日本一の芝をあなたに! 芝怪人サカシーバ!

    作者:飛翔優

    ●茨城県つくば市民なら芝を生やせ!
     茨城県つくば市。日本一の芝の産地として有名なこの場所で、活動を開始したご当地怪人が一体。
    「シーバシバシバシバシバ! つくば市民なら芝を生やすことは義務だシバ! 庭を全てシバで埋めてやるんだシバー!」
     名を、芝怪人サカシーバ。
     丸い顔に芝の髪、鮮やかな緑色のマントを持つ怪人は、庭のある住宅に侵入しては、花壇やら植木やらを全て取り去り芝に植え替えていく……という活動を行っていた。また、芝の手入れの方法を書いた本も置いていくらしい。
     全ては芝の魅力を伝えるため! ゆくゆくは世界征服を果たすため……!

    「……丹精込めて育てたお花がかわいそう、なの」
     学校の中庭でメモを眺めていた栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)は、芝怪人、と記された項目を前に目を細めた。
     手早くまとめた後に立ち上がり、校舎の方角に向かって歩き出す。
    「知らせてみるの。本当なら大変だから、ね」
     エクスブレインへと伝え、真実ならば解決策を導くために……。

    ●夕暮れ時の教室にて
    「それじゃ葉月さん、後をよろしくお願いなの」
    「はい、弥々子さんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
     弥々子に頭を下げた後、倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は灼滅者たちへと向き直った。
    「茨城県つくば市でご当地怪人、芝怪人サカシーバが活動しているのが発覚しました」
     本来、ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
    「もっとも、それでなおダークネスは強敵。色々とあるご当地怪人といえど、です。ですのでどうか、確実な行動をお願いします」
     続いて、地図を取り出しイバが危険つくば市の住宅地を指し示した。
    「皆さんな赴く当日のお昼前、サカシーバはこの住宅地に出現します」
     目的は、住宅に侵入しては庭の花壇や植木などを消し去り、芝を植え付けるため。それこそが芝の魅力を伝え、ゆくゆくは世界征服へ繋がると信じているのだ。
    「当日のターゲットはこの、広い庭がある邸宅ですね。ちょうど住民のおらず、サカシーバたちが庭に侵入して行動を開始しようとしたタイミングで接触する事ができるかと思います」
     故に、そこで戦いを挑めば良い。
     敵戦力はサカシーバの他、柴色のシャツを着ている配下が三名。
     サカシーバの姿は、丸い顔に芝の髪、鮮やかな緑色のマントを持つ怪人。
     力量は、配下がいる状態で灼滅者立ち八人と渡り合える程度に高く、攻撃役を担う。
     技は、衣服ごときりさく芝カッター! 腕にぶち当て攻撃の勢いを減ずる芝ボール! 瞬間的に芝を敷いた上で、鋭い角度から放ってくる芝スライディング!
     一方、配下たちの力量はさほどでもない。しかし、サカシーバを庇うように立ちまわる上、芝ディフェンスを披露し、回復しながら身を固めてくるだろう。
    「以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、続けていく。
    「芝、スポーツ施設や公園など様々な場所で用いられている、様々な用途のある植物。今では、学校で採用している場所もあるみたいですね」
     しかし……と締めくくりに移行した。
    「だからといって、このような方法で広めて良いとは思えません。どうか、全力での灼滅をお願いします。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)
    ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)
    フィリア・スローター(ゴシックアンドスローター・d10952)
    桜井・かごめ(つめたいよる・d12900)
    靱乃・蜜花(信濃の花・d14129)
    宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)
    佐門・芽瑠(空飛ぶ速射砲台・d22925)
    白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)

