つつましさが一番だと何故わからぬ！

■リプレイ

●バストは突然に
「ひゃ～ん」
　たゆゆん♪
　これ見よがしに紅葉おっぱいを上下に揺らし崩れ落ちる淫魔の前に、ザザッっと割入る勇者達。
　でっぱいちっぱいまないた……誰が誰かはまだ語るべき時ではない、のだ。
「ラブリンスターには借りがあるからな」
「ひゃん☆　お兄さんステキでっすぅ」
　紅白桜の着流しを翻し立つ小早川・里桜（花紅龍禄・d17247）へ、ひゃんたんの熱視線がぎゅんぎゅん。
「学園での防衛戦、借りを返しに来ました」
　速く逃げてと促す天月・静音（翼紡ぎの詩謳い・d24563）は、フライドバター怪人の値踏みが内心気になっている。
（「私の場合、どっちなのだろう」）
　目を逸らし「……多分大丈夫なはず」と言った義姉の反応に結構凹んでるわけで。慰めるように見上げてくるわんこクラージュの視線すら辛い。
（「……助けても助けなくてもどちらでもいいけど」）
　静音の影を躱す怪人を平坦な伏し目で一瞥、十・七（コールドハート・d22973）は不安定な腰つきの怪人の隙を逃さず斬り裂いた。
「情けは人の為ならず」
　後で助力を得られるかもしれぬという本音を察知、ひゃんたんは全力で後ろダッシュ！
「すみません、ラブリンスターさんに伝えてくれませんか？」
　ナノナノのらぶりんと同時攻撃、若生・めぐみ（歌って踊れるコスプレアイドル・d01426）は背後のひゃんたんへ「配下淫魔に護衛を～」と伝言するも届かない。ひゃんたん撤退完了、逃げ足はっや！
　すかさずサウンドシャッターを起動した里桜は、軽々と地面を踏み切り流星の蹴打。胸だけしか見ないふしだら怪人は成敗だ。
「……素朴な疑問だが、フライドバターとは美味しいのだろうか」
　ねっとりとした蹴り心地から味を想像してみる。
「脂分と糖分が強すぎて、私は口に合いませんでした」
　しれと答える風雅・晶（陰陽交叉・d00066）……あれ、胸があるけど晶さんだよね？
「ひたすらにどうでもいいんだけど一つだけ」
　脂を払い七はぼそり。
「なんでその嗜好で高カロリーモチーフなの。自己否定し過ぎじゃない？」
『イエース。ワタシの悩みデース。ユーのブリリアントなちっぱいか、フライドバターを食べさせるか』
　八つ当たりするように巨乳の晶へ油ギッシュな頭で頭突き＋顔で乳部ビンタ――そんなご当地ダイナミック相当。
「く……恥ずかしい上に痛烈な一撃を喰らうとは、なんという不本意」
　ズレた詰め物を直しつつ雷バチリご返杯。居たたまれなくて、本山・葵（緑色の香辛料・d02310）は必死に言葉を探す。
「えっと、似合ってるぜ？」
　探した結果がご覧の有様だよ！
「あんまり違和感がない、と思う」
　もうやめたげて！
　そんな葵さんは天然巨乳をこれ見よがしに揺らし踏み込むと、腕から溢れる焔でゴーッと。
『ぶほっ！　なんという目立ちたがりのふしだらな乳デスかー！』
　ギトッ！　向ける視線すら脂々しい。
　そんな彼が見ているのは、赤面の葵とひょいひょいと偽乳を揺さぶるめぐみ、そして……。
「胸で女の子を選ぶワケ？　サイっテー」
　ぷんすこ！
　蒼いギターを手に愛らしく頬を膨らませるアリエス・オデュッセイア（アルゴノーツ・d29761）……の胸だった。
　アイドルらしい華やかさとシックな黒を纏める青チェックに包まれたそこは、スタイル良くどどん！　振り付きで癒しの詩を口ずさめば、たゆん☆
「大きいのが好きってのもどうかと思うけど……もっと訳わかんないわね」
