光を凌ぎ、飯を食え

    作者:悠久

     とある地方都市。
     数多くのアンブレイカブルが集まり、修行を行うその場所は、いつしか武人の町と呼ばれていた。
     だが、問題は彼らの食事量である。
     ダークネスである彼らが本気で日々の鍛練を行い、切磋琢磨したとなれば、その後に食べる量は計り知れない。
     それを作るのは誰か。町の食堂やレストランで働く、ごく普通の人々である。それだけの食材を運んでくるのは、卸売の業者さんである。
     急速な消費の拡大。しかし、武人の町の食糧事情は困窮を極めていたりはしていなかった。
     何故か――。

     早朝。昇る朝日と共に武人の町に現れたのは、どこか翳ある風貌をした1人の青年。
     その背には、コンテナ大の荷物がいくつも背負われている。人間には到底不可能な芸当だった。
     青年の訪れと共に、道路の両脇に立ち並ぶ食堂やレストランからは一斉に人々が現れる。
    「コウちゃん、今朝もお疲れ様。本当に、毎日ありがとうねぇ」
     親しげにそう話しかけるのは、小さな食堂を切り盛りする中年女性。コウと呼ばれた青年は、無表情に彼女を見やり、ひとつ頷いて。
    『……今日は、昨日の倍を仕入れるということだったが』
     足りるか、といくつものコンテナを見上げ、青年は静かに問い掛ける。
    「そうだねぇ……」
     中年女性は周囲の同業者と顔を見合わせ、やがて小さくため息をつき。
    「まだ、足りないかもしれないねぇ。せめて、この倍は欲しいんだけど」
    『了解した。では、明日はこの倍を運搬しよう』
    「えぇ!? で、でも、そんなに運んで、コウちゃんは大丈夫なのかい? 怪我なんかしたら大変な時期なんだろう?」
    『問題ない。これも日々の鍛錬のうちだ』
     今日もあなたの揚げるアジフライを楽しみにしている、と静かに告げて。荷物を置いた青年は、集まった人々に礼儀正しく一礼し、その場を去っていく。

     青年の名は、光凌(こうりょう)。
     この飲食店街にほど近い公園で、日々の鍛錬を行うアンブレイカブルであった。


    「武人の町について、既に知っておられる方もいると思いますが」
     そう話を切り出したのは、西園寺・アベル(高校生エクスブレイン・dn0191)。
     武人の町――獄魔大将シン・ライリーによって集められたアンブレイカブル達が修練に励み、あまつさえ周辺住民とも上手い具合に共存しているという地方都市である。
    「先んじてこの町に潜入した方々が、有力なアンブレイカブル、ケツァールマスクと接触し、自由に稽古に参加して良いというお墨付きを貰いました。つまり、稽古を名目とすれば、アンブレイカブルの町に自由に出入りできるということになります」
     稽古は模擬戦の形になり、殺したり灼滅するのは不可となるが、戦闘自体は普通に行えるという。
     稽古に来た事を伝えて、模擬戦を行った後ならば、アンブレイカブルと交流したり町中で情報を集めるといったことができるだろう。
     獄魔覇獄の戦いがどういう戦いになるかは不明だが、対戦相手の情報があることは有利に働くはずだ。
     ただ、シン・ライリーは町にはいない様子なので、接触することは不可能のようだ。
    「今回は、調査が目的になります。アンブレイカブル達は、悪人というわけではないようですが、ダークネスである事に違いはありません。些細な事で殺傷沙汰に発展することも多いので、行動は慎重に行うべきでしょう」
     また、情報収集は町に入ってから24時間以内を目処とし、それまでに得られた情報をもって戻ってくるようにして欲しい。
     ――と。アベルは灼滅者達を見回して。
    「今回は、模擬戦を行うことと、調査を行うのが目的となります」
     獄魔覇獄に関する情報を得ることができれば、武蔵坂学園の有利に働く可能性はある。
     また、こちらが情報を得るだけでなく、アンブレイカブル側にどんな印象を与えるかも重要かもしれない。
     友好的な関係を築ければ、獄魔覇獄である程度の共闘も可能になるかもしれないためだ。
    「それにしても、武人の町とは……実に腕の振るい甲斐のありそうな場所なのですが。足を運べないのが残念です」
     修行熱心なアンブレイカブルは食事量も多い、と報告書にはあった。
     だからだろう、アベルは小さくため息をつき、そう呟くのだった。


