黄色いカッパはバナナがお好き?

    ●噂
    「あの川にカッパがいるんだって。お姉ちゃんが言ってた」
    「赤いカッパでしょ? 姉貴が言ってたよ?」
    「前は赤いカッパがいるって噂もあったんだけど、最近は黄色いカッパの噂が広まってるみたい。お姉ちゃんが言ってた」
    「……黄色?」
    「うん。黄色いカッパ。お姉ちゃんが言ってた」
    「黄色いカッパ……ね。緑のはキュウリが好きで、赤いのはトマト好きなんでしょ? 黄色は……黄色のピーマンとか?」
    「バナナ」
    「……バナナ?」
    「うん。バナナ。お姉ちゃんが言ってた」
    「野菜ですらないんだね」
    「めっちゃバナナ好きらしいよ。サルもゴリラもびっくりなくらいにバナナが好きなんだって。お姉ちゃんが言ってた」
    「バナナが好きなカッパか……そう言えば、姉貴が言ってたんだけどさ」
    「うん?」
    「赤いカッパは心臓が大好物だって」
    「そうらしいね」
    「黄色いカッパも、心臓とか食べるのかな?」
    「食べないよ」
    「食べないの?」
    「黄色いカッパはね、バナナか、バナナを使ったものか、バナナ味のものしか食べないんだって。お姉ちゃんが言ってた」
    「偏食なんだ」
    「うん。サルもゴリラもびっくりだね」
    「赤いカッパは人を襲うみたいだけど、黄色いカッパは?」
    「めっちゃ襲うらしいよ。お姉ちゃんが言ってた」
    「めっちゃ襲うの?」
    「うん。めっちゃ襲う。人を見かけたら、襲わずにはいられない衝動に駆られるんだって。お姉ちゃんが言ってた」
    「……なんであの川、そんな物騒なカッパが棲んでるんだろ……」

    「人を襲うカッパ……か」
     噂を耳にして、桜井・オメガ(オメガ様・d28019)が呟いた。
    「都市伝説が出現したら大変だな」
     オメガは武蔵坂学園へと戻り、エクスブレインに話してみることにした。

    ●教室にて
    「みんな! 黄色いカッパを倒してきて欲しいんだかっぱ!」
     奇妙な語尾で言ったのは、カッパ(緑色)の着ぐるみを着た少女──野々宮・迷宵(中学生エクスブレイン・dn0203)だ。着ぐるみの顔の部分はくり抜かれており、そこから迷宵の顔が出ている。
    「オメガちゃんのおかげで、黄色いカッパの出現を察知できたんだかっぱ! 黄色いカッパはここ──赤いカッパが出現した場所に現れるんだかっぱ!」
     緑のカッパ……じゃなくて迷宵が、黒板に張られた地図を指差した。とある田舎町の、とある川だ。かつて、オメガたちが赤いカッパと戦った場所である。
    「黄色いカッパはバナナが大好きだかっぱ!」
     バナナの他にも、バナナを使った食べ物(バナナパフェとか)やバナナ味のもの(バナナは使っていないけどバナナっぽい味がする餡が入ったモナカや無果汁だけどバナナっぽい味がするサイダーなど)を好む。
     黄色いカッパは、それ以外は口にしないというバナナ食主義者(?)である。
     黄色いカッパの好物を川辺に置いておけば、黄色いカッパが川から出てくるはず。
     黄色いカッパが陸に上がったところで戦闘だ。相手は好戦的な都市伝説なので、川に逃げたりはしないだろう。
     一般人でも近付ける場所なので、一般人を戦闘に巻き込まないように注意して欲しい。
    「黄色いカッパは、赤いカッパよりもカッパらしい戦い方をするんだかっぱ!」
     カッパらしい戦い方とはカッパらしい戦い方だ。
     具体的には、殴ったりひっかいたり蹴ったり甲羅でタックルしたり頭の皿から光を放ったりする。実にカッパらしい戦い方だ。
     ちなみに、赤いカッパは剣で攻撃してきた。
     なお、赤いカッパもそうだったのだが、頭の皿は弱点というわけではない。
    「みんな! 黄色いカッパを倒してきてくれだかっぱ! 川に行くときには黄色いカッパの好物を忘れずに、だかっぱ!」
     サイキックの活性化や装備品の確認も忘れずに、だかっ……忘れずに。