　それ、天然巨乳の人が言っちゃダメだー！？
「………は」
　なんだろう、今、わんこ耳にどす黒い感情が満ちた気がした。
「トラウマをえぐるようなセリフ、許すわけにはいかないっす！」
　あれこれ誰に向けて言ってるんだろう？
　アプリコーゼ・トルテ（三下わんこ純情派・d00684）が、きっと見据えた先のアリエスはアイドルオーラぎゅんぎゅんでとってもキュート！
　――勝てない。
「な……なんでもないっす！」
「え？」
　目を見開くアリエスから顔を背け、三下わんこアプリコーゼは地面に魔方陣かきかき。そうだこの気持ち全部アイツにぶつければいいんだ。
『フー！　ユーのおっぱーいエークセレント！』
　マジックミサイル、どーん☆

●どうして褒めたら殴られるのか
　姉は恐ろしい生き物である――これは全国の弟の多くが激しく同意する確固たる真実であろう。
「全て……姉……いや、ダークネスの所為ですね」
　晶は殺界形成を広げつつ項垂れ。
　ぶっちゃけさっきのご当地ダイナミック相当より昨日の姉パンチの方が痛かった。強要した女装姿（胸がある自分）にキレた姉の理不尽パンチの方が。
『ＨＡＨＡ！　将来絶対垂れマスねー』
　傷口に塩。
　でも怒りバネに足の腱を的確に斬っておく。
「巨乳好きの怪人さん」
　スキップするように前に出て、めぐみは愛らしくウインク。
「あなたの大好きな巨乳ですよ～、心行くまで堪能してくださいね」
　シリコンパッドでつくったＥカップを腕でぎゅー。谷間の開いたドレスが扇情的ですね。
『……なッ』
　怪人は言葉を失った、溶けるバターは怒りの印。
『ワタシが何よりも嫌うものがアリマース』
　わなわな。
『それは、ロリ巨乳デース！』
　奴は何処で日本語を学んだのだろうか――。
　素朴な疑問を抱く里桜は、男性認定なのか実は未だに言及されてない。
『少女なら誰しもが持つワンダー、台無しデース！』
「え、違う？　またまたぁ」
　わざと空気を読まないめぐみに怒り沸騰！　次のターゲットは決まったくさい。
「まだ誰も危なくないから巨乳アピールしなくてもいいわね」
　きりっ。
　アリエス真顔。フォルテッシモの銃撃リズムに合わせ惑わしの歌、大胆なステップでもう胸がぶるんぶるん。
「…………そう、だね」
　問：静音が言葉を発するまでの間に籠められた複雑な心情を説明せよ。
「クラージュ……行くよ」
　そんなわけで甘い脂の前に立ち黄金の細い刀身を構えてみる。
　間。
『んー』
　じーー。
　フライドバター怪人は静音の胸を判定中です！
『好みはもっとナイちっちですガ、ユーも悪くナイですネー。中々おしとや……へばぁ！』
　ざっくり。
　翻る切っ先に裂かれた衣の音と、静音の心を突き刺した音はとっても似ていた。
「女の子に、胸の話題は禁句だと、思うんだけど……」
　判定：貧乳。あ、いや、慎ましやかな感じでいいと思います。
「大きくならなくて悩んでる子だっているんすよ！」
　それは自分のコトかアプリコーゼ、神なる剣で斬り裂いて睨む。
『ユーはグレートちっぱいデスヨー？　悩む必要ないデース』
「ひいいいい！」
　げばぁ！
　褒められたアプリコーゼが吐血ってセルフで斃れたぞー。あれおかしいな貧乳は攻撃されないはずなのにー。
『トレジャ～！　アナタの胸は至宝デスネー』
　七のスレンダーなお胸にだらーっと涎めいた脂が口元から止まらない。
　興奮で荒い鼻息を掠める指、外したかと思わせ誘う油断、逃さず縛霊手から伸ばした糸で絡め取る。
『控えめでドントムーブ！　サイコーデース！』
　２回目。
