やっと就職先、見つけました

    作者:ライ麦

     ドアをノックする音に、佐藤はパソコンから顔を上げた。失礼します、と入ってきたのは自分が指導するゼミの学生、堀田絢音だ。
    「ああ、堀田君か。どうした?」
    「佐藤先生……実は私、もうすぐ就職決まりそうなんです」
    「おっ、そうか。よかったな!」
     吉報に佐藤も顔を綻ばせた。絢音はゼミ生の中でも就活に苦戦していたようで、佐藤としても気にかけていたのだ。
    「いえ、まだです。実は、内定をもらうためにどうしても必要なものがあって……先生に協力をお願いしたくて来たんです」
    「ん? なんだ? 私にできることなら協力するが……」
    「ありがとうございます。では」
     次の瞬間、佐藤の首は飛んでいた。最期の瞬間に見たのは、どこから取り出したのか。絢音が鋭く光る大鎌を閃かせる光景。
    「な……」
     何故、という言葉を発する暇もなく。ごろりと床に首が転がる。それを拾い上げ、絢音はニヤリ、と口角を歪めた。
    「ご協力、ありがとうございました。佐藤先生」

    「就職活動に行き詰っている一般人が六六六人衆に闇堕ちする事件が、発生しています……」
     桜田・美葉(小学生エクスブレイン・dn0148)がおずおずと告げる。
    「闇堕ちした人達は、何故か身近な人の……、く、首を跳ねて……その首を持ったまま市街を堂々と移動している……らしいんです……」
     「人の生首」という恐ろしいワードに美葉の顔は青ざめ、膝は震えっぱなしだ。確かに、生首を持った人がその辺をうろついてたら恐怖以外の何物でもないだろう。こんなのはホラー映画の中だけにとどめておいて欲しいものだが。残念ながらバベルの鎖があるため、この闇堕ちした就活生達は咎められることもなく。
    「えっと……幸い、と言ってしまうのもなんですが……今のところは、無差別に殺人をしようとはしていない、みたいです。ですが……『その首はなんだ』と詰問したり……とか……それ以外にも自分の邪魔をしようとする人は、容赦なく殺してしまうと思います」
     これ以上被害者が出る前に。
    「この六六六人衆を灼滅して下さい。お願いします……私も、こんな人野放しにされてたら正直、怖くて仕方ないです……」
     本音を漏らしながら、美葉は頭を下げた。
    「皆さんに倒していただきたいのは、堀田絢音さん。大学4年の、就活生……だった、と言った方が正しいのでしょうか」
     闇堕ちして六六六人衆となった彼女は、自らの所属するゼミの教授の首を跳ね、その首を持ったまま何処かに移動中らしい。
    「午後4時ちょうど。絢音さんは駅へ近道をするためにとある路地裏を通りがかります。皆さんはそこで彼女と接触してください」
     4時ちょうど、その時ならば路地裏を通る人間は絢音一人だ。絢音はリクルートスーツ姿で片手に生首、もう片手に大鎌を携えている。どう考えても見間違える心配はない。
    「ですが、地元の人で他にもこの道を近道として利用する人はいるようです。午後4時きっかりに通るのは絢音さんだけですが、それ以降別の方が通りがかる可能性はあります。注意してください」
     また、絢音自身やっと見つけた就職先を逃すまいと必死だ。隙を見せれば逃亡される恐れもある。こちらにも注意が必要だろう。
    「戦闘では、絢音さんは殺人鬼の皆さんと同じサイキック、それと咎人の大鎌のサイキックと、シャウトも使ってくるようですね」
     絢音は既に堕ちた存在。説得によって弱体化を図ることもできないため、かなりの強敵となるだろう。エクスブレインの未来予測により、予知されずに作戦を練って戦闘を仕掛ける事ができるという点をうまくいかして、撃破して欲しい。
     全ての説明を終えた後、美葉はポツリと呟いた。
    「それにしても……こんなことしてでも内定が欲しいって、就職活動ってすごく大変なんですね……私、今から自分の就活が心配です……」
     いくらなんでも先走りしすぎだろ、小学生。


