夢から這い出た悪夢

    作者:天木一

    「これが現実の肉体の重さか……なんと不自由な」
     黒いレザーの服を着た筋肉質で大柄の男が、道路の真ん中で顔を手で覆い首を横に振る。
    「力を抑えるイメージだ。そう、重力が十倍あると思えばいい。そうして力を抑えれば現実でも動く事ができるはず」
     まるで全身に重りを載せたように、芝居がかった動きでいきなり筋力トレーニングを始める男。
    「ママー変な人がいるよ」
    「見ちゃいけません。ほら、早く帰るわよ」
     堂々と1人芝居をする男を周囲の人々は奇異な目で見て、近づかないように通り過ぎる。
    「おい、邪魔なんだよ。どけ!」
     そこへ通りがかりの車がクラクションを鳴らし、窓から顔を覗かせた運転手の男性が怒鳴った。
    「ふむふむ、動きは問題ないな。では次のテストをしてみるか」
     男は腕立てを止めて立ち上がる。そしてゆっくりと車の正面に立った。
    「戦闘テストだ。力を抑えてどれだけ戦えるか試すとしよう」
     足を振り上げ、車を蹴る。まるで金属のように重い一撃に車体が凹む。
    「まだまだ!」
     次々と前蹴り、回し蹴り、後ろ回し蹴り、飛び蹴りと、さまざまな蹴りが叩き込まれ、その度に車が圧縮されていく。
    「ひぃっ助けて!」
     車体が歪み脱出出来なくなった運転手が悲鳴を上げる。
    「うむうむ、なかなか動けるようだな。戦闘テストはこんなものか」
     納得するように頷くと、最後に真っ直ぐ振り上げた足を車の頭上へと落とす。踵落としが決まり車は鉄屑となった。悲鳴は止み、赤い水溜りが鉄屑を中心に広がっていた。
    「では次は持続力といくか」
     歩き去る男の背中には、ダイヤのマークが描かれていた。
     
    「シャドウがソウルボードの外、現実世界で事件を起こそうとしてしているみたいなんだ」
     教室に集まると、能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が説明を始めた。
    「どうも現実世界での行動を行う為の訓練をしているみたいでね、その為に人を襲って体の慣らしをするようなんだよ」
     人を殺す事が目的ではないが、このままでは巻き込まれた一般人の被害が出るだろう。
    「みんなにはそれを止めてもらいたいんだ。そして力を発揮できない今、灼滅するチャンスでもあるよ」
     ここは現実だ。自らの領分であるソウルボードから出て全力を発揮する事が出来ない。
    「敵は住宅地の道路に現われるよ。敵が運動を始めたあたりで接触できるはずだから、犠牲者が出る前に戦う事ができるよ」
     周囲に人は居るが、野外で逃げ場もあり敵も追ったりはしない。
    「敵は足技に自信があるみたいだから、接近戦を仕掛けてくると思うよ。それと、現実での長時間行動を可能にする為に力をセーブしてるとはいえ、シャドウは強力な力を持っているんだ。並みダークネスよりは強いと覚悟して挑んで欲しい」
     だが決して倒せない相手ではない。全力で挑めば倒す事も可能なはずだ。 
    「夢の中でも迷惑なのに、現実まで現われたら大変だよね。現実世界はこちらの領分だと教えてあげて欲しい。お願いするね」
     誠一郎に見送られ、灼滅者達はシャドウの現われる現場へと向かった。


    参加者
    源野・晶子(うっかりライダー・d00352)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    館・美咲(四神纏身・d01118)
    逢坂・兎紀(嬉々戦戯・d02461)
    空井・玉(野良猫・d03686)
    杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015)
    白石・作楽(櫻帰葬・d21566)
    竜胆・幸斗(凍牙・d27866)

