剣道少女と消える魔剣

    作者:桐蔭衣央

    ●剣道場
     とある中学校の放課後、剣道場。
     葉加間・千咲(はかま・ちさき)14歳は剣道部の、男女合同練習の真っ最中だった。
     男女入り混じった部員が2列になって向かい合い、互いに気勢をあげて打ち合っている。
     千咲はいま、自分と向かい合っている男子剣道部の部長を見上げた。男子部の部長は、とても背が高いのだ。それに比べて自分は140センチちょっとの背丈しかないチビッ子だ。
    (でも、気合じゃ負けないんだからっ。たぶんっ)
     千咲は無謀にも部長の面を狙って踏み込んだ!

     と、途端に、視界がガクッと沈んだ。
     この感覚は知っている。自分の袴を踏んづけて転ぶ瞬間だ。
     中1の入部の時に、背が伸びるからと長めに作っておいたこの袴。予想に反してまったく背は伸びず、床すれすれのまま。よく踏んづけてはズベッと転ぶ。
     それが、視界の狭い面をつけた相手からは「千咲が急に消えた」様に見えるらしい。
    (ああぁ、また部長に「消える魔剣が出た!」って笑われるんだぁ~)

     心の中で嘆いたその瞬間。
     床につかんとしていた膝は踏みとどまり、低い位置から竹刀を横に払う。ごぎっという音がした。竹刀が部長の胴を打ち……防具ごと腰骨を砕いたのだ。
     絶叫して床に倒れる部長を見て、千咲は首を傾げた。
     剣道が強くて、快活で、千咲の頭をよく肘置きにしてからかってくる、のっぽの部長。その部長が、なぜ床でもがいているのか。
     たいへん。いたそう。
     部員たちが遠巻きにし、師範が部長に駆け寄る。誰かが自分に何か叫んでいるが、よくわからない。
     千咲は目の前の光景が理解できなくて。ただ、わけのわからない恐怖に突き動かされ、道場の壁に飾られた日本刀に手を伸ばした――。

    ●武蔵坂学園・教室
    「一般人が闇堕ちしてダークネスになる事件が発生しようとしています。ただ、今回の事件は通常の闇堕ち事件とはちょっと違いますね」
     五十嵐・姫子は教室に灼滅者を集めて、こう切り出した。
    「通常なら、闇堕ちしたダークネスは、すぐさまダークネスとしての意識を持ち人間の意識はかき消えるものなのですが、今回のケースでは元の人間としての意識を遺しており、ダークネスの力を持ちながらも、ダークネスになりきっていない状況です。
     もし、彼女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出してほしいのです。もし完全なダークネスになってしまうようであれば、その前に灼滅をお願いします」

     功刀・真夏(肝っ玉お姉さん・dn0132)がメモを読み上げた。
    「今回闇堕ちしかけているのは葉加間・千咲(はかま・ちさき)14歳。中学2年生。小柄な身体と長めの袴がキュートな女の子よ。
     所属する剣道部の部員は男女合わせて15名。小規模だけど、仲良く熱心に取り組んでいたようね。剣道部での稽古中、唐突にダークネスの力が目覚めてしまって、剣道部の部長に重傷を負わせてしまうわ。闇堕ちするきっかけもなく、本当に突然」

    ●状況と戦闘能力
    「皆さんが千咲さんと接触できるのは、彼女が部長さんに大怪我を負わせた後です。千咲さんは恐怖で混乱しており、見知らぬ人が現れれば、道場にあった日本刀とアンブレイカブルの技で攻撃してくるでしょう。
     刺激せずになだめたいところですが、灼滅者として救出するには戦闘してKOする必要があります。どうにか恐怖を鎮めて、自分の力に順応できるように説得しつつ戦闘を進めていければいいですね。
     思えば、ダークネスになるにしても灼滅者になるにしても、普通の剣道少女には戻れないんですよね……。彼女が自分自身と環境の変化について前向きになれるように説得できれば効果的です」

