深い深い瞑想に入り、少しずつ、少しずつその姿を現す1人の男。
「落ち着け、落ち着けよ俺のサイキックエナジー……これがうまく行けば、俺は、更なる高みへと……」
愉しそうに、愉快そうに呟くその男。スマートな外形とは裏腹に、その細身の体に刻み込まれた筋肉と、その背に背負われている全てを切り裂く鉄塊の様な太刀と、まるで、道化の仮面をかぶったピエロの様な顔をしたその男は、明らかに普通の人間とは思えぬ雰囲気を醸し出していた。
「漸く体が慣れて来たぜ。さて、次は軽く慣らしと行くか」
姿を現出し、外の世界の空気に馴染んだその男は、人通りの少ない、この裏路地を歩く少女の姿を目撃する。
「こいつは、愉しくなりそうだな……」
肩慣らしに、とトントン、とその少女の背を叩き、少女が何気なく振り返った瞬間……彼女の絶叫とも取れる悲鳴が、人通りの殆どない、裏通りで木霊し、男……シャドウの血への欲望を満たす歓喜を促した。
「普段であれば、ソウルボードで活動するシャドウが、現実世界で事件を起こそうとしています」
ある日の放課後。教室にやって来た五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)がした説明は、灼滅者たちに衝撃を与えるには十分だった。
「今回、其れが起きるのは人通りの少ない路地裏です。具体的な方法は分かりませんが、あるシャドウの内の一体が現実世界に姿を現し、通りすがりの少女を殺そうとする事件が起きるようです。このまま行けば、その騒ぎを聞きつけた人々が様子を見にやって来て、そのシャドウによって一人残らず惨殺されてしまう未来が予測されています。何とかこの不運な少女と他の人々を助けるために、皆様の力をお貸しください」
姫子の言葉に、灼滅者達は首を強く首を縦に振った。
「通常、現実世界に出現したシャドウは高い戦闘力を持っていますが、強大過ぎるその力を制御するため、一定期間以内にソウルボードに戻る必要がありました。けれども、今回のシャドウは、その力を制御することで、現実世界での長期の戦闘に耐える能力を得ている様です」
姫子の言葉に、灼滅者達は沈痛な表情を隠せない。もし、この制御の方法が更に拡散すれば、只事では済まなくなるだろうことは明白だから。
「しかし、いかにその力を制御しているとはいえ、その力は通常のダークネスと同じか、それ以上であることは容易に推測できます」
それに……と姫子は言葉を続ける。
「もし、先程の少女がその場で気を失えば、このシャドウがその少女のソウルボードに潜り込み、逃げてしまう可能性もあります。少女を直ぐに逃がし、戦場に他の人が偶然紛れこまない様、対策だけはしておいたほうがよいでしょう」
「今回のシャドウは、無敵斬艦刀を使う他に、バトルオーラを纏っている様です。恐らく、使用してくるサイキックは、森羅万象断、閃光百裂拳、トラウナックル、デッドブラスター、ブラッドフォーム、オーラキャノンです。……気を付けてください」
姫子の言葉に、灼滅者達は首を縦に振った。
「如何に力を制御しているとはいえ、相手がシャドウと言う強敵であることは変わりありません。……皆様の無事を心よりお祈りしております」
祈るような姫子の言葉に、灼滅者達は決意も新たに、教室を後にした。
参加者 | |
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四季・銃儀(玄武蛇双・d00261) |
神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914) |
村雨・嘉市(村時雨・d03146) |
望月・小鳥(せんこうはなび・d06205) |
阿剛・桜花(背筋に鬼が宿ってる系お嬢様・d07132) |
