復活、チョコモッチア

    作者:聖山葵

    「うぐっ、あの時巨大化チョコさえ、チョコさえ食べられていたなら……」
     呻きつつ洩らしたのは、磨き抜かれた床の上に仰向けで横たわるレオタード姿の中年男性だった。
    「もちぃ」
     むろん、そんな変な格好をしたオッサンが、ごく普通の人であるはずがない。チョコレート色の肌をした男性は、ご当地怪人であった、既に討ち果たされた。
    「……大丈夫」
     そんなオッサンへ声をかけるまで僅かの間があったように感じたのは、きっと気のせいではないだろう。
    「もちぃ?」
    「私にはあなたが見えます。灼滅されて尚、残留思念が囚われているのですね」
     首をかしげるオッサンを断定した少女は『慈愛のコルネリウス』を名乗る。
    「傷つき嘆く者を私は見捨てたりはしません」
    「何ていい人もちぃ、チョコ餅食べるもちぃか?」
     コルネリアスの言葉に感銘でも受けたのか、ご当地怪人チョコモッチアはレオタードの中から空気を読まずチョコ餅を取り出して差し出すが、残留思念の持つ品もやはり残留思念の一部、受け取れようはずもない。
    「……プレスター・ジョン、プレスター・ジョン、聞こえますか? この哀れな変質者を貴方の国に匿って上げて下さい」
     だからだろう、コルネリウスが何もなかったかのようにスルーしたのは。見捨てはしないが、許容限界はあるとかきっとそんなことではないと思いたい。
     
    「慈愛のコルネリウスが、灼滅者に倒されたダークネスの残留思念に力を与えて、どこかに送ろうとしているようだな」
     集まった灼滅者達に座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は腕を組んだままそう明かした。
    「残留思念に力など無いはずだが、まぁ高位ダークネスならそれもありと言うことなのだろうな」
     どういうからくりかまでは解らんがねと肩をすくめると、更にはるひは言葉を続ける。
    「力を与えられた残留思念がすぐに事件を起こすと言った訳ではないようだが、だからといって放置する訳にもいかん」
     故に、慈愛のコルネリウスが残留思念に呼びかけを行った所に乱入して、彼女の作戦の妨害を行って欲しいと言うのが今回の依頼であった。
    「『慈愛のコルネリウス』は強力なシャドウであるが故に現実世界に出てくることは出来ない」
     現場に現れるコルネリウスは実体を持たない幻のようなものであり、戦闘力はないものの、コルネリウスが灼滅者に対して強い不信感を持っているらしく交渉も不可能だろうとはるひは言う。
    「まぁ、残留思念事態がこちらを敵視しているのだからそもそも交渉するだとかいった余裕も無いかも知れないがね」
     元々灼滅者に倒されたダークネスの残留思念なのだ。力を得れば復讐すべく襲ってくることだろう。
    「戦闘は避けられず、残留思念もコルネリウスの力を得ることでダークネスに匹敵する力を持つに至る」
     となれば、やることは限られる。戦って滅ぼすしかないのだ。

    「残留思念が力を与えられるのは、以前このチョコモッチアが倒されたショッピングモールの一角となる」
     コルネリウスの幻が現れるのは、人気の無くなった深夜。故に人払いの必要はない。
    「残留思念チョコモッチアのとる攻撃手段は以前と変わらない、ご当地ヒーローのサイキックに似た攻撃をしてくるところまではだが」
     今回は攻撃にチョコやらご当地品を巻き込んでしまうおそれがない為、ご当地ダイナミックに当たる技も遠慮無く使ってくるのだ。
    「元がそれ程強くない上に取り巻きが居なくなっているとはいえ、油断は禁物だ」
     何せ相手はレオタードの中から食べ物をとりだして他人に勧めるレベルの変態である。
    「理解に苦しむよ、相手が何を考えているか解らないダークネスとはいえね」
     いったい選考基準はどうなっているのやら、と続けてはるひは嘆息する。
    「つまるところ、常識人である私とは相容れないと言うことだろうがね」
     言うに事欠いてのたまわった変態エクスブレインは真顔を作ると「依頼の方宜しく頼むよ」と君達に頭を下げたのだった。
     
