琵琶湖を東西に割る争い。
刺青羅刹・天海大僧正とご当地怪人・安土城怪人は互いに決めての無いまま膠着している。
一時は灼滅者の協力により刺青羅刹側が優位に立ったが、刺青羅刹側の戦力増強を灼滅者が邪魔した事により、両者は拮抗する戦力となってしまっているのだ。
互いに小競り合い程度で、それぞれが戦力の増強を目指し力を高めていた。
そして現在はそれぞれの勢力に随分と沢山のダークネスが集結していた。
両者が睨み合う琵琶湖。いつ何が起きても可笑しくないほど、両者の緊張は高まっていた。
「やあ、どうやら琵琶湖の戦いがまた次の段階へ進みそうなんだよ」
教室に集まった灼滅者に、能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が説明を始める。
「琵琶湖大橋を挟んだ東西のダークネスなんだけど、どうやら橋を確保しようと互いの軍勢がぶつかり合って、両勢力の全面戦争が始まってしまうみたいなんだよ」
このままでは甚大な被害が琵琶湖周辺から出るかもしれない。
「そこでみんなには3つの方法から選んで、この事態に介入して欲しいんだよ」
誠一郎の言葉に、灼滅者は真剣な表情で頷く。
「1つ目は、両軍の衝突が始まる前に、双方を学園で攻撃する事だよ」
成功すれば武蔵坂学園が第三の勢力として存在を示せ、休戦を結ぶ事が可能となる。だが戦力を二分し難しい戦いになる上、失敗すれば全面戦争になってしまう。
「2つ目は、琵琶湖大橋の東側に位置する、安土城怪人の軍勢を攻撃する事だよ」
結果、橋は天海大僧正側が制圧し、その勢いのまま安土城怪人の本拠地に攻め込んで雌雄を決する事になるだろう。この場合不利とみた敵が敗走するので、全面戦争に比べれば周囲の被害は小さくなるが、デメリットは天海大僧正の勢力が強くなる事だ。
「3つ目は、さっきとは反対、琵琶湖大橋の西側、天海大僧正の軍勢を攻撃する事だよ」
橋は安土城怪人側が制圧し、天海大僧正側へと攻め込んで雌雄を決してしまう。天海大僧正は本拠地に籠城して徹底抗戦した上、灼滅されてしまう。天海大僧正の勢力は壊滅するが、徹底抗戦によって西側周辺の被害は甚大なものになるだろう。
「どの選択が良い結果になるかなんて誰にも分からないよ。だからみんなの意思で決めて欲しい。みんなの選んだ未来なら大丈夫だと信じられるから。お願いするね」
誠一郎の真剣は顔に見送られ、灼滅者達は琵琶湖へと向かう。
参加者 | |
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ポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524) |
黒田・柚琉(宵の剣客・d02224) |
三島・緒璃子(稚隼・d03321) |
閃光院・クリスティーナ(閃光淑女メイデンフラッシュ・d07122) |
高倉・光(鬼紛い・d11205) |
焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752) |
揚羽・王子(たんなる小学生灼滅者・d20691) |
月岡・悠(銀の守護者・d25088) |
●嵐の前の琵琶湖
普段は静かな琵琶湖大橋を、今日は張り詰めた緊張感が覆っている。
橋の東西に別れ、二つの陣営が睨み合っているからだ。両者の衝突は避けられない。このままならば。
そこへ新たな第三の陣営が現われ、戦いは新たな局面を迎える。
灼滅者達は天海側の戦力を見た。
「この場で天海大僧正勢を潰す事が出来れば上々の成果となろうが、どうかのぅ」
揚羽・王子(たんなる小学生灼滅者・d20691)は琵琶湖の西側を見渡す。そこには天海の勢力であろう者達が居た。
