新灼滅者講座:魔人編纂室

    作者:七海真砂

    「皆さん、お集まりくださって、ありがとうございます」
     集まった生徒の前に立ったのは五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)だった。
    「実は、皆さんにお願いしたい事があるんです。『魔人編纂室(まじんへんさんしつ)』の整理を手伝っていただけませんか?」

     魔人編纂室は、『これまでの武蔵坂学園』についての記録を保管するための部屋だ。
     ダークネスとの戦いの歴史や、他の組織の情報、これまで学園で起こった出来事など、様々な事についての動画や音声データ、書類などを整理し、収納している。

    「これまで、魔人編纂室に保管する情報は、半年に1度のペースでまとめてきました。前回が『新灼滅者講座』の時でしたから……そろそろ、また情報を整理したいなと思いまして。ただ、私1人だけでは大変なので、皆さんにお手伝いをお願いしたいのです」
     なるほど、と頷く灼滅者達。
     情報をまとめるといっても、その内容は多岐に渡る。たとえばダークネスの情報をまとめるにしても、様々な種族や組織ごとバラバラに活動している彼らの動向を、全部完璧に把握できているという人は、あまりいないはずだ。
     しかし、みんなで協力して情報を持ち寄ったり、手分けしながら整理を進めていくことができれば、作業はぐんと効率よく進むだろう。
    「だから皆さんには、『自分の得意分野』や『自分が詳しいこと』などについての情報を、まとめていくお手伝いをお願いしたいんです」
     そういう事なら、と手伝いを引き受ける灼滅者達。

     一方、そうした知識にはあまり自信が無いという灼滅者や、武蔵坂学園に来たばかりで、よくわからないという灼滅者達が困ったり、悩んだり、戸惑うような顔をする。
     そんな彼らに向かって、姫子は更に語りかけた。
    「これまでのことで、何かわからないことがある人や、知りたいことがある人、この機会に確かめておきたいことがある人などは、ぜひこの機会に質問してください」
     大勢の人が集まっているから、その内容に詳しい人から、色々と教えて貰うチャンスだ。
     それに、わからないこと、知りたいことを積極的に発言するのは、とても大切なことだ。
     魔人編纂室は『何か知りたいことがある』時に使う部屋なので、実際に誰かが詳しく知りたいと思ったことを重点的にまとめておけば、今後、同じような疑問を持った他の生徒達にとっても、より『わかりやすくて役に立つまとめ』になってくれるだろう。

    「これまでの学園のあゆみについて再確認をしたり、より詳しく理解するための良い機会になると思います。お時間のある方は、ぜひご参加くださいね」
     そう姫子は微笑みながら、早速まとめていきましょうと、灼滅者達へ呼びかけた。


    ■リプレイ

     姫子の呼びかけで集まった灼滅者達は、早速、資料をまとめる作業に入った。
    「ええと、続きからですよね。前回はどこまででしたっけ?」
    「確認してみるかい?」
     首を傾げる平坂・月夜(常闇の姫巫女・d01738)を見て、瀬河・辰巳(宵闇の幻想・d17801)は棚からファイルを集めてくる。どれも、前回まとめた際の最新情報にあたる内容が収められた物だ。その間、霊犬のフロッケは『良かったらどうぞ』と札のついた袋を口にくわえて皆の間を回る。中身は飴だ。他にも多くの者が持ち寄った料理やお菓子、飲み物などを配っていく。
    「俺達のルーツや、その宿敵、ダークネス側の主だった組織といった基本的な情報をまとめた資料を用意した。欲しい者は並んでくれ」
    「お手伝いしますわ」
     ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)が以前のまとめを活用し、新入生向けに資料を配り始めると、琴葉・いろは(とかなくて・d11000)達がそれを手伝う。

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    【マスターからの解説】
     それぞれのルーツと、その宿敵であるダークネス種族、ダークネス側の組織については、ゲーム解説ページの『世界の種族・組織一覧』にまとまっています。

    ●世界の種族・組織一覧
     http://tw4.jp/html/world/4-1race.html

     また、これまで武蔵坂学園と、どんな戦いを繰り広げてきたのか……などは、前回の灼滅者講座の中で詳しい解説をしてくれている先輩がいます。

    ●新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史
     http://tw4.jp/adventure/replay/?scenario_id=10286

     このページの中を「詳しく知りたいダークネス種族の名前」などで検索すると、その情報について話している場所がわかりますので、良ければ参考にしてください。

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    「なるほどー、ためになるのですよぅ」
     それを受け取った中の1人、ミュシカ・ゼクシウス(天衣無縫・d30749)は、パラパラと資料をめくりながら席につく。迦遼・巴(疾駆する義体・d29970)も人の多さに目を丸くしながらも、端の方を選んで椅子を引いた。
    「こんにちは! 良かったら一緒に座らないッスか?」
    「……う、うん」
     この機会に友達を増やそうと意気込んだ黒葉・鉄弘(草食系覆面・d31139)は、直前まで作っていた手のひらサイズのぬいぐるみを周囲に配りながら誘いかける。その中の1人、彩原・絵夢(秘めたるカラフルソウル・d29576)は、彼の勢いに引っ張られるようにして、その隣に座った。
     情報を整理するための準備を進めていく灼滅者達。なお、いきなり逃走しようとした日輪・玲迦(汝は人狼なりや・d27543)は、近くにいた日輪一族の仲間などから即効で取り押さえられた。
    「情勢とかサッパリわからんが、とりあえず参加するな」
     わからないなりに、こうした機会は有難いと姫子に礼を告げているのはアレス・ノクターン(ツッコミ修行中留学生・d23351)だ。そんな、2人の会話をじっと見つめる者が1人。
    (「80後半……いや、90は超えているよな……?」)
     真剣な眼差しの主はクラウリー・ホール(高校生ファイアブラッド・d17758)。ただし眼力を駆使して測ろうとしているのは姫子のスリーサイズである。
    「早速ですが、今一番警戒しなければいけないのは、どんなことなんですか?」
     クラウリーが引き離されて遠くの席へ連れて行かれる中、まず手を挙げたのは地道・恩(天を仰ぎて地を歩む・d29563)だ。うんうん、と月夜野・詠(星空サイコロ・d27418)も頷く。色々な事件が起こっているからこそ、どう上手く情勢を把握し、様々な出来事を追っていけばいいのか。それを掴むきっかけにもなりそうだ。
    「わかりやすく教えてくれると有難いでございます」
     実際にその事件に関わっている人達から詳しく聞いてみたいと翠川・朝日(ブラックライジングサン・d25148)が言えば、トリニティ・ベル(ハリケーン・d30897)も、とりあえず知っておいた方が良い、有力なダークネスについての情報が知りたいと先輩達に向けて話す。
    「仕方の無い事とはいえ、こう年中無休で365日ずっと何かしら事件が起きていると、結構こんがらがってきますよね」
     そんな彼らの姿に「わかります、わかりますよ」と頷く高倉・奏(二律背反・d10164)達。先輩達だって、その気持ちはよく解る。
     と、そんな中、ドア付近が少し騒がしくなる。原因は、今入ってきた数十人の灼滅者達だ。その顔触れは、各地のダークネスの動向を調べる為に出かけていた面々で、たった今、ほぼ同時に学園へ戻って来た所らしい。その表情は、一様に硬い。
    「五十嵐さん、僕らに時間を頂けませんか?」
    「もちろんです」
     海堂・詠一郎(破壊の軌跡・d00518)達の様子からすると、何か情報を掴んできたのは間違いない。大勢の生徒が集まっている今だからこそ、その情報を皆に伝えるのは有益なはずだ。
    「えっ、なになに? 何が始まるん?」
    「今まさに手に入ったばかりの、『今日の最新情報のまとめ』が始まるみたいだよ」
     きょろきょろする犬童・蘭珠(バカって言うなー・d29977)に答えつつ、真波・悠(強くなりたいと頑張るココロ・d30523)は少しでも前で聞きたいと場所を確保に向かう。
     今判明したばかりの最新情報について詳しく聞けるとは、願っても無い機会だ。一字一句書き漏らさないようにと、ルナ・リード(朧月の眠り姫・d30075)や雨宮・絵梨香(恋の狩人兼オペ娘兼黒き鳥・d30496)など、多くの生徒がすぐにメモを取れるようにする。
    「あ、録音しても大丈夫かな?」
     音声データがある方がまとめやすいのではと考えた沢渡・朱鷺音(星焔の裁き・d28643)が念のために確認するが、もちろん問題は無い。他にもヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)や中海・行部(赤混じりの黒・d17640)など、録音機材を用意した者が結構いた為、皆で手分けをして録音を進める事にする。
    「ひっきよーぐ! よーし! すわるばしょ、よーし!」
     桜火・カズヤ(キャンディドギィ・d13597)はすっかり準備万端。姫乃・心想(眠り姫の心中・d30168)も真剣にペンを構えた。
    「それでは……魔人!」
    「編纂室!」
    「「はーじまーるよー!!」」
     マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)が設置したホワイトボードの前で、手にはめたウサギのパペットを揺らしながら高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)とシア・クリーク(知識探求者・d10947)が宣言し、まずは今日判明したばかりの情報についての、まとめが始まるのだった。

    ●とりあえず読もう! 2014年11月12日の最新情報!
     まず最初に口を開いたのは詠一郎だ。
    「僕らは、格闘技を習う少年少女達が次々と『アンブレイカブル』へ闇堕ちしている事件について調査へ向かいました。ある町に多数のアンブレイカブルが集い、稽古を重ねているという情報を掴んだからです」
     このアンブレイカブルの動向には関連があるのではないか。そして、そこに『シン・ライリー』という名のアンブレイカブルが関与しているのではないか……というのが詠一郎の推測であり、彼らは詳しい情報を掴むため、その町へ向かったのだ。
    「で、調査の結果ですが……その、この町のアンブレイカブル達は、情報を隠すつもりが全く無いみたいで……」
     志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)が何とも言えない顔をしながら告げる。調査で情報を掴んだというか、調査するまでもなく情報が判明したというか……。
    「ともかく。私達が掴んできた情報は、次のような内容です。まず……」
     藍達が話す内容を、赤阪・楓(死線の斜め上・d27333)達がホワイトボードに書き取り、図や矢印なども交えながら解りやすくまとめていく。
     彼らの話した内容は、こうだ。
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    1、この町は『獄魔大将シン・ライリー』に集められたアンブレイカブルの町である。
     アンブレイカブル達は『獄魔覇獄』を勝ち抜く為に、特訓をしている。

    2、シン・ライリー自身は、海の底にいる達人に稽古をつけて貰うため不在。
     この達人は、おそらく『業大老』で間違いないと思われる。

    3、この町には『ケツァールマスク』が滞在している。
     彼女からは「稽古に参加したいなら、いつでも来て良い」と言われた。
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    「先生、質問がありまーす!!!!!!!!!!」
     そこで立ち上がり、メガホンを構えて大声で尋ねたのは幽谷・響介(ヤマビコ三倍返し・d29273)だ。
    「獄魔大将ってなんですかー!」
     姿勢を正して元気よく、あわよくば先生からの高評価に繋げようと野心たっぷりに質問する響介だったが、その内容自体は実に妥当な物だった。獄魔覇獄も知らない者にとっては謎の単語だろうし、そもそもシン・ライリーや業大老、ケツァールマスクなども謎の存在に違いない。
    「そうだね、じゃあまずは業大老一派についてと……」
    「武神大戦天覧儀について説明しましょう」
     竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)や柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)、花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)達が説明を始める。

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    【マスターからの解説】
     業大老やケツァールマスクについては、『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』でアンブレイカブルについてまとめた際に、皆さんが詳しくまとめてくれています。そちらを参考にしてください。
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    「武神大戦天覧儀についても前回の時点で判明していたことを、まとめましたが……あれから更に戦いは激化していきました」
    「前回まとめた頃、武神大戦天覧儀は『アンブレイカブル同士』での戦いでしたが、更に『ダークネス種族を問わない戦い』になっていったんです」
     そうして、やがて天覧儀を勝ち抜いた中から、武神大戦の次の段階となる『獄魔覇獄(ごくまはごく)』への出場権を持つ『獄魔大将』が生まれた。その中の1人として判明しているのが、先ほど情報のあったシン・ライリーなのである。
    「獄魔覇獄の詳細は不明だが、どうやら団体戦となるらしい。シン・ライリーは、その為の戦力増強を狙っているのだろうな」
    「じゃあ、私が闇堕ちした元凶はシン・ライリーなのか!」
     鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)の説明に、来守谷・晶恵(中学生ストリートファイター・d31146)が拳をぎゅっと握る。
    「……その町には、私達と同じように闇堕ちさせられた子が沢山いるって事よね」
     恵華・櫻(凛と光る刃・d31162)も、声を抑えるようにして呟く。
     彼女達は、まさに『格闘技を習っていて、突然闇堕ちしたところを救われた少年少女』だ。他にも、この場にはそうして救われ、学園に来たばかりの者達が何人もいる。そんな事件の当事者である彼らが、真相を理解した瞬間だった。
    「プロレスアンブレイカブルこと、ケツァールマスクが協力している点も見過ごせないね」
    「彼女が率いるプロレスラーの集団も、皆加勢していると考えて良いじゃろう」
     稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)や館・美咲(四神纏身・d01118)達は、ケツァールマスクとその配下達の戦力についてまとめていく。
    「シン・ライリーと、その陣営のアンブレイカブル……現時点における、最も警戒すべきダークネス組織の1つとなるだろうな」
     現地でケツァールマスクと戦い、瞬く間にノックアウトされた1人である安曇野・乃亜(ノアールネージュ・d02186)は、苦々しい表情で呟いた。
     ケツァールマスク1人相手に、8人でまったく歯が立たなかったのだ。しかもアンブレイカブル達は日々特訓をしているから、次に会う時には更に強くなっているかもしれない。
     十分に警戒すべきだろうと、四波・宿儺(伽藍の化生・d27986)も静かに頷いた。

    「続けては俺達から、シャドウの……獄魔大将について」
     入れ替わりで前に立った有坂・一弥(炎の着ぐるみ職人・d28503)の最初の言葉に、情報収集へ向かったメンバー以外の灼滅者達が、一斉にざわついた。
     シャドウの獄魔大将。そのような存在は、みんな初耳だった。
    「誰!?」
    「どんな奴だ?」
    「それが正直わからない。順に説明すると、」
     一弥達はそもそも『パンタソス・カロ』というシャドウに接触するため、悪夢を見ている少年のソウルボードへと向かった。
    「エクスブレインから話を聞いた時、こちら……学園側と接触したいがために動いた、という感じがしたんだよな」
     そこで彼らはパンタソスとの戦闘を避け、反対に彼との会話を試みた。その結果、判明した情報は、次のような物だったという。

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    1、パンタソスは『慈愛のコルネリウス』のメッセージを伝えに来た。

    2、実は『歓喜のデスギガス』と呼ばれる強大なシャドウの配下が獄魔大将に選ばれている。
     シャドウの獄魔大将は獄魔覇獄に参加するため、現実での実体化実験を行っている。

    3、コルネリウスはこの動きを良く思っておらず、彼らの敗退を望んでいる。

    4、その為、コルネリウスは武蔵坂学園に対して、
    「獄魔覇獄の初手でデスギガス勢力を集中攻撃するなら、自分達も協力する」
     と申し出てきた。
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    「実体化実験って『ダイヤ』のシャドウのこと?」
    「ヤツらが現実に現れたのって、そんな理由だったッスか……!?」
     自分が注目していた事件と関連があることを知り、辻・蓮菜(反魂パステルアーミー・d18703)や高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)が思わず声をあげる。
     最近『ダイヤ』のシャドウ達が現実に現れてる事件が相次いでいる。おそらく、それはすべて獄魔覇獄のための実験の一環だったのだろう。
    「肩慣らしって、そういう意味か」
     実験のつもりで現れたのだとしたら、あの時のシャドウの言葉にも納得がいくと、朔良・草次郎(蒼黒のリベンジャー・d24070)も頷く。
    「もしかしたら、獄魔覇獄に関係があるのかもって思ってたけど……」
     シゼル・クラウン(スマイルエクスプローラー・d25207)は、まさか本当にそうだったとは、と思わず溜息をついた。
    「ダイヤばかりだったのは、ちゃんと意味があったんだね。その『歓喜のデスギガス』っていうシャドウが、きっとダイヤを代表するシャドウなんだ」
     得られた情報から推測するウェルシェ・セイボリー(夢想旅行・d22495)。メッセンジャーの発言も、それを裏付ける物だったと一弥達は頷いた。
    「そして、ハートを代表するコルネリウスは、ダイヤのデスギガス達の動きを良く思っていない……シャドウも一枚岩じゃないんだな」
     想像以上にシャドウ内部が対立している事を知り、二階堂・空(大学生シャドウハンター・d05690)が口にした言葉に、頷いた灼滅者は多かった。
     こんな風にして、得られた情報から先輩達がまとめていった内容を、折紙・栞(ホワイトブックガール・d15951)や御手洗・花緒(雪隠小僧・d14544)は正座しながら聞き、丹念にメモしていく。
    「私が会ったシャドウも、獄魔覇獄に参加するため現実に現れていたんですね」
     望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)達は知らず知らず、獄魔覇獄に関わる戦いを繰り広げていたのだと知って驚くと、同じ体験をした灼滅者達と顔を見合わせている。
    「妙に好戦的で、まるでアンブレイカブルみたいだ……って思ったのは、あながちハズレじゃなかったって事か」
     それは乱獅子・紗矢(獅子心乙女・d13748)も同じだ。しかも、あの時戦ったシャドウは強かった。実験の結果、彼らがどのような戦いをしてくるかは解らないが……。
    「本来シャドウは、その強すぎる力ゆえに現実世界では活動できないとされていたダークネス種族だ。彼らはソウルボード……人間の精神に生息し、あえて大幅に弱体化する事によって、初めて活動ができるようになっていた。しかし、ダイヤのシャドウ達は違う」
     彼らはソウルボードではなく、現実世界に出現して活動している。その事実自体を重く見るべきだろうとヴィルクス・エルメロッテ(トリックテイキング・d08235)は告げる。
     現実化できるように力を抑えているような節はある。だがそれでも『彼らが本来の力を発揮できる可能性のある、現実世界での戦い』になるのかもしれない。
     その危険性は十分に知っておかなければならないだろうと、ヴィルクスなどシャドウに詳しい者達が説明していく。
    「獄魔覇獄か……。どう動くか、考えないといけないだろうね」
     ユリアーネ・ツァールマン(咎負の鳥・d23999)の言葉に、皆が思わず沈黙する。
     コルネリウスの言葉通りなら、ダイヤの獄魔大将を協力して倒す機会は一番最初だけ。戦いの相手となる獄魔大将が、シャドウ以外にもいるのが悩ましいが……様々な点を踏まえて、考える必要があるだろう。

    「……悩みの種を増やすようで大変言いにくいのですが」
     そんな沈黙を破ったのは、森田・依子(深緋・d02777)だった。
     しかし、言わないわけにもいかないと、依子は口を開く。
    「こちらも獄魔大将の情報を掴みました」
    「わたくしめどもが向かいましたのは、スサノオの元でございます」
     靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)の言葉に、月波見・射月(小学生人狼・d27504)や月ヶ瀬・榊(叢雲を斬る・d27791)、千歳・桜(大口ノ真神・d30451)など、多くの人狼達が注目する。
     今まさに話題の連続となっている獄魔大将に関わる内容である事に加え、スサノオは、彼ら人狼の宿敵でもあるからだ。
     しかし、更に続けられた依子達からの情報に、人狼のみならず、多くの灼滅者がまたしても目を丸くする事になる。
     彼らからの情報をまとめると、

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    1、各地でスサノオから力を奪っていた『謎のインド風の踊り子』は
     『スサノオの姫ナミダ』と名乗った。

    2、ナミダは『古の約定により、獄魔覇獄に参加する大将』だと言った。

    3、ナミダからの問いかけには、思わず返答してしまうような威圧感があり、
     まるで『灼滅者から王者の風を受けた一般人』のような感覚になった。
    ====================
     という事のようだ。
    「……特に最後については、かなり格の差を突き付けられたような感覚がありました」
     スサノオの姫という謎の単語も気になるが、そこまでの威圧感を受けるとは、一体ナミダ姫とは何者なのだろうか。
     それ以上の詳細は、依子達も解らないという。
    「相手――ナミダ姫が、何故かスサノオの居場所を捕捉しているのが気になっていたんだけど、それほどの力の持ち主となると、ナミダ姫の力の一環という可能性もあるね」
     ルーク・アルカード(白麗・d22493)は思わず眉を寄せて唸った。一方、御納方・靱(茅野ノ雨・d23297)は、エクスブレインの予知を妨げるブレイズゲートの白い炎と同様に、出現地点の予測を妨げるというスサノオの力との関連を疑っていたが、いずれにせよ、現状では情報が足りなすぎる。
    「獄魔大将については、わざわざ嘘をつく意味が無い場面での発言だったので、事実だと考えて良いと思います」
    「と、いう事は。ナミダ姫がスサノオから力を奪っていたのは、獄魔覇獄の為でしょうか」
     狼久保・惟元(白の守人・d27459)は難しい顔をしながら呟く。
    「スサノオの力を用いて、町や人々に被害を出すような事を狙っているのであれば、止めなければなりませんが……」
    「スサノオの封印は俺ら人狼の使命だもんな」
     惟元の言葉には日輪・金和(汝は人狼なりや・d27522)など人狼の多くが頷くが、どのような使い道を想定しているのかは、今のところ、まだわからない。
    「万が一、人狼の方が闇堕ちされたら、そこを狙ってくる可能性もあるでしょうか……?」
     そう危惧するのは嘉神・皓(皓月千里・d27629)の言葉は、つまり『ナミダ姫が、その為に人狼達の闇堕ちを狙う』という可能性にも言及するものだ。
    「わからないが、敵の敵は味方……とはいかないようだね」
     そう単純に測れる相手では無さそうだ。自分達も標的になる可能性があるのならば、十分に用心しなければいけないだろうと、日輪・震生(汝は人狼なりや・d29957)は思う。
    「でもそんだけ格が違う相手だと、正直、真っ向から敵対したくはないな」
    「ナミダ姫本人もそうだけど、他の獄魔大将みたいに軍勢を率いている可能性もあるものね」
     九葉・紫廉(量産型チョロ九・d16186)や日輪・こころ(汝は人狼なりや・d27477)など、更に多くの灼滅者達が難しい顔をして考え込む。今のところナミダ姫は単独行動をしているようだが……相手に謎が多すぎて、検討しても答えが出そうに無い。
    (「スサノオの姫、古の約定……。ナミダという名前に、何か特別な意味はあるのだろうか」)
     確証はないが、何かスサノオに因縁めいた物を持っているのだとしたら、何かヒントになる伝承などがあるかもしれない。ヴォルフ・アイオンハート(蒼の封魔狼・d27817)は、古い文献を当たってみようかと考える。
    「とにかく、気が抜けないね」
     新たな情報を得た一方、謎は更にに深まったともいえる。更なる動きに備えて、用心するほか無いだろうと言うセレーネ・フローライト(百鬼夜行の元主・d28654)に、灼滅者達頷いた。

