「スポーツの秋! ということで、10月31日はマラソン大会だ!」
野々宮・迷宵(中学生エクスブレイン・dn0203)は、ジャージ姿に「必勝」と書いたはちまきをして、熱血体育教師のように暑苦しく皆に語りかけた。順位がつくとはいえマラソンに勝ち負けはあるのか……はちまきの意味を問いたくなる灼滅者達だが、とりあえず黙っていた。
「コースは全長10キロメートル! 学園を出発して市街地を走り、井の頭公園を駆け抜け、吉祥寺駅前を通って繁華街を抜け、最後に登り坂を駆け上り学園に戻ってくるコースだ」
10キロ、という距離にマラソン大会初参加の生徒を中心に悲鳴のような声が上がる。
「健全な学生である諸君にとって、マラソン大会は大切なイベントだ! もちろん前日は夜更かししない、しっかり走るのだから朝食は軽めに、涼しくなってきたとはいえ水分補給はこまめに、日差しはまだ暖かだが、風は冷たい。体を冷やさないようにな!」
基本的な注意事項を述べた後、迷宵は先ほど悲鳴を上げていた初参加組に特によく聞こえるように大きな声で続ける。
「ちなみに、走るのが嫌だからとマラソン大会をエスケープしたり、不正を行おうとする生徒は、魔人生徒会が厳重に取り締まっているから、捕まって罰を受けることになる! 罰とはすなわち、グラウンドをえんえんとマラソンコースの分だけ走らされることだ!」
捕まれば結局走らされる上、景色も変わらないグラウンドをえんえんと走らされるのなら、最初から真面目に走るのが賢明かもしれない。
静かになったところで、今度は迷宵は明るい声音で語りかける。
「そして食欲の秋! どうせ走るなら美味しく楽しく栄養補給をしながら走るのもひとつの案だ。コースを大幅に外れなければ、途中でお弁当を食べたり、買い食いをして栄養補給に努めることは認められている」
井の頭公園では、レジャーシートを持参してお弁当を広げたり、クラスメートやクラブ仲間とわいわい楽しむのもいいだろう。吉祥寺駅前や繁華街では、買い食いやドリンクでの栄養補給もできるだろう。ただし、店に入って飲食してしまうとエスケープと見なされ、魔人生徒会の協力者に捕まってしまうので注意が必要だ。また、エスケープを取り締まっている魔人生徒会の協力者への差し入れをしてあげるのもいいだろう。きっと喜ばれるに違いない。
「周囲に大きな迷惑をかけることがなければ、多少のことは大丈夫だ。大いに楽しむんだな!」
そうして迷宵は最後に一人一人の顔を見つめ、自身の気持ちを重ねながら言葉を紡ぐ。
「マラソン大会は、年に一度の学園行事……日頃の鍛錬の成果を確認するため、上位を目指すもよし、様々なリスクを抱えながらもエスケープを図るのも覚悟があるのならいいだろう。面倒だ、しんどいとぼやく気持ちもわかるが、せっかくの青春の1ページ、悔いのないように楽しむのもいいと思うぞ! それに健全な魂は、健全な肉体に宿るという。灼滅者の闇堕ちを防ぐ為にも、充実したマラソン大会になることを祈っている!」
●れっつ栄養補給!
