芸術発表会2014~君を飾るいろどり

    作者:菖蒲

    ●『芸術発表会』
     秋――それは様々な可能性を秘めた季節だ。
    「食欲、スポーツ、読書……それから、芸術の秋よね!」
     金の眸を煌めかせた不破・真鶴(中学生エクスブレイン・dn0213)は大仰に頷いた。
     武蔵坂学園の秋を彩るのは芸術発表会。
     11月21日に開かれる一大イベントに向けて11月初頭から準備が始められるのだと真鶴はスケジュール帳を開いてカレンダーを指差す。
    「11月の頭から……ほら、芸術科目の授業と、特別学習の授業の殆どが芸術発表会の準備に当てられるし、ホームルームや部活動も芸術発表向けの特別活動に変更されてるの」
     勿論、次週の授業が増えて教師人も楽だとか、出席を取らない授業が多くて楽だとか……そんな不届き者が居ない訳でもない。だが、多くの学生はこの秋の一大イベントに青春を捧げているのだろう。
    「武蔵坂の芸術発表会ってすごいのね。部門は8つ。対外的にも高い評価を得てるらしいの。マナ、ちょっと見てきたんだけどね、PTA向けパンフレットにも大きく紹介されてるし、兎に角、学校をあげてのイベントなのね! 緊張する!」
     きゃあ、と声を上げながら真鶴が提示した芸術発表会の部門は8つ。
    『創作料理』『詩』『創作ダンス』『人物画』『書道』『器楽』『服飾』『総合芸術』
     芸術発表会に参加する学生は、これらの芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげるのだ。
    「優秀者を決定する11月21日に向けて、みんなで頑張りましょうね?」

     芸術発表会。それは、武蔵坂学園の秋の風物詩であった。
     
    ●fashion show
    「ファッションショー?」
    「そう、みんなはお洋服は好き? マナは大好きなの。
     フリル沢山のドレスも素敵だしスラッとスーツを着こなすのだってカッコいい!
     お着物だって良いわね。小物を合わせるのだってアレンジが利いててとっても良いと思うのジャージも着こなしによっては……」
     芸術発表会とは何ぞやと書かれたプリントを手にした『君』と編入したての海島・汐(高校生殺人鬼・dn0214)へと説明する真鶴の意識はどうやら『マナの好きなお洋服』に向いてしまっているようだ。
     頬を掻き「それで、ファッションショーって?」と困り笑顔で聞き返す汐と『君』へと真鶴は思い出したように頷く。
    「芸術発表会の部門の一つ『服飾』でね、ファッションショーをするの。
     テーマは自由! 自分らしさをアピールする事が勝機――なのだそうだわ」
     恋人同士、親友同士でおそろいの衣装を着るのも良いだろうし、クラスメイトと相談して作るのだって良い。「似合う衣装を作ってやるよ」と本番まで秘密にするサプライズなんてのもありだと真鶴は汐へと提案する。
    「で、それにマナは出るんだ? 俺はどの部門にいこうかな……」
    「芸術発表会は8つの部門があるものね。創作料理、ポエム、創作ダンス、人物画、書道、器楽、服飾、総合芸術――って違うもん。ファッションショーしましょうよ?」
     がたり、と立ち上がり「ね?」と念を押す真鶴に仰け反った汐が無言でコクコクと頷く。
    「きっと素敵だと思うの。気合十分な衣装を作ったりとか、ちょっと面白いコミカルな衣装を着たりとか、作る過程も立派な芸術だとおもうの」
    『君』と汐に向けて笑顔を向けた真鶴。汐は『君』に対して何処か困った様に笑った。
    「『自分らしい』衣装か……グランプリ狙うなら気合入ってんだろうなぁ。不器用な俺でも何か出来るかもしれないし、やってみようかと思うけど……お前はどうする?」
    「何をするか決まらなかったら一緒にファッションショーに参加しましょ?
     こういうのってやっぱり沢山の人が居た方が楽しいと思うの! 秋の記念だものね?」
     気が向いたらどうぞ、と手製のチラシを差し出した真鶴に『君』は……。


