廃墟と歌とアイドルの

    作者:聖山葵

    「ねぇ、知ってる? ほら、県内にあるってあの廃墟」
     道を歩く少女達の会話が聞こえてきたのはたまたまだった。
    「あぁ、出るって話でしょ、女の子の幽霊」
    「そうそう、アイドルを目指してこっそり廃墟で一人歌や踊りの練習していて、倒れてきた柱の下敷きになったんだっけ?」
     以後、その廃墟でアイドル衣装を着て歌をうたうと幽霊が現れるという噂。
    「しかも歌い終えたところで幽霊に殺されちゃうんでしょ」
    「そうそう。なんかさ、肝試しに女装して歌を歌った大学生の人が殺されちゃったらしいよ」
    「うわぁ……」
     少女の洩らした声は幽霊に対する恐怖かそれとも肝試しの為に女装までしたという犠牲者に対してのものか。
    「あたし、福岡ってもっとまともな場所だと思ってたんだけどなぁ」
    「その辺はどこだってピンキリでしょ、ピンキリ」
     どこか遠い目をした少女とその少女の肩を叩くもう一人の少女が去って行くのを見送ると、アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)はポツリと呟いた。
    「これは調べてみる必要がありそうっすね」
     と。
     

    「えー、そう言う訳で『アイドル衣装で歌っていると出現する都市伝説』が発見された」
     この都市伝説は福岡某所の工場跡の廃墟をテリトリーとし、噂に則った行動をするらしい。
    「犠牲者が出たって情報はガセだけどな」
     とはいえ、噂の通りに動くなら犠牲が出てもおかしくはない。
    「都市伝説ってのは、サイキックエナジーと人々の畏怖や恐怖が混ざって出来る暴走体、あたしらみたいな一般人じゃ、バベルの鎖もちのこーゆー存在はどうにもなんねぇ」
     故に灼滅者が呼ばれたと、言う訳だ。

    「一応、出現条件は限定的なんだけどな」
     確かにわざわざ廃墟まで赴いてアイドル衣装を着て歌うなど、都市伝説を呼び出す目的でもなければ、しないだろう。
    「で、こっちとしても丸投げってのは申し訳ないんで、楽曲と衣装については用意しておいた。ついでにアイドル衣装の似合いそうな女の子も呼んでおいたぜ」
    「まさかと思うけど、それオイラのことじゃないよね?」
    「ん?」
     胸を張ったエクスブレインの少女はおそるおそる尋ねた鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)へきょとんとした顔をし。
    「おおすまん、アイドル衣装の似合いそうな可愛い女の子も呼んでおいたぜ。これでいいな?」
    「や、オイラが言いたいのはそうじゃなくて……解ってて言ってるよね?」
    「と・う・ぜ・ん・で・す!」
     いつも通りの扱いにジト目をする和馬へ少女は親指を立てて応じた。
    「ちょ」
    「で、戦いになると都市伝説はサウンドソルジャーのサイキックに似た攻撃で襲いかかってくる」
     基本的には呼び出した者を優先的に狙ってくるので、囮役は守りに重点を置いた立ち位置を心がけると良いだろう。
    「ちなみに、そう言う噂があるからか、一般人が迷い込んでくる可能性は0だ、人よけは必要ない」
     明かりについては出現させる時間帯をこちらで決められる為、日の出ている内に呼び出せば、必要ないだろうとも少女は言う。
    「まぁ、だいたいそんなところだが……何だか妙に嫌な予感がする。そんな訳で、事件が解決したら、さっさと返ってきて欲しい」
     引きつった顔で固まった約一名が復活する前にそこまで言い終えた少女は、和馬の背中を君達の方に押しやると、宜しく頼むなと言って頭を下げた。
     


    参加者
    久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)
    白鐘・睡蓮(棚靡く紅冠・d01628)
    本山・葵(緑色の香辛料・d02310)
    ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167)
    白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)
    月光降・リケ(太陽を殺す為に彷徨う月の物語・d20001)
    竹野・片奈(七纏抜刀・d29701)