    参加者
    城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)
    華槻・灯倭(月夜見・d06983)
    遠野・潮(悪喰・d10447)
    真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)
    桜井・オメガ(オメガ様・d28019)
    戸地田・愛子(目隠しマナコ・d28461)
    エリス・バートランド(高校生魔法使い・d29765)
    ラスト・ナンバー(エクスマキナ・d30100)

    ■リプレイ

    ●バナナ
     バナナはバショウ科の植物である。原産地は東南アジアの熱帯地域。日本では、ジャイアント・キャベンディッシュと呼ばれるものがよく食べられている。
     実は、バナナの歴史はかなり古い。その起源は、紀元前5000年とも紀元前1万年とも言われている。
    「……バナナは摂取が容易で消化がよく栄養素も豊富。カッパが好むのも当然。賢い選択といえる」
     そう言いながら、ラスト・ナンバー(エクスマキナ・d30100)は川辺にバナナタワーを建設中。
     ライドキャリバーの背中(?)には大量のバナナが搭載されているが、これを全部積むつもりなのだろうか。
    「前は赤いカッパだったけど、今度は黄色いカッパか! 緑色以外のカッパもいっぱいいるんだな!」
     かつて、桜井・オメガ(オメガ様・d28019)は赤いカッパと戦った。この川辺で。
    「わたしは食べた事ないけど、きっと美味しいはずだぞ!」
     と、オメガがバナナパイを川辺に置く。
    「クンクンクン……」
     戸地田・愛子(目隠しマナコ・d28461)は、カルマをサーチングするデモノイドなノーズで敵の気配を察知しようと試みている。愛子のそばでは、霊犬のドリィも鼻をひくひくさせていた。
     今のところ、周囲に「業」の匂いは感じない。バナナの匂いはするのだが。
    「……戦闘中にお腹が鳴らない様に、気をつけようっと」
     城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)は焼いたバナナを用意していた。香ばしい匂いがする。
     小学6年生の予記は育ち盛り。当然のように食べ盛りでもある。名残惜しそうにバナナを置いた。くきゅーと音がした。
     ナノナノの有嬉が音をした方向を見ると、予記の赤い顔が見えた。
    「バナナが大好きな黄色いカッパ……。それだけ聞くと何か可愛い気がするが、現実はどうなんだろうか……? 好物に飛びつきたいって気持ちは良く解るが」
     大食いな遠野・潮(悪喰・d10447)がそう言うと、予記は「飛びつかないよっ!?」と裏返った声で言った。
     潮はお腹の虫の鳴き声を聞いていなかったのだが……。予記は、顔を隠すようにキャスケット帽を目深に被った。
    「よくは知らないけれど、カッパって緑だと思っていたよ」
     箒にまたがったエリス・バートランド(高校生魔法使い・d29765)は、空中で言った後に地上へと降り立った。
     確かに、カッパは緑というのが一般的な認識だろう。なぜか、この川のカッパは赤いのだったり黄色いのだったりするのだが。
    「普通の河童さんが緑で、前に現れたのが赤で、今回は黄色の河童さん。もしかしたら、川の中の信号機をしている人たちかも知れませんね」
     真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)は「バナナを釣り竿に付けて川に投げたら、河童が釣れないかな?」と釣り糸を垂らしている。