     


    参加者
    黒咬・昴(叢雲・d02294)
    赤威・緋世子(赤の拳・d03316)
    空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)
    山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)
    ケイネス・ウィンチェスター(狂愛のトルッファトーレ・d19154)
    ジェルトルーデ・カペッレッティ(サイバーブラストガード・d26659)

    ■リプレイ

    ●あいてをえらべよ
    「買ったはいいけど……依頼の時にしか使わねぇんだよなー、これ」
     視線をヘッドライトへ向けた空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)の呟きが深夜のショッピングモールに漏れた。
    「また遭遇することがあるかもって思っていましたが……不思議なご縁です」
    「残留思念が力を持つ……確かに不思議なこともあるものね。だけど、それが悪さをするのならすることはひとつよ」
     これから対峙するであろう相手はかって倒した相手だからか、戸惑いを隠せぬ山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)を横目で見ると黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)はその肩に手を置いて言った。
    「だから、変に気負ったりしちゃ駄目よ? あたしで良ければ力になってあげてもいいんだから」
    「あんずちゃんはいつも優しいですね」
    「そ、そんなことないわよ」
     深夜の沈黙を破ったどこか微笑まし気なやりとりではあるが、いつまでも続けている訳にはいかない。足音以外の音が絶え、やがて一同は辿り着く、山桜桃にとってはかってそのご当地怪人を灼滅したはずの場所へと。
    (「……居たね」)
    「……大丈夫」
     ぼんやりと佇む少女の幻、月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)が視認出来たのは、まだそれだけだったが、これからどうなるのかは、知っている。
    「よう、また会ったな。そんな変態ほっといて、こっちの話相手してくんね?」
     一点を見つめたまま佇む少女、コルネリウスへと空牙はけらけら笑いながら声をかけたが、少女からの反応は何もなく。
    (「モッチアの語尾の「もちぃ」って可愛くて俺は結構好きなんだけどさー」)
     やりとりを知っているからこそ、赤威・緋世子(赤の拳・d03316)も思った、ただし可愛い子に限るって奴だなと。
    「……は……力がっ。ホントにいい人もちぃな? チョコ餅食べないもちぃ?」
     力を経、何もなく見えた場所に現れ始めたレオタード姿なオッサンの声が聞こえだしたからだ。レオタードから取り出したチョコ餅を差し出すオッサンの声が。
    「これはまぁ何とも……」
     その変態行為は道化のように飄々とした言動をしていたはずの巴を絶句させ。
    (「いやあれはもう見捨ててもよかっただろ慈愛さん……」)
     徐々に透明度を失い実体化して行くご当地怪人とバトンタッチするように薄れだした少女に向けて空牙へ胸中で言葉を投げさせた。
    「……コルネリウスも何故こいつを復活させようとしたのかしら?」
     消えゆくコルネリウスが聞いていたとしてもおそらくは答えることがないであろう疑問を黒咬・昴(叢雲・d02294)は口の端に登らせ。
    (「コルネリウスはほんと、どんな基準で復活させてんだろーな?」)
     似通ったことを考えた灼滅者は、他にも一名。
    「遠慮するとは奥ゆかしいもちぃな……と、お前達は灼滅者! 何時の間にもちぃ」
     ただし、力を得た元残留思念なオッサンは灼滅者達の心境など知ったことかと言わんがばかりに空気を読まずマイペースだった。
    (「こんな変態なおっさんを選んだ奴の気が知れん……ホンマ、これでええんか選考基準」)
     頭を抱えるケイネス・ウィンチェスター(狂愛のトルッファトーレ・d19154)が視界に入っていないぐらいには。

