すこっちの身にもなりやがれよ」
言葉と同時にイフリートへと躍り掛かる。
鬼の腕を龍の爪がガッシと防ぎ、片腕での力比べが始まる。
だが、灼滅者8人であたらねば止められぬダークネスが相手だ、イフリートの膂力が和志を上回り――。
バチンッ!
横っ面を箒で殴られ思わず手を離すイフリート。
「大丈夫、貴方を堕ちるほどに追い込むモノはもうなく、その力も必要ありませんから」
にっこりと湯里がほほえみ、同時、箒で殴られた場所へ時間差で魔力の打撃が連続で爆発する。
たたらを踏むイフリート。
その顔に影がかかり、イフリートが上を向けば上空から巨大な長柄剛刀が振り下ろされる。
「喰らってやるよ、アンタのその闇をよぉ!!」
闇喰らいの異名を持つジェノバイドの巨刀がイフリートを見事切りつけた。
だが。
「グルルルルル……」
一気に叩き込んだにも関わらず、イフリートに怯んだ様子はない。
戦いはまだ、始まったばかり。
●
イフリートの攻撃は重く、そして想像以上に苛烈だった。
すでに十数分が経過し、しかしまだ誰も倒れていないのは、ディフェンダーを多くし、また列減衰まで狙った灼滅者達の作戦が当たったからだろう。
伸びきっていた黒焔鳳凰をギュンと手元に引き戻せば、カシャカシャカシャっと薙刀へと形が戻る。
「……殺技、旋風」
瞬後、イフリートの足元を文が薙ぎ払う。
「……ウチは説得苦手やから、中の人が出てきやすいようにするだけや」
「充分ですよ」
文の言葉を肯定しつつ、湯里が足のおぼつかないイフリートに肉薄、「その闇……浄化します!」と気合一閃、輝く拳を連打であびせかける。
ドドドドドッと湯里の拳によって弧を描くイフリートだったが、途中で鱗の翼がバサリと開いて勢いを殺すと、そのまま手まで使い四肢で着地、四足の低い姿勢で大きく息を吸い――。
『グラアアアアッ!』
全てを破壊するかのような激しい炎の奔流が6人と1匹を飲み込んだ。
後衛の2人がアッと声を上げるが、時すでに遅し、イフリートを中心に炎の輪となった残火が燃え続ける。
ドササッ、炎の輪から3つの影が倒れる。
それは、文を庇った霊犬の加是、和志を庇った悠、そして今回は偶然庇われなかったジェノバイドだ。
『グルルルル……』
イフリートのサイキックエナジーが加速度的に高まって行く。
だが――。
「絶対に……倒れるわけにゃぁいかねぇな」
「ハッ! 足りねぇ……、全然足りねぇ」
ジェノバイドと悠が燃えながらもユラリと立ち上がる。
それは魂による肉体の凌駕。
「ぜってー負けねぇ!」
「どうした! もっと本気でかかって来いよ!」
体力は底を尽いたと言うのに、ジェノバイドと。悠の気勢は倒れる前以上に高まっていた。
思わずイフリートが後ずさる。
「何人かぶっ倒れたくらいで動揺すんじゃねぇ! 見ろ、俺達はまだ倒れてねえ!」
動揺するイフリートに向け、いや、その中で必死に抵抗するダチを見据えて和志が言う。
「ここでお前が負けちまったら、お前が背負ってる寮員とか仲間はどーなる! てめぇが戻んなきゃ背負ってるもん、全部壊れるんだぞ!」
消滅した加是を含め、3人が倒れた瞬間に増大したエナジーだが、威圧感は戦闘前の時より弱まっている気がした。
「オラ、てめーは後ろで勝手にやってな」
ジェノバイドを庇うよう前に立ち、惡人が言う。
「チッ」
言われた通り後ろへと下がるジェノバイド。だが、下がり際に惡人へ。
「あんたは大丈夫なのかよ、そろそろやばいんじゃねーか?」
「な事ぁどーでもいんだよ」
「ァア!? オレが心配してやってるってのに」
「ハッ、なもん知るか」
ジェノバイドの心配をよそに、惡人はウロボロスシールドで自己回復すると不敵な笑みを浮かべ再び最前線へ。
「倒れんじゃねーぞ! 全部終わらせたら、どっか食いに行こうぜ!」
「いいぜ? もちろん、……こいつのオゴリでな!」
悪友同士がするように、ニヤリと笑うジェノバイドと惡人。
「無駄口叩いてる暇があったら自分でも回復して下さい」
後列に下がったジェノバイドに即座にめぐみがエンジェリックボイスを掛ける。
横ではらぶりんとルエニが連携して悠に向けてふわふわハートとシールドリングによる遠距離回復を行なっていた。
ドガッ!
