芸術発表会2014~書にしてみよう、あなたの心

    作者:ねこあじ

     芸術の秋。
     武蔵坂学園の秋を彩る芸術発表会に向けた準備が始まろうとしてた。
     全8部門で芸術のなんたるかを競う芸術発表会は、対外的にも高い評価を得ており、武蔵坂学園のPTA向けパンフレットにも大きく紹介されている一大イベントである。

     この一大イベントのために、11月の時間割は大きく変化している。
     11月初頭から芸術発表会までの間、芸術科目の授業の全てと、特別学習の授業の多くが芸術発表会の準備にあてられ、ホームルームや部活動でも芸術発表会向けの特別活動に変更されているのだ。
     ……自習の授業が増えて教師が楽だとか、出席を取らない授業が多くて、いろいろ誤魔化せて便利とか、そう考える不届き者もいないでは無いが、多くの学生は、芸術の秋に青春の全てを捧げることだろう。
     少なくとも、表向きは、そういうことになっている。

     芸術発表会の部門は『創作料理』『詩(ポエム)』『創作ダンス』『人物画』『書道』『器楽』『服飾』『総合芸術』の8つ。
     芸術発表会に参加する学生は、これらの芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげるのだ。

     芸術発表会の優秀者を決定する、11月21日に向け、学生達はそれぞれの種目ごとに、それぞれの方法で芸術の火花を散らす。
     それは、武蔵坂学園の秋の風物詩であった。


    「芸術! 発表会! だよ!」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)がプリント用紙をぶんぶんと振り回していた。
     プリント用紙は今年の芸術発表会のことを伝えるものだ。
    「書道コンテストに参加するみんなには、わたしから説明させてもらうねー」
     まずは人差し指を立てて、一つ目、とカノンが言った。
     半紙や書初め用紙を使って、一人一枚。
     好きな文字や文章を筆でしたため、期限日までに提出する。
    「大事なのはこの二つかな。
     組になる書道パフォーマンスみたいなのも面白そうだけど、武蔵坂学園の書道コンテストは個人競技だよ。
     一人一作品だけど、みんなで集まってわいわい書くのも良いかも。
     楽しい気持ちが書に表れて、良い作品ができるかもしれないね!」
     静かな環境で静謐な書となるかもしれない。
     賑やかな環境で、「とめ」や「はね」「はらい」がより自由となった書になるかもしれない。
    「筆に感情をこめて、文字で心を表現する――同じ文字でも人によっては、その文字が元気そうだったり、優しそうだったりすると思うの」
     そう、文字が一緒でも、書く人によって様々な表現となる。
    「みんなが書いた作品を、ひとつひとつ見て、どんな気持ちで、どんな想いをこめて書いたのか。そんなことを想像してみるのも書道の楽しさだよね。
     だから、書道コンテストに参加のみんなは、見る人が「おおっ」ってなれるようなものを頑張って書こう!」

     姿勢を真っ直ぐにして、墨に浸した筆の先を整える間に生まれる緊張感は心地よく。
     真っ白な半紙に墨を置き、筆で跡を描いていく。
     その時の心が書となり、白の世界を彩る。

