影発ち思うは夢の一時

    作者:幾夜緋琉

    ●影発ち思うは夢の一時
     千葉にある、とある国際空港。
     日本随一の大きさの国際空港には、日本人だけではなく、様々な国から日本に訪れた人々が沢山……。
     ……そんな中、おそらくアメリカから来たであろう、白人の男性が、空港内のラウンジのソファに腰を落ち着けていた。
    『ふぅ……流石にハードスケジュールだったな。たった二泊じゃ、時差に慣れる暇も無いもんだな』
     そんな言葉を英語で呟きながら、身をソファにもたれかからせる……数分すると、彼はそのまま夢の中へ。
     ……周りには、まばらに人は入るものの、静けさに包まれた空間は……彼を安眠へと誘うのであった。
     
    「皆様、お集まり頂き、誠に有難うございます。早速ではありますが、ご説明をさせて頂きますね?」
     と、執事服に身を包んだ野々宮・迷宵が、集まった灼滅者達に深々と頭を下げ、そして説明を始める。
    「今回の依頼……元となるのは、最近ちらほらと出始めている、シャドウの国外脱出です」
     と言いながら1枚の写真を差し出す迷宵。
     白人のビジネスマン風の男性……順当に、アメリカ人なのは間違いない。
    「彼にとりついたシャドウが、国外脱出を企てているようなのです。とは言え……シャドウが日本国外に脱出する事が出来るかは解りませんし、シャドウの目的も解りません」
    「とはいえ、例えば……シャドウが日本から離れたことで、サイキックアブソーバーの影響から放たれ、ソウルボードからはじき出される……という可能性は十分にあり得ます。もし国際線の飛行機の中でシャドウが実体化したとなれば……大惨事になる事は想像に難くありません」
    「なので、皆様には、彼が国外脱出する前に、その夢の中に潜り込み、シャドウを灼滅してきて頂きたいのです」
     そして迷宵は、彼の夢の中についての説明を加える。
    「彼の出身地はロサンゼルスはハリウッド……そうです、皆様もご存じの通り、アメリカ映画の中心地であるハリウッドです」
    「彼の夢の中は、ハリウッドの中心街です。皆様も知っての通り、星形のタイルに有名人の名前がある表通りです。とは言えシャドウの作り出した夢の中には、無人となった中央通りでしかありませんが……」
    「そんなハリウッドの中心街にシャドウは現れ、呑気に散歩しているみたいです……なので、見つける事自体は、さほど難しくはありません」
    「とは言えシャドウはダークネスであるのは間違いありませんし、下手に油断すれば返り討ちにすら遭いかねません。その辺りは皆さん、ご注意下さいね」
     そこまで言うと、迷宵は。
    「……まぁ、シャドウと闘うとなると、一点問題があります。それは白人の彼は、ラウンジのソファーにて寝ているという状態なのです。そんなに人はいる訳ではありませんが……人払いをする事が必要になるかと思います」
    「また、シャドウ自信は夢の中ならば、基本は近接攻撃のみの単純な戦闘方法です。一撃一撃は強力な攻撃力ですが……数の差を確りと利用すれば、勝つことは可能だと思います」
    「とは言えシャドウは、自分が明らかに不利になった、と認識すると、そのまま夢の中から撤退します。白人の彼の夢の中から逃がすことさえ出来れば問題は無いとは思いますが……皆さんも、気をつけて下さい」
     そして、最後に迷宵は。
    「シャドウが国外脱出出来るかどうかはわかりませんが、結果として不味い事になるのは想像に難くありません。その点を心にとどめた上で、作戦を遂行してきて頂ければと思います」
     と、また深々と頭を下げるのであった。


    参加者
    玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)
    平・等(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡・d00650)
    九条・有栖(高校生シャドウハンター・d03134)
    霞代・弥由姫(忌下憬月・d13152)
    セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)
    ユージーン・スミス(暁の騎士・d27018)
    日輪・瑠璃(汝は人狼なりや・d27489)
    輪舞・未兎(絢爛玉兎・d28416)