爽やかな秋晴れの中、マラソン大会はスタートする。トップグループを横目に、ここ井の頭公園では美味しく栄養補給をする生徒達で賑わっていた。
「今日は天気が良くて良かったですね」
志藤・遥斗(図書館の住人・d12651)は作ってきたサンドイッチを用意する。
「うちはですねー。今日は自分で作れなかったからお任せ……」
色とりどりの大量の餅が自分の弁当箱に詰まっているのを見て柊・司(灰青の月・d12782)は絶句した。同じく一瞬固まったリオン・ウォーカー(はらへりすぺくと・d03541)だが、自身の弁当をさっと差し出す。
「あの! 一応皆さんの分も一緒に作って来ましたよっ」
定番のおかずに最近話題のおにぎらず。
「リオンさん志藤君マジ天使。頂きますー!」
音神・有葉(鬼獄啾々・d27248)はコンビニの菓子パンをもぐもぐと食べている。
「……おいし、です、よ……?」
遥斗が用意したパンプキンプリンをみんなで食べてまったり。
「こうやって遠足気分なのもなかなか良いですねぇ………」
「皆で一緒にご飯食べるのって、楽しいですよね!」
常儀・文具(バトル鉛筆・d25406)がにこにこしながらクラスメートにスポーツドリンクを手渡す。
転入してきたばかりのエリザベート・ベルンシュタイン(勇気の魔女ヘクセヘルド・d30945)は、故郷のドイツ風のサンドイッチを差し出した。
「ふふん、こういうの、日本じゃオチカヅキノシルシって言うんでしょ? ありがたく召し上がりなさいよねっ」
「わー、ありがとう! わたしもおかずいっぱい作ってきたから食べてね」
大夏・彩(白炎は常にあなたのそばに・d25988)は大きなお弁当に詰めた手作りのおかずをふるまう。
「……コッペリアちゃんへろへろやね? お茶飲んで休みよし」
御舘田・亞羽(舞小花・d22664)の一言でお弁当タイムとなり、コッペリア・カムイ(神の居を借る娘・d29647)は目をキラキラさせて大喜び。
早速、五十鈴・乙彦(和し晨風・d27294)は亞羽のだし巻き卵を一口食べると、その優しい味に感動し、親指を立てる。
「美味しいぞ」
亞羽も楽しみにしていた乙彦の伊達巻きを口に入れ、流石お師匠やわ……と唸った。
「お弁当の食べすぎで午後からのまらそんが大変かも。お弁当ぱわーでがんばろう。ふぁいと、おー」
二人のお弁当は運動が苦手なコッペリアにもやる気を与えたのだった。
走るのが苦手な冷泉・深優(オキザリス・d18587)はできることならエスケープしたいと考えていたが、それを見越した藤谷・恵司(カリスの恩寵・d19202)が見計らってお弁当にしようと声をかける。
転校してきたばかりの笹島・輝希(不得意・d28199)は、いつも通り、栄養食やチョコで済ませようとしていたところ、恵司が深優の分だけでなく自分のお弁当を用意してくれたことに感動する。
「さぁさ、ケイちゃん特製弁当を召し上がれ!」
「あ……ありがとうございますッ……!」
そして深優と輝希はおかず交換する。
「なんだか、こういうの、青春って感じでいいわね」
【絆部】はみんなでお弁当交換!
「ねぇねぇ、ひよりん先輩はどんなお弁当作ったのー?」
春日・瑠音(彩音翅・d11971)がのぞき込むと、雨咲・ひより(フラワーガール・d00252)が早起きして頑張ったお弁当を披露する。きのこの炊き込みご飯や蓮根のきんぴらなどである。
「ハルの海鮮おにぎり、贅沢……! スシおにぎり!」
楠木・恵(空を斬る風見鶏・d06300)が神羽・悠(炎鎖天誠・d00756)のお手製爆弾おにぎりを見て感動する。
「それ、美味そうだな……なぁなぁ! それ、ちょっとだけ俺に分けて! 俺のもあげるから!」
悠が恵のデザートいっぱい弁当を見てせがむ。
「ハルちゃんは、皆の狙わずともひよちゃん先輩に食べさせて貰えばいいじゃないっすか。今なら邪魔しませんよー?」
小鳥遊・愛(謳鳥・d20717)が自身のハロウィン風キャラ弁を手ににやにやしている。
みんなでわいわいとするそんな様子にほっこりしつつ、ひよりはポットに詰めて持ってきた温かいお茶とおしぼりをみんなに配った。
「兄ちゃん、透、少し休もうよー」
香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)の言葉に、のんびり走っていた香坂・颯(優しき焔・d10661)が振り返る。
「先も長いし、兄さん少し休もうぜ」
高梨・透(主を探す守護者・d26847)もそう言い、三人は公園で一休み。
「水分補給は大事ー」
水筒に入ったはちみつレモンを手渡す翔。透の作ったサンドイッチを美味しそうに食べながらしみじみとつぶやく颯。