　そう、まだ２回目。
『ん？』
　怪人の視線は次なる獲物へ向いた……里桜だ。
『アナタ、女？　ＨＡＨＡ！　ワタシの目は確かデース！』
「嘘おっしゃい！　私が男だとわからなかったではありませんか！」
　どうしても言わずにいられなかった晶である。
『ぬ？』
「……！」
　逸らし目の晶からはすぐに関心は失せる。だって目の前には素晴らしいまな板があるわけだしな！
『パッ！　パーフェクト！　なんという造形美！　神が与えたもうたギフト！』
「ふっ……あいつに喜んでもらえるなら兎も角……」
　バベルブレイカーを握る手に力が籠もる。
「貴様に褒められても嬉しくも何ともないんだが？」
　彼氏さんはお褒めになるんでしょ……なんでもありません。
「今潰す、即潰す、本気で潰す」
　取り回すバベルブレイカーから射出射出射出！
「早々に滅びろォォォ！！！」

●悲喜こもごも
　灼滅者側はターゲット分散のダメージコントロールは常に欠かさない。そう、こんな風に――。
　ぶんっ！
　ぶるるん！
　葵の伽羅髪が翻り、腕は風切り横薙ぎ。同時にこれでもかとまでに揺れる、乳。
「甘いものは大好きなんだけどフライドバターはちょっとなぁ」
　どごぉっと突き刺さる拳が連打連打、更に激しく上下に揺れる巨乳。
「見ているだけで胸やけしそうだぜ、この胸が！」
『ヘーイだらしない乳を見せつけるよくないネー！』
（「くっ、ここはガマンだ」）
　胸アピ恥ずかしいし、怪人にも腹が立つけれど。
『ワビサビ山葵を学んできなサーイ！』
「あたしをワサビと呼ぶんじゃねぇ！」
　それはガマンできない葵へ、甘いモン喰わせたるでと油脂分キック。
「………………危ない」
　問：静音の間について以下略。
　両手を広げて庇い立つ少女の胸にヒット！
『ＮＯ！　小ぶりで心地よいモノを蹴ってしまいマシター！』
「こ、こぶり……」
　ぐさぐさぐさ。
　暴言にはすかさずカウンター、失礼な足をおろしなますにしてくれる！
「本当は巨乳を蹴りたかったんでしょう？」
　しょんぼり静音に入れ替わりめぐみ参上。
「ほらほら」
　……そろそろ胸パッドの違和感も限界で早く外したい、なんてコト考えつつ初☆ブレイジングバースト！
『ぬおっ！』
　燃えるぞ燃える、脂だからな！
　この狂乱の中でも淡々と七があらゆる関節に施した斬り裂きと戒めは、怪人の動きのキレを完膚無きまでに奪い去っていた。
　すかさず晶が黝き柄と刃で突き放すように体の要を刻む。蹌踉けた所へガスガス入る里桜の踵が地べたへ這いつくばらせた。
　とはいえ、
　灼滅者側も物理的にも精神的にも傷だらけ。でも攻撃は止めない、誰が止めるかこんちくしょう。
「負けちゃだめよ」
　前衛へ再び立ち上がる力をとアリエスは喉を震わせた。
　ぷるん♪
　アイドルステップで跳んだり跳ねたり、もちろん立派な天然物もゆれゆれ。
　……なんかむしろ心折ってませんかね、これ。立ち上がる力とか言ってますけど。
（「ダメージが蓄積されてきたわね」）
　だってターゲットが誰一人ディフェンダーじゃないんだもん。
　覚悟を決めてアリエスは胸を持ち上げる。
「ほ、ほら、こっちに大きいのがいるわよ！」
「！　あっしだって」
　溢れる涙で回転アプリコーゼ。ミニスカとジャケットの裾が翻る。
「背も胸もこれから大き……」
『ならなくていいデース！』
「ひぃ！　ごめんなさいっ、大きくならないっすよおぉ」
　何故土下座するのか。ああ、それは三下だから。
『それと巨乳！』
　アリエスへ脂ギッシュビーム！
