赤城山、某所。
羅刹佰鬼陣の戦場となったこの森の一角に、行進するゾンビの姿があった。
――ウゥ、ァア……
時折洩れる喘鳴のような吐息とともに、夜の森をしずしずと進む三体のアンデッドたち。やがてその歩みを止めたのは一本の木の前だった。
何の変哲もないその大木に、しかし虚ろな瞳は何を見たのか。おもむろに膝をつくと、懐から球体状のものを取り出す。
犬士の霊玉だった。
地面に置かれた犬士の霊玉はしばらく何の変化も起こさなかったが、不意にその周囲に風が渦巻いた。どす黒い気体に霊玉は一時見えなくなるが、不可思議な風は数秒で消え去る。
そしてそこには、巨大な肉塊をとなった霊玉があった。
急速な成長を遂げた霊玉は、ついで「変態」を起こす。アンデッド達の物言わぬ六つの瞳が見守る中、現れたのは一体のダークネス。
鬼の仮面を被った、水晶鎧の騎士だった。
大鎌を携えたその騎士の鎧――身体の中央に浮き出た『智』の霊玉が、月光に鈍く輝いていた。
「みんなはもう、スキュラの『犬士の霊玉』については知ってるかな?」
天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)が聞く。大淫魔スキュラが八犬士が集結しなかった時のための保険だ。これは人間やダークネスの残骸を徐々に取り込んでいき、新たな予備の犬士を創り出すものだ。
「今回それをね……アンデッドが持ってたの」
歯切れ悪く説明を始めるカノン。彼女にも理由は分からないが、三体のゾンビが何故かその霊玉をもって、多くのダークネスが灼滅された戦場跡に現れるらしい。
「赤城山中だよ。わたしたちのいた『病院』が合流する前に大規模な戦いがあった場所だね。そこにノーライフキングが予備犬士として生まれるんだよ」
このダークネスは生まれた瞬間は通常のダークネスと大差ないが、時間が経過するにつれ「予備の犬士」として相応しい力を得ていく。そのため肉塊から生まれた直後に短期決戦を仕掛けなければいけなく、戦いが長引けば闇堕ちでもしない限り修理が難しくなってしまうだろう。
「この予備犬士の霊玉は『智』だね。ノーライフキング――エクソシストと大鎌のサイキックに似た技を使うよ。あとは、その配下として霊玉を持ってきたゾンビが三体」
一体何なんだろうね、と首をひねるカノン。ゾンビたちの戦闘力は智のスキュラダークネスに比べれば天地ほどの差がある。こちらは脅威ではないだろう。
多少の謎は残るが、八犬士の空位を埋めるべく創られた存在――その脅威と放置した場合の被害は未知数だ。
「敵の潜在能力は高いから、みんな気を付けてね!」
そう言って灼滅者たちを見送った後、カノンはふと真顔になった。
「……まさか、スキュラダークネスを利用して暗躍しようとする者がいる、の?」
参加者 | |
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卜部・泰孝(大正浪漫・d03626) |
斉藤・キリカ(闇色子守唄・d04749) |
諫早・伊織(糸遊纏う孤影・d13509) |
キング・ミゼリア(ロイヤルソウルはうろたえない・d14144) |
御影・ユキト(幻想語り・d15528) |
絡々・解(線引き・d18761) |
馬場・万(覆轍のミミックリィ・d19989) |
カノン・アシュメダイ(アメジストの竜胆・d22043) |
●
群馬県の中央部、赤城山。
ここではかつて羅刹佰鬼陣――地獄絵図から生まれた「鬼」たち、そして羅刹の闊歩する領域が展開されていた。
ダークネスによる絶対勢力圏が出現するのを防ぐため、武蔵坂の生徒たちが戦ったのは去年の夏頃……あれから一年以上が経過している。