    ■リプレイ

    ●映る影の中
     迷宵より話を聞き、千葉県の国際空港へとやってきた灼滅者達。
     周りには大きなスーツケースを転がしながら、海外に向けて旅立とうとしている旅行者や、仕事を終えて帰国しようとしている外国人達の姿が多く行き交う。
     ……そんな国際色豊かなこの場所に集まった灼滅者達。
    「シャドウの国外逃亡ですか……前からお話は聞いていますけど、何が目的なのでしょうね」
    「……しかし、シャドウ達は何故海外に行こうとしているのかしらね? 海外へ行けば余計に動きづらいどころか、下手すれば夢の中に居る事すら難しくなるというのに、それをわざわざする……そして行こうとする車道のスートもバラバラ……と」
    「そうだね。こうも国外を目指すシャドウが居るって事は、それなりのバックが居るとみて間違いは無いだろうけど……情報が足りないんだよね」
     セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)、九条・有栖(高校生シャドウハンター・d03134)に、輪舞・未兎(絢爛玉兎・d28416)が小首傾げる。
     確かに今まで、幾度となくシャドウ達が国外へと脱出しようとしているのは間違いない。
    「……そうだな。ただ単にシャドウがハリウッドに行ってみたかった……等という事はあるまい。動けるか解らぬ国外に逃亡したいと思う程の何かが日本国内にあるのだろうか……?」
    「……さぁ、どうでしょう。少なくともどこかの国だけに固まっているという訳では無い様ですし、特定の国にだけ何かある、という事ではなさそうではありますわね」
    「そうですね。そういった点から考えると、今のところは国外脱出の指示を受けているかもしれませんが……何処の国、という指示は無いのかもしれませんね」
     ユージーン・スミス(暁の騎士・d27018)に、霞代・弥由姫(忌下憬月・d13152)と、日輪・瑠璃(汝は人狼なりや・d27489)が首を傾げ、そして。
    「まぁ、色々と気になる点はありますけれど、まずは依頼を片付けてから考えることですよね。油断しないようにしないとです!」
    「ああ。憎きシャドウめ。海外になんか逃すかよ!」
     セレスティに平・等(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡・d00650)が拳を振り上げ、そして。玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)が言い、そして灼滅者達は迷宵に聞いた、白人の青年が居るという、ラウンジの前へ到着。
     ……しばらく外から見ていると、人の入りはまぁまぁ居る様である。
    「人目に付く場所だからな。さっさと片付けようか」
     と等しの言葉に頷き、ユージーンはプラチナチケットを使用、更にスーツ姿になり……更に殺界形成を使用。
     その場に居づらい様に細工し、そして……入口から堂々と侵入。
    「……どうしました?」
     とラウンジの関係者が訪ねるのに、有栖が。
    「屋上で騒ぎがあったようなので、皆さんそちらに来て欲しいと他の肩が行ってました。ラウンジは彼に任せておけば大丈夫ですよ」
     とラブフェロモンを使い、空港関係者を一人ずつ誘導……更に中に入ったら、ユージーンと有栖が。
    「皆さん、申し訳ございませんが、こちらのラウンジはこれより先、貸し切りのお時間となります。申し訳ありませんが、他のラウンジをご利用頂けますよう、お願いいたします」
     日本語と英語で、そう皆に告げる……そして有栖も。
    「もし宜しければ、屋上からの眺めを御覧になられては如何でしょうか? 飛行機が次々と発着するのを見るのは意外に楽しいものだと思いますよ?」
     と。
     そして……殺界形成の効果もあり、一人、また一人……と、ラウンジを後にしていく。
     ……そして、ラウンジ内を歩き回り、迷宵から貰った写真で、その白人男性を……発見。
    「……こいつか。まったくのんきなもンだぜ。シャドウが寄生しているとも知らずにな」
     肩を竦める等に、周りの仲間達も頷く。
     そして、彼の周りに陣取り、ソウルアクセスの準備。
    「しかし今回はハリウッドのメインストリートという事ですし、少し楽しみです。どういう感じの所なのでしょう! ただ、人が居ないと少し寂しいような気がしなくもないですねー」
     そんなセレスティの言葉に、確かにな、と仲間達は頷く。
     ……そして、総ての準備が完了し、等が。
    「よし、行くぜ。準備はいいな?」
     その言葉に頷き、灼滅者達はいざ、青年の夢の中へとソウルアクセスするのであった。

