ひなたの誕生日~昼休みを中庭で

    作者:海乃もずく

    「こんにちは。いい天気ですね」
     昼休みに入って間もない廊下で、ばったりと顔を合わせたのは、鈴森ひなた(高校生殺人鬼・dn0181)。
     ひなたの手には、購買部のサンドイッチと、野菜ジュースがあった。
    「きょうは、グラウンドの芝生の上で、お昼にしようと思って」
     そう言ってほほ笑んだひなたは、グラウンドの一角を指し示した。
    「よければ、一緒に行きませんか?」
     
     秋の植物に彩られ、芝生に覆われたグラウンドの一角。
     陽光の下は、11月でもぽかぽかと温かそう。パンや弁当を携えた生徒達の姿が、あちらこちらに見える。
     昼休みの時間は限られているけれど、食後に芝生でくつろいだり、話に興じたり、軽く体を動かすくらいの時間はあるだろう。

     ひなたは、『病院』から武蔵坂学園に移って、1年弱。
     学生になったのだからと、『学生らしく』過ごそうと思っているけれど、時折、『学生らしく』って何だろう、と思うことがあるという。
    「今日は誕生日なんですけど、誕生日の過ごし方がわからないので……結局、いつも通りにしています」
     そう言って、ひなたはわずかに苦笑した。


    ■リプレイ

    ●天高い秋晴れの空の下
     晴れ渡った秋の空、あたたかな日差しの下で。
     時刻は昼休み、少し長めの自由時間。どこで何をして過ごしていますか?

     秋半ば。朝晩は寒いけど、昼間はまだまだ暖かい。
     森沢・心太(二代目天魁星・d10363)と水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)は、中庭でお昼。
    「今日はちょっと気合を入れた弁当ですよ。おにぎりはいつものですが、おかずは叉焼です!
     そう言った心太が見せたのは、味の染み込んだ大きな肉。
    「久しぶりに猪を狩ったので、叉焼にしてみました!」
    「ほえ? 猪なのっ?」
     こういうのジビエ料理って言うんだっけ、とゆまはまじまじとチャーシューを見る。
    「普通に作ったのと、最近知った紅茶煮とかも作ってみました」
    「ねね、しんちゃん、わたしのおかずあげるから それ、少し食べさせて?」
     猪チャーシューと、ゆまのおかずが互いの手元を行き来。
    「あ、鈴森さーん! ちょっとだけ一緒にどうですか? 今回は乾杯の音頭無くて良いですよー」
     見かけたひなたにも声をかけて。思い出すのは、ゆまとひなたが一緒に行った、桜の季節のあの依頼。
    「今日お誕生日でしたよね? デザートに作ったカップケーキでよかったら! おめでとうです!」
    「あ、今日が誕生日なのですね」
     おめでとうございます、と心太も猪の叉焼をひなたへと。
    「ありがとうございます、心太さん、ゆまさん」
     ひなたは物珍しげに猪肉チャーシューを一口。
    「癖は強いですが、なかなか美味く出来たんですよ」
     一口食べて口元がほころぶひなたを見て、心太は笑顔で叉焼のかたまりを差し出した。

