だって、大きなお尻はかわいくないから。

    ●闇堕ち
     潮沖・梨衣奈(しおおき・りいな)は高校1年生の少女だ。彼女には悩みがあった。
    「……なんで私のお尻って、こんなに大きいのかな…………ママのは大きくないのに」
     鏡に映った自分のお尻を見て、梨衣奈が溜め息を吐く。
    「うーん……もっと身長と胸があればバランスいいかもだけど…………」
     背は平均より少し低く、胸のサイズも若干控え目。それなのに、お尻はちょっと大きめ。
     極端に大きいというわけではないが、お尻は小さい方がかわいいと思っている少女からすると、それは大きくてかわいくないお尻だった。
    「…………欲しい物は手に入らないのに、要らない物は持ってるんだよねぇ……」
     と、もう1度溜め息。
    「……好きになった人が、お尻が小さい女の子が好きだったらどうしよ……」
     まだ恋愛経験はないが、いつかは恋をするのだろう。素敵な恋人がいたらいいなとは思っている。
     もし、自分が好きになった相手に好きになってもらえなかったら……それは、とても苦しいことだろう。
    「……そんな思いをするくらいなら……」
    『恋愛なんてしない方がマシ──そう思ってる?』
    「っ!?」
     誰かの声が聞こえたような気がして、梨衣奈が周りを見る。しかし、この部屋には彼女以外には誰もいない。
    「……気のせいか……」
    『恋に臆病になっちゃってるんだね』
    「また聞こえた…………何なの……?」
    『大丈夫だって。大きめのお尻が好きな男もいるからさ』
    「…………だけど、私が好きになった相手がそうとは限らないじゃない……。私だって、大きいお尻が好きな人を好きになる……ってわけじゃないもの。見た目が全てだとは思わないけど……私にだって、見た目の好き嫌いくらいはあるよ。男の人だって、そうなんじゃないの?」
    『あんたが好きになった相手に、あんたを好きになってもらえばいいだけじゃない』
    「……そんなの、できっこないよ」
    『できるわよ。あんた、かわいいんだからさ』
    「……かわいい……? 私が?」
    『そーそー。男なんてメロメロにしちゃいなさいよ、あんたの魅力でさ』
    「私の魅力……?」
    『あんたはかわいいんだから、自信を持ちなよ。男はみんな、あんたの虜だよ。試しに、誰かに声をかけてみなさいよ。逆ナンよ、逆ナン。あんたは愛される。あんたの欲望は、あんたが叶えればいい──』
    「……私の欲望って……何……?」
    『女は愛情がないと生きていけない。あんたも女なんだし、あんたにも愛情が必要なの。女なら、愛されたいって欲望を持ってるもんよ。あんたも愛されたいでしょう? かわいいって言って欲しいでしょう? 大丈夫よ、あんたはかわいいんだから』
    「……私は……かわいい…………」
    『さぁ、あんたの欲望を叶えなさい。そのための力は、もう持ってるんだから──』

    「胸に悩む子を救うことは出来たけど……」
     少女の如き風貌の少年──弛牧・星亜(星屑フィロソフス・d29867)は、小さな胸がコンプレックスの少女を救うために戦ったことがある。2回も。
    「大きなお尻に悩んで闇堕ちする子だって、いるかもしれないね」
     彼の言葉通り、大きなお尻にコンプレックスを抱く少女が闇堕ちした。その少女に関する情報を、星亜が武蔵坂学園にもたらすことになる。

    ●教室にて
    「闇堕ちしちゃった女の子がいるの。彼女を救ってきてくれないかしら?」
     保健室の先生のような格好をして、野々宮・迷宵(中学生エクスブレイン・dn0203)が言った。
    「弛牧くんのおかげで、彼女が姿を見せる場所は判明しているわ。あなたたちには、オフィス街にある広場に行ってもらいたいの」
     そう言って、迷宵が地図の上に指を置く。
    「闇堕ちしたのは潮沖梨衣奈さん。高校1年生。大きめのお尻に悩んでいたんだけど……そこをダークネス──淫魔に付け込まれたらしいわ」
     そして現在、彼女は淫魔になりかけている。しかし、今ならば救出も可能だ。彼女にはまだ、人間の──梨衣奈の意識が残っているからだ。
    「彼女を救うためには、3つの条件があるの。1つめは、彼女を説得すること」
     梨衣奈は自分の体つきに悩んでいた。その体型のせいで、恋に奥手になっている。