銃沢・翼冷(ワァルドオヴアンダァソウル・d10746) |
杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015) |
北護・瑠乃鴉(黒童狼・d30696) |
●
すっかり陽が暮れた夜闇の中、少女は帰路を急ぐため、裏路地を通り抜けていた。その背後から、忍び寄る、スマートでありながら、引き締まった筋肉を持ったその男。口元に笑みを浮かべながら、ゆっくりと少女に近づいていく。
「さて……」
今、正に後ろから手を伸ばせば届くか届かないかくらいの距離に近づいたその時、突如として周囲を包み込んだのは、常人であれば、動けなくなるほどに痛く鋭い殺気。同時に、それまで聞こえて来ていた秋虫たちの鳴き声が一斉に静まった。
「ほう……?」
「波立て遊べよ――”Nachzehrer”!」
一瞬興味深げに少女から視線を外したその男の耳に、何処からともなく夜闇を切り裂く四季・銃儀(玄武蛇双・d00261) の高らかな声が響き渡った。男……シャドウは興味深げにしながらも、涼しい顔でその攻撃を受け流す。
「カカカッ……苦労して出てきた所ワリィが、テメェは此処で――散れ!」
バサリ、と銃儀が『灼滅』と言う文字の浮かび上がった扇子を開いたのに気を取られたその隙を見逃さず、細長く漆黒に塗り潰されている中に白い紋様を浮かべた腕で襲い掛かる銃沢・翼冷(ワァルドオヴアンダァソウル・d10746) 。
放たれたその一撃をシャドウは周囲に纏う漆黒の波動をぶつけ相殺するが、杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015) の手首に巻き付いている黒リボンから生み出された礫の様な氷の弾丸と、神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)の炎を連想させる緋色の光線が連続してシャドウに襲い掛かった。
自分の後ろで起きている騒ぎと突如として生まれた殺気に思わず腰を抜かしてその場に頽れそうになる少女だったが、その少女を抱きかかえる様にした上で、腰に指を当て、癒しを施す阿剛・桜花(背筋に鬼が宿ってる系お嬢様・d07132) 。
「死にたくないなら、早く逃げなさい!」
少女が立てる様になったのを確認し、北護・瑠乃鴉(黒童狼・d30696) がいる方に、押し出すと、瑠乃鴉は混乱し、従うままとなっている少女の手を掴んで引き、Keep Outのテープを張ったその先へと速やかに避難させていった。
其れと入れ替わる様に念のために周囲を警戒し、人気がないことを確認してきた村雨・嘉市(村時雨・d03146)が姿を現し、槍に捻りを加えて一撃を放つ。背に背負っていた大剣でその攻撃を受け止めながら、シャドウは心底愉快そうに笑った。
「なるほど……。噂の灼滅者達か! これは、良い肩慣らしになりそうだな……精々、愉しませてもらおうか」
「能書きはいい。答えろ。どうやってその力を制御したんだ?」
攻撃を受け止めたシャドウに、嘉市が問う。だが、シャドウはその問いを一笑に付すのみであった。
●
「望月小鳥、推して参らせて頂きます」
静かに息を整え嘉市の影から飛び出し、星屑の光を纏った蹴りを放つは、望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)。 足を狙って放たれたその蹴りは、背後に回り、まとめて切り払おうとしていたシャドウの足を上手く止めるが、シャドウは動じることなく、思念のみで、周囲の漆黒のオーラに命じた。周囲に浮かんだトランプの数字の刻み込まれたダイヤのカードがまるで礫の様に、小鳥に襲い掛かる。
「ロビンさん!」
