秋桜色の武道祭

    作者:atis


     白、薄紅、唐紅と秋めく風にゆれるコスモス畑。
     そのコスモス畑の露天アイス屋さんに惹きよせられるように近づいていく高校生くらいの女の子の姿があった。
    「おねーさん、アイスひとつお願いします」
     アイスを待っている間、女の子はそこに置いてあったチラシに目が釘付けになった。
    「……『秋の武道祭り』? ふぅん……強い人、いっぱいいるかな?」
     よく見るとチラシを手にした女の子の瞳は、異様な輝きで満たされている。
     それは最強の武を求める、狂った武人のものだった。

    「皆さん、『武道祭り』がダークネスに狙われます」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は察知した未来予測を話し始めた。
    「ダークネスは女の子のアンブレイカブル……最強を求める、狂える武人です」
     姫子はぺんぎんのファイルを開くと、武道祭りのチラシを取り出した。
    「狙われるのはこのお祭りです。コスモス畑の近くにある小さな中学校が会場になります」
     姫子は広げた地図に赤丸をつけ、灼滅者達へと顔を上げる。
    「アンブレイカブルは、武道祭りに行けば強い相手と戦えると思っています。ですが、このまま放っておくと武道祭りがアンブレイカブルによる一方的な虐殺の地獄絵図になってしまいます」
     その前に、止めなくては……と姫子は灼滅者たちの顔を見る。
    「このアンブレイカブルは、暇つぶしに強い人と戦いたいだけです。ですから、皆さんにはこの武道祭りに参加してアンブレイカブルと戦って頂きたいのです」
     飛び入り参加も出来るから、参加方法を気にする必要はないという。
     戦う場所も、中学校の校庭の中央に特設演武場が作られるのでまったく問題が無い上、灼滅者も覆うバベルの鎖のお陰で一般人から姿を隠す必要も無い。
    「ただ……このアンブレイカブル、強いんです。鼻歌まじりで戦っていても、灼滅者9人分の強さはあります。彼女が本気になると……とても勝てる気がしません」
     姫子は手元のファイルに描かれたぺんぎんへと目線を落とす。
    「ですが彼女は、秋の一日を武道祭りで猛者相手に大暴れして過ごしたいだけです」
     つまり、充実した戦いをして彼女を満足させることができれば、被害が無くなる可能性が高い。
    「アンブレイカブルは、相手が『それなりの強者』で成長の余地があるとみると、その命を取ろうとはしない性質があります」
     風流ですね、と姫子は微笑む。
    「彼女は徒手で舞う様に戦います。一体多数も得意で、威力は尋常ではないです。ただ彼女は遊ぶ様に戦うのが好きですので、よほどの事が無い限り本気にはならないでしょう」
     ……本気にしてしまったらこちらの敗北は確実ですし、と姫子は付け加えると、ぺんぎんのファイルをそっと閉じた。
    「きっと皆さんなら、武道祭りを惨劇から救えると思います。どうぞよろしくお願いいたします」
     姫子はもう一度柔らかく微笑むと、灼滅者達へと丁寧にお辞儀をした。


    参加者
    ミア・フロレート(紅の軌跡・d00560)
    椎名・紘疾(中学生ストリートファイター・d00961)
    天衣・恵(天衣無縫の恵み・d01159)
    冬月・皇(破邪拳正・d02563)
    秋嶋・聡魅(ライトニングチャクラム・d02651)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)
    村河・虹南(七光のチェルシードール・d05904)

