水晶海月の浮かぶ夜

    作者:那珂川未来

     深夜の埠頭にて。
     人とは言い難い何かの影が三つ。それは『智』と書かれた小さな玉を大地へと落とし、転がるそれを、静かに見守っている。
     それだけで、特に何もないように思えたが、よく見ると辺りに漂う瘴気の様なものが、ものすごい勢いで玉に吸われているようだった。
     程なくして、それは肉を生み、形を成して、水晶で出来た傘を持つ、クラゲのような化け物ができ上がる。
     幾つもの透明な触手の間から、蛇のように長い背骨を伸ばして顔を覗かせる化け物は、人の頭蓋を乗せていた。
     ぎらり、紫の目が輝く。
    『キャハハ。さぁて、どこへ行けばいいのカナ~』
     
     
     仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)は、結果を記したプリントを差し出して。
    「今回の依頼は、スキュラダークネス、だよ」
     もうおなじみだと思うが。灼滅された「大淫魔スキュラ」の遺した、厄介な仕掛けの話は聞いているだろう。
     八犬士が集結しなかった場合に備えて生前の彼女が用意していたという、「予備の犬士」を創りだす仕掛け。彼女の放った数十個の「犬士の霊玉」は、人間やダークネスの残骸を少しづつ集め、新たなるスキュラのダークネスを産み出すものらしい。
    「今俺が予知した時点では、この霊玉がアンデットに解き放たれた段階なんだが……今から向かうと、丁度出現した頃だろう」
     時間としては、深夜11時。とある町の埠頭である。相応の準備をして欲しいとのこと。
     犬士の霊玉をなぜアンデッドが所持しているのかはわからない。しかし戦場で灼滅されたダークネスの残骸を吸収した霊玉から現れるダークネスを、放置することは出来ないだろう。
     放置すると、時間が経つにつれ、「予備の犬士」に相応しい能力を得ることになる。
     なので、肉塊から生まれた瞬間のダークネスを、素早く、確実に、灼滅することが必須条件となる。
    「今回のスキュラダークネスは、2m強の水晶で出来た大きなクラゲみたいな形をしている」
     そこから幾本も伸びる触手はしなやかで、その隙間から蛇のような骨格に人の頭がい骨が乗っているのような、奇抜な姿をしているそうだ。子供っぽい喋り方だが、全然可愛くないわけである。しかも生意気。
     他に、配下アンデットが三体。チェーンソー剣のサイキック使用してくる。
    「アンデットはとても弱いよ。だからといって放置すると厄介だろうけど」
     ノーライフキングも通常のスキュラダークネスよりは、出現時の戦闘能力が多少低いのだが――。
    「このスキュラダークネス。四分経過ごとに、攻撃力がアップする」
     時間がたてばたつほど強くなってゆくので、時間がかかり過ぎれば闇堕ちなしでは到底勝てなくなる。その目安は、15分経過しても倒せなかった場合だ。
    「仮に力で八犬士に及ばなかったとしても、野放しにしておくととても嫌な予感がするからね」
     アンデットが絡んでいることからもわかる様に、スキュラダークネスを利用し暗躍しようとする者がいるのかもしれない。
     きちんとした作戦がなければ、間違いなく負けるだろう。
    「気をつけて、無事に戻って来てほしい」
     沙汰は、教室を後にし出した灼滅者達を見送った。


    参加者
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)
    音鳴・昴(ダウンビート・d03592)
    加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)
    冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)
    神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)
    天神・緋弥香(月の瞬き・d21718)