    参加者
    桜川・るりか(虹追い・d02990)
    四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)
    武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)
    木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)
    園観・遥香(蒼き墓守・d14061)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    天原・京香(信じるものを守る少女・d24476)

    ■リプレイ


     武人の町の朝。公園には、1人鍛練を行うアンブレイカブルの青年の姿がある。
     礼儀を欠かさぬよう話しかけるのは、町へと潜入した灼滅者達。町の調査を行うためには、アンブレイカブルとの稽古として模擬戦を行う必要があった。
    『……灼滅者か』
     話は聞いている、と。そのアンブレイカブル、光凌は頷いた。
    「それで、1対1と集団戦、どちらで戦う?」
     天原・京香(信じるものを守る少女・d24476)が尋ねる。模擬戦の形式は光凌の希望に合わせるつもりだ。
     そのため、京香をはじめとした灼滅者達は全員、どちらでもいいよう作戦を練っていた。
    「木嶋・キィンだ、よろしく頼む」
     木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)は丁寧な名乗りと共に一礼する。
    「どちらにしろ、こっちは全力で勝ちに行く心づもりだ。オレはこの模擬戦、かなり楽しみなんでね」
    『ならば、集団戦を。獄魔覇獄のためには、如何なる戦場にも対応する必要がある』
     答える光凌の声に戦意はあれど、敵意はない。キィンの言葉、秘めた敬意は相手に伝わったようだ。
     光凌が戦の構えをとる。四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)は凛とそれを見据え。
    「時遡十二氏征夷東春家序列肆位四月一日伊呂波、いざ尋常に勝負!」
     名乗りを挙げると同時に踏み込み、瞬時に純白鞘【五番の釘】を急所目掛けて抉り込んだ。
    「んじゃ、いくぞーっ!」
     入れ替わるように攻撃するのは桜川・るりか(虹追い・d02990)。半獣化させた片腕を大きく振り上げ、鋭い銀爪を振り下ろした。
     だが、光凌が怯む様子はなく、反撃に放たれた拳は鋼鉄の如く重い。
     庇いに走るディフェンダー陣。木元・明莉(楽天日和・d14267)はその間隙を縫うように抗雷撃。闘気の雷がばちばちと音を立てる。
    「模擬戦でも、油断はしないぜ」
    『なら、少しは楽しめそうだ』
     肉薄した瞬間、幾ばくかの言葉を交わして。明莉が離れると、続けて園観・遥香(蒼き墓守・d14061)が足元の影を刃に変え伸ばした。
    「光凌さん、お相手お願いします」
     どこか茫洋とした面持ちながら、遥香の姿には迷いも油断もない。
     刹那、武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)が素早く接近。挨拶代わりに『無銘』大業物を振り下ろした。
     超弩級の一撃。剣というよりは鉄塊と呼ぶにふさわしい刃は、しかし光凌の出現させた大剣により防がれる。とはいえ、その質量は確実に相手の体にダメージを与え。
     大剣を構える光凌の姿に、勇也はどこか自分と似たものを感じていた。
     光凌が攻撃動作に移る一瞬の隙を突き、響くのはアルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(ガブがぶ・d08003)の声。
    「ショウタイム――リバレイトソウル!」
     解放の言葉。電気石の指輪に口付けし、全身から漆黒の殺意を滲ませる。駆ける光凌の顔が滲む痛みに歪んだ。
     模擬戦とはいえ、戦いであることに変わりはない。
     ならば、勝つために――。
     表情を引き締める灼滅者達へ、容赦を知らぬ刃が振り下ろされる。