     現在は恋をしていないが、いつか恋をした時に苦しい思いをするかもしれない──そう考えていた。
    「2つめは、彼女を倒すこと。ディーヴァズメロディとパッショネイトダンスの2つが使えるみたいね」
     闇堕ちした人間を救出するには、説得するだけでは足りないのだ。
    「3つめは、彼女に灼滅者になる素質があること」
     説得して倒すことができたとしても、梨衣奈に素質がなければ救出には至らない。
     素質があれば、梨衣奈は灼滅者となる。
     なければ、灼滅される。
     素質の有無は、エクスブレインにもわからない。
    「彼女を説得することが出来なかったり、彼女に素質がなさそうな時には、闇堕ちが完了する前に灼滅をお願いするわ」
     完全に闇堕ちしてしまえば、灼滅は困難になる。
    「素質についてはどうしようもないけれど、あなたたちにも出来ることはある。よろしく頼むわね」


    参加者
    大業物・断(一刀両断・d03902)
    月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)
    天城・翡桜(碧色奇術・d15645)
    双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)
    月叢・諒二(月魎・d20397)
    白樺・純人(ダートバニッシャー・d23496)
    冬咲・白雪(怯えるミルクティー・d27649)
    弛牧・星亜(星屑フィロソフス・d29867)

    ■リプレイ

    ●淫魔の囁き
     残念ながら、エクスブレインは万能ではない。
     ダークネスが起こす事件の全てを予測できるわけではなく、闇堕ちした一般人についても同様だ。
     今回、潮沖・梨衣奈の闇堕ちを把握できたのは幸運だったのだ。弛牧・星亜(星屑フィロソフス・d29867)の情報提供のお陰でもある。
     ライトアップされた噴水が幻想的な夜──梨衣奈がこの広場に来た。
    「こんな時間に出歩いてるなんて、悪い子たちだね」
     灼滅者たちを見て、梨衣奈が言った。
    「私もだけど」
     そう言って、クスクスと笑う。
     エクスブレインの未来予測がなければ、彼女と出会うこともなかっただろう。
     今、この広場にいるのは梨衣奈と灼滅者たちだけだ。一般人はいない。月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)の殺界形成によるものだった。
    「そこの女の子は、もう寝る時間じゃないかな?」
     梨衣奈の視線の先には、大業物・断(一刀両断・d03902)の姿。小学3年生である。
    「それがし……大業物断……よろしくね……」
    「オーワザモノ・タチちゃんね。幽霊と一緒の女の子……か」
     断の隣にいるのは、ビハインドの剣菱・みやこだ。
    「そっちにもいるけど」
     男装の少女──天城・翡桜(碧色奇術・d15645)の横にも、ビハインドの唯織がいる。
    「それで、タチちゃん。どうして、こんな時間にこんな所にいるのかな?」
    「コンプレックスは……誰にでもある……」
    「っ!」
     梨衣奈の顔色が変わった。
    「でもね……それが人に迷惑をかけちゃ……めーなの……。自分を好きになるために……それがし達が……手助けするの……」
    「お尻のことはしらゆきにはよくわからないのですが、お姉さんからは悲しくてツラいっていう感情のニオイがするのです……」
     人狼の冬咲・白雪(怯えるミルクティー・d27649)が、両親の形見であるうさぎのぬいぐるを抱きしめて言った。
    「悩んでいるなら助けてあげたいのです……」
    「…………」
     梨衣奈が灼滅者たちを見る。
     そして考える。
     幽霊(ビハインド)を除けば、ここには少年少女しかいない。オフィス街という場所的にも、夜という時間帯的にも、大人がいないのに少年少女がいるのは不自然ではないか。
     断が言ったコンプレックスという言葉は、幼い少女がよく知っているものだという関心もあると同時に、まるで自分のことを知っているかのようだった。白雪もお尻と言った。
