ライブハウスDEパイ投げ合戦!

    作者:御剣鋼

     秋は食欲、運動、芸術などなどの秋。そしてそれが全て満たされるゲームがあるという。
     ——パイ投げ。
     それは、人の顔面などに向かってクリームパイ等を投げつける、またはその遊びである。
     パイを投げつけられたらクリームがたっぷり附着し、どんな人物も喜劇的に大変身!
     そして、その姿を見て笑った者が第二の標的になるのはお約束、まさにカオスフル♪
    「スナイパーならなおさら見過ごせないし、一度やってみたかったんだよな」
     ……それに、今日は。
     窓から洩れる陽射しにワタル・ブレイド(中学生魔法使い・dn0008)は瞳を細める。
     皆と一緒に盛大に悪ふざけするのも面白そうだと、いそいそと準備を始めたのだった。
     
    ●秋のスナイパー対決〜パイ投げで遊ぼう!
     ——ライブハウスで本気のパイ投げしたいので、参加者募集中!
     紙皿にホイップクリームを盛ったパイを大量に用意したが、オレ達は灼滅者だ。
     複数を巻き込むような巨大パイを持ち上げて、特攻するのも、よし!
     あえて超絶美味いパイを作って、標的を悩ませるのもよし!!
     ただし、石とか金属とか、危険物や食えないモノを入れて投げるのは、禁止だ。
     友人知人、サーヴァントお誘いの上、挑戦者を待ってるぜ。

    「欧米諸国では、競技や遊びの一つとして認識されているようでございますね」
     途中でめんどくさくなって、あとはまるっと投げたのだろう。
     企画はワタルなのに、集まった学生達に説明しているのは、里中・清政(高校生エクスブレイン・dn0122)でして。
    「投げる作法にも色々あるとのことで、わたくしも調べてみましたが、奥が深いですね」
     ただ、灼滅者同士が真面目に投げても、高い確率で回避してしまう。
     そのため、如何におもしろ可笑しくパイを投げるか、どう狙い定めるかが重要だ。
    「隙を突いた投てきのほか、近距離から平手気味にぶつけるのが一般的でございますが」
     清政は抱えていた巨大バインダーを机の上に置くと、おもむろに開く。
     中には手のひらサイズの小さめなパイが、所狭しにギッシリ入って……えぇ!?
    「このように意表を突いた所からパイを取り出すのも、ユニークでございましょう」
    「……そのバインダー、妙に大きいなって思ってたけど、箱だったの!?」
    「いいえ、わたくしが常時持参しておりますのは、紛れもなくバインダーでございます」
     これは本や資料等に見せかけて大事な物を収納する、ボックスタイプのこと。
    「でも、それ……生モノをいれるものではないと思うよ?」
     説明が脱線しかけたので、別途補足。
     パイ投げで用いるパイは、食用のものとは少々異なり、紙皿にホイップクリームを大量に盛ったものだという。
     直径は15から30センチ程度の円形、紙皿の代わりにシュー生地のような柔らかいもので工夫をするのは、問題ない。
     飛んできたパイを、口や手でキャッチして、モグっと食べてしまってもきっと大丈夫。
     灼滅者なら出来る出来る♪ ……多分!!
    「余裕がありましたら、防具ESPのクリーニングがあると、便利でございましょうね」
     汚れても構わない服装が無難だけど、そこは灼滅者のパイ投げです!
     あえて澄ました格好で決めたり、ドレスコードばっちりのほうが喜劇性は向上する。
     そして、清政は「最後に1つだけ告げたいことが……」と、声を潜めた。
    「皆様が心置きなく遊べますよう、一般人のわたくしは裏方に徹しますが、こっそりひっそり、こんなパイ皿をご用意致しました」
    「「おお!!」」
     楽しそうに清政が箱型バインダーから取り出したのは、ケーキ用のスポンジ。
     これを素敵にデコって投げつければ、粋のあるサプライズになるのは間違いない、が。
    「ワタル様だけでなく、10月生まれの参加者人数分揃えますので、ご心配なく」
     恭しく頭を下げた清政に、手前も参戦しろと野次が飛び交ったのは言うまでもなく。
     秋は食欲と、運動と、芸術と。——そして、遊びの秋♪


