秋風が吹き始めた琵琶湖畔が、風雲急を告げていた。
琵琶湖大橋の上、東側に立つのは慈眼衆が一人と、強化一般人の老人が一人。
対するは、刀剣怪人が一体と、ペナント怪人が一体。
実力は、拮抗していた。
「大戦の時は来た」
錫杖で琵琶湖大橋を突いた慈眼衆は、錫杖を水平に構えると刀剣怪人を睨みつけた。
「長き因縁も、もはやここまで! 今こそ、決着を付けようぞ!」
刀剣怪人もまた、慈眼衆に向かって己の頭部を突き付けた。
「おぬし個人に怨みはないでござる。だが安土城怪人様のため、世界征服のため! その命。貰い受けるでござる!」
錫杖と刀剣が激突する。剣戟の音を合図に、配下の強化一般人とペナント怪人もまたぶつかり合った。
●
「皆さん。ついに天海大僧正勢と安土城怪人勢が全面戦争を始めるようです」
真剣な面持ちで、西園寺・アベルは灼滅者を見渡した。
「琵琶が嘆き、訴えています。この戦いに介入して、全面戦争だけは阻止してほしいと」
そう言うと、アベルは琵琶のタルトが乗った白皿を灼滅者達の前に置いた。
現在、天海大僧正勢と安土城怪人勢の実力は拮抗している。
このまま戦えば、琵琶湖畔は人の住めない焦土と化す。これは、絶対に阻止しなければならない。
この全面戦争による被害を減らす方法は三つ。
1 慈眼衆と刀剣怪人の戦いに介入し、双方を武蔵坂学園の灼滅者が制圧してしまう。
メリットとして、これに成功すれば、両勢力は武蔵坂学園の戦力を無視できないために一定の条件で休戦協定を結ぶことになる。
デメリットとしては、双方と戦うため激戦は必至。しかも阻止に失敗すれば全面戦争となってしまう。
また、ダークネス同士が休戦協定を結ぶのは、武蔵坂学園にとっては不利益となってしまうかも知れない。
2 安土城怪人勢である刀剣怪人を一方的に攻撃する。
これにより安土城怪人勢は壊滅。琵琶湖畔は天海大僧正の勢力が支配することとなる。
メリットとしては、琵琶湖の東側に大きな被害が出るが、全面戦争に比べれば大したことではない。
デメリットとしては、天海大僧正勢が大きな勢力を得てしまうことだろう。
3 天海大僧正勢である慈眼衆を一方的に攻撃する。
これにより天海大僧正勢は壊滅。琵琶湖畔は安土城怪人の勢力が支配することとなる。
メリットとしては、琵琶湖の西側に大きな被害が出るが、全面戦争に比べれば大したことではない。
デメリットとしては、安土城怪人勢が大きな勢力を得てしまうことだろう。
「今回は、どの選択が正しいということはありません。どの作戦にもメリットもデメリットもあります。どちらの勢力に着くか、あるいは着かないかは、皆さんの判断にお委ねします。どのような決着になっても--必ず、無事に帰ってきてください」
アベルは一礼し、祈りを込めた紅茶を淹れた。
参加者 | |
---|---|
白鐘・睡蓮(棚靡く紅冠・d01628) |
炎導・淼(ー・d04945) |
川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950) |
咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814) |
齋藤・灯花(麒麟児・d16152) |
鬼追・智美(メイドのような何か・d17614) |
花衣・葵(桜雨詩・d20215) |
倉本・佐知(闇斬り剣士・d21053) |
●介入
琵琶湖大橋の上で、刀剣と錫杖が激突する。
激しい攻撃の応酬が始まったその隣で、刀剣怪人の部下であるペナント怪人と慈眼衆の部下である強化一般人もまた、互いに向かって突き進んだ。
両者が激突する寸前、ペナント怪人の足が止まった。