    ■リプレイ

    ●夢と現
    「そろそろ寒くなってきたな」
     ぼんやり空を眺めるマフラーを巻いた杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015)は、気を引き締めようとチョコバーを口にして糖分を補給する。
    「シャドウが現実世界に来るとか、本当に面倒な話だよね……」
     はぁと白い息を吐き、竜胆・幸斗(凍牙・d27866)は首を振る。
    「ソウルボードに引き籠っていなかった事、後悔させてやらないと」
     顔を引き締めて周囲を警戒する。その手には何故かストップウォッチが握られていた。
    「あ、あの人ですか?」
     おどおどと周囲を見ていた源野・晶子(うっかりライダー・d00352)の視界に、黒いレザーのジャケットを着た筋肉質な男が映る。その背中にはダイヤのマークが描かれていた。
     男は道路の真ん中でスクワットや腕立てをしていた。
    「そうみたいっすね。まずは一般人を追い払うことにするっす」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が全身から殺気を放つ。すると恐れるように周囲の人々の足が速まる。
    「騒ぎが起きないよう音も封じておくよ」
     続けて空井・玉(野良猫・d03686)が周辺に音を漏らさぬ結界を張る。
    「こちらには来るな! 早く逃げろ!!」
     脅えて惑う人へ白石・作楽(櫻帰葬・d21566)が声をかけて誘導すると、視界から去っていく。
    「実体を持つシャドウか……まだ実体に慣れていないようじゃが悪さをする前に灼滅しておかねばの」
     運動で体の慣らしを行なう敵を見て、館・美咲(四神纏身・d01118)残念そうに溜息を吐いた。
    「個人的には、全力の状態で戦いたかったが仕方があるまい」
     槍を手にすると一気に駆け出す。そして跳躍すると、腕立てをしているその背中へ向けて槍を突く。
    「なんだ!?」
     胸を狙った穂先が脇の下を傷つける。腕立てをしていた男は咄嗟に転がって直撃を避けていた。
    「いきなり攻撃してくるとは、現実世界とはなんと荒廃しているのか……」
     立ち上がった男は警戒し美咲を見る。美咲は地面に立って反転していた。
    「こっちの世界はお前らのいるトコじゃねーんだよ」
     そこへ背後から、逢坂・兎紀(嬉々戦戯・d02461)がフードの兎耳を揺らしながら地を飛ぶように駆ける。
    「それは我等が決めること、お前らにとやかく言われる謂れは無い!」
     男は振り返らぬまま後ろ回し蹴りを放って迎え撃つ。
    「当たらねーよ!」
     兎紀は反射的に横に跳ぶと電柱を蹴り、側面から槍を構えて体当たりするように突っ込んだ。穂先が男の脇腹に突き刺さる。だが男も怯まずに前蹴りを当てて兎紀を弾き飛ばした。兎紀は壁にぶつかり落下する。
     宥氣は爪先で地面を軽く蹴り、敵へと視線を送る。その瞳は紅く染まっていた。
    「なんか最近、こういうの多くなってきたな」
     そう呟くとカードを解放し、一気に間合いを詰める。そして抜き打つ刀を一閃させ、敵の胸を横に斬りつけた。
    「身体の慣らし運転をしてるそうっすね。それなら自分たちと一戦やり合ってみないっすか? 一般人相手よりよっぽど全力が出せるっすよ」
     ギィがそう言いながら正面から突進し、背丈ほどある鉄塊の如き刀を上段から振り下ろす。
    「これはっ」
     まともに喰らうと拙いと男は飛び退く、すると刃はアスファルトを砕いて地面に穴を開けた。

