大きいが故の困り事

    作者:飛翔優

    ●もたざる者には分からない
     重くてバランスが取りづらい、否応にも一目を引いてしまう、服や下着も似合うものが限られる。何よりスポーツするのに邪魔なのが困りもの……と、十六歳高校一年生の少女、佐竹芹那は悩んでいた。
     元来は活発なスポーツ少女。しかし、すくすくと育ってしまった膨らみが、全力で楽しむことを邪魔してくる。
     可愛い物も大好きで、可愛い格好にも惹かれていた。しかし、今の体型で可愛い格好をしても別の意味を持ってしまうと諦めていた。
     だからこそ、代わりに可愛い子を求めた憧れた。
     ……いつしか、可愛い子に些細な悪戯をするのが楽しく思えるようになってしまった。
    「……はぁ」
     いつからだろう? と溜息混じりに考える。
     いつからなんて関係ない、楽しいんだからいいだろうと、別の自分が囁きかけてくるような気がした。
     更には浮かんでくる。
     可愛い子の困り顔が、その反応を引き出せるだろう悪戯が。回数を重ねる度、より過激に……。
    「……」
     芹那は首を横に振り、瞳を瞑り考えていく。いつから、こんな事を考えるようになったのだろう……と。

    「淫魔のせい……かしらね? この状態は」
     カフェで紅茶とケーキを楽しんでいた海堂・月子(ディープブラッド・d06929)は、メモに記されている事象を読み取り微笑んだ。
     慣れた手つきでメモを纏めて仕舞った後、手を拭き再び紅茶とケーキに向き直っていく。
    「……そうね。伝えておきましょう。きっと、できることがあるはずだもの」
     どんな方向性かはわからないけれど……と、静かな息を吐き出した。
     十数分後、穏やかな時間を終えてエクスブレインの元へと向かっていく……。

    ●夕暮れ時の教室にて
    「それじゃ葉月さん、後は宜しくね」
    「はい、月子さんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
     倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は月子に頭を下げた後、灼滅者たちへと向き直った。
    「佐竹芹那さんという名前の十六歳、高校一年生の女の子が、闇堕ちして淫魔になろうとしている事件が発生しています」
     本来、闇堕ちしたならばダークネスとしての意識を持ち、人としての意識は掻き消える。しかし、芹那は闇堕ちしながらも人としての意識を保っており、ダークネスになりきっていない状態なのだ。
    「もしも芹那さんが灼滅者としての素養を持つのなら、救い出して来て下さい。しかし……」
     完全なダークネスと化してしまうようならば、そうなる前に灼滅を。
     続いて、葉月は芹那についての説明を開始した。
     佐竹芹那、十六歳の高校一年生女子。女子校に通っている。
     元来は可愛い物が大好きで、可愛い子に憧れている活発なスポーツ少女。スポーツならばなんでも果敢に挑戦する熱さと人当たりの良さから友人も多いが、とある悩みを抱えていた。
     それは、すくすくと育ってしまった二つの膨らみ。曰く、重くてバランスが取りづらくスポーツをするのに邪魔、服も下着も似合うものが限られるし、否応にひと目も引いてしまうから……と。
    「主なものはスポーツの邪魔になる、可愛い服を着ても別の意味を持ってしまうと思っている、の二点ですね」
     そうして悩んだ果て、闇を抱いた。
     闇に唆されるまま、可愛い子に些細な悪戯をして困らせる……と言った行動を取っている。なんでも、その困り顔がたまらなく良い……と思えるようになってしまったらしい。
    「もっとも、元々は人を意図して傷つけるなど考えもしない方。ですので、その事も悩んでいるのだと思います」
     当日のお昼休みも、芹那は女子校の裏庭で一人悩んでいる。
     接触はそのタイミングで、という事になるだろう。
    「制服は用意してありますので、侵入も容易かとは思います」
     男性陣も、女装して赴けばおそらくは大丈夫だろう。
     ともあれ、接触した後は説得を。
     そして、説得の成否に関わらず戦いとなる。
     芹那の淫魔としての姿は、可愛らしいドレスに身を包んでいてなお色香を漂わせている少女。力量は八人ならば倒せる程度で、妨害能力に秀でている。
     技は抱きついて相手の頭を胸に埋め心を奪う、胸を強調しながらの投げキッスを放ち一定範囲内の勢いを奪う、の二種。
    「以上で説明を終了します」
     地図や制服などを手渡し、続けていく。
    「誰にでも、本人にしか分からない悩みがある。今回もまた、そんな悩みが元なのではないかと、そう思います」
     しかし、と締めくくりへ移行する。
    「それでも、アドバイスを与える事はできるはずです。ですのでどうか、全力での救済を。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    偲咲・沙花(フィルレスドール・d00369)
    稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)
    色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)
    瀬戸内・上総(癒しと拠所を求める者・d24844)
    灰慈・バール(魂の在り方を問う彷徨いし者・d26901)
    荒吹・千鳥(風神・d29636)