    ■リプレイ

    ●『武道祭り開催中』
     秋晴れの空の下、様々な道着を着たイカツイ男達でその中学校は賑わっていた。
     軒を連ねる屋台からは良い匂いが漂い、各武道団体の出店では体験教室などが開かれている。
     摘みたてコスモスの花束を抱えた秋嶋・聡魅(ライトニングチャクラム・d02651)は、不思議な形をした武器の使い方を出店で教わっている天衣・恵(天衣無縫の恵み・d01159)へと声をかける。
     そろそろ、校庭の中央に作られた特設演武場で演武が始まる時間だ。
    「つぇぇヤツは嫌いじゃねぇ。たとえ人に害をなさなくても、戦ってみてぇ所だな」
     演武場へと向かいながら、冬月・皇(破邪拳正・d02563)が腹の底から嬉しそうな声を出す。
    「倒せるチャンスがあるなら逃がしはしない。また別所の武道大会に出現されても困るのでな」
     小さなミア・フロレート(紅の軌跡・d00560)が凛と言う。
     やる気に溢れる2人の後ろで「女の子を殴るのは嫌なんだけど」と椎名・紘疾(中学生ストリートファイター・d00961)は、ずっとため息をついている。
    「でも、一般の人いっぱい殺されちゃうのは大問題だね」
     ダークネスにしてはただの戦闘好きってだけで悪い人って印象はうけないんだけどね、とアイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)。
    「強くなりすぎるのも考え物ってことかしら」
     柔らかな物腰の村河・虹南(七光のチェルシードール・d05904)が色っぽく言葉を重ね、演武場へと目線を移した時だった。

     ーーズダァーンッ!!

     特設演武場から轟音と共に悲鳴が上がった。
     そこには屈強な男が数名、泡を吹いて倒れている。
    「アンブレイカブルっていうからムキムキな男の人をイメージしてましたけど、可愛い女の子なんですね」
     聡魅が演武場に立つ、髪飾りをした長い髪の少女を見る。
     シフォンのトップス、焦茶のリブタイツにショートパンツ。ボア付きブーツは演武場の端にきちんと揃えられている。
     刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)は漆黒の三つ編みを翻し、反射的に聡魅と共に演武場へと駆け出した。
    「それなりに満足してもらって、丁重にお帰り願うしかないですね」
     聡魅は刃兵衛へと囁くと、少女へ挑みかかろうとする道着姿の武人達の前に笑顔で立ちふさがり、一般人をさりげなく遠ざける。
    「こんにちは強そうなお姉さん。良ければ私達と遊ばない?」
     青い髪をなびかせて、アイティアがにこにこと少女へ話しかける。
    「この武道祭の参加者の中じゃそれなりに強い方だと思うよ」
    「強い相手を望むなら、私達と勝負するが良い」
     チャリ、と愛刀『斬彦』の鍔を親指であげてみせる刃兵衛。
     ふぅん? というように、演武場から灼滅者達を眺める少女。
    「うっし、切り替えていくか」
     先程までため息をついていた紘疾がストレッチを始める。
    「ねぇ、やる前に名前あんなら教えてよ。決闘ってさ、名前を魂に刻むもんでしょ」
     少女に話しかけながら一通りストレッチをすませると、紘疾は両手にオーラを集中させ始めた。
    「あっ、俺は椎名紘疾ね。忘れないように刻みこんでやるぜ」
     言うと同時にオーラキャノンを放つ。
    「きゃあ♪ いたぁい♪」
     少女は放たれたオーラの衝撃を楽しむかのようにその身で受けて軽く飛ぶ。
    「私達は一人一人じゃ正直それ程でもないけど、連携して戦うのが得意かな?」
     アイティアが宙に舞うや否やフォースブレイクをダブルジャンプから派手にぶちかます。
    「少し位はお姉さんを楽しませることも出来ると思うよ」
    「ほんと? 元気なシスターさん♪」
     アイティアへと笑顔で近づく少女を、突然どす黒い殺気が覆う。
    「ちょっとちょっとー、私も混ぜろし!」
     はずむ恵の声。
    「あぁ、良いな♪ 素敵な殺気」
     少女に満面の笑みが広がっていき、少女を覆うバトルオーラが一段と輝きを増す。
    「選手交代だ、お相手願おう!」
     まずは挨拶、とミアが手刀に緋色のオーラを宿すと斬り掛かる。
     それを紙一重で捌いた少女がミアの手首に触れた、と思った瞬間、肘、肩関節を柔らかく極める。
    「お嬢ちゃん、帰るなら今だよ?」
     少女は楽しげに笑いながら、キリキリと少しずつ関節を絞りあげていく。
     ミアの足がじりじりと宙へと浮きかける。
    「……強い者は大好きだ。ボクも強くありたい。強ければ……何よりたくさんの者を護れる」
     ミアは脂汗を滲ませながら、狂気を孕んだ少女を見据える。
    「そうだね。……私も……」
    「次番、聡魅です!」
     緑のポニーテールを揺らし、リングスラッシャー片手に「演技開始」と手を挙げる。
     新体操っぽくピョーンと飛び上がってくねくねとするとリングスラッシャーをフープのように扱い、少女へと飛ばす。
    「これぞ、格闘新体操!」
     びしぃ! と指を突きつける聡魅。
    「わぁっ、妖精みたい♪」 
     少女はすごい、綺麗、とはしゃぎつつミアから手を離し、投げられたリングスラッシャーを同じく新体操のフープのようにその身で受ける。
    「武人として共感できるとこもあるけど、迷惑行為になっちゃったらダメよ」
     ナンセンス。
     上品に色っぽく囁きながら、虹南は龍砕斧で紅蓮斬を放つ。
    「……お姉さんも、イイ顔してるけど?」
     お姉さん、戦闘好きでしょ。
     先程までの上品さはどこへやら、豹変して襲いかかる虹南の顔面崩壊っぷりに、少女が笑みを浮かべる。
    「つぇぇヤツは、その心に守るべきもんを持ってるもんだ。……てめぇの守るべきもん、見せてもらうぜぇぇ!」
     炎の様に逆立つ赤髪の皇から、どす黒い殺気が放たれる。
     少女は皇の殺気を全身に浴びて高笑いする。
    「やる気だね! さあっ遊ぼうか!!」