    ●戦闘テスト
    「ソウルボードから試しに出てきてみれば、早速このような目に遭うとはな……」
     体に力を込めて止血すると、男は無手で構える。
    「いいだろう、ちょうどよい機会だ。実戦テストとゆこうか」
     跳躍した男が宥氣を狙い飛び蹴りを放つ。宥氣は刀で受け流そうとするが、男はそこから回転し後ろ回し蹴りを浴びせて宥氣を蹴り飛ばす。
    「今頃テストだなんて、意外とザ・ダイヤさんも悠長だね」
     そう鎌をかけながら玉が銀の剣を振るう。
    「ふん、余裕と言え。我等が真の力を発揮すれば、他のダークネスなど相手にならん。我等こそがダークネスの頂点に断つべき存在なのだ!」
     男は両腕をクロスして受けると、自ら跳躍して衝撃を受け流し、宙返りして着地する。
    「怖いですけど……頑張ります……!」
     晶子のライフルを持つ手が震える。それを自ら叱咤して押さえ込み銃口を男に向けた。着地した瞬間、その頭が撃ち抜かれ仰け反る。
    「まずは回復と補助からだね」
     幸斗が弓を構え矢を射る。それは仲間の兎紀に吸い込まれるように消え、傷を癒すと同時に力を与える。
    「よくもやったな……お前らなんかに負けてたまるかよっ」
     兎紀は男を睨みつけて駆け出す。
    「また蹴り飛ばされたいらしいな」
     男も対抗するように駆け出し、正面から跳躍し飛び蹴りを放つ。兎紀はスライディングするように避けながら、杖を振り抜いて男の背中に叩きつけた。
    「ちょこまかと!」
     バランスを崩しながらも着地し、兎紀を狙い駆け出そうとする。
    「闇へと退場願おうか……『一期は夢よ、ただ狂え』」
     作楽はカードを解放して腕を鬼の如く巨大化させると、走り出す男の腹に打ち込んだ。
    「貴船の一撃、たんと味わえ」
     体をくの字にさせて吹き飛ぶ男は、駐車してあった車にぶつかり窓ガラスが砕ける。
    「ぐふっ」
    「シャドウならば影の中にこそこそ隠れておれば良い物を……。目の前に出てくるから退治されるのじゃぞ?」
     美咲が挑発的に言い放ちながら、杖をスイングする。魔力が込められた一撃が、男の頬を殴り飛ばす。
    「さっきの一撃避けたっすね。思ったより強くないんじゃないっすか?」
    「舐めるなよガキが!」
     炎を纏わせた大剣をギィが地面を擦るように斬り上げると、男は体勢を崩しながらも対抗して炎を纏った蹴りを放つ。剣と蹴りがぶつかり合い、ギィの体が宙に浮く、同時に男の体も車に押し付けられる。
    「椿 序の型′葉桜絶衝′!!」
     そこへ宥氣が車を飛び越えて背後から後頭部へと炎を纏った蹴りを放つ。
    「させるか!」
     男も蹴りを合わせて互いが衝撃で弾かれる。男は飛び退いて仕切り直す。
    「なるほど、多少はやるようだ。だがその程度で俺を倒せると思っているのか! 見せてやる……我が四次元夢想流の力を!」
     男は不敵に笑うと、車を前蹴りで蹴り飛ばした。飛来する車を避けようと宥氣が跳躍すると、車を突き破って男が目の前に現れる。
    「せぃ!!」
     蹴りが宥氣の胸を直撃し塀に叩きつけられる。ばらばらと壁が砕け落ちる。宥氣が落下するよりも速く、男は宙を蹴るように加速すると飛び蹴りを頭に向けて放つ。
    「体育会系のノリだね。でも引き籠ってるよりかは健全で好ましいと思うよ」
     そこへ玉が影を伸ばす。影はまるで壁のように立ち塞がるが、僅かな抵抗の後に貫通する。だがその間にライドキャリバーのクオリアが割り込み蹴りを受けた。
    「どんな攻撃をしてこようと、僕が居る限り無駄だよ」
     幸斗が落下する宥氣を狙って矢を射る。矢は受けた傷をすぐさま消し去り、宥氣は受身を取って着地した。
    「ちぃっ、邪魔をするな!」
     男はクオリアを蹴飛ばし、踏み台にしてまた跳躍しようとする。だがそこへ光線が放たれ、その足が石化した。
    「耐久性のテストはどうですか?」
     振り向けば離れた位置で晶子が銃を構えていた。更にライドキャリバーが機関銃を撃ちまくる。そこへギィが緋色のオーラを纏った大剣を振り下ろす。男は直撃を受けて打ち落とされた。
    「あんまり丈夫じゃないみたいっすね」
    「げほっ……この程度で、俺にダメージを与えたつもりか!」
     男は立ち上がるとギィを睨みつけて咆える。
    「ほう……それならこれはどうじゃ!」
     死角から美咲が右手に持った槍を突く。男は前に踏み出しつつ回転して避けながら回し蹴りを放つ。すると美咲は左手の杖でその蹴りを受け、足を跳ね上げて男の腹に蹴りを放つ。
    「小癪な真似を」
     対して男は跳躍して足の上に乗り、ボールを蹴るように美咲の顔目掛けて足を振り抜いた。美咲は咄嗟に杖を差し込んで直撃を避けるが、そのまま後方へと吹き飛ばされる。
    「ふははは、良い、良いぞ! もっとお主の力を見せてみぃ!」
     槍を地面に突き刺して勢いを殺した美咲は嬉々と笑う。
    「生意気な小娘が、ならば見せてやる、我が四次元夢想流の奥義を……!」
     全身に黒い影を纏う男。だがその途中で頭上に人影が飛び込んだ。
    「この状況で暢気に構えてる余裕があるのかよっ!」
     兎紀が頭上から槍を繰り出す。
    「その程度、目を閉じても当たらぬ!」
     サイドステップで避けようとするが、足が根付いたように動かない。見下ろせば左右から伸びた影が足を呑み込もうと侵食していた。影の先では作楽と宥氣が男を囲んでいた。
    「……まあ慣れぬ現実と言う域で、己が領域の様に軽く技が決められると思っているのなら随分御めでたいな」
    「いいのか? こっちに気を取られて」
     その隙に兎紀の槍が男の右肩から胸へと貫く。
    「ぐぅおっ!」
     獣のように唸り、男は高々と足を上げて兎紀を蹴り上げる。