    「それじゃあみんな、提出期限日までに作品を仕上げてみようね」
     がんばって!
     ぐっと作った拳を振って、カノンは応援するのだった。


    ■リプレイ

    「こうして、書に向かうのはやはり良いね……ここ最近はあまり書いていなかったし、部としての活動を再開したいところだね」
     部長・言葉の声に、綴と裕士、夜露は改めてしゃきっと姿勢を正す。
     クラブ棟の和室。畳にて正座する四人は真剣な表情だ。
     心を落ち着け、筆をとる三人の様子を見て裕士は少し深呼吸をした。
    『不撓不屈』
     一度、筆を滑らせれば、心は書と向き合う。
     題字選びを手伝ってもらった夜露は、やや迷った末に筆を動かす。
    『清廉潔白』少々丸みを帯びた書体が綺麗にまとまり、その出来を眺めて筆を置く。
    「……これでいいかな」
     綴が呟く。『青青柳色新』うん、と一つ頷いた。伸びやかな字の並び。その詩は、今の気分に合っていた。
     そして姉の作品を横から眺め、裕士と夜露の書を見てにやっとする。
    「上手くなったね」
     綴が言うと夜露は微笑んだ。
    (「もっと上達できるように頑張りたいなぁ」)
    「ちょっととーさんに似て荒々しいかもしれへんけど」
     姿勢を正し、改めて自身の書を眺める裕士。
     ――どんな困難でも、越えていく。筆跡は情熱的だ。
     横に視線を滑らせた彼は啄身姉弟の字に目を瞠り、妹の可愛い字に和む。
     心を乱さずに、ただ一心に――言葉は『一心斯有恒』、流れるような美しい行書。
    「よく書けている」
     三人の書を見た言葉は頷く。その書たちには心が見えた。

     遥香は筆を置く。
     ビクビクと臨んだ初陣、数々の戦いを乗り越え、今や堂々と立ち向かえる。沢山の人と出会い、助けられ。
     変化する学園生活の中でただ一つ。
     カッと目を見開く遥香。
    『園観ちゃん』
    「この一人称だけは! 変わりません! 変えませんよ、園観ちゃんは!」
     名は常に傍にあり変わらないものだ。
    『撫桐娑婆蔵』、自身の名を書とした。込められた意があると、彼はのちに語る。
    「考えて下すったなァ田舎の爺ちゃんで、なんでも酒の勢いで考えたのだってェのは専ら語り草でござんす」
    「娑婆」はこの世の意、「蔵」は「得難い宝」の意。
     ――この世に生きている内に得難い宝を多く得よ。
     目隠しした万は筆をゆっくりと動かした。闇の世界、思い切り動けないもどかしさに光を渇望する。
    『光』
     そう書けたはずだ。いや、書き切ったのだから書けている! 半紙に収まったか否か、字になっているか否かなど。
    「最早、小さき事さ」
     フッと笑い、目隠しを取る万が見たものは、墨色の……ミミズ。
     寒さにくっと身を縮める良顕は、ハァと息で暖をとる。手を擦り、筆を持ち、一画ずつゆっくりと書いていく。
     納得できるまで何度も書き直す、のだが。時が経つごとに『春風』の線はカクカクしていった。
    「もう……文字が書けそうにない」
     作戦、たいちょうだいじに。良顕は明日、頑張る事にした。
     書道は乙女の嗜みとして父に叩きこまれた菊乃。
    「けれど芸術ともなれば、ある種の「りありてぃ」も必要な気が致しますねぇ」
     そう言って徐にたい焼きを食べ始めた。ふっくらな生地、餡子の熱さと甘さ。
     幸せ。至高へと到達した菊乃は筆をとる。
    『美味』
     心の中で『!!!』と続けた。
     円が墨に浸したのは尻尾だ。
     第二の故郷、宇都宮への想いを尻尾の筆で……腰を使い、はらい。線は力を抜き細く引いて、とめ、はねは大きく。
     丁寧に、力強く、ご当地愛を!
    『宇都宮が勝ぁつ!』
     気合いのあまり、ギョウザティックオーラが解放されそうだった。
    「自分の気持ちを素直に書けばいい……か。気持ち……心」
     胸に手をあて考えこむクーガーは、静寂に支配された空間でカッと目を見開いた。
     筆を振るう!
    『シス・テマ教団 団員募集中!!』
     堂々と提出する背中は、まさしく漢だった。
     このクーガーの達筆さ、是非直に見て欲しい。

