香美脆味! 天然ウナギの襲撃

     青年の入ったショッピングモールの特産品コーナーは大賑わいだ。
     こうして各地のご当地メニュー漁るのが、旅行好きな彼の大きな楽しみなのだ。
     そんな彼が今回の旅行先である静岡で探しているのは、養殖ウナギのうな重だ。
     さすがに天然モノには手は出ないが、そこは我慢。
    「すいませーん、これお願いしまーす」
    「はい、毎度ありがとうございまーす」
     さっそくうな重を見つけてレジに持って行く青年。
     そこで、青年は不審な顔をする。
     レジに表示された金額が、不自然に高いのだ。
    「あのこれ、間違ってない? 料金高すぎるでしょ?」
     そう言ってレジ係の顔を見上げた青年は、思わずぎょっとなる。
     目深にかぶった帽子の、その奥の瞳が爛々と輝いている。
    「間違ってるのはお前のほうだーーーーッ!!」
    「うっひゃあああ!?」
     叫ぶなり、レジ係の姿がぐにゃりと崩れた。
    「うな重を食べるのに養殖モノとはどういう了見だ! 天然モノ以外許さんぞ!」
     ぬめりを帯びた細長いシルエットが、不気味に青年の上に覆いかぶさっていく――。
    「はー……今回はなんか、ろくでもない怪人が出てきたみたい」
     一行が集まった教室の教壇に立ったエクスブレイン、須藤・まりん(すどう・-)はなんだか不機嫌な様子だ。
    「今回の敵は、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)さんからの報告で所在が明らかになったご当地怪人・ブラックイールだよ」
     なんでも今回の怪人は、養殖ウナギを相当に嫌っているらしく、養殖ウナギ料理を注文した人に無理やり高額な天然うなぎを押し付けてくるようだ。
    「まったく、高いものを無理やり押し付けてくるなんて! 庶民の懐事情も考えてほしいよ、まったくもー!」
     ぷんぷん怒りながら、まりんは説明を続ける。
    「今回の敵は駅ビルの中の名産品コーナーに現れるみたい。そこで養殖ウナギを買おうとしてる人に、無理やり天然うなぎを押し付けるようだよ」
     どうやら怪人はレジ係になり済ましており、養殖ウナギのうな重を持ってきた客に襲いかかるようだ。
    「それ以外の商品を持っていっても正体を現すことはないってあたり、妙に律義だよね……」
     次いでまりんは、怪人の戦闘能力の説明を始めた。
    「ご当地怪人ブラックイールは、まあなんというかそのまんま、手足の生えた大きなウナギの姿をした怪人だよ。殴る蹴るのほか、長い胴体を鞭のように使った打撃攻撃が得意みたい。この攻撃はリーチが長いうえに複数の標的を巻き込めるから注意して」
     加えて、ブラックイールの身体はウナギと同じように細長く、俊敏に動ける。
     攻撃を素早くよけられるというだけでなく、狭い物陰にも隠れることができるため、死角からの攻撃にも警戒する必要がある。
     またブラックイールの体の表面は本物のウナギのようにぬるぬるしているため、掴む、縛るといった手段は効果的ではない。
     何か別の手段を考える必要がありそうだ。
    「ブラックイールは奥の手を持っていて、瀕死状態になると電気ウナギみたいに体を帯電させて電撃攻撃をしかけてくるよ。この攻撃は広範囲を一気に攻撃できるうえに見てからよけるのは難しいだろうね。うまく対処して!」
    「高級品を無理やり押し付けてくるなんて、庶民の敵だよ敵! ……まあたまには贅沢したいけどさー。とにかく、養殖でもいいものはいいってことを庶民代表としてキッチリ教えてあげてよね!」


    参加者
    橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)
    裏方・クロエ(アエグルン・d02109)
    氷上・蓮(白面・d03869)
    遠野・潮(悪喰・d10447)
    雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574)
    靱乃・蜜花(信濃の花・d14129)