影のように静かに接近し、機を伺っていた鬼追・智美(メイドのような何か・d17614)が放った鬼人変が、ペナント怪人の腹部にクリーンヒットしたのだ。
「ケンカ両成敗なのです!」
智美に続いて、齋藤・灯花(麒麟児・d16152)の螺旋槍が唸りを上げてペナント怪人に突き刺さる。
「おのれ何奴!」
連撃を受けたペナント怪人は、解体ナイフを振りかぶると智美に振り下ろした。
「させるか!」
その攻撃に、白鐘・睡蓮(棚靡く紅冠・d01628)が割って入った。
重い。ペナント怪人は安土城怪人に強化されているとは聞いていたが、予想よりも重い攻撃に睡蓮は眉をひそめた。
睡蓮への攻撃が、ふいに緩んだ。
倉本・佐知(闇斬り剣士・d21053)が放った黒死斬が、ペナント怪人のペナントを裂く。ペナント怪人は大きく後退すると、慈眼衆との一戦を終えた刀剣怪人の元へと戻った。
霊犬のレイスティルが、睡蓮の元へと駆け寄った。癒しの視線が睡蓮の傷を癒していく。
時を同じくして、強化一般人側にも攻撃が仕掛けられた。
川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)が放った妖冷弾が、強化一般人に向かって突き進んだ。
だが、割り込んできた灼滅者達の気配をを察知したのか、強化一般人はふいに足を止めて後ろに跳んだ。一瞬前まで強化一般人がいた場所に、らせん状のつららが突き刺さる。
後退した強化一般人を追いかけるように、咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)のガトリング内蔵棺桶が火を噴いた。
無数の弾丸が放たれ、強化一般人は何とかダメージを減らそうと更に後ずさった。
「慈眼殿の邪魔はさせん! 臨兵闘者皆陣列在前!」
強化一般人は鮮やかな手つきで九字を切ると、練り込まれた霊力が千尋と花衣・葵(桜雨詩・d20215)の内部で暴発する。
強化一般人の霊力が葵に到達する寸前、炎導・淼(ー・d04945)が動いた。
葵と放たれた霊力の間に割って入った淼は、迫り来る九字の霊力に歯を食いしばった。
葵は自分を庇って傷を負った淼に駆け寄った。回復しようとした時、淼と目が合った。
ディフェンダーである淼よりも、スナイパーの千尋の方が傷が深い。葵は頷くと、千尋を指差した。
指先から溢れ出す癒しの力が、千尋の中で暴れる霊力を除去する。千尋は立ち上がると、油断なく慈眼衆を睨んだ。
睨み合う刀剣怪人と慈眼衆の間に、灼滅者達が立ちはだかった。灼滅者達は互いに互いの背を預け合いながら、ダークネス達と相対した。
●対話
緊迫した空気が流れる中、淼が慈眼衆に指を突き付けた
「この合戦ちょっと待ったぁっ! 不作法だが邪魔させてもらうぞ」
「お主ら何者だ? 何のために我らが合戦の邪魔をする?」
慈眼衆は不愉快そうに、頬を流れる一筋の血を手の甲で拭う。その声に、千尋はライドキャリバーの赫怒に騎乗したまま毅然と宣言した。
「あたし達は、武蔵坂学園だ!」
「ほう。お主らは天海大僧正様と手を結んだと聞いていたが、間違いだったかな?」
「組織として手を結んだ覚えはありません。こんな可笑しな合戦を終わらせ、ここからご退場願います!」
葵は油断なく慈眼衆の動向を見ながら、来るべき攻撃に備えて力を蓄えた。
「笑止! 我が目的は、あくまでの安土城怪人の勢力を削り、天海大僧正様に道を開くこと! そのためには、犠牲も被害も致し方なきこと!」
鼻先で嗤いながら錫杖を構える慈眼衆に、咲夜はやれやれと言うように頭を振った。
「ここでの犠牲は已む無しって考えなら、こっちも抗う事しか選べないんだよ!」
「抗うとは、大きく出たでござるなぁ? この大戦、うぬらに阻止できると思うたでござるか?」
