さあみんな、ゾンビをガッてする時間だよー!

    作者:空白革命

    ●ガッてするんだよー!
     ここは日本のどっかにあるショッピングセンター。
     普通なら家族連れやらカップルやらがわーきゃーしてそうなもんだが、ここには人っ子一人いなかった。どころかお店すら一件も無く、巨大な廃墟と化していたのだ。
     だが誰も居ないってわけじゃない。
    「うーあー」
     がらっとクレープ屋のシャッターが開き、エプロンをつけたゾンビが現われた。
    「うあー!」
     がらっと雑貨屋さんのシャッターが開き、ヒッピー風のゾンビが現われた。
    「うあーう……」
     フードコートの机の下から仕事をクビになったが家族にそのことを言えず妻の作ったお弁当を消化するためだけにフードコートで一日時間を潰すサラリーマン風のゾンビが現われた!
    「かゆ……うま……」
     ペット同伴可のエリアをワンちゃん抱っこしたまま歩く毛皮コート着た金持ち主婦風のゾンビが現われた!
     そうここは、ゾンビによるゾンビのためのゾンビだらけショッピングコートと化していたのだ!
    「「うぃーあー!」」
     
    ●だけどやっぱりガッてやるんだよ!
     はぐれ眷属ゾンビがたまっているエリアがあるという。
     はぐれ眷属というのはダークネスが兵隊として作ったはいいけど死ぬなり何なりして野放しにされたモンスターたちのことである。
     このゾンビたちもそのひとつらしく、廃墟のショッピングモールにたまって今日もゾンビライフを満喫しているという。
     が、廃墟マニアが入っていったら大変だ。ゾンビライフに強制勧誘されるにちがいない。
     というわけで、皆で行ってガッてしようという話になったのだった。

     ショッピングモールは大きく分けて二つのエリアに分かれている。
     北側と南側だ。この二つにチームで分かれ、そこらじゅうでわーわーゆーてるゾンビをガッてしよう!
     大丈夫、武蔵坂の依頼だよ!


    参加者
    水瀬・瑠音(蒼炎奔放・d00982)
    氷室・翠葉(キュアブラックサンダー・d02093)
    文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)
    二十世・紀人(ボエリスト・d07907)
    天槻・空斗(焔天狼君・d11814)
    来海・柚季(手の中の刻・d14826)
    ドラグノヴァ・ヴィントレス(クリスタライズノヴァ・d25430)
    マイリー・スザイル(ぶらぶら野郎・d30963)

    ■リプレイ

    ●日常系アニメくらいのノリで行なわれるゾンビ殴りタイム
     ゾンビあふれるショッピングモール。
     昔は沢山人が通ったんだろうなあというゲートを潜り、立ち入り禁止のプレートもくぐり、なぜか鍵の開いている両開きのドアをくぐれば……。
    「「うーあー!」」
     今ショッピングの最中なんですよという顔をしたゾンビたちが一斉にこっちを振り向いた。
    「おお、なんというゾンビパラダイス」
     『腐女子』と書かれたシャツをぱたぱたさせる水瀬・瑠音(蒼炎奔放・d00982)。
     足下では『腐乱犬』と書かれたシャツを巻いた霊犬ほむらーんがこんなのもう慣れっこですよという顔で座っている。
    「瑠音、またほむらーんにそんなの着せて。でもそんな自由な瑠音が僕は好――」
     まるで保護者のような顔で肩をすくめる氷室・翠葉(キュアブラックサンダー・d02093)。
     着ているシャツの文字は『腐男子』。ちなみに佐藤さん(ナノナノ)には『喪腐喪腐』。
    「って僕らも着てる!?」
     親指を立てる瑠音。
    「パフォ枠余ってたから書いた」
    「何してくれてるの!?」
    「嫌だった?」
    「別に嫌じゃ無いよ結婚を前提に付き合ってよ!」
    「おいおいペアルックか? 仲いいな。たい焼き食うか?」
     気だるそうに頭をかく文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)。
     着ているシャツの文字は『キルミー○イベー』。
    「って俺もかよ!」
    「全員分やっといた」
    「他にもやるべきこと沢山あるだろ! ってまさか……」
     咲哉はおそるおそる振り返る。
    「ん?」
     まがまがしい鎌を担いだ二十世・紀人(ボエリスト・d07907)と目が合った。
     紀人はニヒルにニヤリと笑い、自らの死に神めいたローブを指さした。
    「俺がそんなもん、着るわけねえだろ」
    「そ、そうか……それはよかった……」
     ほっと胸をなで下ろす咲哉。
     紀人はゾンビの群れを見やり、好戦的に口元を緩ませる。
    「ったく、ショッピングモールとゾンビってのは定番だよな。映画だのゲームだのでよ」
     ちなみにローブの下には『これはゾンビですか?』と書かれたシャツがあった。

