●芸術発表会2014
芸術の秋。
武蔵坂学園の秋を彩る芸術発表会に向けた準備が始まろうとしてた。
全8部門で芸術のなんたるかを競う芸術発表会は、対外的にも高い評価を得ており、武蔵坂学園のPTA向けパンフレットにも大きく紹介されている一大イベントである。
この一大イベントのために、11月の時間割は大きく変化している。
11月初頭から芸術発表会までの間、芸術科目の授業の全てと、特別学習の授業の多くが芸術発表会の準備にあてられ、ホームルームや部活動でも芸術発表会向けの特別活動に変更されているのだ。
……自習の授業が増えて教師が楽だとか、出席を取らない授業が多くて、いろいろ誤魔化せて便利とか、そう考える不届き者もいないではないが、多くの学生は、芸術の秋に青春の全てを捧げることだろう。
少なくとも、表向きは、そういうことになっている。
芸術発表会の部門は『創作料理』『詩(ポエム)』『創作ダンス』『人物画』『書道』『器楽』『服飾』『総合芸術』の8つ。
芸術発表会に参加する学生は、これらの芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげるのだ。
芸術発表会の優秀者を決定する、11月21日に向け、学生達はそれぞれの種目ごとに、それぞれの方法で芸術の火花を散らす。
それは、武蔵坂学園の秋の風物詩であった。
●演奏会に向けて
穏やかな秋晴れの下、武蔵坂学園の敷地の一角から、鍵盤楽器の演奏が聞こえてくる。
校舎沿いの木陰にスタンド付きの電子ピアノを置き、軽やかに鍵盤を叩いているのは、橘・レティシア(大学生サウンドソルジャー・dn0014)。
楽器を演奏する者の姿は、他にも至るところで見ることができた。
きたる芸術発表会に向け、生徒達が、早くも校内のあちこちで楽器を響かせているのだ。
それはさながら、吹奏楽部や軽音楽部の練習風景が、学園中に広がったようでもある。
「あら、あなたも器楽部門に参加するの?」
レティシアが、楽器を手にした一人の生徒に話しかけた。
聞けば、器楽部門への参加が初めてで、何をすればいいのか分からないらしい。
レティシアは微笑を浮かべると、プリントを手に説明を始めた。
「器楽部門は、参加者がそれぞれの思う『珍しい楽器』を持ってきて、演奏を発表するものなの」
用意する楽器は、楽器と呼べるものならば、世界中のどんなものでも構わない。
ただし器楽の授業の一環であるため、歌や声などは不可だという。
参加者は選んだ楽器で練習を積み、芸術発表会への選考を兼ねた、演奏会に挑むことになる。会場は、学園の体育館。そこで最も高い評価を得た者が、11月21日の芸術発表会当日、父兄や来賓の前で演奏を披露することになるのだ。
「ちょっと特別なのが、演奏会での評価基準なの」
評価の基準は、大きく分けて2点。
一つ目は、いかに珍しい楽器を持参できたか、という点。
そして二つ目は、持参した楽器をどれだけ見事に演奏できたか、という点だ。
演奏会では、審査員がこの2点を総合的に判断して、参加者を評価する。優秀者を選抜する関係上、評価対象は、基本的に個人となるから気をつけたいところだ。複数人で合奏しても良いが、審査員の印象がブレるため、余り高い評価は得られないかも知れない。
「評価基準の中で、特に注意が必要なのは、珍しい楽器ということについてね」
一口に珍しいと言っても、それは『演奏会に持ち寄る楽器が、他の参加者と被(かぶ)っていないこと』を指す。
「本でしか見たことがないような珍しい楽器を手に入れれば、当然有利になるわ。でも、もし皆が珍しい楽器ばかりに集中する中で、一人だけピアノを選んだ人がいたとしたら」
その人が一番有利になる……生徒の言葉に、レティシアは小さく頷きを見せた。
「ふたを開けてみるまで、誰がどんな楽器を持ってくるかは判らない……私も当日、電子ピアノを選ぶとは限らないから」
ちょっと悪戯っぽくレティシアは言う。
楽器の知識だけではなく、先読みの力も、優勝を得るためのポイントになるわけだ。
「でも、それだけではないわ。大切なのは、やっぱり音楽を楽しむ気持ちだと思うの」