     京香のガトリングガンが、空間を埋め尽くすかのように爆炎の弾丸をばらまく。
    「燃えなさいっ……!」
     だが、弾雨を苦とする気配もなく、光凌は灼滅者達へと駆けた。
     迎え撃ついろはが死角を突くようにグラインドファイア。炎を纏った浴びせ蹴りは光凌に灯った炎を深めるも、その勢いを止めるには至らない。
     刹那、光凌の拳が雷の如き闘気を纏う。繰り出された拳を、勇也は体内から炎を噴出させレーヴァテインで迎撃した。
     味方を守るため受けた拳は重く、鈍い痛みが勇也を襲う。僅かに顔をしかめた勇也の背へ、キィンは即座に癒しの矢を放ち回復した。
     一方、光凌の纏う闘気が与えた炎をかき消すのを遥香は見逃さない。
    「それ以上はさせません」
     即座に出現させたサイキックソードで斬りかかる。斬撃は浅くに留まるも、遥香の狙いどおりその闘気を霧散させた。
     ならばと光凌が構えるのは身の丈を越える大剣。斬撃が前衛の灼滅者達をまとめて薙ぎ払う。
     だが、ディフェンダーに守られ斬撃を回避した明莉が、攻撃後の隙を逃すことなく光凌へ肉薄した。殺人注射の針を突き立てる。
    『……これは、毒か』
    「そういうこと。まさか、卑怯だなんて言わないよな?」
     問えば、返るのは好戦的な笑み。上等、と明莉も口の端を上げる。
     一旦態勢を整えるべく交代する光凌を、るりかは素早く地を蹴り追撃した。
     拳にオーラを収束させ、放つ乱打。るりかは生き生きと相手を見据えている。
    「次は私が」
     間髪入れず、足元の影を伸ばすアルベルティーヌ。光凌の体が一瞬で影に飲み込まれた。
     影が消え、光凌の姿が再び現れる。その顔に浮かぶのは、ぎらつくような戦意。
    『……どんなものかと思えば、なかなか楽しませてくれる』
     灼滅者達の攻撃は、確かにこのアンブレイカブルへ届いている――!
     魂を燃え上がらせ、その破壊力をさらに上げる光凌。
     大剣での強烈な薙ぎ払いを、対峙する遥香は広く展開した障壁で受け止めた。が、その威力は凄まじく。
    「だからといって、怯むわけにはいきません……っ」
    「援護するわ!」
     苦痛に揺らぐ遥香の声。刹那、プレッシャーを与えるように、後方の京香がバスタービームを発射する。
    「私達のこと、侮ると痛い目を見るわよ!」
    「スナイプっ!」
     間髪入れず、指環をはめた手を拳銃のように構え、アルベルティーヌは斬影刃。影の刃が、プレッシャーで僅かながら動きの鈍った光凌の守りを確かに削ぐ。
     攻撃の機を逃すことなく、後方、キィンは地を滑るように走り出す。狙うはグラインドファイア。光凌の破壊力を削ぎ落とすため。
    「楽しくて脚が――震えてんだよ!」
     燃え上がる蹴りに乗せた戦意。攻撃を受け止めた光凌は大きく後退するも、すぐに巨大な剣を上段に構えた。
     振り下ろされる刃を、勇也は『無銘』大業物でしっかと受け止める。
     拮抗する刃。均衡が崩れる一瞬を突き、勇也は死角からの斬撃を放った。
     痛みのためか、光凌の体勢が崩れる。が、それは負傷の重なる勇也も同様で。
     膝を突く勇也。咄嗟に後方へ跳躍し、距離を取る光凌。
    「逃がさない」
     追随し、瞬時に肉薄した明莉が、激震と銘打たれた銀色の大刀を振り下ろした。
     圧倒的質量を、それでも光凌は真っ向から受け止めた。が、ここまでに積み重なった行動阻害が、彼の守りと動きを鈍らせている。
    「食らえーっ!」
     るりかはどこか楽しげな様子で地を蹴り、強烈なグラインドファイアを光凌の胴へと叩き込んだ。ごう、と炎が燃え上がり、光凌の体を焼く。
    『……っ!』
     息を詰める光凌。そこに確かな隙が生まれたのを、いろはは見逃さない。
     瞬時に相手の懐へ潜り込み、腰の刀を抜き放つ――!
     刹那の一閃。いろはが刀を鞘に納める後方では、光凌が荒い呼吸と共に地面に膝を突いた。
    「いろは達の勝ち、だね」