    ■リプレイ

    ●白き混沌の幕開け
    「にゃっ!? う、うぅ……めげまぷっ!?」
     開始早々、四方八方から飛んでくるパイが不回避――否ッ!
     敢えて身体全体で受け止めて見せる(?)つばなの絵図。
    「ちょ、ちょっとまってくだしゃっ!?」
     辛うじてパイを投げ返そうとしたつばなに、ウマい感じで流れ弾がジャストヒット!
    「ジョワイユザニヴェルセール! 受け取れー!」
    「わざわざドーモ、だが断るッ!」
     周囲の流れ弾を叩き落としながら、タキシード姿のギィも特攻を仕掛けていて。
     迎え撃つワタルも、クロスカウンターの要領で互いの顔にパイを投げ合った時だった。
    「逃げるが勝ちってね」
    「っ、待ちやが――ぶはっ!」
     横から平手気味にパイをぶつけてきた真斗に、ワタルもパイを投げ返さんとする、が。
     背後に回り込んでいた霊犬のコロが投げたパイを後頭部に受け、早くもリタイアか!
    「さぁ縁樹が惹き付けます、その間にぶつけて下さい!」
     そうは問屋は卸さず、正面から勝負を仕掛けるのは【ゆびとま】の縁樹。
     蓮花も今日は思いっきりお転婆できると、張り切って両手にパイを乗せていく、が。
    「って、あ、その投げ方、縁樹がモロに巻き添え……に……ふみゃ?!」
    「あ、ごめんなさいなの♪」
     蓮花が投げたパイは、囮役の縁樹もろとも巻き込むように炸裂ッ!
     はしゃぐ縁樹を子供用ドレス姿で見守っていたリュシールにも被弾した。
    「やったわねー!」
     ワタルを挟み込むように動いたリュシールが、宙を舞うパイをキャッチ!
     直ぐにそれを持ち替えると、ワタルの背後に飛び上がった。
    「ダンク……シュートっ!」
     しかし真上からのシュートは仲間も予期してなかったのは、お約束♪
     勢い余って顔にパイが直撃した蓮花の闘志がメラメラと燃え上がった!
    「みんなも真っ白にさせちゃうんだからねっ!」
    「オレ、十分白いんだケド」
     避けられないなら、美味しく頂こう、ホーホケキョ。
     ワタルも揃って、顔も髪も真っ白になったのだった。

    「せっかくの一張羅が台無しなのじゃ……っ」
     祝いも兼ねて派手に楽しもうとしていた王子は、クリーニングを忘れたことに動揺する。
    「……致し方ありません、予定を変更しましょう」
     回避を優先に動いていた病葉が手で弾き落としていくけれど、無数に飛び交うパイを全て避けられる筈もなく。
    「も、もう限界なのじゃ……」
     覚悟を決めた王子が、ぎゅっと目を瞑る。
     けれど、何時までたっても衝撃がなく、恐る恐る目を開けると……。
    「……可愛い王子のためです、今日は特別に盾になってあげましょうね」
     顔面でパイを受けながらも、病葉は笑みを絶やさずにいて。
     瞳を潤ませていた王子も、笑顔になって頷いた。