楽器選びや、練習、そして演奏会も、やはりそれぞれに工夫し、満喫してこそのもの。
「色々な表情を見せるのが音楽というものだけれど……折角だから、楽しまなきゃね」
何やら嬉しそうなレティシアの微笑に、説明を聞き終えた生徒も顔をほころばせた。
辺りを見渡す二人の目に、思い思いに楽器を練習する生徒達の姿が映る。
果たしてどんな音楽が生まれ、響き合うのだろうか――。
幾つもの想いと楽器が集い、七色の音を奏でる演奏会が、やがて幕を開ける。
●演奏会に至るまで
人それぞれ選ぶ楽器が違うならば、当然、準備の仕方も十人十色だ。
「やっぱり、楽しいですね……音楽は」
軽音楽部の部室で、エレキ三味線を手に述懐する沙霧の姿があったかと思うと、別の場所では、蒼が簡単な童謡でパンフルートの練習中。
悠花はタンバリンを手に、叩く強さや良い音の出る角度を確認して、
「ピックがしっくりきませんね……」
流希がベースを抱えて呟き、
巧は幾つかの曲を試しながら小さな楽器と向き合っていた。
「想うがまま弾いても構わないのであれば……」
研究する者、練習する者、音の楽しみを追求する者。
参加者は各々の方法で音楽に接し、やがて当日を迎えた。
●第一部
幾多の楽器と演奏者、そして見学の生徒達が集い合った演奏会当日。
始まりを法螺貝の音で飾ったのは、久良だった。
その法螺貝は、学園に来る前、東北の山中で修験者に貰ったもの。
吹く人の心が表れるという楽器を、久良は無心で吹き鳴らす。
続いて登場したのは、高麗笛を手にした海砂斗だ。
知り合いの巫女さんの練習用だという笛を構え、演奏を開始。
曲はクラシック。亜麻色の――と言われてピンとくる者もいるだろう。
練習量を感じさせる笛の音が、会場を和の雰囲気で包み込んだ。
続く弥勒が演奏するのは、彼の出身地である沖縄の楽器、三線だ。
「民謡でもポップスでも、何でも弾くよー」
場内からぽつぽつと曲名が挙がる。
弥勒が頷き、弾き始めたのは、ポップスとしても有名な沖縄音楽の名曲。水牛の角のツメに弾かれた弦が、沖縄の風を感じさせる音を響かせる。
次なる演奏者は、エレキ三味線を携えた沙霧。
深い茜色に落ち葉を散らした、晩秋調の和服を纏った彼女は、音もなく舞台を歩み、座布団を敷いて座った。
(「三味線とは情熱。魂をぶつけていく……!」)
静かな曲調だったものが一転、荒々しく、激しくなり、余韻を残して終わる。
続く菖蒲は、まずその楽器で注目を集めた。
それもその筈、彼女が目指したのはいわゆるスコップ三味線なのである。
本来は、スコップを津軽三味線に見立てBGMに合わせて弾き真似をするものだが、
(「身近な品を撥となし、パーカッションミュージックにできるハズだ」)
撥として用意したのは、栓抜きや皮切り包丁などなど。
笑いを誘うが、栓抜きを撥にすると三味線の音色に近付き、菖蒲の奏でる三味線ロックは聴衆を大いに盛り上げた。
弦路も三味線に似た楽器を手に、舞台へ。
彼が手にしているのは、火不思。中国は明の時代に栄えたという、三味線の祖とも言われる弦楽器である。柄が長く、胴にあたる部分は洋梨型で、蛇皮が張られている。
(「元来の奏法は知らぬが……人生を費やしてきた三味線の技、少しは役立つ筈だ」)
愛する三味線の祖となった楽器に感謝しながら、大切に、時に激しく弦を弾く。
続いて登場したのは、生粋の三味線を携えた桔梗だ。種類は大棹と呼ばれるもの。
「三味線なんて弦を撥で弾くだけだろ、と思ってる方も結構いるだろうが……それだけじゃないってことをお見せしよう」
選んだ曲はJ-popの雅楽アレンジ。
言葉通り、その演奏技術は確かなものだった。
基本となる弾き方に加え、スクイやハジキその他の奏法――連続する技術が曲を見事に形作る。
その流れるような序、破、急に拍手が巻き起こった。
次に舞台に立ったのはバカルテットの四人。
楽器の取り合わせは、三味線、キハダ、木魚、そして、
「先陣は俺に任せろ!」
掛け声と共に、央が法螺貝を力いっぱい吹き鳴らした。
道真が銀杏型の撥で三味線の弦を弾き、得意の速弾きで意表を突いて、
(「すべては優勝のためだ、ごめんご先祖様」)
日照がドラムよろしく強弱をつけ、地味に正確に木魚のビートを刻む!