「1年前は僕に弟妹が居るなんて、思ってもみなかったな」
「兄ちゃん、透! 誰が最初にゴール出来るか勝負だよ!」
束の間の休憩は終わり、三人は仲良く走り出すのだった。
「よく晴れたな………こういう空の下でなら食事も美味かろう」
盾河・寂蓮(泥濘より咲く・d28865)は持参の握り飯を食べながら呟いた。
「これでも意外と料理とかは得意なんですよ」
シャリン・イトマキ(星に願った祈り・d29536)は星型に整えられたおかずたちをクラスメートに振る舞う。星型である理由は完全に趣味である。
「さて、後半戦も頑張るとしようか」
芝生にピクニックシートを敷いて【いつもの愉快なメンバー】はお弁当をトレード。
「はいっ、卵焼きどうぞなのですー♪」
平坂・月夜(常闇の姫巫女・d01738)は唯一自作のおかずを差し出す。それ以外は冷凍食品だったりする。
「おなか……すいた」
マラソンでぐったりした氷上・蓮(白面・d03869)はピタパンサンドを取り出し、野菜にハニーマスタードをかけていただく。
「あ、レン先輩。だめですよ野菜ばっかりじゃ。ほら僕のからあげあげますから」
比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)が見かねてからあげを差し出す。
「月夜さんはきんぴらごぼうなのね。野菜たっぷりだし美味しそうよね」
稲荷寿司を頬張りながら木島・御凛(ハイメガキャノン・d03917)が 微笑む。
仲良くお弁当を分け合う4人。
「残りも……がんばろう」
「わーい、みんなでおべんとうれしいな!」
クラブのみんなでお弁当を食べるため、風間・海砂斗(おさかなうぃざーど・d00581)はくじら模様のレジャーシートを広げる。
「今回、頑張ってタコさんウィンナーに挑戦してみた!」
空木・天音(不知始・d04258)のお弁当箱には、他にも鶏の唐揚げと茄子の肉巻きなどが入っている。
「お弁当、私もたくさん作ってきたの。……あ、ブタさんに飾り切りしたウィンナーも入ってるよ」
華槻・灯倭(月夜見・d06983)はみんなでどうぞと差し出した。
「わわわ、みんなのお弁当すごいね。海砂斗君の飾り巻き寿司、クジラさん模様の一つ貰おうかな」
シオン・ハークレー(光芒・d01975)のお弁当には卵焼きの隣にイカさんウィンナーがちょこんといた。様々なウィンナーが競演して見た目も楽しい。
「さて、栄養補給したことだし完走目標に、ゆっくり頑張ろう」
【常緑】のみんなは公園に着くとわいわいとお弁当を広げる。
「なんか河童のすごいなーっ? こってるぞ!」
リュータ・ラットリー(おひさまわんこ・d22196)が河童川・流零(かっぱっぱ・d27632)のキャラ弁を見つめて目を見開く。
「卵焼きっ、ふるふるほんわり!」
久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)は小堀・和茶(ハミングバード・d27017)のイチオシの卵焼きを口に入れ幸せそうに微笑む。
「お礼に卵入りのサンドイッチとさくらんぼをはい、どうぞっ」
「あまいにおい! キョーコ、ぬいにもぬいにもー」
杏子のフルーツサラダを山野・ぬい(おひさまろんど・d29275)がせがむ。
「ぬいさん、宜しければこちらもどうぞー? 代わりに、鳥を少しばかりくださいなー」
流零は河童おにぎりを差し出し、ぬいの鳥の丸焼きをいただく。
「響斗おにーさんの唐揚げも美味しそう!」
和茶は硲・響斗(波風を立てない蒼水・d03343)の用意した塩麹につけた唐揚げをあーんの体勢で口を開けて待つ。
リュータは持参した携帯用コンロとアルミ鍋でスープを完成させた。
「リュータ君、斬新過ぎる……!」
そこはかとない敗北感を感じる響斗だった。
みんなで分け合い、美味しく楽しい午後のひととき。
「残りのマラソンも、いっぱいがんばろうねぇっ!」
【星空芸能館】のみんなは休憩を兼ねてお茶会!
「紗里亜さんのは抹茶アイス最中ですか。わ、練乳ソースが超甘くて美味しいです♪」
星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)は椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)の持参したアイスを美味しくいただく。
「ボクはフローズンヨーグルトにしたよ~♪ ミックスベリーだよ~♪」
榊・くるみ(がんばる女の子・d02009)は必死で走ったマラソンの疲れをスイーツで回復!