    ■リプレイ

    ●望んだ魅力、己の資質
     活発な少女たちは校庭にてボールを追い、大人しき少女たちは室内にて読書に励む。流行を辿る少女たちは教室で雑談に興じている。そんな、とある女子校のお昼休み。樹木と花の香が心地よい裏庭には、膝を抱えてうつむく少女が一人。
     清潔に切り揃えられた髪や横合いから伺う事のできる膨らみから淫魔に闇堕ちしようとしている少女、佐竹芹那だと断定し、灼滅者たちは二名が目立たぬよう樹の下へと退避する中、六人は落ち着いた調子で歩み寄っていく。
     人が寄り付かぬよう力を用いながら、稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)が静かな声音で話しかけた。
    「……あら、こんにちは。こんなところで、一人なの?」
    「えっ……」
     肩をびくつかせた後、芹那は顔を上げていく。
     不安に揺れる瞳を覗き込みながら、晴香は笑顔で提案した。
    「袖擦り合うも多生の縁ってね。悩みがあるなら、話してみない?」

     同校生徒とは言え、初対面の相手。人数も多い。
     それでも頷いてくれたのは、闇が溢れそうだったからだろうか?
     芹那は語った。
     すくすくと成長した胸のこと、それに連なる悩み……スポーツをするのに邪魔、服も下着も似合うものが限られる、否応にも人目を引いてしまう……と。
     可愛いものに憧れているけれど、自分が着ても別の意味を持ってしまうと。だから……。
    「なんで、何でしょうね。いけないって分かっているのに……」
     可愛い子に、ついつい悪戯したくなってしまう。そんなこと望んでいないのに、困っている顔に惹かれている自分がいる。
     そう語り終えると共に、芹那は再び俯いた。裏庭には沈黙が訪れた。
     一陣の風が草木の香りを運んだ時、極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)が芹那の前へと歩み出た。
    「ねえねえ芹那、顔を上げてみて♪」
     視線を己へと集めた上で、にっこり笑顔で語りだす。
     制服姿でなお伺う事のできる旨はセクシーだけど、ハート付きのヘアゴムで髪はツインテール。シュシュを手首につけて努めて可愛く。胸のせいで太って見えないよう、腰にカーディガンを撒いてウエスト強調!
    「きっと、芹那にも似合う服可愛くてセクシーな服があるはずだよ! 似合う服、選ぶの手伝うよ♪」
     自分という実例を示した上で、真っ直ぐに芹那の瞳を見つめていく。
     芹那は力なく瞳を反らし、視線を落とした。
    「……ごめんなさい。ただ……」
    「人目引くやろうし、恥ずかしいかもしれんね。でも自信持って胸張ったら立派な魅力やと思うよ?」
     否定の言葉を紡ぐことが内容に、 荒吹・千鳥(風神・d29636)が言葉を挟んだ。
     大きすぎるのは困り者。自分もそこそこ在る方だけど、巫女服ばかりだから下着には困らない。
    「胸大きい人も他にいっぱい居るし、可愛い下着とかもちゃんとあるよ。一緒に買い物とか行ってみぃひん?」
     けれども知識としては知っているから、選択の場へと誘って行く。真っ直ぐに手を伸ばしていく。
     芹那は首を横に降る。弱々しく言葉を紡いでいく。
    「自信といっても、その……」
     俯く視線の先には、自身の胸。
     伏せがちな瞳には悲しげな色が浮かんでいる。
     あるいは、魅力と言われる事自体を忌避しているのかもしれない。けれど、決して悪いことではないのだからと、晴香は落ち着いた調子で語りかけていく。
    「私にも、そういう事があったから分かるわ」
    「……あなたにも?」
    「うん。私、プロレスやってるんだけど、この体型で飛んだり跳ねたりは結構大変だもの」
     身長はとっくに止まっているのに、未だに成長中な二つの膨らみ。悩みを経験したからこそ、あるはしているからこそ、かけることのできる言葉がある。
    「でも、プロレスラーは戦いを魅せるだけじゃなく、鍛え上げた肉体を魅せる事も仕事なの」
     それを見る人がどう思うかはその人次第。だが、少なくとも……。
    「私はどんな見られ方をされても恥ずかしくない、魅力のある肢体を作り上げた。そんな自負があるわ……胸も含めて、ね」
     ワンサイズ小さいが故により強調された胸を張りながら、締めくくる。
    「芹那ちゃんも、そんな風に、やってみない?」
    「……」
     芹那は顔を反らし、目を伏せた。二つ、三つと呼吸を刻んだ後、顔を上げて首を横に振っていく。
    「ごめんなさい。でも、私は……」
     コンプレックスが晴れる事はない。少なくとも、今はまだ自信を与えることなどできそうもない。だから……。