刀剣怪人は、少し刃こぼれした頭を振った。小馬鹿にしたような態度に、佐知は表情をうかがわせない声で言った。
「確かに厳しい戦いだけど、怯むわけにはいかないわ! 必ず止めてみせるわ!」
「安土城怪人様と天海大僧正は、不倶戴天の敵同士でござる! 今でなくとも、ここでなくとも大戦が起こるは覆せぬことでござる!」
「一般人の方々に被害が出るのを黙って見過ごすわけには参りません! 申し訳ございませんが、貴方方の思い通りにはさせません!」
決意も新たに、智美は指輪状のシールドに力を込めた。
「拙者らが大望の前には、そのような小事、路傍の石の如くなり!」
刀剣をこちらに向けながら威嚇する刀剣怪人に、灯花は少しむっとしたように言った。
「あなたたちの企みなんか、知ったことですか! 灯花は灯花の道を行くのみです!」
「面白い! そのような寡兵で拙者達の大戦を止められるか、やってみるがいいでござる!」
刀剣怪人は頭の刀剣をきらめかせると、ふいに姿が消えた。
●開戦
次の瞬間。刀剣怪人は灯花の懐に潜り込んでいた。
刀剣怪人は高々と灯花を持ち上げると、地面に向かって叩きつけた。
「喰らうでござる! 刀剣ダイナミック!」
掛け声と共に起こる爆発。爆風が収まった時、灯花はクレーターの中央で何とか体を起こした。
そこへ、ペナント怪人の攻撃が走った
ペナント怪人の解体ナイフが閃き、灯花に追い打ちを掛けるように猛毒の霧を発生させた。
猛毒の霧が竜巻のように立ち込め、灯花と智美、睡蓮と赫怒に向かって唸りを上げて突き進んだ。
視界を遮るほどの大量の霧が、辺りに充満する。この毒霧を受けたら、刀剣怪人によって大ダメージを受けた灯花は倒せるはず。
ほくそ笑んだペナント怪人の笑みが凍りついた。
ペナント怪人は、己の腹を見下ろす。そこには、マテリアルロッドに魔力のありったけを乗せた灯花が、フォースブレイクを叩きつけていた。
「そ、そんな……。お前、毒霧にやられたはずじゃ……」
「……意地があるのですよ、女の子にもッ!」
灯花はマテリアルロッドに決めの魔力を込めると、振りぬいた。
「申し訳ありません、刀剣怪人様ぁ!」
ペナント怪人は体内で暴発する魔力に耐えきれないように一声吠えると、爆散した。
「レイスティル、お願い……!」
灯花の代わりに毒霧を受けた智美の声に、レイスティルが動いた。灯花が負った傷に、癒しの視線を注ぎこむ。
その場に膝をついた灯花の傷が、ゆっくりと癒されていく。
そこへ、睡蓮のフェニックスドライブが発動した。
睡蓮の背中から、鳳凰の翼のような霊力が溢れ出す。晴れかけた毒霧の中から不死鳥のように現れた翼が、灼滅者達を包み込み、その傷をいやしていった。
輝く翼が消えると同時に、佐知が躍り出た。
羅刹蛮刀を構え一気に刀剣怪人との間合いを詰めた佐知は、まっすぐに刀剣怪人に振りおろした。
重い一撃が、刀剣怪人に食い込む。自らの頭部で雲耀剣を受け止めた刀剣怪人は、鋭く睨む佐知を睨みかえした。
「剣の腕なら、私も負けていない!」
「この短時間で拙者に詰め寄り、一撃を加えるお主の剣の腕は認めるでござる。だが、しかし!」
刀剣怪人はくわっっとめを見開くと、大きく頭を振った。歌舞伎の毛振りのようにぐわっと大きく頭を振った刀剣怪人の力に、佐知は大きく後退すると仲間の背後へと戻った。
「剣術とは、技のみではないでござるよ! 力もまた、重要でござる!」
刃こぼれの増えた刀剣怪人は、灼滅者達に己を誇るように頭部を構えた。
一方。
慈眼衆と相対していた淼は、先手必勝とばかりに強化一般人に向かって突き進んだ。
「余所見してんじゃねぇぞっ、俺が相手だっ!」
一気に間合いを詰めた淼は、そのままの勢いで強化一般人を盾で殴りつけた。