「赤城山、久しぶりですね」
御影・ユキト(幻想語り・d15528)が周りの木々に目を走らせつつ歩む。中には当時の名残と思しき木々や岩が散見され、妙な気配を醸し出していた。
――そう感じるのはおそらく、これから戦う相手のせいでもあるのだろう。
「スキュラダークネスの予備犬士ですか」
カノン・アシュメダイ(アメジストの竜胆・d22043)が見えてきた木に目を凝らす。戦火の爪跡が生々しく残る木だった。予知に聞いた木に間違いない。
「問題はどうしてゾンビが持っているのか、ですが」
「それこそ謎、まさに謎だね!」
興味津々と絡々・解(線引き・d18761)が帽子の下で笑みを浮かべた。ゾンビはどうして犬士の霊玉を持っているのか、どこで見つけたのか、そしてその行為に目的があるのか。
あるなら、ダークネスが関与してるのは間違いない。既にいくつか推察は出ていた。ユキトが思案顔をする。
「智の犬士で不死王といえば、カンナビスでしたっけ? 智に長けてそうな性質ですが」
「パズルとか、得意そうだよね! あまり表には出ないけど」
「確かに。何を考えているやら……謎ですね」
口数の対照的なユキトと解の間で会話が成立する。それほど興味深い符丁――ただし、厳密にはまだ仮定内での話だ。
「ま、背後にどんな存在が居ようとも、予備犬士の撃破に集中だぜ」
「そーね、唯でさえ面倒臭いんだから」
馬場・万(覆轍のミミックリィ・d19989)は以前も不死王の予備犬士との交戦経験がある。時限付きの戦闘に加え、今回はゾンビが三体もいる。斉藤・キリカ(闇色子守唄・d04749)も頷いた。
「我、推察悩めども答は暗中霧中。活殺生死の理をはずれし徒に尋ねるも詮なきか」
念仏のように呟く卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)の視線の先、アンデッドたちの姿が遠く見えた。程良い場所に隠れれば、ゾンビらはやがて木の前で跪く。置かれた霊玉は瞬く間に成長し、水晶の鬼面騎士が現れる。解が呟いた。
「前に見たのと形が全然違うけど、同じような肉塊なんだよねぇ……不思議」
「騎士、なぁ……」
頃合いと、諫早・伊織(糸遊纏う孤影・d13509)は進み出る。主の意により生み出されたダークネス。さて今回その主君はだれなのか、興味自体は尽きないが。
「悪いけど、主君が生きてるなら会わせるつもりは、ありまへんぇ」
「そういうコトね」
目敏く灼滅者に気付いた不死王の前に、堂々と立つキング・ミゼリア(ロイヤルソウルはうろたえない・d14144)。敵の身は、既に尋常でないエナジーに溢れている。これでさらに力が増し続けていくという。果たして止めなければどこまで伸びるのか。キングとてその念と無縁ではない。
だが自らは灼滅者。好奇心は命取り。そう思い魔杖――通称GoKを構えた。
「La lumiere du noir de jais」
漆黒の光を。そう紡いだカノンの瞳は酷薄な光を浮かべている。アンデッドたちが緩慢に動きだした。鬼面の騎士が大鎌を掲げれば、生み出された複数の鎌が旋転しながら飛来する。
「悪いけど、立派な犬士になって貰っちゃ困るから」
キリカが剣で迎え撃つ。傍らのビハインド、イヴァンが細身の黒剣で続く鎌を払えば、駆け出した。
「だから此処でお休みしてって頂戴?」
剣から光が爆発した。立ち塞がるゾンビの一体を、白光の斬撃が斬り裂く。
●
胴を半ば両断されたゾンビ。身体を傾げるも、その歩みは止まらない。
「ふむ……」