    ■リプレイ

    ●庭の平和を護るため
     麗らかな秋の陽射しが降り注ぐ、芝の生産量日本一を誇る茨城県つくば市。お昼前の静かな空気を感じながら歩く灼滅者たちは、芝怪人サカシーバのターゲットとなっている一軒家へとたどり着いた。
     庭で何やら話をしている気配を感じ、開いていた門をくぐっていく。
     作業前だったのか、今はまだ無事な様子を前にして、フィリア・スローター(ゴシックアンドスローター・d10952)はひとりごちた。
    「……花壇に芝だけとかシュール」
    「待ちなさいっ」
    「何奴シバー!?」
     ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)の言葉に呼応して、丸い顔に芝の髪、鮮やかな緑色のマントを持つ怪人サカシーバが、肩を怒らせながら振り向いてきた。
     すかさず、ヴィントミューレは言い放つ。
    「確かに芝はいいものだと思うわ。けど、やり方が問題なの。わからないのなら、その身をもって学ぶことね」
     さなる言葉に柴色のシャツを着ている三名の配下たちも向き直ってくる中、宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)が告げていく。
    「芝の魅力は他の植物やオブジェと組み合わせてこそ引き立つのです! その調和を乱して素敵なお庭を破壊するなんて邪悪な行為は許せませんのでさっさと灼滅されちゃって下さい!」
    「シバ!?」
    「第一、一方的かつ独善的な伝え方……ご近所迷惑ですよ」
     眼鏡をクイッと持ち上げながら、ゆっくりと武装を整えていく。
     大鎌の切っ先を、サカシーバへと向けていく。
     サカシーバは暫し拳を震わせた後、声を上げて笑い出した。
    「し……シーバシバシバシバシバ! 何を言うかと思えば邪魔者だシバね! 芝を愛するのは義務だシバ! そのこと、しっかりと刻み込んであげるんだシバー!!」
     こうして、宣戦布告は完了した。
     芝の名誉を、何よりも大切な庭を護るため。全力での戦いを始めよう。

    ●シバ軍団の防壁
    「さあ、芝刈りの時間ですね。芝は全部刈り取らないと……ふふふ」
     含み笑いを浮かべつつ、佐門・芽瑠(空飛ぶ速射砲台・d22925)はサカシーバ陣営をガトリングガンでなぎ払う。
     腕をクロスさせ弾丸を受け止めながら、サカシーバが抗議の声を張り上げてきた。
    「刈り取るなんて酷いシバ! 芝が何をしたっていう言うんだシバ!」
    「雑草があるなら刈る。ただ、それだけです。何かおかしな事でも?」
     表情を崩すことなく、芽瑠はさらりと告げていく。
     頭から煙を上げん勢いで、サカシーバは怒りだした。
     さなかにも配下たちは着々と最前線へ躍り出て、サカシーバを護るための陣を構築し始める。
     その一群に、七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)が蛇腹剣を振り回しながら突撃した。
    「昔から芝は狩られるものと決まっている。よく言うじゃないか。おばあさんは川に洗濯へ、お爺さんは山へ柴刈にって。ん? シバ違い? 気にするな。僕は気にしない」
     軽口を叩きながら斬風を巻き起こす塊となり、配下たちが持つ偽りの力とサカシーバを切り裂いた。
     反対側へと駆け抜けた時、サカシーバから怒りの反論が放たれる。
    「こっちは刈っちゃいけない芝シバ! だから駆らないで欲しいんだシバ!」
    「けどさ、伸び放題の芝って変だろう!」
    「限度を超えてるシーバ!!」
     戦いを忘れた……というわけではないだろうが、虎鉄たちの発言によってサカシーバは口論に気を取られている様子。
     今のうちに……とフィリアは放つ凍てつく炎を。
     シャツを凍りつかせていく配下めがけ、靱乃・蜜花(信濃の花・d14129)は螺旋状の回転を加えた槍を突き出した!
    「まずは配下を片付けるのよ」
    「芝なんか燃えちゃえばいいのよ」
     よろめいた配下に、白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)が炎のハイキックを叩き込む。
     芝のシャツを与えし配下が炎上したことで気を取り戻したのだろう、サカシーバは頭に手をやった。
    「好き勝手はさせないシバ! 行くぞ、シバ」
    「隙あり!」
     何かが放たれようとした刹那、桜井・かごめ(つめたいよる・d12900)の熱き右足がサカシーバの胸元へと突き刺さる。
     炎上していくさまを前にして、かごめは小首を傾げて訪ねてみた。
    「……どう? 芝だけによく燃えてるんじゃない?」
    「燃えない、燃やさせる訳にはいかないシバ!」
     サカシーバの意気込みとは対照的に、体は炎を纏ったまま。もっとも、芝の髪などが燃えていないのは持っている力の強さゆえだろうか。
     肩をすくめながら、かごめは一歩分だけ距離を取る。芝の髪をカッター上にすることに寄って放たれた芝カッターを受け止めながら、さらなる言葉を告げていく。
    「芝の魅力は否定しないけどさ、芝ってのは花なり樹木なりがあってこそ緑が映える訳で。何より、芝ばっかりで良いのはゴルフ場くらいでしょーが」
    「そんなことない芝! 芝は芝だけで魅力的シバ!」
     口論は平行線。
     きっと、考えを変えさせることなどできはしない。
     だから、刃を重ねていく。これ以上の暴走を許さぬために……。