    参加者
    漣波・煉(汝は死の絆につき給えり・d00991)
    那賀・津比呂(こだわりのウザさ・d02278)
    禰宜・剣(銀雷閃・d09551)
    天木・桜太郎(葉見ず花見ず・d10960)
    小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)
    狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309)
    鷹嶺・征(炎の盾・d22564)
    端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)

    ■リプレイ

    ●エントリー
    (「……気に入らんな……なんつーか……以前の何とか委員会を思い出す」)
     そう思い、禰宜・剣(銀雷閃・d09551)は顔をしかめた。時刻は4時少し前。集った灼滅者達は皆下見をするつもりだったこともあり、分担してやれば下調べにさほど時間はかからなかった。今は最終チェックをしながら、絢音が通るのを待っている最中だ。油断なく立ち位置を確認しながら、剣は呟く。
    「何より就職活動で殺戮を行い他者の人生を奪う……というのが。何だか色々と気に入らない」
     自分でも、何故気に入らないのか分からないのだが。その思いは言葉にも表情にも表れている。窓を念のために路地裏にあった荷物で塞ぎつつ、天木・桜太郎(葉見ず花見ず・d10960)も
    「首持ってけば就職できるってどんな会社だ……真っ黒通り越して怖いわー」
     と漏らした。そうですね、と頷きながら、桜太郎の後輩である鷹嶺・征(炎の盾・d22564)も作業を手伝う。
    「闇堕ちしそうなところで声かけられて、実行して闇堕ちなのか、堕ちてから声かけられたのか……。六六六人衆候補者、監視でもされてんのかね?」
    「さぁ、どうなんでしょうか……」
     首を捻る桜太郎に、征も首を傾げる。
    「何故、就活生が闇堕ちするのかは疑問だが。これ以上、被害者を増やす訳にもいかないからな……必ず灼滅する」
     背景はどうであれ、今は為すべき事を為す。それだけだと小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)は面を上げた。端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)もこくんと頷き、路地を全体的に確認できる場所に身を潜める。やや気弱な所もある彼女だが、今回の依頼は自分とあまり変わらない年頃の娘がいることもあり、自分なりに頑張ろうと決心していた。狩生・光臣(天樂ヴァリゼ・d17309)も挟撃出来る位置取りを確認し、潜伏する。その胸に去来するのは、やはり就職活動のこと。
    (「就活、か」)
     未だ高校生、どんな職に就きたいかも定まっていない自分にはきっと、その焦燥も、惨めさも理解出来ない。けれど。
    (「これだけは言える。案じてくれた人を殺め進むその路は、赦されない非道だと」)
     すっと顔を上げ、改めて路地裏を見る。その鼻に、「業」の匂いが突き刺さった。
    「う、この匂いは……来たよ、皆!」
     仲間に注意を促す。ちょうど征の持つ懐中時計「Black Rose」も、午後4時を指し示し……時を同じくして、リクルートスーツの女性がゆらりと姿を現した。紅い夕日が、彼女の大鎌の刃を鈍く煌かせている。
    「ようこそ、狩場へ」
     さりげなく退路を塞ぐような位置に立ち、漣波・煉(汝は死の絆につき給えり・d00991)は嗤った。タレ目と三白眼、そして寝不足が合わさった彼は凄い悪人面に見える。こんな人が路地裏で待ち構えていたら警戒しない人間はいないだろう。絢音も歩を止めた。
    「何よ、あんた達」
     訝しげに言う彼女を前に、うさぎと煉は殺界形成を発動した。さらに高所から様子を窺っていた那賀・津比呂(こだわりのウザさ・d02278)が降ってくる!
    「その就職、阻止しちゃうぜ!」
     勢いよく着地し……その衝撃がダイレクトに伝わって津比呂は悶絶した。灼滅者だからかすり傷だけど。エアライドがあればもっと華麗に着地できたかもしれない。でもサウンドシャッター要員だし。とりあえず痛みは無視して、絢音に向かって武器を構える。
    「なーなー! その首って就職に必要なやつなんだろ? 1個だけじゃ不安じゃない? 良かったらオレの首もあげるよ~……まぁ、オレを倒せたらの話なんだけどね!」
     もちろん戦場外への音の遮断も忘れない。剣も抜刀し、反対方向から絢音に迫った。
    「悪いがお前の就職とやらでこの人を連れていかせるわけにもいかん。きちんと埋葬させて貰おうか」
     他の者も後に続き、じりじりと挟撃の形に持っていく。通すつもりはないらしい、それに気付いた絢音は、灼滅者達に大鎌の切っ先を突きつけた。
    「……邪魔するっての。それじゃお言葉に甘えて、あんた達の首ももらってこうかな!」
     その目には残忍な光しか宿っていない。完全に堕ちた者の目だ。その視線に、光臣の背筋はゾクリと凍る。未だ殺し合いは恐ろしい、けれど目は背けない。確りと彼女を見据え、呟きと共に封印を開放する。
    「……どうか僕の手、震えるな」
     ――殺された教授を弔うまで、彼女の凶行を止めるまで。

