山梨の山中に、くのいち少女を見た!

    作者:小茄

    「はっ! とぉっ!」
     山梨県のとある山村。ネットで購入した忍者風コスチュームを身に纏い、目に見えない何かと戦っているらしい少女の姿。
     太刀風・翔子(たちかぜ・かけこ)14歳。地元の公立中学校に通うごく普通の少女である。
    「ふふ……心なしか、最近めきめき力が身についている気がする。この調子なら、太刀風流忍道を大成する日も遠くなかったりして」
     枯れ木を籠手で砕き割り、ニヤつきながら呟く翔子。
    「うちの祖先は忍者だった」とか言う祖父の冗談を真に受け、彼女は幼稚園生の頃から、密かに忍術の特訓を重ねていた。小5病だとか中2病の様な発作的症状とは年季が違うのである。
    「……なんだよ、これっぽっちかよぉ。シケてんなぁ」
    「ご、ごめん……なかなかチャンスがなくて」
     と、普段は他に人も居ない山の中に、他者の声が聞こえる。見れば、同じ中学に通うガキ大将と、気の弱そうな少年の組み合わせ。何やら金銭の受け渡しをしている様でもある。
    「ちょっとアンタ、そこまでよ!」
    「な、なんだ?!」
     申し訳程度の頭巾で口元を隠し、少年らの前に姿を現す翔子。彼女の中の忍者は、弱きを助けねばならないらしい。
    「罪無き町人から銭を脅し取ろうたぁ、ふてぇ野郎だ。お天道様が許そうとも、この私……疾風忍カケコが許さない!」
    「「……」」
     時代劇、ゲーム、ネット、その他諸々を参考に彼女が考え出した、とっておきの決め台詞とポーズ。少年らは完全にポカーン状態である。
    「さぁ、お金を返してあげなさい」
    「なっ、なんだよ! 離せよ!」
     腕を捕まれたガキ大将が、反射的にそれを撥ね除けようとしたのがいけなかった。
    「抵抗するのなら! シノビチョップ!」
     ――ボキッ。
    「ふっ、危ない所だったね。なぁに、名乗るほどの者では」
    「あ、あの……太刀風さん」
    「なっ?! なんで私の正体を!」
    「いや、どう見ても……それより、フトシ君……死んでるみたいなんだけど……」
    「……えっ?」
     
    「山梨県の山奥で、ある中学生の少女がダークネスになりかけていますの」
     有朱・絵梨佳(小学生エクスブレイン・dn0043)の説明によると、彼女はまだ人間としての意識を残しており、救い出す余地も有り得ると言う。
    「それが無理な場合は速やかに灼滅しなければ、同級生の男子を殺めてしまう事になりますわ。やがては、強力なダークネスにも……そうなる前に、対応して下さいまし」
     どちらにしても、一刻を争う事態だ。
     
    「彼女の名前は翔子。ショウコと書いて、カケコと読む様ですわ。忍者になりたがっているのか、いつも山の中で戦闘術の鍛錬を積んでいるようですわね」
     そこに行けば、接触は容易だろう。
    「ただ、彼女自身は自分が闇堕ちしていると言う自覚は無い様ですわね。問答無用で戦いを始めれば、あなた達の事を『悪者』と認識してしまうでしょう。戦闘後の事なども考えると、あくまであなた達は正義の味方として、彼女を救う為に来たと言う事を明らかにしておいた方が得策かも知れませんわね」
     彼女自身、そう言う世界に憧れている様でもあるので、上手く乗せることが出来れば戦闘もその後も、サクサクと進むはずだと絵梨佳は言う。
    「相手は一人ですけれど、10年近く独学で研鑽を積んできただけあって、身のこなしはなかなかの物の様ですわ。まぁ、あなた達が遅れを取る事は無いと思いますけれど、一応注意なさって下さいまし」
     
    「理由なく闇堕ちする少年少女……それも格闘技に心得のある子ばかり。今回も強力なアンブレイカブルの策謀があるのかしら。……ともかく、早いご帰還をお待ちしておりますわ」
     そう言うと、絵梨佳は灼滅者達を送り出すのだった。