    ■リプレイ

    ●瘴気の形
     埠頭に並ぶ、倉庫の影の下。なんとなく届いている街灯の光を反射しているのは、水晶で出来た海月の傘。靄のようにあたりに揺らいでいるのは、かき集めた瘴気の残りか。
     長い脊椎の上に乗っている頭蓋骨は、生誕の喜びにかたかたと歯を鳴らし笑っていて――その音が倉庫の壁に反響して、妙な不快感を伴い耳に届いた。
    「まためんどくせー事んなってんな。とっとと燃えないゴミにでも出しといてくれりゃよかったのに……」
     余計な事だけは考え付くよなと、音鳴・昴(ダウンビート・d03592)は呆れやら皮肉やらを込めて面倒そうに。
    「報告書で読んだ仕様とは少し違いますわね」
    「そうなのな。埠頭にアンデッドっつーと……どうも、いつぞやのラグナロクの時思い出すんだがな……まぁ、今回はセイメイよりカンナビスとの関わりのが強そうだが」
     おぞましい姿に目を細める天神・緋弥香(月の瞬き・d21718)へ、冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)は軽く頷きながら、ゾンビ三体を真に操る存在を遠くに透かして見て。
    「ひとまず、詮索は後だ」
     くすくすと笑いながらこちらを見下ろしている宿敵へと、迫水・優志(秋霜烈日・d01249)は鋭い眼差し向けた。
     人の遺骸を弄ぶだけでなく、ダークネスの怨念すら利用する。本当に節操がない――そんな事を思ったりもして。
    「さっさとお帰り願おうかね……」
    『キャハハッ♪ 君たちこそさっさと帰ったら? あの世にさ!』
     殲術道具を手に、勇騎がそう言ってやれば、眼窩の中で、光は楽しげに弧を描く。
    『あっれぇ? もしかして道を知らないのカナ~? 僕が教えてあげようか!』
    「帰るのはてめーの方だぜ」
     槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)は皆より一歩前に立つと、頭蓋骨を指差し、揚々と言い放って。
     先程触れた焼け焦げたクリップの感触が蘇る。思い起こすのは闇堕ちした時の事。守りたい、怪我をさせたくない、『仲間として』。そんな気持が無意識に出ているようだ。
    「あなたに、行く場所はこの世界にはありません……」
    「……。深夜故、静粛願い。無論、永遠静粛、宜しく」
     結晶のような光環を手にする加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)。目深に被った帽子から覗く瞳は、此の世のものではないような何かを湛え、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)はビハインド・ピリオドを背後に揺らめかせた。
    『くすくす、言った本人から見本見せてよネ?』
    「静粛の意味がわからなかったかしら? 大人しく灼滅されなさいと言っているのよ」
     耳障りな声で笑うノーライフキングを、緋弥香の瞳が鋭く射抜く様に。一度瞼を閉じることによって戦闘モードへと切り替わった彼女は、別の何かを寄りつかせているかのようだった。
    『じゃ、君達が死んだらいいヨー!』
     幾重にも振り下ろされた触手から、咎の波動が降り注ぐ!
    「何者が姦計を張り巡らせているにせよ……切り開く、それだけです!」
     神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)は天津甕月を握る手に確かな決意を乗せ、紅を纏いながら、迫りくる漆黒の残光を抜けて――。
    「はっ」
     装束、花綻ぶように靡かせながら。ゾンビの腹を鋭く穿った。

    ●笑う輝石
     彩雪から溢れる繊細な氷の花弁が、霊犬・さっちゃんの放つ金属の輝きと踊りながら前衛のゾンビたちを横切ってゆく。後ろへの牽制のように、優志が放つ除霊結界が、暗夜を瞬間的に彩った。