硬化した盾が強化一般人を吹き飛ばし、地面へと落下する。頭から落ちたはずの強化一般人は、ゆっくりと起き上がると怒りに燃えた目で淼を睨みつけた。
「小僧が、敬老の精神はないのか!」
強化一般人は指を組むと、腕を真っ直ぐ伸ばした。そのまま独楽のように回転する。
徐々に回転を早める強化一般人は、台風のような勢いで淼に向かって突き進んだ。
組んだ指に霊力が込められ、刃のように硬化する。淼は強化一般人の攻撃を、盾で防ぎながら耐えた。
ギリギリと攻防が続く。強化一般人は止めとばかりに回転速度を上げると、淼への圧力を強めた。
淼のWOKシールドが、音を立てて割れる。強化一般人の独楽は淼を吹き飛ばし、橋の上へ叩きつけた。
「はるくん!」
葵は淼に駆け寄ると、倒れたまま動かない淼に手を翳し、回復した。さっきの強化一般人の傷に加えての今回の攻撃だ。タフな淼とはいえ、さすがに傷は深かった。
強化一般人が回転を止めた瞬間、追い打ちをかけるように咲夜が動いた。
機を狙っていた咲夜が殺人注射器で、強化一般人の腕にサイキック毒を注入したのだ。
強化一般人は腕を触る。そこにある注射針の穴に、目を見開いた。
「のぉぉ! 注射は、注射はいやだぁっ! 私はもう、注射など必要ない体を手に入れたのだぁっ!」
「とどめだよ!」
ライドキャリバーに騎乗した千尋は、強化一般人に向かって突撃を仕掛けた。
目の前に迫ったライドキャリバー・バーガンディの車輪が顔面をえぐり、強化一般人はたたらを踏んだ。
そこへ、最後の一撃が放たれた。
千尋は四八式殲術サーベルを抜き放つ。白い輝きを帯びた四八式殲術サーベルは、千尋の手の中で更に輝きを増す。
裂ぱくの気合と共に放たれた神霊剣は、強化一般人の魂を切り裂く。
「二度と注射のない世界へ行きな」
千尋の声に、強化一般人は安心したような笑みを浮かべると、崩折れ消えた。
殺人注射器を懐にしまった咲夜に、淼の声が響いた。
「ゲルマン闇堕ちしてる間に腕は鈍ってないようだな? 白雪!」
「って誰がグリュック王国所属の元怪人ですかぁ!」
旧知の気安さから、一瞬和やかな空気が流れる。
そんな空気が、烈風によって吹き飛ばされた。
今まで沈黙を守っていた慈眼衆が、錫杖を頭上で振りまわしたのだ。
「天海大僧正様のため、その命、貰い受ける!」
錫杖によって生み出された竜巻が、灼滅者達に向かって振り下ろされる。
淼と咲夜を巻き込んだ竜巻が、琵琶湖大橋上を切り裂いた。
●結末
竜巻が過ぎ去った時、二人は橋上に倒れ伏していた。
咲夜は全身に傷を負いながらも、なんとか身を起こした。同じ攻撃を受けた淼は、咲夜の目の前で倒れたまま動かない。
重傷を負い、完全に意識を失った淼に、咲夜は唇を噛む。竜巻に巻き込まれながらも、咲夜を庇うように動いた淼。
その思いを、咲夜は受け止め立ち上がる。余裕の表情で経を読む慈眼衆に、咲夜は妖の槍を構えた。
生み出された氷のつららが、慈眼衆に突き刺さる。左腕と体が凍りつき、一体化する。
左半身が氷結してもなお、慈眼衆は歩みを止めない。若干動きが鈍くなった慈眼衆に、咲夜は槍を構えた。
体中の痛みが、ふいに軽くなった。気絶した淼の傍でうつむいていた葵が、咲夜に癒しの光を放ったのだ。
「葵……」
「はる君なら、きっとこうしろって言うから」
毅然と顔を上げた葵は、倒れ伏した淼の前で両手を広げた。近づく慈眼衆を、キッと睨みつける。
「はる君は、私が守るから!」
「その心意気、天晴なり小娘! その意気に免じ、お主も同じ場所に送ってやろうぞ!」
喝! と大音声を響かせた慈眼衆は、右手を振り上げた。
錫杖に再び風が集う。竜巻のような、広範囲に広がる風ではない。狭い範囲に濃縮され、その分威力を増した風が、錫杖の先端に集う。