    参加者
    巽・空(白き龍・d00219)
    ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    西・辰彦(ひとでなし・d01544)
    東方・亮太郎(ジーティーアール・d03229)
    神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)
    十朱・射干(霽月・d29001)
    七士・帝(咎人・d29457)

    ■リプレイ


    「やっ! たぁっ!」
     山梨県某所。紅葉色づく自然豊かな村の一角で、一人の少女が鍛錬に励んでいた。
     拳法の様な、カンフーの様な、一見すると何なのか良く解らない動きで、しかし舞い散る落ち葉を的確に拳で打ち砕く。足の運びも軽く、それなりに堂に入った様子ではある。
     ――がさっ。
    「っ?! な、何者!」
     枯れ葉を踏む微かな音にも反応し、少女は身構えたままこちらを向く。
    「見事な足捌きですね! まさに忍者なのですっ」
     賞賛を惜しむこと無く、ぱちぱちと手を叩きつつ言うのは巽・空(白き龍・d00219)。
    「ここに正義の忍者さんがいるって聞いたんだけど、貴女かな?」
     守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)は、少女の顔を覗き込みながらにっこりと微笑む。
    「そ、そう言うあなた達は? まさか、この里を襲撃に来た悪の秘密結社か?!」
     赤を基調とした、くのいち風コスチュームを身に纏った少女は、やや芝居がかった口調で言う。
    「ニンニン。かなりの忍道とお見受けする。名を聞こう! おっと、先に名乗らぬは拙者の不覚。安陪野流忍道ベル太ここに推参や!」
     ばさっと木に同化する隠れ身の術を解き、赤いマフラーで登場したのはベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)。ノリノリである。
    「なっ……に、忍者?! そ、そうで御座るか。私は、正義の疾風忍カケコ……で御座る」
     まさか自分以外の忍者が現れるとは思って居なかったのか、意表を突かれたようにぎこちなく応えるカケコ。
    「ドーモ、タチカゼ=サン。ニシ・タツヒコ、デス」
    「ど、どうも」
     合掌し、ぺこりと頭を下げる西・辰彦(ひとでなし・d01544)。これに釣られて、カケコもぺこりと頭を下げる。おじいちゃん子だけあって、年長者に対する礼儀は弁えている様だ。
     それにしても、全員の忍者像がバラバラすぎて統一感がない。
    「自己紹介も終わったところで、単刀直入に言うぞ。このままだと今まで鍛え上げてきたその力を、自分自身の闇に利用されちまうんだ」
    「へっ? な、何を言っているんで……すか? 私は闇に利用されたりなんかしないし!」
     早速、彼女の置かれている状況を説明し始める東方・亮太郎(ジーティーアール・d03229)。しかしカケコは、まだキャラが固まっていないのか語尾を乱しながらも、自分が正義の味方である事を信じて疑わない様子。強い信念があるだけに、なかなか説得の難しそうな所でもある。
    「その、正義の味方たらんとする志と研鑽は賞賛に値します。しかし、あなたに目覚めつつあるその力を、悪を為すことに使おうとしている者がいるのです」
    「目覚めつつある……力……」
     神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)は彼女の努力に賛辞を贈りつつ、更に説得の言葉を引き継ぐ。
    「その力の制御……これから先もずっと、上手く行える自信はあるか? その強大な力、向ける先を間違えば途端に悲劇を招く……正義の味方にその様なミスは許されないのは、言わずともわかってもらえると思う」
    「……そ、それは。解って……るけど」
     見た目からして腕利きの忍である事を伺わせる十朱・射干(霽月・d29001)。その鋭い眼差しに射貫かれ、カケコは視線を逸らして口ごもる。なんだかんだと言っても、居るのか居ないのか解らない(多分居ない)悪と戦う事を夢見て、忍者ごっこに興じていた彼女に、唐突に突きつけられた難問である。困惑するのは当然だろう。
    「私は七士・帝。灼滅者だ。あなたの心は狙われている!! 忍びとは闇に生きるもの……故に悪にも好かれるもの……」
    「私の心を狙う……闇?」
     七士・帝(咎人・d29457)は若干芝居がかった口調で、改めて自らの立場を明確にする。カケコは落ち着かない様子で、視線を泳がせる。光と闇、善と悪の常ならざる戦い。そうした世界が、フィクションの中にしかない事は、中学生である彼女も承知していたはずだ。
     承知しながらも、憧れていたその世界が実在し、自分がその世界に足を踏み入れ掛けていると告げられ、半信半疑ながらも期待や不安、色々な考えが彼女の頭を駆け巡っているに違いない。
    「最近突然力が増大したのは闇の力に乗っ取られかけているせいなの。大丈夫。わたし達が力を受け止め、貴女を支えるよ!」
    「っ!?」
     そう、こういうときには、根拠や理屈とか言うよりも、自信に満ちた強い言葉が心を動かす。結衣奈はそんな効果を知ってか知らずか、真正面からカケコを見つめて言い放つ。
    「自分の闇を制御する事、即ち自分自身との戦いが、忍者やヒーローにとって最も必要な事なんだ。協力してくれ!」
     雰囲気が出来てしまえば、あとは勢いに乗せてしまうのが最善手。亮太郎はやや悪人面のハンデを撥ね除けるように、熱く語りかける。
    「うん、解った……そ、それで……どうすればいいの?」
    「どうだ、その力を真に自分の物とする為、一つ手合せしてみないか?」
     灼滅者達の言葉を一先ず信じる気になったらしいカケコ。射干は、やや挑戦的な口調でそう誘う。
    「手合わせ……なるほど! 望むところ!」
     何がなるほどなのか不明だが、彼女の腑に落ちるところがあったらしい。びしっとポーズを構え、やる気十分だ。
    「装着合体! 爆走甲、メタファイターGT!!」
     スレイヤーカードを解放し、ブレイブレッドメタリックの鎧に身を包む亮太郎。他の灼滅者達も、次々に殲術道具に身を包んで行く。
    「ほあっ!? ……す、すごい……」
     これには、カケコも思わず目を輝かせる。少女ながら、少年漫画の様な展開が好みなのだろうか。
     とにもかくにも、彼女を納得させて戦いを始めさせる所までは予定通り。あとは、彼女をKOする事だ。
     爽やかな秋風吹く山中において、くのいち少女と灼滅者の戦いが幕を開けた。