    桜・泉(陽の下の暗殺者・d26609)
    ヨルドバリ・ハルリヨン(シュレティンガーヒーロー・d30779)

    ■リプレイ

     ここ、静岡のショッピングモールの特産品コーナーは、今日もたくさんの旅行客で賑わっている。
     特に人気なのは、今が旬のうな重だ。
    「養殖ものと天然ものかあ……。中学生の懐事情的にも、僕は安くていっぱい食べれる方がいいなあ……」
     小動物っぽい印象の少年、橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)がそうつぶやくのに、ゆるく髪を編んだ少女、裏方・クロエ(アエグルン・d02109)が同意する。
    「そだよねー。たしかに天然ものは美味しいし貴重なんだろうけどさ……ところで蓮、さっきからきになってたんだけどその寝袋なに?」
    「うー……意外に、重かった」
    「へへ、張り切って作ったからな。ウナギの習性から調べて作ったんだぜ、これ!」
     ぼんやりした口調の氷上・蓮(白面・d03869)と、得意気に笑うゴム長、ゴム手袋姿の遠野・潮(悪喰・d10447)が二人がかりで運んできたのは、寝袋を改造して作ったウナギ捕獲用の罠らしい。
    「どれどれ、ちょっと拝見……」
     罠の中をのぞき込んだ雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574)が、感嘆の声を上げた。
    「おお……これは素晴らしい、手作りとは思えないほどの出来だ。これならダークネスといえどもひとたまりもなく捕獲できるだろう。……ふふふ、そしてそのあとは美味しく頂いてやる!」
    「えっと……ほんとに食べるつもりですか……?」
     とかやっている横では、靱乃・蜜花(信濃の花・d14129)が元気にはしゃいでいる。
    「ウナギ! 栄養満点で美味しいのね! かば焼き白焼き肝吸いせいろ蒸しからひつまぶしまでお料理の幅も広いのよーっ」
    「そう! 天然でも養殖でもウナギはウナギ! いくら良いものだとしても、押し付けてしまってはせっかくの鰻が台無しというものです」
     怒りを露わにしているのは、ショートカットの少女、桜・泉(陽の下の暗殺者・d26609)。
    「ねえ、泉」
    「ん? なんです? ハルリヨン先輩」
    「養殖物と天然物、一緒にレジに持って行ったらどんな対応してくれるかなっ。やってみたいな。やってみていいかな。ねっ、ねっ?」
    「そんなのダメですっ!」
    「ちぇー」
     泉に怒られてしゅんとしているのは、ヨルドバリ・ハルリヨン(シュレティンガーヒーロー・d30779)。
     この8名が、今回の事件の解決のために集まった灼滅者たちだ。
    「さて……もういるんだよね、怪人……」
     クロエがそれとなく視線を向けるのは、特産品コーナーのレジだ。
     5箇所あるレジのどれかに、ご当地怪人ブラックイールが潜んでいるのだ。
     幸いにして、まだ騒ぎが起こる気配はない。
    「えっと、レジに養殖もののうな重持っていけばいいんですよね?」
    「ちょっと待った、その前にコレだ!」
     潮が、持参してきた寝袋トラップを示す。
    「えっと、そうですね、準備万端にしてからレジに行ったほうがいいと思います」
    「じゃあ、どこに置こうか。目立たないところがいいよね……」
     言いながら、蓮がずるずると寝袋を棚の影に引きずっていく。
    「あとは人払いですね。無用の混乱を避けるため、レジにうな重を持っていった直後にしましょう」
    「避難誘導は蜜花に任せるのよ!」
     慎重にあたりを見回す泉と、元気に声を上げる蜜花。
    「そんじゃ、行ってくっかな」
     準備を終えた仲間たちに背を向けて、潮が気楽な足取りで養殖うなぎのうな重を持ってレジに向かった。一行の間に緊張が走る。
     「あ、これ養殖鰻だけど……天然とそんな差がねぇから良いや、店員さんお会計シクヨロー」
     そう潮が口にすると、その隣のレジ係の手がピタリと止まった。
     瞬間吹き出す、圧倒的な邪気!