「あたしは梨ジュース。乳酸菌飲料をミックスだよー」
野村・さやか(天奏音楽・d00162)は駅前で買ったかぼちゃのプリンと一緒に差し出す。
「みんなはどの店をチェックしたんだ? 甘味マップに書き足しておくから、あとで教えてくれよなー」
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)がそう言いながら昨年作成した甘味マップを広げる。今年はカステララスクをチョイスしたファルケだった。
「オレはエキチカの和菓子屋で謹製どら焼きと栗饅頭」
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)が冷たい抹茶入り玄米茶とともに差し出す。またひとつ甘味マップの完成度が上がった。
「ミルフィはお仕事おつかれさま♪ お菓子、どうぞ」
アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)がエスケープ取締中のミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)にウーピーパイを手渡す。愛の差し入れをもらったミルフィは気力と闘志を充填する。
「えりなさんのシュークリームいただきます♪」
さやかがシュークリームを頬張るのを見て、えりなが頷く。
「甘いものは本当にきゅーんって来ますよね~♪ あと少し皆で頑張りましょう☆」
重箱のお弁当には、ハンバーグにエビフライ……それに大量のから揚げ!
大神・狼煙(同胞の軌跡を語る者・d30469)のお弁当を前に守森・リア(中学生魔法使い・d28152)と神酒嶋・奈暗(快楽主義者・d29116)は目を輝かせていた。
「あっ、この唐揚げちょー旨いな! も一個くれよ!」
「神酒嶋さん、ありがとうございます、です。からあげ以外も、おいしい、ですよ」
満腹になり、昼寝をするという二人に、狼煙はブランケットを差し出す。束の間の休息もきっと必要だ。
「ゆっくりお休みください。寝る子は育つ、ですよ」
天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)とシェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・d28645)は二人で一緒に作ったお弁当を一緒にいただく。
「におちゃんが好きって言ってたの、ちゃんと、入れました。たくさん食べて、くださいね」
ミートボールを頬張りながら仁王は頷く。
「来年も、また、おねーさん、一緒、行きたい、です……♪」
お弁当をひっくり返らないように気をつけて走っていた折紙・栞(ホワイトブックガール・d15951)と緒垣・翠(空の青夕日の赤・d15649)だが、井の頭公園でいざお弁当を開けてみるとやっぱりひっくり返っていた。
「ふっ2人とも、酷いおっお弁当だね……」
「……大丈夫、ちゃんと……食べられます……」
しょんぼりしつつも、なんだかおかしくて2人でほんわりと笑うのだった。
ギーゼルベルト・シュテファン(紅陽に翔けし戦黒鷹・d17892)とフローズヴィトニル・フェンリル(蒼月に吠えし銀怪狼・d22983)はルートから外れない範囲でお弁当を買ってベンチで二人並んで食べる。
「何か食べたいものあるか?」
「わぁい、ありがと、ギル……!」
違うお弁当を買って仲良くおかずを交換しあうのだった。
「じゃあ公園まで走って早くメシにしようぜっ!!」
雷・天狼(荒ノ戦神・d22461)が井の頭公園まで猛然とダッシュしていく。
「いっぱい動いて、いっぱい疲れたらちゃんとご飯を食べるです」
追いついたレーネ・カザラギ(無貌のマリオネット・d22119)は息も切らさずお弁当を広げた。
「レーネ……あんまり疲れてなくね?」
そして二人は途中で買ったほかほかの肉まんを食べて心も体も温まった。
井の頭池のほとりのベンチに座って休憩する各務・樹(吾亦紅・d02313)と無常・拓馬(比翼恋理のツバサ・d10401)。
「マラソン中だから軽めにサンドイッチを作ったわ」
樹が作った食べやすく丸めたサンドイッチを口に運びながら今までのことを思い返す二人。
「俺はここでこうして樹と二人で暮らせるのが何よりの幸せだ。ここからも頑張って、二人で一緒にゴールしようね」
今年も恒例の魔人生徒会への差し入れをしてから、夕永・緋織(風晶琳・d02007)と海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)はお弁当を広げる。
「それにしても……やっぱ緋織は料理が上手だよなぁ」
「上手、だったらいいな。食べて喜んでくれるのが嬉しくて……作りたいって思うだけだもの」
少し休んでから、最後まで一緒に走ろうね、と二人は笑いあった。
花表・真那(地に咲く連理の春花想尊・d25127)と 桐生・冬華(天に舞う比翼の春花想尊・d25882)は、中身を秘密にして作ったお弁当を交換する。
お互いの好きな物をたっぷり詰め込んだお弁当。
「えと、あ、あーん……して?」
「うん。あーん……」
「えへへ……とっても美味しいわ! こっくさんみたい!」
食べさせあいっこをして美味しく完食!