    ●書類選考
    「死ねぇっ!」
     物騒なことを言いながら、絢音がどす黒い殺気を放出する。その威力は灼滅者のものより数段上だ。それでも、負けるわけにはいかない。
    「さぁ、始めようか」
     悪い目つきのまま、煉が死角から一撃を放つ。津比呂も
    「就活ってすげーしんどいんだってね。『就活自殺』って単語がある位だもんなぁ、同情はするぜ。見逃さないけど」
     と話しかけながら、まずはクルセイドスラッシュで守りを固めた。津比呂の話に、絢音は高笑いで答える。手に持った首を見せびらかしながら。
    「そうよ……でも私は就職決まったも同然。もう悩む必要もないわ!」
     その態度に、桜太郎はソーサルガーダーを展開しながらも改めてゾクリとした。狂っている。尤も、就職のために知人の首を跳ねるという行動を平気でやれる辺りが、六六六人衆たる所以なのだろう。
    「……そうですか」
     呟く征の口元には、かつての作り笑いが浮かんでいる。しかし、目は笑っていない。その内にどんな想いがあるのかまでは読み取れないが。その笑みのまま、征は白光の斬撃を繰り出す。
     一方、里桜は人を殺してでも内定が欲しかったのかと疑問に思っていた。その疑問を、愛用の槍と共にぶつける。蒼色の柄に、赤い飾り紐が揺れた。
    「何故、生首が必要なんだ? 内定の為とはいえ生首が必要とは、ろくな会社ではないと思うが?」
     剣も頷き、
    「なぁ……首を持ち歩いて何をするつもりだったんだ? そんなもん持ってくるような会社大した会社じゃないだろうに」
     と挑発交じりに問う。可能な限り情報を集め、どこに就職しようとしていたのか調べたい。そんな目論見もあった。その疑問に、絢音は黒き波動で灼滅者達を薙ぎ払いながら答える。
    「就職する新入社員は、人の首を跳ねて持ってこなきゃいけないんだってさ! 私にとってはいい会社だけどね! だから首ちょうだいよ!」
     ……人の首を跳ねて持ってくるのが決まりの会社が、「いい会社」。そんなの理解できないし、したくもない。怒りに震えながら、光臣は流星の煌めきを宿す飛び蹴りで彼女の機動力を奪った。そして勢いのまま――着地に失敗してその辺にあったゴミ箱に頭から突っ込む。
    「むがっ!?」
     ――狩生光臣は天性のドジっこイケメンである。それが原因で闇堕ちしかけたぐらいの。転びついでに過去の黒歴史を思い出しうずくまる彼を、相棒のスピネル(ナノナノ)は愛の(乗馬)鞭で叱咤激励する。
    「痛い痛い、鞭のしなりが上がってる!?」
     分かってはいたことだが、やられるとやっぱり痛い。それでもメディックとして、スピネルはちゃんと回復もしてくれた。まさに飴と鞭。
    「えっと、だ、大丈夫、かな……?」
     気遣いながらも、うさぎは尖烈のドグマスパイクで絢音を穿つ。津比呂も仲間の傷を癒すため、クルセイドソードを掲げた。
    「剣の風よ皆を癒せ! ……最近寒いんで少し暖かい風で癒せ!」
     ……風の暖かさはともかく。その癒しに灼滅者達は元気を得る。戦いは、なおも続くけれども。