     お誕生日おめっとさんっす、とギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)からひなたが渡されたのは、翡翠の勾玉のペンダント。
     高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)は小さな花束を、紫音・寧音(中学生サウンドソルジャー・d23380)からは押し花にした、四つ葉のクローバー。
    「ありがとうございます。すこく嬉しいです……!」
    「できれば、今後とも仲良くできれば嬉しいです」
     笑顔のひなたに手を振り返し、ギィら【天剣絶刀】は柔らかい芝生の上で、お弁当タイム。
    「バゲットサンドイッチ、みんなの分まで作ってきたっす」
    「むぅ、こういうのは彼女の一人で女の子である私の役目では?」
     いえ、ありがたく食べますけど、と妃那はギィのサンドイッチを一つ。
    「ぅ、単純な割に美味しいですね、バゲットサンドイッチ……微妙に悔しいです」
    「フランスパンを適当に切って真ん中に割れ目を入れて、ハムやトマト、チーズを挟んだ男の手料理っすよ」
     ギィのサンドイッチを食べながら、妃那は複雑そうな表情。
    「本日はお誘い下さってありがとうございます」
     ぺこりと頭を下げる寧音のお弁当は、お赤飯のシソ巻きおにぎり、から揚げ、ほうれん草のお浸し、卵焼き、から揚げ、ミニトマト。
    「はい、どれでも好きな物をどうぞ」
     ギィは寧音のから揚げを口へ。
    「寧音さん、すごく美味しいっすよ」
    「ふふ、喜んで頂けたなら良かった」
     気合いを入れて多めに作ってきたかいがありました、と寧音。
    「あ、そうだ。折角だからギィさんに『あーん』をしてあげますよ。まぁ彼女として、その、これぐらいは」
     顔を赤らめた妃那が、ギィへとおかずを一つ『あーん』。
     うん、食べさせていただくとおいしさも格別、とギィは、寧音へと視線を向ける。
    「寧音さんとも、早くこういうことが出来る仲になりたいっす」
    「え、えっと……食べさせるのですか? ど、努力します」
     かろうじて答えた寧音は、耳まで真っ赤。

    ●秋の色が濃くなる中で
    「ヤッホー、ヒナチャン」
     馴染みのあるクラスメイトの声に、ひなたは振り返る。
    「一人でゴハン食べてナイで、一緒に食べようヨ!」
     人なつこく、レオ・レーヴェレンツ(パンダヒーロー・d23284)の隣で、葛葉・司(天微星の戦姫・d18132)が手招きする。
    「鈴森が来ても良い様に少し多めに作ったから、遠慮なく食べればいいよ」
     蒼間・舜(脱力系殺人鬼・d04381)が、座れる場所をあけながら重箱のフタを開ける。
    「誕生日なのに、いつも通りな弁当で悪いけどね」
    「これで、いつも通りですか!? こんなに豪華なのに……!」
     ひなたが驚きに目を見張る。重箱の中身は、エビチリやブロッコリーなど色とりどりのおかず、つやつやの卵焼き、ピーマンの肉詰め、生姜焼き、コロッケ等々のメイン類。
    「シュンがオカズいっぱい作ってきたカラ、ヒナチャン一人増えたって大丈夫!」
     ごま塩をふった俵型おにぎりを手に、舜が補則する。
    「高校一年がウチの寮3人居るから、誰かのキャンパスに集まって昼飯食おうぜってしてるんだよね」
    「へえ……いいですね、そういうの」
     お言葉に甘えて一つ、とひなたは豚バラ肉のアスパラ巻をひょい。
    「学生らしさってまぁ、そういう友達とかで集まって飯食いながらどーでもいい話する事でも良いんじゃない」
    「どーでもいい話……」
     舜の言葉に、ひなたは考え込む。そんな彼女を見て、司が小さく笑った。
    「好きな殿方のお話や、好きな服の事とか。好きな音楽や歌手のお話もされるのではないでしょうか」
     昼休みにお食事しながらお話するのでしたら、男子と女子では話す内容が違うのでないでしょうか、と司は言う。
    「ボクだったラ、絵のコトトカ、ファッションのデザインの話トカするヨ~。」
     デザイナー志望だというレオは、洋服の話大好き! と目を輝かせて話を続ける。
    「ヒナチャンも、そのナース服みたいなの以外に服ナイノ? 色んな服着たらキット楽しいヨ!」
    「……実は、ちょっと憧れます」
     ファッションとか、アクセサリーとか。
     照れ気味に答えたひなたに、司が頷く。
    「鈴森さんの様な人造の方でも、わたくしの様な元より灼滅者の方でも、年頃の学生ですもの。好きな事をすれば良いと思いますのよ」
     まだお昼休みはある。友達同士好きな物の話をして、学生らしく時間を過ごそう。

