スライム温泉、危機一髪!

     皇樹・桜(家族を守る剣・d06215)は、こんな噂を耳にした。
     『水着やタオルを溶かすスライムが露天風呂に存在する』と……。
     この露天風呂があるのは人里離れた山奥で、綺麗な景色を見ながら温泉に浸かる事が出来るらしく、知る人ぞ知る名所であったようである。
     しかし、スライムが現れてからというもの、温泉に浸かっていたお客から苦情が殺到!
     言葉にも出来ないような恥ずかしい事をされ、トラウマを負ってしまった者もいるとか、いないとか。
     その頃から別の目的でやってくる女性達もいるようだが、表向きは閉鎖されているため、どんな事になっているのか謎のまま。
     ただひとつ言える事は、このスライムが都市伝説で、水着やタオルだけを溶かす力を持っているという事だ。
     その事を踏まえた上で、都市伝説を倒す事が、今回の目的である。


    参加者
    赤倉・明(月花繚乱・d01101)
    神山・楼炎(蒼き銀の堕人・d03456)
    桜庭・成美(スカッドキャット・d22288)
    月岡・悠(銀の守護者・d25088)
    姫川・アリス(中学生ストリートファイター・d26830)
    加賀野・白(忘れられた山神・d29204)
    平賀・メリト(科学と魔術の結晶・d30338)
    アリーシャ・タングラム(プリンセスプリンス・d30912)

    ■リプレイ

    ●温泉に潜む闇
    「……また妙な都市伝説か。こんなのばっかりだな。なんだ、そういう縁でもあるのか私は……。まぁ、折角景色の良い温泉に来たんだ。スライムが出てくるまでは、のんびりと温泉にでも浸かるとするか」
     平賀・メリト(科学と魔術の結晶・d30338)は仲間達と共に、都市伝説が確認された温泉にやってきた。
     念のため、水着の上からタオルを巻いているものの、こういった依頼でそれが役に立った事はない。
     それでも、タオルを巻いてしまうのは、『今回だけは違う。今回だけは……』という願いから。
     例え、それが無意味であっても、今だけは信じていたいようである。
    「憩いの場である温泉で、なんて事を……。そのようなスライムは、我が炎で蒸発させるしかありませんね」
     赤倉・明(月花繚乱・d01101)が、警戒した様子で辺りを見回した。
     今のところ、温泉は貸し切り状態であるのだが、先程からずっと誰かに見られているような感じがする。
     最初は出歯亀か獣の類かと思ったが、何やらそれとは別物のようだ。
     例えるなら、ネットリドロドロした存在……。
     形で言えば、スライムっぽいものに見られているような感じがした。
    「でも、相手がスライムだったら、ゲームで言えば雑魚のポジション。よゆー、よゆー」
     アリーシャ・タングラム(プリンセスプリンス・d30912)が赤のビキニ姿で、笑い声を響かせる。
     相手がスライムであれば、何も怖いものはない。
     ひのきの棒一本で、一発KOである。
    「ゲームとかだと雑魚ですけど、なんか割とおっかない生き物なんでしたっけスライムって……?」
     姫川・アリス(中学生ストリートファイター・d26830)がビキニ姿で、不思議そうに首を傾げた。
     最近のゲームだと可愛らしく描かれている事も多いが、実際にはグロテスクで凶悪なモンスターだったはずである。
    「何やら嫌な予感しかしないが……想像して望んだヤツ、出てこい!」
     その途端、神山・楼炎(蒼き銀の堕人・d03456)がタオル姿で、大声を上げた。
     おそらく、それは男達の総意。欲望によって作り出されたもの。
     それが都市伝説の正体である事は、間違いないだろう。
    「……とは言え、温泉の熱さで溶けたりしないのでしょうか? いや、溶けたら溶けたで余計不味い事になりそうですが……」
     桜庭・成美(スカッドキャット・d22288)が、気まずい様子で汗を流す。
     どちらにしても、厄介な存在である事は間違いない。
    「こんな噂が出回るのはやっぱりスライム好きな人が多いって事かな……。やれやれだね」
     月岡・悠(銀の守護者・d25088)が競泳水着姿で、深い溜息を漏らす。
     色々と思う事はあるのだが、突っ込んだら負け。
     深く考えたら、損をするのは自分である。
    「しかし、全てを溶かして自らの滋養とするならばともかく……何故水着やタオルしか溶かさないのでしょうか?」
     加賀野・白(忘れられた山神・d29204)が納得のいかない様子で、自らの疑問を口にした。
     だが、それも男達の欲望が原因であると考えれば、何もおかしな話ではないだろう。

