血濡れたキャンバスと、白絵の姫君

    作者:baron

    ●白壁と赤き佳人の絵
    「どうも色がノらないわね、これではお姉さまを表現しきれないわ」
     指先を筆に、赤い染料を白いキャンバスへ塗りこめる。
     だが、そこに正気の者が居れば、違和感に気づくだろう。
     滴る赤い染料は誰かの血であり、白いキャンバスは綺麗に掃き清められた床である。
     言葉の主は、不満げに『パレット』へ向かった。

    「やっぱり素材の統一性が問題なのかしら? 次は若い子だけ……、それとも女の子だけというのが定番かしらね?」
     パレットに向けて尋ねると言う奇怪な動作であるのに、不思議と違和感が生じない。
     それも仕方あるまい、言葉の主が『パレット』と認識しているソレらは、人の形をしていた。
     一様に青い顔をして、赤黒い塊を服に張り付ける……人の世では、死体と呼ぶソレをパレットと認識しているだけなのだ。
     ああ……、少しだけ訂正しよう。
    「味の方にも差があるか試してみたいし、次は兄妹でも選びましょう」
     言葉の主は染料として使うだけでなく、チロリと指先へ舌を這わせて味わっている。
     血潮に口付けすするその存在を、人は絵描きでも食通でも無く……、吸血鬼と呼ぶ。

    ●ゲートと、吸血鬼の復活
    「最近になって、軽井沢の一角で失踪事件が起きている。狭い地域なのに不思議と噂以上にはならないんだが……」
    「ニュースにも警察も動かないとなると変ですね。バベルの鎖……、それもブレイズゲート化ですか?」
     軽井沢の別荘地の一部がブレイズゲートになりました……。
     そう口で言うのは容易いものの、一般的にも灼滅者的にも大ごとである。
     このブレイズゲートの中心となる洋館は、かつて高位のヴァンパイアの所有物であったが、そのヴァンパイアはサイキックアブソーバーの影響で封印され、配下のヴァンパイアも封印されるか消滅するかで全滅したらしい。
     だがその地が、ブレイズゲート化した事で、消滅した筈のヴァンパイア達が、過去から蘇ってしまい再びかつての優雅な暮らしを行うようになった……と推測されている。
    「噂に乗っている事と、灼滅者なら容易く理解できる事を考えて、現れるヴァンパイアは消滅した配下の一人……というレベルだろう。別荘の一つを占拠し、かつての栄華を取り戻そうとしているが、これを阻まねばらん」
    「そっか、ボス格の連中が生きてるならもっと上手くやるもんね」
    「あるいは気にもせず勢力を拡大して、我々も必死で情報を集めているだろうな」
     今ならばまだ、配下の吸血鬼レベル。事件もそう大きくは無い。
     だが、それを放置する訳にはいかないし、放置しておく気もない。
     仮に特別な事件を起こすわけでなくとも、呼び集められた一般人を、気が向いたらという理由で殺すような生活をしている連中を、放置していくわけにはいかないのだから……。
    「奴らはサイキックアブソーバー以前の暮らしを続ける亡霊のような存在だ。亡霊は亡霊のままに、始末を頼む」
     コクリと何人かの灼滅者が頷いた。
     ある者は詳しい話を聞き、ある者は友人たちに連絡を入れる。
     ブレイズゲートと化した、血塗られた屋敷の主人を灼滅する為に……。
    「ここで間違いないのか?」
    「ああ。他は無人か普通の住人だった」
     現地を訪れた灼滅者たちは、調査の末に別荘を特定した。
     そこは湖畔に白壁が映える美しい建物で、中庭を囲む形でL字型になっている。
     念の為に近隣を手分けして調べてみたが、他の別荘はシロ。
     残るはこの建物だけであり……、ソレを裏付けるように不気味な気配が漂ってきた。
     人によっては血の様な……、人によっては絵の具の様な香りと共に。
     運が良い事にまだ生贄を選定している段階らしい、今ならば新しい犠牲を出さずに戦えるだろう……。