     姫子の説明にふんふんと頷いていた真夏は、思い出したようにぽんと手を叩いた。
    「あ、そういえば千咲ちゃんは“消える魔剣”が得意なんだって。気をつけてね。元は袴を踏んでコケるドジっ子行動なんだけど、闇堕ちで技が完成されちゃったらしいわ。瞬時に身を伏せて相手の視界から消えてからの、バリエーション豊かな攻撃よ」

     姫子が首を傾げた。
    「それにしても、理由の無い闇堕ちというのは、あまりに不自然ですので、何か裏があるのかもしれません。今回の事件の背後には、強力なアンブレイカブルの策動を感じます」
     真夏が難しい顔で腕を組んだ。
    「ケツァールマスク或いは、獄魔大将であるシン・ライリー……奴らが背後にいる可能性は捨てきれないわね」
     事件の背後にある影の予感に、灼滅者たちは思いを巡らせるのだった――。


    参加者
    レイネ・アストリア(壊レカケノ時計・d04653)
    鹿島・悠(赤にして黒のキュウビ・d21071)
    夜伽・夜音(トギカセ・d22134)
    雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)
    四辻・乃々葉(よくいる残念な子・d28154)
    阿波根・ナギサ(ゴシック唐手ガール・d30341)
    北護・瑠乃鴉(黒童狼・d30696)
    寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)

    ■リプレイ

    ●対の先
     剣道場に駆けつけた灼滅者達が見たものは、日本刀に手をかけて呆然としている千咲の姿だった。千咲は仲間である剣道部員たちから遠巻きにされ、青白い顔で佇んでいるだけのように見えた。
     その中へ。灼滅者たちは道場内に足を踏み入れたのだ。
    「わたしの精一杯で頑張るよ」 
     四辻・乃々葉(よくいる残念な子・d28154)が、いちはやくサウンドシャッターを展開し、外部から騒ぎを聞きつけられないようにした。
     見慣れぬ者たちの侵入に、千咲の瞳が見張られる。
    「だれ?!」
     千咲が日本刀を抜き、部員たちから悲鳴が上がった。

    「逃げて! お外に出てほしいよぉ!」
     叫んでパニックテレパスを発動したのは夜伽・夜音(トギカセ・d22134)。その効果で部員たちは我先にと道場の出入り口へと殺到した。
    「押し合わないで! 出たら校舎に逃げるのよ」
     功刀・真夏(肝っ玉お姉さん・dn0132)も、夜音を手伝って部員たちを誘導する。
     怪我で動けない部長と、部長が心配で逃げ遅れた師範を、鹿島・悠(赤にして黒のキュウビ・d21071)が怪力無双で問答無用で担ぎ上げ、道場の外へ向かう。悠のビハインド“十字架”が、進路にいた部員の背中を押して外に出した。
    「とにかく、一般の方々を避難させましょう……」
     紅羽・流希は、悠に抱えられた部長の身体を支えつつ外に出た。部長の怪我をみて、集気法でとっさに手当しようとしたが、今は持ち合わせていなかったので手当を悠に頼むことにする。

     部員を外へ逃がす間、抜き身の日本刀を構えた千咲の前に、北護・瑠乃鴉(黒童狼・d30696)が対峙していた。
    「はかませんぱい、こんにちは」
     小柄な瑠乃鴉は敵意のない青い瞳で千咲を見上げ、あいさつする。しかし、恐怖に支配され、手負いの獣のようになった千咲は、瑠乃鴉に斬りかかってきた。
     瑠乃鴉も自身の愛刀を抜き、その刀身で相手の刃を受け流すようにする。受け流した瞬間火花が散って瑠乃鴉の腕を裂き、千咲の技と力が油断ならないものだと知らされた。
    「あっ……私……っ」
     千咲は自分が小さな男の子に斬りかかった事におののいた。しかし、自分自身が制御できない。更なる恐怖にとり憑かれ、突き動かされるままに刀を振るった。刀から生じた衝撃波は暴風となって灼滅者を襲う。