    「……で、ボク達はイフリート『ヒイロカミ』に会ってきたんだ」
     シオン・ハークレー(光芒・d01975)の言葉に、灼滅者達は思わず考えずにはいられなかった。
     アンブレイカブル、シャドウ、スサノオ。ここまで、ずっと獄魔大将にまつわる情報ばかりがもたらされた。
    「イフリートって、犬や猫を眷属化させてたっすよね。まさか……」
     眷属を増やし、彼らが何をしようとしているのか。
     華渓院・実誉(赤城の元気巫女・d04876)が「もしかして獄魔覇獄っすか?」と尋ねると、シオンは頷いた。
    「正解。でもヒイロカミじゃない。イフリートの獄魔大将は『クロキバ』だよ」

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    【マスターからの解説】
     『ガイオウガ』と呼ばれる強大なイフリートの復活を目指している、イフリート達のリーダー的な存在。それが『クロキバ』です。
     クロキバについては、『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』や、次のページにまとめられています。

    ●箱根温泉のイフリート
    http://tw4.jp/html/world/story/st130530.html

    ●イフリート源泉防衛戦
    http://tw4.jp/html/world/story/st130830.html

    ●リアルタイムイベント『ゴッドモンスター』
    http://tw4.jp/html/world/event/024war/024war_140330main.html

     ゴッドモンスターを巡る戦いの後、クロキバは、ご当地幹部『アフリカンパンサー』を追って行方をくらませていた(武蔵坂学園では消息を掴めていなかった)のですが、いつの間にか獄魔大将になっていたようです。
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    「ヒイロカミが何を考えて、猫を眷属化したのか知りたいって思ってたけど……」
     獄魔覇獄の戦力にする為だっただなんて、と宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)はやるせない顔をする。
     彼らが出向いた先では、眷属化した飼い猫達が孤独死したお婆さんの遺体を、まるで守るかのように過ごしていた。イフリートに眷属化されなければ、あの猫達はまだ生きられたのに……と、そう思うからこそ、複雑な気持ちだ。
    「わかります。俺も動物が好きなので、眷属化したからといって倒さなければいけないだなんて、心が痛かったんですよ」
     苦笑いしながら頷いているのは森村・侑二郎(尋常一葉・d08981)だ。
    「その辺りも含めて、改めて詳しく聞きたいです」
     津島・陽太(ダイヤの原石・d20788)が手を挙げると、野乃・御伽(アクロファイア・d15646)が頷き返す。
    「もちろん。敵のことを知らないままじゃ勝ち目なんてねぇからな」
     それは情報収集や調査を重んじている、御伽らしい発言だっただろう。
     シオンや御伽達がヒイロカミから得た情報をまとめると、次のような内容になる。

    ====================
    1、ヒイロカミは獄魔覇獄の戦力にするため、眷属化した犬猫を集めていた。

    2、それをヒイロカミに命じたのは、獄魔大将クロキバである。

    3、ヒイロカミによると、犬や猫が眷属化したのは、
    「クロキバが獄魔大将になったから」らしい。

    4、クロキバ達は武蔵坂学園と一緒に戦いたいと考えており、
    「話し合いに応じる場合は、別府温泉の鶴見岳に伝言を残して欲しい」
     と、ヒイロカミを通じて伝えてきた。

    4、ただし、クロキバは同時に、武蔵坂学園を警戒している。
    ====================

    「クロキバというイフリートが黒幕なのですね」
     と、菅谷・慎太(陽色のシアン・d29835)は書き取ったノートにマーカーでラインを引く。宿敵が関わっていたとは、と白桜・灯(桜の名を継ぐ者・d08817)も難しい顔だ。
    「眷属化した犬や猫を集めるのは、ゴッドモンスター戦で減らした戦力を補う目的でしょうかね」
     得られた情報から籠野・美鳥(高校生サウンドソルジャー・d15053)が推測した線が、おそらく当たりなのだろう。まさか獄魔覇獄のためとは、と華渓院・実誉(赤城の元気巫女・d04876)は溜息をついた。
    「ヒイロカミが一緒なら、アカハガネも一緒だろうね」
    「ガイオウガ派のイフリートは多分みんな一緒なんじゃねぇの?」
     三門・三森(葬歌・d05215)の推測に暮坂・哲暁(焔雷の剣・d11425)も頷く。クロキバは多くのイフリートから慕われているから、その可能性は高いだろう。
    「でも、どんな理由でも、どんな相手でも、わんちゃんやねこちゃんが、かわいそうだよー」
     愛良・向日葵(元気200%・d01061)は、しょんぼり顔だ。ただ、犬や猫が眷属化したのが『クロキバが何らかの力を使ったから』なのか、それとも『クロキバが獄魔大将になった影響で自然に発生した』のか、あるいはもっと別の理由なのかはハッキリとしない。ただ、これはヒイロカミがそこまで賢くなく、人間の言葉も流暢には喋れないので仕方ない。
    「でも異常な状況なのは間違いないですよね。眷属とは、ダークネスが動物を化け物に改造して使役するものであって、動物がそのまま眷属化する事は通常無いわけですから」
     眷属についての資料を元に、鈴音・流美(のんびりさん・d21652)は黙々と、これまでに発生した犬猫の眷属化事件をまとめていく。
     クロキバがそう故意に行ったのかもしれないが、一般人の生活圏において凶暴な眷属が大量発生するような事態が自然に発生しているのだとしたら、人々が危険に晒されるという意味で、より問題は大きいのかもしれない。
    「しかしクロキバはアフリカンパンサーを追いかけていたのでは……?」
     いきなり獄魔大将となっていた事に、アレス・クロンヘイム(刹那・d24666)は首を傾げる。アフリカンパンサーは一体どうしたのだろうか。
    「クロキバと話すなら、その辺も聞けるだろうけど……別府かあ」
     別府温泉の鶴見岳に伝言を、と言っているなら、いつものようにイフリート宛ての石版を置いておけばクロキバは応じてくれるだろう。まさにその別府が地元のご当地ヒーロー、守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)は、ふと考え込む。
    (「別府では最近ブレイズゲートの話があったけど、何か関連があるのかな」)
     同じ別府ということで、関連性が気になる神楽だった。

    「もしかしたらと思っていたけど……全部、獄魔覇獄の前触れだったんだね……」
     一通りの情報を聞き終え、セトラスフィーノ・イアハート(夢想抄・d23371)は思わず机に突っ伏した。
     一連の事件に『戦力の増強』を狙う意図を感じる事から獄魔覇獄との関連を疑っていた者や、何らかの思惑が働いているのではと推測した者は、他にもカンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)やセルマ・ルンドグレーン(クロノツーリストパックス・d26172)など複数いたが、皆、それが的中したからといって喜ぶ気分になれる訳では無かった。
    「あの、ところで」
     質問したいのですが、と手を挙げたのは風神・虹(中学生魔法使い・d31322)だ。
    「シャドウやイフリートが共闘を申し出ているという事は、武蔵坂学園も獄魔覇獄への出場権があるのですよね?」
    「あ、それ気になってました。獄魔大将の元で団体戦をする……なら獄魔大将がいますよね?」
     誰でありますか? とネヴァ・ラウィーニア(ビアンカネーヴェ・d30310)も首を傾げる。その瞬間、先輩達の視線が一斉にある人物の方を向いた。
    「ど、どうも、ごくまたいしょうでござる……」
     みんなの視線の先で、おずおずと手を挙げるのは猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)。その甲には紋章が浮かんでいる。
     この紋章こそが獄魔大将の証であり、武蔵坂学園の獄魔大将が間違いなく彼女、ブレイブであることを示す物だった。
    「ブレイブさんは、最後の獄魔大将の座を巡る戦いに武蔵坂学園が介入した際、獄魔大将に選ばれたんです。そう、夏休みに北海道であった『臨海学校』の時に!」
     鴛水・紫鳥(中学生シャドウハンター・d14920)は、3か月ほど前の出来事を正確に語った。正確に語っただけなのだが「臨海学校?」と多くの新入生が首を傾げた。

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    【マスターからの解説】
     今年の臨海学校については、詳しくまとめたページがあるので、こちらをどうぞ。
     http://tw4.jp/html/world/event/029/140812main.html
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    「拙者も獄魔覇獄については、この時に解ったこと以外は知らないでござる」
     他の獄魔大将の事も、情報を把握できたのは皆のおかげだとブレイブは語る。そんなブレイブの様子にビシカ・ガーシュウィン(六番目の遺産・d30953)は「とりあえずリーダーって感じでいいのかな」と首を傾げる。それとも、獄魔大将にはもっと、何か明白な役割などがあるのだろうか?
    「それにしても多いわね、獄魔大将。あと他に誰かいた?」
    「私が見た『予兆』によると、ブエルという人物も獄魔大将のようね」
     ハノン・ミラー(ダメな研究所のダメな生物兵器・d17118)の呼びかけに、まず答えたのが志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)だ。それから、
    「『智の犬士カンナビス』が、ソロモンの悪魔ハルファス軍の獄魔大将だと判明しました」
     と廣羽・杏理(ソワレリエーブル・d16834)も、その予兆を見たと告げる。

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    【マスターからの解説】
     メインページ(http://tw4.jp/main/)に行くと、皆さんは稀に謎めいた『予兆』を見ることがあります。ハノンさんや藍さんは、この予兆で情報を得たんですね。
     これまでに誰かが見た予兆は、次のページにまとめられています。

    ●武蔵坂学園のあゆみ『予兆』
    http://tw4.jp/html/world/4-4ayumi.html#03

     ちなみにハノンさん達が見た予兆は、2014年10月20日に見えた『【予兆】茨城県古河駐屯地・武装実験室 』です。
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    「ブエル……最近起こってる、人間がいきなりブエル兵になっちゃう事件と関連があるのかな」
    「ここまでの情報を考えると可能性は高いと思う」
     首を傾げる亜寒・まりも(メリメロソレイユ・d16853)に、砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)が頷き返す。
     これまで起こっていたブエル兵の事件は『ブエル兵が人間の持つ知識を奪う』という物で、ここ最近発生している事件とは大きく違っている。そして、人間がいきなりブエル兵になるという流れは、犬猫がいきなり眷属化してしまうのに似ているのではないだろうか。
    「うーん。私達がブエル兵を倒し回ってるからだろうか」
     欠けた戦力を補おうとしている可能性は十分にありそうだと、椿森・郁(カメリア・d00466)は推測していた。
    「これって、デモノイド化させる技術に似ている気がしないか?」
    「私も同じような印象を持っていました」
     頷きあっているのは栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263)と彩辻・麗華(孤高の女王を模倣せし乙女・d08966)達だ。デモノイドを生み出したのはソロモンの悪魔……ブエルという人物は、ソロモンの悪魔なのかもしれない。
    「獄魔覇獄、それに備えるための戦力増強……と見て良さそうですね」
     凍月・緋祢(コールドスカーレット・d28456)の言葉に異を唱える者は誰もいない。反対に、北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917)が「そんな事の為に一般人を眷属化してるのだとしたら許せませんね」と、静かに吐き出した。
    「でも、詳しい手掛かりは皆無。なんにもないわ。相手は完全に行方知れずね」
     しかし何か手を打つにも、かなり難しいと言わざるを得ないだろう。そう董白・すずり(花糖菓・d25461)が険しい表情で口にする。
    「ということは、現在出場が判明しているのは……」
     菅野・阿久利(中学生ファイアブラッド・d23441)は情報をまとめようとして、頭をぐるぐるさせて呻く。
    「わ、わかりやすく、図とかにして説明してくれるとありがたいんだけどな……」
    「私が描きましょう」
     そんな阿久利の要望に、厳木・まどか(シアワセ探しの清貧生・d14076)が新しいホワイトボードを持ってくる。

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    <これまでに判明した獄魔大将>
    ●シン・ライリー
     アンブレイカブルの獄魔大将。格闘少年少女の闇堕ちに関与。
     戦力は闇堕ちした格闘少年少女、ケツァールマスクと配下のプロレスアンブレイカブル。
     かつて『仁の犬士』としてカンナビスと同じ陣営にいた。現在の関係は不明。

    ●クロキバ
     イフリートの獄魔大将。犬猫が眷属化する事件に関与。
     戦力は、ガイオウガの復活を目指すイフリート達と、眷属化した犬猫。
     武蔵坂学園とは、これまで比較的友好的な関係にあり、クロキバから共闘の申し出が来ている。

    ●ブエル
     予兆で判明した獄魔大将。ソロモンの悪魔ではないかと推測されるが、詳細不明。
     名前から『ブエル兵』と関連があると思われる。
     同じソロモンの悪魔の軍勢であるハルファス軍とは別の陣営らしい。

    ●カンナビス
     ノーライフキングだが、ソロモンの悪魔ハルファス軍の獄魔大将らしい。
     戦力はハルファス軍のソロモンの悪魔と、眷属のアンデッド(?)
     かつて『智の犬士』としてシン・ライリーと同じ陣営にいた。現在の関係は不明。
     予兆から、智の霊玉を使って戦力を増強している。
     ナミダ姫とは敵対している模様。

    ●シャドウの獄魔大将(名前不明)
     『歓喜のデスギガス』の配下。シャドウが現実世界で実体化する事件に関与。
     戦力はデスギガス軍勢のシャドウだと思われる。
     『慈愛のコルネリウス』と対立していて、コルネリウスから武蔵坂学園に共闘の申し出が来ている。

    ●ナミダ
     スサノオの姫を名乗る獄魔大将。
     スサノオとの関係は不明だが、スサノオから力を奪っていた。スサノオへの襲撃はすべてナミダ本人によるものと考えられる。
     ナミダが単独行動をしているのか、配下や仲間などがいるのかは不明。

    ●猫乃目・ブレイブ
     武蔵坂学園の獄魔大将。

    ※予兆から、六六六人衆が何らかの形で関与している事が判明している。詳細不明。
    ※ヴァンパイア、羅刹、淫魔、ご当地怪人、デモノイドが獄魔覇獄に関わっているかは不明。
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    「獄魔覇獄は、この獄魔大将の軍勢が激突する戦いになるんだよね……?」
    「嫌な予感どころじゃないよね、絶対とんでもない事になるよ」
     果たして、どんな戦いになっていくのだろうか。泡野・宮介(寒暖ハンター・d18076)の言葉に御剣・ケイ(体育系魔導師・d18940)も小さく溜息をつく。
     だがその一方、レイヴン・リー(寸打・d26564)や巫・縁(アムネシアマインド・d00371)などのように腕が鳴ると高揚したり、華奢林・凜(キャシャリンお姉様・d31280)のように胸躍らせている者も少なく無かった。
    「私達から見れば、どの相手も同じ『ダークネス』であり基本的には敵です。しかし、私達には全ダークネスと同時に戦う力はありません」
     それは、灼滅者とダークネスの力量差を考えると仕方の無い事だと、ステラ・バールフリット(氷と炎の魔女・d16005)は語る。
    「私達にとって幸運なのは、ダークネス同士だからといって、必ずしもダークネスが全員仲間同士だというわけでは無い事でしょう。他のダークネスと敵対しているダークネスもいれば、協力しあっているダークネスもいます」
     そして、それは武蔵坂学園も同じだ。ダークネスと戦う一方で、一部のダークネスとは一時的に共闘した経験がある。
    「戦うべき相手を見極めましょう」
     誰と戦い、戦いを避け、あるいはどのような順番で戦っていくのか……それは獄魔覇獄に限らず今後のあらゆる戦いにおいて、考えていく必要がありそうだ。


    ●武蔵坂学園の危機~サイキックアブソーバー強奪作戦
    「……と言っても、ここで今すぐに結論が出る話ではありませんから、ひとまず資料のまとめを続けましょうか」
    「はい! 先生! 僕転校してきたばかりなので、全くわかりません! 獄魔覇獄以外に、最近の大きな事件ってなんでしょうか!」
     気を取り直して作業を再開すると、すかさずシュネー・シュヴェルツェ(中学生魔法使い・d30790)が手を挙げた。
    「えーと、大きな出来事ってゆーと……夏休みの終わりに起きた『サイキックアブソーバー強奪作戦』かな?」
    「そうですね。記憶に新しいのは防衛戦のことでございましょうか」
    「確かに、あれは凄かった」
     露木・菖蒲(戦う巫覡さん・d00439)や真釼・ジュディ(アンドロイドレディ・d26044)、木白・苑(紫陽花万華鏡・d25460)など、先輩達の中で最も多くの者が口にしたのが『サイキックアブソーバー強奪作戦』についてだった。
    「少し前に学園が攻め込まれたって聞いたわ! その事ね?」
    「8月31日に学園へ攻めてきた奴らの事だな。俺もちゃんと聞いてみたいと思ってたんだ」
     はいはい! と志羽・鈿女(ヒーローオブプリマドンナ・d31109)が手を振り回す一方、思わず身を乗り出したのは曽根・亮(夕焼け色の衝動・d26976)。
    「誠にお恥ずかしい話、先日の戦争が、どのような経緯で起こったものなのか……いまいちわからないのですわ」
     恥ずかしそうに話すココア・キュアイーリス(闇に愛されし孤高の太陽・d28523)だったが、同じような新入生が結構いる事が判明したので、ちょっとホッとする。凪原・水奈(ディープブルーバウンド・d28145)も、詳しい経緯や背景などに興味があると頷いた。
    「じゃあまず概要からな。簡単に言うと、ヴァンパイアが武蔵坂学園に攻め込んできたんだ」
     まず最初に口を開いた七瀬・悠里(小学生ダンピール・d23155)は、ヴァンパイアを宿敵とするダンピールだ。しかし、宿敵との戦いどうこうを抜きにして、まず何といっても、この学園が狙われた事が一番ショックだったと当時を振り返る。
    「『サイキックアブソーバー強奪作戦』は、強大な力を持つ『爵位級』と呼ばれる吸血鬼……」
    「『殺竜卿ヴラド』『魔女バーバ・ヤーガ』『絞首卿ボスコウ』の3人が、サイキックアブソーバーを強奪しようと、大軍勢を率いて、武蔵坂学園に攻め込んできたの」
     エミリオ・カリベ(魔法と科学と文学少年・d04722)の言葉を受け継ぎ、芦夜・碧(無銘の霧・d04624)が3人のヴァンパイアの名を挙げる。ちなみにヴラドとバーバ・ヤーガが子爵級、ボスコウは男爵級ヴァンパイアだと天城・桜子(淡墨桜・d01394)が補足する。
    「爵位級ヴァンパイアの力は強大で、身動きするにも大量のサイキックエナジーを必要っす」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が言うように、本来、彼らはサイキックアブソーバーのせいで、指一本動かせない状況であるはずだった。しかし、侍従長デボネアと呼ばれるヴァンパイアがご当地怪人から奪ったサイキックエナジーがそれを可能とした。
    「もっとも、この3人が半日動くのが限界でやした。その半日の時間を使って、爵位級ヴァンパイア達が行った作戦こそ、『サイキックアブソーバー強奪作戦』っす」
     ヴァンパイアにとって、失敗すればやり直しの出来ない作戦といえる。そこでヴァンパイア達は持ちうる戦力を大量に投入し、武蔵坂学園を襲撃したのだ。
    「前回のまとめにあるように、私達が普段戦っているヴァンパイアは『朱雀門高校』という、私達のように学校という組織を取っているの。でも、この爵位級ヴァンパイア達は、朱雀門高校のヴァンパイアではないわ」
    「朱雀門高校の後ろに、爵位級吸血鬼達が構えているような感じをイメージしてくれ」
     爵位級ヴァンパイアと朱雀門高校は無関係な間柄ではないが、例えるなら爵位を持つ者と持たない者のような格差がある。対等な関係では無く、上下関係にあると考えるのが解りやすいだろうと、六乃宮・静香(黄昏のロザリオ・d00103)と秋篠・誠士郎(夜蒼鬼・d00236)は説明した。
    「その割には、朱雀門高校の幹部級が姿を見せなかったのが気になるけど……」
     何か理由があるのだろうかと不思議がる椎木・恋(歓楽庭園・d19458)だが、その答えが解る者は、この場所にはいない。
    「目的がサイキックアブソーバーである以上、ここが戦場になる事はわかりきっていました。私達武蔵野の人々を避難させながら戦いましたが、これが大変で……」
     人々を護りながら戦う事の難しさを痛感したというメルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367)の言葉には、戦いに参加していた灼滅者の多くが頷いた。
    「……確かに。そのような場合にどうしたら良いか、すぐには思いつかないね」
     少しイメージしてみたジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)も、すぐに納得する。
    「あまり考えたくはありませんが、今後も同様に市街地が戦場と化す事があるかもしれません。万全の態勢で対応できるよう、そうしたケースにどう対処するか、日頃から考えておくべきかもしれませんね」
     メルキューレは実践していくつもりだと語る。
    「学園内での戦いも、ヴァンパイアの大群に取り囲まれてすっげえ危なかったけど、ラブリンスターの援軍のおかげで、なんとか首の皮一枚繋がったんだよなあ」
    「『絞首卿ボスコウ』を灼滅した事で、3人の爵位級ヴァンパイアによる『三竜包囲陣』が崩れ、敵は撤退していきました」
     枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)の発言に頷き、織凪・柚姫(甘やかな声色を紡ぎ微笑む織姫・d01913)が付け加えると、九賀嶺・夏々歌(罪に仕える断罪人・d23527)が描いていた図のボスコウの所に線を引いた。
    「このオレの秘められた力を解放すれば、ラブリンスターなどに頼らずともボスコウごとき瞬殺だったのだが、今はまだ封印を解き放つ時ではない……」
     などと夢幻・天魔(千の設定を持つ男・d27392)が小さく首を振り、さりげなくカッコいいポーズを決めているが、
    「この時、ラブリンスターの軍の助けがなければ恐らく私達は負けていただろうな」
     と加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)が語ったように、戦況は非常にきわどい物だった。2学期を迎え、今こうして過ごせているのは、あの戦いに勝利できたからこそなのだ。
    「もし負けていたらと思うと、ぞっとします」
     サイキックアブソーバーが灼滅者達の元から失われるような事があれば、かつての『灼滅者が片っ端から皆殺しにされる時代』へ逆戻りしかねない。マキシミン・リフクネ(龍泉堂の左輪・d15501)が青ざめるのも無理はないだろう。
    「淫魔のラブリンスターチャンね。ねえ、ラブリンスターチャンはなんで私達を援護とかしてくれたの? ぶっちゃけお互い敵でしょ? こっちはメリットあるけど、向こうさんはデメリットじゃないのかな」
     ここまで先輩達が何度かあげている『ラブリンスター』。それについて首を傾げているのは上運天・蓮弥(流れる雲の如く・d27984)だ。もちろん、今まさにそれが淫魔だと聞いて、目を見張る灼滅者もいる。
    「吸血鬼達の誤算の一つ、だろうな。いや俺もそんな事になるとは思いもしなかったが……」
     何が起こるか分からないもんだ、と呟いている風真・和弥(無能団長・d03497)は、この『サイキックアブソーバー強奪作戦』が起こる1ヶ月ほど前にあった『学園祭』に、ラブリンスターを誘った人物だ。
     普段アイドル淫魔として活動しているラブリンスターは、学園祭と武蔵坂学園に好感を持ち、そしてダークネスでありながら灼滅者である武蔵坂学園を援護してくれたのだ。