     平屋の倉庫。屋上にて書に励むのは。
    「書きたい事がある奴は別だが、何書こうか悩んでる奴は炎血部を一言で書に表して欲しい。いい宣伝になるだろ?」
     淼の声に「はーい」と応える声。
    「書道なンて初だけど……まァ感覚でなンとかなるだろ!」
    「一度やってみたいと思っていたゆえ、良い機会だ」
     皆の用意する様を見よう見真似に、ヘキサとユージーン、海飛が動く。
    「すみ? え? 炭? ――よくわかんねえけどこれで書けばいいんすね!!」
     墨をすっていた陽太は「あ」と思った。海飛は炭をすっている。陽太の指は墨が付着し、海飛の手は煤けた。
     書き順はうろ覚えだったが弥勒は紙いっぱいに、でかでかと『楽』。
    「気楽に過ごせて、楽しい場所なんで、感謝の意味も込めてまーす」
     そう言った弥勒はまた筆を取る。
    「書道かー。小学生以来だな!」
     久しぶりだし、のびのびやる! と、桜太郎が大きく筆を走らせた。
     時折、秋風が吹きつけてくる。
    「早く春になんねーかなー」
     と、桜太郎は『春よ来い』。
     冷たい風を吹き飛ばすように、燃えるヘキサ。ぐっと筆先に力をこめた。
     少しずつ強くなってきた軌跡が白の上に墨となって走り、半紙が微かに動く。
    『火』の次の文字は『兎』、高く、熱く、燃え盛る勢いのままに跳ぶが如く。
     す――炭で力強く書く海飛は『楽』。
    「半紙なんて言わずにもっとでかいので書きてえなー!」
     ヘキサと海飛の間に破れた半紙があった。二人に応えきれなかった軟弱な半紙どもである。
    「本当に。もっと大きな紙で書けばよかったですね」
     陽太が言う。文字が少し右肩上がりになったものの、とめ払いは上手にできた『炎血』。
     が。
    「大きすぎて名前書くスペースが無くなっちゃいましたよ!」
    「「あ」」
     陽太の声に、今気付いた的な反応が。桜太郎は小さな花を隅っこに描いていた。
     慣れない筆で強弱の少ない角ばった、几帳面な自身の字をユージーンは眺め「おお」と応じた。
    「記名もせんといかんのか」
    『炎血』の隣にカタカナで縦書き。ユージーン・スミ、ス?
    「最後の一文字が入らん……どうすれば」
     皆の様子を見た後に、淼も筆を走らせた。始めは墨が滴る程に、吐き出すように一気に流れた書は、最後の掠れた払いにまで勢いが出ている。
    『炎』『血』
    「ハルにー、できたー?」
     どこか楽しそうな弥勒の声に「おう」と淼が振り向けば、ガサッと音が。
    「んん?」
    『炎血部部長!』と書いた紙が貼られていた。

    (「想希と一緒に歩んできた一年やった。色々あったなぁ」)
     目を伏せていた悟は、意を決し目を開いた。
     大きく広げた半紙に乗り上げ、力強く、荒々しく、紙一杯に文字を書く。
     再開した部も繋がりが広がる日々に、悟が書いた『い』は大きく。二本の棒は人と人が手取り合う姿にも見えた。
     心赴くままに何枚か書いた後、巧は一番上手く書けた物をまじまじと眺めた。
    『水月鏡花』
    「水鏡に映る月花は見れても、触れれば波紋に消える、か。未練だねぇ、俺っちも……」
     書に触れ、一つ、息を吐く。
    (「まあ、俺っちは応援することに決めたしな」)
     槍を抱え軽く座り込むディーン。彼の筆先は柄にあった。
     半紙を睨みつける事、しばらく。
    「迷いはいかなる行動を惑わせ鈍らせる。時には勢いに身を任せるか」
     戦場を雷の如く駆け、敵を雷の如く貫く――『雷』。
    『Dean・Braford』と署名をし、ディーンは満足げに頷いた。
     銀都が目指すは一点! 筆を振りかざし、一心に半紙の中央へと向かった。
     気合い一閃で一筆っ!
     ぐぐっと筆で打ち込むが如く力を入れ、跳ねるように腕を退く。その際墨汁が飛散し、銀都の顔を黒く汚した。
    「俺は俺の信じる道を貫き通す、ただそれだけだっ」
     力強い大きな『・』はまるで魂の様。
     心落ち着けるため正座する供助。書道の装いは身近にいた人を思い出させた。
     静かに墨をすり、頭に描くものを映す。
     迷う時は、多い。
     半紙に写し込むのはイメージだ。
     呼吸を整えて、正した姿勢は微動だにせず、手は動くままに――如何ありたいかという問いを込めて、『如何』。
     は、と千慶は我に返った。
     墨をするのが楽しく、没頭していた。
    「さてと。しばらく書いてなかったけど、ま、なんとかなるだろ」
     墨の香りに懐かしさを覚えつつ正座する。
     書くのは『花鳥風月』。
     花も鳥も風も月も、一箇所には留まらず流れていってしまう。筆も流動的に、千慶の心赴くままに。
     辞書を眺めていたイングリットは捲る手を止めた。
    「よし、これでいこう」
     罪。闇に堕ち、灼滅されて体から解放された魂が、今度こそはそのような罪に侵される事はないようにと。
    (「影ながら祈る事がオレ達の役目かな、なんて」)
    『哀矜懲創』
     倒してはいおしまいじゃ、虚無的過ぎるから――。 