     一方その頃北側ゲート。
    「わー、ゾンビがいっぱいだなぁ」
     額に手を翳してあたりを見渡すマイリー・スザイル(ぶらぶら野郎・d30963)。
     入ってすぐにフードコートが広がっており、普段なら沢山いたんだろうなという人々がそっくりゾンビで再現されていた。一応エリア内に誰か入ってこない限りは襲ってこないのか、一定の動きをずっと続けていた。
     そんな光景を前に、ドラグノヴァ・ヴィントレス(クリスタライズノヴァ・d25430)はスマホを取り出した。
     メッセージアプリが起動している。
     『こっちゾンビだらけ』という書き込みと共に、三国志で柿を食ったら毒だった時みたいなスタンプが送信されてきた。その後で『Tシャツ作戦成功』と書かれていた。
     意味が分からん。
    「さておき……スケボーで移動しながらゾンビを踏み殺したくなる光景ね、これは」
    「なんだっけ、それ。そういうゲームあったような気がするよね」
    「夜はともかく、お昼に見るといっぱいのゾンビさんは、その……恐くないですねぇ」
     おっとりと首を傾げ、両手で輪っかを作る来海・柚季(手の中の刻・d14826)。
     ちなみに手はガッタガタ震えていた。
     何で輪っかつくってんのかって、マネーをギャザギャザするためである。
     その下では落ちてきた小銭を集めきれるように、犬変身した天槻・空斗(焔天狼君・d11814)がキリッとした顔で竹籠を背負っていた。白い小型犬だった。
     ここへ入るときに『俺は流れに身を任せる。うまく使いこなせよ』と言ってサングラスをクールに外しながら犬変身したので、柚季はお言葉に甘えて利用させて頂いた。
     そういう意味じゃねえよと突っ込んでくれる親切な人は、残念ながらいなかった。
    「ところで……ねえ、その籠」
    「ええ、現時点で六桁を超えてるんですけど、何事なんでしょうねぇ」
    「大事だよ。大事件だよ」
     籠の上に諭吉さんが山と積まれていた。なんなの、ショッピングモールを再現するためだけに現金を流通させているの? ゾンビ間で?
     ……とまあ、こうして今回のゾンビ狩りは始まったのだった。