    ●舞拳
     ピンクの髪を煌めかせ、ミアが抗雷撃を繰り出す。
     少女はバク転で避けながら、その足でミアに一撃入れる。
     紘疾が飛び出す。
    「真っ向から勝負すっぜ」
     やれること少ねぇし、と激しく閃光百烈拳を叩き込む。
     少女は百裂拳をパパパッと軽やかに捌く。
     素早い紘疾よりさらに一段速く、紘疾の懐に背中から入る。
     紘疾の突き出した拳を両手で包むや身体を低くし、ブンッと場外まで投げ飛ばす。
     紘疾は、正座でこの戦いを観戦中の屈強な男達の真ん中へ、ズシャリと落ちた。
     皇の影縛りが少女を絡めとる。
    「てめぇはつぇぇ。確かにつぇぇ。だが、少しずつ積み重ねていけば……!」
    「塵も積もれば山となるんですぅー!」
     恵の鋼鉄拳が、影に捕われた少女へと綺麗に入る。
     少女の死角へと、前衛に隠れるように刃兵衛の黒死斬が閃く。
     虹南は一呼吸すると、バトントワリングの様に龍砕斧をクルクルと回す。
     そして「敵は獲物」とばかりに斧を振りかぶり、強烈な一撃を少女に見舞う。
     少女は振り下ろされた斧の刃を紙一重でかわすと、ひらりと斧の上に立つ。
    「やっぱ強いな、アンタ。おかげで目、覚めたわ」
     演武場に戻ってきた紘疾が、少女に向き直ると集気法を始める。
     ゆっくりと息を吐いて体内の空気を全て出し、一度短く呼吸をして精神統一する。
    「面白くなってきたぜ」
     テンションをあげて仕切り直す紘疾。
     そこからは攻防入り交じる拳と拳の会話が一層激しくなる。
     後ろから皇のチェーンソーが唸り、アイティアのヒーリングライトが深手の仲間を温かく包む。
     刃兵衛のティアーズリッパーが、虹南の赤きオーラの逆十字が少女を襲う。
     聡魅のシールドリングが、天上の歌声が仲間を癒していく。
     紘疾とミアのオーラキャノンが少女を捉え、恵から黒死斬が放たれる。
     少女は灼滅者達に戯れつく子猫のように、柔らかく身を翻し、時には自ら攻撃の嵐に突っ込んでくる。
     攻撃と防御とカウンターを流麗に繰り広げる少女。
    (「やはり強いな……ヒラヒラして、捉え所がない。ぜひともその戦い方、指導して欲しい所だが……」)
     ミアは再び拳にオーラを宿し始める。
    (「今は止めなければ……一撃必中……集中しろ……!」)
     その拳を少女の脇腹へと叩き込む。
     一瞬後に、アイティアの清めの風が、ぼろぼろの前衛達へと優しく吹いた。