    ■リプレイ

    ●犠牲
    「不思議なものだな」
     白鐘・睡蓮(棚靡く紅冠・d01628)は、呟いた。
    「アイドルとは衆目の前に立つ者のことだと思うのだが……廃墟で練習する意味はあるのだろうか」
     私には判らないな、と頭を振るが疑問に答える者はどこにもいない。
    「え゛、ちょっ」
    「ほらほら、手伝ってやるからこっちにこいよ」
    「大丈夫、きっと面白……じゃなくてすごく似合うから」
    「面白いって、何ーッ!? そもそも着替えだけならオイラ一人でも」
     居るのは、とある少年を連行して行く女性が三名。本山・葵(緑色の香辛料・d02310)と竹野・片奈(七纏抜刀・d29701)はそれぞれ鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)の右手と左手をがっちり確保して逃がさず、哀れな生け贄は何処かへと連れ去られ。
    「リケ~! うちの姉ちゃん連れてお手伝いにきたよ~!」
    「リケは、この間依頼でお世話になったすからね。弟といっしょにお手伝いがんばるっすよ!」
    「ありがとう。そちらのみなさんよろしくお願いしますね」
     エクスブレインの言う嫌な予感の対策に集まった灼滅者が二十名程、内幾人かに月光降・リケ(太陽を殺す為に彷徨う月の物語・d20001)が対応する中。
    「さぁ、脱ぎましょうね~。お化粧もばっちりしましょうね~」
    「や、色々拙いよね? 女の人達の前で脱」
     少ししてから聞こえてきた久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)の声に少し上擦った和馬の声が途中で途切れた。
    「和馬、キミの覚悟をわたしは忘れないよ」
     目を瞑り、ぎゅっと拳を握ってセトラスフィーノ・イアハート(戀燕・d23371)は言葉を綴る。ベクトルも投げ出す場所も違ったものの、セトラスフィーノも覚悟は出来ていたから。苦戦をする覚悟も危険に身をさらす覚悟も。
    「いや、何か勘違いしているのではないか、そこは?」
     ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167)が顔を引きつらせて指摘した瞬間だっただろうか、何処かから誰かの悲鳴が聞こえたのは。
    「悠月ちゃん、どうしたの?」
    「いや、その……勘違いしてるかどうかはさておき、仲間の精神状態は戦局に影響しかねんしな」
     セトラスフィーノに声をかけられて足を止めた白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)は弁解をしつつも悲鳴が聞こえた方をチラチラ見る。感情こそ顔には出ていないが、仲間を気にかけての行動だったのは明らかだった。
    (「和馬にも挨拶をしておきたいところだが、後だな」)
     挨拶しようにも着替え中では仕方ない。
    「もしかしたらHKTの方が出現するかも、という事ですし、リケ様のお手伝いに来ました」
    「もし……HKTの……襲撃があったら……大変……だし、お手伝い……しに……来たよ」
    「それはありがたい、宜しく頼むな?」
     そして、挨拶する相手には応援の灼滅者が多くて、事欠かない。
    「たのもしいものだな」
     まさに大規模作戦レベルの人員。
    「どっからどうみても完璧なアイドルだぜ! 写メ撮っていいか?」
    「えーと、これだけの人に見られて歌うの、オイラ?」
    「はい、笑顔ですよー」
     賞賛しつつ問う葵の前で呆然とする女装少年へ、応援の灼滅者がシャッターを切った。