     ……それでもと、偲咲・沙花(フィルレスドール・d00369)は語りだす。
    「胸が大きいことにコンプレックスを感じる必要はない」
     胸の大きな悩み、自分にはちょっと親身になりきれないかもしれないけれど……体のコンプレックスは中々解消できない。だから無理に変えてしまうより、自分の体なのだから嫌ったりしないで向き合っていかないと、何より自分自身がしんどくなるだけだと思う。だから……。
    「スポーツを楽しむための下着もあるし、自分の体を上手く付き合っていく方法はいくらでもあるんだから、気に病んじゃいけないよ」
    「……」
     返答のない様子を前に、すかさず殺雨・音音(Love Beat!・d02611)が切り出した。
    「んー、そうだね♪ 例えばだけど……」
     指で作ったカメラを覗き込みながら、明るく弾んだ調子で提案する。
    「下着は胸大きい人用のスポーツブラをオススメ★」
     専門店もあるし、サイズを小さく魅せるブラもある。確かにデザインはある程度限定されてしまうけれど……。
    「大きな胸は魅力でもあるから否定せず付き合ってあげられたら、芹那ちゃんはもーっと素敵な女の子になれるよ♪ あ、それから……」
     カメラを解き瞳をまっすぐ見据える形にチェンジした。
    「服を選ぶのも難しいよねっ。つい太って見えがちになっちゃったり……」
     故に、いやらしくないようにしつつ可愛く着るなら、ベルトを使うなどしてウエストにくびれつける意識で行けば着こなし易い。後は舞が実演していたように、靴やアクセを選べば可愛くできる!
    「選ぶ楽しみ無限大~……どうかな?」
    「……」
     芹那は顔を上げ、改めて舞の姿を見た。
     若干表情を明るくしたような兆しはあったけれど、やはり、今はまだ胸を魅力として捉えるのは難しいらしい。
     だから色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)は口を開いた。
     胸がデカいのが厄介だと自覚している者として。
    「確かに、胸が大きいと複雑なのはわかります。ですが、あまり胸が目立たない可愛い服もあるはずです。絶対に」
    「……探した事もあったわ。でも……」
    「探しましょう、一緒に。一人ではダメでも二人なら、二人でダメでも三人なら……きっと、協力できるはずです」
    「……」
     一人で探し切れるほど、服の種類は少なくない。きっと、一緒に探せば見つかると、緋頼は力強く頷いた。
     恐る恐ると言った調子で、顔を上げていく芹那。
     光の宿り始めた瞳を見据え、緋頼は次の話題へと移行する。
    「それから可愛い子に悪戯する事に関してですが、それはダークネスの影響です」
    「……ダークネス?」
    「はい、ダークネスとは……」
     緋頼は仲間と共に説明する。
     ダークネスのこと、世界のこと、灼滅者のこと……己等の真の立場を。
     重ねて芹那のいたずらごころがダークネスのせいであると伝えた上で、締めくくる。
    「何より、芹那さんんが可愛くあろうとすれば、可愛くなれます。可愛いかどうかは外見も大事ですが、中身も大事ですから」
    「やりたい事は貫き通せ! それが君の新たな一歩となるんだからな!」
     不意に、野太い声が響いた。
     ビクリを体を跳ねさせた芹那が視線を送った先……樹木のしたで待機していた二人が、静かに歩み寄ってくる。
     片方、声を上げた者の名は灰慈・バール(魂の在り方を問う彷徨いし者・d26901)。主に千鳥の手ほどきを受け、髪を整え軽い化粧、スカート履くから無駄毛の処理……と、見た目だけは完璧な女子となっていた高一男子。
     もう一方もまた、主に音音の手ほどきを受けた中学男子、瀬戸内・上総(癒しと拠所を求める者・d24844)。
     近づく二人を前にして、芹那は驚き眼で一見ならば余り違いがあるように思えない女性陣と女装陣を見比べた。
     何か言葉を発しようとしたのか口を開きかけた時、体を大きく跳ねさせる。
     芹那の体が、闇に満ちた。
     淫魔への変貌を始めていく。
     上総はスレイヤーカードを取り出し、声を上げた。
    「始めましょう」
     音の遮断を行うとともに武蔵坂学園の制服へと変身し、男子としての姿を取り戻した。
     さなかには芹那も淫魔へと、可愛らしいドレスに身を包みながらも胸を強調し色香を漂わせている少女へと変貌し、灼滅者たちに悩ましげな視線を送っていく……。