    「さぁ始めよう、最高の修行(しあい)を!」
     先手を取るように仕掛けたのは空。龍の波動を拳に纏わせ、突貫の勢いそのままに拳を繰り出す。
     ――ガキィン!
     硬質の金属音が響き、火花が散る。
    「くっ!?」
     強い衝撃に、カケコの踵が地面の土を抉る。
    「忍道の暗黒面に囚われているぞ、この未熟者ー!」
     ――バッ!
     ベルタの叱責と共に放たれるのは、銀に輝く数条の糸。空を切り裂きながら、不規則な動きでカケコの身体に絡みつく。
    「な、なんのっ!」
    「翔子ちゃん!」
     結衣奈はワイドガードを展開しながら、半ば激励にも似た声をカケコに掛ける。
     ダークネスになりかけの少女と、熟練の灼滅者八人である。その戦力差は大きく、また作戦の性質上そうでなくてはならない。
     とは言え、半ば灼滅者達の言い分を理解した上で戦う彼女を、単なる敵と看做す者はいない。
    「私の鍛錬の成果! 見せてあげるんだから!」
     そんな灼滅者の気持ちが伝わったのかどうか、カケコもまた、灼滅者に対し真正面から全力でぶつかる姿勢を明らかにする。
    「いくよ! シノビシュリケンハリケーン!」
     そのセンスはどうなんだろうと言うネーミングはさておき、放たれるのは無数の手裏剣。幼少期から余程の鍛錬を積んだ様で、狙いは極めて正確だ。
    (「一途で純粋ってなそれだけでいいことだよねえ。羨ましいわ」)
     この中で最年長の辰彦。カケコの純粋さをどこか眩しげに見つつ、とは言えガトリングガンで弾幕を張って手裏剣を撃ち落とす。
    「なんのっ!」
     亮太郎もまた、真っ向から手裏剣の雨に抗うようにして最前衛へと進み出る。
     ある意味で泥臭いとさえ言える、そんな熱血的な戦いっぷりもまた、カケコが憧れてきたヒーローの姿と重なる物があるのかも知れない。
    「闇とは戦えます。貴女にはそれができる、心の強さがあるから」
     と、派手な立ち回りの辰彦、亮太郎がカケコの目を引く間に、するりと間合いへ滑り込んだのは葎。
     妖の槍を抉るように繰り出す。
     ――シャッ!
    「んっ!?」
     極めて鋭いその攻撃だったが、カケコは大きく身体を反らしてその穂先を逸らす。
    「やるな。だが、こう見えてもそれなりに戦ってきた身、太刀風流忍道に対抗してみせようじゃないか」
     射干は、カケコの鍛錬や戦闘センスに多少感心しつつ、お返しとばかりに無数の棒手裏剣を放つ。
     ――キィン! カッ!
    「……見える!?」
     手裏剣甲を巧みに用い、柔軟性に富んだ身体を捩らせてそれらの手裏剣を回避するカケコ。
     しかしこれも、一方的にやられて彼女が自信を喪失しない様にと言う射干の心憎い演出でもある。
    「鍛錬の成果は見せて貰いました。次は心の強さを見せてもらいましょう!」
     霊激を繰り出す王妃に呼応し、紅蓮に輝く龍砕斧を振り下ろす帝。
     ――ガァン!
    「ぐっ! 痛ぁ……」
     敏捷性に富むカケコだが、灼滅者の波状攻撃を全てかわしきる事は出来ない。辛うじて直撃を避けるが、衝撃に表情を歪ませる。