    ●面接
     戦いの最中、里桜はフォースブレイクを放ちながら再び問いかける。
    「一体、何処に向かうつもりだったんだ? 内定先の企業は何処にあるんだ」
     何せ原因不明の事件だ。可能なら何か情報を得たい、そう思うのも当然のこと。しかし絢音はせせら笑う。
    「それを知ってどうするの? 私の就職先を潰す気? やぁね、言うわけないじゃない」
     ……この態度を見る限り、どうやらこれ以上の情報は期待できそうにない。元々情報収集をするつもりもなかった煉は、遠慮なく螺穿槍をぶち込んだ。MMORPG好きな彼にとっては、ダークネスとの戦闘もそれに近いものなのだ。
     桜太郎が炎を纏った蹴りを放ち、征が指輪から魔法弾を放つ、その傍ら、剣は絢音の死角に回り込んだ。さっきのやりとりで、情報はたいして得られないことは分かっている。しかし、それとは別のところで心は何故だかもやもやしていた。リクルートスーツごと絢音を切り裂きながら、ポツリと言う。
    「なぁ……そいつはお前の為に尽くしてくれたんだよな……そいつの人生を奪ったって事は……解ってるのか?」
     戦闘中でも器用に持ったまま、手放そうとしない被害者の首を見つめながら。
    「何を? 先生は確かに私のこと気にかけてくれてたわ、だから「協力」してもらったんだけど?」
     絢音は首を傾げてみせる。
    「何が悪いの、教え子の役に立てるなら先生だって本望でしょう?」
     あまりに自分本位な理屈。DESアシッドで攻撃しながら、光臣はたまらず叫ぶ。
    「自分を想ってくれた人を! その大事な人を悲しませてまで自分の安心を買いたいのか……! 決して認めない、人として、灼滅者として!」
     うさぎも頷く。
    「ここで、絶対に止めてみせる、よ!」
     そのままグラインドファイアを放つ。炎に包まれてなお、絢音は笑っていた。
    「やれるもんなら、やってみれば?」
     そしてうさぎの死角に飛び込み、大きく切り裂く。鮮血が辺りに飛び散った。かつて変な組織にスカウトされたぐらい、美しいもち肌が露になる。堕ちきった者だけあって、その一撃は強大なもの。
    「大丈夫か!?」
     いろんな意味で見過ごせない。盾として、桜太郎は少しでも絢音の気を引くべく攻撃する。津比呂やスピネルもすかさず回復に当たった。女の子が好き過ぎて「そうだ、更衣室に行こう」とか残念なことを言っちゃう津比呂でも、目の前で服を切り裂かれて震える子に無粋な視線は向けられない。そもそも実行したこと殆どないが。
    (「……言っても詮無きことか」)
     影で絢音を飲み込み、トラウマを発現させながらも剣は嘆息した。分かっていたことではあるが。何だか、彼女らの殺戮、殺しは……気に入らない。殺しに気にいる気に入らないもないが。
     一方、里桜が憤りを感じるのは、剣とは別のこと。――助けられないこと。闇堕ちする前は、それでも普通の就活生だっただろうに。
    (「けれど……だからこそ、彼女の手をこれ以上汚させない為に。必ず灼滅しなければ」)
     そう考えているから、確りと彼女を見て。
    「悪いが、足癖はあまり良い方ではないのでな……!」
     スターゲイザーを放ち、足を止めさせる。傷を癒したうさぎも同じ技で回避力を奪う。そこに煉が凄まじい連打を叩き込んだ。きっちりと、彼女にダメージを与えていく。如何に強いとはいえ、こうも動きを鈍らされ攻撃されていては、絢音にも余裕はなくなってくる。
    「……ちょっと遊びすぎたかしら。早く行かないと」
     灼滅者達を睨みつけ、シャウトで回復する。そのまま逃走経路を探すように視線を走らせた。だがその逃走を防ぐための下見であり、挟撃だ。逃走経路は完全に塞がれている。さらに、征が
    「おやおや、僕たちなどから逃げ出しては、首を持っていっても内定を消されてしまうかもしれませんね。そうしたら、またやり直しですね。就職活動」
     と、先端に刃物のついた鎖の影で縛りながら挑発する。
    「ちっ……」
     絢音は舌打ちする。ならば、と癒し手に狙いを定めて無数の刃を放った。回復手を狙うというのは定石、しかし桜太郎がその射線に立ち庇う。万が一の時、闇堕ちは出したくないし、そのためのディフェンダーだから。そのまま高速回転させた杭で彼女の肉体をねじ切る。誰かの盾となりたいと思う気持ちは、征も光臣も同じ。かわるがわる攻撃を受け止め、誰か一人を狙わせない。さらにうさぎが状態異常で動きを鈍らせ、煉がきっちりと攻撃を当てていく。その間に、剣は絢音に猛攻を加えた。負けじとやり返す絢音も、息が切れている。もう、持たないだろう。それを見て取った里桜は蒼桜乱壊に螺旋の如き捻りを加えて突き出した。
    「すまない……どうか、安らかに」
     その一撃が、絢音の息の根を止めた。