    参加者
    佐々木・侑(風・d00288)
    オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232)
    皐月・詩乃(中学生神薙使い・d04795)
    クリスレイド・マリフィアス(魔法使い・d19175)
    高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)
    音森・静瑠(翠音・d23807)
    園城寺・琥珀(叢雲掃ふ科戸風・d28835)
    イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)

    ■リプレイ

    ●白く佇む洋館
    「こんな和やかな所がゲートに……」
     霧の立ちこめる軽井沢、皐月・詩乃(中学生神薙使い・d04795)は絵画でも見るような眼で周囲を見つめた。
     印象画にでもなりそうな程、霧と日差し、そして湖畔の森が美しい。
    「そっと隠れるならともかく、人を殺めるなら……。これ以上の暴虐、許すわけにはゆきません!」
     穏やかな詩乃はダンピール達を思い浮かべ、無用な殺生をする気は無い。
     だが、無駄な殺生を繰り返す吸血鬼ならば容赦はせぬと、唇が赤くなる程に噛み締める。
    「その為にも一刻も早く別荘へ向かわなきゃね。丁度いいし、あの人に聞いてみましょう」
     オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232)は彼女の言葉に頷いた後、整えられた散歩道を降りて行った。
    「すいません、友達に大型犬が逃げたって言われて皆で捕まえに来たんですが、この辺に別荘があります?」
    「湖沿いに古い洋館があったと思うが……、大型犬って大丈夫かね?」
     散歩道に居た老人にオデットが尋ねると、老人は指さして教えてくれる。
    「わたくし達ならワンコと仲良しなので大丈夫ですよ。抱きついて頭からペロペロしてくるのは困りものですけれど」
    「それなら良いが……。もし見つからん時は、特徴を誰かに伝えておくと言い」
     遠ざける為と尋ねる為についた作り話に同意して、園城寺・琥珀(叢雲掃ふ科戸風・d28835)は適当に合わせると。
     苦笑いを浮かべる琥珀に、老人は人の多い場所も教えてくれる。
     立ち去る老人にお礼を言って一同は目的の場所に向かった。
    「抱きついてペロペロ? ワンコいいよねー」
    「オデットさんに話を合わせただけですよ。でもそんな御家族も居たかもです。……日頃の疲れを癒しに来た方々をヴァンパイアの犠牲にするわけにはいきません。ここで確実に仕留めてしまいませんと」
    「これ以上の不幸が起きてしまわぬよう、再び眠りについてもらわなければなりませんね」
     オデットが忍犬を思い浮かべながら微笑むと、対象的に琥珀と詩乃たちはしんみりと犠牲者に思いを寄せる。
     大型犬モフモフは想像するだけで温かく慣れるが、その楽しさを味わえない人も居るのだ。

     不幸を終わりすべく辿りつく。
     辿りついたのは洋館にではない……犠牲者の出る日々が、終わりに辿りついたのである。
    「結界を張りますが、お二人ともよろしいですか?」
    「はっはいっ。亡くなった方の為にもやり遂げましょう。……あと、できれば遺体も傷つけない様にしたいですね」
    「いいですともっ。ぜんぜん問題ないよー」
     湖畔に立つ白い洋館の前で、琥珀は音森・静瑠(翠音・d23807)とイルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)に声を掛ける。
     静瑠がおずおずと提案した処で、イルミアが元気よく同意。
     二人で琥珀を挟みこむようにして、祈りを捧げるが如くに目を閉じた。
     一瞬の空白の後、狭間を通った仲間が感じたのは、耳が痛いほどの静けさである……。