    ●シャドウ
    「鬱陶しい奴等め、一人ずつ潰してくれるわ!」
     傷が塞がり石と化していた足が元に戻る。そしてぐっと屈んで力を溜めると、まるでロケットのように飛び出した。
    「受けよ! 奥義! 縦横夢尽脚!!」
     落下してくる兎紀に向けて、男は影を纏って飛び蹴りを放つ。兎紀は槍でその一撃を受けた。だがすぐさま男は変化して回し蹴りを放つ。それを受ければ更に後ろ回し蹴り、前蹴り、横蹴り、膝蹴りと違う蹴りが次々と繰り出され、兎紀は受けきれずに被弾していく。
    「これで終わりだ!」
     最後に放たれた踵落としを受けて地面に向けて流れ星の如く落下する。
    「速度を弱めるね」
     幸斗が風を巻き起こす。それは兎紀の傷を癒しつつ落下にブレーキをかけた。
    「あっぶねー」
     そして落下地点に待っていた宥氣がその体を受け止めた。
    「助かったよ、サンキュー」
     着地した兎紀は上を見上げ、迎え撃つように跳躍した。
    「やられたら、やり返さないとな!」
    「またやられに来たか!」
     兎紀が拳にオーラを纏わせて放つと、男は蹴りを放つ。そこへ地上から放たれた光線が男を貫きバランスを崩した。
    「なに!?」
    「まだテストは続いていますよ」
     地上から晶子が銃を構えていた。蹴りは外れ、兎紀の拳の連打が男に浴びせられる。
    「ぐばあ!」
     男は鼻血を出しながら吹き飛ばされる。
    「この程度で!」
     男は電柱の側面に着地する。そして地上の見下ろすと、灼滅者に向かって突っ込んだ。だがその行く手をビハインドの琥界が塞ぐ。
    「邪魔だ!」
    「その足捌き、封じさせてもらおうか」
     蹴りを放つ男に、横から作楽が縛霊手で殴りつけた。霊糸が絡み付き、男の足を戒める。
    「これしきで我が足技を封じたつもりか!」
     男はまるでダンスするように縛られたままの足で蹴りを放つ。
    「足癖の悪いシャドウっすね」
     ギィはその蹴りを大剣の腹を盾にして受け止める。
    「こっちも戦闘テストをさせてもらうよ」
     玉はクオリアに騎乗して走り出す。そして距離を詰めると剣を振り抜いた。
    「くぅっ、体が重い……まだ馴染んでいないのか」
     男は腕でその刃を止め、反撃に蹴りを放つが、玉はクオリアを駆り素早く射程から離れた。
    「それ、よそ見している暇はないぞ!」
     美咲が槍で薙ぎ払う。男は倒れるようにそれを躱すと、逆立ちとなって蹴りを放ってくる。それを割り込んだライドキャリバーが受けて弾き飛ばされた。
    「面白い! なんとも器用なもんじゃのぅ!」
     美咲は笑みを浮かべながら杖を振り下ろす。男が足でそれを受け止めたところへ、美咲が男の顔面に蹴りを叩き込んだ。
    「ぶふっ」
     衝撃に男は倒れ込む。
    「お前ら大っ嫌いなんだよっ、だからここで消えちまえっ!」
     そこへ兎紀が杖を振り下ろした。男の腹を打ち動きを止める。
    「これで終わりだ! お前らがなんの目的かは知らないが、一切慈悲も容赦もしない!」
     続けて宥氣が炎を纏った刀を振るう。刃は起き上がる男の体を斬り裂いた。傷口が炎に焼かれ男は苦悶の声を漏らした。
    「ぐぅぉぉ!? シャドウである俺がこれ程の傷を負うなど、ふざけるな! 力が十全に振るえればこんな怪我を負いはしないものを……!」
    「持続時間もそろそろ終わりですかね?」
     晶子が引き金を引き、放たれた光線が男の腕を石化させた。
    「シャドウだろうとなんだろうと、真っ二つにしてやるっすよ」
     ギィが大剣を振り抜く。火花を散らしながらアスファルトを削って掬い上げるように剣が男を襲う。
    「当たらなければ!」
     避けようとする男の足に、桜のような形をした影が纏わりつき、琥界が衝撃波を放って男を怯ませる。
    「墨染め桜の吹雪に惑え」
     桜の枝の如き影を伸ばす作楽。その間に大剣が男の石化した腕を砕き、脇腹を抉った。
    「くっ……! ここが夢の中ならば、我が四次元夢想流の真価を発揮できるものを……」
     男はこの場は引こうと後ろに下がる。
    「もうお帰り? そんなザマで本番大丈夫?」
    「現実に馴染めば貴様等など敵ではない!」
     その様子を見た玉が挑発しながら影を伸ばす。思わず言い返して足の止まった男に影が届いた。戒めとなって男の体を縛り上げる。
    「何!?」
    「残念じゃが、これで仕舞いとしようかの」
     美咲が杖と槍を振るう。足を封じられた男はそれと残った片腕で凌ぐ。だがその腕も槍に貫かれ動かなくなった。
    「わざわざ現実世界で動く為のテストとか……現実世界に、何か欲しい物でもある訳?」
     そこへ幸斗がオーラの塊を撃ち込んだ。防ぐ事も出来ずに直撃する。
    「馬鹿な、まだテストの段階だぞ、本番の戦いでもないのに、俺がこのような……」
     ありえないと男は首を振り、影の戒めを引き千切ろうとする。
    「何がしたかったのかは知らないが、お前の現はこれで仕舞いだ」
     作楽が蒼薔薇の装飾を施した刀に抜き打つ。刃が一閃し、男の首を斬り落とした。