泰孝が見たところ、ゾンビはいずれも護り手。作戦との兼ね合いを考えれば長くても数分で倒せる。支障は少ないと影を伸ばし、最初のゾンビに仕掛ける。
問題は、予備犬士の方だ。
「キャスターか」
万が槍の先から放った氷柱の弾丸を、騎士は軽やかな動作で躱す。見た目よりも機敏だった。伊織とユキトが槍を構える。
「15分以内の灼滅のため、まずはゾンビからやね」
「ええ。手早くいきましょう」
二人の槍が螺旋を紡いだ。伊織の一撃に最初のゾンビが崩れ、ユキトが別の個体を攻撃。カノンが続けて剣を叩きつけた。
「滅びろ」
手応えと同時にサイキックを放出、刃から光があふれ、十字剣は停滞なくアンデッドを両断した。別たれた身体は宣告通り塵と化して消える。スナイパーの正確無比な斬撃だ。ペースは悪くない。
残る一体は無傷――しかし、
「ミキちゃん、畳みかけよう!」
解がビハインドの天那・摘木に言い、魔導書から栞代わりの護符を引き抜き投げた。ゾンビに突き立ち体勢が崩れたところを、摘木の霊障が襲い転倒させる。
「伊達にゾンビ相手に死亡フラグを踏んでないわ」
王の前に頭を垂れよ。ゾンビが起き上がるより早くその胸元にGoKを叩きつけ魔力を爆発させるキング。爆煙が晴れた頃には、くぼんだ地面にアンデッドの姿はない。
残るはダークネスのみ――件の騎士はしかし、灼滅者の様子を静かに見守るのみだった。
まるで灼滅者たちの動きを、観察していたかのように。
「……さすが天地ほども違うと、言わはれよるだけありますなぁ」
大鎌を構えた敵から伝わる気配に、伊織が緊張しながらも軽口を叩く。
前哨戦は理想的な運びでロスは一分。この一分が後にどう響くか、その時になるまで分からない。
否、良い方へ手繰り寄せるしかない。
「鬼をかぶる、とはえぇ度胸――潰しますぇ」
そして手繰り寄せるべく、伊織は自らを鼓舞し影を放った。
●
地を這うように影が進み、鋭い刃先が波打つ。
対してノーライフキングは、手のひらを迫る影に向けた。
直後、生まれた光が影に突き刺さった。高出力の光は影を瞬時に貫き、地面を穿つ。そのまま地面を削りながら軌道を変え、灼滅者たちへと牙をむいた。
そして凶悪な光は一筋だけではない。
「これは……」
まるでセイクリッドクロスと同じ。ユキトが光の掠めた肩を押さえる。速い上に威力があった。最も近い前衛が被害を受け――必然的に護り手が庇う形となる。
「大丈夫。あたしとイヴァンがディフェンダーしてて、誰かが倒れる訳ないでしょ!」
痛みを意地でこらえ、キリカが前に進む。叩き込んだ剣が鎌と激突した。不死王は力任せに鎌を振るい、長く突き出た刃が獲物を斬殺すべく弧を描いた。凄まじい斬撃が風を巻き起こし、身体を沈めたキリカの頭上ギリギリを薙いでいく。
「なにすんのよ!」
逃げ遅れた髪の毛先が斬られ、目に怒りを灯したキリカの影が伸びあがる、黒の触手は飛び退ろうとした騎士の足に巻き付き、その動きを鈍らせた。解がその隙に、死角から仕掛けた。気配を察した鬼面騎士の周囲、上下左右の虚空から鎌の刃が飛び出てくる。
「これは黒、だね」
触れれば即、身体が別たれそうな刃の襲撃に解が呟く。意味などない。ただの黒。そして今回は「攻める」予定だ。刃同士の隙間に身を躍らせ、腕を裂かれながらも抜け出る。手にした護符栞で斬りつけた。そのまま機動の要と思しき部位を切り裂く。水晶鎧が僅かに揺れ、その動きが停滞する。
「貴様と長く付き合うつもりはない」
カノンはその隙を見逃さなかった。続けて死角から踏み込む。
『――』
ダークネスの応えは、大鎌の一振り――だがその一撃はやや早かった。余裕でやり過ごすと、殺戮姫は斬撃の間合いへ。
直後、カノンは敵の意図を悟った。