    「くうっ! まだまだぁーっ! 太刀風流忍術、鎌鼬!」
    (「同じ技で和風ネーミングに変えてきた!?」)
     再び、無数の手裏剣を放つカケコ。灼滅者達との数分間に及ぶ激闘により、少なからずその体力は削り取られているはずだが、それを表には出さない。
    「今度はボクが修行の成果を見せる番!」
     ――ババッ!
     無数の手裏剣を、閃光放つ拳でたたき落すのは空。
     そのまま一気に間合いを詰めると、ブレイクダンスのパワームーブを舞うが如く、白熱したTwisterにより蹴りを繰り出す。
    「うあっ?!」
     想定していなかった軌道の蹴りは、カケコにクリーンヒットして彼女をよろめかせる。
    「もう一太刀……今度はかわせるか!」
     ――シャッ!
     逆手に持った苦無を自在に操り、幾度となく斬り付ける射干。カケコも必死に応戦するものの、ジリジリと追い詰められて行く。
    「正義の味方は最後まで諦めない。でしょ? 疾風忍カケコ!」
    「と、当然っ!」
     だが、空の言葉に威勢良く返しながら、彼女はファイティングポーズを取り続ける。
    「正義無き力は暴力と変わらない。弱きを助ける心を失わないで!」
     闘志を燃え上がらせるカケコに対し、結衣奈は更なる追撃の手を緩めないが、同時に極めて重要な言葉を掛ける。
     敵を倒す事のみに意識が行けば、灼滅者は闇に捕らわれかねない。常に己を律し続ける強靭な精神こそが、灼滅者を灼滅者たらしめるのだ。
    「弱気を助け……強きを挫く!」
     そのアドバイスを身をもって示す様に、体力精神力共に限界が近いにもかかわらず、闘志を失わせる事のないカケコ。
    「知ってた? ニンジャは裸で戦う方が強いんだよ」
    「えっ?! は、はだ……?!」
     と、そんな純真かつ純粋な彼女に、しれっとデマを吹き込みつつ、手刀を振り下ろす辰彦。悪い大人である!
    「忍の道は獣道 人知れず影より迫り影に消える! これがボクの忍術や!」
    「くうっ?!」
     更なる追撃を掛けるべく跳躍するベルタ。しかしカケコに襲い懸かったのは、足下からの影だった。
     彼女らの変則攻撃は、正面からぶつかるばかりが戦いではないとカケコに教示するかの如く。
    「俺が目指してたヒーローはさ、敵を倒す事より、まず皆を守る事を第一に考えてた。そんなヒーローに俺もなりたくってさ、だからこうやって今も頑張れてんだ。お前が今まで一途に鍛えることが出来たのも、そういう目標があったからじゃないか? 教えてくれよ、お前の理想の忍者像を!」
    「私は……絶対に、諦めない! 仲間と共に、任務を遂行する! それが疾風忍だよ!」
     常に矢面に立ち続けた亮太郎とて、その身には無数の傷を負っている。しかし一歩も退くこと無く、尚もカケコに対し間合いを詰めつつ問いかける。対するカケコもまた、この問いに真っ向から答える。
     ただ独り、鍛錬に励み続けていた彼女。その最初の任務とは即ち、闇堕ちからの帰還に他なるまい。そして今や彼女は独りではない。真っ向から刃を交える灼滅者達こそ、彼女の新たな仲間なのだ。
    「私達が討つのは、貴方の心を惑わす闇」
     指先で弄っていたくせっ毛を離し、水平に構えた天星弓に矢をつがえる帝。
    「信じるものの為に強くなれた貴女を……私は尊敬しています。共に還りましょう。絶対に!」
     白光を纏う矢が放たれると同時、間合いに躍り込んだ葎もまた、膨大な魔力を籠めたロッドを振り下ろす。
     ――バッ!
     眩い程の光がスパークし、束の間視界を奪う。
     灼滅者達の目が再び視力を取り戻すと、そこには地面に倒れ伏す少女の姿があった。