咄嗟にロビンを呼び戻し、その攻撃を受け止めさせる小鳥。ロビンが攻撃を受け止めている間に後退しようとうする小鳥の隙を埋め合わせる様に、翼冷が捩じりを加えて思いきり、槍をぶん投げてシャドウを貫く。
「砕け散れ! 秋ノ舞・二ノ型『散華』ッ!」
翼冷の攻撃にその身を貫かれ動きを止めたシャドウに、畳みかける様に銃儀がまるで神話に出て来る玄武の様に、緩やかで、隙のない舞を踊りながら、無数の舞い散る花のような拳による突きがシャドウに襲い掛かった。
その細身ながら鍛え抜かれたそれで攻撃を受け止めているシャドウを、明日等から放たれた緋の光線が再び貫く。
「さっさと決着を付けさせてもらうわ。アンタなんかに誰もやらせはしない!」
「ほう……俺相手に啖呵を切るとは……中々面白い小娘だな」
道化の様な顔に、全てを見下したような舐め回すような醜悪な笑みを浮かべながら呟くシャドウを、明日等はキッとした表情になって睨み付ける。今の所、作戦通りに事が運んでいるが、まだまだ予断を許せない状況であるのには変わりがない。
彼女の意志に答える様に、猫型キャリバーが激しい弾幕を張る。だが、その銃弾の合間合間が見えているのか、シャドウはその攻撃を縫う様に滑らかに動き、そのまま明日等に漆黒の弾丸を撃ち放った。
その明日等の前に立ちはだかる様に、宥氣がその弾丸を真正面から受け止めた。胸を貫いたその一撃が、宥氣の全身へと浸食を開始し、以前、他の者に救われた折に眠った筈の自らの内のシャドウの持つ復讐への昏い悦びを喚起する。
だが、その衝動に身を委ねることはせず、そのまま近接し、一気に炎を纏った拳を叩き付けた。炎を纏ったその一撃が、シャドウの腕を焼き、シャドウが愉悦と苦痛が綯い交ぜになった表情を浮かべた。
「『歓喜』か……。前にある人に言われたな。復讐なんて言う『歓喜』に身を委ねるなって。……まっ、でも手加減できないから勘弁な」
「フン……もとより貴様ら如き青二才に手加減される謂れはない。もう少し楽しませてくれよ、小僧ども……!」
歪みの衝動に耐えてふらつく宥氣と先程の一撃を受けたロビンを、瑠乃鴉の祈りの籠められた清らかなる風が癒した。
「やわらかくて、気持ちの良い風なのです。……ぼくがいる限り、貴方の様な者に先輩達や、あの女の子さんをやらせはしないのです」
集団を、仲間を守るという自分なりのニホンオオカミとしての誇りに満ちた瑠乃鴉の宣言は、仲間たちの傷を癒すだけでなく、彼等の闘志と団結を一層強める。
その闘志に背を押される様に、桜花が肉薄し、WOKシールドを叩き付ける。放たれたその一撃が、シャドウに叩きこまれ、少しだけ後退したのを見て、桜花が強気にニヤリと微笑んだ。
「それにしても……あの少女といい、神夜さんや、望月さんといい、力の弱い女の子ばかりを狙うなんて、案外見かけ倒しの筋肉なんですわね?」
「フン……ならば次は貴様を切り刻んでやるとするか!」
わざと挑発に乗るかの様に、シャドウが大剣を横薙ぎに振るう。横薙ぎに振るわれたその攻撃は、強大な衝撃波を生み出し、最前線にいた者達を甚振り、嬲る様に次々に襲い掛かった。
桜花が、隣にいた嘉市を庇うように前に立ち、その攻撃に肩を切り裂かれ、顔を苦痛に歪めながらも強気の笑みを浮かべている。
「この程度で退くと思ったら……大間違いですわよ!」
自分たちが退けば、今までの努力が水泡に帰す。かつて、救えなかった人々のことが桜花の脳裏を過り……それが、不屈の闘志となって彼女をまるで大樹の様に強くその場に根付かせていた。
「よーよーアクティブ系ヒキニートのシャドウサァン? 馬鹿みたいに格好つけてネェデ、二次元にでも引き篭もってろよ! 上半身裸のロリコンピエロとかギャグにすらならねーんだからよお!」
一方で、明日等のキャリバーに庇われ影から飛び出した翼冷が、カウンターよろしく懐に飛び込み、真っ直ぐにシャドウに向けて突きを放つ。放たれたその一撃がシャドウの腹を抉る様に叩きこまれ、シャドウを僅かによろめかせた。