    ●お祈り
     元より助けられない相手だ。倒された絢音は跡形もなく消滅していく。教授の首だけを残して。どこか苦い思いで、里桜はその様子を見送った。
    「首奪うまでもなかったな……」
     冥福を祈りながら、剣は呟く。いざという時は逃走阻止として首を奪う、そのつもりだった。そこまでせずに済んだのは対策がしっかりしていたおかげだろう。尤も、首を奪ったところでまた別の人の首を跳ねて持っていっていただけかもしれない。何も教授の首でなくてもよかったわけだから。
    「さて、首をどうするか」
     煉が首を拾い上げる。案じていた教え子に、恩を仇で返すように殺されてしまった人。その無念さを思い、光臣は唇を噛む。
    「せめて、きちんと弔ってあげたいけどな……」
    「このままには、しておけない、よね」
     うさぎも同意を示す。実際、首をそのまま放っておくのは、人としてアレだろう。
    「首は……ゼミっつーか大学の近くに戻す?」
     津比呂が首を傾げて言う。絢音を倒した後の首の扱いまでは、決まっているわけではない。
    「なんにしても……このまま扱うわけにはいかないだろ」
     桜太郎は予め腰に巻いて持ってきていた大き目のストールを広げる。むき出しのまま持ち運ばれるのは、死者としても不本意だろう。ストールで包むのは彼の優しさでもあり、適切な対応ともいえた。しかして、包んだ首を持った彼は、その重さに言葉を失う。そんな先輩を気遣うように見やり、征は丁寧に頭を下げた。
    「……就職活動は、闇堕ちさえ引き起こしてしまうのですね。……お疲れ様でした」
     その場に残る、重たい雰囲気。それを払拭するように、津比呂はあえて明るい声で言った。
    「オレも就職どーしよっかなー。武蔵坂学園にゴマすって仕事紹介して貰えないかな~」
     「金持ちになって美少女メイドさんとか侍らせる」のが彼の夢だが、その道筋が見えているわけではない。彼に限らず、灼滅者達の将来は未だ見えない。それでも、前に進むために。彼らは、闇に抗い続ける。

    作者:ライ麦 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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