     なぜかは知らないが、自分がお尻のサイズに悩んでいることを知った上で、この場にいた──待っていたのではないか。
    「……」
     思考する少女に、彼女の魂に巣食う女が話しかける。
    『あそこにいる連中は、あんたの敵。だって、おかしいでしょ? 芸能人でも何でもない、ただの女の子のことを知ってるなんてさ』
    「そう……だよね」
     灼滅者たちに向ける視線の中で、警戒心よりも敵意が大きくなっていく。
     それを感じ取り、翡桜がサウンドシャッターを展開。
    「さて──救おうか」
     月叢・諒二(月魎・d20397)がスレイヤーカードを手にする。彼に倣って、各々が武装を展開。
     人造灼滅者の白樺・純人(ダートバニッシャー・d23496)は、手足が猛禽類の鉤爪のように変化していた。
    『ほらね。やっぱり敵だ。倒しなさい、あんたの敵を。あんたの未来のために』
    「……うん。わかった」
     梨衣奈は、淫魔の囁きに従うことにした──。

    ●少女の未来
     梨衣奈が歌う。その神秘的な声は、攻撃と化して千尋を襲った。
    「なりそこないとはいえ、やっぱりダークネス……か」
    「回復、いきます!」
     双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)が片足を高々と上げた。四股──相撲の基本の1つである。
     上げた足が地に着いた時、巨大なオーラの法陣が出現。
    「私は今の身体で不自由してませんが……闇堕ちしてしまうということは、身体の悩みもなかなか深刻ですね!」
    「……いろいろと大きい女の子ね」
     モデルのような長身にグラビアアイドルのような巨乳。ついでに声も大きい。
    「大きなお尻、素敵だと思います!」
    「……大きいのが素敵……ですって?」
    『耳を貸す必要はないわ』
    「だって、お尻が大きいと言う事は下半身が安定すると言う事……相撲の才能があると言う事ですよ!」
    「……それって、筋肉の大きさが大事なんじゃ……」
    「相撲こそ、世界最強にして最高の武道なのです! 相撲ヒロインたる私としては、割と真面目にお勧めしたいんですが!」
    「悪いけど、相撲をするつもりはないから」
    「……駄目ですか……。じゃあ、尻相撲ならどうでしょう!」
    「尻相撲?」
    「尻相撲なら、女の子でも敷居が低いですよ!」
    「遠慮しとく」
    「……そうですか。仕方ありません。ここは素直に引き下がりましょう!」
    「白炎蜃気楼なのです」
     白雪が白き炎を放出。その炎には、予知を妨げる効果がある。
    「方向性こそ違えど、君の危惧には共感を覚える部分が結構あるんだ」
     諒二が言った。その身に纏うオーラの名は燈軌。
    「だから、言いたいことは決まっている」
     拳にオーラを集中させ、梨衣奈のもとへと駆ける。オーラに包まれた拳を繰り出した。
    「……っ!」
    「気にするななんて言わないよ──」
    「……?」
    「そんなこと不可能だ。悩むなとも言えるはずがない。大事な事だしね。だから持っている力に縋る。大いに結構だ。僕も昔そうした」
    「あなたも……?」
    「けれどね、それは全部、君がするから意味があることだ。君の中の誰かさんに任せるなんて意味がない。そんなの、つまらないだろう?」
    「…………」
    「戻っておいで。望みを叶えたいのなら、君は君でいなくちゃならない」
    「私は……私で…………?」
    『気にする必要はないわ』
    「悩みは人それぞれ、とはよく言ったもので」
     千尋が銀槍【終の穿影】を構える。
    「結局の所、どこまで行っても『隣の芝は青い』んじゃない?」
     一気に距離を詰め、銀の魔槍を突き出した。
    「……隣の芝は青い……か」
    「身体的なモノは、自分の努力だけじゃどうしようもない事もある。例えばボクの胸も、灼滅者として戦う時は割と邪魔だったり……」
    「スレイヤー……?」
    『あんたの敵のことね』
    「羨ましがられるけど、結構デメリットも多いんだよ?」
    「私もうらやましいなぁ。あなたの体と私の体……交換できればいいのに」
    「でも、それは出来ない」
    「そうだね。残念」