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    【マスターからの解説】
     ラブリンスターの学園祭での様子は、次のページで見れます。
     http://tw4.jp/html/world/event/028/028_club_result04.html
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    「最初は半信半疑……半分以上疑ってたけど、ここまで身を張って学園の肩を持ってくれたら、な」
     水海・途流(レモネディアン・d08440)は頭をかく。今まで遭遇した淫魔の中には、到底仲良くできそうに無い相手や、決して許せないような相手もいる。だが、命を懸けて戦うという行動を示したラブリンスターの事は信じるし、恩も返したいと、そう途流は思う。
     他にも、助けてくれたラブリンスターへの感謝を口にする者は後を絶たない。相手がダークネスであっても、受けた恩はしっかり返さないと気が済まないと言い合う者も多かった。
     そんな皆をじっと無言で見つめながら、彼らの言葉の数々に耳を傾けていた如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)は、小さく首を傾げて、ボードに書き出されたラブリンスターの名前を振り返った。
    「んー、でも助けてくれたのは有難いけど、ラブリンスターってほんとに善意だけで助けてくれてるのかなぁ」
     やっぱりダークネスだし気になる、と口にしたのは姫川・クラリッサ(月夜の空を見上げて・d31256)。パラケルスス・イルクーリオ(出来損ないの錬金術師・d27880)も少し考え込む仕草だ。
    「敵意は無いと言ってるけど、それが本当かどうかを確かめる方法も無いからな……」
     人間がそうであるように、ダークネスが口にする言葉だって、常に真実とは限らない。
     むしろダークネスの成り立ちを考えれば嘘なんていくらでも言うだろう。表情だって演技かもしれない。嘘を、嘘と悟られないように紡いで人間を闇堕ちさせるなんて、ダークネスなら決して珍しい事では無いのだから。
     ラブリンスターが常に本音を語っている保証はどこにもなく、彼女が、彼女の立場や考えに基づいて、嘘や偽りを口にしている可能性があることは、どうしたって否定できないだろう。
     もちろん、どのような理由であっても、ラブリンスターの協力を得て、灼滅者達が爵位級ヴァンパイアに勝利できたという事実は変わらない。
    「この学園に来るまで、俺はダークネスに勝つ事など夢物語だろうと思っていたから、この勝利は本当に衝撃を受けた。せいぜい時間稼ぎをするのが精一杯だろうと思っていたからな」
     エクスブレインの予知を生かし、皆で作戦を練り、時には利害が一致したダークネスと力を合わせ、絆を結んだ仲間達と必死で戦えば勝利を掴むことができる。互いを助けようともせずに撤退していく吸血鬼達を見ながら、千早・雫(闇の閃光・d28586)はあの日、まるで希望の光を見つけたような気持ちになったのだ。
    「そうだね。俺も心強い仲間が一緒にいるんだ、って……あの戦いで教えてもらった気がする」
     自分1人の力は小さくても、頼もしい仲間がそばにいる。小さな力でも、誰かの力になっている……それを感じた戦いだったと、藤城・奏哉(星霜アスピラシオン・d04826)も振り返った。
     深い傷を負って最後まで満足に戦えなかったのは悔しいけれど、だからこそ昨日より今日、今日よりも明日の精神で頑張っていきたいと、奏哉は前向きに考えていた。

    「んじゃ続けるぜ。そう、続きがあるんだよ」
     駆堂・駆(赤い疾風・d13783)は、だからといって学園がすぐに平穏を取り戻した訳では無かったのだと話を続ける。
     爵位級ヴァンパイアと共に多くの敵が撤退していったが、学園内には撤退しそこねた一部の敵が取り残されていたのだ。
    「そいつらを掃討する為に、学園のあちこちで激しい戦いが繰り広げられたわけだ」
    「残党とはいえダークネスだし、楽な戦いってわけじゃなかったけど、やっぱ自分たちの学園内にダークネスがうようよしてんのは嫌じゃん?」
     駆の言葉を受け継いで、立川・春夜(花に清香月に陰・d14564)も当時を思い出しながら言う。ダークネスというだけで不快なのに、更にそれがヴァンパイアなのだから、春夜的には二重に我慢ならない状況だ。
    「そうだね。やっぱり自分たちの学び舎にダークネスが、っていうのは嫌だったなあ……安心できないし」
     久志木・夏穂(純情メランコリー・d06715)など、多くの生徒がそれに共感して頷いている。
    「もう戦場になってほしくないな」
     というヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)の願いは、皆に共通するものだろう。
     幸いにも学園内での掃討戦はスムーズに進み、こうして、また平和な学園生活が戻ってきた。だからこそ、この平和を大切にしたい。
    「相手も今は静かですけど、一体何を企んでいるのか……。まあ、どんな状況になっても、俺が悟を好きって事だけは変わりませんけど」
     ヴァンパイア側の動きを懸念しながらも若宮・想希(希望を想う・d01722)はにっこり笑うと、隣にいる東当・悟(の身長はプラス拾壱センチ・d00662)に笑いかける。
    「そやな、俺も……」
     前回の灼滅者講座から山ほど色々な事があったが、想希への愛だけは不変だと、思わず想希を抱きしめようとする悟……だったが。
    「ええい! 講座にかこつけてイチャつくなど言語道断! 許すまじ! 覚悟せよ!」
    「リア充爆発しろ!!!」
     すかさず霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)やら夏炉崎・六玖(夜通し常識外れのシミュレータ・d05666)やら正体不明な謎のRBマスクを被った集団が襲い掛かってくる。
    「あれなんだワン?」
    「見なくていいよ、忘れていいよ」
     取り押さえようとした先輩達から逃れるように、自ら退場していく彼らの事はとりあえず忘れよう。
    「前回の戦争ではサイキックアブソーバーが狙われたけど、実際に奪われてたら学園にはどれくらいの痛手になってたのかな」
    「とんでもなく痛手だね! 理由は色々あるけど、なんといってもエクスブレインの未来予測が無くなるのが痛いよ!」
     気を取り直して、真心・流々(虚影のジョーカー・d27846)が口にした疑問に、力説するのは祟部・彦麻呂(誰が為に鐘は鳴る・d14003)。
     ダークネスにはバベルの鎖による予知があるから、本来であれば、ダークネスの裏をかいて行動するのは困難だ。
     しかしエクスブレインは、敵の予知を無効化する手段を予測できる。
    「これは武蔵坂学園の唯一と言っていいアドバンテージ。超超超すごい力だよ」
     未来予測はサイキックアブソーバーとエクスブレインの両方が揃って可能になる。だからヴァンパイア達に奪われていたら今頃、灼滅者は未来予測無しでの戦いを強いられていただろう。
     それは今までとは比べ物にならないほど多くの決死の覚悟や、大きな被害を伴う戦いになるに違いない。
    「そういえば、吸血鬼はなんでサイキックアブソーバーを『壊す』んじゃなくて、奪おうとしたんだろー? わざわざ持っていこうとした理由が分からないのー」
     壊す方が簡単そうな気がするのに、と雪螺・悠祈(天然モノ癒し系・d13883)が首を傾げる。理由が解れば、何か今後の役に立ちそうな気もするのだが、その辺りいまいちわからない。
     何か使い道を考えていたのか、あるいは壊したくない、壊せないような理由でもあったのか……。
    「そもそもサイキックアブソーバーとは、どのような力を秘めているのでしょうか?」
     改めて詳しく知りたいのだと告げたのは、神山・楼暗(白き堕人狼・d28713)。サイキックアブソーバーに力を封じられていた過去を持つからこそ、詳しく聞いてみたい事だった。
    「そうだね、まず最初からおさらいするのがいいかな」
     藤井・花火(迷子世界ランキング第四位・d00342)は頷くと、皆に協力してもらって図を書き出す。
    「この世界ではダークネスが人類を支配しています、ふはははー」
     高笑いするダークネスだが、ダークネスは動物のように子供を産んだりできないので、そのままでは一人ぼっち。仲間は永遠に増えない。
    「しょんぼり。……そこで人間を闇堕ちさせて、ダークネスを増やします」
     えいえい、とダークネスの図に水を撒くような線を書き足すと、周りに増えるダークネス達。ダークネスは人間を苦しめて闇堕ちさせ、どんどん仲間を増やしていく。
    「人類も負けてないよ、サイキックアブソーバーで対抗だー」
     博士っぽい絵の隣にサイキックアブソーバーっぽい絵を描き、更にその上に校舎を書く。武蔵坂学園だ。その間に、ダークネスは力を吸い取られて弱っている。
    「相手は弱っているし、私達でも勝てるかもー! ……これが今の状況だよ」
     花火は、へなへなしてるダークネスと、そこに攻撃してる灼滅者の絵を、ぐるぐる丸で囲った。
    「そんな事の為に……」
     柊・玲奈(カミサマを喪した少女・d30607)は、水を撒くダークネスの隣で人々が苦しみ、闇堕ちしてダークネスになっていく図を睨むようにして呟く。
    「灼滅者はいつ生まれたの?」
    「んー、具体的なタイミングとかは、よくわかんないんだよ」
     灼滅者の起源を詳しく知りたいと思っていた凪野・悠夜(朧の住人・d29283)は残念そうな顔をするが、昔の灼滅者についての記録などは、ほとんど残されていないので、これは仕方ないだろう。

    ====================
    【マスターからの解説】
     ゲーム解説ページの『支配された世界』にも書かれていますが、灼滅者はダークネスに見つかると、すぐに殺されてしまう存在でした。
     今みたいに大勢の仲間が近くにいるような環境は非常にレアだったので、1人でいるところを襲われて、あっという間に殺されてしまっていたのですね。

     ダークネスが灼滅者を狙う理由は、自分を殺そうとする存在だからです。
     バベルの鎖があるので、サイキック以外の方法でダークネスを傷付ける事はできません。このサイキックを使えるのは、ダークネスと灼滅者だけ。そして灼滅者は、ダークネスを灼滅しようとします。
     ダークネスにとって、灼滅者は『闇堕ちして仲間になるかもしれないから生かす』のではなく『自分を殺す可能性がある存在だから殺す』という対象だったのですね。
     かなりの勢いで殺されていたので、記録らしい記録もほとんど残っていないのです。
     もちろん、ダークネスから逃れ、生き延びていた灼滅者もいましたが、それは決して多くありません。家族やご先祖様が灼滅者だという方は、かなり幸運な家系に生まれたと言えるかもしれません。
    ====================

    「大人の灼滅者が全然いないのは、それが理由?」
     クッキー・コリコパット(アホの子・d24202)の問いかけにも先輩達が頷き返す。
     サイキックアブソーバーの稼働が始まったのは1990年。その混乱が拡大するにつれて灼滅者の生存率は爆発的に上がった。サイキックアブソーバーの創設者達が武蔵坂学園を作り、灼滅者を集めた時の最年長者が、今大学1年生の先輩達だと言われている。
    「じゃあ、そもそもサイキックエナジーはどこから来てるの?」
     電気は火を燃やして作ったり、風や太陽の力を使って作っているし、酸素は植物が作っている。
     じゃあ、サイキックエナジーは、どうやって生まれているのだろう?
     エニグマ・プロビデンス(小学生サウンドソルジャー・d24879)が口にしたのは、彼女にとって非常に素朴な疑問だったが、途端に先輩達が顔を見合わせる。
    「そういえば……」
    「誰か知ってる?」
    「いや、どうなんだろう?」
     数千の灼滅者が集まっているが、その答えは誰も知らなかった。サイキックエナジー、そういえばどこから来ているのだろう。
    「こ、こわいね」
     急にサイキックエナジーが得体のしれない、底知れぬ何かのように感じられてちょっとこわい。
    「ところでダークネスの活動が活発化している気がするけど、サイキックアブソーバー老朽化してない? 大丈夫?」
     一瞬広がった沈黙を破ったのは、朱鷺・玉子(海石榴・d24155)の疑問だ。今度は先輩達もちゃんと答えを知っている。……あまり明るい返答では無いのが残念だが。
    「サイキックアブソーバーの老朽化は、不可避だって言われてる」
     射干玉・闇夜(高校生人狼・d06208)は、灼滅者達にそれを教えたのは、武蔵坂学園の創設者でもある緒形校長先生だと告げた。

    ====================
    【マスターからの解説】
     校長先生のお話は、次のような内容でした。
     http://tw4.jp/html/world/story/ex/140407main_ex02.html
    ====================

    「あの爵位級みたいな連中が大量に復活する可能性を考えると、何か対抗できる手段を見つけたいが……」
     その必要性は痛感するが、今明確に『これ』という手段が無いのも事実だ。
    「殺竜卿ヴラドや魔女バーバ・ヤーガと、またいつか会う日も来るのかもしれん」
    「ああ。おそらく他にも、サイキックアブソーバーの老朽化が進めば、動き出せる爵位級がいるだろう」
     十文字・瑞樹(ブローディアの花言葉のように・d25221)の言葉に頷き、フィクト・ブラッドレイ(猟犬殺し・d02411)は推測する。その言葉に、山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)は思わず顔を曇らせた。
    「一時的とはいえ、3人もの爵位級吸血鬼を相手にしたのは結構怖かったです……。それなのに、今後どんどんああいった方たちと戦うことになっていくとしたら……」
     考えただけで不安や恐怖で胸がいっぱいになりそうだ。しかし、山桜桃がそう思ってしまうのも無理はない。あれほどの危機を経験した後で、それと同じ状況が何度も起こり得ると聞いたら、誰しも多少はそうなるだろう。

    「サイキックアブソーバー強奪作戦については、この位でしょうか?」
     こんなにたくさんの情報、一人だけでまとめていたら、もし何か見落としても気付かなかったでしょうね……と水崎・桃花(高校生神薙使い・d26202)が呟けば、まったくもってその通りだろうと、灼滅者達は次々頷いた。
    「……それにしても、これだけの事件が起きているというのに、世間ではまったく話題になっていないとは、今更ながらバベルの鎖というのは恐ろしいものだな……」
     ヴァンパイアの武蔵野市襲撃なんて、世界を揺るがすニュースになってもおかしくない。それなのに直接事件に遭遇した人以外は、まったくその事実を知らないのだから、バベルの鎖の凄さを矢薙・一真(高校生神薙使い・d04825)は痛感する。
     記憶は消えない、世界を揺るがす大事件に遭遇した事も理解できている。
     それなのに、事件について誰かに伝えようとしても、誰もその内容に見向きもしない。誰かに話しかけても相手は何故か聞き流されてしまうし、ネットへの発言は誰にも注目されずに埋もれてしまう。
     とんでもない出来事なのに! と騒いでも誰も振り返らないのだ。そう、かつてない大事件のはずなのに、誰とも話題を共有できない。……普通の人間なら、自分の記憶の方を疑ってしまうくらいの状況だろう。
     だからこそ、状況を正しく認識できる灼滅者だからこそ、こうして正確な情報を整理し、記録したい……そう思うのかもしれない。
    「さて、続きのまとめを……ん?」
     ふと目をやると、何やら寝息が聞こえてくる。
     見れば、辺りでざっと30人ほどの灼滅者が、すっかり夢の世界へ旅立っているようだ。
     その中には、開始早々に、
    「すげえ量の資料だ! 俺は寝る!」
     と突っ伏して3秒で寝てしまった七篠・奈々深(ビックマウスガール・d30923)のような者もいれば、三段に重なった重箱を完食してから悠々と寝ることにした朝露・きりん(高校生サウンドソルジャー・d22422)のような者もいるが、堂々と居眠りしているのは同じだ。
     新海・静夢(仄甘い眠りの底・d25094)は睡眠学習と銘打って熟睡しているし、一方ではベルベット・キス(見習い竜騎士・d30210)がむにゃむにゃと寝言を口走る。更には、羅刹・百鬼(一人ぼっちの百鬼夜行・d27920)のように、頭の上のナノナノまで寝ている者もいる始末だ。
    「こら起きろ、お前は昼寝しにここに来たのかよ」
     篠宮・蒼(秘密基地のツッコミアーミー・d29312)達が彼らを起こして回る中、
    「……はっ!!!」
     どこからともなく飛んできたチョークが、すこーん! とある意味気持ちのいい音を立てて、オリキア・アルムウェン(翡翠の欠片・d12809)の額に当たる。
    「寝てるなら起きて話聞くか体動かせ。……あ、いや、体はやっぱいい」
     蒼がお説教の口をつぐんだのは、真剣に、ただし大胸筋を鍛えながら話を聞いていた猩々・鵺(最大胸筋・d29985)を見たからだろう。
     ともあれ、魔人編纂室の整理は再開された。

    ●淫魔のまとめ
    「ところで、戦争でお世話になったというラブリンスターさんの勢力は、それからどうしているのでしょうか?」
     睦沢・文音(インターネットノドジマン・d30348)が気に掛けたのは淫魔についてだった。それなら、と天地・玲仁(哀歌奏でし・d13424)が関連しそうな資料を運んでくる。淫魔、ラブリンスターという単語を聞きつけ、鈴鳴・真宙(蒼銀の自鳴琴・d26553)の目もパッチリ開いたようだ。

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    【マスターからの解説】
     ラブリンスター達と、これまでどのように関係をもってきたのかは『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』にまとめられています。サイキックアブソーバー強奪作戦よりも前のことは、そちらを参考にしてください。
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    「爵位級ヴァンパイアと戦った事で、ラブリンスターちゃんの陣営もダメージをこうむったんだよね」
     瑠璃宮・弥生(かわいくて何が悪い・d18290)が言うように、ラブリンスター自身は大きな被害を受けなかったが、その配下達は違った。
    「その立て直しを図るため、ラブリンスターの配下達はフリーのダークネスに接触し、仲間に引き入れようと画策している」
    「ボインボインな淫魔だったらうっかりスカウトされちゃいそうだよな。わかるわー……」
     真剣な眼差しの長崎・莉央(ヘーゼルレイン・d16750)とは対照的に、イオン・ウォーカー(自称天才的トラッパー・d29456)の顔は、ちょっとニヤけている。
    「彼女達も頑張ってるみたいだけど……交渉が決裂して、反対に勧誘しようとした相手から倒されそうになる事件が多発してるね」
     それを救援に行った灼滅者も結構いるんだよ、と解説するのは村瀬・一樹(ユニオの花守・d04275)だ。
    「私達を救援してくれた事とも関係があるし、できるだけ助けて、ちょっとでも助けになれたらいいなって思うよ」
     羽柴・陽桜(はなひとひら・d01490)のように考える灼滅者は、やはり少なくないようだ。
     サウンドソルジャー達が集まっている一角に座っていた天月・静音(翼紡ぎの詩謳い・d24563)は、そんな同じサウンドソルジャーたちの発言へ真摯に耳を傾けると、淫魔達の今の動向をしっかりメモしていく。
    「まあ、18歳未満の子には見せられないような勧誘方法を取ってるのは、どうかと思うけどね」
     なにせ相手は淫魔である。淫魔らしいといえば淫魔らしいが、田抜・紗織(田抜道場の剣術小町・d22918)としては、その手法はちょっと認めがたい。
    「ただ、無差別籠絡術だっけ? ラブリンスターが本気を出して手当たり次第に声をかければ、もっとガンガン上手くいきそうな気もする」
     あえて今はやっていないのかな? と北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)は怪訝そうだ。
    「こうした事件に関わったり、解決していく事で、何か見えてくるかもしれないね」
     もしかしたら、とそう考える華槻・灯倭(月夜見・d06983)だった。