     配下たちが攻撃に回ることはない。ただただ傷を癒やしながら守りの力を得て、サカシーバや傷ついた仲間たちを護るのみ。
     守りの力を砕く、あるいはぶち抜きながら、灼滅者たちは攻めていた。回復役も攻撃に回り、治療に不安を残しながらも概ね押している状況を作り出すことに成功していた。
     動きが止まれば守りも弱まる。
     幽香は結界を起動して、サカシーバと配下たちを閉じ込めた。
    「あんまり花壇を荒らしちゃ駄目よ」
    「荒らすなんて人聞き悪いシバ! あるべき形に戻しているだけだシバ!」
     変わることのない反論に嘆息しながら、幽香は続けて冷たき炎を生成。敵陣へと送り込んでいく。
    「冷え切って貰うわ」
     冷気に抱かれ、先頭に位置していた男が昏倒した。
     即座に虎鉄は向きを変え、鼻歌交じりに剣を振り回しながら吶喊する!
    「どんどん狩って行こうぜぃ!」
     サカシーバだけは守りぬくという心意気か、配下たちが進路を邪魔してきた。
     もろとも切り抜けると虎鉄が加速していく中、ヴィントミューレは右側の配下に向かったビームを放つ。
    「援護するわよ」
    「……そこらじゅうに見境なく生やしていては雑草と変わらない」
     フィリアもまた静かな毒を吐きながら、リング状のエネルギーを敵陣全体へと掃射した。
     斬撃、ビーム、エネルギー……様々な力に押され仰け反る配下たち。
     体勢を整える暇も与えずに、庵が炎を吹き上がらせた。
    「……流石わたしですね」
     眼鏡をクイッとやった時、右側の配下が仮初めの力を焼きつくされて昏倒。
     拳を震わせながら、サカシーバは柴色のボールを作り出した。
    「まだまだシバ! これでも食らうシバ! シバボォォォォォォル!!」
     足元へと落とし、庵の腕に向かって全力シュート!
     一方、芽瑠は淡々と左手の機械弓から魔力で作り出した矢を放つ。
     限度を越えたか倒れていく配下を横目に、サカシーバへと向き直った。
    「邪魔な雑草は狩り終わりました。後はあなただけです」
    「シバ……だが、まだ負けてないシバ!」
     配下を倒され、強い気合を入れていくサカシーバ。事実、配下たちに守られていたからかさほど大きなキズは負っていない。
     ならばこれからが本番と、蜜花が意識を切り替えるかのような形で言い放つ!
    「長野のおじーちゃんが言っていたのね。ご当地を愛する心は大切。でも、ご当地への愛を理由にご当地を貶める行為はぜったいにダメだって」
     実際、サカシーバの行動は、庭を素敵にろどってくれる素敵アイテムを嫌わせてしまう行為だろう。
    「ヒーローには熱いこころと広い視野、たゆまぬ努力が必要だって、芝生への愛を理由に、安易に迷惑行為に走るのはもうそれは愛じゃないのよ、ご当地への迷惑千万なのね!」
     実家のお庭にあるきれいな緑の絨毯を、秋から冬の色あせた趣ある芝生を、一年を通してハートをほっこりさせてくれる芝生を思い浮かべながら、杖を握る腕に力を込めた。
     対するサカシーバは、全く懲りた様子がない。
    「シーバシバシバシバ! そんなことないシバ! この集団こそがシバを広めるために最適な手段なんだシバ!」
     反論を前に、かごめが呆れた調子で語りかけた
    「……北風と太陽って言葉があってさ」
    「北風と太陽? それはなんだシバ?」
    「ああいや、つまり……こんな活動しても芝の良さは認知されないと思うんだよね」
     きっと伝わらない。そんな予感を感じながら、反論される前に魔力の矢を放っていく。
     サカシーバは受け止めながらも新たなボールを作り出し、思いっきり蹴り飛ばした。