    「何……この、力っ」
     痛々しい程にうろたえて、それでも近づけば刀を振るって来る千咲。レイネ・アストリア(壊レカケノ時計・d04653)は、彼女を静かに見据えると、両手に白を基調とした刀を構えた。
    「レイネ・アストリア。推して参る」
     レイネは文句のつけようがない足さばきで風のように迫ると、斬撃を繰り出した。千咲はそれを鍔のあたりで受けようとして、その技の重さに気付くと床を転がってそれを避けた。その迅速な動きに、レイネの瞳に感心した光が浮かぶ。
    「剣の道を往く者。其の意が、単なるスポーツへの熱意だとしても見捨てる事は出来ないわね。さあ、私も剣を執る者よ。悪夢は悪夢らしく、精々狂い咲きましょう。アナタも、私も――」
     レイネの言葉の意味を考える暇もなく、千咲は受け身から素早く身を起こし、これ以上ないほど荒い呼吸を繰り返した。

    「可愛い顔が台無しになるから冷静になろうぜ。な?」
     そんな彼女に優しい声音で声をかけたのは寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)。見た目が派手なヤンキー風の彼は、千咲の前に進み出るとそのまま妖の槍を脇に引きつけ、剣道の礼の動作をする。戦いの中に日常と人の心を繋ぎ止めるように。

    ●動中の静
     それでも千咲は混乱から抜け出せないまま、豆虎に向かって闇雲に刀を打ち込んでくる。その一撃を、間に入りこんで受けたのは雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)だ。
    「貴女が千咲か? 妙技一つ、お相手願いたい。『解錠』」
     煌理はこれ見よがしに自分の剣を相手に向けて勝負を挑んだ。
    「君は剣道が好きか? 私はあまり武道に詳しくないが……心技体揃って一本なのだろう? 心が、今の貴女には心が足りないのでは?」
     煌理は群青色の宝石をはめ込んだ指輪にキスをし、手で銃の形を作る。するとその先から魔法弾が発射され、千咲の足元に着弾した。千咲は飛びのき、床にできたクレーターを見つめた。弾は当たらなくても、煌理の言葉が、千咲を追いかけた。
    「自分の仕出かした事が恐ろしいか? なら、私達と共に扱えるようにせんか?」

    「今は力の使い方を知らないだけ……暴走する前にあなたを後戻りさせてあげたい……」
     阿波根・ナギサ(ゴシック唐手ガール・d30341)も、落ち着かせるように柔らかな口調で語りかけた。
    「思わぬ威力が出てしまったのは咄嗟の事故であってあなたのせいではない……心を鎮めて精進すればその力を制御できるようになる……」
     ナギサが空手の構えを取った。打って来い、というように目で促す。
     千咲は息を詰めたかと思うと、いきなりナギサの視界から消えた。下か、とナギサが意識を向けた刹那、刀が胴をはらった。痛みがナギサを襲ったが、とっさにプロテクターで受けてその力を分散させる。消える魔剣を受けて傷を負っても、ナギサの瞳は凛と穏やかなままだった。
    「武術は己を磨いてこその輝きを持つモノだと思っている……。力に流されぬよう……」
     恐怖で支配されていた道場はいまや、気付くと武術の試合中のような静粛な空気に包まれていた。

    「すごい……本当に一瞬消えたように見えたよ。それにあんな低空からあそこまで動けるなんて」
     千咲の消える魔剣を目の当たりにして、乃々葉が感嘆した。感嘆したのはナギサにもだ。飽くまで暴走の余力を消化させて、千咲の心と体を守るための戦闘を心掛けるその姿に、乃々葉は敬意をもってその傷を癒した。
     そして乃々葉は、千咲を見る。
    「お願い千咲ちゃん……もう人を傷つけるだけの剣は振るわないで」
     乃々葉の願いを聴いて、千咲の眼から涙がポロリと落ちた。
    「私……部長に怪我をさせてしまった……」