    「オラ来いよ、当てられるモンなら当ててみなァ!」
    「なら、勢い良く死ねェェ!!」
     早々【武蔵坂軽音部】を挑発する錠に、葉が脊髄反射の如くシェービングクリームパイを投げつける。
    「日頃の感謝と愛を受け取って下さい」
    「第一の攻撃目標が錠くんなのは、ええと……軽音の様式美ってヤツ!?」
     ビシッとスーツで決めた成海も暗黙の掟に従い、錠と葉へエアシューズを加速させて。
     執事服姿の千波耶も振り向きざまに回転を加えながら、クリームで綺麗に盛ったパイをぶん投げた!
    「ステンバーイ、ステンバーイ……GO!」
     パリッとした執事服を着こなした葉月も、錠には割と本気な様子。
     両手のレモンクリームパイを顔面に見舞った葉月に、錠が不敵な笑みを向ける、が。
    「上等だゴルァ! マーブルピンクにしてやっぜ!!」
     集中攻撃を受けながらも雄叫びをあげた錠は、何故か葉へ全力ピッチング!
     女子2人に高カロリークリームパイを押し付けていた葉の顔面を捉えた直後、成海の回転投げが錠に炸裂したのは言うまでもなかった。
    「これぞ秘技、両面宿儺拳! です!」
     ビハインドの黒鷹と背中合わせになった征士郎は2視点と4本の腕でパイを投げ返す。
     周りから飛んで来る流れ弾も己と黒鷹が盾になり、【Fragment】を盛り上げていく。
    「数撃ちゃ当たる!」
    「むむ、このパイあまーい! 美味しいよ! ほらー!」
     両手に沢山のパイを重ねた三ヅ星は、次から次へと笑顔で全力投球中!
     朔眞も負けじと投げられたパイを、ぐいっと顔面目がけて押し返そうとした時だった。
    「あっ! あぶなーいっ!……うっそぴょん♪」
     不意に不敵な笑みを浮かべた三ヅ星が、大きく声を張り上げる。
     一瞬だけ動きを止めた朔眞目がけて投げたパイは、鋭い軌跡を描いて百花にヒット?!
    「ふ、ふふ……私に手を出すなんて良い度胸してるじゃない」
     皆の保護者として傍観に徹していた百花が、パイ塗れの顔で修羅の微笑を浮かべる。
     パイを片手に三ヅ星をじりじりと追い詰めると、零距離からの全力投球でノックアウト。
     顔を拭った百花は、静かに振り返った。
    「仕方ないわね、目一杯楽しもうじゃないの」
    「って、あわわ……! し、仕返しはダメだよー!」
     そこそこ楽しそうな笑みを浮かべた百花の零距離ショットを、朔眞が頑張って避ける。
     楽しそうに笑う三ヅ星に、征士郎が手製の小さなパイを添えるように当てたのだった。

    「戦いと聞いちゃ負けられないねっ」
     みんなのディフェンダーと張り切るのは【†―星葬剣―†】の歩と霊犬のぽち。
     くるりと柴犬に変身した歩は、ぽちと並んで飛んで来たパイを追い掛けていく。
    「女の子には投げれねーし、しゃーねーよな!」
     自然と翼をロックオンした和泉は、イイ笑顔でフリスビーの要領でパイを投げつけて。
     しかし、そうは問屋が卸さない!
    「駄目よ和泉、翼は私が守るもの……」
     翼に背を預けていたディアナが手元のパイで、和泉のパイをナイスキャッチ!
     パイを叩き落とすことに専念していた翼の瞳が、キランと光った。
    「和泉、お前には遺憾の意が必要なようだな」
     カウンターで4指挟み投げを和泉に見舞った翼に、ディアナは直ぐにパイを渡す。
     丁度いい所に段ボールがあったので、その上にパイを幾つかストックしているとのこと。
     だが、あからさまに怪しい段ボールに、翼が警戒を濃くした時だった。
    「全軍突撃ぃー! 進むでいす!」
     ガタガタと揺れる、別の段ボール!
     否、どうみても派手にはみ出していたサクラコに、気まずい空気が流れる。
    「そ、そこのダンボールたちも進めーい!」
     再びサクラコが号令を掛けるけど、特に変化は無さそう……ん?
    「段ボール『達』って言う事は、もしかして……」
     ディアナが振り向くと、パイを置いていた段ボールが全て消えている!?
     その隙を逃さず、近くの段ボールから飛んできたパイが、幾つかディアナに命中した。
    「……これこそ我がロストリンクに伝わる奥義、ダンボールパイ投げ戦法よ!」
     段ボールを被ったままライラが堂々と前進、パイを投げまくっていて。
     防御と攻撃を兼ね備えてスニーキングもこなせる段ボール最強、流石段ボールッ!!
    「あれ、ディアナがパイを置いた段ボールが動いてる……?」
     妙な違和感を抱いた和泉が近くに寄った瞬間、零距離からぺしょり。
    「なんでそこかrがふっ」
    「ふふっ。まともに戦うと思ったか?」
     そこに敵地があるから潜り込んだだけのこと。
     段ボールに身を隠してスニーキングを楽しんでいたテレシーは、直ぐに移動を開始する。
     が、妙に背中が重いのは何故だろう。
    「全員その被り物で逃げられると思うな」
    「わふー!」
     段ボール隊の前に翼が仁王立ちで阻み、並んで伏せていた歩とぽちが勢いよく突進!
     正体がバレたらそこで終了、集中砲火を受けた段ボール達も真っ白に染まるのだった。