央が法螺貝で合いの手を入れ、海飛がキハダを響かせて、
(「部長やら何やらに虐め……鍛えられたオレ達の結束見せてやろうぜ!」)
日照がラストに向け目配せ。
――決まった!
誰もがそう思った最後の瞬間、海飛が天才的なズレ加減でキハダを響かせ、他の三人がずっこけた。
●第二部
少しの休憩後、第二部の冒頭を飾ったのは、れん夏だった。
彼の楽器は当然ベースだが、分裂途中のようなボディから飛び出すネックは、まさかの三本。『たかびしゃハニー』と名が付いたトリプルネック・ベースである。
「へい、てめーら耳でもふさいでろ」
両手で二本のネックの弦を激しくチョッパー、残った一本は、何と歯で。
歪んだ爆音が会場を震わせる。
「さんきゅーべいべー」
全力を出しきって糸が切れたようにぱたりと倒れ、れん夏が担架で運ばれていく。
続いて颯爽と舞台に上がったのは和正だ。
「俺の楽器は『空気』! この会場の熱い空気を楽器にしてみせる!」
いもしないメンバーを紹介してエアギターを始めるが、BGMもなく、オーバーアクションからのストンプが……音楽と言えば音楽?
しかしその必死さから笑いが生まれ、汗だくの和正もやりきった笑顔。
間もなく紅詩が舞台へ。
その肩に提げられた楽器に、場内から小さく驚きの声が挙がった。
ショルダーキーボード。
既に国内での製造が終了している希少な楽器で、紅詩は流れるような旋律を披露する。
続く流希が挑んだのは、エレキベースの演奏だ。
(「いつもウクレレばかり弾いていますが……」)
練習の甲斐もあり、その音色は演奏会に彩りを添えた。
「えと……一生懸命……演奏します」
雲母が言って、綿密なチューニングが為された二台のテルミンの前に立つ。
本体の上面の隅と反対の側面から伸びたアンテナに手をかざし、演奏開始。
浮遊感のある電子音が鳴り、照明の下、もう一台にも彼女の影が落ちる。
その独特な奏法に会場からどよめきが起こった。
次に舞台を踏んだのは、ギターを提げたくるみだ。
彼女のギターには『女子軽音楽部 BerryBerry』部員募集のステッカーが光る。
「聴いてください。去年の学園祭で歌ったオリジナル曲『NaNaNa……』」
くるみには、優勝を得ること以上に求めるものがあった。
(「ボクの演奏に興味をもって入部してくれたら……」)
――みんなと一緒に奏でたいんだ!