「ぐっ……?!」
「どうした、どうした、シャドウサァン? もっともっと愉しみたいんじゃなかったのかよ? この位でよろめいてりゃ、せわねーぜ?」
「炎に焼かれろ!」
からかい、嘲笑うかのような翼冷の言葉に合わせる様に、シャドウの周囲の地面を炎が囲み、その全身を覆い尽くす様に焼き払う。
「ぬぅ……?!」
「……自分の楽しみの為だけに関係のない人を巻き込むなんざ許せねぇ。肩慣らしなんかで俺達を殺せると思ったら大間違いだぜ」
嘉市の淡々としたその啖呵を払うかの様に、風圧によって炎が消し飛ばされ、腕や肩などに、火傷の痕を残したシャドウが再び姿を現す。特に胸の辺りの一部が焼け、そこから少しずつその火傷が広がっていく様子が手に取るようにわかった。
「……少し、認識を改める必要がある様だな。……もう少し本気でやらせてもらうとしようか」
その身を漆黒の闇に包み、全身にダイヤの紋章を刻み込みながら。鱶の様な笑みを浮かべたシャドウの目が鋭く細めて放ち始めた殺気を感じ取り、灼滅者達はまだまだ戦いが続く予兆に気を引き締め直して目を細めた。
●
「それをやらせるわけには行かないのです!」
「そんな力、無力化してやるわ!」
「その力、打ち消すです」
周囲に展開されていた漆黒の波動により、全身黒ずくめになったシャドウを恐れず、小鳥が足を振りぬき暴風を巻き起こした。
巻き起こされた暴風にその身を切り刻まれて僅かに動きを止めたシャドウに、その手に雷を纏った拳を桜花が叩き込み、瑠乃鴉が僅かに差し込む月明かりを、腰にさす折れた刀に反射させ、振り抜いて衝撃波を撃ち出し、切り刻む。
放たれた連続攻撃に漆黒の闇が勢いを弱めた。だが、ある程度傷を癒すことには成功したシャドウが、嘲るような笑みを浮かべて、衝撃波を叩きこむ。
それは、続けて攻撃を仕掛けようとしていた銃儀と、後退しようとしていた小鳥の足を取り、切り刻んだ。
「この程度……っ、なんてことないです」
足に裂傷を負いながらも、きっと睨み付ける小鳥。傷を負いながらも真っ直ぐに相手を睨みつけるその彼女の想いを代弁するかの様に、ロビンが思いっきり、殴り掛かった。その攻撃が強かに、シャドウの武器を打ち据え、僅かながらその勢いを減じさせた。
「くっ……?!」
「オラオラ、とっととくたばりやがれ!」
「一片残らず……悪夢を喰らい尽くせェッ!」
一瞬で放たれた翼冷の無数の衝撃波が容赦なくシャドウを切り刻み、続けて銃儀が『影喰』と文字が浮かんだ扇をバサリ、と素早く振り下ろすと同時に現れた影の蛇がそのままシャドウの肉片を喰らい尽くす。火傷によって綻び掛けていた体の一部がそれによって切り刻まれ、シャドウの顔に最初とは違う明確な苦痛の表情が浮かんだ。
「ぬう……本来の力が使えれば……!」
「そんなこと、絶対にさせないわ!」
忌々しげに呻き僅かに後退しようとしたシャドウの行動を妨げる様に、明日等が両手に集中させていた力を一気に解放し、叩き付ける。それは、小鳥によって傷つけられていた足元をさらに深く抉り、続けてキャリバーが思いっきりその全身をシャドウの腹に叩き付けた。
全力で放たれたその一撃がシャドウの腹を強打し、その火傷を更に広げていき、シャドウの表情が苦痛に歪んだ。
「倒れろ!」
「そこだ!」
嘉市と宥氣が同時に放った閃光百裂拳が、シャドウに容赦なく叩きこまれる。同時に放たれたその攻撃がシャドウの全身を殴打し、シャドウの巨体が空中に飛んだ。
「ぐおっ……?!」
咄嗟に撤退しようと周囲を見回すシャドウ。だが、周囲に逃げ場はなく、ソウルボードに潜り込むことも出来ず、焦りが生まれた。
「おおっと! 逃がさねぇよ、ピエロ野郎ッ!」