    「葉加間さん」
     横から掛けられた声にびくりとして、千咲は飛びすさった。
     声をかけたのは悠。部長の手当を終えた彼は、一般人を逃がし終えた仲間たちと道場内に戻って来たのだった。
    「葉加間さん、落ちついて……大丈夫、だれも死んでない、君は誰も殺してない。君の武の道は、まだ汚れてない!」
     悠の言葉に、千咲の眼が大きく見開かれた。
    「武道は殺人のための技術ではないんです」
     悠の視線を受けて、夜音がうなずく。夜音は優しい表情で矢をつがえると、瑠乃鴉に向けて放った。仲間に向けられた矢に驚く千咲の眼の前で、その矢は星の煌めきをまとって、瑠乃鴉の腕の傷を癒したのだった。
    「ね、千咲ちゃん。大丈夫さんだよ」
     こういう力の使い方もできるんだよと、教えられているようで。

    「自分の力が怖いかもしれない、けれど、それもあなたの一部なんです。恐れず、受け入れて、制してください。あの凄い技ができたんです、きっと出来ますよ」
     悠の真摯な言葉が胸にしみ込むにつれ、千咲は落ち着きを取り戻し……そして理解した。自分が尋常ではない力を手に入れてしまったということを。そして、力の内にある闇を制するには……彼らと同じ側に行くには、一度、全力で戦わないといけないということを。

     千咲は刀を正眼で構えた。その意を察して、灼滅者たちもそれぞれの構えを取る。
     踏み込んできた千咲の身体が沈む。予想していたはずなのに、灼滅者達の視界から彼女は消えた。

    ●智仁勇
     消えた千咲の刃が向かったのは、瑠乃鴉だった。斜め下から飛び上がり、上から振り下ろされてきた雲耀剣を、瑠乃鴉は巨大化した腕で受け止めた。ガキン!と金属音が響く。
    「止められた!?」
     千咲の驚きの声に、瑠乃鴉は得意げに笑い、鬼神変で押し返した。
    「残念ながら、僕にとっては、はかませんぱいの消える魔剣はただの強い斬撃以上の意味を持たないですね。僕の方がちっちゃいですから」
     えっへん、と胸を張ってから、
    「……悲しくなってくるですね」
     瑠乃鴉はとほほ、と肩を落とした。
    「身長ちっちゃいさんなの、気になっちゃうよねぇ……。僕も周りの人みんなおっきいさんだから……むむむ……」
     瑠乃鴉に共感を示したのは、瑠乃鴉よりは大きいけれど、やはり140センチちょっとしかない夜音で。
    「僕ねぇ、実は高校3年生さんなの。千咲ちゃんとおんなじくらいの身長さんだけどねぇ。ちっちゃいと色々大変さんだよねぇ、不便だったり他の人がもっとおっきく感じたり……。それでも真っ直ぐ向かっていける千咲ちゃん、とってもかっこいいさんなの」
     夜音は、灼滅者たちと矢継ぎ早に技を交わしていく千咲を励ますように見やった。

     夜音の目線の先では今、豆虎が千咲の居合斬りを受け、螺穿槍で返していた。
    「急に持て余すほどの力を得たらビビるだろうけどなァ、上手く共存して、上手く力を制御出来ると、誰かの力になれたりすンだぜ。怖く無ェから大丈夫」
     激しい攻防のすれ違いざま、豆虎は笑ってみせる。
    「今まで通り、普通にダチだって出来るぜ? 例えばオレとかなァ」
     駆け抜けてゆく刹那、千咲がちらりと振り向いた気がした。

    「不謹慎かもしれないが……異なる武術と手合せできる機会が巡って来るのは何となく心が躍る……」
     駆ける千咲を迎えたのはナギサ。空手と剣道、異なる技が激突する。
    「心の闇に頼った技ではなく千咲本人の技を見せてもらいたい」
     ナギサの要求に、千咲が目だけで頷いて死角に消えた。下方、背後。気配を察したナギサは裏拳ごと振り返る。そこに千咲の鋼鉄拳。拳を交え心を通わせた交差。