鎌に引き裂かれた大気が咆哮を上げる。斬られた空間から噴き出す、どす黒い瘴気。闇色に凝縮した衝撃波が正面からカノンを捉え、小柄な身体が宙を舞った。衝撃波は彼女を巻き込んだまま岩場を砕き散らしていく。
「カノン!?」
「まだ、大丈夫です。こちらも直前に攻撃したので」
万の声に岩場から立ち上がるカノン。彼女へ泰孝が癒しの霊力矢を放ち、万が押し寄せてきた瘴気の奔流に影で対抗する。刃状に伸ばした黒影は瘴気を切り裂き、水晶の鎧を僅かに穿つ。
「確かに当てやすくなってきたな」
影による捕縛に二人分の黒死斬。それらのダメージ自体は微々たるもの。しかし機動力を削ぐその攻撃は、確実に攻撃の「機」を生みだす。
「その機、無駄にしません」
ユキトが肉薄した。虚空より生み出た刃をかいくぐり、アウトレンジから拳の間合いへ。しかしその中間には大鎌の間合いがあった。唸りを上げる鎌は、死神の如き正確さでユキトの首筋へ向かう。
「よそ見、してたらあきまへんぇ」
その刃を伊織の蛇腹剣が受け止めた。激突した瞬間に伊織は刀身を展開、衝突のエネルギーを利用して引き伸びた刀身を頭上で旋回させ、停滞なく剣舞を仕掛ける。至近距離で生まれた刃の嵐は間断なく鎌を打ち、その防御を上方へこじ開けた。
そこでユキトが拳の間合いに入った。ハーフフィンガーグローブを着けた手が閃光のオーラを生み出す。
水晶の鎧に打ちつけられる、拳の猛襲!
一連の威力は重量感のあるダークネスにも効いたのか。よろめくように一歩、後退する不死王の騎士。だがそこからの反撃は早い。上方から落とされた鎌は蛇腹剣の刃を弾き散らし、その時の衝撃だけで伊織の身体を吹き飛ばす。斬撃は今度こそユキトを襲った。足を刈る一閃を跳び上がって回避――するも彼女の片足がぱっくりと裂け、血が流れ出る。あまりに速い斬撃が生み出した真空波の刃だった。「死」の力を宿した一撃は、纏う風すら凶刃に変える。直撃を受ければ言うまでもない。背中を駆ける死の吐息を感じつつ、ユキトは空中で身を捻る。無事な方の足で炎の蹴りを放った。
腕をかざして頭部への攻撃を守る死鬼騎士。しかし蹴りの真意は、死角を生み出すことにあり。
鬼の仮面に、腕の上から本命の鬼神変が叩き込まれる。渾身の一打を放ったキング。だが不死王は微動だにしなかった。嘲弄の視線にキングが憤怒の声を放つ。
「ナメたら、アカンぜよォォ!」
爆発するような呼気と共に、密着した拳を振り抜いた。衝撃に大気が揺れ、不死王は今度こそ地面に叩きつけられる。
「少しは効いた、みたいね。安心した、わ……」
肩で息をするキング。そこで五分経過のアラームが鳴った。ダークネスが立ち上がる。その顔から砕けた水晶が零れ落ち――声が聞こえた。
「存外、やるな」
鼻から顎にかけての水晶面はそのままに、知性の光を放つ瞳がのぞく。
「では俺が滅びるかお前らが死ぬか、改めて勝負といこう」
●
残り十分。
スキュラダークネスの手が輝き、光がキングの身体を貫いた。倒れるより早く鎌が投擲され、刃に宿る力を見てキリカが飛び込んだ。
斬――
「……っ」
衝撃が抜けた。膝を突いたキリカのシャツが真っ赤に染まっていく。
「生きてるか。タフな女だな」
「うるっさいわね。女の意地舐めんじゃないわよ!」
キリカが影を立ち昇らせ、反撃の刃を放った。光が爆発し影が散る。そして次に瘴気が呼び出された。黒い波濤が周囲に広がり、伊織やユキトが押し流される。解や摘木、イヴァンがキングとキリカを守りながら後退するが、瘴気は体力を奪った。泰孝が回復を、万とカノンが後退の援護を行う。
残り九分。深手を負った者が治癒を行い、万が駆けた。
「血の通ってなさそうなお前に、熱い一撃を与えてやるぜ!」