それでも尚、空中で方向転換し、撤退しようとするシャドウに向けて、銃儀が『妨害』の文字が浮かんだ扇を突きつける。銃儀の命令に従うかの様に足元の蛇たちが一斉にシャドウに襲い掛かり、その体を締め上げた。
「今です、ささきせんぱい!」
清めの風で小鳥の足を癒した瑠乃鴉の言葉に頷き、小鳥が、宙へと飛び上がり、踵落としを決める。衝撃を受けたシャドウはそのまま、大地へと辛うじて両足で立ち踏ん張るが、着地の衝撃で生まれた隙を見逃さず、一斉に灼滅者達が襲い掛かった。
「人を害そうとする者に、じひはないのです」
その攻撃を受け止めきれずに重傷を負ったシャドウに瑠乃鴉が宣言し、その背に鴉の羽根を見え隠れさせながら、刃を放った。
「ちるです!」
言葉と同時に放たれた神薙刃が、シャドウを切り刻み、シャドウは遂にガクリとその膝を地面につけた。
●
雲の隙間から、月が僅かに顔を表し、そこから零れ落ちる光が、シャドウと灼滅者達を照らし出す。その月の光にまるで溶け込んでいくかの様に、シャドウの姿が少しずつ、少しずつ消えていく。
「フン……見事だな、灼滅者達よ……どうやら俺の負けの様だ……」
「待て! どうしてアンタは、ソウルボードに戻らなくても活動できるようになった? その力をどうやって制御したんだ!?」
嘉市が消えゆくシャドウに再度問いかけるが、シャドウはそれには答えない。ただ、意味ありげに笑みを浮かべて消えていくだけだった。
本当に灼滅出来たのか不分明ではあったが、あのシャドウが力を大幅に削がれ、戦線から離脱……つまり作戦自体が成功したと言うことだけは確かなようだ。
「あれ? この程度なの? 影は所詮影か。水を受け入れる器すらないことに憐れみを、だね」
消えていったシャドウの姿を見送りながら、翼冷が毒づく。其れを受けながら、小鳥が首を傾げて考え込む様に眉を潜めた。
「……本当にどうやってあのシャドウは力を制御していたんですかね……?」
「まっ……考え過ぎても仕方ねぇってことかも知れねぇな、カカカッ」
「そうね。気がかりだった暴走はなかったし、一般人にも、あの子にも被害はなかったわけだから……」
『任務完了』と書かれた扇子をバッと開きながら呵々大笑する銃儀に明日等が自分を納得させるかの様に呟き、他の者達もそれぞれに想いを馳せながら、首を縦に振る。
「あ……あの……」
と、殺界形成が解除され、音の戻って来た世界であることを証明する様に、鈴のような声が桜花達の耳を打った。
振り返ってみれば、先程安全圏に逃がした少女が、おずおずとした様子で戻って来ている。どうやら、危険だと分かっていながら、心配で様子を見に来たらしい。
「もうだいじょうぶです。……すべて終わったですから」
瑠乃鴉がその年に似合わぬ落ち着いた口調で彼女に告げると、少女は軽く胸に手をあて、ペコリとお辞儀を一つした。
「あ……ありがとうございました。……何があったのかはよく分かりませんが」
「それでいいのよ。これは夢。夢は覚めるものだから」
優しく慰める様に言う明日等に見送られ、少女はもう一度小さくお辞儀をした後、その場を立ち去る。
その少女の後姿を、かつてシャドウに殺された家族と無意識に重ね合わせてしまい、宥氣は軽く拳を握った。
「……ご両親の仇探し、たまになら手伝ってもよろしくてよ? ……杉凪さん」
その宥氣の姿を見て、頬を掻きながらポツリと呟く桜花を初め、灼滅者達は皆で揃って空を見上げた。
――空には雲の隙間からわずかに顔を覗かせている月が、煌煌と輝いていた。
作者:長野聖夜 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年10月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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