    「淫魔といえば『強力なダークネスになる素質を持った少年』を、あえて闇堕ちさせようとする淫魔が出ましたね」
     この淫魔達は、時間をかけてでも策を仕掛けながら確実に籠絡し、闇堕ちさせようと試みるのが共通点だと語るアンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143)に、富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)は前々から思っていた疑問を口にする。
    「必ず言うことを聞くとも思えないんですが、そこをうまくやるのが淫魔の手管なのでしょうか」
    「そうならないように巧みに……ってのが淫魔の策略なんだと思うよ」
     答えた草那岐・勇介(舞台風・d02601)は、そうした事件に関わった灼滅者の1人だ。
     この淫魔が巧みなのは、『特別だと認めてほしい』『誰かに必要にされたい』『コンプレックスも認めてほしい』などの恋愛以外の願望も淫魔が的確について、魅了してしまう事だろう。
    「オレ達が助けた人も、『地味メンだけど、モテる力があるから夢と希望がある』って術中はまってたもんね」
     そんな彼を淫魔から引き離して救うのは容易いことではない。が、助けた彼がすごくいい顔をしているのを見て、勇介は頑張った甲斐があったと思ったものだ。
    「その子好みのシチュエーションを上手く設定しているんですよね。淫魔と男の子がかなり親しくなっている所に介入するから、いきなり淫魔を灼滅しちゃうと、男の子がそのショックで闇堕ちしてしまう……という難しい状況にもなっているんです」
     若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)が複雑な顔をしたのは、めぐみが実際に解決に向かった事件では、そのシチュエーションが『ツンデレ妹』だったのを思い出したからだろう。
    「そこに介入するの、かなり恥ずかしかったんですよ……もう勘弁してほしいかも」
     めぐみは思わず嘆いてしまうが、この一連の事件はまだ収まっていない。二重の意味で勘弁してほしい気持ちでいっぱいだ。
    「ライトノベル、って言うんでしたっけ。そんな感じの無茶苦茶な設定を押し通している姿は、宿敵として、いっそ凄いなあって思いますよお」
     広海・智希(高校生サウンドソルジャー・d26113)なんて、呆れるのを通り越して感心してしまうくらいだ。
    「この事件は、ある日一気に起こるようになったのよね。何か原因や黒幕の関与でもあるのかしら?」
     結局まだいまいちよくわからないわ、と呟くアガーテ・ゼット(光合成・d26080)。淫魔が普段からやっている事件の一種だと、そう言ってしまえばそこまでかもしれないが……。
    「でも素性は気になるわね。ラブリンスター勢力とは関係無さそうな感じがするし」
     ラブリンスターの配下は彼女と同じようにアイドル活動をする淫魔達だ。このような行動の仕方は、ちょっと違うような気がする事が、アイレイン・リムフロー(スイートスローター・d02212)は気掛かりだった。
    「……ラブリンスター以外にも、淫魔の組織とかあるのかな……?」
     今まで、組織だって活動している淫魔との接触はラブリンスターと、あとは灼滅したスキュラの一派くらいだ。水野・真火(水あるいは炎・d19915)が発言したように、第3の淫魔勢力があるのかもしれないと、そう考える灼滅者達も少なくない。
    「ラブリンスターは、武蔵坂学園と比較的友好的なダークネスの1人。だから、ラブリン以外の淫魔が勢力を伸ばすのは、個人的には懸念材料だけど……」
     現時点では、まだ何とも言えないが、注目していく必要があるのかもしれないと、そう思う常盤木・狗狸夢(アンプリファイドニトロボム・d24119)だった。
    「大淫魔スキュラのことも、まとめる? 本人はとっくに灼滅されたけど……」
     晶石・音色(水晶細工の鈴少女・d30770)が言うように、強大な淫魔であるスキュラは、去年末の『新宿防衛戦』で灼滅されている。だが、問題は、その配下である『八犬士』が、まだ半数以上健在な上、各地に散らばって様々な事件に関与していることだろう。
    「今も健在な八犬士は5名。つまり……」
     霧月・詩音(凍月・d13352)がホワイトボードに名前を書き出していく。
    ====================
    「仁」の犬士シン・ライリー(アンブレイカブル)
    「智」の犬士カンナビス(ノーライフキング)
    「悌」の犬士安土城怪人(ご当地怪人)
    「信」の犬士グレイズモンキー(シャドウ)
    「義」の犬士ラゴウ(羅刹)
    ====================

    「誰が何処にいるんだっけ?」
    「シン・ライリーとカンナビスは、先程も話題になった獄魔大将になっていましたね」
     月代・蒼真(旅人・d22972)の疑問に、まず涅・染(退屈な女・d12400)が答える。
    「姿が見えないと思ったら、それぞれ別々の組織で獄魔大将化ですからね……」
     表立って共闘しているような動きは無いようだが、知り合い同士なのは間違いない。
    「カンナビス……こそこそしないで出てくればいいのに……」
     どこか悔しげに呟くヴィア・ラクテア(歩くような速さで・d23547)に、神隠・雪雨(虚往実帰・d23924)や夏村・守(逆さま厳禁・d28075)など病院の人造灼滅者達が同意する。
     カンナビスは、かつて命を落とした人造灼滅者の死体をアンデッド化し、利用していた事がある。カンナビスには、多くの人造灼滅者が憤っているのだ。
     しかもカンナビスが手を結んでいる相手は、病院を滅ぼした元凶でもあるソロモンの悪魔『ハルファス』。カンナビスがよりにもよってハルファス軍の獄魔大将になったと聞いて、彼らの怒りは倍増といった様子だ。
    「安土城怪人は、琵琶湖での戦いが記憶に新しいですね」
     深海・水花(鮮血の使徒・d20595)が言うように、安土城怪人は琵琶湖で、刺青羅刹の『天海大僧正』との戦いを繰り広げている。グレイズモンキーも、どうやら安土城怪人と行動を共にしているようだ。
    「ラゴウは朱雀門高校だね」
     また、ラゴウの消息もハッキリしている。紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)としては、朱雀門高校がある京都と琵琶湖の距離の近さもあり、こちらの連携なども気掛かりだ。
    「八犬士以外には、今年の春頃から起こっている『犬士の霊玉』の事件があります」
     スキュラが存命だった頃に仕掛けた策が発動するようになったのだと、置始・瑞樹(殞籠・d00403)が簡単にいきさつを説明する。
     ダークネスは人間が闇堕ちしてなるもの。しかしこの霊玉は違う。
    「人を堕とさずして、新しくダークネスを生み出す恐ろしい装置なんです」
     この特異性は重要だろうと、森田・依子(深緋・d02777)は説明する。
    「一度戦ったことがあるよ。生まれたてを灼滅っていうの、ちょっと心痛むんだけどね……」
     しかし放っておけば、強力なダークネスになりかねない存在だ。だからこそ、発生次第、すぐに倒さねばならないと、雀谷・京音(長夜月の夢見草・d02347)も後輩たちに告げた。
    「しかも、最初は勝手に霊玉からスキュラダークネスが発生する感じだったのが、最近のにはアンデッドが絡んでる。わざわざ大きな戦いがあったとこに霊玉運んでるらしいんだよなー」
     戦場で灼滅されたダークネスの残骸を吸収させ、ダークネスを誕生させようと動いているのだと冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)が告げると、やはり皆が考えるのはアンデッドが誰に使役されているのかだ。
     アンデッドは、本来ノーライフキングの眷属。となれば、ノーライフキングでもあるカンナビスとの関連が気になる。
     京音はスキュラの死後、残されたこの霊玉を悪用するダークネスが出ないかを危惧していたのだが……最近のカンナビスとハルファスの動向は、そうした意味でも気懸かりだった。

    ●ヴァンパイアのまとめ
    「ラゴウのいる朱雀門高校についても、まとめがいるな。さっきのは爵位級のまとめみたいな感じで、朱雀門の動きにはあまり触れていなかったから」
     レティシア・ホワイトローズ(白薔薇の君・d29874)は空いたボードを綺麗にしながら、とりあえずざっくり「あちこちの勢力を取り込んでいる組織だ」と説明する。
    「まずそもそもダークネスに学校という概念があること自体衝撃だが……。色々な意味で一筋縄ではいかない連中のようだな」
     氷雅・麗(次代翔翼・d23545)が言うように、武蔵坂学園が知っているダークネス組織の中でも、あまり他に無いタイプの組織かもしれない。雨月・ケイ(雨と月の記憶・d01149)も様々なダークネス種族に加えて、灼滅者まで仲間にしていた事を挙げる。
    「ただ、前回のまとめの後、紫堂・恭也と侍従長デボネア、2人もの有力な指揮官を失っていますね」
    「で、増えたのがロード・クロムやな」
     月見里・和(朧月・d09905)が2人の名前を挙げ、花衆・七音(デモンズソード・d23621)が1人の名前を挙げる。足し引き1人減ってはいるが、様々な種族を引き込む手腕を持つ組織だから、いずれはそれも補ってくるかもしれない。

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    【マスターからの解説】
     朱雀門高校の主要な指揮官については、次のページにリストがまとめられています。
     http://tw4.jp/html/world/story/st_suzakumon2.html
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    「このメンバーはサイキックアブソーバー強奪作戦には来ていなかった。それどころか表立って何の動きも確認されていない指揮官もいるね。たとえば、美醜のベレーザとか」
     アシュ・ウィズダムボール(ディープダイバー・d01681)が挙げたソロモンの悪魔が最後に目撃されたのは、前回のまとめの直後に起きたラグナロク救出作戦の時だ。
     あれから一体、こちらに見えないところで何をしているのか……。
    「私は華山院・茉莉花というヴァンパイアの足取りが知りたいのだが、誰か、何か知っているだろうか」
     とあるヴァンパイアの名を挙げたのは天堂・櫻子(桜大刀自・d20094)。一般人を攫い、ベレーザの元でデモノイド化させようと動く茉莉花と戦ってから半年近くが経っている。それ以後の情報が無いかを聞いて回る櫻子だったが皆、首を振るばかり。こちらも目立った動きは見せていないようだ。
    「そもそもヴァンパイア絡みの目立っていた動きというと、サイキックアブソーバー強奪作戦や、絞首卿ボスコウの支配下にあった奴隷級ヴァンパイア達が起こしていた事件とかになるからね」
     爵位級に比べれば、朱雀門高校の動きは大人しいと犬塚・小町(壊レタ玩具ノ守護者・d25296)は告げる。
    「ボスコウは首輪を嵌めた相手を、強制的に奴隷化する力を持つヴァンパイアだったんだ。無理やり奴隷にされていたヴァンパイア達が、ボスコウの命令で各地の町に放たれたんだけど……」
     かりそめの自由を得た奴隷級ヴァンパイアが欲望のままに動いた結果、多くの一般人が危険に晒され、事件を察知した灼滅者達が駆けつけていったのだと小町は皆に話す。
    「あの首輪が嵌められることによって奴隷となる。ならばボスコウが灼滅された今、もう奴隷級のヴァンパイアは存在しない――野に解き放たれた、という認識で宜しいでしょうか」
     昇・冷都(主を探す放浪者・d26481)の疑問に頷き返したのは主に、サイキックアブソーバー強奪作戦に勝利した直後、学園内に残る敵の掃討を行った灼滅者達だ。学園内に残った敵には奴隷級ヴァンパイアが多数含まれていたが、彼らの言動から、ボスコウの灼滅によって奴隷級ヴァンパイアは解放されたと思われる(もっとも、その多くが学園外に出ることなく灼滅されたのだが)。
    「先輩方、詳しく教えてくださってありがとうございました」
     皆の話を聞き終え、水無月・カティア(仮初のハーフムーン・d30825)は丁寧に頭を下げる。話を聞いた中にはカティアよりも年下の者もいたが、「年上でなくとも灼滅者としては先輩でしょう?」と微かに小首を傾げながら微笑んだ。
    「よし」
     リュネット・エトワール(針ナシ銀時計・d28269)はここまでに聞いた内容をしっかりメモし、書き漏らしが無いかを確認する。その内容は魔人編纂室用のまとめにも反映されることになり、アノ・シュヴァル(若きヴァンパイアハンター・d24825)達が棚に納めていく。
    「ひゃー、分厚い! それに今回がこれだろ?」
     これまでにまとめられた資料の背表紙の幅を見て、目を丸くした大社・珠希(血に魅入られた木春菊・d29372)は運んできた続きを棚に収めて苦笑する。
    「……! し、しまったわ。ああ、アワレボスコウ、せっかくの顔写真がよだれでべたべたに……」
     うっかりうたたねしてしまった桐生・冬華(天に舞う比翼の春花想尊・d25882)によって、ボスコウの写真に哀れな悲劇が発生してしまう一幕もあったが、まあ、ボスコウの写真なのでよしとしよう。

    ●デモノイドのまとめ
     朱雀門高校との関わりが深いダークネス種族といえば、ヴァンパイアの次にまず挙がるのがデモノイドだろう。
    「あそこはデモノイドを集めて兵力にしていると聞きました……」
     悲しげな顔で、フローラ・シェフィールド(哀愁ユーロのフローラ・d30942)は瞳を伏せる。対照的に口を尖らせて、ぷんすか喋りだすのはオイフェ・アンヘルツ(中学生魔法使い・d14652)。
    「デモノイドを作ったの、ソロモンの悪魔だって聞いてるデスヨ。でも今その技術を使ってデモノイドを生み出しているのは朱雀門高校です。ソロモンの悪魔も嫌いデスけど、朱雀門もあんまり好きじゃナイのデス」
     そう、デモノイドはこれまでにまとめたダークネス種族とは明白に違う点のあるダークネス。彼らが現れるようになったのは、ほんの2年ほど前のことだ。

    ====================
    【マスターからの解説】
     デモノイドがいかにして作られたか等は、前回の『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』で詳しくまとめられています。
     簡単に説明すると、デモノイドを生み出したのは『ソロモンの悪魔』であり、その技術は『美醜のベレーザ』によって、朱雀門高校へ持ち込まれました。そしてベレーザは、朱雀門高校でデモノイドに関する実験を続けているようです。
    ====================

    「一番新しい、生まれたばかりとも言えるダークネス種族です。力をつけていく過程を目にするのは、苦々しくも興味深いですね」
     淡々と語る行野・セイ(オブスキュラント・d02746)。一方、デモノイドヒューマンであるアデーレ・クライバー(地下の住人・d16871)としては、朱雀門高校が持っているであろうデモノイド生産工場に興味がある。
    「機会があれば少しでも早くその工場を叩きたい、というのが本音ですね」
     それは悪辣な計画を叩き潰したいからこそであった。
    「今もデモノイドが増えているのは、朱雀門が原因でいいんでしょうか」
     首をかしげた東・啓太郎(明日には笑えるように・d25104)には、必ずしもそうとは限らないと先輩たちが解説する。たとえば一般人が闇堕ちしてダークネスになる際にデモノイドとなる事もあるが、その全部に朱雀門が関与している訳ではないだろう。
     もっとも、一般人を元にデモノイドを量産化しようとする計画など、明らかに朱雀門が原因の闇堕ちもある。
    「オレもそれに巻き込まれたんだよな。幸いにもその時デモノイドヒューマンに覚醒したわけなんだけど」
     自分が灼滅者となった日を斥谷・巧太(マリモのあんちゃん・d25390)は思い返していた。
    「デモノイド関連で厄介な存在は『デモノイドロード』よね」
    「それそれ! ロードの詳しい生態? とか知りたいな!」
     二重・牡丹(セーブルサイズ・d25269)の言葉を聞き、すかさず尋ねたのは蔵寺・巳子(戦渦繚乱恋心の亡者・d27319)だ。
     デモノイドロード。デモノイドヒューマンが『人間の善の心でデモノイド寄生体の制御に成功した』場合に灼滅者として覚醒する存在ならば、『人間の悪の心でデモノイド寄生体の制御に成功した』場合に変化するのがデモノイドロードであり、人間としての知性を保ちながらもデモノイドの力を操るダークネスだ。
    「デモノイドの中には、レアメタルナンバーというのがいるんですよね。どういう人達なんですか……?」
     花遊・泉歌(花歌・d29449)が更に疑問を口にすると、赤いアンダーリムの眼鏡を掛けながら1人の女性が立ち上がった。
    「レアメタルナンバーについてなら、私の出番だな!」
     フィナレ・ナインライヴス(九生公主・d18889)である。ちなみに眼鏡は伊達だ。
    「レアメタルナンバーとは、大地に由来する力を使うデモノイドロードの事だ。具体的には、次のようなレアメタルの名を冠したロード達が確認されている」
     フィナレが説明した内容を、まとめるとこんな感じだ。

    ====================
    ●ロード・パラジウム(女)
     朱雀門高校に所属。
     昨年、7人の灼滅者が闇堕ちさせられてデモノイドロードになった際、既に朱雀門高校の一員だった為、デモノイドロードの出現直後から朱雀門高校にいると思われる。デモノイドロードの女王を目指しているらしい。

    ●ロード・ジルコニア(男)
     朱雀門高校に所属。
     殲術道具『クルセイドソード』を探して那須殲術病院に乗り込んだが、ブレイズゲート『那須殲術病院』の虜囚となってしまい、出られなくなってしまっている。
     なお、朱雀門高校の学生がクルセイドソードを装備している所が目撃されているため、クルセイドソードの確保という任務自体は達成しているようだ。

    ●ロード・クロム(男)
     朱雀門高校に所属。
     以前はロード・ゲシュペンストと名乗っていたが、最近レアメタルナンバーの力に目覚めたらしく、ロード・クロムと名乗るようになった。
     配下のデモノイドを『武装化』する特殊能力を持っている。

    ●ロード・テルル(女)
     無所属。
     強烈な異臭を持つ『テルルガス』を無尽蔵に放出する特殊能力を持っている。このガスを浴びた者は洗脳され、彼女の配下となってしまう。
     が、放浪中のロード・ビスマスと出会い、テルルを危険視したビスマスによって、ブレイズゲート『温泉ホテルわかうら』に閉じ込められてしまった。

    ●ロード・ビスマス(男)
     無所属。
     かつて刺青羅刹『外道丸』に保護されていたが、外道丸の灼滅後は各地を放浪している。偶然出会ったご当地怪人『なめろう怪人』に共感し、なめろう怪人っぽく振舞おうとする。
     朱雀門高校やラブリンスター陣営から勧誘されたが、いずれも拒否している。

    ====================

    「ま、ざっとこんなもんかな!」
     フィナレが話した内容を、サティエナ・バーンシュタイン(凍てついた紅蓮の炎に裁きを・d21809)が綺麗にわかりやすい相関図に仕上げる。アズマ・フィアシス(悔恨の銃士・d31040)やリゼ・ヴァルケン(緋色の瞳・d29664)など、多くの新入生達が、それを感心しながら見つめた。
    「ロード・テルルは、本当に、戦うのに鼻が曲がりそうな相手だったわね……」
     改めてまとめられた内容を見て、そんな風に思い返しているのは冷泉・深優(オキザリス・d18587)。
     今のところ確認されているのは、この5体になるのだが、
    「ただ新宿防衛戦の時、ロード・ナインライヴスが灼滅される前に『これからどんどんレアメタルナンバーは目覚めていく』とか抜かしてたので、今後もっと増えていくかもしれないっていうか増えそうですね」
     あるいは武蔵坂の知らないレアメタルナンバーが、もう既にどこかに存在しているのかもしれない。猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)は、フィナレの方をじーっと見ながら言う。
    「う、うん。そうらしいな」
     視線をそらすフィナレ。ちなみにロード・ナインライヴスとは、フィナレが朱雀門高校に闇堕ちさせられていた際の呼び名、ダークネスとしての名前である。闇堕ちしていた最中の出来事なので、フィナレ自身にその記憶は残っていないのだが。
    「そういや、那須殲術病院でロード・ジルコニアが気になる事を言ってやがったな。ジルコニア、プラス、イリジウム……ロード・イリジウムって奴が、もう既にいんのかも」
     彼女達の発言を聞きながら、ふとサイラス・バートレット(ブルータル・d22214)が口にした内容も、もしかしたらそれを裏付ける情報なのかもしれない。
    「一体どれだけの数がいるのやら」
     レアメタルの名を冠するという事は、レアメタルの種類だけレアメタルナンバーがいてもおかしくないのかもしれない。盾乃宮・不破(この身は生きた盾と知るがいい・d26425)は小さく溜息をつく。レアメタルナンバーをはじめ、デモノイドロードの活動が活発になってきている気がすると、彼らの動きは諫原・楓(誰そ彼と君に問う・d17134)も気にしていた。
    「それで、このレアメタルナンバー達は最近、どんな事をしてるんですか?」
     名前がレアメタルなので響きが似ていて、いろいろこんがらがりそうだと難しい顔をしつつ、サイ・プラチェット(氷煙・d30480)は先輩達に尋ねる。
    「最近だとロード・クロムかな。ロード・ゲシュペンストがロード・クロムと名乗るようになったのは、2ヶ月くらい前だね」
     実際にクロム達と戦った戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)がその時の事を語る。
    「ジルコニアによって発現するクリスタライズ……配下の武装化は、率直に脅威を感じたよ。正直、倒せなかったからな」
     あの技術でデモノイドの軍勢を強化してきたら厄介だろうと蔵乃祐は話す。
    「ロード・ビスマスっていうデモノイドは、何でそんなになめろうが好きなの、かねぇ……」
    「まあ、ロードの中でも異色の存在よね……」
     ビスマスの部分を眺めながら呟く六條・仁眞(轟轟台風バーサス畳・d27991)に、ディアナ・ロードライト(暁に輝く紅玉・d05023)が頷く。
     そもそもデモノイドロードは悪の心でデモノイド寄生体を制御した存在のはずなのだが、ビスマスには悪の心どころか、これっぽっちも自己主張が感じられないようにディアナは思う。
    「自分を救ってくれたご当地怪人に感化されてたり、ブレイズゲートでは危険な場所だから気を付けてって灼滅者にそれを教えるメッセージを残したり……」
    「そもそも、レアメタルナンバーの事自体も、よく解っていないみたいだったからな……」
     つい先日ビスマスと会う機会のあった蔵乃祐も、ビスマスの反応を思い返しながら言う。その点も含めて、レアメタルナンバーの今後に、注視していく必要があるのかもしれない。