    「……向こうで何が起こってるんだ?」
     瑠音はメッセージアプリに表示された『札束風呂でダブルピース』のスタンプに首を傾げ……ながら、片手でゾンビをぶった切った。
    「まあいいか。ヒャッハー、ゾンビは消毒だぁー!」
     片手に大型剣。片手に大型杭打ち機。瑠音はほむらーんと一緒になってゾンビの群れに自ら飛び込み、群れごとなぎ倒した。
     だがゾンビたちとてアホではない。100均一ショップから顔を出したゾンビが庭用煉瓦を投擲してきた。
    「危ない瑠音! あと付き合っ――あ痛!」
     庇いに入る翠葉。その額に煉瓦が直撃した。
     慌ててふわふわハートする佐藤さん(ナノナノ)。
    「今更だけど、ふわふわハートほど何やってんのかハッキリしない技もないよな」
    「瑠音が何言ってんのかわかんないよけど好き」
    「今度ね」
    「イチャついてる場合じゃねえぜ。次が来る」
     鎌を握り込む紀人。
     彼めがけてゾンビの集団が合体攻撃をしかけてきた。具体的には組み体操のサボテンみたいなやつを作ってそのままちょこちょこ走ってきた。
     合体攻撃ってそういう意味じゃねえよと突っ込んでくれる人は残念ながらいない。
    「うーあー!」
    「威勢はいいみたいだな。俺の歌を聞きな――」
     紀人は息を大きく吸い込んで、拡声器ごしに歌い始めた。
     歌い始めたん……だよね? そう思うくらいには聞きがたい騒音だった。音を使って暴徒鎮圧をする非殺傷兵器があった気がするけどあれに近かった。
    「「うあー!?」」
     けどなんだか律儀に吹っ飛んでばたばたと倒れるゾンビさんたち。
    「うあー!」
    「うあ!」
     このままじゃ勝てない。あれを使うぞ。みたいなアイコンタクトをしてガッと集まるゾンビたち。
     ジャンプしたゾンビの両足を二人のゾンビがそれぞれ肩に固定し、彼の両腕をそれぞれ二人のゾンビが足で固定し、最後に一番上にゾンビが肩車した。
    「「うあー!」」
    「五体合体……だと……?」
     一応反応してあげる咲哉。
     右腕ゾンビが硬くて重そうな電子レンジをハンマーみたいにして叩き付けてくる。
     ほむらーんの首根っこ掴んでレンジに叩き付ける瑠音。
    「ぎゃん!?」
    「ほむらぁーん!?」
    「おのれよくもほむらーんを」
    「今叩き付けたよな自分で」
    「うあー!」
     左腕ゾンビが物干し竿を握って振り込んでくる。
     前へ踏み込み、刀を斜めに切り上げる咲哉。物干し竿がぶった切れて飛んでいく。
    「まったく、隙だらけだな。連携技で行くぞ」
     咲哉は刀を一度鞘に収めると、ぐっと腰を捻って力を溜めた。
     合体ゾンビが両腕ゾンビを振りかざして迫ってくる。
    「文月咲哉、参る――ッ!」
     ギリギリのタイミングで抜刀。巨大な三日月状エネルギーが発射され、右腕ゾンビをぶった切って落とした。
     たたらを踏む合体ゾンビ。
    「一緒に行くぞ翠葉」
    「それは告白とみて」
    「よくない」
     同時に飛び出す瑠音と翠葉。
     二人は紀人の肩を踏み台にして高く跳躍した。
     翠葉の繰り出した鋼糸が左腕ゾンビに巻き付き、強制的にパージさせる。と同時に瑠音の斬撃でもって頭ゾンビを切り落とした。
     わたわたとバランスとろうとして失敗し、そのまま仰向けにぶっ倒れる合体ゾンビ。
     瑠音と翠葉は同時に着地。
     咲哉はゾンビに背を向け、紀人もまたローブをひらめかせてパチンと指を鳴らした。
    「掃討、完了っと」
     ゾンビが倒れたと同時に、彼らはゲシュタルトバスターの爆発に包まれた。