     水貝・雁之助(おにぎり大将・d24507)と、カンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)は、同じ元病院組として誕生日を祝うために。
    「ひなた殿は誕生日おめでとうじゃ! 父上と一緒に祝わせてもらいに来たぞ?」
    「此れ誕生ケーキとプレゼントなんだなー」
    「きれいなタルト……! 柿、ですか?」
    「11月10日の誕生果は、次郎柿なんだなー」
     プレゼントの栞には、誕生花グラジオラスと、誕生鳥ショウジョウトキが描かれたている。雁之助自身が描いたものだという。
    「プレゼント代わりに聞いてくれるかの?」
     カンナはなれた手つきで、馬頭琴を両膝にはさんで構える。
    「妾や父上の所属先では、こういうのは何時もちゃんとやってたから 妾は誕生日の曲の演奏は得意じゃからな」
    「ありがとうございます。こんなにいろいろ……」
    「折角のひなた殿が生を受けた事を祝う日なんじゃし、プレゼントを渡したり、ケーキを食べたりして騒がんと勿体ないしの」
     カンナの言葉に、ひなたはためらいがちに問う。
    「そういうものでしょうか、誕生日って」
    「こう言うお祝いは僕の所属してたとこでは毎回きちんとやってたけど、とても大事な事だし、ね?」
     学園に来られなかった皆の分も、しっかり楽しもう?
     雁之助のおにぎりは、自分で育てた米と海苔を使っているのだという。食べさせてあげている親子の姿がほほえましくて、いいなあ、とひなたも口元をほころばせる。

    ●誕生日という日の過ごし方
    「ひなた君、どうしたの?」
     イリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)は、お弁当を広げたままひなたを見ていた。
    「イリスさんは、お弁当は手作りなんですか?」
    「毎日、弁当を作っているけど、今回のはとびきり美味しいのだ」
     誕生日の過ごし方について……という話題に、普通に過ごせば良いんじゃないかな、とイリスは言う。
    「イリスは自分の誕生日気づかずに過ごすけど、その時、『おめでとう』と言ってくれる友達がいるだけで嬉しいのだ」
     ひなたへと差し出される、イリスのお弁当。
    「そうだ、誕生日の祝いにイリスのおかずを一品進呈しよう」
     手作りのお弁当のおすそわけ、それも嬉しい誕生日プレゼント。

    「学生らしくと思うのであれば学習を勧める」
     片倉・純也(ソウク・d16862)との会話は常に興味深いと、ひなたは思う。
     答えづらい時もあるが、純也の問いは、しばしば予想外の方向からやってくる。
    「学生として日常を学び過ごす自負も安定に貢献すると考えている」
    「……自分が学生であるという自負、でしょうか……」
    「以前其方に提示された授業離脱からも、学習出来た事はある」
     ひなたの記憶の中で、意外な場所で出会った彼の姿がよみがえる。
     ……あの時の話題は、何だったか。
    「今もだが、場の多くの各位の表情仕草、声音等に緊張が無い。納得し難いが、あれは肯定される事の多い状態なのだと俺も把握した」
     意外な言葉に、今日何度目かの予想外を感じなから、ひなたは隣に純也を見上げる。
    「……、個人の祝日おめでとう」
    「はい。……ありがとうございます、純也さん」