    ●ソロモンの悪魔のまとめ
    「大きい勢力というと、気になるのはソロモンさんなのよね。こっそり動いてたりするから、同行がよくわかんなくて。誰か詳しい人いるぅ?」
     デモノイドロードについての話がひと段落したところで、そう切り出したのは朝山・千巻(スイソウ・d00396)。宿敵ソロモンの名前が挙がったのを聞き、朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)も聞きたいと頷く。
    「カンナビスと手を組むなどの動きもみられますし、しっかり把握しておきたいですわね」
     マーガレット・リバー(氷弾の狂姫・d21079)もそれに同意する。
    「そうですね。やはり、まずは『ハルファス』でしょう。ハルファスの大きな特徴は、ダークネスなのに灼滅者を警戒していることよ。実際に『病院』は彼の軍によって滅ぼされたわ」
     それに頷き、ソロモンの悪魔の軍勢を率いるハルファスについて語り出したのは百枝・菊里(アーケインワーズ・d04586)だ。

    ====================
    【マスターからの解説】
     
     『病院』に関しては、前回の『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』の中にある『スサノオ』の項目で一緒にまとめられています。
    ====================

    「ウァプラも厄介だよね~」
     シェイア・キャンベル(魔道闘姫・d20944)の言葉に、同意したのはジークリンデ・ベルネ(革命デュアリズム・d22127)だ。
    「百識のウァプラ はハルファス軍に属するソロモンの悪魔で、『灼滅者を強制的に闇堕ちさせる技術』を研究しておる。あれが実用化され、配下達が次々と使うようになれば、厄介どころの話では済まぬ。……デモノイドのように、それが他のダークネス陣営に拡散される事すら、有り得るからの」

    ====================
    【マスターからの解説】
     ジークリンデさんが懸念しているのは、かつて人狼『叢雲・ねね子』が闇堕ちさせられかけた時にウァプラが用いた技術のことです。
     当時の様子は、以下のページで見れます。
     http://tw4.jp/html/world/story/ex/140501main_ex01.html
    ====================

    「獄魔大将カンナビスの件もあるしね」
     先程判明した情報からすると、獄魔覇獄にも関わっているようだ。最近は表立った接触の無いハルファス軍だが、直接対決する日も遠くないのかもしれないと、アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)が告げれば、
    「ウァプラの技術が使われる前に、なんとかしたいよなあ……」
     氷月・燎(高校生デモノイドヒューマン・d20233)は、いっそこちらからハルファス軍の拠点に攻め込めないだろうかと思案する。
    「どうにかして潰してーよな」
     それには佐見島・允(フライター・d22179)も同意なのだが、獄魔覇獄には他にも多数のダークネス陣営が関わっている事から、全面対決に持ち込むべきかどうか、あるいは持ち込むとしてもタイミングをいつにすべきか、しっかり考えなければならないだろう。
    「ソロモンの悪魔っていろんな見た目の悪魔がいるよねー。ブエルもソロモンの悪魔みたいだけど、ブエル兵とおんなじ感じなのかなー」
     ハルファスと違い、あまり詳しい情報の無いブエルが気になっているのは饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)だ。ブエルの兵だからブエル兵なのだろうが、果たして外見は似ているのだろうか。
    「ソロモンの悪魔だと、他に『アモン』の勢力がいましたが、こちらは、ほぼ壊滅してるね」
     識守・理央(メイガスブラッド・d04029)が触れたのは、かつて武蔵坂学園が倒したアモンの軍勢と、その残党についてだ。先日『ザ・ワンド』が灼滅され、あと残っているのは朱雀門高校にいるベレーザと、単独行動を続けている『白百合』くらいだろうか。
     ザ・ワンドの起こしていた事件や、灼滅までの経緯などについては、雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)達が情報をまとめていく。また、同じように灼滅された『ハセベミユキ』についての情報を、黒揚羽・柘榴(魔導の蝶は闇を滅する・d25134)は書き出し、資料化する。
    「私は白百合をずっと追っているのだけれど、彼女は今、どこで何をしているのかしら、ね」
     漣・静佳(黒水晶・d10904)は、最近あまり動向が掴めていない白百合のことを気に掛ける。周囲の灼滅者達も、やはり白百合の情報には心当たりがないようだ。
    「独自の行動をしているソロモンの悪魔というと『アイン・ベート』がいるな」
     小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)が口にしたのは、新興宗教の教祖のように信者を集め、戦力としているソロモンの悪魔についてだ。一般人からは『天使様』などと呼ばれてはいるが、人々を強化一般人化したり闇堕ちさせたりと、放置できる相手では無い。
     行方の手がかりは無いが、いずれかならず灼滅してみせると、里桜は拳を握る。
    「あとは、レヒトさんは灼滅されちゃったし……あっ、猫っぽいひとがいたね!」
    「『クォンタム・キッテン』だな」
     記憶をたどる山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)の発言に、東谷・円(ミスティルプリズナー・d02468)が補足する。こちらも、単独で行動しているようだ。
    「サイキック量子論とか言ってるソロモンの悪魔ッスね。学問とか新理論とか言葉遊びをしつつ一般人の闇堕ちを誘ってるス」
     クォンタム・キッテンは学生や研究者など、学問や知識に魅力を感じる類の人間に絞って人材やサイキックエナジー集めをしているらしいと三条・美潮(大学生サウンドソルジャー・d03943)は語る。ハマる人間はハマる分野だ、一定のジャンルに特化した活動というのも厄介だと美潮は感じていた。
    「あとはウィッシング・グレインもソロモンの悪魔ね」
     以前接触した時の事を思い返しているのは駿河・香(ルバート・d00237)だ。ウィッシング・グレインは、強化一般人を生み出す『願い事の穀粒』を人間にばらまき、その顛末を眺めて楽しむ愉快犯のようなソロモンの悪魔だ。
    「どいつもこいつも、人間の心理をうまいこと利用して、勢力拡大を図ろうとしてやがる」
     活動の規模も内容も様々なソロモンの悪魔達だが、共通している点があれば、そこだろうと苦い顔をするのは玄獅子・スバル(高校生魔法使い・d22932)。
    「ソロモンの悪魔って、こんなに大勢いるんだね」
     そんな先輩達の情報を聞きながら、感心しているのは弛牧・星亜(デンジャラスウォーロック・d29867)。ソロモンの悪魔といえば、ハルファスくらいしか知らなかった星亜にとって、初耳のソロモンの悪魔がこんなに大勢いることは驚きだった。
     ここまでに発言されたソロモンの悪魔の名前と、起こしている事件の概要は左藤・大郎(撫子咲き誇る豊穣の地・d25302)などが黙々と書類化し、久次来・奏(凰焔の光・d15485)達が出来上がった先から所定の場所に収納していく。その作業に一区切りついたところで、おもむろに桃野・実(水蓮鬼・d03786)が口を開いた。

    ●ご当地怪人のまとめ
    「……怪人達にとって今年は厄年、いい事ない年だったと思う」
     確かに。
     多くの先輩達が思わず頷いてしまったように、有力なダークネスが次々と灼滅されていったのが、ご当地怪人だろう。
    「……そんなになんですか?」
     確かに、ご当地幹部が灼滅されたとは聞きましたけど……と逆に驚いているエリザベート・ベルンシュタイン(勇気の魔女ヘクセヘルド・d30945)は、最近武蔵坂学園に来たご当地ヒーローだ。
    「まず『ゴッドモンスター』で、ご当地幹部の1人、ゲルマンシャークが灼滅されたんです」
     そう説明しながら鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)達が作成したまとめのコピーを新入生達へ配る。

    ====================
    【マスターからの解説】
     詳細は『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』にまとめられています。
     ちなみにゲルマンシャークが灼滅されたリアルタイムイベント『ゴッドモンスター』は、今年の3月末の出来事でした。
    ====================

    「ああ、やはりアベルさんのこの姿は素晴らしい。特に木の部分。木の部分が素晴らしい……!」
     あわせて小此木・情(満月の微笑み・d20604)が取り出した写真の中から、ゴッドモンスターの全身を撮影した物を見つけると、樹・由乃(温故知森・d12219)はそれを拝みだす。
    「あの、これ1枚頂いてもいいですか?」
     どうやら毎日草神様と呼び奉って祈りを捧げたいらしい。
    「さて、ご当地怪人となったら私の出番ね!」
     立ち上がった風花・クラレット(葡萄シューター・d01548)は、ホワイトボードにご当地幹部の名前を書き出す。そして、さくっとゲルマンシャークに×印をつけた。ここまで、実に手慣れた動きである。
    「残りの幹部の内、
     アフリカンパンサーは依然行方不明!」
     アメリカンコンドルはアメリカに撤退!
     そして……ロシアンタイガーを撃破!」
     3体のご当地幹部の名前を指しながら、今回もビシバシ現在の状況をまとめるクラレット。そう、ゲルマンシャークに続いて、ロシアンタイガーまでもが退場していったのだ!
    「ロシアンタイガー撃破の影響は大きかったと思いますの!」
     2つ目の×印が書き込まれていくのを見ながら、黒嬢・白雛(白閃鳳凰ハクオウ・d26809)がうんうんと頷く。残る2体のご当地幹部の状況も決して良いとは言えない。
    「私達が横浜でアメリカンコンドルの基地を発見したのよ。ほめてほめて!」
     得意げに胸を張るのは小野塚・舞子(おこめっこ・d10574)。彼女とは別のチームで調査に関わった御盾崎・力生(ホワイトイージス・d04166)が、当時の事を語る。
    「横浜で、ご当地怪人配下の強化一般人である『ヤンキー戦闘員』が、何者かに襲撃される事件が発生したのが発端だった。これは、ご当地怪人の1人『アメリカンコンドル』と、朱雀門高校の抗争が真相だったんだ」
     力生はこの時、朱雀門高校の一員である『鞍馬天狗』に会っているし、舞子や忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)達は、『侍従長デボネア』と遭遇し、一時的に共闘している。
    「この時の戦いをきっかけに、アメリカンコンドルはアメリカに撤退していったの。……私達の力だけで成し遂げた訳じゃないのは悔しいけれど」
     デボネアの協力が無ければ、そこまでアメリカンコンドルを追いこむ事は出来なかっただろう。そう玉緒は語ると、
    「……借りを返し損ねてしまったわね」
     と、小さく呟いた。
    「この、アメリカンコンドルの基地に残された手掛かりから、全国各地の日露姉妹都市を転々としていた『ロシアンタイガー』の行方を掴む事ができたんだ」
     ゴッドモンスター戦の後、各地を転々としながら函館に行き着いたロシアンタイガーは、五稜郭タワーの拠点化を進めていた。ここに潜伏するロシアンタイガーを灼滅し、ロシアンタイガーが持つ『弱体化装置』を奪うべく、五稜郭タワーに攻め込んだのだと月雲・悠一(紅焔・d02499)は一連の事件の流れを説明していく。

    ====================
    【マスターからの解説】
     弱体化装置については、『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』のヴァンパイアの項目でまとめられています。

     弱体化装置は、強大なダークネスが『あえて自分を弱体化させる』ことによって、サイキックアブソーバーの影響下でも活動を可能とする装置です。
     武蔵坂学園の灼滅者には、特に使い道の無い物ですが、弱体化装置には『サイキックアブソーバーの影響を限定的にでも解除する能力がある』ので、ロシアンタイガーを追っている他のダークネス達に渡す訳にはいきません。なので、ロシアンタイガーの灼滅と同時に、弱体化装置の確保も目指すことになったのです。
    ====================

    「五稜郭タワーには、弱体化装置を狙う朱雀門高校の『侍従長デボネア』と『鞍馬天狗』、それからアンブレイカブルのシン・ライリーも攻め込んできました。ダークネスと灼滅者が入り乱れて激しい戦いが繰り広げられ……」
     あの場での出来事を、どう伝えたらいいのだろう。目まぐるしく変化した戦況、起こった出来事、わからない事だらけの光景を思い返し、儀冶府・蘭(ラディカルガーリーマジシャン・d25120)は結局、起こった事実を端的に述べた。
    「弱体化装置を解除したロシアンタイガーは『白き光』と『黒き光』になって場を圧倒した後、死にました」
     そして、弱体化装置に封じられていた膨大な力は、ロシアンタイガーの死後、弱体化装置を体に埋め込んだデボネアに吸収された。
    「弱体化装置によって弱体化したデボネアは、この時に灼滅されたんだけど、彼女が吸収した力自体はヴァンパイアの元に渡ったんだ」
    「この膨大な力によって、爵位級ヴァンパイア達が一時的に動けるようになって……サイキックアブソーバー強奪作戦に続いていくんだよね」
    「なるほど、そんな経緯だったのか」
     琶咲・輝乃(過去と現在を探して彷徨う者・d24803)と廻谷・遠野(架空英雄・d18700)が説明すると、黒宮・千樹(センジュクロミヤ・d30951)など多くの新入生達が頷く。また、御影・ユキト(幻想語り・d15528)や十皇・紅子(永焔の翼・d19798)、寺本・貴幸(浄慧・d27888)などは先程メモしたサイキックアブソーバー強奪作戦のページに戻り、関連情報として、今の話を書き加えた。
    「その弱体化装置自体は、一体どういった経緯で産まれた物なのですかねぇ?」
    「神様は言いました。嘆く神々の願いを叶えしものこそ弱体化装置であると」
     首を傾げる日輪・美薙(汝は人狼なりや・d27485)の言葉に、コッペリア・カムイ(神の居を借る娘・d29647)が祈りを捧げるように両手を握り合わせながら答える。
    「……よちょうで」
     補うように口を開くコッペリア。要約すると、サイキックアブソーバー強奪作戦の折に一部の灼滅者が見た予兆で、そうした情報が得られたのだという。
     いろいろ考えさせられたと語る黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)も、予兆を見たひとりだ。

    ====================
    【マスターからの解説】
     美薙さんの疑問は、この予兆で解決するかもしれません。
     http://tw4.jp/html/world/story/ex/140823main_ex03.html
    ====================

    「ロシアンタイガーとなった善神ベロボーグと悪神チェルノボーグ、そしてラグナロクのゴッドモンスターと神らしいダークネスがいる世界。神とはダークネスなのでしょうか? ダークネスが神に到ったのでしょうか?」
     だとしたら、すれいやーは神に挑まなければいけないのでしょうかと、窓際で空を見上げ始めるコッペリア。
    「すれいやーを見守る神はいるのでしょうか、神様」
     光あれ、と祈る彼女に神様はいつか応えてくれるのだろうか。
    「もし俺達が弱体化装置を手に入れてたら、何か状況は変わったのかね?」
     そんな中、月村・アヅマ(風刃・d13869)が口にした疑問は難しいところだろう。ただ、デボネアが弱体化装置を手に入れていなければ、ヴァンパイア達がロシアンタイガーの力を手に入れられず、結果的にサイキックアブソーバー強奪作戦が発生しなかった可能性があるかもしれない。デボネアの生存が朱雀門高校の今後に影響を与える事もあったかもしれないが……いずれにせよ、もう絶対に起こりえない未来だ。
    「それにしても、ロシアンタイガーやゲルマンシャークといったご当地怪人の幹部クラスはすごいよね。灼滅されちゃったけど他の怪人をゲルマン化したりロシアン化するのは凄かったよ」
     他のご当地怪人の幹部も、同じような能力を持っているのかな? と首を傾げてみせるのは白神・柚理(自由に駆ける金陽・d06661)だ。それについては、佐山・紗綺(高校生デモノイドヒューマン・d16946)が声を上げた。
    「そう、それよ! アフリカンパンサーが日本上陸してから、アフリカンご当地怪人が暴れまくりなのよ!」
     紗綺はどんっ! と机を叩きながら力説する。
    「奴らは今、日本のご当地名物をただただ収奪して食べ尽くしてガイアパワーを簒奪するというひどい手段で、アフリカンパンサーにパワーを送ってるの!」
    「ご当地愛なく、ただ土地のエネルギーだけ根こそぎ奪ってくのがあいつらの手口。そんなの、ご当地ヒーローが絶対許さない!」
     宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)も「こんなのもう、ただの強盗じゃないか」と憤っている。
     こんな振る舞いを続ければ、各地の普通のご当地怪人達と対立でも起こしそうなものだが、今のところそうした情報は耳に入っていない。
    「そういえば、その肝心なアフリカンパンサーってどうなったんだろう?」
     首を傾げる堺・丁(ニサンザイの守護者・d25126)だが、これという返事は戻ってこない。
    (「アフリカンパンサー、かわいすぎるよ……」)
     中にはジャック・レプソディン(コバルトバロン・d18371)のように極めて個人的な理由で行方を気にする者もいたが、消息を知る者は誰もいなかった。配下であるアフリカンご当地怪人の動きは、本人の動向とも何か関係しているのだろうか?
    「アメリカンコンドルさんも、アメリカに帰った後の事は不明ですね」
     そう語る室姫・景(影舞・d21292)は、かつてゴッドモンスター戦の最中に、アメリカンコンドルがゲルマンシャークの死を嘆き、号泣していた事を思い返す。
    (「ダークネスにも人と同じように『情』というものがあるんですね」)
     そのアメリカンコンドルだから、いずれまた、自分達の前に姿を現す事もあるだろう。そう景は思いながら、ふと傍らの兄の方を見る。

    「幹部以外だと、うちは京茄子のご当地怪人『京ナースちゃん』と遭遇したよ」
     灼滅の瞬間にこそ立ち会っていないが、何度も京ナースちゃんと言葉を交わしたのだと崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)は話す。それはまるで、種族を超えて友情が結ばれたかのようで……少しでも彼女のことを、誰かに覚えていて欲しいと、悠里は京ナースちゃんのことを書き記す。
    「俺がよく遭遇するのは、かき氷怪人だな。これまでに3回灼滅している」
     雲珠・大龍(ショートストップ・d26493)のように、全国各地で似た怪人と戦いを繰り広げている者もいる。場所も違う、生まれた原因も違う。でも、全部同じかき氷怪人だ。
    「かき氷怪人が生まれる要素は、何処にでもあるんだろうな!」
     何度倒されても、いずれ第2第3のかき氷怪人が現れる……ご当地怪人とは、そういうものなのかもしれない。
    「もっちあ、と呼ばれてるご当地怪人の種類? が、たびたび発見されているのだけど。あれはなんなのかしら」
     首を傾げる真嶋・六花(マシュマロジャスティス・d26201)が尋ねたのは、おそらく、ときどき見かけられる餅っぽいご当地怪人とか、餅っぽく闇堕ちしちゃった一般人の救出に向かったりしてる事件のことだろう。何と聞かれても「モッチアだ」としか答えようが無い気もするが。
    「目撃されているといえば、最近は定礎怪人だね!」
     新舞子・海漣(じゃーにーするー・d21141)はおもむろに「てーそ! てーそ! てーそ!」と声を上げ始める。
    「……ってやると定礎怪人になるじゃん? でも定礎ってそもそもなぁに?」
    「定礎はなんて説明するといいかな……ビルの前とかに、竣工年月日とか掘って置いてある石」
     入間・眞一(平凡たる逸般人・d07772)が説明する間に、先輩達がスマホで『定礎』と検索して出てきた画像を、わからない生徒達へ見せていく。
    「……突っ込んだら負けだとは思うが敢えて、敢えて突っ込むぞ。何だよ定礎怪人って! 本当何でもアリすぎだろご当地怪人共はよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
     眞一もスマホに定礎の画像を表示させたのだが……それを眺めるうち、とうとう耐えかねて絶叫した。
     日本全国、割とあっちこっちの建物にある定礎だが、それがご当地怪人って! そもそもどこのご当地なんだよ! ……と言いたくなる気持ちは他の灼滅者達もわかる気がした。ペナント怪人だって、地域ごとにそれっぽいデザインをしているというのに。
    「そもそもこの儀式、一般人を定礎怪人にするんですよね。これってつまり、ある種の強制闇堕ちですし、定礎石の前で儀式をして定礎怪人にしてしまうって、闇堕ち後になるダークネスの種族すら操作していることになりますよね」
     落ち着いて冷静に状況を整理すると、とんでもない事じゃないでしょうかと園城寺・琥珀(叢雲掃ふ科戸風・d28835)が儀式の詳細を語ると、多くの灼滅者達が頷く。種族の方は、ご当地怪人になる可能性を持つ一般人だけが儀式に成功している、のかもしれないが……。
    「事件が起こるまであんまり注目してませんでしたが、日本中いたるところの建物にある定礎石、ですから……」
     日本全体に大きな影響を及ぼす可能性も視野に入れ、警戒しなければいけないのかもしれない。琥珀の指摘に、灼滅者達は改めて定礎怪人に注目する。
    「予兆で、アメリカンコンドルが日本のご当地幹部のこととか、言ってるのが見えたよねー」
     その名は『ザ・グレート定礎』であったと海藤・俊輔(べひもす・d07111)は記憶している。
     どっちも定礎だ。どう考えても関係ある気がする。