     康也が三人分庇い受けても、まだまだ大勢に影響は出ない程度の威力だ。ノーライフキング自身も、生まれたてて初めての戦闘。自身の能力を使いこなせていないというのが正しいのだろうか。
    「うっし。まだいける!」
    「浄化障壁、展開」
     康也とガイストは、同時にワイドガードを展開させて下準備。
     煌めき巻く世界を鋭く突き抜けて、緋弥香の紫蘭月姫が朱を弾けば。流れる六文銭に潜むのは、昴が放つ刃の影。波のように掛かってくる、ゾンビの斬撃の一つをするりと受け流したピリオドが、カウンターの如く霊撃を。
     ノーライフキングは七色のクロスを吐き出して。輝きそのものを潰してゆくように、康也とピリオドが駆け抜けてゆく。
     そんな彼らへ、ゾンビたちが騒音轟かせつつ波状攻撃を仕掛けてきたが、瞬発力を生かして康也へ庇い出るガイスト。
     ゾンビの咆哮、チェーンソーの動力音。展開する輝きの上、火花散る。
     WOKシールドで刃先を反らし――しかし、左右からはさみこんでくる斬撃はさすがに厳しい角度。
    「……。ピリオド、今、一任」
     連携して連撃をせき止める。間合いを取るために蹴り飛ばした爪先の影が喰らいつき、ピリオドのフックが顎を叩き割った。
    「出てきたばっかで悪ぃけど、てめーはぶっ飛ばす!」
     その勢いのまま、康也の影から漆黒の狼をけしかけて。
    「いかに序盤で有利な状況を手繰り寄せられるか、腕の見せ所だな」
    「はいっ……!」
     呻くゾンビ目掛け、優志の足元に広がる暗黒から、大型犬の影が駆ける。彩雪の放つ魔法の弾丸が追うように。
     漆黒の狼と猟犬の顎が、ディフェンダーゾンビらの腕を片方ずつ食いちぎって。崩れた体勢へ、弔いの輝きが心臓に弾け、まずは一体。しかし相手も押されぬよう、適度に被弾を分担しあい、一斉に攻撃に動く様は、即席といえど統率がとれている。
    「ツギハギとはいえ、やっぱノーライフキングってわけか」
     癒しの矢を葎へと放ち、勇騎は誰にでもなく言った。
     所詮は創造物でありながらも、本物のダークネスに負けず劣らずの存在――それはこの玉が存在するだけ生まれる可能性秘めているというのだから、背筋が凍る。
     滑る様に側面を取って、葎が天津甕月より美しい六花を打ちだして。逆巻く細氷の中、緋弥香は紫蘭月姫より紫雷を迸らせる。
     鈍い音共に、ゾンビの肩が吹っ飛ぶ。
    「失礼! これでも手加減したほうなのですが……」
    「とっとと海の藻屑にでもなっちまえよ」
     過ぎ去り際、嫌味も置いてゆく緋弥香。昴はかったるそうにしながらも標的を狙う瞳は鋭く。けしかけた影の海から、まるで巨大魚が飛び上がり、飲み込むように。ましろが斬魔刀で首を落とそうと跳躍する。
     一閃が届いたものの――しかし浅い。
     舌打ちしながら、昴が返しの刃を形成し、振るおうとしたが、それよりも早く落ちたのは、邪悪な裁光。
    『簡単に肉壁壊されるわけにもいかないんだよねぇ』
     剥がれ落ちそうになった肉を繋ぎとめてやりながら、愉快そうに笑うノーライフキング。
     舌打ちする昴。
    「脆い盾の後ろに隠れなければ、威張っていられないのかしら」
    「いくです、よ」
     情けないわねと言ってやりながら、凛とした月の鋭い輝きのような気弾を放つ緋弥香。彩雪の雪色の魔弾と絡むように。
    『ワッ、今度は僕狙い? 余裕だネ~』
    「疾く射殺せ、禍津日の矢!」
     ゾンビの斬撃に朱の花散らしながらも、葎の魔弾が輝いて。連なる緋弥香の砲弾がディフェンダーゾンビの遮られたものの。昴が世界に響かせた熱の波動のリズムに合わせ、ましろの斬魔刀が、今度こそ終焉を押し付ける。
    『もうちょっと役に立てヨ、クズなりにさぁ~!』
     使えない苛立ちと一緒に弾いてやるように。触手をしならながら迎え撃つノーライフキングへ、
    「海月は嫌いじゃないけど……ノーライフキングとなれば話は別ってな。しかもしつけのなってない子供ならば、世間の荒波ってのも体験させてやるのが優しさだろ」