    ■リプレイ


     11月の冴え冴えしい空気の中、武蔵坂学園の学生たちは胸の高鳴りを感じていた。
    「服飾部門に出たいんやけど……助けてくれへんかな?」
     頷く遥斗の意図は『鈴鹿の衣装作り』のお手伝い。作るフリルたっぷりの王子様衣装。ふと、遥斗は「んー、何度見てもこの図面の数字違うんだよなー」と囁いた。
    「でもこれじゃ遥斗くん着れへんよ……?」
    「え? これ、鈴鹿さんのじゃなかったの?」
     なんて、可愛いから着れると励ます声に恥ずかしげに鈴鹿は頷いた。
     ゲーム友達に「君の好きなモノを出せばいい」と言われた鉄弘はツギハギとぬいぐるみを使い、深緑を基調としたカラフルなタキシードと、お揃いの衣装を来たぬいぐるみを準備して「頑張るッス!」と元気良く頷いた。
    「由希奈さん可愛いんですから、それを活かして少し派手目に……桐香さんは美人さんですから、シックなのがいいと思います」
     てきぱきと作るいちごが用意したのは由希奈にはいちごのステージ衣装にも似た露出度高めのパンク風。桐香にはシックなナイトドレス。
     露出度が高いと顔を赤らめる由希奈に対し、ドレスに嬉しそうに笑みを浮かべた桐香の反応は対照的だ。
     折角彼が用意してくれたものだから、一番に見て欲しいのは乙女心。
    「ねぇ、似合ってる?」「さぁ、ご感想は?」
     ドレスの裾を掴んだ桐香にくるりと一回転した由希奈。いちごは「とても似合ってますよ♪」と何時もと変わらぬ笑みを向けた。
     ファッションには疎いけれど、学園生活の思い出を何か一つでもと考える羽衣の力になれればとこの場を共にする蒼夜は楽しげな彼女につい、くすりと笑みを浮かべた。
    「ね、ね、どれがいいと思いますか?」
     繊細なレースが美しいAライン、気品あるマーメイドに愛らしいプリンセスライン。デザインと羽衣を見比べて、蒼夜は似たデザインの布地を彼女の肩にかけてみる。
    「和風だから体のラインが分かる方が綺麗だな 東雲が着るのだろう?」
     衣装を作るのが楽しかっただけ、とも言えずその所作に驚きを隠せない羽衣は瞬いた。
    「良く似合ってるし、誰よりも綺麗だから大丈夫。俺で良ければエスコートするから」
     ふんわりと笑った蒼夜の励ましに何度も瞬いた羽衣は頑張ろうと何処か緊張した様に頷いた。
     服飾部門のファッションショーに出るのは何も灼滅者達だけではない。
     葉が用意したのは来年の干支をイメージした羊の服。らいもんの頭に蜜柑を飾れば、次はクロ助の番だ。クロ助は今年の干支の黒毛馬。首元に注連飾りを結んでキリッと演出される。最後に結理の用意したプレート――迷子札をセットして完成だ。
     クロ助を兄の様に慕っているらいもんと、尻尾をパタパタ瞳を輝かせるクロ助が「ありがとう」を顕す様に鼻先をぺろり。クロ助の舐める攻撃を避けた実の鼻先に短いらいもんの舌先があたる。
     かわいい、としきりに頷く彼に貫はらいもんを撫でて小さく笑う。ぺしぺしと尻尾を揺らすクロ助に眸を輝かせるらいもん。色んな角度から、とパシャパシャと取り続ける結理の許へ御礼のぺろぺろを持ってきた所も一つ、激写。
    「……普段オシャレとかさせてやれないから、付き合ってくれて、ありがとな、皆」
     きょとん、と貫を見返した実、結理、葉。貫は真顔で、一つ。
    「後で写真ください」
     一方で、璃依はナノナノからライドキャリバーへと趣旨変えしたばかり。いまいち愛らしく見えないその外見に正直愛着を持てずに居る。
    (「人は見た目が9割って言うしさ、……うん、可愛くしてやろー」)
     璃依のお古を繋ぎ合せて出来上がる段フリルにレースとリボンをあしらったロリータドレス。
    「か、可愛い……! オマエの名前は今日から「ふりる」にしよう。可愛いだろ。気に入ったか?」
     ぶおん……。