    「だから、他人と比べて悩むより、その時間を自分の為に使った方が良い」
    「…………」
    『いいこと言うじゃない。その女が言うように、好きなことのために時間を使いなさい。あんたは愛されたい。そうでしょう?』
    「……そう……だね」
     呟く梨衣奈に、唯織の霊撃が迫る。
    「続かせてもらいます」
     直後、翡桜の炎の蹴りが来る。
    「……!」
    『……熱いわね』
    「姿を見てから恋に落ちたりとかするわけですから、見た目って重要ですよね」
     翡桜が言うと、梨衣奈は「……そうだね」と応じた。
    「けど、お尻が大きいってだけで貴女のこと自体を嫌いに思う人なんて、そうそういませんよ。貴女にとってはそのコンプレックスはきっと重要で、悩むべきことなのかもしれませんが……貴女を好きになってくれる人は、そういうこともちゃんと分かった上で受け入れて、好きになってくれると思います」
    「……私が好きになった人が私を好きになるとは限らない。私を好きになった人を私が好きになるとも限らないじゃない。苦しいよ、そんなの……。傷ついたり傷つけたり…………そんなの、つらすぎるよ……!」
    「んー……僕も恋愛したことないから、偉そうなことは言えないけどね?」
     梨衣奈が純人に視線を遣る。
    「見た目で相手を選ぶっていうのは、確かにあると思う。全部そこからって人は少ないかもだけど、理由の一端にはなるよね」
    「そうだね」
    「だから、体のこと気にする気持ちはわかるよ。僕だって、もっと背とか欲しいしね……」
    「……そっか」
    「でもね、力を使って好きになってもらうのは、違うんじゃないかな」
    「……え……?」
    「何て言うか……それだと、本当の意味で自分自身を見てもらえないよ!」
     純人が光と重力を宿した蹴りを繰り出す。
    「……私は…………」
    『そんなことないわ。あんたの力はあんたのもの。あんたの魅力なのよ』
    「それに僕、そのままでも潮沖さんのこと、かわいいと思うよ?」
    「…………そう」
    「それがしはぺったんこ……大人に早くなりたい……。お姉さんの悩み……誰もが持ってるもの……自分一人で抱えちゃめー……解決しないの……」
    「……」
    「人と違うの悪くない……大きいお尻も個性なの……」
    「……個性……ですって……?」
    「絶対好きになってくれる人いるよ……」
    「……」
    「それがしも……小さいけど……好きって言われたの……大丈夫なの……」
    「……だけど……」
    「一緒に悩みたいの……それがし達……お姉さんのお友達になりたい……だめ?」
    「…………」
    『小さいからって油断しちゃダメよ。その子も、あんたの敵なんだから』
    「……そう……なんだよね。敵……なんだよね」
    「お姉さん……」
     拳を覆う闘気を雷撃へと変換しながら、断が梨衣奈に接近。断が拳を叩きこむと、続けざまにみやこの攻撃が直撃した。
    『あんたの目の前にいる連中は、あんたの敵なのよ。だから、倒しなさい』
    「……そうだよね。あなたたちは……敵……!」
    「僕は、小さな胸に悩んで闇堕ちした子達を知ってる」
     そう言ったのは星亜だ。
    「……女の子なら、胸の大きさに悩むのも当然ね」
    「ある女の子は、世界に『Cカップ以上はいらない!』って言ってた。『Bカップ以上は殲滅です』って言う子とも出会った」
    「…………その2人、かなり悩んでたんでしょうね」
    「でも、その2人は今、僕達の仲間──灼滅者なんだよ」
     星亜が氷の魔法を発動させる。
    「……スレイヤー……ね。スレイヤー…………私の敵」
    「しらゆきは、オオカミなのでニンゲンさんの悩むところはよくわからないのです……あ、あの、ごめんなさい、なのです……」
    「……狼?」
     オオカミ──人狼の白雪が言った。
     当然ではあるのだが、梨衣奈は人狼のことを知らない。灼滅者のこともダークネスのことも、ほとんど何も知らない。
     淫魔というものになりかけている──そのことすら知らない。
    「でも、オオカミは見た目じゃなくてニオイで相手を見極めるなのです」
    「……匂い?」