「やはり難しいかの」
「さて……戦力二分、とは上手く行かないだろうね。他者の戦闘に割ってはいるとは、中々厳しい戦いになりそうだよ、君」
ポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524)は難しそうな顔をしながら、咥えた玩具のパイプを弄る。
「天海僧正。……てことは、お館様とは逆に西軍が敵かの?」
嘗て島津家に仕えた武士の家系として、三島・緒璃子(稚隼・d03321)は聞き伝わる歴史を思い起こす。
「羅刹に育てられた身としては、天海側に助力したい気持ちもありますが」
高倉・光(鬼紛い・d11205)は過去の生い立ちから羅刹への親近感を持っていた。
「皆で決めた事ですから。それならば精々、戦を楽しむとしましょうか」
戦いへ心を昂らせる。
「……もどかしいですわね」
琵琶湖を眺める閃光院・クリスティーナ(閃光淑女メイデンフラッシュ・d07122)は、個人の力ではどうしようもない大きな戦の流れを前にして呟く。
「そうは言ってもわたくしにできる事は、目の前の敵と闘う事だけ」
首を一つ振り、意を決してカードを解放する。
「いつ戦いが始まっても可笑しくない雰囲気だね」
両陣営を見ていた黒田・柚琉(宵の剣客・d02224)が仲間に振り向く。
「他のチームも動き出すようです。わたし達も仕掛けましょう」
焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752)の言葉に仲間も頷く。
「始めようか。熱血なんて柄じゃないけど……全力で」
月岡・悠(銀の守護者・d25088)が視線を向ける。橋の西側、天海勢力へ攻め入る。
●天海大僧正軍
前方に見えた人影。黒い袈裟を着た慈眼衆と年老いた僧兵3名。目標を視認する。
「行くよ、紅雫。楽しい戦いの始まりだ」
先陣を切って飛び込んだ柚琉が刀を抜き放つ。真紅の刃を向けながら殺意で敵を包み込んだ。
「何奴!? 安土城怪人の手のものか!」
襲撃に備えていた慈眼衆が構えた槍を突き出す。
「ちごど、薩摩の武士ぞ」
間合いを詰めた緒璃子は肩に担いだ野太刀を振り下ろす。槍を打ち落とし地面を貫かせる。そして勢いのまま近づくと柄で慈眼衆の顔を殴りつけた。
「ぐぉっ」
慈眼衆が顔を抑えて怯むと、代わりに僧兵達が錫杖を手に前に出る。
「老師を護るぞ!」
「おう!」
「燃え咲かれ、我が焔!」
緑のドレスを纏った花梨は手にしたギターを掻き鳴らす。すると音波を受けて僧兵の1人が吹き飛ばされた。
「ご老人、年を考えて行動してはどうかな?」
ポーはパイプでコツンと僧兵の腕を軽く叩く。すると魔力が流れ込み内部から爆発するように腕の骨を砕いた。更に追い討ちを掛けるように霊犬のプロキオンが口に咥えた刀で斬りつける。
「何をするか!」
「閃光ヒロインの力、見せて差し上げますわ!」
錫杖で殴り掛かる僧兵に、純白のコスチュームを纏ったクリスティーナはカウンターで拳を顔面に叩き込んだ。
「ぷぎっ」
潰れたような声を漏らして僧兵は地面を転がる。
「1人ずつ確実に仕留めさせてもらうよ」
悠が倒れた僧兵に向け光の剣を振るうと、刃が撃ち出されて背中を抉った。僧兵は衝撃で跳ね動かなくなった。
「我等の邪魔をするなら何者であろうと容赦はせぬ!」
鼻血を拭い、慈眼衆は槍を回転させて強引に突っ込んでくると、前衛の灼滅者が吹き飛ばされていく。更に竜巻の如く回転を速める槍。
「さぁて、敵となったからには、ぶっ潰す」
ガラリと人が変わったように光が笑う。氷の穂先を持つ槍で受け止めると、そのまま捻って槍を弾き、穂先を慈眼衆の腹に突き刺す。