    ●成長の余地
     ミアと紘疾が後ろへと下がり、変わって恵が前へと出る。
     段々と表情が険しくなる灼滅者達とは対照的に、鼻歌まじりで笑うアンブレイカブル。
    (「私達にとっては真剣勝負でも、彼女にとっては遊び程度とは……何とも歯がゆいな」)
     刃兵衛がブラックフォームで生命力と攻撃力を高めていく。
    (「だがその強さは人である事を捨てた代償だ」)
     刃兵衛は胸元に浮かぶトランプマークに触れる。
    「例え今は敵わずとも、人として必ずその強さを乗り越えてみせる!」
     刻一刻と少女との力量差があらわになる。
    (「この子強すぎ! こちらの頭数はなるべく減らしたくないわね」)
     連携をうまくとりながら、戦闘を継続できるようにしないと。
     と、ダメージが大きくなっていく仲間を見渡す虹南。
     龍砕斧を握ると、ドラゴンパワーを解放する。
    「とにかく、今の私の全力を出すのよ」
     虹南は最前列で攻撃へと意識を向け直す。
    「って、ちょっとなにそれーっ?!」
     恵は縛霊撃で縛った少女に網を軽やかに破られ、ギャースカ騒ぐ。
     少女に全く歯が立たないことすら面白い。
     瀕死にもかかわらず賑やかな恵に、少女は嬉しそうに笑う。
     そして、側にいた虹南の関節を片手で極める。
     そのままふわりぴたりと恵の背後に入り身する。
     恵の重心を崩し後首に手をそえるや、3人ダンスを踊るようにくるり。
     優雅と思った瞬間、恵と虹南の身体は宙へと華麗に放りだされ、恵と虹南はそのまま意識を失った。
     少女が一瞬、皇を見失う。
    「残念だったな! こっちだぜ!」
     空中に高く跳んだ皇は宙でクルッと頭を下へ向ける。
     ダブルジャンプの2段目を地面に向かって蹴り出す。
     少女の後頭部へと抗雷撃で奇襲して少女を吹っ飛ばし、起き上がる少女をガシリとつかむ。
    「根性比べと行こうじゃねぇか!」
     皇は額のバンダナを取るや少女の首に巻きつけ、連続頭突きを繰り出し突き飛ばす。
    「女の子の顔に、何するのっ」
     少女は血飛沫にまみれた顔を皇に向けたまま、片手バク転して着地すると、ポケットからハンカチを取り出して血を抑える。
     後ろで集気法をしていたミアがオーラを拳に宿していく。
    「倒れても吹き飛ばされても諦めんぞ、最後まで喰らいついていく!」
     もう何度目になるだろう。
     ミアは少女へと紅蓮斬を放つ。
    「その気持ち、大好き♪ 強くなってね」
     歌うようにささやく少女。
     もはやミアの拳は見切られ、その小さな身体は地へと沈む。
    「こ、んな目に合うのは……ボクだけで十分だ……」
     ミアは満身創痍で言うことを聞かない身体とかすみ始めた瞳で少女を見上げる。