    ●オイラ、歌いますっ
    「似合っていますよ」
    「えーと、ありがと?」
     良い笑顔で褒めるリケへ引きつった表情で和馬が応じる。
    「私を盟友と慕ってくれるフラウマシュヴァンテが死地に赴くなら私も行かないとね」
     と言い残し窓の外をソロモンの悪魔っぽいモノが飛び立つが、変装したワルゼーの盟友とのことなので、そちらについて気にする者は居ない。
    「やぁセトさんに睡蓮さん。あと片奈さんも。手伝いに来たよー」
     誰かの着替え補助に席を外していて戻ってきた者を含む幾人かに挨拶しているのも応援の灼滅者。
    「負ける要素が無いどころか、都市伝説との戦いも殆ど前座になりかねんな、これでは」
     もし、応援の灼滅者達まで戦闘に加わったなら、きっと瞬殺だろう。
    「否定は出来ませんが」
     そう前置きしつつも、リケは言う。
    「まずは目前の敵に集中しましょう」
     と。
    「あ、うん……」
     文句のつけようもない正論の後の視線に歌えと言われた気がして、引きつりながらもマイクを手に取ると二度ほど深呼吸してからポーズを決め、和馬は頷く。
    「再生はこのボタンだったな?」
     睡蓮の操作で周囲に流れ始める音楽。
    「O・HA・YOっ、今日はご機嫌~朝からキミに会えたか~らっ」
     はぁい、と合いの手っぽいモノを入れつつ可愛らしくポーズをとったその人はどこからどう見てもノリノリだった。割り切ったのか、自棄にでもなったのか。
    「待ちかねてたぁ休日が~最近嬉しくなくて~少しだけ不思議だぁったぁ~」
    「ふふ、うふふふ……」
     何フレーズか歌った所でどこからか笑い声が反響し。
    『殺戮・兵装』
     着物の袖からカードを取り出した撫子は唇でそれに触れて封印を解く。
    (「いよいよか……格好悪い所は見せれないし、頑張らないとな」)
     セトラスフィーノの方を一瞥した悠月は周囲を見回し。
    「あれか」
     実体化しつつある人影を見て小さく零した。
    「転がったぁ消しゴムで~生まれた偶然にぃ~」
     歌が終われば、呼びだした相手を殺すと言う噂であるからか、現れた少女はまだ動かない。
    「ふげばっ」
     だから都市伝説としては不本意だったことだろう、まだ何もしていないというのにいきなり振り下ろされた巨大な腕で押し潰されたのだから。
    「良かったぁ、フルコーラスしなきゃいけないのかと」
    「うーん、じゃあ危なくなったらシャウトで残りの歌詞歌えば良いんじゃない?」
    「え゛」
     胸をなで下ろしかけたアイドル衣装の誰かが墓穴を掘って片奈の言葉に硬直する中も、不意打ちに近い形で始まった一方的な集中攻撃は続いていた。
    「頼むぞ、赫怒」
     炎の翼を顕現させた睡蓮の呼び声に応え、ライドキャリバーの赫怒が味方の盾となるべく前に進み出た勢いを駆って突撃すれば、スレイヤーカードの解放によって容姿の変わったセトラスフィーノは、少女の幽霊が赫怒に気をとられた隙をついて懐へと飛び込む。
    「油断、大敵だよ?」
     青のリボンが翻り、叩き付けるはWOKシールドの一撃。
    「きゃあっ」
    「チャンス、追い打ち後免っ」
     殴り飛ばされる形になった都市伝説の身体が廃墟の床に跳ね、追いすがるようにして死角に回り込んだ片奈がサイキックバンブーソードで急所を狙う。
    「あうっ」
    「えーと、何だかゴメンね?」
     わざわざ断りを入れる礼儀正しさを伴った一撃に足が止まった瞬間、飛来した光の刃が突き刺さり。
    「くあっ……え、あ、あぁ……きゃあぁぁ」
     アイドル衣装を切り裂かれた幽霊の悲鳴が上がる中、さてと呟いた撫子は身の丈を越える殲術道具を振るう。
    「後に何が有っても、まずは此方を確りとこなしましょう。参ります」
     桜の花弁の如く舞う火の粉をの尾を引き、己から噴き出した炎を宿した槍の切っ先が向く先は、都市伝説。床を蹴った撫子の身体は一撃の届く距離まで前に運ばれる。
    「えっ、あ」
     切り裂かれた衣装に注意を持って行かれ、接近に気づくのが遅れた幽霊の顔が強ばった。
    「へっ、何処見てやがる?」
    「え」
     もっとも、肉薄していたのは、撫子だけではなかったのだが。瞳に集中させたバベルの鎖によってワルゼーが予測したのは、別方向から接近していた葵が繰り出す拳の嵐へ都市伝説が襲われる未来。
    「かふっ、痛っ、うぐっ、く、がふっ」
    「これで終わるとは思えません、催眠だけ気を付けて」
     予言者の瞳で見た光景そのままな数秒後の中に登場したリケが注意喚起しつつ突きを見舞う。
    「っきゃぁぁ!」
     穂先は歌いだすべくポーズをとろうとした少女の幽霊を貫き。
    「くっ……ら~らら~ら~」
     都市伝説は突かれた場所を押さえながらも歌い出した。