「へー、ラヴィニア料理できたのか」
飛鳥・奏真(焔勇士・d20539)はラヴィニア・シフレット(中学生デモノイドヒューマン・d20072)のお弁当を見て感心顔。
「そのおかず、おいしそうですわね……。よかったら、私のおかずと交換しませんか?」
そして、あーんと口を開けて待機しているラヴィニアを見てやや硬直するが、奏真はほれっと食べさせる。そしてお返しに卵焼きを食べさせてもらう。
「ん……お、いいじゃないか、なかなか美味いぜ」
永舘・紅鳥(氷炎纏いて・d14388)は彼女のクリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)に作ってもらったお弁当をいただく。おにぎりに卵焼き、ササミの肉巻きなどをあーんと食べさせてもらい満足顔。なぜか二人のそばには鉄球が転がっていたが、二人にとっては特に危険でもなく普通の光景らしかった。
恋人同士の椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)とメイニーヒルト・グラオグランツ(ブレイズサッカー・d12947)はお互いのお弁当を楽しみにしていた。武流は洋風イカめし、メイニーヒルトは稲荷寿司に焼き茄子、煮物など。マラソンそっちのけで平和を満喫。お腹が膨れたら二人で一緒のゴールを目指す。
「行こうぜ、メイニー」
「今年も一緒にゴールしよう」
伊勢・雪緒(待雪想・d06823)が早起きして作ったお弁当を橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)は美味しいと言いながら口に運ぶ。
「あ、雪緒おべんと付いてるー」
口元のご飯粒を取って自分の口へ運ぶ清十郎。
「――っ! あ、あわ、あ、ありがとうございます、です……! やんちゃなお米さんだったのです!」
「周りの人に見られた訳でないし大丈夫だろ。それともちゅーして取ったほうがお好みだったかね?」
「うぐー……意地悪さんなのです!」
村瀬・一樹(ユニオの花守・d04275)は隣を走る亜子屋・多久等(側にあれかし・d20960)に話しかけた。
「ね、そろそろ休憩しようか」
一樹の作ったお弁当は小さなおにぎりと一口サイズのおかず。
「はい多久等、あーん」
あこがれのシチュエーションだが、なんだか少し照れてしまうのだった。
「みんな楽しそうだね!!」
公園で昼食をとる学生たちを見て市松・利里(博愛主義者・d28359)は微笑んだ。そして公園に散歩に来ている犬を見つけては飼い主に許可をもらい、全力でモフり倒す。
斎倉・かじり(筋金入りの怠けもん・d25086)は手作りの三つの大きなおにぎりをしっかり味わっていただく。
「腹が重い、ちと食いすぎたか…」
佐久間・天草(千夜一狼・d23244)は公園に乗り入れたトレーラーからエプロン姿で現れこう言い放つ。
「さて、飯がまだな奴。弁当を持ってきてない奴らがいるならそこに座れ。腕を振るってもてなしてやる」
●吉祥寺駅前は美味しさの宝庫!