     司と麒麟の恒例のテスト勝負と罰ゲーム。今回はファッションショーで司の指定した服を麒麟が着ることになったようだ。
    「そうだなぁ、セクシー系とかどう?」
    「……きりんのそんなに大きくないよ?」
     瞬く麒麟に一瞬反応の遅れる司。そう言われると意識しちゃうのは男の子だから。ぎこちなく視線を泳がせながら二人の共同制作のための採寸でふと思い立ったように麒麟はぽつりと告げた。
    「あ、ええと……、サイズは内緒にしてね」
     【cross≒dresser】の面々の共通のテーマは和装。華琳の衣装を作成する娘子は現代風味の男装を彼女へと誂えた。「和装と言えば武家や公家かと」と思わず悩ましげに告げる華琳に娘子が可笑しそうに笑う。 
    「武家や公家って流石にそれじゃ今の日本は歩けねぇよ」
    「へえ……公家の束帯なんか、唐宋代の服装によく似ている。チャイナドレスは中国を征服した満洲族の服装に洋装の文化を取り入れて発展した服装だよ」
     着付けの中、蘊蓄を言う華琳に娘子は「国が違えば成り立ちも考えてしまうのかな」とぼんやりと考えた。
     一方で、るんるん気分の瑞央に和装ドレスを手渡すアリアーン。セクシーな雰囲気を与えるコルセット付き和風ドレスは可愛らしい瑞央にぴったりだ。
    「……キツかったら緩めるから言ってねー……」
    「……そこまでキツクは……ない、かな? ふふっ、セクシーさ、出てる……でしょうか?」
     儚げな彼がくるりと回る。カッコいい女子と可愛い男子、服の着方は人それぞれだ。
    「赤や緑がそれっぽいかな……」
     悩ましげなましろ。美夜との共通テーマは『クリスマスデート』。サンタ風の衣装を用意する美夜は白い小物を使用して雪を演出。ニット帽とショールの深紅とは対照的なタイツとベルトの黒が美夜のクールさを演出していた。
    「美夜ちゃんがサンタなら、わたしはクリスマスツリー風かな?」
    「それなら雪のブローチ付けてみたら? 小さめのロールボストンバックをリボンで飾って……」
     プレゼントボックス風に。翠のチェックスカートに白いニット、茶色のブーツに素敵なアクセント。眸を輝かせる気合十分なましろは「ショーの前に写真撮りたいなぁ」と美夜をちらりと見やった。


     亘は、愕然としていた。用意された愛らしいニットセーター。今年の流行を取り入れた部屋着スタイルは亘に桜海老カラーを。夜好に白の揃いで用意されていた。『男の娘』センスの衣装を手ににじり寄られ「ダメ」「やめて」「それはっ」と声を上げる亘――しかし、夜好による化粧(まほう)を受ければ、それも変わる。
    「これが、あたし……?」
     常に新しいものに挑戦を。十織が出したテーマは『優しさへの挑戦』――作り合い相手の円理はどうやら違う認識。
    「とーちゃん服のコンセプトはずばり『世界最強無精』! 九紡様にはピンクのポンチョを」
    「エリーには肉食系なツナギを用意した……ってなんだこのやっつけ感! 動けな……」
    「獲物を狩れって事か…では、御覚悟を!」
     本番待ち。緊張した様に肩を強張らせる和弥へと折角だとマーケティングの意味も込めて衣装を作った玉は真鶴や汐に意見を求めてみる。
    「私に合わせて貰って合気道着です。一番のポイントは可愛さと力の両立」
    「売ってたら欲しい?」
     アピールポイントを振り返る和弥の声を聞きながら真鶴は「若桜さん、強そう……」と肩を竦める。袖に隠される銅糸、編み込んだ解体ナイフ。不意の戦闘にも対応可能な灼滅者使用が玉のショップに並ぶ日も近いかも?