「舐めるな!」
慈眼衆は腹筋に力を込め槍を固定する。そして自らの槍を叩き付けるように薙いだ。
「やらせる訳にはいかんのぅ」
王子がその軌道に光輪を投げると、槍がぶつかり僅かに時を稼ぐ。その間に霊犬のコナが割り込み攻撃を受けた。光は氷の穂先を切り放して後ろに下がる。
「天下分け目の合戦を、お主等如きに邪魔されてたまるか! やれぃ!」
慈眼衆の命で僧兵の2人が同時に雷を放つ。護ろうと飛び出したコナが閃光に貫かれ、動きを止めたところへ慈眼衆が槍で貫いた。胴を貫通されコナは消え去る。
「コナ!」
花梨は鋼糸を伸ばして僧兵を縛った。
「そう言わず、妾たちの相手もしてもらえんかのぅ」
王子は光輪を投げる。輪は分裂して敵の動き阻害するように宙に浮遊した。
「予定が詰まっているのでね、手早く終わらせてもらうよ、君」
ポーがその光輪を追うように敵に接近し、モコモコと巨大化した腕で僧兵を殴りつける。すると車にぶつかったように撥ね飛び動かなくなった。
「この仏敵どもが!」
残った最後の僧兵が錫杖で殴り掛かって来る。音も無く柚琉は背後に回り込み、刀を振り下ろす。背中を袈裟に斬られ、僧兵は前に崩れ落ちた。
「後は1人だけだね」
柚琉は振り向き、その紅い刃を慈眼衆に向けた。
「ふんっ拙僧一人おれば、お主等を倒すなど容易いことよ」
慈眼衆の体が膨れ上がり、頭部に角が生える。そして手に持った槍を肩に担いだ。
「往くぞ!」
全力で投げつけられた槍を緒璃子は野太刀で弾く。だがその間に距離を詰め、慈眼衆の拳が迫る。
「当身か!」
緒璃子は刀では間に合わぬと左肩を盾として受ける。重い一撃に鈍い音が体内に響き、体が宙に浮いて吹き飛ばされた。
「ふむ、どうやら骨が折れているようじゃの。すぐに応急手当をするのじゃ」
王子は緒璃子に向けて光輪を飛ばし、肩の折れた骨を繋いでいく。
「言うだけの事はありますね、ならこれでどうですか」
光は槍を振るう。すると失っていた穂先に氷の刃が生まれ撃ち出される。氷柱は慈眼衆の足を貫いた。
「今ここで盛大にドンパチやられては、多大な影響出ることは必至。ここで、貴方達を叩いて止めるしか、ありません……!」
そこへ接近する花梨は迎撃に繰り出される拳を避け、懐に入ると炎を纏った拳を先程槍が傷をつけた場所に打ち込んだ。
「ぐおぉっ」
燃え移った炎を叩き、消火しようとしているところへ、悠が近づいていた。
「悪いけど、その隙は逃さない!」
モーター音を響かせ、刃が駆動する剣を振り抜く。肩から胸に硬い皮膚を破り肉を削り取った。
「これはっ……多勢に無勢ということか。ならば……」
血を噴出しながら、慈眼衆は灼滅者の囲みを突破しようとビハインドの病葉に向かって駆け出す。
「逃げしませんわよ」
「退けぃ!」
体当たりで病葉を薙ぎ倒したところでクリスティーナが立ち塞がる。慈眼衆の拳を躱さずに体で受け止めた。
「これが環境先進県である滋賀県のエネルギーを取り込んだ一撃、エコロジカルダイナミックですわ!」
クリスティーナは組み付き相手の勢いを利用して持ち上げる。相手の体を逆さに持ち上げると自ら倒れ込み相手の頭を地面に垂直落下させる。
「ぐがっ……」
ブレーンバスターが決まり、慈眼衆は仰向けに倒れる。そこに緒璃子が跳び掛かり馬乗りになる。
「組討じゃ! そん首おいてけ!」
野太刀の刃を首に押し当て体重を乗せた。
「う、うおおおぉ!!」
首に食い込む刃に、慈眼衆は叫びながら渾身の力で押し返そうとする。だが緒璃子が頭突きを決め、力が弱ったところで押し切る。
「大僧正様……」
血が噴出し慈眼衆の首が地面に転がった。
●連戦
敵を倒し終えると、周囲もまた騒がしくなっていた。他の場所でも仲間達の戦闘が起きているのだろう。