    「なーにがシクヨロだ天然うなぎを食えーーーーッ!!」
    「うっひゃあああ!!?」
     怒声とともにレジ係の姿がぐにゃりと崩れ、ぬめりを帯びた長大な姿を露わにする。
     ご当地怪人・ブラックイールだ!
    「出たな怪人! 天然うなぎなんて高級品にそうそう手が出せるかってーの!!」
     思わず悲鳴を上げて後ずさってしまった潮だが、庶民の想いを込めて塵殺領域を放つ。
    「美味しく頂いてあげるんだから!」
     同時にクロエが、低い姿勢から足払い気味のレガリアスサイクロン!
     2人のタイミングぴったりの同時攻撃は、正確にブラックイールを捉えている。
     しかし!
    「甘い! 甘いぞお!」
     ブラックイールは長大な体をぐにゃぐにゃと曲げ、二人の攻撃を回避!
     そのまま体をたわめ、ムチのように叩きつける!
    「うぉっ!」
    「くぅっ!」
     攻撃直後の隙を衝かれて防御が間に合わなかった2人は、攻撃をまともに食らってしまう。
    「避難が終わるまで、なんとか動きを止めてなのよ!」
     一般人の避難には、蜜花と泉が向かった。
     蜜花が王者の風で一般人を誘導しつつ、泉が殺界形成で戦場となった特産品コーナーから一般人を引き離す。
    「さあ皆さん、落ち着いて、でも急いで避難してください!」
     そう泉が声を上げる中、ブラックイールは毒蛇のようにもたげ、攻撃のスキをうかがっている。
    「えっと、まずは動きを止めなきゃですね……「御許に仕える事を赦したまえ……!」
     跪き、祈りを捧げるかのようなポーズをとった瞬兵の周囲に、無数の護符が舞う。
    「行きます、五星結界符っ!」
     逃げまわるブラックイールを、必死に狙う瞬兵だが、その細長い体は不規則な軌道を描き、なかなか捉えられない。
    「逃げちゃ、ダメよ?」
     瞬兵の方に注意を向けていたブラックイールは、死角に回りこんでいた蓮の存在にようやく気づく。しかしもう遅い!
    「ぐわあっ!?」
     防御する間もなく、閃光百裂拳をまともに食らったブラックイールは、回避したはずの五星結界符の射線に強引に押し込まれる。
    「ぐぬぬっ、身動きが……!」
     全身に護符を貼り付けられたブラックイールの動きは明らかに鈍っている。
     チャンスだ!
    「この機、逃すものか!」
     横薙ぎに振りぬかれた直人の雲耀剣が、身を躱しそこなったブラックイールの胴体を捉える!
     吹っ飛んだブラックイールは陳列棚に叩きつけられた。
     追撃をくわえるべく駆け寄る直人だが、そこにはバラバラに砕けた棚と散らばった商品しかない。
    「くそ! 逃げられたか、どこだ!」
     直人が声を上げるのと、避難している一般人の天井のダクトの金網が外れるのがほぼ同時!
     長大な体がのたうち、上から叩きつけられる。
    「させないっ、のよ!」
     とっさにクルセイドソードを構えてガードする蜜花だが、一撃が重い。
     両足を踏ん張る間もなく、数メートルを吹き飛ばされる。
    「おおっと、危ない危ない……」
     横合いから走りこんできたヨルドバリが、牽制にマジックミサイルを連射しつつ攻撃を受けた蜜花に駆け寄り助け起こす。
    「蜜花ちゃん、だいじょぶ?」
    「うん、わたしは平気! それより敵、敵っ!」
     天井のダクトから這い出したブラックイールは、泉がなんとか押しとどめている。
     しかし、劣勢なのは明らかだ。
    「早く! 避難を!」
     肩越しに一般人の列に声をかけながら、ブラックイールの攻撃をなんとか凌ぐ泉。
    「逃がすものか!」
     ぶんっと風を切り、泉に襲いかかるブラックイールの尻尾。
     飛び退って避けようとするが、ブラックイールは尻尾を柱に引っ掛け、死角から攻撃!