    「例え出オチと言われても! 印象に残らなければ勝利は掴めませんっ!」
     驚愕。カーニバル衣装と和を複合したゆいなの衣装は何とも前衛的だ。硝子の簪も可愛らしく、赤い和傘を揺らす彼女は何時もと変わらぬ愛らしい笑顔で観客を魅了する。
    「喰らえ、ゆいなちゃんスマーイルッ!」
     こちらもアレンジを加えた着物。電飾に飾られた深緑に赤の帯が蝶々結びで添えられる。襟巻だって雪を思わせるふかふかぶりだ。サンディの煌めく髪を飾る柊の実に誰かが「クリスマス!」と頷く。
    「日本が大好きデスから、来る聖夜、ひいては確かな未来に期待して……」
     一方で、『絢爛夜桜』をテーマにした桜依の花魁衣装は豪華その物。白の長襦袢の上に桃色、そして紫を重ねた桜依は髪型だって変化させて、普段とは様変わり。
    「ポイントは鎖骨が見える程度で肌蹴させない様に着ること……でしょうか? 真鶴ちゃん、この衣装おかしくありませんか?」
    「とっても素敵よ、和泉さん」
     可愛らしいアップリケ付きエプロンに早着替え。夏菜とライドキャリバーのクロによるパフォーマンスはなんとも愛らしい。夏菜がクロ、クロが夏菜の顔入りエプロンを身につけてポージング。
    「エプロンに好きな絵を縫うだけだから、誰でも簡単に可愛いエプロンが作れるわ。皆も一緒にどうかしら?」
     灼滅者になる前から大好きだった衣装作り。スパイダー・リリーの刺繍の黒のロングセーターを用意したリリーはウインク一つ。ボディラインがはっきり出る衣装でも、リリーにとっては日頃から鍛えた体なのだから、自信はたっぷり、堂々と。
     【ファッション研究会】の三人のテーマは「Candy Pop」。くるみとさやか、結月の三人は愛らしいコスチュームに身を包んだ。
    「あまぁいおんなのこはいかが?」
     照れ臭そうなくるみのキャンディ柄のTシャツと螺旋を描くペロペロキャンディのスカートが甘い少女を演出している。マスカット味のチューブトップ、クランベリーのジャケットの結月がウィンクひとつ。
    「カラフルで甘く、そして楽しくなっちゃうの♪」
     白と水色の童話の少女。キャンディを思わすリボンを全体に。さやかはエクステで伸ばした髪を揺らしてへらりと笑う。
     笑顔を浮かべた三人はぎゅ、と手を繋ぎ観客に向かってぺこりと頭を下げた。
     ドレスを飾るアンティークキーを揺らした玉緒は冗談めかして唇を尖らせた。
    「テーマは『心を開くカギは何処?』――なんてね」
     動きに合わせてシャラリシャラリと鳴るドレスを揺らしながら、プレッシャーにも挫けずに玉緒は前を見て笑う。素敵な衣装を誇らずにはいられない。堂々と前へ進む以外はないと胸を張って。
     テーマは冬のデート服。シェリーと七狼は仲良くステージ上へ。乙女らしいシフォンのブラウスを着たシェリーの手を取る七狼の胸元で白銀月のラベルピンがきらりと光る。
    「有難うシェリー、とても素敵な服だったよ。今度この服で本当のデートをしよう」
     耳元でささやかれた言葉の温かさは唇の端に笑みを乗せて。