    ●前座は終りへ
    「これは得意技の出番もなさそうだね」
     ちらりと手にした殲術道具を見た片奈は残念そうに嘆息した。
    「良くわかんないけど、この有様じゃね」
     その得意技とやらが、オーラを癒しの力に転換し近くの味方を竹刀でシバきつつ傷を癒すと言うモノであることをこれまで知らずにいられたのは、回復対象として想定されていた少年には幸いだったと思う。先程から廃墟に響き渡る都市伝説の歌声は、灼滅者達につけられた傷を癒しているが、数の暴力の前に回復が全く追いついていない。
    「ゆくぞっ」
     これまでに何度か散発的な反撃はあったが、メディックの筈の悠月までもが、時折銀翼弓で殴りかかり攻撃に回っているぐらいだ。
    「歌い終わるのを待って凶行に及ぶつもりが、出現した時点で逆に襲撃されたからでしょうね」
     想定外の奇襲は、この後の戦いを想定して連係を重視した灼滅者達によって切れ目のない連係攻撃になり、その結果が一方的な戦いという訳だ。
    「こう、都市伝説の歌で正気を失った和馬君を竹刀でシバいて元に戻す展開とか想定していたんだよ?」
    「や、しなくて良いからね?」
    「その時は私が先に射ろう、こんなに沢山の人の前で正気を失うとは忍びない」
    「え゛」
     結局得意技を知ってしまい、片奈にジト目を送った和馬は悠月の放った言葉に硬直する。
    「癒しの矢のことなのだが」
    「あ、うん。ゴメン……そうだよね」
     わざわざ味方を攻撃するはずがない。そんなことへ即座に気づかぬほど、約一名は振り回されていた。
    「おらぁ、逃げんなっ!」
    「嫌ぁぁぁぁ、誰か助けてぇぇぇぇっ」
     ただし、たぶんこの戦場で一番不幸なのは、コントめいたやりとりの裏で葵にどつき回されている都市伝説なのだろうが。
    「赫怒、いけるか?」
     睡蓮の言葉にエンジン音で応じたライドキャリバーが幽霊の進路を塞いだのはこの直後。
    「後がつかえていますし幕引きの時間です」
    「そう言う訳だ、紛い物のアイドルといつまでも付き合っているわけには行かぬであろう?」
     非情な撫子の言葉へ頷き、ワルゼーは冷気のつららを撃ち出す。
    「きゃあっ」
    「申し訳ありませんが、これで終わりです」
    「では、ごきげんよう」
     つららで廃墟の床に縫いつけられたところへ殺到するは灼滅者達の攻撃。
    「あ、あぁ……嫌、ひとりでこんな所で……なん」
     最後に漏らした声は、殴打からワンテンポ遅れて生じた内側からの爆発にかき消され、マイクを落とした都市伝説の身体はゆっくりと消滅し始めた。
    「エクスブレインの忠告に従うなら、後は立ち去るだけだけど」
     帰路に着く者など何処にも居ない。
    「どんな仕掛けが有って、僕等を誘い込んだのかは知らないけれど、其のお返しに学園の意地、見せてあげるよ!」
    「そうですね、ワルゼ―殿達に無事学園に帰還して頂く為にも全力で支援させて頂きましょう。仲間の為にも全力でね!」
    「はい。うち達の底力見せてあげますんで覚悟してください!」
     むしろまだ見ぬ襲撃者に応援の面々の戦意は旺盛で。
    「……この事件の背後にいるのは、HKTなのでしょうか? 相も変わらず悪趣味なことをしているようですね」
     殺気をまき散らし人除けを続けつつ無表情で淡々と呟く灼滅者が一人。
    「何にしても今の内、襲撃されない内に治療しないとね」
    「そうだね」
    「急ぎましょう」
     応援を含めた灼滅者達は次の招かれざる客を迎える為、動き始めた。