    ====================
    【マスターからの解説】
     その予兆はこれです。横浜からアメリカンコンドルが撤退していく時のものですね。
     http://tw4.jp/html/world/story/ex/140807main_ex01.html
    ====================

    「ある意味、ご当地怪人が一番怖いかもしれないなぁ……」
     ご当地幹部が2体撃破された一方、まだまだ多くの謎を秘める存在、ご当地怪人。そこに、底知れぬ怖さを感じる栗野・松谷(デモノイド系男子・d18029)だった。
    「あいつら本当良くわからない。でもわからないっていうか、わかりたくない。わかって共感したら負けだと思う」
     しかし相手は結局ご当地怪人なので、雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)など、そうずばっと言い切ってしまう位だ。
    「とにかく、いっぱいいっぱいがんばるのね!」
     まだまだ今後も色々ありそうなご当地怪人だが、未熟なりにみんなと精一杯頑張りたいという靱乃・蜜花(信濃の花・d14129)の言葉に、灼滅者達は頷きあった。

    ●琵琶湖大橋の戦い
    「そういえば『琵琶湖の戦い』が本格化したのは、前回の灼滅者講座の後だね」
     ご当地怪人関連での事件といえば、これも忘れてはいけないだろう。レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)は、ホワイトボードの真ん中に縦線を引いた。
     琵琶湖を挟んで、西側の慈眼城を拠点とする『天海大僧正』と、東側にある安土城を拠点とする『安土城怪人』が、激しい戦いを繰り広げていくのだ。
    「当初、灼滅者が天海大僧正配下の慈眼衆側に協力したことで、多くのペナント怪人を失った安土城怪人。すると安土城怪人は、刀剣怪人軍団を戦場に投入してきた」
    「慈眼衆 VS 刀剣怪人軍団の戦いが始まっていったんだよ」
     レニーの言葉を受け継ぎ、巳越・愛華(ピンクブーケ・d15290)が説明する。それに合わせて、ホワイトボードの右側に安土城怪人とペナント怪人、刀剣怪人。左側に天海大僧正と慈眼衆の名前が書きこまれる。
    「そして10月初めに、両者はいよいよ激突しました」
     琵琶湖を巡る戦いには、他のダークネス勢力も多数加勢したのだと、風花・蓬(上天の花・d04821)が語る。先輩達がそれぞれの名前を挙げるのにあわせて、ホワイトボードには、たくさんのダークネス組織の名前が書き込まれていった。

    ====================
    ●天海大僧正(西側)
     配下:慈眼衆。
     鞍馬天狗、朱雀門高校、うずめ様、HKT六六六。

    ●安土城怪人(東側)
     配下:ペナント怪人、刀剣怪人
     各地のご当地怪人、ケツァールマスク勢力、業大老一門、白の王セイメイ配下のアンデッド。
    ====================

    「深い因縁を持つ、宿敵とも言える関係にある両者の戦いには、これほど多くのダークネスが関わったわけです」
     神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)の言葉に新入生達が、これまで話題になった多くのダークネスが関わっていると知って唸る中、白石・作楽(櫻帰葬・d21566)が首を傾げた。
    「しかし何で琵琶湖なんだろうな?」
     これは互いの拠点が琵琶湖を挟んで存在しているというのが大きいのだろう。
    「慈眼城の主である天海大僧正は、歴史上では明智光秀と呼ばれています」
     実際に天海もとい明智光秀と遭遇した丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)は、本人からも直接そう聞いたと皆に話す。
    「日本史的な観点で考えるなら、安土城怪人は織田信長と考えるのが自然だが……まぁ、歴史上の人物にダークネスが混じってる時点で、俺らの知る歴史ってのは何か根本的に違ってる部分があるのかもしれねぇな」
     あるいは、もっと他にも歴史上の人物がダークネスの中には混ざっているのかもしれないと、冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)などは思う。
    「義の犬士ラゴウは、予兆によると安土城怪人の知古らしい。ラゴウは羅刹だ。織田信長の配下で鬼といえば、柴田勝家が思い浮かぶが……」
     あるいはそんな関係だったりする可能性もあるのかもしれないと、謡は思う。
    「私達が戦った六門・恭二の行方も気になるわ」
     海堂・月子(ディープブラッド・d06929)は、琵琶湖大橋の戦いで加勢に現れたアンブレイカブルの消息を気に掛ける。恭二は、業大老門下のダークネスだ。
    「シン・ライリーの町では、それらしき姿は目撃されていないようですが、あの町にいるのか、それとも、もっと別の場所なのか……」
     恭二の行方には、龍田・薫(風の祝子・d08400)も関心があるようだった。
    「武蔵坂学園が介入したことで本格的な激突は避けられマシタ。琵琶湖周辺が滅びるという危機的状況は防ぐことができましたケド、どちらのボスも健在デスカラ、これからどうなっていくのかは心配なところデス」
     両者は敵対しているので、手を組んでこちらを一緒に襲ってくるようなことは無いだろうが、琵琶湖が荒廃するような事態は今後も避けたいところだ。シャルロッテ・モルゲンシュテルン(夜明けに響く鎮魂歌・d05090)の、用心しておきたいデスネという言葉に、皆頷く。
    「個人的にはどっちも一般人巻き込むから味方したくないんだよなぁ」
     桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)のように、周囲への被害を考えない振る舞いをするダークネス達である事も、要警戒事項だろう。
    「……で、この戦いで戦力が減った安土城怪人サイドのペナント怪人が、例の定礎怪人の儀式をやってるんだ」
     白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)の説明に、なるほどそう繋がるのか、とメモを書き加える新入生達だった。

    ●羅刹のまとめ
    「安土城怪人がスキュラの犬士だったことは、さっき説明したね。で、天海大僧正の方は『刺青羅刹』と呼ばれる羅刹の1体なんだ」
    「あ、これだね」
     雛護・美鶴(風の吹くまま・d20700)の発言に、すかさず因幡・亜理栖(おぼろげな御伽噺・d00497)が以前まとめた資料を取り出す。

    ====================
    【マスターからの解説】
     刺青羅刹については、このページにまとめられています。
     http://tw4.jp/html/world/story/st_irezumi.html
    ====================

    「この中で気になるのは『うずめ様』かな。うずめ様って、今度は何を企んでいるのかなぁ?」
     チュリミー・ポルダニュ(爆砕系巫女・d18582)や蟹山・龍機(シビレ男・d18607)など、多くの灼滅者が気にしているのが『うずめ様』と呼ばれている刺青の羅刹だ。
    「僕達は最近、朱雀門高校の刺青羅刹『鈴山・虎子』と遭遇したよ。どうやら刺青羅刹を勧誘して、配下を増やすような行動を取っているようだけれど……」
     月叢・諒二(月魎・d20397)からもたらされた情報は、朱雀門高校が虎子を通じて、地道に戦力拡大を目指している……ということなのかもしれない。諒二としては、動きが活発化している、うずめ様との関連が無いかも気になるところだ。
    「実は、僕、この間の事件で、うずめ様について話してる六六六人衆や羅刹と出くわしたんですけど、そのうずめ様について、よく知らなくて……」
     詳しく教えてほしい、と率直に申し出る黒鐵・徹(オールライト・d19056)には、前回のまとめの中の、うずめについての部分が渡された。
    「黒鐵さん達の情報を踏まえると、九州で起こっている『嫌な予感』は、うずめ様が理由みたいだよね……」
     月影・葉月(敏感触覚・d18627)が言及したのは、今、多くの灼滅者達が注目している、『HKT六六六』の動向に関するものだった。

    ●六六六人衆のまとめ
    「今、主に九州の都市伝説事件で、なぜか『エクスブレインが嫌な予感を感じる』ことが相次いでるんだよ」
     まず、そもそもの発端について白・理一(空想虚言者・d00213)が説明し始める。
     その予感の正体を突き止めようと、都市伝説の撃破後も現場に残留することを選んだ灼滅者達は、そこで『HKT六六六』というグループに属する六六六人衆と遭遇したのだ。
    「雪ちゃんが出かけた依頼では、全然そんなことは起こらなかったのですぅ。九州の事件じゃなかったからでしょうか?」
     首を傾げる新園・雪(座敷童・d01384)に、おそらくそうだろうと先輩達が頷く。HKT六六六はもともと、九州の博多を拠点とするダークネス組織。だから九州で事件が起きているのだろう。また、九州の都市伝説関連の事件だからといって、必ず現れる訳でも無いらしい。
    「敵方は何らかの方法で、『都市伝説の発生する場所に武蔵坂の灼滅者がいる』という情報を、確実に握っているようだね」
     皆の話を総合すると、まず、これは間違いないと彩瑠・さくらえ(暁闇桜・d02131)。
    「なおかつ、こちらを撃破できるだけの戦力を送り込んできてる。……まるで普段の俺達みたいじゃないっすか」
     黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)は苦い顔だ。
     しかも、相手の戦力を警戒して、28人もの灼滅者で待ち伏せてみれば、今度は相手が相手が現れない。その作戦に加わっていた神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)は、苦笑いをして肩をすくめた。
    「まるで行動を読まれているようで気持ちが悪いわ」
     皆の話に真剣に耳を傾けていた星倉・妃奈子(サンドリヨン偽典・d29128)が顔をしかめる。同じように感じる灼滅者は、他にも多かった。
    「……まさかとは思うんだけど。これ、バベルの鎖以外の方法での予知なのかな……?」
     信じられない気持ちで呟く石見・鈴莉(融翼の炎・d18988)だが、ここまでの情報を総合するとバベルの鎖では無い可能性が高いだろう。エクスブレインの未来予測は、その『バベルの鎖をかいくぐって無効化する未来予測』なのに、彼らにはそれが効いていない。
    「どういう情報の仕入れ方してるのかが最大の謎だ」
     焦点はそこだろうと柏木・イオ(鈴カステラ・d05422)が言えば、
    「あるいは……エクスブレインのような力を持つ人が、向こうにもいるんだろうか……」
    「それはボクも考えた。向こうも予知と同じことができているのかな?」
     同じ未来予測という点で、照神・侑希(衝撃の炎弾・d02687)やミラ・ベラトリックス(ステラノヴァ・d18332)などは、そうした可能性も考えていた。
    「それが『うずめ様』の力ってことなんやろか」
    「確かに予兆では、なんでもかんでもお見通しって感じだったけど……」
     千布里・采(夜藍空・d00110)や吹雪・月夜(花天月地の歌詠み鳥・d06758)など、多くの灼滅者が唸る。

    ====================
    【マスターからの解説】
     うずめ様の予兆は、8月23日に一部の灼滅者が見たもので、次のような内容になっています。
    http://tw4.jp/html/world/story/ex/140823main_ex01.html
    ====================

     もともと、うずめ様とHKT六六六は協力関係にあるので、うずめ様が彼らに情報を渡している可能性はあるかもしれない。
    「それにしても、ウズメ様って子は、なんで『うずめさまは言ってます』なんて他人事みたいに喋るんだろうねえ」
     それとも彼女は、本当にうずめ様から聞いた言葉を喋っているだけだとでも言うのだろうかと水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)は首をひねる。
    「ボクは向こうにエクスブレインがいるんじゃないかって気になってるんだけど」
     武蔵坂学園以外にもエクスブレインがいてもおかしくないのではないか。敵にもエクスブレインがいるのではないか……と疑うロバート・ケイ(深い霧の渇望者・d22634)だが、
    「あ、いえ、その可能性は無いと思いますよ」
     それを真っ向から否定したのは、自らもエクスブレインである姫子だ。
    「正確には、エクスブレインがいたとしても意味が無い、ですね。エクスブレインだけじゃ未来予測できませんから」
     サイキックアブソーバーあってのエクスブレイン。武蔵坂学園にいなければ、未来予測はできないから、相手側にエクスブレインがいても意味が無いというのが姫子の説明だ。
     エクスブレインの未来予測は凄まじいが、だからといって他の組織やダークネス達がエクスブレインを攫っても意味は無い。それはまさに、これが理由だ。
    「……もしかして、サイキックアブソーバー……持ってる?」
    「うーん……あれを作れるのは、校長先生達だけだと思いますし……ダークネスが自分から作るのって、自分の首を絞めるような行為ですから……」
     じゃあ、と疑うアイ・ヒドゥン(小学生サウンドソルジャー・d27001)の発言だったが、可能性はあまり高くないのではないか、というのが姫子の見解のようだ。
     もっとも、可能性がゼロとまでは言い切れない。彼らがサイキックアブソーバーの作り方を知っていて、なおかつ万難を排し、そのような手段を取った可能性は捨てきれない。
    「サイキックアブソーバーの老朽化による不具合とか……あとはハッキングのような事をされている可能性もあるのかしら?」
     アルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(ガブがぶ・d08003)は学園にあるサイキックアブソーバーに原因があるのではと疑うが、今のところ、そうした異変は確認できていない……くらいの情報しか無かった。
    「エクスブレインの予知とは、ちょっと違うような気もするんだよな。オレ達の動向が完全に分かっていると考えるには、現れるタイミングがやや遅いようにも思うし」
     制度が少し劣っているような印象を受けるとノエル・エトワブラン(月を求める脆き太陽・d11228)が告げる。同じように、それを根拠に、エクスブレインの予知とは別の能力ではないかと考えている生徒達は何人かいた。
    「詳細については謎ばかりなんだな」
     彼らが情報を得ている仕組みが詳しく判明しているのであれば、教わりたいと考えていた葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)だが、どうやら引き続き皆で情報を集めていくしかないようだなと頷く。
    「ひとまず、エクスブレインが嫌な予感を感じた事件のリストを作っておこうか。これから役に立つかもしれないし」
     そう的宮・汀(風に戦ぐは若葉の瞳・d18710)が呼びかけると、一連の事件に関わった灼滅者達が次々と集まり、情報を寄せた。

    ====================
    【マスターからの解説】
     これまでの『嫌な予感』がしたシナリオは、このページの下の方にリストがあります。
     http://tw4.jp/html/world/story/st_hkt666.html
    ====================

    「ところで、今更なんですけど……『HKT』って何ですか?」
    「六六六って言ってるし、六六六人衆でいいんだよな?」
     神成・恢(輝石にキセキを願う・d28337)の口にした疑問に、巽・真紀(竜巻ダンサー・d15592)も先輩達へ尋ねる。樹雨・幽(守銭奴・d27969)も、資料に軽く目を通してみたが、詳しいことがいまいちよくわからないと率直に告げた。
    「最初の出会いは、去年の臨海学校……もう1年以上前になるのですね」
     梓奥武・風花(雪舞う日の惨劇・d02697)は昨日の事のように思い返しながら、最初に遭遇した時のことを簡潔に説明していく。

    ====================
    【マスターからの解説】
     前回まとめた『新灼滅者講座2:闇に抗う知識と歴史』の他には、さっき紹介した、
     http://tw4.jp/html/world/story/st_hkt666.html
     というページが、これまでの『HKT六六六』について纏められているページなので、こちらも参考にしてみてください。
    ====================

    「HKT六六六は、8月末のサイキックアブソーバー強奪作戦で爵位級吸血鬼達に便乗して、武蔵坂を襲ってきたね」
     前回のまとめ以降に起こった出来事だと、まずはこの件が挙げられるだろうと、四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)が説明する。
    「Tシャツが微妙だということは噂で聞いたことがあるんですけど……」
     まさに紫竹山・仄歌(うっかりさん・d18144)が言ったように、この時のHKT六六六は、何故か全員お揃いの(微妙なデザインの)Tシャツを着て現れたのだ。
    「それから本拠地が博多だから、博多周辺での事件が多いの。……中洲とかもう、すごいことになっとりゃせんか?」
    「……いかがわしいお店で、刺青のある一般人を攫ってる事件ね……」
     エウロペア・プロシヨン(舞踏天球儀・d04163)の発言に、実際中洲で事件を解決した事がある天城・呉羽(蒼き鋼の聖女・d26855)も頷く。そして中州での事件は現在も続いている。
    「あとは『ミスター宍戸』が引っかかる」
     岬・在雛(新撰組の密偵・d16389)が口にしたのは、様々な予兆で目にしたHKT六六六のプロデューサーを名乗る人物についてだ。
    「ミスター宍戸って、いちおう人間……なんだよね?」
    「強化一般人ですら無いんですよね」
     一番大きなポイントは、彼がダークネスでは無く、ただの人間らしいという事だろう。姫柳院・せつな(黎明の陽を喚ぶ瞬の姫・d16520)などにとって、ダークネスでは無く人間がそのような組織を率いているというのは衝撃だったし、阿々・嗚呼(剣鬼・d00521)も珍しい事例だと頷く。
    「人間の身でどうやってるんだろうな……」
     立場などは全く違うが、同じプロデューサーを名乗る身として、そこが非常に気になると十文字・天牙(普通のイケメンプロデューサー・d15383)も視線を注ぐ。六六六人衆の組織ならあっさり殺されちゃいそうなのに、と稗田・瑞穂(仄甘きパラノイア・d31334)も不思議だが、何か殺されない理由があるのだろうか。
    「トップが変わってるせいかもしれないが、HKT六六六は淫魔やシャドウ、羅刹にソロモンの悪魔……複数の勢力に関わってやがるのが厄介だな」
    「ああ、油断できねえな」
     そうした点も警戒する理由の一つになるだろうと狂舞・刑(縁の鎖を手繰る者・d18053)は語る。物部・小袖(嘘つきティラミス・d19366)も頷くと、今後に備えていかなければと思いを新たにするのだった。

    「HKT六六六以外にも、近頃の六六六人衆は動きが多いよね。やっぱり記憶に新しいのは、就職活動によって闇堕ちさせられてる一般人の件じゃないかなぁ?」
    「闇堕ちセミナーだなんて、不穏ですよね」
     エルカ・エーネ(いつかのその日にさよならを・d17366)や碓氷・炯(白羽衣・d11168)が言及したのは、ここ1ヶ月くらいの間に発生するようになった事件についてだ。
    「酷い話だよな。世間の闇っつーの? なんか不景気でぱっとしない世の中、さらに暗くするようなコトしてんじゃねーぞ! って思ったわ」
     桐条・常磐(中学生ダンピール・d30994)がなんとなくこの事件を気にしてしまうのは、自分達にとっても『就職』というフレーズは、そう遠い未来の事では無いからなのかもしれない。
    「私はまさに、その就職セミナーに潜り込んできたのですが……」
     参加者達の闇堕ちは阻止できたものの、黒幕の正体や目的などは掴めなかったと、いささか残念そうに詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)は言う。
    (「……時期としては、ちょうど『獄魔大将』達が動き出した頃に重なるのが気になりますね」)
     元凶になっている企業は『武神大戦天覧儀』の頃に、多くの社員が謎の死を遂げているという情報もある。ますます関連が気掛かりだが――裏付ける証拠や情報は何も無い。
    「なるほどなー。就活六六六人衆って最近よく聞くから、気になってたんだよな」
     改めて詳しく聞けて良かったと、紀藤・狼円(小学生殺人鬼・d28840)が礼を言い、ここまでの内容をまとめていく中、更に様々な六六六人衆についての話が出る。
    「序列三五一位鬼哭・燕斬! あいつ絶対ぶっ倒す!」
     次こそは灼滅してやると燃えているのは葛葉・有栖(紅き焔を秘めし者・d00843)。有栖にとって燕斬は、非常に気に食わない相手らしい。
    「私も一般人をお料理しようとした六六六人衆に会いましたですよ。序列五〇五位のシャロンという、人を『お料理』することにただならぬ矜持を持った殺人鬼でしたですねぇ」
     フェリス・ジンネマン(アウレアミード・d20066)は、調理素材を一般人から灼滅者に切り替えるなどの言動も良く印象に残っていると、以前戦った六六六人衆について語る。
    「色んな六六六人衆がいるんですね」
     HKT六六六に限らず、様々な活動をしている六六六人衆たちの話を聞きながら、紅咲・灯火(血華繚乱・d25092)は感想を漏らした。
    (「……俺達がアイツらの上に立つことでしか、俺達の安息は得られないのだろうか」)
     ふと、夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)は掌を見る。
     人間とダークネス。共に生きられない事は解っている。だが、それでも、この手の中で消えた男の姿を思い返さずにはいられない。
    「六六六人衆界隈だと、前回の灼滅者講座の時に巷を騒がせていたロードローラー事件もあったね。無事に解決してウツロギさんが戻ってきて良かったよー」
     赤名・マコ(ナマコを忘れないで・d24354)などは、一連の事件の解決を、しみじみと振り返っていた。
    「……あれ、六六六人衆ってあんまり組織化されてないイメージだったけど、蓋を開けてみれば実は結構組織めいて活動してんな……」
     久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)はふと呟く。闇堕ちゲームなどでも、他の六六六人衆の呼びかけに応じて六六六人衆達が動くようなところが見られたし、全員が全員、個人行動にこだわっているわけではないのだろうか。
    「とはいえ奴らは『序列』を重視している。上位の順位を目指すなら、上位の六六六人衆だって狙うのが六六六人衆の性質だ。この時点で、他のダークネス達よりも友好的な組織を築きにくい関係なのは間違い無いだろう」
     だが、逆に言えば、そんな彼らを纏め上げる『何者か』が現れたら……どのような組織よりも脅威と化すかもしれない。そのような危惧を江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)は持っていた。