    ●芝生は素晴らしいものだけど
     芝の形、質感を持つ力を地面に敷き、サカシーバ放つスライディングを。
     かごめが垂直ジャンプで避け踏みつけていく様子を眺めつつ、幽香はサカシーバの下へ歩み寄った。
    「さぁ丁寧に芝刈りしてあげるわよ」
     立ち上がらんとするサカシーバの脇腹に、鋭き斬撃を刻んでいく。
     よろめきながらも、サカシーバは声を上げた。
    「刈り取って良い芝なんてないシバ! 雑草なんて草はないシバっ!?」
     半ばにて、芽瑠が魔力で作り上げた仮想誘導矢を発射。振り向くサカシーバに淡々とした声音で語りかけていく。
    「雑草などと言う草は無い? 感動的な台詞ですねぇ、素敵です。でも残念、あなたは私にとって雑草なんですよ」
    「せめて、迷惑にならないように植えるのならば良かったですのに」
     叶わぬ願い、ただただ酌滅するだけと、庵が肥大化した上で上方から殴りかかった。
     クロスした上で受け止めてきたサカシーバを、力任せに抑えこんでいく。
     それでなお新たな芝のオーラを施行としたサカシーバの懐に、ヴィントミューレは飛び込んだ。
     間髪入れずに、下から上へとハンマーを振るいサカシーバを遥かな空へと打ち上げる!
    「今よ!」
    「まったく。芝を増やすなら路面電車の線路とか、ビルの屋上に許可とってだとか、もっと役に立つ増やし方をすればいいのに。森と水の都、熊本を見習え」
     虎鉄が肩をすくめながら、螺旋状の回転を幾重にも重ねた槍を突き出した。
     後方へと押されたサカシーバの中心に、かごめはオーラを撃ち込んで行く。
    「ビンゴ!」
    「ご当地はご当地を真に愛する者に力をかしてくれるのよ! つくばの芝生さんの怒りを込めた一発をお見舞いするのよ!」
    「シバ!?」
     蜜花は落下中のサカシーバを掴み取り、ヴィントミューレの佇む方角へと向きを変えた。
    「ご当地パワー満タン、つくばダイナミックなのよ!」
     勢い任せに放り投げたなら、ヴィントミューレが天を指し示す。
    「あなたたちが世界征服を目指すにふさわしいか、今こそ裁いてあげるわ。受けなさい、これがあなたたちに対する洗礼の光よっ」
     さばきの光条を降り注がせ、サカシーバを焼ききった。
    「……もっとも、裁き以前の問題だけど」
     ヴィントミューレが小さくつぶやく中、地面へと落下したサカシーバ。ふらふらと立ち上がりながら、空を仰ぎ言葉を放つ。
    「シーバシバシバシバ……それでも、芝は素晴らしいシバ。機会があれば、楽しんで……」
     仰向けに倒れ、地面に激突すると共に爆散。
     後に残されしは……。
    「……」
     フィリアが消え行く芝生に飛び込んで、草の匂いを柔らかな地面の感触を堪能する。
     完全なる消滅を迎えた頃には、空を眺め、静かな調子で呟いた。
    「……やっぱり花の方が好きだな」

     ……こうして、誤った道を邁進し続けていた悪は滅びた。
     しかし、まだまだ世界の闇は多い。灼滅者たちの戦いは続いていく。
     負けるな灼滅者、恐れるな灼滅者! 世界の平和を護るため、ご当地の名誉を護るため、戦い続けるのだ!

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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