    ●ブラッドバス
    「この臭い……」
     イルミアはドアに手を掛けた所で、ゴクリと唾を呑んだ。
     異臭で何が起きたのかを感じ取り、生来の明るさがほんの少しトーンダウン。
     表情は苦味を帯び、口数は極端に減っていく。
    「ちょっと悪趣味すぎるね」
    「あー、確かに血の臭いだね。倒すのに躊躇う必要が無いのは助かる、今はそう思っておこうよ」
     イルミアが漏らした声は同意を求めていない呟き……。だけれども、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)はあえて合いの手を入れる。
     肩を叩いてホッぺをつんつんやった後、振り向きざまにクッキーを口に放り込んだ。
     そのまま自分も一枚齧りながら、嗅ぎ慣れた臭いに顔をしかめる。
    「これ以上犠牲者が出ないように倒しちゃわないとね……」
    「うん、こういう危険な相手はしっかり殺しておこっか。でないと色々と困りものだものね」
     扉を開けると更に強烈な臭い。違う意味で二人は顔をしかめて口を動かす。
     イルミアが感じたのは不快感から来る苦さで、健康的な反応。だが一葉が感じたのは、随分愉しんだことへの羨ましさを隠す為だ。
     表情を誤魔化し、苦い思いも背徳さも噛み殺して、口に残ったクッキーを飲み込む。
    「(気に障るけど美味しそうにも感じちゃうから、危ないや。やっぱり早く殺しちゃおう)」
     視線を落すと一葉の目に何かを引きずったような跡が見えた。
     何が起きたのか把握しつつ、続き間の部屋の中から最も近くの浴室をまさぐる。一葉がめくりあげたカーテンの向こうからは……。
    「せっかくここまで逃げきったのにね……」
    「……せめて目を閉じさせてあげても良いですか?」
    「異論は無いわよ」
     一葉が見せたのは、バフタブに半分身体を沈めた死体だ。
     暗い顔を沈痛な面持ちに変えた静瑠は、皆を振り向いて時間の浪費を誤った。
     クリスレイド・マリフィアス(魔法使い・d19175)が手早く済ませなさいと告げた時、静瑠は汚れるのも構わずに死体の顔を撫で上にバスタオルを掛けてやった。
    「ホイっ静瑠ちゃんこれ使うてな」
    「あっ、すみません。ハンカチ、洗ってお返しします」
     全て終えた彼女の前に、佐々木・侑(風・d00288)はすれ違いざまにハンカチを手渡した。
     静瑠が目元をぬぐって手をふいて、洗ってお返ししますねとの返事をすると。
    「ええて。終わったら目的の部屋にさっさと移動するで」
     かまへんってと背中で語りつつ、侑は心の中でガッツポーズを決めた。
    「不意打ちだけには気をつけなさいよ」
     クリスレイドはそれに並んで前衛を作り、一同が追いかけ態勢を作り上げる。

     よっしゃポイントゲット!
     と場違いな感動に浸る侑が先頭を突き進むと、更なる幸運が訪れる。
    「おっ、あんたがここの主……さっするに吸血鬼ちゃんやろか?」
    「そうよ。招かれざるお客様たち。それでも歓迎の宴でも開くとしましょう、私はお姉さまから任されております紅緒と申しますの」
     侑の前に居たのは、小さな女の子だ。
     積まれた死体を吟味する姿は、吸血鬼以外の何物でも無かろう。
     滴る血を味わう姿は彼の趣味に合わないが、それでも女の子には違いあるまい。
     紅緒と名乗った少女の衣服が裂けたかと思うと、一瞬後に大人として再構築していた。
     悪い女の子と戦い、仲間の女の子を守る……ある種のハーレムであると気が付き、侑は心の中で再びガッツポーズを決めた。

    ●血戦
    「あらっ、貴方がんばるのね」
    「女の子を守るのは男の勤めってな。……あんま体張るのは性に合わんねんけど悪い気分やない」
     えろう速い……っ!
     戦いが始まって、侑が防御しそこねたのは、決して変身に見惚れていただけでは無い。
     彼の肋を抉ったのは……。
    「この血ぃ動くんかい。随分とけったいやなあ」
    「心をこめてお姉さまを表現してみたの。意志こそないけど、動いて不思議ないでしょう?」
     血で描かれた女性の絵が、侑を叩きのめしたのだ。
     肉体など無いと言うのに、不思議と恐ろしいほどの速さであった。
    「大丈夫? 無理なら下がって出口を固めてると良いわよ」
    「冗談はよしこさん。まだまだいけるで」
     隣のクリスレイドがぶっきら棒に声を掛けると、侑は脂汗を忘れて笑う事にした。
     女の為に笑って倒れるのが身勝手な漢のロマンだ!
     いっちょ格好つけていくとしますか。