演奏を終えたくるみがBerryBerryのアリエルを紹介。
シックな雰囲気ながらも露出度高めな衣装のアリエルは、ポーランド製の低音が魅力的な8弦ギターを持参。
(「くるみちゃんにも、ほかの皆にも負けないわ♪」)
演奏曲は、有名なクラシックを低音がアピールできるようアレンジしたもの。
その確かな指運びと重厚なサウンドが、ライブの楽しさを皆に伝えた。
続いて舞台に用意されたのは特徴のあるシンセサイザー。
機器を前に立つのは寛子だ。
薄暗くした会場の中、ステージライトが寛子を照らす。
フェーダー式シンセサイザーとも言うべき機器に対した寛子は、縦フェーダーをリズムよく上下して、用意してきたハウス系バックトラックに様々な音を重ねる。
日頃ディスコで培ったそのDJテクニックに体を揺らす者、手拍子する者――。
現代的な楽器の演奏に、会場が熱気に包まれた。
●第三部
続いて舞台に立ったのは、揃いの羽飾り付きのベレー帽と軍服、ブラックウォッチタータンのキルトを着用した二人。
フォルケと狭霧だ。
二人の楽器は、グレート・ハイランド・バグパイプ。
狭霧がフォルケに合図を送り、息を吹き込んだ楽器の袋(バグ)を同時に叩いき、伸びのある音を鳴らした。キックスタート。
奏でられるのは、スコットランドはハイランドの行進曲(マーチ)。
二人は難しい楽器を吹きこなし、会場にハイランドの響きが満ちた。
クーガーは自作したオカリナを手に、軽快な舞曲とも言うべきケルト音楽を披露。楽しく、陽気に、思いつくままに演奏するその在り方は、音楽の起源に近い姿とも言える。
シンプルな黒ロングドレスを纏ったマキナは、機械仕掛けのヴァイオリンとも言われるハーディ・ガーディを奏で、神秘的でどこか懐かしいケルトの世界観を演出。
リュートを逆さまにしたようなボディにクランクがあり、それを回すとバグパイプに似た音が鳴る。当の本人は、クランクを回す奏法が、
(「ガトリングガンを彷彿とさせて、いいよねえ……」)
なんて思っていたりもするのだが。
ルナもまた故郷、西ヨーロッパの楽器であるハーディ・ガーディを演奏。
音楽は生きがいと語る彼女が披露するのは、民族音楽風の『mensis』という自作曲。そのモチーフは、月光のみに照らされた静謐な夜の空間――聴き手にイメージを喚起させる幻想的な響きが会場中に広がった。
続くホテルスが携えるのは、キタラー。古代ギリシアの楽器と言われ、木製のひの字型をした体に、縦に弦が張られている。
「惚れた女を喜ばせる、そのつもりで演奏する。其れだけ、ですな」
凛とした、透明感のある曲を響かせた。
ティオが選んだのは、故郷イタリアの古楽器、フォルテピアノだ。
音域ごとに変わる音色と、軽いタッチが特徴。
ティオの手で奏でられる、楽器と同時代につくられた宮廷風の音楽は、様々に姿を変える水をイメージして書かれたという旋律で会場を包み込んだ。
カンナが選択したのはモリンホール。
奏でるのは、郷愁を誘う、故国モンゴルの穏やかな曲だ。
楽器をくれた今は居ない『婆様』や病院の皆に聞いて貰うため。
そして学園の皆や『父上』、最も身近な少年に向け、日頃の感謝を込めて響かせる。
クラレットの選んだ楽器は、昔、母から豪州の土産に貰ったという、原住民に伝わる長い笛――ディジュリドゥ。
ぶうぉわー、から始まる低くハイテンポな笛音が鳴り響く。
無音時間をなくす循環呼吸という奏法から、慣れた彼女でも、1分が限度。
何だか限界への挑戦に見えなくもなく、応援するような拍手が巻き起こった。
月夜はマンボの曲を背景に、リズミカルにマラカスを演奏。
小気味良くシャカシャカと。締めには、マラカスを上に投げてキャッチ。
シャッ、と見事に演奏を終え、会場の皆が拍手喝采。
悠花は音を大切にする気持ちを込め、軽快なダンスを交えてのタンバリンを披露。ふと目があったレティシアが悠花に笑顔で手を振った。
(「やはり自分が気に入ったかも重要ですよね」)
思い、理利が選んだのは、カリンバというアフリカの民族楽器。オルゴールの祖とも言われるその楽器で、マイナー調のアルペジオな曲を演奏する。
始めは単音、何巡かしたら和音に、最後は転調させてメジャー調で。一直線では終わらない曲を奏でて見せた。
巧が演奏するのも似た楽器だが、こちらはカリンバを西洋の音階で弾けるようにしたハンドオルゴール。
「しばしお付き合いのほどを」