     空斗は身を低くして素早く駆けた。風、そしてダーツの矢が頭上を通り過ぎる。ぎらりと光る空斗の目。地を蹴り、ゾンビへと飛びつく。
     そして空斗の拳がゾンビの鼻っ面へと叩き込まれた。
     ……という一連の動作を犬状態でやった。倒れてるゾンビに対して。
     後ろ足でバランスをとりながら両前足でぺちぺちやり続ける空斗。
     ゾンビがびくっと動いた気がしたので空斗は素早く飛び退いた。みよ、軽やかなヒットアウンドアウェイ。
     視聴者の皆様が誤解しないように言っておくと、変身しながら戦闘できるのは人造灼滅者か人狼くらいなもんである。
    「今日は随分儲かりましたねえ」
     柚季はリストラサラリーマン風のゾンビのネクタイをねじり上げつつ、腹に鬼神変をドスドス入れていた。なんで殴ってたのかって、ゾンビが柚希が安全違いに置いておいたクッキーをつまみぐいしたからである。食い物の恨みは万死に値する。
    「右も左もゾンビだらけね」
     一方で、ドラグノヴァがスケボーに乗ってフリーエリアを走行していた。
     ゾンビの群れを右へ左へかわしつつ、斧でもってざくざくぶった切って進むというプレイである。もう一回言うが、プレイである。
     スポーツショップからがらがら転げ落ちてきたボーリングの玉を転がしてみたりパイを投げてみたりチェーンソーとオールをガムテープであわせてみたりやりたいほうだいのプレイである。プレイである。
    「数を減らしていこう。こういうのは確実に仕留めるのがいい……って思ってるの、僕だけかな、もしかして……」
     真面目にゾンビをシューズで蹴りつけ、真面目にゾンビをナイフで切りつけ、真面目にゾンビを一体ずつ倒して進んでいたマイリーはどことなくマイノリティを感じて不安になった。
     すると。
    「「うーあー!」」
     こいつら強いから皆の力を合わせて戦うんだみたいなかけ声と共に、ゾンビたちが一箇所に集まった。何のエフェクトかぴかーっとゾンビたちが光に包まれる。
    「あれは……みんな、構えてっ」
     武器を構え、キッと巨大な敵を睨めつけるドラグノヴァ。
     光がはれるとそこには……。
    「「うあーう!」」
     二十人くらいでピラミッド型に積み上がったゾンビの群れがいた。
     真顔で振り向く柚季。
    「ドラグノヴァさん……?」
    「見たことも無い防御陣形だわ。一人で攻略できる相手とは、思えないわね」
    「いや、その……」
     人状態に戻った空斗が、柚季を挟む形で立った。
     サングラスをかけなおす。
    「俺の力が必要なようだな。……何をすればいい?」
    「いや、あの……」
    「来海さん、考えたら負けかもしれないよ?」
     後ろで頬をかくマイリー。
     きゅるきゅると角を回転させながら、横目でクールな視線を送ってくるドラグノヴァ。
    「空斗、マイリー。あの防御を崩せる?」
    「任せて貰おうか」
    「うん、大丈夫だよ」
    「最後の隙は私が作るわ。トドメは……任せていいかしら、柚季?」
     後ろ髪をふぁさぁっとやりながら(角はきゅるきゅる回転しながら)視線を送ってくる。
    「あ、はい……」
    「じゃあ、行くわよ」
    「「うあー!」」
     ピラミッド状態のままずいずいこっちに迫ってくる合体ゾンビ。
     空斗は勇敢に突撃し、両腕を突きだした。
    「目覚めろ。疾く翔ける狼の牙よ。吼えろ――焔天狼牙ッ」
     両刃の剣が発生。空斗はそれを掴むと、突きの構えで引き絞った。すると刀身が中央から左右にスライドオープンし、中央から黒い炎がわき出した。
    「いくぜ」
     生み出された巨大な炎が巨大な剣となり、ゾンビの群れを左から右に大切断する。
     一気にバランスを崩され、崩壊を始めるゾンピラミッド。
     空斗は跳躍し、ゾンピラミッド上部を蹴りつけた。
    「そっちは任せたぞ」
    「ん、任されたよ」
     横から回り込むようにダッシュするマイリー。
     懐に手を突っ込むと、何本かのナイフを引っ張り出した。
     ばらばら崩れて落ちてくるゾンビたちへ、すれ違いながら次々にナイフを突き刺していく。
     マイリーがゾンピラミッドを通り過ぎた時には、上部の連中の額にざっくりとナイフが刺さって転がっていた。そうでないものは首や腕を切断されている。
    「ふう……こんなものかな」
     日本刀を肩かつぐようにして振り返るマイリー。
     ピラミッドの上層部を破壊されたゾンピラミッドは、このままではいかんとばかりにピラミッドを再構築。一回り小さい形になって再び威嚇行動をとる……が。
    「何度防御を固めても無駄よ」
     角を高速回転させながら高速で接近するドラグノヴァを見つけた。
     スケボーに両足を乗せ、ジャンプ台で跳躍。空中で離脱すると、空中でくるくると回った。
    「結局のところ。最大の技は、これよ」
     ドラグノヴァはきりもみ回転しながらゾンピラミッドの頂点めがけてドロップキックを繰り出した。
    「うあー!」
     四方八方に砕け散るゾンピラミッド要員。
     最後には四つん這いのゾンビ一体のみが残った。
    「うあ!?」
    「えっと、すみません」
     頭のすぐそばで、ロッドをゴルフクラブみたいに構える柚希。
     いちにのさんでフルスイング。
     頭が『うあうあうー!』とか言いながら飛んでいった。
     ついでにくるんと回ってゾンビの腹に蹴りを叩き込み、一緒に飛ばしてあげた。
    「あ……なんだか、恐いの飛んでいきました」

     こうして終了したショッピングモールゾンビ掃討作戦。
     彼らは手に入れた戦利品片手に本物のショッピングモールへ行き、軽く豪遊したという。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年10月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