「ならお前は、冷たい土に眠れ」
戻った鎌を振るう不死王と、万の蛇腹剣が激突。衝撃に弾かれた万が妖冷弾で敵の足を凍結。風を渦巻かせ刃を幾つも生みだした。風の刃に水晶鎧が砕けていく。同時に万も倒れた。その四肢は背後の虚空から飛び出た刃に斬られている。
「宣告通り、果てよ」
「果てるのは貴様だ」
カノンの十字剣が行く手を阻んだ。泰孝が万の治療を行う。後衛を刃が襲い、鮮血が地面を濡らす。
残り八分。
「不惜身命、危険など何を恐れようか」
飛沫く血も気にせず、泰孝が治療を続ける。
「皆を癒し、日常戻すが我が務め」
「なら失せよ」
光条が迫った。イヴァンが庇い消滅。治療を終えた灼滅者たちが反撃を開始する。
残り七分。
ユキトが仕掛け、敵の肩を槍で貫く。キングのオーラ弾が水晶を穿つが、伊織が鎌に裂かれた。続くキリカへの光条を、解が符で結界を展開し弾く。キリカは裂帛の声と共に、白光の剣で不死王を斬る。手傷に歯噛みしたダークネスは「力」を爆発させた。
轟!!
瘴気の衝撃波が襲い、刃が大気を裂き、光が幾重も迸る。そして鎌が閃いた。無謀と知りつつ解が進んで前に出た。攻撃は仲間に託し己が身で庇う。苦鳴と剣戟のなかで二度目のアラームが鳴っていた。万が倒れた。そののちキリカも力尽きる。
力の奔流が、終わった。
凌駕した解が立ち上がった時、摘木の姿はない。護り手の犠牲は不死王に刃を通した証拠。攻め手が専念できたおかげで敵もまた滅びに近かった。戦況は泥沼だ。
そしてあと、二分弱――
回復の余裕はない。泰孝もカノンに合わせ影を解き放つ。水晶鎧に影が喰らい付く。
「下郎がっ」
投げた鎌が後衛を襲う。カノンが倒れた。意識を失う寸前に思う。今のは敵の判断ミスだ。落ちやすい後衛より、人数の多い前衛に勝機はある。
続く瘴気の波動に耐え、抜け出たキングの魔力が不死王に轟いた。
「アタシは『キング』、堂々と打ち破るまで!」
「くっ」
よろめく相手にユキトが鬼の腕を振るう――寸前、膨大な光が生まれた。
「な……」
「消し飛べ」
あと一歩が届かない。
「それは推理済み!」
解がユキトを突き飛ばし光に貫かれた。同時、巨腕が鎧を砕いた。
「そこや!」
伊織の槍が残る鎧を霊玉ごと破砕、穿孔。螺旋の力が体内を突き抜け、不死王が目を見開く。
ダークネスが灰燼と化したその時、アラームが鳴り響いた。
「厄介な相手やったな」
伊織の呟き。キャスター以前に、強敵である予備犬士は攻撃が当てづらかった。ゾンビを手早く片付け、後半の追い込みがなければ……
「危なかったわね」
キングが頷く。
「う~ん。悔しいわ!」
「右に同じくだぜ……」
不機嫌なキリカに万も同意する。泰孝が黙考する。
「範囲回復が必要だったか」
「いえ、おそらく後半は同じ状況かと」
「重傷者はいないので、それが救いですね」
ユキトの言葉に、カノンが続いた。大の字に倒れた解が「ミキちゃん、かくれんぼはやだよ」と上から覗き込む摘木に言った。
「何処の誰だか判んないけど、こんなもん利用なんてしないで欲しいわ」
「結局、その辺りは難しいですね。少し周囲を見てみましょうか」
「ゾンビ君たちの足取りあるかなぁ。辿れたらいいんだけど」
そう言うキリカやユキト、解。しかし今は疲労が勝った。
「もう少し、休もう」
誰ともなくそう言う。気力の充填には、今しばらくの時が必要だった。
作者:叶エイジャ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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