それは練習時に気に入った曲の流れを繋ぎ合わせたもの。
ハンドオルゴールの良さである和音の響きを活かした、心安らぐ小品だ。
シタールを手に、アラビアンナイトをイメージした服装で現れたのは、愛。
床に座り足を組み、左足の裏に楽器の胴体を乗せ、上に右腕を軽く置き、演奏開始。
主軸となる低い旋律で、観客を惹きつける冒頭。
徐々に多彩な音色を織り交ぜ心を揺らす中盤から、速度を増すように頂点へ。
過去を乗り越え、数々の仲間と出会うことで徐々に変わっていく心模様を表現した。
蒼はパンフルートで練習の成果を発揮。
(「たくさんの人に、この音色を、届けたい、から」)
優しい風のような音色で、シルクロードの砂漠をイメージした何処か哀愁の漂う曲を演奏する。
奏とラインは別々の楽器でフラメンコのブレリアを。
奏は習得が至難とされるバンドネオンを抱え、ラインもフラメンコギターでEキーのナチュラル旋法による即興演奏。
特有のリズムである12拍のコンパスを意識しながら、バンドネオンとギターのファルセータを交互に。盛り上げて曲を結び、流石の実力で会場を沸かせた。
「これはヨーロッパの古楽器、フラウト・トラヴェルソ。バロック・フルートともいうそうな」
竜鬼が名と由来を述べ、
「其れでは参ります。『和みの雨風』」
目を瞑り楽器を構える。その自作曲は、己の心を和ませるものという。
普段から篠笛を吹いているだけあり、竜鬼の演奏は見事なものだった。
曲の終わりと共に、竜鬼はくるりと一回転し一礼。
続く春はフルートを構え、メロディアスな曲を演奏。
変身ヒーローものの主題歌のようだ。
無常に流れる時と別離――それでも前に進む意志を歌った曲に、春は幼なじみから離れた過去と、逃げ帰らず望む未来へと歩く覚悟を籠める。
景明は電子ヴァイオリンで有名映画の音楽メドレーを奏でる。
普段から楽器に親しんでいる者からすれば付け焼き刃かもと思うものの、
(「だったら思いっきり楽しみたいわよね?」)
足でリズムを取り、動きながら演奏。演劇にも通じる感情豊かな音楽を披露した。
叶流は今年もまたグラスハープを選んだ。他の楽器にしようとも考えたが、やはり音色に惹かれて。三年目になるだけあり、グラスの並びや注ぐ水の量も、よく考え抜かれている。
グラスハープは、グラスの汚れや水量で音が変化してしまう繊細な楽器だ。
叶流の指がグラスを擦るたび共鳴するような澄んだ音が連なり、優雅な曲が奏でられた。
世にも珍しいグラスマリンバと共に現れたのは、音色だ。
演奏を開始した彼女は、嬉しさでいっぱいで、ガラス製の鍵盤をマレットで叩いて澄んだ音を作り出す。
曲名は『この惑星を巡る流れ』という。
無邪気に、楽しく、心からの笑顔で。水、大気、人々の想い、透き通ったそれらの流れを見事に曲で表現した。
聖職服を纏った直人は、礼拝堂クラブの部長として相応しい楽器を運んできていた。
直人と共に舞台に姿を現したのは、ポジティーフ・オルガン。
クリスマスが近いこともあり、選んだ曲はクリスマスらしい賛美歌。
聴き慣れた曲の演奏、荘厳な音色に、会場が温かな雰囲気に包まれる。
トリを飾るのは、バルブトロンボーンを手にした榮太郎だ。
曲は聖者が行進するジャズナンバー。
陽気な行進曲が、演奏会の終わりを明るく彩った。
●終演
審査結果を待つ間、予期せず賑やかな音楽が会場を包んだことは記しておくべきだろう。
始まりは、何処からか響いた小気味の良いマラカスとタンバリン。
それが他の楽器の演奏を呼び、やがて合奏となったのだ。
紅詩が主旋律を奏で、理利がカリンバを鳴らし、和正が渾身のエアギター。
法螺貝が響き、三線と三味線の音色が重なり――数多の楽器による合奏は、会場全体が音楽の楽しみに満ちた瞬間だった。
そしていよいよ、審査の結果が告げられる。
「優秀者はティオ・トレントさんです!」
楽器の選択、技術、演奏――バランスよく優れていた少年が、見事、栄冠に輝いた。
作者:飛角龍馬 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年11月21日
難度:簡単
参加:43人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 3
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