凄い音がして振り向けば、イフリートが吹き飛び橋の欄干へと叩きつけられていた。
そこに光の尾を引く拳で追撃するは、先ほど凌駕した悠。
「前にアタシに言ったよな? 絶対に闇堕ちしないって」
追撃1発。
「なのに、なんで闇堕ちなんてしてるかねぇ?」
追撃2発目。
「ま、ぜってぇ助け出してやる! だから、テメェはその魂を強く持ちなっ!」
『ガアアアアッ!』
追撃の3発目に合わせて、イフリートが炎を纏った爪をカウンターで突き出す。
炎と光が弾ける。
悠の輝く拳がイフリートの爪とぶつかり相殺したのだ。
「アタシの魂、喰らえるもんなら喰らってみやがれ!」
●
戦いは続き、イフリートはついに形振り構わず攻めへと転じた。
湯里が惡人を庇い、悠を和志が庇う。
「ぐ……」
暴風が終わると同時、大地へ倒れたのは和志だった。
しかし。
「そんなところで……くすぶってるほど、ヤワじゃねーだろ! 一橋ッ!」
和志の魂が肉体を凌駕する。
イフリートが愕然とする中、灼滅者の攻撃は続く。
悠が拳に雷を纏わせイフリートを殴りつけようと飛び込み、察したイフリートは己の翼で身を包むようガード……しようするも、否定の魔力が込められた光線が翼を弾き飛ばし、悠の拳がクリーンヒットする。
光線を放っためぐみへ視線で礼を言う悠。
「はい、一橋さんは首に縄をつけてでも連れ帰り、72時間説教攻めにでもしないと気が治まりませんから」
「ハッ、まったくだ!」
殴られ仰け反っていたイフリートが脚だけで大地を蹴ると同時、グルルと低く唸り右手の爪が盛大に燃え始める。
強烈なのが来る!
前衛4人のうち、和志と悠が凌駕済みで、湯里と惡人も限界は近い。
そんな中、躊躇せずにイフリートに向かって走り込むのは……惡人だった。
走り込みながら拳に纏うバトルオーラに、さらにシャドウハンターとしての影を重ねて強化する。
イフリートが惡人の拳を左手でガード、さらに両の翼が惡人の両肩に突き刺さりその突進力を相殺。
ニヤリとイフリートが笑い、単体必殺の炎爪が惡人を貫く!
だが。
口から血を垂らしながらも、惡人は自らに差し込まれたイフリートの右手を掴む。
ぎょっとするイフリート。
「おぅヤローども……やっちまえ」
即座に動いたのは湯里。
「還るのです……貴方の在るべき姿へ!」
湯里の鬼へと変化した腕が右の翼をもぎ取り、和志の妖冷弾が左の翼を凍らせ、そこを悠が拳で破壊する。
さらにめぐみとルエニが、オーラとリングスラッシャーを右と左へ放つと、途中でホーミングし大きく曲がってイフリートの両腕へと命中、衝撃で惡人から爪が抜け吹き飛ぶイフリート。
体勢を整えようとした瞬間、眼前へ迫るは炎の渦。ジェノバイドの放ったバニシングフレアだ。
『ガアアアアッ!』
強引に爪で炎の渦を斬り裂くイフリート。
「自分一人では中の人の心折れんかった奴に、負けはせぇへんよ」
その渦の中から黒髪の少女が迫り、ゆっくりと肩を掴み、文はそのまま片足を振り上げ踏み込み、渾身の力で頭突きを決める。
『ガッ……グ、ガ……』
さらに文は月下鳳翼の車輪を高速回転させ。
「……ウチは刃、あんたを切り裂き、穿つ刃……必技、陽炎」
炎を巻き上げながら脚を高く振り上げ。
「……一橋さん……出て、こいやぁ!」
かかと落とし。
靴の軌道に赤い羽根の幻影が生まれ、半龍半人のイフリートは、白目を向いて倒れ伏したのだった。
●
真っ暗な海の底から水面へと浮かび上がって来たかのように、一橋智巳の意識はゆっくりと覚醒した。最初に目に飛び込んで来たのはニコニコとした笑顔。
「……おかえりなさい」
湯里が身をどかすと、背後には見知った和志と惡人。
「おぅ、あとで肉まんな」
惡人の周りでは、紫の男(ジェノバイドである)が「オレもだぞ」とか悪そうな顔で笑っている。
パチン!
唐突に頬に痛みを感じ、自分が叩かれたと知る。
顔を正面に戻せば、そこには怒った顔のめぐみ。
「今のはアインさんからです」
あいつから……か。
「さ、寮の皆が説教部屋を作って待ってます。楽しみにしていてくださいね」
パンパンと手を払い、めぐみが嬉しそうに笑ってくれた。
そして入れ違いに立つはルエニ。
「お前もか……?」
未だ身体に力は入らないが、なんとか名前を口にする。
だが、幼い少年はグッと拳を握り、ぱっと再び開いてしまう。
「顔にぐーしてほしいと言われました……でも、いいです。今、僕、ほっとしているのです」
「………………」
「帰ったら皆さんからお説教で絞られるでしょうし……でも、もし次にやったら本気でぐーしますからね」
懸命に、真正面から言うルエニに「ああ、わかった」と答えれば、少年は心底安心したように笑顔を見せる。
ドカッ!
いきなり横から蹴られて大地へ倒れる。
「オラァ! テメェは色んな奴に心配かけすぎなんだよっ!」
悠だった。
そのままエビ反りまで。
惡人達がそれを見て笑い、めぐみやルエニが本気で心配し、湯里がニコニコ笑っていた。
ひどいもんだ。
ひどいものだが……でも――。
そうして、一橋・智巳(強き『魂』を求めし者・d01340)は日常へと戻って来たのだった。
作者:相原あきと |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年9月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 12/感動した 3/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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