     中でも熾烈な戦いを繰り広げていたのは【花園】と【光画部】の、クラブ対抗戦だろう。
     数も互角であった両者は、互いに拮抗し合っていた。
    「……ふむ」
     顔面で受けるのが芸人の倣い。
     否、芸人になった覚えは皆無と拳を固めたイルルは、裏方へ踵を返した。
    「まおまおすぺしゃるあたーっく!」
    「みおみおすぺしゃるしゅーと!」
     これも運命か宿命か!
     双子で対戦することになったまおとみおは、互いの顔にパイを投げ合っていて。
    「うふ。このたまきが参加したからには、光画部さんには負けないよ……んぅっ」
     と、ドヤ顔で投げようとして躓いたたまきは、顔からパイにめり込む。
     パイを投げるも飛距離が足りず、味方のりんごが斬り払ったパイが直撃と散々だ。
    「まだまだっ、今日こそ決着つけますよ!」
     愛用の日本刀を腰に、小袖と袴姿のりんごは戦闘体勢も万全!
     汚れた袖を抜きサラシ姿になると、兄のいちご達に狙われていた由希奈に視線を止めた。
    「弾幕は任せなさいっ!」
     対抗心を燃やす桐香が、いちごのビハインドのアリサと率先して由希奈を狙っていて。
     少々申し訳なく思っていたいちごの視線が妹のとぶつかった。
    「さすがに妹に負けるわけには――っ!」
     桐香とアリカに追加のパイを渡そうとするや否や、強く引っ張られて!?
    「あっしまった!?」
     咄嗟にいちごを盾代わりにしてしまった桐香が声を上げたけれど、時既に遅し。
    「助太刀します! お兄様覚悟っ!」
     りんごが両手持ちにしたパイを勢い良く投げつけると、お返しと言わんばかりに由希奈が投げたパイ共々、いちごの顔面にヒット♪
     直撃を受けたいちごは、何かに掴まろうとして転んでしまった。
    「ご、ごめんね、大丈……ぶっ!?」
     心配した由希奈の目に飛び込んできたのは、桐香を押し倒す格好のいちごの姿。
     そして、桐香がとても嬉しそうに、いちごの顔のクリームを舐めていて……。
     何かが込み上げて来た由希奈の目がアリカを捉え、互い頷き合った。
    「それ以上はっ……だめぇぇぇっ!」
     陣営を越え、気持ちが1つになったダブル攻撃が生まれた瞬間でした、合掌。
    「ぐるぐるぐる~……えぇーいっ!」
     食べ物を投げることに躊躇していた静香も、ここぞとばかりに大技を仕掛ける。
     円盤投げの如く投げられたパイを、光画部部長のまぐろは仲次郎を盾にしてガード!
     何度も使えない大技で自分ごと目を回してしまうのは、お約束です。
    「今回は頑張りますよー、えいっ!」
     水花も全力でパイを投げていたけれど、あらぬ方向に飛んで行くのはご愛嬌♪
    「いっくよー! ひっさーつ!」
    「パイ投げフラーッシュ!」
     悠花が足元にパイを炸裂させる範囲攻撃なら、ちまきはそこから逃げる相手をスナイプ!
     ダブルビキニアーマー姿で揃えたちまきと悠花の連携は、光画部を大いに苦しめていて。
     だが光画部も黙ってはいない。
    「せーーーーーの!!」
     巨大な斬艦刀にずらりと並べたパイを、まぐろが勢い良くフルスイング!
     大量に飛び交うパイが花園を白く染めあげるという、必殺範囲攻撃だ!
    「わんぱくふりっぱあ弾、発射です」
     いるかはイルカ(魚)型にしたパイをぺたぺたと作っては、花園に投げ返していく。
     マイペースにゆっくりと、当たったらラッキー、そんな感じだ。
    「空中戦は任せろ!」
     パイが満載された給仕用のワゴンを用意した武流とあるなは、そこからパイを補充しつつ攻防戦を繰り広げていて。
     ダンクシュートを仕掛ける者も多い中、武流はワゴンを足場にしてダブルジャンプ!
     派手な動きで宙を舞う武流を狙わんと、多くの視線が集まった時だった。
    「スナイパーの実力、見せてあげるね!」
     その隙を逃さず、あるなが連続でパイを投げつけていく。
     アタッカー兼囮役の武流が注意を惹き、あるなが後方から援護射撃という連携は、花園だけでなく、多くの狙撃手を苦しめた。
    「戦い方を教えて差し上げましょう」
     ふと、花園のセカイがましゅまろ谷間から取り出したのは、数珠繋ぎになったパイ。
     付けられたロープを鞭のように振って、光画部をパイ色に染める恐ろしい技だ!
    「おっと、私が狙われている危ない!」
     と、仲次郎が呼べば直ぐに飛んで来て盾になるのは、ライトキャリバーの仮・轟天号。
     こころなしか、涙しているような気がするのは気のせいだろうか……。
    「おお? マシュマロチェーンパイン!」
     だが、素敵光景は味方のちあきの足を止めてしまう。
     ノーガードで銃弾の雨を特攻していた悠花も、ちまきの大きな胸が視界に入って……。
    「これで弾き返したりできませんかね?」
    「待って?! 弾くも何も当たったら結局はっ?!」
     ぐいっと引っ張る悠花にちまきが慌てた瞬間、揃ってパイの洗礼を受け――ん?
    「手が滑っただけだよー!」
    「裏切りー? きのせいきのせいー♪」
     只でさえ見た目が一緒なのに、パイ塗れになったみおとまおは見分けがつかないッ!
     揃って舌をペロっと出した兄妹に両陣営が「裏切り者ー!」と声をあげ、乱戦状態へ。
    「やりましたね? 仕返しです」
     流れ弾を受けたいるかは顔を拭うと、イルカ型に作り直したパイで、マイペースに応戦。
    「ははは! 竜騎士の盾裁き、刮目して見るがよいわっ!!」
     飛来するパイは、鍋の蓋を装備したイルルが即座に叩き落す。
     ハンドルに蓋を掛けたライトキャリバーのティアマットも、仲間の盾として奔走していた。
    「あーる、盾になりなさい!!」
    「ってまぐろさん? って、あー!」
     まぐろに服を掴まれた仲次郎が嬉しそうな顔をしたのは、以下略!
     そのままりんごとの部長同士の戦いに巻き込まれた仲次郎の運命は省略ッ!
    「あ、あら?」
    「どんくさいのは自覚してるんで……」
     りんごが居合で半分にしたパイが、味方の水花にぺちっと誤爆!
     幾つもの予想外を前に、水花は更にパイ塗れになっていた。
    「大丈夫ですよ。乱戦ですから、お気になさらずに」
     そんな予想外を楽しむように、セカイは優しい笑みを浮かべていて。
     同じくパイ塗れのたまきはセカイに倣って楽しそうにパイを運び、ワゴンの影に隠れた武流とあるなは互いの顔を見て笑い合う。
     そして、皆揃ってパイ塗れで動けなくなるという、奇妙な引き分けになったのでした♪