     芝生の一角、集まった病院出身組は、めいめいの弁当を広げていた。
    「そういえバ、ボクやひなたサン、同胞がこの学園に来てもう1年になるんだネ」
     アカネ・アシオフォード(銅山の光と影を抱きしめて・d25416)の膝の上には、アルマイトの弁当箱。水筒はアルミ製。鉱夫のお弁当を再現したとのこと。
    「人はナゼBirthdayお祝いするか知ってる? 命がかけがえのない大切なものだって事を知ってるからなんだって」
     こうしてミンナとこの青い空の下でランチ食べられるのも、無事に1年を生きられたおかげ、とアカネは言う。
     那須の病院で、斃れていった同胞の分も……。
    「気づけばもう、1年なんですね」
     学生としての1年、灼滅者としての1年。
     ……しっかり過ごせているだろうか、とひなたは何度目かに自身に問う。
    「わたしはまた、学校に通えて楽しいよ」
     四辻・乃々葉(よくいる残念な子・d28154)はひなたに向かって屈託なく笑いかける。
    「こんな風にお昼を食べたり話したり、あと勉強したり。それだけでも十分学生らしいんじゃないかな」
     逆にわたしは灼滅者らしくないかもね、と乃々葉は照れ笑い。
     誕生日おめでとう、鈴森さん、と乃々葉からひなたに渡されたのは、デザートのプリン。
    「やっぱり、おめでとうと言ってもらえた方が嬉しいと思うから」
    「嬉しいです。乃々葉さん、ありがとうございます」
     こみ上げてくる思いを胸に、ひなたはプリンを両手で包む。
     和らいだひなたの表情に、雨宮・音(継接硝子・d25283)もにへっと笑う。
    (「誕生日っつのは、楽しくって嬉しいモンだろ」)
     音が持参したのは、野菜のケーキ。
    「見た目も女子ウケ系だし、ココの結構美味いんだよね」
     色とりどりの可愛いケーキに、アカネや乃々葉も目を輝かせる。
    「学生らしー、とか、私もよくわかんないんだよなァ」
     でもなんか、今すげェ、学生っぽいカンジするくね?
     選びきれず、野菜のケーキを2種類確保したひなたに、音は笑みを浮かべる。
    「つか、私から見たらキミはじゅーぶん、カワイー女子コーセーだと思うし。うん」
    「そ、そうですか? よくわかりませんが……」
     顔を赤くするひなたは、ずいぶんと打ち解けた表情で。音は心中、こっそり思う。
    (「ちょっとの間だけど、キミがイイ気分で過ごせると、いーな」)

    ●日常という名のトクベツな時間
     柏木・あやめ(高校生魔法使い・d31455)は、ひなたと一緒に芝生に座る。
    「誘ってくれてありがたい。転入してきたところで知り合いもいないため、昼休みをどうすごそうかと思っていたのだ」
    「ご迷惑でなかったなら、よかったです」
    「昼食がサンドイッチなら手が汚れないし、これで遊ばないか?」
     あやめ持参の携帯ゲーム。シンプルな落ちものパズルも、これでなかなか、奥が深い。
     熱中しかけたひなたの視界に、こちらに向かってくる2人組が飛び込んでくる。
    「鈴森さん、お誕生日おめでとう……!」
     山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)は、片手に大きな紙袋、片手に鳴海・歩実(人好き一匹狼・d28296)の腕をつかんで。
    「ん……特別なお昼ご飯を用意してきた」
     透流はひなたの頭にお誕生日の三角帽子を乗せ、誕生日ケーキを出し、お祝いのクラッカーをぱん!
    「お誕生日は、やっぱり誰でも祝って欲しいものだと思うから……!」
     透流の言葉に、びっくり顔からだんだんと笑顔になるひなた。
    「鈴森さん、誕生日おめでとうございます」
     一方、歩実は何も知らずに透流に連れられてきたため、祝う準備は何もしていない。ちょっと決まりが悪いけれど、お祝いの言葉と共にお弁当の唐揚げを差し出して。
     聞けば、歩実は行く先も理由も教えられなかったとかで。
    「いきなり連れてきちゃって、ごめん……」
     謝る透流に、「正直、連れてきてもらって嬉しい」と歩実ははにかみ気味に答える。
    「ホントだよ」
    「今、あやめさんに携帯ゲームを教わってたんです」
    「一緒にやらないか?」
     透流と歩実も一緒に、携帯ゲームの対戦パズル。
     みんなで集って、楽しい昼休みのひとときを。