読経の声が不気味に響く。読経が最高潮に達した時、慈眼衆は右手を鋭く振り下ろした。
「南無三!」
「バーガンディ!」
投げつけられる錫杖の前に、千尋が躍り出た。
ディフェンダーに移動した千尋は、その勢いのまま走りだすと、葵を庇ったのだ。
烈風をまとった錫杖をまともに受けた千尋は、空中でバランスを崩すと大橋の上に叩きつけられる。
「千尋さん!」
葵の叫びに、千尋はなんとか身を起こそうとする。ライドキャリバーとダメージが分散したため、重傷こそ避けられたものの、しばらくは動けそうにない。千尋はそのまま意識を失った。
咲夜は倒れた淼を背負うと、絞り出すように言った。
「撤退だ、葵さん! このまま戦うのはまずい!」
「はい!」
頷いた葵は、倒れた千尋に駆け寄った。
「まいります!」
灯花はマテリアルロッドを構えると、刀剣怪人に向かって突撃した。
マテリアルロッドに込められた霊力を、刀剣怪人に向かって解き放つ。
勢いの乗った衝撃に一歩下がった刀剣怪人に、智美の閃光百裂拳が炸裂した。
無数の拳が刀剣怪人の刀身に叩きこまれ、連撃を受けた刀剣怪人は大きく後退した。
そこへ、睡蓮の蹴りが炸裂した。
「燃えろ!」
炎に包まれたエアシューズが、刀剣怪人に叩きこまれる。
そこに、佐知の黒死斬が炸裂した。
灯花達が気を引いている間に、刀剣怪人の完全な死角に回り込んだ佐知は、死角からの攻撃にありったけの力を込めた。
その攻撃に刀剣怪人は大きくのけぞると、ゆっくりと顔を上げた。
刀身は刃こぼれがひどく、体にも傷を負っている。だが、刀剣怪人はどこか余裕の笑みを浮かべると、刀身に魔力を溜めた。
「終わりでござるか? ならばこちらからいくでござる!」
刀剣怪人は溜めた霊力を切っ先に集めると、思い切り解き放った。
赤く燃えるようなビームが、刀剣怪人から放たれる。放射状に放たれた刀剣ビームが、前衛の三人に突き刺さる!
睡蓮は灯花とビームの間に割って入った。
「睡蓮!」
灯花の呼び声に、睡蓮は口元に笑みを浮かべた。
「後は、任せた」
それだけ言うと、睡蓮は気を失って倒れた。
「睡蓮さん! よくも……!」
「待って、智美さん!」
佐知の制止は、刀剣怪人に対する怒りによってかき消された。
智美は右腕を巨大な鬼の姿に変えると、刀剣怪人に叩きつけた。
怒りを乗せた強烈な一撃に、刀剣怪人はたまらず膝をついた。
更に攻撃をしようとした智美は、胸を切り裂くような痛みに目を見開いた。
「え……?」
膝をつき、身を低くした刀剣怪人は、その姿勢から居合抜きを放ったのだ。
「怒りは、思考を狂わせる。よく覚えておくでござるよ」
刀剣怪人の声を聞きながら、智美は意識を失った。
佐知は智美に駆け寄った。刀剣怪人は大ダメージを受け、膝をつき息も絶え絶えだ。だが、戦意は失っていない。
「さあ、次はお主でござ……」
言いかけた刀剣怪人は、ふいに身を翻した。慈眼衆が刀剣怪人に攻撃を仕掛けたのだ。
この隙に、佐知は智美を担ぎ上げる。灯花も睡蓮を連れて、安全な場所へ撤退を始めた。
背後で巻き起こる戦いの行方は、誰も知らない。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:炎導・淼(ー・d04945) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月1日
難度:やや難
参加:8人
結果:失敗…
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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