     静菜は筆を自作して挑戦!
    「ユイちんの筆マジアイデア賞! 名は体を表すってこーゆーのじゃね?」
    「意外としっかり書けるようです」
     民子の声に、静菜は「笹の葉筆」を眺めた。若い笹の葉を手と櫛で細かく割き、何枚も束ねて巻いて軸に挿す。水に付けて柔らかくし、墨に浸せば、愛らしく癖のある筆の出来上がり。書は『笹』。
    「書道らしい書道って苦手なんだけど、芸術だったら任せろ」
     民子は長い紙を横に、大きめの筆で。まず最初の「I」と最後の「n」を書いてバランスを取ってみる。
    『Imagination』
     二人の様子を微笑ましく見、十分に墨をすった龍一朗は祖父の形見の筆を浸す。
     筆を半紙にのせる瞬間、その時の気持ちが勝負となる。
    『縁』は、本当に不思議なもので。
    「流石、龍ちゃん。無駄を究極までそぎ落としたものって、洗練されて美しいよな」
     筆を置くと、民子が感心したように言う。
    「澤村は伸び伸び書いてるな。趣旨にマッチしていていいと思うぞ」
    「on」の下には、愛嬌ある口が描かれていた。

    「よしっ……と、こんな感じで良かったかな?」
     謳歌の『夢』。勢いと思い切りで、想いを書き上げた。
     彼女の夢は「正義の味方」になることだ。
     全力で頑張り、皆の夢も守れる人間になりたい。
     誠実に、真っ直ぐに。きらきらとした謳歌の夢。
    「いつか夢を叶えられるように努力していきたいな」
     スケッチする事が多いりねは、わくわくとした気持ちで半紙に向き合う。
     一生懸命勉強したり、友達を作ったり、得意な事も苦手な事も楽しめる位に頑張りたい来年に向かって『成長』の文字を。
    「わ、画数が思ったよりいっぱいで難しいです」
     お手本を見ながら、ゆっくりと練習するりねだった。
    「今年も四文字熟語を書くで」
     そう言った小町は、書初めの用紙へと身を乗り出す。
    『百錬成鋼』
     無理に綺麗に書こうとは思わない。大事なのは文字に合わせ、重みと力強さを含めていくこと。
    「おお、これ、ちょっとええんやない?」
     出来上がりを眺めて、小町はにっこりと笑った。
     書道は亡くなった祖父との思い出の一つで。震える心を感じた羽月は、そうっと目を開く。
    (「お爺ちゃん……私はこの学園に来て、沢山の仲間やお友達と会えました」)
     過去とは違い、楽しく過ごせている今の日々は、不思議な感じがした。
     筆を取り、羽月は先への想いをこめて『未来』を書く。
    「しんにょうって難しい」
     納得いくまで何枚でも、琳は書き続ける。
     書に表したいのは『友達』だ。琳の宝物。
     お弁当を作って見に行った紅葉も、たくさんの猫さんと遊んだ事も、修学旅行で皆で見た綺麗な海も……大事な思い出だ。
     心がポカポカとなるこの想いを琳は筆にのせた。