井の頭公園を過ぎて吉祥寺駅前に差し掛かると、そこは魅力的な店の数々。もちろん、ここでの栄養補給も大人気なのである。
「流石住みたい街ランキングの王者、とても賑やかだ」
吉祥寺の駅前で目移りしながらもオーガニックドーナツの店に目をとめた白石・作楽(櫻帰葬・d21566)に羽柴・陽桜(はなひとひら・d01490)も同意する。
「ドーナツ、ひおも食べるー!」
「俺は、檸檬の砂糖衣が掛かってる奴……陽桜は、何にする? 一緒に、頼も」
月原・煌介(白砂月炎・d07908)が注文する。
「美味しい物は分け合う物だろう?」
作楽が南瓜のドーナツを差し出し、みんなで少しずつ交換しあう。分け合う友達がいる幸せに煌介は目を細めた。その喜びはもちろん二人にも伝わる。
「えへへ、いっぱい味わえて嬉しさも幸せも倍々だね♪」
「食べ歩きが堪能出来るコースって素敵ですね」
穂之宮・紗月(セレネの蕾・d02399)がたい焼きの袋を抱えて笑いかけると、望月・みとわ(碧い風は陽光とともに・d04269)が肉まんを手渡す。
「人数分あるから、嫌いでなければ、みんなもどうぞ」
そして睦月・恵理(北の魔女・d00531)は湯気の立つ焼き芋を用意。
「さて。ここから更に先頭に出られるかの勝負と言うのは、実に燃えませんか? ……失礼、お先に!」
「って恵理先輩、ずるいですよっ」
追いかける紗月に相変わらず全力の恵理を見て微笑むみとわ。走るのが苦手な彼女はマイペースにゴールを目指すのだった。
クラスメートと楽しく駅周辺で食べ歩きする雨月・蓮花(見習い魔法使いのリトルレディ・d03979)の手には肉まんとみたらし団子。
「お、それ美味そうだな。一口よこせ!」
葛木・一(適応概念・d01791)がアプリコット・ルター(未覚醒のガーネットスター・d00579)のコロッケをぱくり。
「アプリコットちゃん、私のみたらし団子2つとそれ、交換しない?」
「……こう、かん?」
きょとんとしながらも、みたらし団子を口に入れ幸せそうに微笑むアプリコット。
「負けた奴ジュースおごりな!」
ダッシュで走り去る一を二人は慌てて追いかけた。
「ちょっと肌寒いからあったかい物を食べようかなぁ」
高坂・透(だいたい寝てる・d24957)が呟くと、クラスメートの九形・皆無(僧侶系高校生・d25213)も頷いた。肉まんにあんまん、ピザまんを買い込む。
「こうやってのんびり出来る時間っていいですよねぇ」
透持参のお茶を飲み、しみじみと呟く。
「ま、食べ終わったらもうひと頑張りするとしますか」
「さーや、よかったら別々の物買って半分とかどーかな?」
一人で全部食べるとお腹いっぱいになるので、咲宮・奏恵(瑠璃色スフォルツァート・d01820)は江東・桜子(蜜柑色アニマート・d01901)に提案する。
「それ乗った! 最近エビかつの美味しい所発見したのよ☆」
桜子のエビかつに、奏恵のチョコバナナを美味しく半分こ。
「ね、次はあれ飲もう!」
「皆さんとのんびり買い食いしながら散歩……間違いました。マラソンしましょう」
「食べ歩きならぬ食べ走り、か……? 腹が痛くなりそうだが……」
暮石・伊涼(贖罪のイドルム・d29489)はそう言うと、早速焼き芋の車を追いかけ食べ歩き。二荒・六口(百日紅・d30015)も心配しながらも焼きそばやトウモロコシを購入。それを見ていた忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)はお肉屋さんのコロッケを3つ調達。
「ん、ホクホクしていて美味しい♪ ……ねえ、貴方達も食べる?」
それぞれの戦果をお裾分け。
「良いものは思い出と一緒に共有しないとね」
【古ノルド語研究会】のメンバーは吉祥寺駅前でパン屋巡り。
鏃・琥珀(始まりの矢・d13709)は早速紙袋いっぱいのパンを抱えては、満足そうにもぐもぐしていた。
「これも、なかなかなのよ」
「わ……鏃さん。そんなに食べるんだ。凄い」
山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)は体重を気にして砂糖がいっぱいのパンを避けて選んでいた。けれど総菜パンは別腹らしい。
「確かここら辺においしいコロッケの店があったはず……?」
中崎・翔汰(赤き腕の守護者・d08853)はあらかじめ下調べしておいたおすすめの店を探す。仲間と一緒だと美味しさもひとしおだ。
「飲み物は適当に買ってきた。好きな物を取ってくれ」
アルディマ・アルシャーヴィン(詠夜のジルニトラ・d22426)が飲み物を差し出す。
みんな口いっぱいにパンを頬張り幸せそうな顔をしているのだった。