    ●ノーライフキングのまとめ
    「他の種族だと……ノーライフキングの動きは、今の所どんな感じなのでしょうか?」
    「最近は、そこまで大きな動きは無いみたいなのよねぇ。カンナビスの件もノーライフキングというよりは、ソロモンの悪魔の動きだし……」
     竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645)の言葉に、ビスコ・ロッティーナ(カロンの六文銭・d00552)が応じる。
     もともとノーライフキングは自ら表に出るのではなく、配下のアンデッドを増やしたり、そのアンデッドを使役しながら活動していくダークネス種族だ。さして不思議な状況でも無いだろうと化野・十四行(徒人・d21790)も語った。
    「まとめるべき内容というと、前回の灼滅者講座の時に行った、ラグナロク救出に『白の王セイメイ』が関わっていたことでしょうか」
     ベアトリーチェ・アーデルグランツ(華やかな桜色の謡紡ぐ秘戯の蝶・d01453)は皆の前に立つと、「では、ご説明しますね」と語り始めた。

    ====================
    【マスターからの解説】
     灼滅者講座の最中に発生した大事件については、こちらのリプレイに詳細があります。

    ●新灼滅者講座3:コスプレ少女は『ラグナロク』!
     http://tw4.jp/adventure/replay/?scenario_id=10371
    ====================

    「強い者ほど外に追い出される……そんな台風みたいなブレイズゲート化している状態だったから、あの時の新入生が中心となって、ラグナロクの野々宮・迷宵さんの救出に向かったんだよ」
     無事に救出で来てよかった、と語る柿崎・法子(それはよくあること・d17465)。
     また、その時に遭遇した朱雀門高校の灼滅者、紫堂・恭也は、武蔵坂学園との戦いの末に闇堕ちし、灼滅されている。
    「彼からは、一度は信頼を勝ち得、ウロボロスブレイドを託されるまでに至ったわけだが……」
     最終的には決別し、このような結末になったと五十鈴・梓(月花の従僕・d10432)は語る。他にも、所属する組織は違えど、同じ灼滅者である彼の事を気に掛ける者は多く、せめて彼の記録をしっかり残そうと、丁寧に資料をまとめ上げていった。
    「迷宵ちゃんも今じゃすっかり学園に馴染んでくれてよかったねっ」
     腕をぶんぶん振って喜びの舞を踊る常盤木・千夜狐(トランジスタジェイルバイト・d24118)だったが、ふとぴたりと足を止める。
    「ただラグナロクというと、気になるのは殲術再生弾にゃー」
     武蔵坂学園の誰かがラグナロクを救出すると、サイキックアブソーバーに『殲術再生弾(キリングリヴァイヴァー)』と呼ばれるサイキックエナジーの弾丸が、1発装填される。これによって、武蔵坂学園の灼滅者達は様々な恩恵を得られるのだが、
    「現時点での装填数は1発。……それがダークネスにばれて、幾つかの勢力から立て続けに攻撃されたら、まずいってことで合ってる?」
     アリス・ロビンソン(百囀り・d26070)の疑問に、先輩達は静かに頷き返す。殲術再生弾の無い決戦がどうなるか、あまり考えたくはないが……。
    「手当たり次第に攻撃して敵対していたら、あっという間に潰されてしまうでしょう」
     それも考慮した立ち振る舞いが必要でしょうね、と瑠璃花・叶多(硝子の剣・d01775)も様々なダークネス組織の今の状況について、丹念にメモしながら頷いた。
    「そういえば、なんでセイメイは迷宵を狙ったんだロ?」
     サルバドール・アルバ(夜明けの救世主・d25466)が気になっているのは、ラグナロクダークネスについてだ。
     強いダークネスになるから闇堕ちさせる。そこまではいい。だが、何故わざわざ強い同族を増やそうとするのだろう。
    「増やしたところで自分たちの味方に確実になるホショーなんてないのに……」
     サルバドールはそう思うのだが、ダークネス達には何か違う考えがあるのだろうか。
    「セイメイの場合、もっと色々企んでいそうな気もするね」
     聖緑・ヒロキ(右手弟・d18661)が言えば、「あいつの目的は一体何なんだろうな」とリヒト・レイスフェルド(返り咲き・d30079)も頷いた。
     表立った動きは見られないものの、本当に何もしていないとは限らない。それが不穏でもある。
     移月・幽輝(小学生魔法使い・d23941)、ひとまずまとめられる情報を少しでもまとめておこうと、横浜でのラグナロク救出の際に得た情報を、できるだけ詳しく、わかりやすく整理する。
    「白の王セイメイの他には、どんな奴がいるのかな」
     一恋・知恵(命乞いのアッシュ・d25080)の問いには、まず智の犬士カンナビスの名を夕凪・真琴(優しい光風・d11900)が挙げる。スキュラの配下から、ソロモンの悪魔の仲間となり、獄魔大将となったカンナビスとは今後、直接戦う事にもなるかもしれない。
    「俺達が灼滅した『蒼の王コルベイン』は、未だに謎の多いダークネスだね」
     確かに倒したのは武蔵坂学園なのだが、コルベインには何故か頭部が無かった。その頭部については、未だによくわかっていない。神威・天狼(十六夜の道化師・d02510)などにとっては、今も気になる謎である。
    「コルベインの首は、今もどこかで健在なのかしら……」
    「オレはさ、何者かに盗まれたんじゃないかって思ってるんだよな」
     小さく首を傾げるリズロット・フォンティーヌ(黒薔薇の悪鬼・d19313)。対して、持論を述べるのは赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)だ。
     あのコルベインは、頭部を何者かに奪われ、不完全な状態だったのではとは推測を口にする。
     コルベインが『王』なら、同じように王と呼ばれるセイメイやアフリカンパンサーは、あるいはコルベインから力を奪って王になったのではないか……と。
     いつか、なんらかの形で真相を確かめてみたいと布都乃は思う。
    「蒼の王コルベイン、白の王セイメイ、緑の王アフリカンパンサー、ですか」
     武蔵坂学園で把握できている、王と呼ばれる存在について新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)は指折りながら挙げていく。
    「コルベインの元で聞こえてきた『声』のことも、今だからこそ改めて、考えてみるのも良いかもしれませんね」
     どこからともなく聞こえた、静かで力強い声。園観・遥香(蒼き墓守・d14061)はそれを思い返す。
    「何も……何も見えぬ……。
     心あるものよ教えてくれ……。
     世界は悪に満ちているか。
     闇は生命を育んでいるか。
     余の他に誰か『サイキックハーツ』に到達したか。
     簒奪者達は裁かれたのか……」
    「サイキックハーツという何かが、どこかにあるのかな」
     それに含まれた特徴的な単語、サイキックハーツ。だがそれが、そもそも一体何なのか、見当もつかないねと水瀬・裕也(高校生ファイアブラッド・d17184)は呟いた。
    「なるほ、ど……」
     先輩達に見当がつかないのだから、メモを取りながら話を聞いていたナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・d24954)などのような新入生達にも、まったくわからない。
     だが、それでも、何か重要な出来事に繋がる情報かもしれないと、しっかり、そのフレーズをメモしていった。

    ●スサノオとブレイズゲートのまとめ
    「えっとね……ボク、スサノオさんのことがしりたいの」
    「なら、お姉さんが教えてあげる♪」
     草薙・風真(月下紫桜・d13021)の声にすぐさま応じたのは、にこやかに笑った日輪・黒曜(汝は人狼なりや・d27584)だ。なお、こんな事を言っているが、黒曜の性別は男である。
    「スサノオの基本的な情報は、前にまとめてあったよな。取ってきてやるよ!」
     ニッと笑って、朝比奈・一綺(暁の示す方へ・d13219)は前回のまとめから、スサノオ関連だけを取ってくる。
    「インド風の踊り子が、スサノオ達から白き炎を取り出している事件が起こっているけど、これは『ナミダ姫』という人物の仕業なのが判明したね」
     最近のスサノオ関連の事件というと、ナミダ姫の一件になるだろう。だが、その目的は相変わらず謎だと現世・戒那(紅天狼主三峰・d09099)は首を傾げる。
    「手負いのスサノオですら十分に強かった。なのに、それを圧倒するナミダ姫……」
     実際に遭遇した皆から、とんでもない強さだったと聞いて、レイン・ティエラ(氷雪の華・d10887)は納得したくらいだ。
    「ダークネスなのかもハッキリしませんね。これから敵になるのか、それとも……」
     日輪・白銀(汝は人狼なりや・d27689)は、現状友好的とは言えないが、話が通じない相手でも無い点から、それを見極めなければならないのかもしれないと微かに目を細める。
     いったん判明している情報を資料化しようと日輪・ユァトム(汝は人狼なりや・d27498)達は作業にかかる。これまでにまとめたスサノオの情報とあわせて、見直していけば何かヒントにもなるかもしれない。
    「そこの坊ちゃん、資料幾つかあっしが持ちやしょうか?」
     下弦・名雲(狐をかぶった化狼・d27603)なども協力し、手分けをして作業を進める。
    「わーい! 難しい漢字がいっぱいだぁ!」
     見たことも無いような漢字が並ぶ資料を前に、思わず牙狼院・龍雅(小学生人狼・d27693)がはしゃいでいるのは、内容そのものよりも、この人の多さについウキウキしてしまったせいかもしれない。
    「スサノオの白き炎は、ぶれいずげーととの関係も気になりますね」
     北護・瑠乃鴉(黒童狼・d30696)は、どちらもエクスブレインの未来予測を妨げるという点で、両者の関係を気に掛ける。
     エクスブレインが見ると、巨大な白い炎の柱に見えるというブレイズゲート。もしかしたら最近、ブレイズゲート化現象が増えているのは、スサノオが何か関与しているからなのではと瑠乃鴉は思う。
    (「追い詰められたスサノオが、逃げ回ったりしてるのでしょうか?」)
     その結果なのだとしたら、人狼……ニホンオオカミとして、ブレイズゲートにも対処していかなければいけないのかもしれないと、瑠乃鴉は考えていた。
    「ブレイズゲートといえば、なんだか不安定なブレイズゲートが増えた気がするわね」
     ナミダ姫がスサノオから炎を収集しているだけじゃなくて、集めた炎をばらまいたせいでこんな風になってるんじゃないかと疑いたくなってしまうくらいだと、ルーパス・ヒラリエス(狼の口・d02159)はつい、ぼやいてしまう。
    「箱根温泉や軽井沢、あとは福島の古戦場などがブレイズゲート化している事が、最近判明していますね」
     桐屋・綾鷹(紅華月麗・d10144)が気になるのは、むしろノーライフキングのセイメイの方だ。『白の王』という名前もそうだし、なにやら『白炎換界陣』なる紋様も使うらしい。白き炎と、そこはかとなく関連のありそうな響きなのも引っかかる。
    「TCGのキャラクターが現れるブレイズゲートの話も聞くようになりましたし、いろいろ気になりますね」
     各地にあるブレイズゲートの状態が気になるのは、マイケル・カッシーニ(サイケデリック・d29631)なども同じだ。
    「何か共通点とか見つかるといいんだけどね」
     と言いながら、萌墨・亀之丞(ベーゴマのコマ・d23081)は日本全国の温泉に関する情報をまとめていく。ブレイズゲート化した温泉もあれば、それに限らず都市伝説やダークネスなどのいる温泉もある。他の温泉でも何か異変が起きた際に、役立つかもしれないと、そう考えての備えだった。

    ●竜種イフリートのまとめ
    「温泉というとイフリートだけど……あ、そーいえばさ、『竜種イフリート』って結局何だったのー?」
     ちょうど聞きたいと思ってたんだ、と尋ねるニコレッタ・ベルニーニ(熱情の機甲退魔シスターニコ・d14620)の問いに答えるようにして、次に竜種イフリートについてのまとめが始まった。
    「竜種か……アレの出現は、今年の半ばじゃったかのぅ?」
     イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)は傍らにそっと確認すると頷き、「ちょうど前回のまとめの直後くらいじゃ」と更に付け加える。
    「イフリートは四足歩行の猛獣の姿をしているんだが、そいつらは鱗を持った爬虫類型……恐竜とか、ドラゴンみたいな外見をしている」
     それで竜種イフリートと呼ばれているんだな、と説明を始めるのは千凪・志命(灰に帰す紅焔・d09306)。
    「そして竜種イフリートは、周りの一般人を原始人化させる能力を持っている」
     これも、普通のイフリートとは違う点だと志命は強調する。
    「一度戦ったことがあるが、イフリートっつーより、マジ恐竜だ」
     神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)の感想は実に生々しい。
     周囲の気温を上昇させ、人々を原始化させていく竜種イフリート。彼らを放っておけば、街全体が原始時代に逆戻りしてしまうような状況に陥る可能性もある。
    「まるで文明を憎むかのような振る舞いだが、連中とは全く意思疎通ができないから、原始化しようとする意図もわからん」
     クロキバ達とは少なくとも会話が成立するのにな、と律はため息交じりに両手を上げる。
    「『りゅうしゅ』イフリートはほんとうにイフリートなんでしょうか?」
     そこまでくると、いっそ全く別の存在じゃないかと姫柳院・はるか(真昼の月を擁す宙の姫・d16517)などは思ってしまうくらいだ。
    「変り種イフリートらしいけど、アレが新種のダークネスと言われても驚かないかな……」
     竜種イフリートとは一体何なのか。夢築・遥(高校生シャドウハンター・d22136)も誰も、真相は掴めていない。
     ただ、
    「予兆によると、ガイオウガが竜種イフリートを抑えていたようなのですが……」
    「ミスター宍戸の協力を得て、ハルファスが竜種2体を確保するって予兆も見えたんだよな?」
    「爵位級の吸血鬼達が使った三竜包囲陣も、元々はイフリートが発祥って話があるっすよね。竜というと竜種との関連が気になるっすけど……」
     ただ、秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)や九湖・奏(たぬたん戦士・d00804)、宮守・優子(猫を被る猫・d14114)などが挙げたように、様々な予兆に竜種イフリートの存在が見え隠れする。磯野部・真紀奈(高校生ご当地ヒーロー・d25217)は、他に何か知っている者がいないか呼びかけ、情報が少なくとも少ないなりに、できるだけ情報を集めようとする。
    「……こうしてイフリートへの理解を深めていくのが、早道なのかもしれない」
     思いうような情報が得られなかった大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704)も、残念がるのはやめて、少しでも多くの知識を蓄えようとするのだった。

    ●シャドウのまとめ
    「あと、残っているのはシャドウですね。シャドウはスートごとに派閥があるようでないような……よくわからない種族ですね」
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)は、ハート、スペード、ダイヤ、クラブの4つを書き出しながら話す。たとえば『慈愛のコルネリウス』はハートのシャドウだが、そのコルネリウスからのメッセージを持ってきたパンタソスはダイヤのシャドウである。
    「で、シャドウの中には強大な力を持つ『四大シャドウ』と呼ばれる連中がいる」
    「一体どんなオドロオドロしい連中なんだ?」
     皆守・幸太郎(カゲロウ・d02095)は、物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)達の疑問に頷き返すと、四大シャドウに詳しい他の灼滅者達と共に、これまでに判明した情報をまとめていく。

    ====================

    ●慈愛のコルネリウス
     別名コルネリウス・ザ・ハート。
    『慈愛』をもって一般人から滅びたダークネスまで、様々な存在を救済して回るシャドウ。ただし、その慈愛の内容が灼滅者達の考えと相容れないことは多い。
     コルネリウスも何度かの戦いでそれを理解したらしく、遭遇初期のように武蔵坂学園と話し合いを持とうとはしていない。
     最近は、滅んだダークネスの残留思念を、ソウルボード内のブレイズゲート『プレスター・ジョンの城』に案内する姿がよく確認されている。

    ●絆のベヘリタス
     別名ベヘリタス・ザ・クラブ。
     ブレイズゲート『新宿橘華中学』に封印されていた強大なシャドウ。新宿橘華中学でのダークネス同士の戦いの影響もあって目覚め、しばらくは中学内に留まっていたのだが、
     2014年6月頃に謎の宇宙服少年が絆を奪う『卵』を人々に植え付け、その『卵』からベヘリタスが孵化する事件が発生。
     つまり、分割存在の一部は既に『卵』としてブレイズゲートからの脱出に成功している。
     もっとも過去に六六六人衆のカットスローターと縫村・針子は『ベヘリタスの秘宝』によってブレイズゲートを脱出しており、ベヘリタスが脱出手段を設けていたのは当然ともいえる。

    ●贖罪のオルフェウス
     別名オルフェウス・ザ・スペード。
     人間から『罪の意識』を奪うことで魂を堕落させ、悪行の果ての闇堕ちに走らせるシャドウ。
     過去には『病院』と長く敵対していた他、ハルファス軍とも協調を取っていたようだが、『病院』が武蔵坂学園に合流したこともあってか、最近は活動が控え目。
     もっとも、力を溜め込んでいると見た方が正確かもしれない。

    ●歓喜のデスギガス
     別名デスギガス・ザ・ダイヤ。
     一般人に対する傾向は不明。
     『獄魔大将』に仕立て上げた配下を、武神大戦獄魔覇獄に参戦させていることが確認された。
     その戦力とするため、実体化したダイヤのシャドウがて現実世界に送り込まれている。
     配下のシャドウには、歓喜をもって力を振るう好戦的な者が多い模様。

    【マスターからの解説】
     四大シャドウ達の関わっている事件は、それぞれ、次の場所にまとめられています。

    ●慈愛のコルネリウス
    http://tw4.jp/html/world/story/st130501.html

    ●絆のベヘリタス
    http://tw4.jp/html/world/story/st_behegg.html

    ●贖罪のオルフェウス
    http://tw4.jp/html/world/story/st_shokuzai.html

    ●歓喜のデスギガス
    http://tw4.jp/html/world/story/st_kanki.html
    ====================


    「新しいシャドウも大事ですけれど、これまでの3体の事も忘れてはいけませんです」
     手繰・真言(天球儀は性善説の夢を見る・d23501)が言うように、他のシャドウも決して動きが無いわけでは無いのだ。再確認するいい機会になりますわね、とサフィリア・ノーチェ(真冬の夜の夢・d18995)は頷く。
    「で。ハートのスートを持つシャドウ、慈愛のコルネリウス。あいつはその名の通り、慈愛の精神で動いている」
     ただし、それは『コルネリウスなりの慈愛』でしかないと木嶋・央(禍刻戦雷・d11342)は付け足す。
    「コルネリウスが、前回のまとめの後で起こすようになった事件といえば、7月頭に発見された『プレスター・ジョンの国』に関するものですね」
    「大津・優貴先生の胸に浮かんだ菱形の痣。これを探偵である私はシャドウの仕業と看破いたしました!」
     黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)の言葉に頷き、言い放つのは星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)。
    「先生のソウルボードが、とっても大きなソウルボードと繋がったんです。それが『プレスター・ジョンの国』ですね」
     更に二之瀬・夕姫(夕闇の姫君・d07010)が情報をまとめていく。
     何より特異な点は、ここに『コルネリウスが、灼滅されたダークネスの残留思念を送っている』という事だろう。これもコルネリウスなりの『慈愛』が発揮された結果のようだ。
     送られた残留思念は、ブレイズゲート内で分裂存在となって存在し続けていると、フルール・ドゥリス(解語の花・d06006)は更に説明を続けた。
    「灼滅と復活……慈愛を注ぐ相手も選んでほしいです」
     古池まなびという六六六人衆の残留思念が復活した事件に関わった茂多・静穂(千荊万棘・d17863)は思わずため息をつく。鴨打・祝人(みんなのお兄さん・d08479)も複雑そうな顔だ。
    (「死人をそのまま甦らせているわけではないけど……とてつもない奇跡では、あるよね」)
     まやかしであっても、それを願ってしまう者だっているだろう。ある種の人にとって、それは抗いがたいほどに魅力的だろうと、レオン・ヴァーミリオン(暁を望む者・d24267)は思う。
    「死んじゃってもまた働かされちゃうなんて、ダークネスさんもきっとブラック企業です」
     絶対に闇堕ちしたくないです、とアイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)も頷いた。
    「個人的には、彼女が呼びかけている残留思念が、どうして私達灼滅者が倒したダークネスさんのものだけなのかってところが気になるな」
     山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)は、これまで12回ほどコルネリウスが復活させた残留思念と戦っているのだが、いずれも武蔵坂学園が見知ったダークネスばかり。だが、どんな目的で残留思念を送っているのだとしても、残留思念を地道に倒していく事が彼女の野望を阻止する第一歩に繋がるはずだと、そう思う。

    「わたしは、絆のベヘリタスが絡んでいる事件に関わったことがあるよ」
     武月・叶流(夜藍に浮かぶ孤月・d04454)が説明したのは、人の持つ『絆』を奪って成長する卵が産み付けられる事件だ。
    「絆を奪われた人は、どうしてその相手が大切だったのか忘れちゃうんだ。……わたしが行った依頼は母親と二人暮らしの女の人だったかな。母親との絆を奪い返すことができてよかったよ」
     叶流はそう言いながら小さく笑った。
    「成長した卵は新たな『絆のベヘリタス』を産み落とす。このダークネスはかなりの強さを持つ反面、その『卵を植えつけられた人』との絆が強い人が受けるダメージは小さくなり、更にダークネスへ与えるダメージは大きくなるっていう特性を持っているんだ」
     だから事前に卵を産み付けられる人物に接触し、絆を結んで、生まれてきたベヘリタスと戦ったんだと射干玉・夜空(高校生シャドウハンター・d06211)もその時の様子を語る。
     まさに、そのベヘリタスに興味を持っていた精踏・心借(空っぽな果実・d31266)は、彼らが話す情報を片っ端から記録し、頭に詰め込んでいった。
    「シャドウのスートはそれぞれ意味があるのかのぅ」
     揚羽・王子(トリックオアトリート・d20691)は首を傾げているが、今のところ解っている情報は無いと先輩達は首を振る。
    「慈愛、絆、贖罪……それから、歓喜。この言葉の意味も気になる」
     と呟いたのは七時雨・智兎良(夢喰う獣・d25941)だ。
     慈愛、贖罪、絆はいずれも、彼らの関わる事件の内容と関連しているように思えるから、あるいは歓喜のデスギガスもそうなのだろうか。
    「歓喜といえば、緋鳴館にいた顔のない女が、灼滅者と我らを隔てる歓喜の門の陥落が近い……って言ってたんだよね」
     何か関係あるのだろうかと、月舘・架乃(ストレンジファントム・d03961)は首を傾げたが、それに答えを出せる者は誰もいなかった。