    「絵は描く人の心を映すって言うわね。残忍でグロテスクな殺人鬼……どう、当たってる?」
    「半分くらいは、ね。でも、それがどうしたの? 死ねばみな血の詰まった袋よ」
    「貴方は……そんな事が許されると思っているのですかっ!」
     オデットは静瑠に目線を送りながら部屋の中を走り込む。
     槍を振り回して叩きつけ、反対側に回り込んだ静瑠と挟み討ちの格好だ。
    「私には絵の才能はまったくないわ……。でもね、あなたの絵がみにくいってことはわかるのよ」
    「みんな最初はそう言うわ。同じことを繰り返せた人は生きていないけどね」
     今度は石突きで殴りつけ、血で描かれた守りを踏破する。
     確かに強い……でも、いけるかな。
    「援護します。多少の反撃は気にしないでください」
    「ありがとっ……これが私達の力よ。一人一人は砂粒かもしれない。それでも!」
     詩乃がオデットの突入を援護してくれていた。
     攻勢防壁による痛みをたちまち癒す、この力があるならば反撃など恐れるに当たらない。
     そして……!
    「私たち灼滅者は重ねた色、虹色の絵画って奴なのよね。できるものなら……私をあなたの色に染めてみせてよ!」
     血色の乙女が再び動き、仲間を穿とうとするのを一葉が止めた。
     肘で受け止めた時にジクリと痛むが、構わず手刀で切り割いて行く。
     激昂した紅緒が再び操ろうとするが、返り血にも己の血にも一葉は一切構わなかった。
    「真っ赤な血の色は私も好きだよ。その点は気が合うかもしれないねー。でも、衝動に溺れるのはいただけないなあ」
    「なにをっ!」
     血の滲む痛みを越えて、一葉は鉄拳を繰りだすかと思えば、飛び蹴りに変えて脇から迫るキャリバーの座席を蹴ってトンボを切る。
     空を舞って敵の攻撃をかわし、主従ともども別の位置へ。
     踊るように翼を広げるように包囲網の一翼を担う。

    ●全力vs協力
    「何を再現しようとしているのかは知らないけれど、何かの模造品を作り……あまつさえ自分の姿さえ変えてしまって、現実逃避したいだけじゃないのかしら?」
    「外見を過剰に取り繕うのは自身が醜いと認識しているからでは…?」
     クリスレイドと静瑠は辛辣な言葉を浴びせながら間合いを測る。
     傷の度合いを見極めたうえで、圧倒的な攻撃力をクリスレイドが緩和。
     回復や不要になった事で、静瑠が前に出て槍を閃かせた。
    「もっとも…貴方の場合はそれ以上に心が穢れきってしまっているようですが」
    「他人の言葉などどうでもいいわ、重要なのはお姉さまの御言葉だけなのだもの」
    「言うのは勝手だけれども……まあ所詮は過去のものよ。その栄華も、あなた自身も今の世にあるべきものではないわ」
     静瑠の突きを受け止めながら、血が逆流して無垢な彼女を汚す。
     そこへ割って入ったクリスレイドが、地面に手を当て内なる力を高め始めた、
    「おとなしく消えなさい!」
    「ふぅん。流石に無手じゃあ攻めきれないのね」
     順調に汚染していた所なのに、クリスレイドに全て弾かれてしまった。
     なのに紅緒には微塵の焦りも感じられない。