    ●スライム温泉
    「それにしても、全てを溶かして自らの滋養とするならば、ともかく……何故水着やタオルしか溶かさないのでしょうか?」
     仲間達と温泉に使った白は、何気ない疑問を口にした。
     だが、都市伝説が男達の願望を叶える存在で事を考えれば、それはあまりにも自然な事である。
    「……ところで言葉にも出来ないような事って、なんでしょう? まあ今回は女性だけですし、言葉にも出来ないような恥ずかしい事をされない限りは平気だと思いますが……」
     成美がのほほんと温泉に浸かって軽く流す。
     色々と気になる事はあるのだが、知ったところでげんなりしてしまいそうである。
    「しかも、噂を聞いてわざわざやってくるという奴もいるようだが、何故だ? 何をされるのか、少し興味も無くは……」
     そこまで言ってメリトが、恥ずかしそうに咳をした。
     何となく想像はつくのだが、違っていたら恥ずかしい。
     だからと言って、仲間達に確認するわけにもいかないため、どうしても言葉に詰まってしまう。
     それでも、何となくは想像がつくため、いやらしい気持ちよりも先に、恥ずかしい気持ちの方が強まった。
    「あれ? 何だか、ぬるぬるしてるー?」
     アリーシャが殺界形成を使った後、不思議そうに首を傾げる。
     先程とは異なり、お湯がヌルヌル。
     まるでドロドロに溶けたスライムが、お湯の中に溶け込んでいるような感覚だった。
    「む、タオルが溶けてきたって事はスライムが現れたか」
     それに気づいた楼炎が、表情を強張らせる。
    「や、話には聞いてましたけど、ほんとに溶け……あわわっ!?」
     その途端、アリスが青ざめた表情を浮かべた。
     都市伝説が体から出す粘液によって、既に水着は布切れ同然。
     その横で白が、胸と尻尾をモニモニされて、へにゃへにゃ状態。
     必死に声を出さないように堪えているものの、身体をビクンビクンと震わせている。
    「……なんだ? 顔が赤いが、大丈夫か? んっ? んんっ? 中々、恥ずかしい事を、してくれるな。だが、スライム如きでは、これぐらいの事しか出来ないか」
     楼炎が余裕の態度で、都市伝説を挑発する。
     それにムッとしたのか、都市伝説が本気モード!
    「……って、ちょっと!」
     これにはアリーシャも驚き、大きな胸を隠して仰け反った。
    「あ、アリーシャちゃん男の子の格好してる割に結構スタイル良……って溶けてますよー!?」
     アリスがハッとした表情を浮かべる。
    「えっ? 嘘っ!?」
     そこでアリーシャが、ようやく気づく。
     しかも、スライムは温泉全体に広がっており、隙あらば体の中に入っていこうとしているようだった。
    「ひっ、本当にや、やめっ……。やめて、くださ……ひゃあん!?」
     すぐさま、メリトが抵抗したが、あっという間に腰砕け。
     何とか理性を保とうとしたが、タオルも水着も溶かされ、都市伝説に恥ずかしい事をされている。
    「お、男の子いなくて良かったぁ……って、そういう問題でもないですけど! たーすーけーてー!?」
     アリスが身の危険を感じて、悲鳴を上げた。
    「……貴方は! この手で燃やし尽くします!」
     すぐさま、明が都市伝説に攻撃!
     ヒット&アウェイのつもりがカウンターを喰らい、あっという間に服が溶けた。
    「どこの誰が生んだ噂にせよ。君は滅びておくべきだよ」
     次の瞬間、悠が都市伝説をジロリと睨みつけ、スレイヤーカードを解除した。

    ●滅びの時
    「……とはいえ、放っておくわけにもいかないか」
     途端にメリトが我に返って、都市伝説にマジックミサイルを放つ。
     そのたび、大量の水飛沫が上がり、都市伝説が逃げるようにして、自らの核を移動させた。
     おそらく、この核を破壊すれば、都市伝説は体を維持する事が出来なくなってしまうのだろう。
     だが、あからさまに核の場所を移動しているため、『狙ってください!』と言っているようなものだった。
    「ええ、温泉を悪用するなんて、赦すわけにはいかないですね……!」
     白も大きな胸を隠しつつ、都市伝説に畏れ斬りを仕掛ける。
     そのたび、都市伝説が核を移動させ、温泉から飛び出して、草むらの中に逃げ込もうとした。
    「それに、メンバーが女性しかいないのであれば、仮に服が溶けたとしても、恥ずかしがる必要なんてありませんからね」
     すぐさま、明が都市伝説の行く手を阻み、ヒット&アウェイを繰り返して、ジリジリとダメージを与えていく。
    「赤き十字架よ、かの者を滅せよ!」
     それに合わせて、楼炎がギルティクロスを仕掛け、都市伝説の核を傷つけた。
    「グガァァァァァァァァァァァ」
     その一撃を食らった都市伝説が、緑色の血を撒き散らし、自らの体で傷ついた核を包み込もうとする。
    「……色々腹立つから、グラインドファイアで蒸発させてやろうかな……」
     次の瞬間、悠がグラインドファイアを仕掛け、都市伝説の体もろとも、その核を蒸発させるのであった。
    「次はちゃんとしたとこで入りたいなぁー。なんか夢に出そうー……」
     アリーシャがげんなりとした様子で溜息をもらす。
    「今度はぬるぬるスライムなしで入りたいなあ……」
     これにはアリスも苦笑い。
     ほんのちょっぴり、トラウマになった気がする。
    「そういえば……全員女子なので別に最初から裸でも問題なかったと思うのですが、溶かす服がない場合スライムはどうしていたんでしょうね?」
     成美が大きなハテナマークを浮かべた。
     おそらく、その場合は都市伝説が現れる事もなかったのだろう。
     もしかすると、噂になった頃は純粋に『水着やタオルは温泉に不要!』という内容だったのかも知れない。
     それが次第に歪んでいった結果、都市伝説になってしまったのだと考えれば、色々な意味で納得する事が出来た。
     どちらにしても、都市伝説が消滅した今となっては、知ったところで無意味な事。
     そんな事を考えながら、成美がゆったりと温泉に浸かるのだった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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