「次の戦いの前に治療をしておくとするのじゃ」
王子が傷ついた者を治療しようとした時、風の刃が連続で飛来する。するとプロキオンと病葉がその身で風刃を防いだ。
「何やら声がすると思えば、貴様ら! ここで何をしておるか!」
風の飛んで来た方をみると、現われたのは慈眼衆2名、そして僧兵3名の部隊。先程戦った相手よりも戦力は上、しかもまだ無傷の部隊だった。
「もう次の敵が来たみたいだね」
一息吐く暇もなく柚琉は刀を構える。
「縛!」
僧兵が同時に腕に装備した縛霊手を展開させる。3重の結界が張られ灼滅者の動きを止めた。
「粉砕!」
そこへ2体の慈眼衆が駆け寄り、巨大化した腕で殴り掛かる。ポーと柚琉がその一撃を受けて吹き飛んだ。
「これはちと拙いの」
王子が断罪輪を振るい、仲間の足元に法陣を描く。すると傷が癒え結界の束縛が少し弱まった。
「く……ッ、流石に手強い。天海側の本気度が伺えるな、君」
起き上がったポーはパイプを吹き雷で僧兵を貫く。
「まずはこの厄介な結界を破りたいけど」
柚琉が僧兵に近づこうとすると、慈眼衆に行く手を阻まれた。そしてもう一人の慈眼衆が横から柚琉を殴りつける。咄嗟にオーラを纏うが、それでもハンマーで殴られたような衝撃に体を揺らされ膝をつく。
1人が護り1人が攻める。そうして灼滅者の攻撃を思い通りにさせないように動いていた。
「面倒なコンビですわね」
クリスティーナが炎をローキックを放ち慈眼衆の動きを僅かに止め、更にハイキックへと続ける。だがそれは当たる前に腕で防がれた。
「そいじゃあ、わいの首を貰うど」
同時にもう1人の慈眼衆の正面から大きく踏み込み、緒璃子が野太刀で斬りつける。必殺の一撃は腕で受け止められるが、刃は肉を裂き骨を断つ。ずるりと腕が地面に落ちた。
「憤!」
だが腕を失いながらも、怯む事なく慈眼衆は反対の腕で緒璃子の腹を打ち抜き宙に打ち上げる。
「破!」
同じくクリスティーナも拳を食らって地面を転がっていた。
「止めを刺させてもらうよ」
敵の意識が逸れている間に悠が駆け抜け、傷ついた僧兵に流星の如く飛び蹴りを放つ。胸に一撃を受け僧兵は吹き飛んで倒れた。
「今です、後ろの敵を狙いましょう」
「何人出てこようと全員ぶっ潰すだけだ」
花梨が僧兵の体に鋼糸を巻きつけ動きを封じる。そこへ光が風のように渦巻くオーラを纏って駆けると、拳を顎、鳩尾、こめかみと打ち込んで一瞬で意識を刈り取った。そして残る僧兵を狙おうとしたところへ人が飛んできた。思わず足と笑める。飛んで来たのはポーだった。その体にはくっきりと拳の痕が残っていた。
「我等が力」
「思い知れ」
慈眼衆が光を狙おうと左右から迫ると、病葉が身代わりとなって受け止め消えて往く。
「おお、病葉よ、消滅してしまうとは情けない……と言うやつかえ」
小さく呟き、王子は仲間の傷を癒す為に法陣を敷く。
「冗談の一つでも言わぬとやっておれぬのぅ」
その額からは汗が滲み出ていた。
「これは……どうにも旨くない状況になっているね、君」
ポーは傷ついた体を起こして周囲を見る。傷の深い仲間は自分を含めて3人。敵は僧兵1体に慈眼衆は2体とも健在だった。
「……届いた」
柚琉の足元から伸びる影は縫うように死角を辿り、僧兵の背後から無数の刃となって背中を貫いた。だがそこで柚琉は風の刃に襲われ吹き飛ばされる。
「僧兵どもがやられたか」
「だが我等が居る限り敗北は無い!」
慈眼衆の周囲にカマイタチが巻き起こる。
「ここまでじゃ! 三十六計逃げるに如かずと言う事もあろうなのじゃ」
オーラの塊を放って牽制する王子の言葉に、灼滅者が一斉に動き出す。傷を負ったものを護りながら琵琶湖と反対方向へ駆け出す。
「逃げるか!?」
「置き土産ですわ」