    「きゃうっ!」
     意識の向いていなかった背中側からの攻撃を受け、泉はその場に倒れてしまう。
     その泉を、走ってきたクロエが素早く抱き起こし、後衛へと下がった。
    「す、すいません、助かりました……はっ、避難の方は!?」
    「なんとか全員逃げられたみたい。泉と蜜花が踏ん張ってくれたおかげだよ!」
     クロエのウインクに、泉もほっと安堵の息をつく。
     しかし、安心してばかりはいられない。
     避難が終わり全員が敵への攻撃に回ることができるようになったとはいえ、ブラックイールのダメージはまだ少ない。
     それに加えて、他の敵にはないあの長大な体を活かした回避と攻撃の繰り返しはやっかいだ。
    「どうにかして動きを止める必要があるな……」
     言いつつ、潮はフロアの片隅においた寝袋トラップにちらりと視線をやる。
     うまくあのトラップに誘いこむことができれば、動きを止めることが出来そうだ。
    「……イキがいいのはけっこうだが、逃げられてしまっては元も子もないからな。なんとかして罠の方にヤツを誘導しなくては」
    「戦闘中にミーティングとは、余裕じゃあないか!」
     ブラックイールの胴体が、唸りを上げて迫る!
    「そう何度もふっとばされたりしないのよ!」
     迫る胴体に真っ向から突進した蜜花が、マテリアルロッドをバットのように振りかぶる!
    「どおおっせーい!!」
     気合一発、ロッドを叩きつけると同時にフォースブレイク!
     一瞬の拮抗状態から、ふっとばされたのはブラックイールの方だ。
     さらに、ふっとばされたブラックイールを、瞬兵の放った五星結界符が追いかける。
     攻撃を食らった直後の無防備な姿勢では避けることも出来ない。
     重ねがけを食らったブラックイールの尻尾が、力なくびちびちとタイルを叩く。
    「これだけ動きが鈍れば、的当ても簡単だよね」
     体を引きずるようにしてその場から離れようとしているブラックイールの逃げ場を塞ぐように、ヨルドバリがオーラキャノンを連射。
    「ぐぐぐ……ひとまずどこかに逃げ込まねば!」
     爆煙の中首を巡らせるブラックイールの目に、身を隠すのにちょうど良さそうな寝袋が飛び込んできた。
     いや、通気口や通風口ならともかく、寝袋に逃げ込んだところで身動きがとれなくなるだけだ。
     しかし、ウナギとしての本能が、あれは明らかに罠だと叫ぶ戦術的判断を上回りつつある。
    「ああっ、そこに狭い穴があるのなら、入らざるをえない! ウナギとして!!」
     にゅるん。
    「……(ぢ~~~)」
     ブラックイールが寝袋に入ったのを確認した連がすたすた歩いて行き、無情に寝袋のジッパーを閉める。
    「……(つんつん)」
    「どう? どう? うまくいった?」
     恐る恐る尋ねるヨルドバリに、蓮は無言でサムズアップ。
    「ふふん……強敵には違いないが、やはりウナギとしての本能には逆らえなかったようだな。お前を料理したら……さぞでかい蒲焼きができることだろうなじゅるり……」
    「えっと、直人さん、その、よだれが……あと顔が怖い……」
     もはや食欲を隠そうともせずじりじりとのたうち回る寝袋に迫る直人に、瞬兵はちょっと涙目。
    「よっしゃ! まんまと引っかかりやがった! ねえどんな気持ち? あんな見え透いた罠にかかってどんな気持ち?」
     ここぞとばかりに奇っ怪なステップを踏みながら煽りまくる潮。
     身動きを奪って一斉にタコ殴りという正義のヒーローとしてはかなり不適切な戦法ではあるが、一行は割とノリノリだ。
     しかし……。
     最初に異常を察したのはヨルドバリだった。
     寝袋が、帯電している――!
    「みんな、離れ……!!」
     そう叫ぶのと、寝袋が内側から爆発するようにはじけ飛ぶのがほぼ同時!
    「お前らいーかげんにしろーーーーーッ!!」
     怒号とともに放たれたのは、強烈な電撃だ!