     優志はその指先を宙に踊らせる。あらゆる霊を穢し調伏させる結界を再び。
    「……てめぇみたいなのは、見ててイライラすんだよ。空は誰の領域か教えてやれよ、ルイ」
     赤触が多角的に世界を囲う陣の先導を斬る様に。勇騎がけしかけた影鷲の翼弦が幾つかの触手を消滅させてゆく。
    『ワー、蝿だけあってヤッパ五月蝿いネ!』
     確かに本物の蠅にたかられそうなナリしてるもんな、なんて、影打ち込みながら昴が悪態付いてやった矢先、ノーライフキングの纏う瘴気が、濃くなったような気がした。
    「四分過ぎるぞ――」
     セイクリッドクロスの輝き爆発する音の中、勇騎は割り込みボイスで周知する。
    「くっそー。一段階上がってこれなんだな」
    「スキュラ遺産、常々厄介」
     腕に刺さりこんでいる十字架の残光に、康也は顔をしかめ。ガイストは帽子の奥から冷たい眼差しをむけた。
     ここからあと二段階威力が上がるのだ。闇堕ちしなければ勝てなくなるという話も、すでに実感できる。
    「傷なんて残してられないな……」
     少なくても総攻撃までは、清き風を振り下ろしながら勇騎は呟いた。最終段階では、他のメンバーの手も借りなければならないほどになるだろうと予測もできるから。
     さっちゃんが瞳に清浄を満たすと輝かせ。それを受けた康也は、パンッと肩の埃を払って体勢を整えるなり、ガトリングガンの照準を向けて。
    「心強い仲間と一緒だから、頑張れます」
     言葉を零しながら。彩雪が両手を前へ翳して気を溜めて。
     ――怖くないといえば、嘘になるけど。
     隣のさっちゃんと昴。
     前に居る優志と、そして――傷付きながらも前に居る康也の背を見守りながら。
     ガトリングガンの咆哮に合わせて、彩雪はオーラを撃った。
     サーヴァントの見切り対策に敢えて放置しているが――メディックゾンビの刃が、前衛陣の疲弊を僅かずつだが広げてくる。
     決められた時間の中、いかにダメージをノーライフキングへ集めていけるか。押し込まれた刃払いのけ。葎は只管ノーライフキングへと矛先向けて。
    (「これが吉と出るか、凶と出るか――」)
     くすくすと笑う頭蓋骨。解き放った六花の煌めきはするりと抜けられ。ノーライフキングは神秘属性に強いのだと思いだした瞬間――かわりに、水晶で出来た刃が、首を刎ねるべく降り注ぐ。

    ●カウントダウン
     程なくして、10分が経過しようとしていた。誰もが地を踏みしめ、落ちてゆく時の中を必死に渡っている。
     黒の波動が迸る。
    「全員キッチリ守りきるぜ!」
     滑る様に横切って。出来る限りの攻撃を受け止める康也。ガイストやピリオドも、肩で息をしている。
     メディックゾンビは健在していた。サーヴァントの見切り攻撃ついで、優志が時折放つ列攻撃で弱らせているので、灼滅まではあと一歩、ではあった。
     しかし最初に施した命中精度や破壊力、BS耐性などの強化はほぼ無くなっていた。ブレイクで、ことごとく打ち消されてしまっている。
     この際強化は捨て、回れるうちは、攻撃に回っとくべきだったか。
     ディフェンダーの疲弊が激しいのを見て、幾人かそう感じたが。しかしノーライフキングも、自慢の水晶傘は歪になり、疲弊具合は目に見えるほどだ。
    (「徹底した外皮破壊が、ようやく成果をあげているのね」)
     葎は紅を纏った。数人で斬影刃を重ねに重ねたおかげでもあるのか、弱点だと思われる気魄属性ダメージの期待値は高くなっているはず。
     押すか。
     押されるか。
     微妙なバランスであることは間違いない。
    「押し切ります、必ず!」
     流れる血も麗しさへと上乗せして、葎は気を赤色の牡丹の様に綻ばせるなり解き放つ。三日月の先端のように弧を描き、追尾するのは彩雪の魔弾。
     ガンと大きな音を立てて、傘の一部が破裂する。
     昴が影喰らいを放つ――がスレスレでかわされる。時間制限のある中、思わず舌打ちが漏れて。