『今更デース！　やはり巨乳はクレバーが全て乳に回ってマース』
「失礼ね！　それに私は普通の大きさよ」
　また場の空気が、冷えた。
『ミーに、微乳と書いて美乳をくだサーイ』
　フライドバター怪人は気配を殺す七を見てにかっと笑う。
『日本の慎ましやかおっぱーぐえっ』
　ぐしゃ。
　七の指が怪人の喉を潰すように握りしめた。
「口を開くな、殺す」
　ついでに肘を目にごすっと。
『ＮＯ～！　トレジャーが見えなーいネー！　ベリーサッ』
「喋るな、殺す」
　だらり下げた腕、影が落ちた顔の中瞳だけが鬱々と輝く。
　怖い。
　この人、絶対赦さない気だ。

●おっぱいとは尊いものである
　全方向に喧嘩を売るダークネスは攻撃をしこたま喰らい虫の息。こってり甘い脂の臭いは嗅ぐだけで太りそうだ！
「ちょ、ちょっと、もう煽ってないのになんで狙うのよ！」
　アリエスが唱えた異議に褒められている方々は同意をしたくないようです。でもクラージュが健気に庇ったよ！
『ドッグの胸は対象外デース！』
「……」
　もはや無言の主静音が影を覆い被せる。
　殴れば呪装帯で寄せあげた葵の乳がぶるん！　土下座で描いた魔方陣からアプリコーゼの魔矢射出。
「本当によく燃えますね、その体」
　胸を張った態勢から繰り出されるめぐみの炎に、怒りと熱で熔けた脂がぽーたぽた。
「さっさと土産用のフライドバターを用意しろ。お前の存在意義はそれだけだ」
　クラブメンバーの分含め沢山な。
　里桜の杖がドスッと、ゲームなら『ぴろらりん☆』ってフライドバター何本も出す勢いで、追撃追撃追撃！！
「あなたの嗜好が諸悪の根源です」
　ぼそり。
　晶の切れ長の黒曜が、据わった。
　全て目の前のダークネスのせい、だから滅べ。滅んでも家に帰ると姉はいるのだけれど。でも灼滅したら癒しは得られる筈なんだ、現実から目を逸らしてるわけではない、絶対に絶対に。
　なにかに打ち込むように晶はざくざくと刻む。
『ＯＨＨＨＨＨＨＨ！　ＮＯｏ』
　ぶつん！
　無造作に叩き込んだ七の手刀は人間ならば肝臓の位置。そりゃ悲鳴も途絶えるわ。
「目に映るな、殺す」
　ふ。
　七は口元を緩めた。
　笑み。
　でも、笑ってない。
　なんだこの矛盾？！
「いいわもう」
　刺し入れた手を９０度、ねじる。
「とりあえず殺す」
　ずぞっ！
　短い裂傷音と共に胸の位置まで滑らせた手刀は、その言葉を一切裏切らなかった。
『ジャパーニーズちっぱい！　フォーエバー！』
　ちゅどーん！
　脂と糖分をこれでもかとぶちまけて爆発するフライドバター怪人を前にも、静音は肩で息をつく。
「私からは、何も言えないね……」
　そうだね、もう何も言いたくない人がいっぱいだと思うよ。
「えっと、色々と後始末をしたいので、もう帰りませんか？」
　とっても重たい胸の異物を外したいめぐみの提案に、反対する灼滅者はいなそうだ。
　…………忘れよう。
　灼滅で得られた癒しより遙かに大きな疲労感を抱えて、灼滅者達は帰路につくのであった。

作者：一縷野望	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2014年11月30日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 2／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 10
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。