    「黄色い河童は珍しいよねぇ。私も、緑の河童しかお話で聞いたことないなぁ。身体の色って、好物を表すのかなぁ……?」
     殺界形成で人払いを済ませた華槻・灯倭(月夜見・d06983)は、そう言って首を傾げていた。霊犬の一惺も、灯倭の真似をするように首を傾げる。
    「バナナかぁ……うん、バナナ美味しいもんね、栄養あるもんね」
     ちなみに、赤いカッパは「トマトを食し、人間の心臓を喰らい、私は進化したのだ」とか「私は新たなるカッパ──言わば、ニュータイプ!」とか言っていた。
     黄色いカッパも進化したカッパなのだろうか……?
     結局、カッパは釣れなかった。濡れたバナナはタワーの一部となった。
     出来上がりに満足したように、ラストは「うん、うん。我ながらいい出来だ」とうなずいていた。
    「随分立派なタワーが建設されてるけど……コイツを素早く食べるのに、どんな食い方すんだか……」
     潮の疑問は、黄色いカッパの出現によって解消されるだろう。
     バナナの匂い(と言うか気配?)を感じて、黄色いカッパが現れるはずだ。灼滅者たちが黄色いカッパの出現を待つ。
    「! 来るわ!」
     愛子が「業」の匂いを嗅ぎ取った。DSKノーズの効果範囲は半径30メートル──これが黄色いカッパの「業」の匂いならば、敵は近くにいるはずだ。
     おそらく、敵は水中──川の中にいる。
     灼滅者たちが身構えると、川から黄色い何かが──黄色いカッパが飛び出した。黄色いカッパはガタイのいいカッパだった。プロレスラーのような体格だ。
     愛子が匂いを感じてから、わずかな時間しか経っていない。30メートルという距離であれば、数秒で泳ぎ切れるということか。
     黄色いカッパがバナナパイに突っ込む──かに見えたが、バナナパイが消えた。瞬時に吸い込んだのだ。いつの間にか、焼きバナナも消えていた。
     残るのはバナナタワーのみ。黄色いカッパの視線がバナナタワーを捉えた。
     その瞬間──バナナが黄色いカッパの口の中へと飛び込んでいく。バナナが宙を舞い、口の中へと入っていったのだ。とてつもない吸引力だ。
    「……バナナタワーが……」
     その呟きは誰のものだったのか。わずか2秒でバナナタワーが消滅した。
     すると、黄色いカッパの視線が灼滅者たちへと移った。バナナを手に、オメガが餌付けを試みる。が……やはり、バナナが消えた。
    「喰った喰った。さーて、腹ごなしといくか。おい、そこの人間ども。食後の運動に付き合えや」
    「この前、テレビで怪獣映画を見たよ。キミも回転して空を飛ぶのかな?」
     サウンドシャッターを展開しながら、エリスが言った。
    「オレはカメじゃねぇんだぜ? ボウズ」
    「ボ……ボウズ……?」
    「地上には男の娘ってのがいる──って話を聞いたことはあったが、本当にいるとは思わなかったぜ」
    「ちょ、ちょっと待ちたまえ。このボクが男の娘……だって?」
    「違うのか? 女みてぇな男を、男の娘って言うんだろ?」
    「ボクは女の子だよっ!」
    「女……?」
     黄色いカッパの視線がエリスの胸に。ちっちゃい。
     次はラストと灯倭の胸に。大きい。
     今度は佳奈美とオメガと愛子に。小柄。
     予記と潮は……男。
     もっかいエリスに。身長はラストと灯倭の中間くらいだけど2人とは比べ物にならないくらいに胸がちっちゃい。
    「……人間って哺乳類だったよな……」
    「バナナを食べられない体にしてあげるよ!?」
    「カッ! やってみやがれ!」
     エリス(怒ってるんだか泣いてるんだかわからない顔をしている)がスレイヤーカードを手にする。予記は帽子を被り直した。
     灼滅者たちが、それぞれの武器を手に取った。