    ●星の数ある夢演人
     ……そして、白人の夢の中。
     テレビで見るような、ハリウッドの豪華な光景……足元には様々な有名人の名前を、星形のプレートに埋め込んだ表通りが広がっている。
     ……だが、そんな有名な場所なのに、人っ子一人居ない昼間というのは……とても物悲しい雰囲気が漂う。
    「……景観は同じであっても、やはり人が居ないというのは不思議なものだな。人々の夢集う場所には、やはり人が居てこそ、だな」
    「そうだねー。でも気分はハリウッド俳優って感じかなー? なんて浮かれてちゃダメね。敵を囲んで、ちゃんと戦場全体を見回していかないといけないよね」
    「ええ……シャドウの好きにはさせませんわ」
     ユージーン、有栖、弥由姫が、口々に呟きながらも、灼滅者達はシャドウを歩き、探す。
     ……5kmもある大通り……端から端へ、と歩いていると。
    『……ほう……これがの有名人のか……面白いものだな』
     ……大通りを、下を向きながら歩いている、シャドウの姿。
     ある意味、人が居ないし、灼滅者達が来る事など思いもしていないだろうから……そんな行動に出ているのかもしれない。
    「あれ……ですよね……?」
    「ああ……ったく、あんなに油断しきってるのを見ると、頭痛くなってくるぜ……」
     瑠璃に頭を抱える等。
     ……ともあれ、シャドウを倒さなければならないのは間違いないので、気を取り直し……シャドウの背後から、気配を消して……近づいていく。
     ……そして。
    『ほう……これが、あの……!』
    「今だっ!」
    『っ?」
     煉夜の号令一下、一気に灼滅者達はシャドウへの奇襲を掛ける。
     弥由姫とセレスティの螺旋槍が、シャドウを狙い澄ます……が、シャドウは直撃を避ける様に、身体を反らす。
    『っ、何だお前達は!!』
    「何だ、と言われれば灼滅者だ」
    「そこまでだよ! ソウルボード内でこれ以上好きにはさせないんだよ!!」
     等がバトルオーラを背に纏いながら言い放つと、くっ、と唇を噛みしめるシャドウ。
    「シャドウさん、幾ら何でも油断しすぎではありませんか? 脇、がら空きでしたよ?」
    「全くだ。こんなのが宿敵だと思うと反吐が出るぜ」
     更に瑠璃、等が言い放った言葉に、シャドウは。
    『くそっ、後もうちょっとで国外脱出出来たと思ったのに……ついてねーぜ!』
     と、シャドウは言いながら、うごごご、と瘴気を纏う。
     そしてその瘴気と共に、灼滅者達に対し、対峙態勢を取る。
    『こーなりゃやけだ。お前達をぶっ殺して、堂々と国外に脱出してやる!!』
     そして、そのまま影を足元から這わせ、影から刃を一閃。
    「させません。古の英霊よ、我に邪悪を滅ぼす力を!」
     とユージーンがスレイヤーカードを解放、白銀の西洋甲冑姿になると共に、影の一撃を巨大な戦斧を振り落とし、たたっ切る。
    『ちっ……!』
    「……お前、ハリウッドにでも生きたくて飛行機に乗ろうとしたのか? ……ま、させねぇけどな」
     と煉夜が言い放つと、スターゲイザーをその頭上から降り注がせる……そして煉夜のライドキャリバー、白獄もキャリバー突撃でシャドウの後方に回り込んでの一撃。
     ……そして、ジャマーの瑠璃が。
    「封じます!」
     と影縛りでバッドステータスを叩き込むと、更にスナイパーの等、未兎も。
    「さぁ、みやげをくれてやる。持って行きな!」
    「ふふん、こんな所でスター気取りなんてしちゃってるの? せいぜい脇役らしく踊っててよね!」
     と、縛霊撃と螺旋槍で、更に足止めの攻撃。
     ……そして有栖もスターゲイザーで攻撃……等のナノナノ、煎兵衛もしゃぼん玉で攻撃。
     灼滅者八人が、次々と攻撃を叩き込む。
     とは言えシャドウ……自分が強いと思っている様で。
    『ガハハハ、効かぬ効かぬぞー!!』
     と、反撃、猛攻を続けて行く。
     ……その攻撃を受け止めるは煉夜、ユージーン、白獄……それに有栖と煎兵衛が癒しの矢とふわふわハートで確りと回復する事で、ダメージを次には残さない。
     そしてダメージを残さぬようにしながら、他の仲間達は、少しずつ、少しずつ……確実に包囲。
     又、包囲する最中には。
    「ねぇ、日本の外を目指す目的は何!? 誰の目的で動いてるの!?」
     と未兎が問いかけてみるが……シャドウは。
    『そんなの、お前達に言う義理はなーい!!』
     と言い捨て、更に更に攻撃を嗾ける。
    「ああ、言う義理はないな。なら……お前を殺すまでだ」
    「そうですわね。口を割らないのならば、殺すまでですわ」
     と等と弥由姫が宣告し……そして、シャドウとの戦いは、十数ターン続いていった。