    ●だめなものは
    「残留思念の、復活……ダメ。殺されたなら、灼滅されたなら、いちゃいけないんだ」
     途切れ途切れに呟いて、ジェルトルーデ・カペッレッティ(サイバーブラストガード・d26659)はぎゅっと拳を握りしめた、敵への怖さは憤りで塗りつぶし。
    「だから、今度こそ、ちゃんと、送って、あげる」
    「もちぃ?」
     相手が脱力感や嫌悪感を引き起こすような変態であっても、この時の空気は間違いなくシリアスだった。
    (「おっさんがもちぃ言うと、こう……すげぇぶん殴りたい」)
    (「コルネリウスもよう、こんなおっさんにまた力与えたろうと思ったよな。差し出されたチョコ餅受け取るの躊躇うなら近寄らんで放置しとけばええものの……」)
    「コルネリウスの気持ちも多少ながら推し量れるよ」
     たとえ、振り返ったチョコモッチアの声に緋世子が顔を引きつらせ、ケイネスもさっさと退散してしまったコルネリウスのことを思い渋い顔をさせ、巴には少しだけ消え去った少女のことを理解させたとしても。
    「ふん、憎き仇ながら良い度胸もちぃ。チョコ餅食べるもちぃか?」
     そんな変態がわざわざ敵にまでチョコ餅を振る舞おうとしたのは、コルネリウスにスルーされて寂しかったのかも知れない。
    「あ、僕はけっこうだよ。チョコは他の人に、どうぞ」
     自分に向けられた訳でもないのに巴が遠慮したのは、ジェルトルーデが背中に隠れてしまったからで。
    「そんな懐に入れてたチョコ餅なんぞ誰が喜んで貰うと思っとんの……アホちゃうん?」
    「レオタードから、食べ物だすの、ばっちい!」
     ケイネスの言葉に半分隠れつつしきりに頷いたジェルトルーデはばっちいのポーズをとる。
    「なっ」
    「暗いショッピングモール内で、レオタード姿の、中年おっさん。人間だったら通報間違いなしだな」
     心外だったか、硬直したチョコモッチアの図を眺めてぼそりと吐き捨てた緋世子は、その隙を見逃さない。
    「んじゃ、そういうことで……とーう!」
    「えもぢっ」
     雷を纏った拳によるアッパーカットで変態は宙に舞う。
    「う、ぐ……何するも」
     どしゃあっと背中から落ちたチョコモッチアが顔を上げ講義しようとするが、最後まで言い終えるよりも早く、その視界いっぱいにAzur tuskの切っ先が迫っていた。
    「そんじゃ……その存在ごと狩らせてもらうぜ? 変態野郎」
    「もぢばっ」
     直後に放たれた斬撃によって空牙の問いに答える暇もない。
    「せやけど、そのアホのままが望みやったら、アホのまま逝かせたるわ」
     片足に流星の煌めきを乗せたままケイネスがエアシューズで床を蹴ったのは、タイミングを見計らって居たからだろう。
    「いくで」
    「うん、始めようか」
     ケイネスの声へ仮面の道化師が号哭を手に呼応する。
    「うくっ、挟み撃ちもちぃ? いや……」
     跳び蹴りと捻りを加えた突きの挟み撃ちだけではない。二人と共にビハインドの金盞花が霊撃を放つべく踏み込んでいて――。
    「もぢゃぁぁぁっ」
     まさに、連係攻撃による袋叩きであった。山桜桃がかって対峙した時のように取り巻きが居ないのだから集中攻撃に遭うのは当然なのだが。
    「この前一緒にいたお仲間はどうしたんですか?」
    「うぐっ」
     山桜桃の問いかけはチョコモッチアにとっては強烈な皮肉だった。コルネリアスが力を与えた残留思念はチョコモッチアのモノだけなのだ。当然、取り巻きなんて最初から居る訳がない。
    「と、とにかく今の内ね」
     変態が言葉に詰まっている間にあんずはシールドを近くの味方にも与え守りを固めて行く。
    「べ、別に戦闘員なぞ居なくても充分もちっ、周りを気にせず戦えるもちぃからなっ」
    「気兼ねなく力が出せるのはそちらだけではありません。今回はゆすら達もチョコを守らなくていいんですから」
     痛いところを言葉で突かれながらも復活した変態の言に山桜桃は虚勢を張りつつ緋色のオーラを殲術道具に宿して身構える。
    「面白いもちぃ」
     その言葉を自身への挑戦ととったのか、チョコモッチアは不気味に笑い。
    「受けて立」
    「貫き、通すよ、ユピテル・ランペッジャメント!」
    「もぢばっ」
     台詞の途中でジェルトルーデに突かれてぶっ倒れた。
    「戦闘中に、よそ見、駄目!」
    「ぐぎぎ」
     よそ見は駄目のポーズをとるジェルトルーデの足下で、無念そうに変態は呻き。
    「も、もう容赦せんもちぃ! 目に物見せ」
    「ジョン、今なのです」
     起きあがろうとしたところを、情け無用とばかりに山桜桃が霊犬を嗾けつつ、自身も斬りかかる。
    「わうっ」
    「来ないならそれも良いわ汚物は焼却よ!」
    「え、あちょ、待もちゃぁぁぁ」
     復活してもご当地怪人はご当地怪人。攻撃を待ちかまえていた昴も加わり、戦いはフルボッコから始まったのだった。