    ●かつてはみんな青二才
    「黄色い河童って……想像してた通りだったけど、なんか、ちょっと色が目に眩しいね……やっぱり、緑の方が見やすくて良いような気がする」
     水月穿を手に、灯倭が敵へと接近する。鈴の音のような響きとともに、白銀の杭が敵へと打ち出された。灯倭に続いて、一惺は刀を振るう。
    「ボクも頑張ってみるよ」
     足元から伸びる影を刃とし、予記が黄色いカッパに斬りかかった。有嬉はしゃぼん玉を飛ばす。
    「カッ! この程度かよ、人間ども! サイクロン!」
     黄色いカッパの足元で風が渦巻く。
    「くらいな! サイクロンカッパキック!」
     黄色いカッパが、風を纏った回し蹴りを放つ。
     その時──ラストが動いていた。仲間を守るために。強烈な蹴りが、ラストを襲った。
    「オレのキックはサイクロンだぜ」
     ※「オレのキックは最強だぜ」みたいな意味。
    「…………異常なし。戦闘続行可能」
    「回復するわね」
     愛子が光の輪をラストに向けて飛ばす。ドリィも浄霊眼でラストを癒す。
     愛子は技名を叫ばない。曰く「大人のレディは、そんなはしたないことはしないのよっ」とのこと。愛子は小4である。背伸びをしたいお年頃かも。
    「わたしも負けないぞ!」
     オメガの足元では炎が燃え盛る。
    「オメガ様さんじょー!! くらえ! フレイムオメガキーック!!」
     オメガは技名を叫んだ。
    「カッ……フレイムだぜ」
     ※「敵ながらあっぱれだぜ」みたいな意味。
    「反撃する」
     ラストが手にした剣が、白い輝き──破邪の光を帯びる。
    「先程のお返しだ」
     その剣でラストが斬りかかり、ライドキャリバーは銃弾を放った。
    「敵とは言え、倒すのは少し抵抗がありますね……」
     佳奈美が構えるのは友愛を歌う左手のレイピア──その細身の剣に、佳奈美の体から噴き出した炎が宿った。
    「でも、戦わなければならないのですね……少し悲しいです」
    「悲しい? ここは今、戦場なんだぜ?」
    「……河童さん……」
     佳奈美は剣を突き出し、炎は黄色いカッパへ。剣を振った時に聞こえたのは、友愛の音か悲しみの音か。
    「多少なりとも料理の心得がある人間の一人として、お前に聞いておきたいことがある」
     潮が言うと、黄色いカッパが視線を移す。
    「何だよ?」
    「お前にとってバナナとは?」
    「カッ! そいつを訊くか! いいぜ、答えてやる! バナナとは──」
    「バナナとは?」
    「オレそのものだ!」
    「お前そのもの!?」
    「バナナは緑から黄色へと変わる。オレもそうだった……」
    「……お前、最初は緑色だったのか」
     青い空を見ながら、黄色いカッパは過去の自分を思い出しているようだ。赤いカッパと同じように、黄色いカッパもバナナを食べて進化(?)したのだろうか。
    「カッパの革新か……。カッ! オレの昔話は終わりだ! 来いよ!」
    「……ああ。行くぜ!」
     黒の斬撃が黄色いカッパを襲った。
     黄色いカッパは唾を吐き棄てた後、エリスへと目を遣った。エリスは、バベルの鎖を瞳に集束させていた。これにより、エリスの予測力が向上している。
    「ボクに何か用かい?」
    「お前……オレを血みどろの血祭りに上げて赤いカッパにするんじゃなかったのかよ?」
    「そこまで物騒なことは言ってないよ!?」