     嫣然と微笑んで、指を筆に用に犠牲者の血をからめ、小指で唇に血化粧を施して行く。
    「くっ! 俺の趣味的にはマイナス方向やけど、美少女度数が上がっとる……。一万、一万五千……。いままで本気で無かったちゅうんか」
    「思ってる事が言葉に漏れてますよ……。でもこれからがクラッシャーとしての本領発揮でしょうか? 気を付けませんと」
     侑の背中に戦慄が走る、もしあの状態でダークなキスでもされたらヤバイ!
     軽口叩いて自分を叱咤する彼にツッコミ入れながら、琥珀は冷静に状況を把握した。
     吸血鬼の護符使いとして、復活したてでジャマー向きな自分自身の特性を把握してないのだろうか?
     だがそれを差し引いても、恐るべきプレッシャーが感じられる。
    「さあ踊りなさい。あなた達も絵に変えてあげるわ」
    「血で絵画を……? 私には理解できませんし、して欲しくもありませんね」
    「芸術にはうといけど、少なくともそれは理解出来へんし、一生理解したないもんやな」
     連続で撃ちこまれる仲間達の攻撃をものともせず、紅緒が即席で描いた似顔絵が襲いかかってくる!
     琥珀は愛署だけ牽制を浴びせた後で、他の仲間達と共に侑を多重回復。
     血だまりに文字通り沈んだ彼に、再び立ちあがる力を取り戻させた。
    「まだや、まだやれるで。もう一ラウンド……、なんなら朝までくんずほぐれつ……」
    「口にしなければ恰好よいと思うのですけど」
    「仕方ないよ……三枚目タイプってやつ? それはともかくっ、なんでも貴女の思い通りになると思ったら大間違いだよ!」
     仲間達を守る侑を支える為、琥珀とイルミアは苦笑しながら手を伸ばした。
     漏れ出る輝きが彼を、あるいは他の前衛を癒して行く。
     圧倒的な攻撃力であろうとも、所詮は一人。手を取り合い助け合う役滅者の敵では無い!

    ●戦いが終わり、拭われるモノ
    「ここで削りきらないと……マールートっ、突撃っ!」
    「消えなさい、ヴァンパイア……!」
    「そんな馬鹿な!」
     多重回復で前衛を守りつつ、こちらの攻撃役が相手の体力を削って行く。
     イルミアの指示でキャリバーが突進し、その影から詩乃ががっちりとホールド。
     紅緒の足を掴んでばったんばったん、最後に壁際まで投げつける。
    「っと、往生際が悪いなあ。痛いかもだけどゴメンしてね?」
    「この私が人間に!? ……まだお姉さまにも、お会い……して、ない、のに……」
    「これが……? あなたのお姉さんはどうしたの?」
     この期におよんで牙をむく吸血鬼に一葉がトドメを刺した。
     血を吸うどころか首元を齧りとられた紅緒は、悲しそうに奥の間へ這って行く。
     もはや逃げる事はあるまいが……、気になったオデットが追うと普通の絵の具で描かれた一枚絵。
     これが封印されたという親玉だろうか?
    「さて、他にも復活した奴がいたりするのかしらね」
    「こんな風に何人ものヴァンパイアが蘇っているんでしょうか。他のブレイズゲートの増加と言い、一体どうなってしまうのでしょうね」
     クリスレイドと琥珀は、そんな風に話しながら絵に描かれた少女達を眺める。
     大人びた娘の周りに小さな子が数人。
    「もう、二度と目覚めて来ない事を祈るのみです……」
     詩乃の目にも仲の良い姉妹、あるいは貴族の令嬢を囲む女中たちに見えた。
     人々を守るにしても、この子たちを倒すにしてもやりきれない。

    「亡くなられた方を綺麗にしてあげられたら、と思うのですが……」
    「せめてそうしてあげましょうか」
    「……あんたも、あんまり恨むなや」
     静瑠が犠牲者の遺体を清め始めると、オデット達は屋敷中から布を持ちより汚れを落とす。
     そんな中で、侑が紅緒の死体にもそっと掛けてやった。
     戦い終わればノーゲーム、恨みがある訳でもない。苦い思い出はここまでにしよう……。

    作者:baron 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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