オカマなワタシ☆

     弓束・小兎(兎起鶻落・d25316)は、こんな噂を耳にした。
     『シリアスな場面で男性をオカマ口調にする迷惑都市伝説が現れた』と……。
     都市伝説は筋骨隆々のオカマで、どんなにクールキャラであっても、オカマ口調にしてしまうようである。
     逆にそういったタイプの方が影響を受けやすく、最悪の場合は男に目覚めてしまう事も……。
     しかも、これが本当の自分なんだ、と錯覚してしまうため、例え催眠が解けたとしても、後戻りする事は困難。
     最悪の場合はオカマ口調になるだけでは済まず、男の道にまっしぐら!
     その状況で元に戻る事が出来たとしても、その先に待っているのは、絶望のみ。
     そう言った事も踏まえた上で、都市伝説を倒す事が、今回の目的である。


    参加者
    ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)
    笙野・響(青闇薄刃・d05985)
    明日・八雲(十六番茶・d08290)
    天倉・瑠璃(ヒルコ・d18032)
    天城・アカツキ(エタニティフラット・d23506)
    弓束・小兎(兎起鶻落・d25316)
    日輪・日暈(汝は人狼なりや・d27431)
    天輝・五星(クリスタルひとでちゃん・d30247)

    ■リプレイ

    ●性別の壁
    「……相手をオカマ口調にしてしまう都市伝説か」
     ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)は事前に配られた資料に目を通しつつ、仲間達を連れて都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説は強力な催眠を使って、相手をオカマ口調にしてしまうらしく、どんなにクールな相手であっても、その呪縛からは逃れられないようである。
     むしろ、そう言った相手の方が影響を受けやすく、そのまま何かに目覚めてオカマになった者までいるようだ。
    「つ、つまり、心まで男性を女にしてしまうのだな。おそろしや」
     天輝・五星(クリスタルひとでちゃん・d30247)が、全身に鳥肌っぽいものを立てる。
     考えただけでも恐ろしい相手だが、効果があるのは男性のみ。
     場合によっては、女性にも効果があるようだが、それは極稀。
     ほとんど、ないものとして考えた方が良さそうである。
    「オカマさんは、中途半端ではやっていられない、とは聞くし、どんな時でも口調は貫くと思うのだけど、普段してない人がそれやったら、間違いなくコントになるわよね。ラブシーンとかでなったら、お互い最悪。しかも男性は、そっちにいっちゃうかもとか、楽し……いえ、怖すぎるわね」
     笙野・響(青闇薄刃・d05985)が、気まずい様子で咳き込んだ。
     それはそれで面白い気もするのだが、そんな事を口にすれば仲間達……特に男性陣からどんな目で見られるのか分かったものではない。
     ここは本音を飲み込んで、男性陣に対して生暖かい視線を送るのが、利口な対応である。
    「はた迷惑なだけなような、男性にとっては超危険なような、よくわからん都市伝説じゃのう……」
     天城・アカツキ(エタニティフラット・d23506)が、気まずい様子で汗を流す。
     一応、確認されている被害は、オカマ口調になる程度のものだが、シリアスキャラにとっては致命的。
     場合によっては、キャラ崩壊にも繋がってしまうため、ある意味で驚異的な存在なのかも知れない。
    「まあ、この俺に限ってオカマ口調になる事はない。まったく、馬鹿らしい話だな」
     だが、日輪・日暈(汝は人狼なりや・d27431)は警戒するどころか、余裕な態度。
     どんな事があっても、オカマ口調にならないという自信があるため、囮役を買って出たのだか、都市伝説が確認された場所が近づくにつれて、妙に喉元がムズムズしてきた。
     それが何を意味しているのか分からないが、喉の奥に異物があるような違和感がある。
    「これも一般人社会のため……、世のため人のため、……フッ! ガイアが俺達を求めている。……レジェンドオブニューワールド故にスレイヤー。今日も世界はスーパークールハードで燃えるぜ……クッ、右腕が!」
     その途端、明日・八雲(十六番茶・d08290)が、右腕に違和感を覚えた。
    (「なんだ……? 悪い予感がする……そんな馬鹿な! 早すぎるっ!!」)
     咄嗟に右腕を押さえたものの、それでも胸騒ぎが収まらない。
     とにかく、クネクネしたい。オカマ口調で喋りたい。
     そんな歪んだ感情が右腕を通じて湧き上がってきた。
     これには、霊犬のおかゆも不安顔。
     『本当に大丈夫?』と言わんばかりに、八雲の顔を見つめていた。
    「さてさて、二人共頑張ってね! オカマな都市伝説さん、来るかな、来るかなー」
     弓束・小兎(兎起鶻落・d25316)がワクワクとした様子で、男性陣に視線を送る。
     ビハインドの下弦がオカマ口調になったら面白いと思ったが、今のところは効果なし。
     しかし、都市伝説が近づくにつれて、囮役の二人が妙にソワソワ、何やら落ち着きがない様子になった。
    「……これは色々な意味で目が離せないな」
     それに気づいた天倉・瑠璃(ヒルコ・d18032)がカメラを構えて、これからの展開に期待した。
     そうしているうちに、二人の様子がさらにおかしくなってきた。