    (「静かな所って、ちょっと怖いなのね」)
     そう思って杏子が目を瞑ると、静かな空気のなか理利を感じる事ができた。
     深呼吸をする杏子の様子に理利の頬が緩む。
    『お星様』きらきらしている学園の皆、杏子が大好きで大切な宝物――気持ちを筆にのせた。
     理利もまた字の入りは大胆に、流す部分は細く、掠れを気にせずに払いまで一気に書き上げる。
     筆を置いて、詰めていた息を吐く。『時つ風』学園の、皆の幸先が順風であるように。
    「……やはり、書道は楽しいです。久成の作品も、気持ちが詰まっていてとても良いと思いますよ」
     理利の声に、杏子がほわりと微笑む。褒められた嬉しさのあまり、えへへ、と笑った。

     ふと、会話が止んだ。
     ――人は移ろい変わるもの。たかが半年、されど半年。
     たった今、そう言った恣欠の声が瑞樹の中に響く。学園に来て半年、皆にも彼にも随分と助けられた。
    「……」
     学園防衛戦でのことを思い出し、瑞樹の胸は早鐘をうつ。
     最初だけ震えていた筆先。『心・技・体』そして『友』。
     凛とした佇まいに見惚れる恣欠が、は、と我に返る。盾として戦う彼女の後姿、眠った彼女を医務室へ運んだ時の事。今も、違う姿を見せる瑞樹。
    『移ろい』思い耽っていた恣欠は少し書が乱れてしまったようだ。
    「次も……こういった行事で、ご一緒できればいいですねぇ」
     言い終えてすぐに恣欠は愕然とした。次は十二月。
     
     発表会に向けて活動している生徒の喧騒が、歩実だけがいる静かな教室に響く。
     耳を澄ませ、歩実は辞書で調べた時に知った言葉を書き出した。
    『確乎不抜』
     このように強い意志を持って戦いに望めたらいいなと、そう思い。
     書の言の葉は、提出した後にも彼女の心に響き続けている。
     ――人の心は忘れちゃダメ。
     ジェレミアを人造灼滅者として、人としてこの世に留め、手術してくれた恩人はそう言った。
    『心』を書いたジェレミアは作品を眺める。バランスが難しい。
    「でも、心の均衡を常に保っていられる人なんていないんだし、これはこれで、らしいよね……?」
     袴の裾を捌き、正座した千波は年代物の書道用品を取り出し、墨をする。
     筆先を揃えながら所属している努力同好会の事を考えた。
    「私も随分と染まっちゃったなぁ」
     そう呟いて、勢いよく筆を走らせて『努力』の字を書く。仕上がりは達筆。
     湧水を使い、墨を作る京。硯の中は良い感じに滑らかになる――のだが、今回書くのは『守命共時』。力強さが欲しい。そう思った京は粘りを出す。
     大胆に太く大きく、はらい。丁寧で慣れた動きの、とめ。
     アート的な行書で半紙を彩っていく。
    「うん。いい出来かな」
     眺め、京は頷いた。
     悩んでいたあやめは、決めた。
    「どのフォントにしようか迷ったが……ゴシック楷書体でいくか」
    『2014年 芸術発表会』
     満足するまで、ひたすらに書く。それはあやめ以外の者が見ても、同じ書体でコピーされたかのよう。


    「案内用の書体も生徒のものでしょうか。心づくしが活きてます」
    「個性的なものが多いですね。この『・』『火兎』が好きだ」
    「これは、とても明るく元気な『夢』ですね」
     どの作品も、生徒の心が詰まっている素晴らしいものばかりだ。
    「切ない『心』ですわね」
    「綺麗な『一心斯有恒』『花鳥風月』ね。お手本にできそう」
    「『成長』や『未来』、『友達』が凄く好き」
     揃った書を、丁寧に見ていく。
     選考を重ね、ようやく選び取ったのは、堅実で控えめな書。見ているだけで、結びつきを信頼できるような――。
     龍一朗の『縁』だった。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月21日
    難度:簡単
    参加:42人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 8
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