    ●テスト終了
    「シャドウ、現実世界におまえたちの居場所はないっすよ。ソウルボードから現実へ出てきたのを不運と思うっす」
     ギィが大剣を一振りし、残った骸を燃やし尽くす。
    「ふへー、なんとか終わったー」
     宥氣は戦闘モードを解除して息を吐いた。マフラーを巻き直し帰りにコンビニにでも寄ろうかと黄昏れる。
    「これでテスト終了ですね」
     晶子が男が灼滅されたのを確認し、緊張を解いて深く息を吐いた。
    「テストで終わって残念だったね。こっちは実戦テストができて有意義だったけど」
     玉が燃え尽きる敵を見下ろした。
    「出来れば万全な状態で戦ってみたかったのう」
     おでこの汗を拭いながら、美咲は残念そうに呟く。
    「ゾロゾロと、弱くなんのに出てきてなにがやりたかったんだろーな?」
    「何のつもりか知らないが、シャドウは夢の中で閉じこもっていればいい」
     兎紀は考えるのは苦手だと首を振る。敵の思惑が何であれ、悪意となるならば倒すだけだと作楽が剣を納めた。
    「持久力は……8分30秒ってところだね」
     幸斗の手元にあるストップウォッチの数字。それは戦闘テストの結果だった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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