    ●戦闘とその終焉と
    「人間どもはこう言うらしいな──『攻撃こそが最大の防御だ』ってなぁ!」
     黄色いカッパが助走をつける。
    「戦いはいつまで続くかって!? 敵を全て倒すまでだ! 守ってても戦いには勝てねぇんだよ!」
     跳躍した黄色いカッパは、空中で体をひねって背中──甲羅で体当たりをしかける。黄色いカッパにとっては、甲羅は防具ではなく武器のようだ。
     黄色いカッパの攻撃が、仲間を庇うために飛び出したドリィを襲った。
    「ドリィ!」
     愛子が叫んだ。光の輪で、ドリィの体力を回復させる。
     ドリィが立ち上がって「大丈夫」と言うように鳴くと、愛子は安堵したような表情に。ドリィは黄色いカッパに向けて六文銭を放った。
    「犬っころが生意気な……!」
     毒づく黄色いカッパに向かって、灯倭が飛び蹴りをお見舞いする。その蹴りは、流星の煌めきと重力を宿していた。一惺は浄霊眼でドリィを癒す。
    「あなたは、なんで人を襲うの?」
     自身の右手に視線を向けた後、灯倭がそう訊ねた。
    「カッ! 痛ぶるのが楽しいからだよ! この世は弱肉強食……弱いということは不安でいっぱいだ。だから、オレは確認せずにはいられない──自分が強者であることを! 人間どもを痛ぶることで、オレは自分が強者であることを実感する!」
    「そんなの……強さじゃないよ!」
     予記の足元から影が伸び、黄色いカッパを飲み込む。有嬉はたつまきで攻撃した。
    「ボクは、強く在りたい!」
    「強いのはオレだ! 人間どもはオレに痛ぶられてりゃいいんだよ!」
    「お前とは、違う形で出会いたかったよ……人間を襲わないお前とな」
     全身を車輪のように回転させながら、潮が黄色いカッパに斬りかかる。
    「そんなの、オレじゃねぇよ。バナナを喰ってオレは変わった。オレはもう、緑だったころのオレじゃねぇ! オレは強くなったんだ! オレは最強の存在となるんだ!」
    「何でバナナなんだ?」
     オメガが訊くと、上流から下流へと流れる川を見ながら、黄色いカッパは過去の自分を思い出す。
    「あれは──」
    「えい!」
    「かぱっ!?」
     非物質と化した刃が黄色いカッパを襲った。
    「バナナ好きの理由も気になるけど、戦いは非情なんだぞ!」
    「最後まで言わせろよ!?」
    「何でバナナなんですか? お話を聞いたときから、凄く不思議だったんです」
     かわいそうだったので、佳奈美が訊いてあげた。
    「あれは夏の日のことだった──上流からバナナが流れてきたんだ。オレはそいつを喰ったのさ。美味かった。もっと喰いたいと思った。トマトを喰ってカッパの革新がどうとか言ってた奴もいるが……オレの場合、バナナを喰って革新とやらをしたらしい」
    「そうでしたか……」
    「あれは、運命の出会いってやつだったんだろうよ。オレの昔話はこれでおしまいだぜ。さぁ、人間! 力比べと行こうぜ!」
    「河童さん──!」
     佳奈美の足には黒き憎愛──それは、愛することは決していい事ばかりではないことを秘めた靴。
     その靴が煌めく。重力を宿した蹴りが、黄色いカッパに炸裂する。
    「……くそっ……!」
     どうやら、黄色いカッパはダメージが蓄積しているようだ。
    「私の拳は白き雷を纏う」
     ラストの手で、闘気が雷へと変換されていく。
     ラストに先行し、ライドキャリバーが猛スピードで突撃する。黄色いカッパはその一撃に耐えるものの、今度はラストの拳が来る。
    「とどめは任せる」
    「任された!」
     エリスが槍を構える。黄色いカッパに向けて。槍の穂先に集まった妖気が、氷柱へと変化していく。
    「とどめだと……? オレはまだやれるぜ?」
    「これで終わるさ。ボクの瞳には、この戦いの終焉が見えているからね」
    「終焉だと? そんなの、お前たちの全滅に決まっている!」
    「残念だけど──キミの負けさ!」
     氷の塊が撃ち出される。黄色いカッパは躱せない。狙い澄ましたような一撃が、黄色いカッパを貫いた。
    「バ……カな……! オレの……負け……だと…………!? ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!」
     黄色いカッパが消滅した。黄色いカッパの敗北で、戦いは終わったのだ。
    「大人しくしていればよかったのにね。ボクを男の娘だと思うから……人を襲うから、こうなるんだよ」
    「わたしたちの勝ちだぞ!」
     戦闘が終わり、灯倭と愛子は労うように霊犬の頭を撫でた。
    「バナナは栄養補給に優れた優秀な果実だ。食べると良い」
    「私も持ってきてます。おやつのバナナ」
     ラストと佳奈美がバナナを配る。
     予記が嬉しそうな顔をした。めちゃくちゃ嬉しそうだった。しかし、その顔を隠すように帽子を目深に被る。
    「べ、別に、食べたいとか美味しそうとか、そういうんじゃないけどね?」
    「食べたくないならいい。私が食べよう」
    「えぇっ!? せっかく用意したものだし、食べ物を粗末にしちゃいけないもんね! ま、まぁ、皆が食べるなら、ボクも食べるよ!」
     バナナを食べる予記は笑顔だった。
    「お前との戦い、勉強になったぜ。……もし、違う形で出会えたら、その時は一緒にバナナを食おう」
     流れる川を見ながら、潮が言った。

    作者:Kirariha 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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