    「お姉さんは、とっても繊細でやさしいニオイがするのです。こわくない、ニンゲンさんなのです」
    「繊細で優しい匂い……か。そっか……」
    「それに、しらゆきのおかあさんは『おしりがおおきいメスはたくさん子供が産めるからいい』って言ってたのです!」
    「……」
    「だから、きっといいことなのです!」
     誇らしげに胸を張り、笑顔で言った。
    「……あれ? 子供とお尻って、どう関係するなのですか?」
     きょとんとした顔で、首をかしげる。
     そんな人狼の少女を見て、梨衣奈もきょとんとしていた。かと思うと──。
    「あははははははっ!」
    「あ、あの、ごめんなさい、なのです……」
     急に笑い出した梨衣奈に、白雪が戸惑う。
    「いいのよ、白雪ちゃん。謝らなくても。あははははっ! そっかー、お尻が大きいといっぱい子どもが産めるのかー。あははっ!」
    『……ちょっと、笑ってる場合?』
    「──なんか、笑ったら心が軽くなったかも」
    『……冗談でしょ? 天然狼娘の言葉なんかで──』
    「でも、素敵じゃない? 私が誰かと結婚して、その人の子どもを産んで、幸せに暮らす。そういう未来があったらいいなー……なんて、思っちゃったんだよ」
     毒気が抜けたような顔で、梨衣奈が言った。
     これも梨衣奈は知らないことだが、ダークネスは子どもを生めない。ゆえに、彼らが数を増やすためには、人間を闇堕ちさせるしかないのだ。
     もし、梨衣奈が完全に淫魔と化してしまえば、彼女が望んだ未来は手に入らない。
    「私は、恋をするのを諦めてた」
    『……』
    「でも、恋を諦めるのはやめにするよ」
    『……あんたの力なら、どんな男だって魅了できるわ』
    「それは恋じゃないよ」
    『いいじゃない、恋じゃなくても。どんな男も、あんたの思いのままよ』
    「──恋をしたら、世界が輝いて見えるとか言うじゃない?」
    『……それがどうかしたの?』
    「私はまだ恋を知らない。でも……憧れはあるよ。私も女の子だしね」
    『……』
    「今の私には、さっきまでよりも世界がキラキラしてるような感じがする。ちょっとだけどね。まぁ、今は夜なんだけどさ」
    『……あんたの力なら──』
    「私は、前に進むことにした。あなたとは……お別れだね」
    『……!』
     梨衣奈が腕を広げる。
    『何をするつもり……?』
    「多分、あなたたちが私を攻撃したのは、私を助けてくれるため……なんだと思う」
    『まさか……降参するつもりなの!? ダメよ! 攻撃しなさい! あんたの敵を倒しなさい!』
    「私を……助けて……!」
    『梨衣奈!』
    「お姉さんを助けるなのです!」
     白雪の腕が形を変える。狼の爪が梨衣奈を──梨衣奈の魂に住み着いた淫魔を斬り裂く。
    『ぐうっ……! まだ……まだよ!』
    「ダークネスは……」
    『っ!』
     断の手が梨衣奈を捕らえた。
    「全力でめーーなのー!」
    『きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁッッッッ!』
     断の攻撃が、淫魔にとどめを刺した──。
    『……そんな…………こんなことで……!』
    「……実はね」
    『……?』
    「あなたにかわいいって言われた時……嬉しかったんだ」
    『……さっさと恋をして、さっさと失恋するといいわ。失恋して、大いに絶望すればいいのよ! その時を楽しみに…………待ってて……あげる……わ…………』
     ──梨衣奈が目を開けると、白雪と断が抱きついてきた。
    「ふふっ。妹ができたみたい」
     2人の頭を優しく撫でる。
    「仲良しになれたらうれしいなのです~」
    「よろしくね……それがしうれしいの……」
    「みんな、ありがとう。私を助けてくれて」
     広場には8人の灼滅者がいた。
     現在は、9人の灼滅者がいる。

    作者:Kirariha 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 1
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