    『く……っ、はぁ、はぁ……!』
    「どうしたの? 殺気までの自身は何処に行ったのかな?」
    『う、うるさぁぁい……!』
     未兎の言葉に、叫ぶシャドウ。
     ……もう、シャドウの体力は限界近いのは間違いない。
     最初の頃にあった余裕も既にすっかり消え失せていて……声にも覇気は無い。
     ……だが、そんな彼に対し、灼滅者達は余裕になることは無い。
     むしろ、不利になればシャドウが逃げおおせる可能性が高くなるから。
     ……と、シャドウがきょろきょろと周りを見渡していると。
    「……逃げようと思っても無駄ですよ。大人しくしていてくださいね」
    「そうだ。逃がさねえよ。オレ達が仕留めてやるぜ」
     と瑠璃、等しが宣言……それを具現化するように、完全に周囲を包囲。
     ……そんな灼滅者達の言葉に、シャドウは。
    『く、くっそーー!!』
     自暴自棄気味に、弥由姫の方へと特攻を仕掛ける。
     壁をぶち抜けば、解放された未来が待っている、と言わんばかりに……思いっきり。
     だが……その壁は、思ったよりも厚かった様で……。
    「……抜かせませんわよ」
     弥由姫が、カウンター気味に閃光百列拳を、シャドウの腸に叩き込む。
     ……その一撃に、背中からたたきつけられるシャドウ……そして。
    「これで、終わりにさせて頂きます!」
     と、セレスティのフォースブレイクが、シャドウを完全にたたき潰すのであった。

    ●心に残る海外の夢
    「……よし、任務完了だな」
     ふぅ、と息を吐き、スレイヤーカードに再度封印するユージーン。
     シャドウが目の前から消え失せると共に……すぐ、周りの空間は白いもやのようなものに包まれていき……灼滅者達の意識も、その靄の中に消え失せていく。
     ……そして、再び意識を取り戻すと、そこには……まだ眠りこけている、白人の姿。
    「……ところで、白人男性へのフォローは必要だろうか?」
    「まぁ……一応、起こしておく位はしたほうがよいかもしれませんね? ロサンゼルス行は……後2時間位ですし」
     等にセレスティがディスプレイに表示されたタイムテーブルを見て、一言。
     そして彼を起こし、彼がラウンジを急いで後にするのを見て。
    「しかし、外国ですか……私もいつか、旅行に行ってみたいものですね」
     と、ちょっとした外国へのあこがれを抱きながら、帰路へとつくのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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