「皆、ちゃんとお腹は空かせてきたな。今年も腹一杯になるまで、ゴールすることは許さないぞ!」
九条・茨(白銀の棘・d00435)が【銀庭】のメンバーにびしっと指を突きつける。
「そうだな、いっぱい食べないとな! マラソン大会だからな!」
久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)がその言葉に頷くが、よくよく聞いてみると何かがおかしい。
みんなでわいわいと駅前を巡りそれぞれのおすすめを紹介していく。
「わたしのお勧めなら生地さくさくとろーりクリームのシュークリームだよ」
結月・仁奈(華彩フィエリテ・d00171)はメープル風味の優しい味にうっとり。
「私のお勧めは焼き小龍包」
もちもちあつあつで、この季節にもぴったりの小籠包を手にする媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074)。
「タピオカジュースが飲みたいな。ここのお店の、好きなんです」
唯空・ミユ(藍玉・d18796)が通りかかった店を指差す。たくさんの種類があるが、その中から今日はミルクティー味をチョイス。
「海老アボガド……ラップロール、美味しそう……」
御手洗・花緒(雪隠小僧・d14544)はみんなと買い食いできることが何より幸せなようで笑顔で食べ物を口に運んでいる。
「たい焼きは、頭からかな……」
マラソン大会初参加の神子塚・湊詩(藍歌・d23507)も買い食いを楽しんでいた。けれど、ふと我に返る。
「皆、なかなかの勢いで食べてるけど、この後走るんだよね? ……ちゃんと、走っていけるかなぁ」
日輪・玖栗(汝は人狼なりや・d27540)は吉祥寺駅前までラーメン屋台を引いて走ってきた。
「いらっしゃいませー♪」
笑顔で呼び込みをしているのは同じ一族の日輪・黒曜(汝は人狼なりや・d27584)だ。
味噌塩醤油にとんこつと種類も豊富、一族の者のみならず、魔人生徒会の協力者へも振る舞われ、大好評だ。なお、玖栗はこの後もきちんと屋台を引いてゴールする予定である。
「うえぇ、走るの嫌だって言ってるのにぃ!」
村雨・嘉市(村時雨・d03146)に引きずられる白・理一(空想虚言者・d00213)。美味しそうなたい焼き屋の前で立ち止まると、嘉市のおごりのたい焼きが理一の口に突っ込まれる。
「ったく、何怒ってんだよ、うまい食いもんが台無しになるぜ?」
からからと笑いながら、理一の首ねっこを掴んでまた走り出すのだった。
望月・心桜(桜舞・d02434)の吉祥寺駅前のおすすめはパン屋さん。
「へぇ、豆乳入りのパンって珍しい」
木元・明莉(土鍋彼氏・d14267)が買ったパンを一口。もちろん心桜にもおすそわけ。
「天高くなんとか肥ゆる秋なのじゃよー」
持ってきたほうじ茶と明莉のおにぎりで一息。マラソンの合間に大好きな人と素敵な買い食い日和♪
今年は買い食いにしようと住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)と雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)はコロッケ目指して肉屋へ!
「わわっ熱! ホクホクで美味しい」
美味しそうに食べる羽衣を見て慧樹もにこにこ。
「買い食いも楽しかったケド、来年はまた弁当でお願いシマスっ!」
慧樹に拝まれ、羽衣は笑いながら頷く。
「来年は、いっぱい美味しいもの作るね」
「美味しそうなにおい……近い……!」
昨年行ったたい焼き屋に向かう黒柳・矢宵(マジカルミントナイト・d17493)はいち早く匂いをかぎつけた。
「羽根つきたい焼き……? なんとも美味しそうな匂いにござる」
ふらふらと引き寄せられる猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)。
「な、なんだってー! 今年はアイスクリームがトッピングできるだとー! 勿論それ!」
二人で一口ずつ交換し、美味しさににんまり。
「……なんだか、見えるもの、全部、食べたく、なっちゃい、ます、ね。祇音、は、何が、食べたい、ですか?」
一色・紅染(料峭たる異風・d21025)の問いかけに、天崎・祇音(戦場を舞う穢れなき剣・d21021)が答える。
「そうじゃの………拙者は秋らしくないがケバブが食べたいのぅ」
二人で分け合って食べていると、顔についたソースをぬぐってくれた祇音に紅染が照れたように笑う。
「あ……ふふ、ありがとう、ね」
霧島・サーニャ(北天のラースタチカ・d14915)は吉祥寺スイーツ巡り。羊羹にどら焼き、たい焼き、メープルシュー。さぁ、次なるお店にとっつげきーぃ!