     模擬戦を終えた灼滅者達は、食事に向かう光凌に同行を申し出た。
    「光凌、あんたのオススメの飯屋に行こうぜ」
    『ならば、案内しよう』
     キィンの誘いを断る理由もないのだろう、了承はすぐに得られた。
    「美味しいもの食い倒れツアーしようよ。ボク、沢山美味しい物食べたい」
    「俺もご一緒しよう。この町の名物とかってあるんかね?」
     口々に話しつつ、るりかと明莉は手土産に持参したたい焼きと草団子を光凌へ手渡した。食べることが好きなのだろう、光凌の顔はどこか嬉しそうだ。
     まずは昼食にと向かった先は小さな食堂。顔なじみなのか、店主の中年女性は手早く調理を済ませ、テーブルの上にぎっしりと食事を並べてくれた。
     光凌の前にはたくさんのアジフライが乗った定食。灼滅者達も光凌にオススメを尋ねたりしながら、それぞれ注文したメニューを食べ始める。
     中でも風変わりなのは勇也で、近所のパン屋で買ったパンにアジフライを挟み、サンドイッチにしていた。サクっとした衣の食感とソースの旨味がたまらない。
    「そうそう、この前披露した串焼き肉の改良版なんだけど……」
     いろはが食事の合間、先日の芸術発表会で優勝した創作料理について話すと。
    『肉か。……肉は、いいものだ』
     頷く光凌。鍛練が激しいせいか、がっつりした食べ物が好みのようだ。
    「……美味しい…これは美味しい……あれも美味しい……!」
     礼儀は崩さず、しかし遥香は一心不乱に食べて。ひとしきり味わい、落ち着いた後、光凌への質問を口にする。
    「普段ご飯を食べてる時、他のアンブレイカブルさんと一緒になったりします?」
    『近くで鍛練を行う者と出会うことはあるな』
    「そうなんですか。誰かと一緒に食べるご飯は美味しいですよね」
    「大事な試合が近いんだっけ?」
     さり気なく遥香の言葉を継ぐように、るりかがそう尋ねる。
    『ああ。いつでも戦えるよう、修練を積まなければ』
     重々しく頷く光凌。詳しい日程は彼自身も知らないらしい。少し残念に思いながらも、るりかは質問を続ける。
    「ライバルになりそうな人っている?」
    『同等に死合える者であれば、良き好敵手となるだろう』
     と、光凌の口から具体的な名前は出てこない。
     一方、勇也が尋ねたのは獄魔覇獄の褒賞について。
    「他勢力が欲しそうなものに心当たりはないか?」
    『知らん。それに、俺たちには関係ない。強い奴と戦えるのが一番の報酬だ』
    「目標……目指すものはあるか?」
     キィンは光凌に付き合って食事を続けていたが、3人前ほどを平らげたところでギブアップ。膨れた腹をさすりつつ、そんな質問をしてみれば。
    『最強の武を目指すのみだ』
     如何にもアンブレイカブルらしい答えに、キィンは苦笑しつつ肩を竦め。
    「なら、思い出深い飯は?」
    『この食堂のアジフライだな。今までで一番美味い』
     光凌の言葉に、厨房の女性があらぁ! と歓声を上げる。良好な関係を築いているようだ。
    「アンブレイカブルは単独で行動する印象が強いんだけど、他勢力との共闘についてどう思う?」
     そう問いかけたのは明莉。武人の町に集うアンブレイカブルは、彼にとって意外な存在だった。
     ただ『強さ』を求め。死合いさえなければ、アンブレイカブルもストリートファイターも変わらない。そう考えると、少し複雑だ。
    『共闘は、俺達にとって珍しい話ではない』
     だが、光凌はさらりとそう返す。傭兵として色々な組織に参加する機会があるためだという。
    「ごちそうさまでした。……ところで、いつもは他にどんなお店へ?」
     食事を終えると、アルベルティーヌは光凌に行きつけの飲食店を尋ねた。
     武人の町におけるアンブレイカブルは、一般人と問題なく共存している風に見える。ここからは、それとなく彼らの食事事情を探るつもりだった。
     京香も、光凌の行きつけを中心に、極端に仕入れが多い店について調べようと考えている。
     よって、ここからはそれぞれが別行動。
     飲食店をはしごする光凌に同行する仲間や、町中での調査に向かう仲間と別れ、京香は緊張した面持ちで歩き出す。
     と、ふと目に入ったのはとても大きなパフェの看板。どうやらアンブレイカブル達のために考案されたメニューのようだ。
     つい、そちらに惹かれてしまい――。
    「……駄目よ、駄目」
     京香は微かに頬を染め、ひとつ咳払いした。