    『くすくす。必死だネ~。サ~そろそろまたパワーアップしちゃうヨ~? 逃げるなら今じゃないカナ~?』
     余裕ぶっているが、ただそれが虚勢にも見えなくもないのは確か。
    「ごちゃごちゃうるせー!! ぜってー守るっ!」
     迸る暗黒の力を、果敢に庇い出る康也とガイスト。膝をついたガイストだが、凌駕しながら立ち上がる。
    「……確殺、続行」
    『キャハーッ。今ので倒れればよかったのに! 蠅ってしぶといんだネ!』
    「調子に乗ってますと、足元を掬われますわよ」
     彼等の頑張りを無にしない為にも、崩れる前に仕留めたいのはクラッシャ陣の心境だ。だん、と緋弥香は舫杭を蹴って跳躍する。勇騎の解き放つ癒しの風を追い風にして。
     轟く稲妻を脳天目掛け詠唱する。
     同時に動いていた葎が、回避ポイントを読みこみマジックミサイルを。
    『このっ!』
     ノーライフキングは、回避を試みようとしたものの――追尾してくる力に大きく揺らぐ。
     優志が毒の詰まった弾丸ぶっ放す。間髪いれずに康也がガトリングガンを連射。弾丸撃ち終える瞬間、ピリオドの霊撃が、残るゾンビを血煙にし、その隙に鋭くガイストが足元へと滑り込んで――。
    「追尾弾、射出」
     天衝く様に放たれたオーラの弾丸に、強烈な破壊音。触手の一部ごと、水晶の傘が砕けて。
     天地から降り注いだ一撃は強烈。
    『こんのぉ! 小賢しいよ、君たち!』
    「来るぞ!」
     12分が経過して。勇騎の声響く。ノーライフキングの脈動を全員が感じるくらい――その力の高まりに寒気が走る。
     庇った故に康也は背中から落ち、ガイストも地に伏せる。
     倒れた姿に、彩雪は唇かみしめたけれど。彼等の頑張りを報いることは勝つこと。
     緋弥香と葎は感謝を示しながら。もしかしたら最後になるかもしれない一撃を叩きこむため、同時に地を蹴って。
    「先程の態度も所詮虚勢でしたのね、情けない」
    「……灰は灰に。闇は、疾く闇へ還せ」
     緋弥香の紫蘭月姫、葎の天津甕月、暗夜に踊らせ、練り上げ解き放つ。
     紅と月光が交差して。
     結晶のような弾丸が、星屑の様に散る。
     ぱらぱらと、雪のように大気に溶ける水晶の傘。
     痙攣しながら動く触手は、体液をぶちまけていた。
    『あーもう、ホント鬱陶しいんだヨ!』
     目に見えてわかる苛々。ノーライフキングは滑空しながら、予測もつかないタービュランスのように強烈な黒の波動を、前衛陣に等しくぶち当ててくる。
     破裂音。
     前衛が決壊した。
     ひらけた視界に、ノーライフキングは歓喜する。
     ――あと一分!
     けれど、防御力がガタ落ち故に、悲鳴を上げたのもまた。
    「ここで終わらせる」
    「……このまま眠って下さい、です」
     彩雪の放った雪色のオーラが、優志の放つ穢れを穢す弾丸と、勇騎の研ぎ澄まされた輝きと連なって――三連星となって、降り注ぐ。
     甲高い声が、辺りに反響した後。残ったのは、穴のあいた水晶の傘。触手から伸びていた頭蓋ごと、力が貫通して。
     あれだけ五月蝿かったノーライフキングも、すっかり静寂し。身体は劇的な勢いで亀裂を生んで、割れた車のフロントガラスのように、ばらばらと壊れてゆく。
     殆んどの時間を使い果たし。しかしどうにか飛行している相手を撃ち落とす事が出来て、優志は息をつく。
     危い場面もあったが、大きな怪我を負わなかったのは、幸いだった。
     埠頭には、優しい波の音だけが響いている。
     跡形もなく無くなった痕跡では、確信に繋がるものは得られないけれど。
     しかしその後ろに在る陰謀を、想像する自由だけは残されていた。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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