「走るよ! 走っちゃうよ! はらぺこかいじゅうが走っちゃうよ!」
美味しい物を食べて、ありがとうとごちそうさまを言う。それが夜乃・空(帰ってきたはらぺこかいじゅう・d29768)の流儀なのだ。
白藤・樂(壊音カプリチオ・d04514)は高校最後の思い出に、ちょっとお遊びしながらマイペースに買い食い一人旅。学校行事中の買い食い、なんか楽しいかも。
レイチェル・ベルベット(火煙シスター・d25278)はゆったりとした一定のリズムで走っていた。立ちはだかるのは駅前の誘惑!
「なに、たい焼きだと……おやじ、くりーむ一つテイクアウトだぜ!」
モカ・フラージュ(ほんわかにあわわさん・d25212)はたい焼きを抱えて走っていた。その数八幡町キャンパス高校2年5組、総勢51名分である。充分買い食いはしたが、食べてしまいたい欲求と必死で戦うのであった。
イリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)は喉が渇いたので近くの自販機にコインを入れた。
「10円切れ……そ、そんな」
そして辺りをきょろきょろと見回す。
「魔人生徒会の皆さん10円3枚貸してよ」
船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)は10キロのコース間にある店を訪ね歩くグルメマラソンを実施。大事なことはゴールすることより全て食べることである。彼女がゴールできるのかは神のみぞ知る。
マラソンが苦手な咲村・菫(ハナの妖精さん・d28400)は100m走るたびに休みたくなる。
「あ、あんなところにクレープ屋さんが!」
そして次はアイスにパンケーキ。気がついたらなんだか辺りが暗くなっていたのだった。
●美味しさの共有
自分で栄養補給するだけでなく、頑張ってる誰かのためへの差し入れもマラソン大会では見られる光景である。
バリスタ衣装の焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752)は吉祥寺で購入した豆で珈琲を入れ、魔人生徒会にも差し入れ。マラソンを通して珈琲の良さが広まるといいと願っているのだった。
貴志・蘭花(高校生サウンドソルジャー・d23907)は自作スポークドリンクを魔人生徒会の協力者に差し入れ。栄養補給としては間違ってないのかもしれないが、味には刺激がありすぎて常人なら気を失うほどである。
ディアス・シャドウキャット(影猫スキル・d01184)はイチゴのスイーツをバスケットにいっぱい持っていた。周りにもしっかりとお裾分けしていく。
「人生はいちご意致得!」
小野塚・舞子(おこめっこ・d10574)はおにぎり片手にマラソン中。ご当地、新潟県魚沼産のお米である。魔人生徒会協力者へも手渡し感謝される。
「天気もいいし楽しまなきゃ損だものね。いざゴール目指して!」
井の頭公園に、給水所を兼ねた広島ご当地グルメ配給ブースができている。
弁当を用意していない人やまだ物足りない人、魔人生徒会の協力者たちに、崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)がもみじ饅頭やお好み焼き、焼き牡蠣を提供している。
「広島のPRの為うちも頑張りますね!」
崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)は広島レモンのジュースや世良のお茶を配っている。
ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)は先生と魔人生徒会に許可を申請していて抜かりがない。
ヴァーリ・マニャーキンは食べ終わったごみを速やかに回収していく。マラソンが始まる前より綺麗になったと言われることがひとつの目標である。
思わぬご当地グルメの祭典に、生徒や協力者も大喜びだった。
マラソンを走りきるためには栄養補給が重要である。けれどただ食べ物を食べる以上の楽しさと喜びがこの瞬間に詰まっていたのだった。
作者:湊ゆうき |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月31日
難度:簡単
参加:131人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 4
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