    ●危険なワナ
    「このまま、キスでもしそうな雰囲気ね」
     ただならぬ雰囲気を感じた響が、仲間達を連れて物陰に隠れた。
     既に都市伝説のテリトリー。
     そのため、男性陣が都市伝説の催眠を受けても、おかしくないような状況であった。
     これで二人が熱いキスをするような事があれば、それこそ御褒美。
     握り拳で鑑賞タイムに突入するところであるが、二人ともギリギリのところで踏み止まっているようだった。
     そのもどかしさが何とも言えず、『早く相手を押し倒してしまえばいいのに……!』と思ったりもしたが、そう簡単に一線を越える雰囲気でもないようだ。
    「じゃが、このまま張りつめた状態でいる方が危険なのではないじゃろうか……? ある意味、シリアスな雰囲気と言えるしのぅ……」
     アカツキが物陰に隠れて二人を見守りつつ、不安げな表情を浮かべる。
     二人とも重々しい空気に包まれており、落ち着かない様子で体をクネクネさせていた。
    (「取り敢えず、やおい的展開になる事を期待しつつ、傍観の姿勢……。ここは心を鬼にして男子2人の頑張りを見守りましょう……嘘だけど」)
     瑠璃は期待の眼差しを二人に送りつつ、カメラでカシャカシャと写真を撮っていく。
    「このまま放っておいたら、どうなってしまうんだろうな、ふたりとも」
     五星が物陰に隠れて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
     何とも言えない禁断の雰囲気。
     チラチラと互いを見つめる視線に、そこはかとなく愛を感じる。
    「どうやら、現れたようだな」
     ヴァイスが物陰に隠れて、警戒した様子で身構えた。
     都市伝説はピンク色のボディコンドレスを纏ったヒゲヅラのオカマで、男性陣の存在に気付くと体をクネクネさせて近づいてきた。
    「あー、オカマだ――!! オカマが出た――!」
     それに気づいた小兎が、遠慮なく大声で叫ぶ。
    「……って、オカマで何が悪いの、失礼ね。いいから、黙ってみていなさい。いまから、この二人をオンナにしてあげるから」
     都市伝説が舌舐めずりをして、二人に視線を送る。
     それは岩をも砕くほどの勢いがある熱視線!
    「ちょっと、催眠とかやめなさいよ! 効かないわよ! 怖……はっ!」
     そこで八雲が気付く。
     いつの間にか、オカマ口調になっていた事に……。
     しかも、まったく違和感がなく、自然な感じで。
    「おかゆ、たすけて!」
     八雲が涙目になって、おかゆに助けを求めるが、その反応は冷たく、ドン引きムード。
    「おかゆ、これはちがうの! 不可抗力! やだ!」
     そのため、八雲が何を言っても、疑いの眼差しを送ったままである。
    「悪いけど、君にはここで消えてもらうよ。悪く思わないでねぇん?」
     すぐさま、日暈が都市伝説の前に陣取り、気取りながら髪を掻き上げた。
     瞬間に口を押える。
    (「俺は今、何を言った……? いや、気のせいだ、俺がオカマ口調だなんてそんな……」)
     だが、それは間違いなく、自分の口から吐き出された言葉……。
    「貴方みたいなセクシーな都市伝説でもぉ、灼滅するのがアタシ達の役目なのよぉん、ここで倒してあげるわぁん」
     それを確かめるようにして、再び言葉を吐き出して、ようやく気付く。
     自分の身が穢されている事に……!
    (「……この俺が、こんな悍しいオカマ口調だとぉ……!? 待つんだ、冷静になろう、そうだ、愛しい女の子の事を思い出そう。同じ一族のこころ……俺は君と一緒に……そうだ、いいぞ。そして、ライバルの朔太郎……気に喰わない奴だけど、俺、アイツの事嫌いじゃない……。むしろ逞しくて、頼りがいがあって、俺、アイツの事……はっ!?」)
    「嫌ぁぁん!?」
     そして、日暈は自らの内に秘めた乙女心に気づき、恥ずかしそうに頬を染めるのであった。