    ●いろいろな都市伝説
    「ねぇねぇ。ダークネスも良いけど、都市伝説についても教えてよ。どういった都市伝説があるのかな? 面白い都市伝説はない?」
    「そうですね、私が会ったのは『愛犬の七五三を祝う人を狙う者』や『クリスマスを愛犬と祝う者』でした」
     根来木・幸心(好奇心は猫と共に・d31055)に、まず答えたのは八重波・飛廉(蠱業の鷹・d17934)だ。特に後者は飛廉が自ら調査もしたので印象深い。
    「とりあえず、都市伝説さんは変態さんが多い事位しかわたしには分からないです!」
     と言い切る十皇・天子(蒼天・d19797)だったが、それは大いに何かを誤解しているような気がしなくもない。が、
    「悲しいかな……世の中は変態に溢れているね」
     更にその誤解を大きくさせかねないことを穂照・海(ブラッドレッドブロッサム・d03981)が言い出す。
    「……、まあわからなくもないよ。なんでこう、妙な都市伝説ばっかり縁があるかな……」
     斎倉・かじり(筋金入りの怠けもん・d25086)は、ちょっと遠い目をしつつ、先日戦ってきた、フェロモンムンムンのマッチョ都市伝説を思い出す。
    「都市伝説と言ってもいろいろなので……中には、特に危険ではなく、特定の条件を満たせば戦わなくても解決できるような事件もありますね」
     翠川・夜(神薙使いの夜・d25083)は、そっと話題を軌道修正するかのように、そう新入生達へ告げた。
    「まあ、どんな相手でも油断しないようにね。……その、酷い目にあったりもするから」
     と語るシャーロット・サウンドエッジ(音は虚空に鳴り響き・d27918)はどうやら、何かそうした実体験があるようだった。
    「あ、ちょっと聞いてみたいんだけど」
     志水・小鳥(静炎紀行・d29532)は、事件の中には、学園の生徒がうわさで聞いたり、調べるなどして見つけてくる事件について口にする。
    「俺もやってみたいんだけど、みんなはどんな風にやってるんだ?」
    「それ、僕も前々から気になってたんだ」
     この機会に、と黒田・真琴(ディープスリープ・d04577)も皆を見る。
    「常日頃、数多のダークネスは活動す。されどその動き、知るは困難……あー」
     そんな彼らに語り出した卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)は、ひとつ咳払いして言った。

    ====================
    【マスターからの解説】
     卜部・泰孝さんは、リプレイなどを見て閃いたことや、思い浮かんだちょっとした疑問、感じた違和感、更にそれ以外のどんな何気ない事でも新たな事件に繋がる事があるので、機会があれば、どんどん積極的に『推理』にチャレンジしてみましょう!
     ……といった事を言っていました。

     教室で公開されるシナリオの中には、皆さんが『推理』した内容を元に作成されるシナリオが、ときどきあります。
     『シナリオ』に通常参加した人は、リプレイを読んでファンレターを書くと、事後行動ができます。推理は、そんな事後行動の中の1つです。
     詳しくは、教室の利用方法を読んでみてください。

    ●『教室』の詳しい利用方法:ファンレターと『事後行動』
     http://tw4.jp/html/world/0504adv.html

     私から、推理の仕方についてアドバイスする事はできませんが、こんな風に先輩に聞いて教えて貰うのも良いかもしれませんね。
    ====================

    「エマも推理を的中させた事あるんだ。あの時はみんなに事件のこと色々話したりもしたな」
     無事に、他人の恋路を邪魔する六六六人衆の事件も解決したし……と、うんうん頷くのは大須賀・エマ(ゴールディ・d23477)。エマにとって、その時の事は、とてもインパクトのある出来事だったらしい。
    「俺みたいなのでも大丈夫かな?」
    「もちろん!」
     事件の解決に向かう事すら緊張してしまう桐生・桜(薄紅の炎心・d06705)だが、周囲の大勢の先輩達から、そんな返事が戻ってくるのだった。

    ====================
    【マスターからの解説】
     エマさんは推理を的中させ、更に、そのことをメインページ(http://tw4.jp/main/)で大勢の人に向かって話したことがあります。
     メインページに登場するキャラクターは、こうして推理を的中させ、シナリオが公開された人の中から選ばれることもあります。
     思い出や記念に残る出来事になるのは間違いありませんので、興味のある人は、ぜひチャレンジしてみてください。
     (なお、失敗してもペナルティとか無いので、安心してください)

     また、事後行動をしたり、シナリオに参加するのは不安かもしれません。
     でも周囲の頼もしい先輩達だって、最初からこんな風にベテランだったわけじゃありません。当たり前ですが、いつかは皆さんと同じように、新入生だった頃があるんです。
     勇気を出して、チャレンジしてみましょう!
     周囲の先輩達も、あなたが新入生だとわかったら、この灼滅者講座のように、きっと手助けしてくれますよ。

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    ●武蔵坂学園の出来事
     もちろん、武蔵坂学園での日々は、ダークネスとの戦いばかりではない。
    「この半年間だと、特に思い出深いのは修学旅行かなー」
     垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)は6月にあった修学旅行を思い出す。イリオモテヤマネコを探したり、友達との思い出づくりをしたり……今でも鮮やかに脳裏によみがえる。
    「森の中のカフェで食べたケーキは美味しかったですし、お昼寝もゆっくりできたし……」
     とっても楽しかったですよっ! と緋薙・紅花(小学生ファイアブラッド・d19903)も笑顔でそう語った。
    「わたくしにとっても一生忘れられない、大切な思い出になりました」
    「いいなあ、僕も来年が楽しみだよ」
     姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)の言葉には、藤川・優也(翠の蛍火・d01971)も今から来年が楽しみになる。
     修学旅行は対象の学年が決まっているから、優也は今年の修学旅行には行っていないのだ。
    「私たち大学1年も親睦旅行として参加したのよ」
     みんなとは、また違った感慨があったと、海原・河音(好好エクソシストガール・d15211)も思い出を口にする。
    「来年以降に行くみんなも、ぜひ楽しんで欲しいな!」
     神谷・蒼空(揺り籠から墓場まで・d14588)の言葉に、来年が待ち遠しくなってしまいそうだ。
    「わたしのイチオシは学園祭ですね!」
     7月、2日間に渡って開催された学園祭を思い出すのは香祭・悠花(ファルセット・d01386)。戦いばかりでは疲れてしまったり、気が滅入ってしまう事もあるからこそ、こうした機会を楽しみにしていきたいと悠花は思う。
     鈴木・レミ(データマイナー・d12371)や黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)、常儀・文具(バトル鉛筆・d25406)などは、準備したクラブ企画が生徒みんなで行った人気投票の上位になり、その点からも思い出深い学園祭になったのだと、口々に思い出を語った。
    「なかなか大変だったけど、お客さんたくさん来て楽しんでくれたみたいなので、嬉しかったね!」
     クラブ企画には、そうした魅力もあると、香坂・いりす(新米うさぎ長・d13655)達も語り合っている。
    「715か所だっけ? 沢山のクラブ企画でお土産が用意されていたね」
     盛り沢山な学園祭だったと、夕凪・葉月(犬耳刑事見習いは魔法使い・d06717)も詳しく紹介しつつ、全然まわりきれなかったから来年こそは! と声を上げてみせる。
    「企画の種類が幅広いから、誰でも楽しめるはずだぜ」
     と紹介していく橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)なんて、もう既に「来年も一緒に見て回ろうぜ!」なんて約束を取り付けてあるくらいだ。
    「一番多く、クラブのお土産持って帰れた人、誰かなぁ?」
    「俺は415個」
     ファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)が皆を見ると、蒼夜藝・瑠璃鵺(聳弧のロベリア・d00928)もフルコンプした人はいるのだろうかと周りを見回した。
    「このお土産もすっごく個性豊かで楽しかったなぁ!」
     三雲・秋乃(偏愛スケープゴート・d08813)が笑う一方、桜弓・田鶴子(鬼鶴・d26271)は華やかだった水着コンテストのことを思い返す。
    「私も水着を着ましたわ!」
     と語るマドレーヌ・メグレ(午前三時のティータイム・d25612)など、多くの生徒が参加した水着コンテストは、会場もとても賑わっていた。
    「ああいうのを着るのは初めてだったが、楽しかったのじゃよ」
     大神・みこと(中学生人狼・d27748)にとっても、良い思い出になったようだ。
    「いやー、最高だった!」
     はっはっは、と笑う真神・クロ(中学生人狼・d28259)の思い出は、そんな『水着を見ることができた』ことの方らしい。目に焼き付けた水着姿を思い返して……あの時は拒否られたけどもう1回! と思わず抱き着こうとダイブしている。
    「後夜祭での線香花火。あれはなかなか綺麗でしたね……」
     レイ・エトワブラン(太陽を愛でる病みし月・d11227)は、更に学園祭直後、初めて線香花火を体験したことを思い返している。
    「俺もプールでのあれが……」
     と言いかけた椎宮・司(ワーズクラウン・d13919)は、「いや秘密、秘密」と慌てて誤魔化す。
    「へえ……ありがとー! 来年の学園祭が今から楽しみ」
     そんな思い出話を聞いていた世木・誉(中学生サウンドソルジャー・d30566)も、来年はたっぷり楽しんでみたいなと思う。
    「学園祭はクラブ企画もあるから、今からクラブに入っておくのをお勧めするのじゃ」
     そうして仲間と迎える学園祭当日は楽しさ倍増じゃぞ、と語っているのはシルビア・ブギ(目指せ銀河ヒーロー・d00201)。クラブ活動は、他にも学園生活において役立つことがいっぱいあると、初食・杭(メローオレンジ・d14518)もクラブ活動の大切さを説く。
    「最近だと、みんなでハロウィンをしたね。……マラソン大会? 知らない、知らない。そんなの知らない」
     羽地・葉(化学を信じる魔法使い・d21198)は10月末のハロウィンを思い返す。……同じ日にはマラソン大会もあったのだが、葉は、そっちは無かったことにした。
    「もみじ饅頭にお好み焼き、色々食べてもらえてご当地ヒーローとしては嬉しかったなー」
     当日屋台を出していた崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)は、沢山の人が立ち寄ってくれたのが嬉しかったらしい。今日も持ってきたアツアツのもみじ饅頭を配っている。
    「マラソン大会は武蔵坂学園の秋の恒例行事。学園からスタートして市街地、井の頭公園、吉祥寺駅前などを経由して学園に戻ってゴールする、総距離10キロのレースだ」
     九凰院・紅(堕月流丙三種第一級戦鬼・d02718)は、そんなマラソン大会についてのルールを詳しく説明していく。優勝を目指すなら、今から理解を深めて、練習に励むのも良いかもしれない。
    「残念ながら僕は運動が不得手の為、ハロウィンに注力させていただきましたが……」
     いくらかお菓子を貰ったという高嶺・由布(柚冨峯・d04486)や、みんなが1ヶ月も前から頑張って準備をしていたことを思い返しながら月詠・茉莉(火焔の夜猫・d14565)など、ハロウィンについて語る灼滅者達も、みな笑顔ばかり。
    「大々的なハロウィンでしたね」
     かなり盛り上がっていた事を、」玄羽・レン(対歯車のコッペリア・d24840)も思い返す。
    「今月は芸術発表会があるのよね?」
     アイドル志望のアリエス・オデュッセイア(アルゴノーツ・d29761)としては、もうじき行われる芸術発表会が気になって仕方ないらしい。
     いくつもの部門にわかれて芸術を披露する芸術発表会に向けて、いくつかの授業は、その準備をする特別な時間割に変更され始めている。
    「魔人生徒会主催の、サバイバル・ゲイムもありましたわね」
     緋薙・桐香(針入り水晶・d06788)は、そこで対抗試合をしたことを思い返す。普段張り合っている相手と協力したりしたのも、良い思い出だ。

    「あとはミスコンならぬN-1(ナノワン)グランプリとか」
     姫柳院・みちる(宵闇の星を寿ぐ凪の姫・d16519)は、横で書類の整理を手伝うナノナノのほたるを一瞥しながら、魔人生徒会が主催した、ナノナノの魅力を競う大会のことを思い出す。
    「あたし達が優勝できるとは思わなかったけど……」
     一等賞だったことは、やっぱり嬉しい出来事だったと、みちるはほたると思い出を分かち合っている。
    「あとはビハインドグランプリ待っておるんじゃが」
     望月・心桜(ポン酢彼女・d02434)としては、魔人生徒会にそれを期待したいようだ。

    「来月になればクリスマスだな」
     と、先のイベントに目を向けるのは世良・九龍(マスカレイド・d21044)達だ。
    「クリスマスといえば、噂で聞いたけど『ナノナノさま』ってのがいるんだよね?」
     どんなのかなあ、とルイカ・ルイ(夢見る白蝙蝠・d24989)もわくわくしてみせる。なんでも、クリスマスの日にだけ現れる、伝説のナノナノさまがいるらしい。
    「しっかり計画を立てるのが大事ですね……」
     と、ローラ・トニック(魔法少女ローライズ・d21365)はもう既に、スマホ片手に何やら真剣な様子だ。
    「クリスマス……クリスマス……!」
     ブツブツと呟く若生・若(若桜・d20457)のような者もいるが、まあ気にしないでおこう。
    「しかし。……我々病院が合流して、来月で一年になるんだな」
     12月。それは人造灼滅者達が武蔵坂学園に加わった季節でもある。狼川・貢(ボーンズデッド・d23454)は、月日が経つのは早いものだと呟いた。

     一方。
     いつの間にか輪を作り、何やら白熱した議論を交わしているのは、宮野・連(炎の武術家・d27306)や戯・久遠(悠遠の求道者・d12214)、神打・イカリ(ワールドリヴァイヴァー・d21543)やゼアラム・ヴィレンツィーナ(埼玉漢のヒーロー・d06559)などだ。
     彼らの話題は、ライブハウスやサイキック、殲術道具の有効な使い方、更には戦略の工夫などについてだ。それらについて詳しく聞いてみたいと思っていた播磨・夕弥(獣の騎士・d30319)や詩緒・レイチェル(スノーウィンド・d28963)などがそれに耳を傾け、ときどき質問を行っている。彼らにとっては、結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)や蒔絵・智(喪失万華鏡・d00227)が語る戦略についての意見なども参考になるかもしれない。
     水渡坂・乃々(小学生魔法使い・d30567)や雨堂・亜理沙(微かなる白影・d28216)達は、更にその中でもポジションについて語り合っていた。
     ちょうど、そうした話題が気になっていたのだという佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)が質問をすれば、久津・悠里(キュマイラ・d26858)や黒島・もいか(高校生魔法使い・d22385)、佐島・マギ(滑走路・d16793)などが意見を口にする。
     十皇・初子(黒燈・d14033)が語っている内容は、ちょうど高原・清音(中学生殺人鬼・d31351)が知りたいと思っていた分野に近く、後衛ならではの戦い方を真剣に聞いていた。
    「他にも、クラブで相談してみるのも良いと思いますよ」
     そうした話題を中心に、活動しているクラブもあるので、探してみると良いのではないか、とラピスティリア・ジュエルディライト(夜色少年・d15728)はアドバイスする。
    「あと忘れちゃいけないのが勉強だよ。この学園、中間テストも期末テストもちゃーんとあるんだからね!」
     来月も、後期中間テストがあるんだし、と語りかけるのはミス・ファイア(ゲームフリーク・d18543)。直前にあわてないよう、普段から勉強するのが大切だと話すミスだが……果たして、このアドバイスは来月活かされるだろうか。
    「……この学校って、いーよな」
     早鞍・清純(全力少年・d01135)は、不意にしみじみする。
     清純は決して成績優秀とは言い難いし運動もそんなに得意じゃないし、モテるわけでも特別な才能があるわけでは無い……と思うが、それでも武蔵坂学園での日々は、とても楽しい。
     自分みたいな生徒が、当たり前のようにそうやって過ごせる。それが武蔵坂学園の、一番本当にすごい所なのかもしれない。

    「はい、こっちのファイルは完成しました」
    「ほな、いただきますねえ」
     資料のまとめをしていたミツキ・シャノワ(月に愛された魔法使い・d04055)は、じっくり仕上げたファイルを閉じた。それを受け取って、桐堂・千総(神の随に・d20110)は手際よく棚に片付けていく。
     安綱・切丸(天下五剣・d14173)は資料をそのまま整理するだけでなく、低学年の子でもわかりやすいように、文字が大きくて見やすくて挿絵や図のあるバージョンも用意していった。
    「この資料が、後の後輩ヒーロー達の手本になることを切に願い、ここにしるす……こんな感じかな?」
     グラン・スターライト(アメリカンヒーロー・d28548)は最後のページに、そんなメッセージを入れてみた。
    「お手伝いはまかせて頂戴ね!」
     荷物運びを手伝うのは、藤谷・恵司(カリスの恩寵・d19202)や槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)。多くの男子生徒達が力仕事を積極的に手伝い、ガンガン荷物を運んでいく。
    「こんな感じでいいか」
     三崎・鮪(マグロめぇん・d06900)は少しでも情報を探しやすいようにと、要所要所にふせんをはっていく。
    「みんな大変そうだねぇ……ひよもお手伝いするよーう!」
     元気いっぱい、黄嶋・ひよこ(ぷりずむいえろー・d09839)達もがんばって……まとめられた資料は、どんどん片付けられていく。海野・桔梗(鷹使いの死神・d26908)などのように、気になった資料をついつい読み始めてしまい、作業がストップしてしまうような者もいたが、それが気にならないくらいの速度で作業は進んでいた。
    「ええと、これは、どちらへ……?」
    「ああ、索引があるよ」
     戸惑っている小瀬羽・洋子(清貧清楚・d28603)に袖岡・芭子(匣・d13443)が声をかけるなど、どんどん助け合って作業を進めているからだろう。
    「…………高いとこに手が」
    「…大丈夫? やってあげるよ」
     背伸びしながらぷるぷるしているアンネリーゼ・デアフライシュッツ(七発目は悪魔の弾丸・d26691)にも、宇治・薫(高校生シャドウハンター・d31308)が手を貸す。特に、先輩側はきめ細やかに新入生達の様子に気を配っており、少しでも困っている様子を見せる者がいると、奪い合うくらいの勢いで手助けしていっていた。特に、力仕事や背の高い場所での作業は、高坂・透(だいたい寝てる・d24957)や逢坂・豹(豹牙奮迅・d03167)など、男子たちが大活躍だ。
     桜田・紋次郎(懶・d04712)も、黙々と資料の片付けを進めていく。
    「はい、一覧表は完成よ」
    「案内図もできました」
     一方、パソコンを持ち込んだ面々は、情報の検索がしやすくなるような工夫をしていく。苑田・歌菜(人生芸無・d02293)や白金・葵(高校生サウンドソルジャー・d03726)などが相次いで完成させたデータは、すぐにバックアップが取られる。
     特に力作なのは、城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)や皐月森・笙音(山神と相和する演者・d07266)、黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)、神薙・弥影(月喰み・d00714)、最上川・耕平(若き昇竜・d00987)、ベネディクト・ショー(蒼昊を駆ける若鷹・d01822)などが手分けをして作成していった、膨大なバリエーションの『さくいん』だ。
     日付、名前、勢力名、種族など、様々な内容で資料を検索できるようにしてある。スマホやタブレットでも使えるようにしてあるから、どんな生徒にとっても使いやすいだろう。
     華表・穂乃佳(眠れる牡丹・d16958)が作成した、時系列順に事件を並べていった年表も、その整備には一役買ったようだ。
    「よし、テストも大丈夫」
     童子・祢々(影法師・d01673)は、更にQ&A形式でミニテストができるようにして、クイズ形式で情報がおさらいできるようにしていた。そんな彼らの作業の合間には、焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752)の用意したドリンクや、皆で持ち寄ったお菓子や料理などが、存分に役立った。

    「おーわーったー!」
     最期のバインダーが棚に収納されるのを見届け、朴・劉鞍(天陰る霞龍・d26219)は満足感に満ち溢れた表情で叫んだ。
     ヘトヘトにはなったが、達成感はハンパない。劉鞍は思わず、周囲のみんなと握手する。
    「これから、まだまだ確実に増えていくんだろうね……」
     渡来・桃夜(道化モノ・d17562)も、綺麗に整った魔人編纂室を眺めながら呟く。
    「次にここに来る時は、君たちがこれから歩む物語を編纂することになるだろうね」
     一方、オリヴィア・ルイス(プリスマヴェルデ・d09838)は後輩たちに向かって微笑みかける。
     新しい一歩は、いつでも楽しみだ。それが自然とオリヴィアの目を細めていた。
    「私も、今後頑張ります」
     頷くフェリル・セイラム(中学生エクソシスト・d29397)の目は、そんな無数の先輩達を見つめている。
    「僕も僕も! まだまだへなちょこ神薙使いだけれど、みんなの為にがんばるよ!」
     自分を優しく迎え入れてくれた、この学園のみんなに瀬名・密(秘蜜・d20022)はとても感謝している。だからこそ、と密は改めて意気込む。

     先輩にとっても、後輩にとっても、今日は今後について気持ちを新たにしていく、良い機会になったのかもしれない。
     そうして灼滅者達は、和気藹々と、魔人編纂室を後にするのだった。

    作者:七海真砂 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月12日
    難度:簡単
    参加:2860人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 4/素敵だった 24/キャラが大事にされていた 85
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