     夜明け前。仕入れの手伝いに向かうという光凌に、灼滅者の数人が同行を申し出た。
    「よかったら仕入れのお手伝いさせてね」
    「ん、こう見えて、腕力には自信あります」
     そう話すのはるりかと遥香。怪力無双を使えば手伝うのは容易い。
    『別に、構わないが』
     邪魔はするなよ、と返す光凌にキィンと勇也が頷く。
     先導する光凌の背を見つめ、明莉は僅かな緊張を感じていた。
     アンブレイカブルが食べる大量の食事がどこから仕入れられているのか。
     ――まさか、一般人を襲って奪っているのでは?
     相手はダークネス。明莉がそんな疑いを抱くのも無理はない。
     だが、実際には、光凌は卸売業者から受け取った荷物を運搬しているだけ。特に怪しい点はなかった。
     それどころか、何事もなく荷物を運び終えた灼滅者達と光凌に、一般人の住民からは感謝の言葉が掛けられる。
     仕入れを終えた灼滅者達は、鍛練に向かう光凌に別れを告げて。
    「ご馳走さん、また来るよ」
     キィンの言葉に、光凌は無言で首肯する。
     だが――次に彼と出会うのは、戦場となるかもしれない。

     携帯電話で連絡を取り合い、灼滅者達は町の出口で合流する。
    「実は獄魔覇獄について具体的に判明してる事って少ないんだよね」
     町中で聞き込みを行っていたいろはがため息をつく。獄魔覇獄の規則や報酬について、特にめぼしい情報は得られなかった。当のアンブレイカブルですらよく知らないというのだから無理もない。
    「シン・ライリーの特訓している場所についても、『北の海』としかわからなかったな」
    「私は最近変わったことや困ったこと、一番売れるメニューなどについて調べたのだけれど」
     いろはの報告を引き継ぎ、話し出すアルベルティーヌ。
     食べ歩きをしながら聞き込みを行ったのだが、特に目立ったトラブルは起こっていないらしい。
    「強いて挙げるとするなら、騒音……それくらいのようよ」
     ちなみに、町ではアンブレイカブルのためにスタミナ系や大盛りのメニューが流行し、商品開発されているようだ。
    「しょうが焼き定食、すき焼きに親子丼、どれも美味しかったよー!」
     光凌と食べ歩いたるりかも、目を輝かせて証言する。
    「私も仕入れ先を調べてみたけれど、特に不審な点は見つからなかったわ。大量の食材の代金も、きちんと支払われているみたい」
    「店の人に聞いても、アンブレイカブル達が飲食代を踏み倒したり……ってことはないらしいな」
     京香の言葉に、明莉も苦々しく頷く。アンブレイカブル達に金銭的な不自由はないようだ。
    「食事をご一緒した時も、光凌さんは店主さんに礼儀正しく接していましたね」
     と、遥香もふわりと頷く。
    「……上手く共存しているんだな」
     勇也の呟きは、灼滅者達が武人の町に感じた印象そのもの。
     とにかく、今は得られた情報を学園に持ち帰る必要がある。
     どこか複雑な感情を抱きつつ、灼滅者達は早朝の町を後にするのだった。

    作者:悠久 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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