     寝袋を突き破って現れたブラックイールの全身は、帯電してまばゆく光っている。
    「うおっ、とうとう奥の手出しやがった!」
    「……ってことは、向こうももうあとがないってこと、だよね?」
    「違いない。一気に畳み掛けて、蒲焼きにしてやるとしよう。まずはさばいてやる!」
     言うが早いか、直人が居合斬りで斬りかかる。
    「さばき終わったら、次は串打ちですよね。というわけで、串の代わりに杭をどうぞっ!」
     続けてジャンプして跳びかかった泉が、バベルブレイカーの痛烈な一撃を見舞う。
     ブラックイールはかなり回避能力が落ちているせいか、それらの攻撃をまともに受けてしまう。
     のたうちまわりながら後ずさるブラクイールをさらに追い詰めようと、間合いを詰める二人。
     と、突然ブラックイールの全身がまばゆく発光した! 電撃だ!
     避ける間もない広範囲への電撃をまともに喰らい、たまらずその場に倒れる直人と泉。
     メディック担当のヨルドバリが慌てて駆け寄る。
    「奥の手だけあって、ダメージも深刻そうだね、いったん後ろに下がって」
    「くそ、不覚を取った……!」
    「でも、ダメージが深刻なのは向こうも同じです、もう少し!」
     泉の言うとおり、ブラックイールの方もダメージが重なってきているのは明らかだ。
    「ここでヨルドバリおねーさんの豆知識の時間だよ! 実は電気ウナギは食用ウナギと違って電気ウナギ属にふんぎゃーっ!」
     無意味にうんちくを語り始めて電撃に撃たれるヨルドバリ。
     ともあれ、ここで一気に攻め込めば倒せるはず!
    「よーっし! 捌いて串打ちも終わったら、お次はダイナミックはお休みして、うなぎ丸焼きレーヴァテインなのよ!」
     蜜花が振り上げた両腕から、炎の帯がほとばしる!
    「こんがり焼いちゃうよ!」
     さらにそこに、クロエのグラインドファイアが加わった。
    「ぐわあああ! 燃える、萌えてしまう……!」
     炎に巻かれたブラッックイールは、苦悶のうめきをあげる。
     しかし、まだ倒れない!
     うめき声とともに、電撃をそこら中にまきちらし始めた。
    「こ、このまま放置してたら大変なことになっちゃいます!」
     柱の陰で電撃をやり過ごしていた瞬兵が慎重にタイミングをうかがい、飛び出した。
    「これで……!!」
     撒き散らされる電撃の僅かな隙間を縫って放たれた神薙刃が、炎の中のブラックイールを斬り刻む。
    「ぐお……おおおお……おお……」
     収まっていく炎とともに、ブラックイールの断末魔も次第に小さくなっていく。
     炎が完全に収まった時には、もうそこには消し炭しか残っていなかった。
    「えっと、や、やった……?」
    「うん、なんとか倒したみたいだね……しかし、これは……」
     肩を上下させながらまだ構えを崩さない瞬兵の頭を、クロエがぽんと叩く。
     見回してみると、特産品売り場はかなりの惨状だ。
    「おべんとの前に、おかたづけ……かな」
     蓮は相変わらずぼーっとした表情をしているが、心なしか残念そうだ。
    「むむむ……やはり消し炭しか残っていない……なあ、もう少し手加減できなかったのか?」
    「むー。そんなこと言ってると、ゴミと一緒にぽいぽいしちゃうのよ」
     文句を言う直人を睨みつける蜜花。
    「というか直人さん、ほんとに食べる気だったんだ……」
     釈然としない様子の直人に、泉も呆れ顔だ。
     そんな直人に、潮は笑ってみせる。
    「まあ気ぃ落とすなって。さっさと片付けて弁当買ってこようぜ」
    「そうそう、美味しいお食事にありつくためにも、まずは片付けを……」
     そう言いかけたヨルドバリのお腹が、きゅーっと悲鳴を上げる。
     戦いの後に、笑い声がはじけた。 

    作者:神室樹麟太郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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