    「ちょっと早い俺からの誕生祝いだ、遠慮せずに貰っとけ?」
     ――誕生祝い?
     悪戯を企む子どものように不敵な笑みで距離を取る御伽に、キョトンとする才葉。
     見事なフォームで投球されたカラフルなケーキをギリギリでキャッチした才葉は、思わず頬を緩ませた。
    「ありがと! 食べてもい……っ!」
     瞬間、才葉にスパーンとヒットする、おたおめ弾。
     吹き出してケラケラ笑っていた御伽にも、お約束通りの二の舞弾が炸裂ッ!
    「くっそ! 誰だオラァ!」
    「あっはは! 御伽もクリームだらけだー!」
     顔を拭いつつ楽しそうに笑う御伽に、才葉も可笑しくなって笑い合う。
     やる気満々の御伽に元気良く返事を返すと、両手にパイを乗せて駆け出した。
    「キリー、誕生日おめでとう!」
    「ハピバー! どいつもこいつもパイを食らえ!」
     斬の誕生日を祝おうと集まったのは【武蔵境3G】のクラスメイト達。
     ドレス姿で決めた奈央は、演技のような動きで周囲にカウンターシュートを決めていて。
     赤のチャイナドレス姿の稜も、大きく笑いながらパイを投げまくっていた、が。
    「うぅ、これでも食らえー!」
     周囲はセクシー水着姿の者も多く、着物で正装した斬の胸をコンプレックスが刺激する。
     涙目の斬はこれでもかと両手に乗せたパイを、クロスするようにぶん投げていた。
    「お祝いか騒いでるだけか、わからないけど……」
     飛んできたパイを結界糸で叩き落とした夏槻の手には、ミートパイとアップルパイ。
     せっかくの誕生日、美味しく食べて貰おうと、斬に向けてパイを投げつけた。