    「ううっ……」
    「気付きましたね、大丈夫ですか?」
    「……くっ、殺せ」
    「「……」」
    「い、一度言ってみたかったんで」
     覗き込みつつ尋ねる帝。そして心配そうに見つめる灼滅者達を見回し、冗談を飛ばせる程度には無事らしい。
    「それにさっき、忍者は色気が大事だって……」
    「そうは言ってない……そうかも知れないけどね」
     水を向けられた辰彦は、一瞬否定しかけるが、結局曖昧に返答を保留しておく。なにしろ相手は純真な少女だ。
    「見せてもらったぜ、お前の理想」
    「有難う。私こそ……皆さんに、正義の味方がどう言うものか見せて貰ったよ」
     手を伸ばし、カケコを立ち上がらせる亮太郎。
    「今度は、弱きを助ける為にわたし達と共に来てくれると嬉しいな!」
    「わ、私で良いなら! 本当に正義の味方になって戦えるなんて、夢みたいだよ!」
     結衣奈の誘いに、カケコは一も二も無く応じる。
    「その気があるなら、もっともっと太刀風忍道を磨けるで。自己流でここまでやれたんやから」
    「それなら学園はもってこいですね、仲間や好敵手がいた方が修行も捗りますから♪」
    「ほんと? もっともっと強くなって、皆と一緒に悪者と戦うよ!」
     ポンポンと肩を叩きつつ言うベルタ。空もこれに同意し頷く。カケコは、そんな二人の言葉に表情を輝かせる。
    「流石の腕前だ、疾風忍カケコ。これからは、私も君と共に疾けよう」
    「有難う。忍同士宜しくね、十朱さん」
     射干の差し出した手を強く握り返すカケコ。
    「さぁ、それでは参りましょうか。武蔵坂学園に」
     話が纏まった所で、皆に促す葎。
     次第に日も傾き、風もやや冷たくなってきた。長居は無用だろう。

     かくして、九人となった一行は、武蔵坂に凱旋する。
     保護者の了解やその他諸々の手続きはあるにせよ、正義の味方になりたいと言う彼女の熱意を止められる者など存在しないはずだ。
     一行は闇堕ち少女を救い、学園に新たなる仲間を招くことに成功したのである。

    作者:小茄 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年11月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 3
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