    ●反撃の
    「良くもやってくれたもちぃなっ!」
    「さぁ、来なさい! そのかわり私の返しの一撃は熱いわよっ!」
     ただ、それでも一方的に攻撃されたまま終わらなかったのは、コルネリウスに力を授けられたからか、単なる意地か。
    「もっっちいぃぃぃああっ!」
     両腕を広げて飛びかかってくる変態を昴は己の炎を殲術道具に宿しつつ待ち受ける。
    「これで終わり?」
    「ふっ、そんな訳ないもちぃ」
     端から見たなら、それは抱擁。レオタード姿のオッサンご当地怪人は昴に抱きつく形のまま、状態を持ち上げ、一気に後ろへそらす。
    「喰らうもちぃ、チョコ餅ダイナミッも゛っ」
     吼えるような声が途中で途絶えたのは、振り下ろされたマテリアルロッドがオッサンの顔面を捉えたからだろう。
    「……いかなる変態行為だろうと関係ないわ、受け、つぶし、そして殺すだけだもの」
    「もぢっ」
     不完全な形とはいえ、叩き付けられた時に生じた爆発に一瞬呑まれた昴は、身を起こし、消え始めた爆発の中から抜け出つつ、床に横たわっていたモノを踏んだ。
    「も、もちぃ……こんな」
    「ヒーホゥ! 逃がさねぇよ変態!」
     呻きつつも転がって距離をとろうとすれば、空牙のガンナイフが火を噴き。
    「大丈夫?」
     一撃を貰った昴に声をかけつつあんずは分裂させた小光輪をその盾としつつ傷を癒し。
    「チョコを独り占めしようだなんて許せないわ。気持ちは全く分からないではないけど……」
    「文句のつけようもない変態だな」
     あんずの言葉を受けて頷いた緋世子が走り出す。
    「うりゃ! 踏んでやる!」
     つい今し方誰かに踏まれた変態目掛け追い打ちで跳び蹴ろうというのだ。
    「我々にそれはご褒美でしか――とでも言うと思っもぢゃあっ」
    「そうはいきませんよ」
     だが、変態は即座に反応し、身をかわそうとしたところで死角に回り込んだ巴から斬りつけられて仰け反った。
    「ひょっとして弱いです?」
     散発的に反撃はするが、チョコモッチアが思い切り押されている状況に山桜桃が呟くが、そもそもこのご当地怪人、復活前はコサック戦闘員という援護が必要なぐらいに弱かったのだ。そして、援護してくれる取り巻きはいない。
    「うぐ、ならば巨大化チョコで……」
    「させないよ! ぼくだって、チョコ、たべたい!」
     傷つき、怯みつつも後方を振り返ろうとする変態へそうはさせまいとたべたいのポーズをとったジェルトルーデが妨害へ向かおうとしたが、結果から言うと無駄であった。
    「しまった、チョコが無いもぢゃばべっ」
     バレンタインは過ぎているし、巨大化フードを作っていたラグナロク『ゴッドモンスター』は既に救出済みである。
    「残留思念になってる間に時の流れへ取り残されてた訳か、やっぱアホやわ」
     驚いて動きを止めたのが隙になって仲間から再びフルボッコにされる変態を馬鹿にしたような目で見つつ、ケイネスはクルセイドソードを非物質化させた。
    「ぜんぶ、削り砕いて、カドゥケウス・イミタッツィオーネ!」
    「や、やめもぢゃぁぁぁぁっ」
     目の前で行われる惨劇に加勢する為である。
    「知ってる? 再生怪人は無残に殺されるのが務めなのよ! 大人しく! この私に! 殺されちゃいなさい!」
    「だ、誰がそん、熱、熱もちゃぁぁ」
    「うまく焼けたようね、餅だけに!」
     これから毎日モッチア焼こうぜとでも言わんがばかりの炎を纏った攻撃に変態の悲鳴が聞こえる中。
    「……ジョンもゆくのです」
    「わうっ」
     攻撃側に霊犬が投入される。
    「わうっ、わうううっ」
    「ひいっ、止めるもちぃ! レオタードが、あ、アーッ」
    「ジョ、ジョン違うです、それは斬っちゃだめですよ? めっ!」
     何かがポロリしたとしたら、きっときっかけは身を守るものごと誰かが斬りつけたからだろう。
    「焼きチョコモッチアにでもなってろ!」
    「熱っ、も、もう充分焼けてるもちっ」
     若干混沌成分が含まれる中、変態は追い込まれ、燃やされて。
    「ぐうっ、ただではやられないもちぃ!」
    「金盞花っ」
     放たれたビームが周囲に設置されたライトの類に薄まった闇を斬り裂き、味方を庇おうと飛び出したビハインドを貫いたが、それが最後の反撃だった。
    「ぼくが、送ってあげる。安心して、やられてね」
     ジェルトルーデは拳にオーラを集中させ、床を蹴り。
    「―――おやすみ」
     死角から斬りかかりながら、巴は囁き。
    「変質者の末路は地獄だぁああ!!」
    「もぢぃぃぃぃぃ」
     複数の拳を叩き込まれ、急所を斬り裂かれた変態は、緋世子に投げつけられ叩き付けられた場所で大きく跳ねると輪郭を薄れさせ、やがて消滅したのだった。