     陣が入れ替わっても、千咲は消える魔剣を繰り出した。消えてからの居合斬りを向けたのは煌理。
     だが煌理はステップを踏んで、千咲の十八番を避けた!
    「その技は見切った」
     煌理は白光をはなつ斬撃で反撃する。白光は逆八文字の軌跡を描き、さらにビハインド“祠神威・鉤爪”と連携して相手を押し包むようにする。千咲は煌理のその技量に目を見張った。
    「共に歩もう。心はそうやって鍛えるものだと聞いた」
     煌理の落ち着いた声が、千咲のはやる力と心を鎮めそうになり……しかし、まだだ、と己の闇から声がする。もう一駆け。

     千咲は鞘に刀を納めた。静けさの中、対峙したのは真白の少女・レイネ。2人はしばし見合うと、同時に床を蹴った。鞘走りの音と同時に、ふたりの居合斬りが激突する。
    「此処は、私の距離よ。其の程度なら容易いわ」
     身のこなしの流麗さなら、レイネの方が上。レイネは居合斬りを相殺した。そして相手の刀身をからめとるようにして間合いをとると、白羽根のごとき袖を翻し、まっすぐに振り下ろした。
    「其の歪み、私が断ち切るっ」
     高い音がした。千咲の日本刀が砕けたのだ。千咲の目がきらきらと散ってゆく破片を追い……閉じた。
     前のめりに倒れる千咲の身体を支えて、レイネは呟いた。
    「眠りなさい。悪夢は、此処までだから」

    ●交剣知愛
    「今回も無事終わって良かったよ……」
     眠る千咲の胸が規則的に上下しているのを見て、乃々葉はほっと息をついた。千咲が着けている剣道用の防具が窮屈そうな気がして、紐を緩めてあげていると、千咲の瞼がぴくりと動いた。
     目覚めた千咲が見たのは、灼滅者達の穏やかな顔。
    「落ち着いた? 改めてよろしくね、千咲ちゃん」
     乃々葉が千咲に手を差し出し、握手した。
    「これまでの生活……学校や道場にはもう戻れないけど、わたし達の学園に来ればどっちも続けられるから。わたしも一度は諦めたけど、今は学園に通えて楽しいよ」
    「……学園?」
     千咲が起き上がりながら、不思議そうな顔をした。でも、すぐに何かを了解したような顔になる。以前の自分にはない力が、手の中にあるのを悟ったからだ。
    「そっか、もう普通には戻れないけど……新しい生活があるんだ」
     レイネが千咲の顔をじっと見た。レイネは多くを語らない。安易な言葉で安らぎは与えたくはないから。平穏から外れたのは、彼女も同じ境遇だから。

     灼滅者としての道は、平坦ではない。それでも。
    「消える魔剣、おもしろい技だよね。是非とも学園に来て、その技を教えて欲しいです」
     悠が千咲を助け起こしながら、明るく笑う。その隣にも笑顔があって。
    「改めて、オレは寸多豆虎っつーんだ。宜しく。ダチの印に今度一緒にずんだスイーツや牛タンを食べに行こうぜ」
     豆虎の自己紹介と気軽な誘いに、千咲もようやく笑顔になった。
     まだ戸惑いはあるけれど、剣と拳を本気で交えたからわかる。この人たちの強さと優しさが。
    「上手い言葉が出ないのだが……今度うっかり顔を合わせたら友達にでもなろう……」
     ナギサの言葉も嬉しくて。
    「ありがとう……」
     この人たちとなら、なんとか歩いて行けるかもしれない。そう思った。
     きっとこれから前途多難だろうけど。でも、優しさを忘れず、もっと強くなろう。前を向いて歩けるように。
     心に、正しき剣があるかぎり。

    作者:桐蔭衣央 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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