    「いやはや、凄いことになりましたねぇ……」
     白一色というのも味気ないと裏では流希が食紅で、ラトリアがカレー粉で染めていて。
     竜鬼が手製の不恰好なパイと共に色付きパイを会場に運ぶと、更なる混沌と化していく。
     特に、10月が誕生日の6人は、歩く樹氷もとい動くパイに変貌していた。
    「嘘でしょ? 傘に穴あい……」
     祝辞と同時に一斉に投げられたパイに傘を盾にしていた真斗も、パイ塗れに。
     ギィとゆびとまに特製ケーキを見舞われたワタルは、元の形すら留めていない。
    「ハッピーバースデー、キリー!」
    「あんがと親友、喰らえショットガン!」
     パイを片手に歌っていた稜が、ラストパートで叫びながら斬にパイを投げつける。
     相打ち覚悟でぶつかった2人は、揃ってパイ色に♪
     そして、傍らで舞うように避けていた奈央の顔面にも、流れ弾が直撃したようで……。
    「……来年もこんな馬鹿を誰も欠けずに出来たらいいな」
     可憐な乙女を捨ててパイを投げまくる奈央に慌てふためく2人に、夏槻は小さく微笑む。
     そして、楽しさを分かち合うように、美味しいパイを投げ続けるのだった。
    「葉月先輩、美味しく頂いて下さい☆」
    「喜びの多い一年になりますように!」
     最後は主役に花を持たせねばと、成海が葉月をロックオン!
     千波耶と一緒にスポンジケーキに山盛りにした生クリームパイを、勢いよく投げつけた。
    「皆のキモチ、全部受け止めてやるから掛かって来いよ!」
     仲間の厚意に葉月は楽しそうな笑みを浮かべ、敢えて顔と身体で受けとめてみせて。
    「おたおめオラァ! リア充しろよ!」
     葉が投球したふんわりスポンジケーキの上には、チョコプレート。
     美味しそうに頬張る葉月に、錠がサムズアップを向ける。

     最後にクリーニングしてすっきり爽やかになったら、もう一度笑い合おう。
     そして皆一緒に……ハッピーバースデー!!

    作者:御剣鋼 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月21日
    難度:簡単
    参加:53人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 6
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