    ●本能のまま
    「おーっほっほっほっ! いいわよ。さあ、乱れなさいっ! 本能の赴くまま、互いを求め合いなさいっ!」
     都市伝説が満足した様子で、高笑いを響かせた。
    「違うのよぉ………アタシ、俺、アタ……いやっ! 俺は!」
     日暈が困った様子で頭を抱える。
     自分の意思に反して、オカマ口調。
     どんなに頑張っても、口調が元に戻る事はない。
     それどころか、この口調が元々の口調であったような気持ちになった。
    「ワ、ワタシだって……いや、アタシ……じゃなかった。アタイ……ああっ、違うの。そうじゃないのっ!」
     八雲も涙目。おかゆはオロオロ。
    「好みにけちをつける気はないけど、あなたは相手を無理やりオカマにしてどうするつもりだったの? あーんなことや、こーんなこと、しちゃうつもりたっだのかしら?」
     響が都市伝説をジロリと睨む。
    「おーっほっほっほっ! その通りよっ! 当り前じゃないっ!」
     都市伝説がえっへんと胸を張る。
    「……その通りなのか」
     ヴァイスが呆れた様子で頭を抱えた。
     ある程度、予想はしていたものの、色々な意味で頭が痛い。
    「いっそ、斬影刃で粉微塵にした方が……」
     瑠璃もげんなりとした表情を浮かべた。
     その方が世のため、人のため。そんなような気がしてきた。
    「おーっほっほっほっ! そんな事を言っていいのかしらぁん? 何なら、彼らをラヴラヴにする事だって出来るのよぉん」
     都市伝説がルンルン気分で、ふたりに視線を送る。
    「浄化だっ! 浄化っ!」
     五星も納得した様子で、バスタービームを撃ち込んだ。
     それに、このまま放っておくと、間違いなく二人のキスシーンを目撃する事になってしまう……!
    「……って、話を聞いていなかったの! そんな事をしたら、やるわよ、本当に……! やっちゃうわよっ!」
     都市伝説が警告混じりに呟きながら、素早くサッと横に跳ぶ。
    「アタシは……、女の子が! 好きだああああああああ!」
     その途端、日暈が身の危険を感じて、都市伝説に影喰らいを放つ。
     脳裏に浮かぶには、上半身裸の八雲が微笑む姿。
     マズイ、奴は本気だ。間違いない、と思うには十分なほどに危険な映像!
     そんな危険な誘惑を掻き消す勢いで、必殺の一撃を叩き込んだ。
    「はあん、可憐な乙女ゆえの運命なのね……」
     都市伝説は自らの運命を受けつつ、キラキラと涙を流して、この世から跡形もなく消滅した。
    「すべて……、終わったのだな。人をオカマにしてしまう恐ろしい都市伝説。もう二度と現れなければいいのだが……。まあ、また現れたら現れたで、良……いや、なんでもないっ!」
     五星が気まずく咳き込んだ。
     それはそれで面白いと思ったが、さすがにこの場で本音を口にするのは場違いである。
    「ところで、囮になってくれた二人だけど、ちゃんと元に戻るよね……? ま、まぁ戻らなくても、オネエ系も結構需要あると思うから、頑張ってね!!」
     小兎が乾いた笑いを響かせる。
     一瞬、嫌な予感はしたものの、二人とも何とか無事。
     場合によっては、何らかの後遺症が残るかも知れないが、それはそれ。
    「ま、まあ目覚めたからと言って、それしか見えなくなるわけでもなし……?」
     アカツキも何やら悟った様子で、一緒になって乾いた笑いを響かせた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 13/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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