      ミノムシを思わすケープを纏った睦月はステージ上でばさりとそれを翻す。裏の色彩豊かな鱗を思わす衣装は睦月が親、姉、クラブの仲間に聞いてみて、気付いた自分の性格。大人しそうな自分が元気にはしゃぐそんな姿。
    「……今度は日本のものを着てみようかしら?」
     大正浪漫な女学生、ビアンカの髪はポニーテールに纏められている。和傘を手に登場した彼女の手には――……。
    「待った!」
     思わず合間に入る汐。兵器(おかし)を仕舞いこんでビアンカは「ダメ?」とこてんと首を傾げた。
     きらりと揃いの指輪を光らせた蒼猫想希と黒猫悟。掛け合う様に実況するもっふりにゃんこパジャマの温かさに想希がほっこり。
    「想希~~って、わ、阿呆!」
    「ほら、動き易さは実証済み。この冬も最高に暖かい」
     抱え上げて急接近。擦り寄る暖かさに幸せそうに笑う悟が「愛しとるで」と囁けば、頬に落ちたのは同じ気持ち。
     テーマは『砂海』。アクセはたっぷりのベルトとピアスで大胆に。多目のポケットだって嬉しい所。
    「お洒落さはもちろん、普段使いと実用性も重視。男のセーラーだって可愛いんだぜ。砂漠は砂の海、防塵対策はばっちりしつつ動きを制限しない灼滅者仕様!」
     円のセーラー服の襟がひらりと揺れる。服作りは体力勝負。しっかりチェックした出来栄えをご覧あれ。
    「がぅーっ!」
     晴れの舞台へときぐるみ作りで培った裁縫技術を発揮する毬衣が吼える。何時もとちょっと違うのは四足歩行しやすい様に構造を工夫した所。両手両足の底を分厚くし、前を向き易い様に頭の保持を。
     情勢の変化の中で、イフリート達が、心配や意識をしないで学園に遊びに来てくれればいいのに、と願いを込めて。
     暗転した舞台に設置されたのはトルソー。様々な柄や布のし掛けの発案者である民子がスタートした音楽に合わせ、秀憲が舞台へ踏み出した。
    (「ひゅーさすがに緊張するな。けどみんこの作品を纏うわけだしね。堂々とやってくんよ」)
     夜明け前の青みがかった光りに目覚めを告げる鳥、春の彩を得た服を揺らし、しっかりと化粧をした印象的な目元で観客を見下ろした。バトンタッチしたカンナのイメージは昼。青空に映える黄金の光りと獣たちの躍動、砂と大地の生命力を得た服はカンナのゴールドの唇に浮かんだ笑みからも獣の気配を感じさせる。
    (「折角の作品、最高に見せたいもの」)
     允は夕闇の赤と静かな夜の青と虫の声、満天の星空と宇宙から色を得た服を纏い前へ前へと進んでいく。
    「マジックアワー、ブルーアワーときて夜に変わる。一日の内で俺が一番好きな時間だな」
     舞台上に最後残されたトルソーは人ではない自然を思わせる。全ての風景からイメージを民子は唇に言葉を乗せた。
    「テーマは『All art is but imitation of nature.』。あたしは、貴方を彩る為に!」
     造花で縁取るドレスはヒーローの軌跡を。ボディペイントの花と紋章で思い出を描いて。煉火は普段の証(めがね)を外して舞台の上に。
    「誰かを救う次は、誰かを幸せにしたい。服飾の道を目指す正式な第一歩にしてみせるよ!」
     野咲いちごの纏うミニワンピースのテーマは花×少女。ガーゼ生地で作ったミニワンピに毀れんばかりの花を纏って彼女は唇に笑みを乗せる。
    「うう、この花を用意するのにバイト代全部使っちゃったけど……。あたしを彩るのは花の色。一色なんて選べない」
     クオリティにだって妥協できない。女の子は欲張りだから。
     メロが用意したのは珈薫の好きなものをふんだんに使った衣装。カップケーキモチーフでアンティークに。
    「大きめのスプーンを持てば可愛いと思うのーよっ!」
     にんまりと笑うメロに後押しされて舞台に上がる珈薫の手には15時で止まった時計。
    「お菓子の国のお姫様は食いしん坊なんです。でも、ほんとの一番のポイントは」
     好みを思いっきり盛り込んでくれた気持ちが籠って居る所、なんて。

     ほっと一息ついた射干と寂蓮は笑い合う。互いが一番に思えるのはやっぱり、大切な人だから。
    「私はネックレスにしたけど…同じ意匠のものを身につけるとやはり照れるな……」
    「ああ、お揃いの意匠のものを身に付けた事も含めて、思い出だな。
     しかし、十人十色とはよく言ったものだな……皆それぞれに『らしさ』が光っていて素敵だった」
     折角の一日だから、シャッターを切ったその音に、今日の思い出を忘れません様にと思い描いて――。

    作者:菖蒲 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月21日
    難度:簡単
    参加:55人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 1
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