     名を呼ばれて見回すと、木の下に狼川・貢(ボーンズデッド・d23454)が立っていた。
     そういえば先刻、通りすがりに見えた貢の弁当は、煮物や玉子焼きなど、ひどく家庭的な内容で。家事スキルの微妙なひなたとしては、少し羨ましくも思えていた。
     ひなたに貢が渡したのは、ラッピングされた薔薇の蕾が一輪。花弁は柔らかなピンク色。
    「いただいていいんですか?」
    「花束やケーキも考えたんだが、午後の授業に差し支えるかと」
     バイト先のもので悪いが、とクッキーを添えた貢は、しばらく黙った後で、口を開く。
    「改めて、鈴……、……」
     言葉を途切れさせた後、後に続いたのは、小さいけれどはっきりとした声で。
     ――ひなた、と。
    「……はい」
    「誕生日、おめでとう」
     ……なぜだろう。
     耳まで赤くなった貢を見ていると、なぜかひなた自身の頬まで、徐々に赤くなってくる。

     大神・狼煙(愛を求めて己が闇に沈む者・d30469)は食後のひなたへと声をかける。日頃のお礼もかねて、お祝いを。
     何が好みか分からないからと、用意したものはいくつかのショートケーキ。ひなたは真ん中のチーズケーキをいただいて。
    「狼煙さん、ブレイズゲートへしばしば誘っていただいてありがとうございます」
     改めて挨拶と、いくつかの雑談を交わしつつ。
    「誕生日とは、あなたが生を受けてこの世に生まれたことに感謝する日です。私も感謝しているのですよ? こうしてあなたと出会えたのですから……」
     隠し持っていたプレゼントの中身は、クローバーの飾りがついたイヤリング。
    「きれいですね……ありがとうございます。大切にします」
     クローバー、その花言葉は『幸運』。
    (「もう一つありますが……まぁ誤解されないでしょう」)

    「鈴森君、誕生日おめでとう!」
     ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)の元気な声。
    「何かプレゼントしようかと悩んだのだけれど、ルリは歌を贈るよ!」
     他の皆にも声かけて、とルリはHappy birthdayの歌声を響かせる。周囲の皆も加わって、声は一つ一つ重なっていく。
     四季・彩華(魂鎮める王者の双風・d17634)、紅羽・流希(挑戦者・d10975)らの声も混じり、ひなたは周囲を見回した。
     たくさんの出会いと、Happy birthdayの言葉。
    「鈴森君と出会えた事は、ルリにとって宝物なの。だから誕生日のお祝いができるのはスゴク嬉しい♪」
     誕生日おめでとう。この一年が、鈴森君にとって幸いでありますように♪
     そう言って笑うルリが、とてもまぶしくて。
    「……私も……」
     ルリの手を握り、ひなたは目を潤まる。
    「ルリさんに会えて、たくさんお話できて、すごく嬉しいです……!」
     ルリだけじゃなく、武蔵坂の一員になれて、たくさんの出会いがあって――。
     言葉に詰まったひなたへと、彩華は綺麗にラッピングされた自作のクッキーを手渡す。
    「これ、よかったらどうぞ。ささやかなものだけど」
     ひなたの手元に、また一つプレゼント。
     昼休みだけで、とてもたくさんもらったプレゼント――お祝いの気持ち。
    「誕生日って、自分が生まれた日で、一つ成長する日。特別な日で、何気ない普通の日。だからこそ、こうやってささやかな楽しみを噛みしめるのも、誕生日だと思うんだ♪」
     そう言って朗らかに笑っ彩華は、自分の弁当の包みを取り出した。
    「よかったら、一緒に。いいかな? ふふ、今日誕生日だと聞いたものでね」
    「はい。彩華さん、ありがとうございます……!」
     いつもの武蔵坂、普通の昼休みの中の、誕生日。
     何気なくて、普通の、特別な日。
     今日はきっと忘れられない、大切な日になる――その思いを、ひなたは心からかみしめた。

     昼休み終了のチャイムが鳴り、学生達は教室へと戻る。
     誕生日でも、誕生日でなくても、日常はそれ自体が大切で、特別で。
     明日の昼休みはどうやってすごそう、それを考えるのも、また楽しみな日常の一部。

    作者:海乃もずく 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月25日
    難度:簡単
    参加:23人
    結果:成功!
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