追いかけてくる慈眼衆に、クリスティーナは反転してタックルで押し倒し、足を抱えて持ち上げると回転して放り投げた。
「殿は武士の誉れ、ここは通さん!」
迫るもう1体の慈眼衆に、足を止めた緒璃子は痛む体を無視して野太刀を構える。放たれる拳を紙一重で避け、野太刀を振り抜く。だがそれは起き上がってきた慈眼衆に受け止められた。
「死ねぃ!」
拳が眼前に迫る。だが当たる直前、悠の放った光刃が腕に当たって軌道を変えた。
「援護する、下がるんだ!」
悠は続けて光刃を飛ばし敵の足を止める。
「……これ以上は進ませない、一歩だって!」
距離を取った花梨と光も音波と氷柱で遠距離から攻撃を加え始めた。
「足を止めをします!」
「氷漬けにしてあげますよ」
その間に緒璃子も後退を始める。
「小賢しい!」
慈眼衆も風の刃で反撃を行なう。迫る風の刃をプロキオンが受け止めて吹き飛んだ。
「逃さぬ!」
もう1体の片腕の慈眼衆が攻撃を受けながらも緒璃子に近づき、背後から渾身の力で拳を打ち込んだ。
「薩摩の武士ぞ追うなら、決死の覚悟を見せぇっ!」
緒璃子は肩に担ぐ野太刀を背中に回して拳を受け止め、そして斬り上げた。
「ぐあっ」
腕を中ほどまで切られ、慈眼衆は思わず身を引く。
「そこでじっとしてなよ」
柚琉の伸ばした影が刃の檻となって敵を包み込む。
「おのれぇ!」
怒りに任せて影の檻を砕くと、そこへ雷が奔り胸を撃ち抜いた。
「どんな時も冷静さを失ってはいかんよ、君」
パイプを揺らし撤退するポー。
「ゆるさん!」
駆け出そうとする慈眼衆をもう1体が肩を掴んだ。
「やめよ、琵琶湖より離れすぎた。これ以上追えば我等の使命から外れるぞ」
「くっ……分かった。戻ろう」
2体は逃げる灼滅者を一瞥し、身を翻して琵琶湖へと駆け戻った。
●戦いの結末
灼滅者達は、慈眼衆が戻ったのを確認すると漸く足を止める。
「どうやら逃げ切ったようじゃの」
王子が安堵の息を吐き、仲間の治療を始める。
「生き延びたか……」
「大丈夫か!?」
ふっと緒璃子は意識を失い崩れ落ちる。それを悠が抱き留めた。
「気を失っているだけのようだ」
息が確かなのを確認するとそっと寝かせる。
「想定よりも敵が強かったということかね……」
疲れ切ったようにポーは地面に座り込む。
「2戦は勝てると思いましたのに、甘かったようですわ」
クリスティーナがその横に座って、体に走る痛みに顔をしかめた。
「慈眼衆が2体同時に現われましたからね、運が悪かったんでしょう」
「1部隊は倒せたし、役目は果たしたかな」
1戦目と同じ戦力なら勝てていたのにと、光は首を横に振った。柚琉も骨が何本か折れているのか、痛む体に耐えながら何とか立っていた。
「何はともあれ、全員無事で良かったです」
傷を負いながらも、1人も欠ける事無く戻れた事を花梨は喜ぶ。
まだ戦いの音は遠く響いている。戦況がどうなっているのかは分からない。だが自分達で出来る事は終わった。後は仲間を信じて待つだけだった。
作者:天木一 |
重傷:ポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524) 黒田・柚琉(宵の剣客・d02224) 三島・緒璃子(稚隼・d03321) 閃光院・クリスティーナ(閃光淑女メイデンフラッシュ・d07122) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月1日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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