    ●おつかれさまでした
    「あれと2回も戦ってる人、ほんとお疲れさんっていうか……ご愁傷様」
     けらけらといつものように笑いながらでなく空牙が山桜桃へいたわりの言葉をかけたのが、消え去ったオッサンの変質しゃっぷりを雄弁に語っていた。
    「虫唾が走るほどの変態さと気持ち悪さやったな……」
     げっそりとしたケイネスの表情もまた、原因は同じで、理由など言わずともがな。
    「みんな、消えちゃった」
     幸運の壺を抱えてジェルトルーデは別の理由から落胆した様子を見せるが、残留思念の持ち物ならばチョコだろうがチョコ餅だろうが、本体と一緒に消えてしまうのは仕方ないことだった。
    「……チョコ欲しいなら、帰りにコンビニでもよる?」
     あんずがフォローしようとしたのは、自身もお菓子が大好きであったからか。
    (「そう言えば、巨大化チョコってどんな味だったのかしら……?」)
     チョコから連想した疑問が頭を過ぎるが、答えを知る者はこの場に居なくて。
    「しっかし、あんなモンにまで力を与えるとかな。まぁ、それだけ戦闘員に困っとるのか……ただの気まぐれか……よう分らんやっちゃ」
    「さ、さっさと帰ろうぜ」
     ケイネスがぼやく中、戦場を照らす為に持ってきた置き型ランプを回収し終えた空牙に促される形で、一同は帰路へと着く。
    「何度蘇って来ても、きっとやっつけてあげます」
     山桜桃の呟きに返事はない。ただ深夜のショッピングモールはいつもの静けさを取り戻しながら去って行く灼滅者達を見送ったのだった。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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