     刃兵衛が秋風に揺れる秋桜のように舞い、斬彦を上段から少女へと振り下ろす。
     少女は振り下ろされた斬撃をかわすや、刃兵衛の側方へふわりと入り身。
     日本刀の柄と刃に手をかけ、その勢いを使って下から上へと刃を返す。
     そのまま斬り上げ刃兵衛はまっぷたつに引き裂かれ……るはずだった。
     だがアンブレイカブルはにこっと笑うと刃をぴたりと止めて斬りあげない。
     刃兵衛はその圧倒的な力の差に、一歩二歩と後ずさると倒れこむように後ろ受け身で距離を取る。
     そこへ赤い髪を血でさらにどす黒く染めた皇が少女に飛びかかっていく。
    「ただひたすら……殴らせてもらうぜぇぇぇぇ!」
     もはや皇の意識は朦朧としている。
     少女を怒濤の如く殴り殴り、そしてうっかり胸を掴んでしまった。
    「あ……ごめ」
     その瞬間、皇の身体が宙に舞い、躊躇なく頭から地へとめりこむように叩き付けられる。
    「……守るもんがねぇヤツには……負けられねぇな……!」
    「その熱い心、好きかも♪」
     少女が皇へ微笑む。
    「ぜってぇてめぇよりも……強くなって、見せ……!」
     皇はそのまま白目を剥いて意識を暗転させる。
    「容赦ねぇ……」
     見守っていた観客達から思わずつぶやきが零れた。
     紘疾がぐるりと演武場を見渡す。
     残るは回復役の2人と自分と刃兵衛だけだ。
     足元に倒れる仲間を見る。
    (「負けんのは良いけど、殺されるわけにもいかねぇしな」)
     何かを決意したかのように一息つき『それ』に身を任せ始めた。
     紘疾の異変にアイティアが気づく。
    「紘疾さんっ?!」
     瞳がうつろになりかけ、身体がゆれ始める紘疾。
    「闇堕ちですかっ? だめですっ!!」
     聡魅もあわてて駆けつける。
    「そうだ」
     刃兵衛が斬彦を静かに納刀する。
    「武を高めるには、技のみならず己の心を磨いてこそ。力を求める余り闇に囚われてしまっては、積み重ねた全てが無駄になる」
     赤い瞳を静かに閉じる。
     そして柄に手をかけると瞳を開き、少女へと一瞬にして抜刀する。
    「だから私は……闇に堕ちた者に決して負けはしない!」

     ーーその剣閃は空を斬る。
     後ろに一歩。
     紙一重。
     果てしのない程、際立つ実力差。

     そして少女は無邪気に笑った。

    ●その背中
     虹南は痛む身体を地に預けたまま鱗雲を見上げる。
     薄い意識の中、戦いは終わったのだと理解する。
    (「この戦いが無事に終わったってことは、充実した満足な戦いが出来たってことよね……少し位、達成感に浸ってもいいのかしら……?」)
     戦いが終わり、紘疾は闇に飲まれる前に引き戻された。
     傍らでは、刃兵衛が片膝をついてギリと奥歯を噛み愛刀斬彦を握りしめる。
    「……我が矜持は決して折れはしない……」
     その横からは、ほよんとした声が上がる。
    「筋肉痛が、あうあうあう~」
     普段使わない筋肉を使ったから~と聡魅が1分間ストレッチを始める。
    「ん~っこの感じ、久しぶりっ♪」
     演武場の真ん中ではアンブレイカブルの少女が満足げに破顔し、気持ち良さそうにのびをする。
     ほこりや血をハンカチで払うと灼滅者達に背を向け、ブーツに足を入れる。
    (……無理して深追いはしないがな)
     満身創痍の灼滅者達。 


    「待って、名前教えろしー。絶対あんたに追いついてぶっ倒してやんよ」
     恵の声に少女がぴたりと歩を止める。
     ミアも全身を襲う激しい痛みの中、なんとか少女に指を突きつけた。
    「次はお前を倒す……覚えておけ、ボクの名前はミア・フロレートだ。お前の名前は?」
     次々と浴びせられる同じ問いに、少女がゆっくりと振り返る。
    「私は……ルカ」
     少女の髪飾りを手にしたエクソシストが、まっすぐその瞳を見据える。
    「そう、私はアイティアっていうの。次会う時にはもっと強くなっててみせるから、楽しみにしてると良いよ」
     アンブレイカブル・ルカは聡魅が演武場の端に置いていたコスモスの花束から一輪引き抜くと、灼滅者達に微笑んだ。

    「今日は楽しかった。ありがと。……また遊ぼうね♪」

     そしてアンブレイカブル・ルカは、武道祭りに参加していた屈強な男達に賛美と握手を求められながら、長い髪を秋風になびかせてコスモス畑の方へと消えていった。

    作者:atis 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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