    ●可愛さと妖艶さを持つ魔性
    「来い! 男は度胸、女は愛嬌。この俺、オカマは最強だぁ!!」
     仲間に整えてもらった女装はそのままに、バールはバベルブレイカーを持ち上げる。
     杭を地面へと突き立てて、大地を振動させ衝撃波を放っていく。
     揺らぐことなく佇む淫魔の懐へと、舞がスカートを翻しながら飛び込んだ。
    「いっくよー♪」
     炎熱した脚を横に構え、大胆不敵に回し蹴り。
     不可視の力に阻まれた直後、沙花が前へと跳躍した。
    「ナツはカバーと支援を頼むよ」
     霊犬のナツに指示を出しながら、足を伸ばし、胸元めがけてキックを放つ。
     やはり不可視の力に阻まれるも、維持に注意を割かせることには成功。すかさず緋頼が銀の糸を振るい、淫魔の右腕を縛り上げた。
    「可能な限り穏便? に倒しましょう」
    「しっかりと闇を払うために、やね」
     千鳥は空中に浮かべていた魔力を解き放ち、淫魔へと降り注がせていく。
     一撃、二撃なら対処できても三撃、四撃と重なると厳しいか。魔力の矢に打たれながら、淫魔は視線を巡らせた。
     右腕を拘束されたまま晴香のラリアットを掴み取り、優しく抱きついていく。
     すかさずナツが治療へと向かう中、音音は晴香の様子を観察。
    「……うん、今はまだ大丈夫みたいだねぇ~♪」
     治療を重ねなくても大丈夫だと判断し、晴香に押しのけられた淫魔の肩をさばきの光条にて貫いた!
     淫魔は一歩、二歩とよろめきながらも、表情を崩す事はない。ただただ淫靡な笑みを浮かべたまま、唇を軽く湿らせて……。