    ●一人の仮説と
    「さてと、都市伝説は倒したけど、むしろここからが山場だよな!」
     心霊手術で仲間の手当を終えた葵はマテリアルロッド肩に担ぎながら周囲へ視線を巡らせる。
    「これ、つかってね。元気、なる」
    「このまま交戦するとのことですし、私も手伝いますね」
    「すまねぇ、助かるぜ」
     応援の灼滅者も心霊手術に加われば、都市伝説との戦いで負った傷が完治に至ったのは言うまでもない。
    「体制だけは整えて起きませんと、ね、何もおきなければそれでいいのですが……」
    「大丈夫だよ、これだけの人が居てくれるし、覚悟だってしてる」
    「そうですね。ただ、絶対HKT666が来るとも限りませんし、油断は禁物ですよ」
     応援の灼滅者の言葉に物陰の幾つかを示してセトラスフィーノが応じれば、撫子はやんわりと釘を刺し。
    「誰一人犠牲になる事なく誰も闇堕ちする事なく、全員で帰りましょう。自己犠牲の精神は結構ですが、学園に残された人達はとても心配されると思いますよ」
     覚悟という言葉に反応して釘を刺す灼滅者は他にも。
    「まぁ、闇堕ちどころかここにノコノコやってきたら袋叩きだよね、私のバンブーソードは活人剣だけどそうじゃない人もいるだろうし」
     物陰に移動する片奈は知っている、この場には灼滅者が自分を含めて三十人近くいることを。もし、相手が複数でも三人ぐらいまでなら充分勝負に持ち込める戦力である。
    (「わたしの予想通りなら今回は襲ってこない筈。来るとすればこちらの戦力を破れる大人数かと思いますが……」)
     襲撃者が普通に現れることはないとリケが見なしているのは、だからこそか。
    「エクスブレインの予知をすり抜ける存在も、出てきたみたいだったんだがな。これは、外れか?」
     殲術道具を構えたまま警戒は解かない応援の灼滅者が、待てど暮らせど何も現れない事態に呟き。
    「HKTに意趣返しする機会は訪れず、か。堕とされた仲間の救出が最優先とは言え、少しは借りを返せると思ったんだがな」
     この状況でホイホイ飛び込んで来たなら、相応の報いは与えられたことだろう。もし、来たなら。
    「私は戦闘経験が少ないから正直ほっとはしているが……」
     更に十数分が経過しても、現れる者はなく。
    「……そう」
     応援に駆けつけてくれた灼滅者達との連絡をとっていたリケは廃墟の天井を見つめ、電話口に相づちを打つ。
    「ありがとうディアナ」
     上空から箒に乗って周辺を警戒してくれていた応援の仲間へ携帯電話越しに感謝の言葉を贈ると目を瞑る。
    「どうやら予想通りのようですね」
     エクスブレインの居た教室に盗聴器がしかけられていた、と言う予想を呟きと共に確信に変え。
    「盗聴器か、それにしてはいささか不自然なことがあるが」
     その予想を聞いていたからこそ首を捻る者もいる。こちらの作戦が完全に筒抜けになって居るなら隠れたりしたところでやり過ごせるはずもない。隠れていつ事実まで乱入者は得ているはずであり、探し出すだけで良いはずなのだから。
    「こちらが万全の準備をした事で現れなかったという事ならば……」
     何らかの手段でこちらの行動を知っていたと言うことだけは、動かない。
    「いったいどうやって……」
     何とも言えない気味の悪さと解けぬ謎を残し、灼滅者達は廃墟を後にした。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