     灼滅者はおろか、サーヴァントすら治療役を担わずに挑んだこの戦い。全体でカバーしたことが功をなしたのか、あるいは芹那が抑えていてくれているのか……淫魔の鈍い動きも相成って、致命的な自体に陥ることなく推移していた。未だ不安の残る状態ではあるものの、ここまで来たのならば押しきれるとさらなる攻勢で挑んでいく!
     抱きつこうと近づいてきた淫魔を袖にして、バールは巨大な剣を掲げていく。
    「どうした? もう終わりか?」
     語りかけながら振り下ろし、不可視の力を切り裂き右肩へと食い込ませた。
     すかさず舞が跳躍し、スカートを翻しながらの飛び蹴りを放っていく。
     突き刺し、飛び退くとともに声を上げた。
    「この調子で、一気に決めちゃおう♪」
     させぬとでも言うのか、淫魔が身をかがめ口元に指を当てていく。
    「っ!」
     指を当てた姿勢のまま動けない。
     両腕を、両足を縛る様になっていた銀の糸に捉えられ。
     いつ動き出してもいいように、ナツは様子を伺うために待機した。
     沙花は脚を炎熱させながら、淫魔の側面へと回りこむ。
    「帰っておいで、芹那」
     体を近づけ耳元に囁きかけた後、腰を落として足ばらい。
     すっ転ぶ淫魔の頭上に飛び上がり、頂点にてバク宙。淫魔にボディプレス付きの蹴り……ムーンサルトプレスを叩き込んだ!
    「これで……」
    「終わらせます」
     晴香が飛び退いた刹那、上総が下からすくい上げん勢いで霊力を込めた拳でアッパーカット。
     うめき声を漏らすこともなく、淫魔は殴り飛ばされた。
     壁へと叩きつけられんとした刹那、バールが割り込み抱き止める。
    「悩みを共に考えてくれる仲間がここにいる! 諦めるんじゃない!」
     優しく、強く言葉を放てば、変化を持って答えてくれた。
     もう、闇に生きる魔性は存在しない。ただただ悩みを抱いていた少女が静かなほほ笑みを湛えたまま、バールの腕の中で眠っていて……。

    ●大事な大事な身体だから
     灼滅者たちが各々の治療を終えた頃、芹那は目覚めた。キョロキョロを周囲を見回していく芹那に対し、千鳥が優しく告げていく。
    「もう悪いもんは引っ込んだよ。これで安心や」
    「あ……はい、ありがとうございます。何だかスッキリした気分……本当に……」
     感謝の言葉を述べながら自らの状態を噛み締めていく芹那を、灼滅者たちは優しく見守った。
     顔を上げ、元来のものであろう朗らかな笑顔を見せてくれたから、上総は改めて言葉を伝えていく。
    「これは一意見としてですが……」
     それは、ひとりの男としての意見。
    「確かに、体型を重視する男がいることは事実だと思います。ですが、彼女たちが言っていたように、考え方ひとつ、捉え方ひとつで状況はいくらdめお変えられると思います」
     望む答えではなくとも、終わった後ではあるけれど、あるいはだからこそ、少しでも心が軽くなってくれればいい。
    「何かに打ち込んだり、頑張ってる女性の姿って、とても眩しくて素敵だなって……体型や容姿なんて二の次で惚れちゃいますね」
     力強い微笑んだなら、しっかりと頷き返してくれた。どことなく照れくさそうな笑みをも浮かべていた。
     そんな彼女の前に立ち、瞳を見据え、緋頼が改めて言葉を伝えていく。
    「先程は、あのようなことを言いましたが……実を言うと、出来れば、自分の身体、受け入れて欲しいです」
    「え……」
    「親に産んでもらって育てて貰った身体だから、愛情もらったから健康的なんだなと思うのです」
    「あ……」
     思い至っていなかったと言うべきか。驚いた様な表情を浮かべていく芹那に対し、締めくくる。
     可愛いは本人の性格や努力も大きい。これから可愛くなればいい……と。
     一呼吸の間を置いて、小さく、けれどもしっかりと頷き返してくれた。
     だから音音は素早く手を握り、笑顔で語りかけていく。
    「そうそう、せっかくのスタイルだし、否定しちゃうのは勿体無いんだよ~♪ それはそれとして、学園に来ない?」
    「え?」
    「同じ気持ちを抱える友達もできると思うの☆」
     武蔵坂学園への合流を。
     灼滅者としての戦いを。
     暫し悩む素振りを見せた後、芹那は風の訪れと共に顔を上げた。
    「はい、私で良ければ……お願いします。この力が、お役に立てるのなら……」
     それは、新たな未来への誓い。
     新たな道を歩む決意。
     抜けるような蒼が広がる秋空の下、こうして、新たな灼滅者は誕生した!

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年9月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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